tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

メガバンク2社、ベア要求見送り

2018年02月27日 11時15分39秒 | 労働
メガバンク2社、ベア要求見送り
 この2日間、統計問題で多くのアクセスを頂きました。
 数字さえ示せば人は信用すると思ったのでしょうか、結果は国会の混乱ですが、これも絶対多数で押し通すのでしょうか。
 統計は大事です。国が統計を誤魔化すようになるとそれは亡国の兆しです。それは歴史が証明するところでしょう。

 ところで、2018春闘で、メガバンク2行がベア要求を見送るという報道がありました。黒田総裁続投で、マイナス金利はまだまだ続きそうという事になると、銀行の収益低下傾向の改善は容易でないでしょう。日本の組合は本当に真面目ですね。

 欧米だったら、通常は、政府や中央銀行の方針のお蔭で儲からないと言って、従業員は余計に苦労して働いているのだ、銀行の収益とわれわれの賃金要求とは関係ないと賃金要求をするのが当然の権利と考えます。

 日本のように、経営の現状を考慮して、賃金要求基準を決めるなどというのは「まさに御用組合の典型、労働組合にあるまじき行動」などと批判されてきた歴史もあります。

 昨年の春闘ではクロネコヤマトの組合が、組合の権限を越えて、営業時間や料金体系にまで論議を進め、それを経営側がまともに受け、全国的な宅配業界の問題改善にまで発展しました。
 このブログでも「 異例な春闘 」と取り上げましたが、日本の労使関係は、伝統的な欧米の労使関係とは一味違います。

 労使が、それぞれに自分の利害だけを行動基準とし、ぶつかり合って妥協した処が「正しい」などという考えは決して主流にはなりません。労使が共に、「社会正義」を目指し、より良い社会構築のために議論するのです。

 こうした労使関係を持った国の政府は大変幸運だと思います。オイルショックの時も、バブル崩壊の時も、労使は政府に迷惑をかけることなく、自主的労使交渉の中で、きちんと進むべき日本経済の在り方、選択すべき方向を議論して来ています。

 この所、政府の春闘への介入、さらには国民の働き方を決めたいなど、異常なまでに思い込みの政策が見られますが、政府も、労使と同じように、自分の都合(例えば2%インフレにしたい、同一労働同一賃金がベスト、などなど)を主張するのではなく、労使がいかに懸命に自己中心でない「社会正義」実現の意識のもとに行動して来ているかを勉強して理解し、基準法のような基本の設定に専心し、あとは賢明で真摯な日本の労使に安んじて任せる事を学んだら如何でしょうか。

統計調査の重要性の再認識を

2018年02月25日 16時30分33秒 | 労働
統計調査の重要性の再認識を
 裁量労働制を採ると、労働時間は長くなるのか、短くなるのかどちらでしょう。この問題は個人によって、全く違うでしょう。
 特に問題が無ければ早く切り上げて済まそうというタイプの人と、じっくり形できちんと詰めるところを詰めて「良い仕事をしてくれた」と後世いわれるような仕事をする人とでは結果は全く違うかもしれません。

 さて、どちらが企業にとって、顧客にとって、社会にとっていいのか、これは仕事の種類にもよるでしょう。単純ではないような気がします。単に労働時間が短くなることが「良い結果」といったことで済むのでしょうか。

 これは本質論かもしれませんが、今回国会で問題になっているのは、短くなることが良いことという前提で、しかも「統計」という社会問題の判断の基準になるべき大事なものを極めて杜撰に扱ったという思慮の浅さが根底にある問題のような気がします。

 今、日本経済にとって高齢化問題は極めて重要です。この議論がきちんと進められるのは、「国勢調査」「人口動態統計」といった統計が十分な正確さを持っていると誰もが認めるからでしょう。

 インフレ目標2%というのも、消費者物価統計がいい加減だったら、議論になりません。統計への信頼があって初めて可能になる議論です。

 ですから、国には「統計法」があり重要な統計は基幹統計(旧指定統計)、承認統計として厳密な設計基準によって信頼性が確保されているのです。

 今回問題になっているのは「業務統計」です。これは必ずしも統計法の適用を受けない統計で、政府関係機関が業務上得た資料を集計し、便宜的に利用するために発表しているものです。
 安倍さんがよく使う「有効求人倍率」も「職安業務統計」です。単に、提出された求人票と求職票を集計し、発表すれば、何らかの参考にはなるだろうというものです。

 5人必要な所を10人と書いて出しても罰則はありません、正式に設計された統計ではないのです。今国会で問題になっている「労働時間等総合実態調査」も業務統計です。

 法律を制定する際の根拠になるような統計データは、最高の正確性を持っていなければならないでしょう。統計の設計の段階からきちんとした正確性を担保することに欠ける「業務統計」などを安易に利用するという事自体が、統計情報に対する認識の不足の結果ではないのでしょうか。
 大事な事に利用しようとすればするほど、統計の正確性、統計への信頼性が大事です。正確な統計は国の宝であり、また国際的信用の基本でもあります。

OJTのすすめ:育て合う人間関係

2018年02月24日 13時17分46秒 | 経営
OJTのすすめ:育て合う人間関係
 ブラック企業などという言葉が横行する今の日本の企業社会では、従業員教育訓練用の用語などは死語になっていしまっている所もあるかもしれませんが、経済復活の兆しが見えて来る中で、そろそろ教育訓練用語も、職場で共通用語として復活してきてほしいと思っています。

 先ず取り上げたのは「OJT」On-the-job Training です。
 かつては日本企業の教育訓練は80%はOJT、などと言われたものですが、「ああ上野駅」に歌われるように、戦後全国各地から産業集積地に出てきた若者が、当時の中小企業に就職し、ついには「現代の名工」などと讃えられるようになるといった多くの例が生まれたのも、まさにOJTの成果でしょう。

 On-the-job、仕事の現場で、先輩が仕事をしながら教えてくれるというやりかたがOJTです。
 英語ですから、発祥はアメリカで、第一次大戦で造船の仕事が忙しく、技能工養成が急務という中で生まれたのだそうですが、戦後日本では、日本なりに、職場の緊密な人間関係の中で育ったようです。

 日本でもこんな言葉は有名です。
「やって見せ、言って聞かせて、やらせてみ、褒めてやらねば、人は動かじ」(山本五十六)
 OJT開発者のチャールズ・アレンも「やって見せる→説明する→やらせてみる→補修指導」の4段階と言っていますが、違いは「褒めてやる」か「補修指導」かだけです。

 日本人だけではないと思ますが、仕事を覚えると人に教えたくなるものです。特にグループワークを得意とする日本人はそうかもしれません。

 実は「教える」という事は自分の理解を整理・促進する効果のまるようです。ある本にこんなことが書いてありました。
 教授が学生にある理論の説明をしていた。一回説明、学生ポカン。二回目懇切に説明、学生ポカン。三回目さらに一生懸命説明している時、その理論の意味を教授自身が理解した。

 山本五十六も教えながら、「人にものを教えるという事は大変なことだと学んだのでしょう。教えることは教えられることでもあるようです。
 こうしたプロセスが積み重ねられて、職場の人間関係は深まり、組織の凝集力が高まるのです。

 アレンのOJTの4段階もその後、TWIに発展し、戦後日本に導入されて、労働省が全国に広め、監督者訓練のバイブルになりました。その後の日本の産業訓練は、監督者向けのTWI,管理者向けのMTP を両輪に発展してきています。これらはOJTではなく、Off-JTです。

 こうした言葉が、職場の中で、当たり前に飛び交うようになると、日本の企業内訓練、産業教育も本格化という事になるのではないでしょうか。
 現場力の強化、人を育てられる人材の育成が、これからの日本を支えるでしょう。

消費活性化のカギは何でしょう

2018年02月22日 16時39分13秒 | 経済
消費活性化のカギは何でしょう
 毎度各種統計の紹介の中で、今の日本経済の好調を支えているのは「民間企業設備」ですと指摘してきています。
 経済の成長は投資と消費のバランスの取れた伸びに支えられるのでしょうが、残念ながら消費支出がなかなか伸びないのです。

 安倍さんは、まさに一つ覚えのように「賃上げをすれば」と言っていますが、多くの人たちは、原因はもっと深くて「将来不安」なのだよと言っています。私もそう思っています。
 そして将来不安の原因というのは、何時ミサイルが飛んでくるかという不安よりも、超高齢化社会を控えて、老後を支える安定した雇用、安定した所得が得られるだろうかという所にあるようです。

 というのも、国民皆年金と言いながら、その財源である国家財政は世界トップクラスの借金を背負い、その再建は常に先延ばしで、どうもインフレで借金を目減りさせていこうと考えているらしいのではないかと勘繰られます。

 そのうえ、国民が生活の基盤として頼る「雇用の安定」は、かつての日本と比べて、ますます不安定になっています。安定した企業に就職したつもりでも、昔と違って「一生安心などとは決して思うな」などといわれる世の中です。

 生活を切り詰め貯蓄をしても、利息は殆どつきません。まさに「一体どうすりゃいいの」という世の中になってきています。

 今日も国会中継で裁量労働制についての論戦が行われていましたが、今回の「働き方改革」も、かつての日本経済の発展を支えた「人間中心」「長期的視点」に基礎を置く「雇用の安定第一義」の経営から、欧米流の雇用流動化、1億人それぞれに自分自身で活躍しなさい、という方向への移行方針が見え見えです。

 このままではアベノミクスは「日本社会の安定をベースにした日本経済の健全な発展」には行き着かない様に思われます。
 今年は、少しは消費も活性化して、日本経済は良くなるかと期待していましたが、現状、大親分のアメリカも含めて、四囲の情勢は、何か悲観的なようです。
 (ちょっと悲観的過ぎますでしょうか・・・?)

働き方改革で抜け落ちているもの

2018年02月21日 15時22分21秒 | 経済
働き方改革で抜け落ちているもの
 国会で賛否両論の「働き方改革」ですが、この所はまた政府の説明したデータなどで混乱の度を深めています。
 しかし何と言っても、絶対多数を誇る与党ですから、最後は「長時間議論しました」という事で政府案がそのまま通るのでしょうか。

 この法案が通ったからといって、日本経済がそれで変わるとも思われないので、絶対多数には敵わないという気持ちで眺めていますが、改めて安倍政権の「働き方改革の目指すところ」をみてみますと、どうも一番大事な問題が抜け落ちているように思われてなりません。

 官邸の資料には「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます」と書いてありますが、中間層を厚くしたり格差の固定化を回避したりするのは、働き方を変えることでは難しいように思われます。

 さらに「基本的な考え方」の中に「働き方改革こそが、労働生産性向上の最良の手段」と書いてありますが、これもどうも正しくないようです。

 日本の戦後の経験をご記憶の方も多いと思いますが、生産性向上に最も大事なのは「働く人の教育訓練と、本人の人間性(生きる事への目的意識)育成」です。
 日本企業はこれをきちんとやって来た故に、「ジャパンアズナンバーワン」に至る成長を成し遂げてきたのです。

 しかるに、プラザ合意、バブル崩壊、リーマンショックで異常な円高が続き、日本企業は長期のじり貧に苦吟し、教育訓練費は削り、人を育てず、雇用を不安定にし、人間重視の日本的経営から逸脱した20数年の後遺症が、今、円レートが正常化した後も日本経済の回復を遅らせているのです。

 不況の期間がもっと短ければ、経済環境が正常に復せば「人を育てる経営」への回帰はもっと早く進んだでしょう、しかし低迷の時期が長すぎたために、人を育てる経営のノーハウが、 失われてしまっている企業も少なくないようです。

 「働き方改革」という着想にしても、「生産性向上に最も必要なものは人を育てること」という視点が抜け落ちたまま、裁量労働とか同一労働同一賃金とか、テクニカルな問題だけの論議になってしまっているというのが、今の現実なのです。

 日本経済が新しい発展の段階に入りつつある今、より多くの日本の経営者が、人を育てる」という経営の原点に早く回帰してほしいと思いながら、このブログも書いています。
 「百年(終身)の計は人を植えるに如かず」

政府はこれからの円レートをどう見ているのか

2018年02月20日 14時51分39秒 | 経済
政府はこれからの円レートをどう見ているのか
 為替レートというのは、経済や経営にとって言えば、度量衡における『メートル原器』のようなものだと書いてきました。
 建築や各種の設計では最小限度の誤差で正確にモノを作ることが求められます。こうした作業は『メートル原器』があってこそ可能になります。

 経済や経営でも、今年度は円レートは平均いくらいくらという想定の下に計画を立てます。想定した円レートに狂いが生じれば、計画と実際にその分だけ誤差が発生します。
 今は変動相場制だから、「それも仕方がないことだ」で済む場合もありますが、すまない場合もあります。典型的なのは、プラザ合意による円高、リーマンショックによる円高などでしょう。

 こうした円レートの変動をただ単に受け入れて、それへの適応だけを一生懸命やってきた日本が、全く違った行動に出たのが、黒田日銀の2発の黒田バズーカです。
 それぞれが20円幅の円安を実現し、円は1ドル80円から120円までの円安を実現し、日本経済は息を吹き返しました。これはまさに大きな成功体験でした。

 ところで今はどうでしょうか。このところどうも円高基調で、今日も106円台です。昨年末から今年の年初にかけて、アメリカの利上げのペースが早まりそうだから、円安傾向が続くという意見が強かったようです。
 しかし、突如、アメリカの政権内部から「ドルは強すぎる」という発言が出て、「やはり強いドルが良い」と打ち消されましたが、その後の動きは微妙です。

 これから世界に先駆けてアメリカが金利の正常化を進めていけば、ドル高傾向は当然というのが経済学の常識でしょう。しかし経常収支でも、財政収支でも赤字体質のアメリカ経済の実態は「武士は食わねど$高楊枝」とはいかないでしょう。本音はドル安指向とみる方が自然かもしれません。

 こうしたアメリカの事情を忖度して、そこにビジネスチャンスを見出そうと国際投機資本が権謀術策を駆使する事は当然予想できます。
 こうした欲望渦巻く思惑と投機の世界に対して日本政府はどのように対応しようとしているのでしょうか(この所の要人の不用意な発言もあります)。

 「来年度の政府経済見通し」では、昨年11/8-12/7の1か月間の平均である112.6円で一定と推定、と書いてあります。この「メートル原器」は、どうも政府の意に反して勝手の伸び縮みするのです。

 為替レートは今や一国経済の生命線になっています。政府・日銀は、信念をもって為替レートの安定に最大限の注意を払う意思を内外に示す事が国内的にも国際的にも、権利であり義務でもあるのではないでしょうか。

「争いの文化」と「競いの文化」その後

2018年02月19日 22時46分09秒 | 社会
「争いの文化」と「競いの文化」その後
 昨秋、「文化の日」に、 「争いの文化」と「競いの文化」を書きました。文化はまさに人間特有のものですが、残念なことに、「文化」の名のもとに人間が争う事が多すぎるような気が、ますます強くなる今日この頃です。

 人間は巨大な知識を身に着ける事が出来るようになりました。地球も人類も破滅させることが出来るような知識まで作り上げてきました。知識は文化の源でしょうが、そんな知識も「文化」の中に入るのでしょうか。

 今多くの人びとは平昌オリンピック熱狂し、感激し、感動しています。オリンピックは、何故にこれほど人々を感動させるのでしょうか。
 私はその根底に、オリンピックこそまさに「競いの文化」代表的存在だからだと思っています。

 人間の「人に勝ちたい」という気持ちが人類の進歩発展の原動力であることは明らかでしょう。そして、その最も人間らしい発露の代表的なものがオリンピックだからでしょうか。勝っても負けてもそこには清々しい人間性の発露があり、人の心を感動させます。

 ギリシャの古代オリンピックでは、オリンピックの期間中、戦争は止めた(聖なる休戦)と言われています。「競いの文化の祭典」の時は「争いの文化」は封印したという事でしょう。 
 古代ギリシャ人は「競いの文化」を「争いの文化」の上に置くべき、より高度な文化と考えていていたのでしょう。

 さらに言えば、「競いの文化」は、互いの存在を認め合い、互いに高め合う原動力になります。「争いの文化」は相手の存在を認めない破壊の文化に堕していくのです。

 平昌オリンピックの数かずの感動的なシーンを見ながら、今、私は「争いの文化」と書いた事を些か反省しています。比較して解り易いと思って書いたのですが、今言いたいのは「争いの文化」は文化ではない「文化を突き崩す破壊への道だ」という気持ちがますます強くなるからです。
 皆様は、「争いの文化」について、どんなふうに感じておられますでしょうか。

銀行預金に金利が付いたら(日曜日のオアソビ)

2018年02月18日 15時40分49秒 | 経済
銀行預金に金利が付いたら(日曜日のオアソビ)
 ニューヨークのあるマンハッタン島は、1621年にアメリアに入植したオランダ人がインデアンから60ギルダで買ったというのは有名な話です。当時の60ギルダが今の感覚でいくらかは知りませんが、多分はした金でしょう。
 
 これは史上最大の買い物などといわれますが、以前、日本が土地バブルだった頃、何かの折に、その時60ギルダを銀行に預けておけば、利息が付いて、今のマンハッタン島の地価と同じくらいになっているという話を聞いたことがあります。
 400年の間に金利がどう変化したか知りませんが、これも面白い話だと思いました。
 
 ところで日銀の黒田総裁は再任だそうですが、相変わらずゼロ金利で頑張ると、にこにこと張り切っておられるようです。 
 でも、いつまでも異次元緩和というわけにもいかないでしょう。誰もが「そのうち銀行預金にも利息が付くようになるだろうと思っています。

 という事で、「もし銀行預金に利息が付くようになったら」と考えてみました。
 日銀の資金循環表(2017/9)で見ますと、家計の金融資産は1845兆円、そのうち現金預金が934兆円、保険年金などが521兆円で合計8割を占め、あとが株や投信その他となります。

 銀行預金に利息が付けば、タンス預金も銀行預金になり、保険などの利回りも上がるでしょうから、ゼロ金利という事はこうした1500兆円近い家計の貯蓄につくべき利息が現状では、払われていない(払わすに済ませている)という事です。
 誰が得をしているのでしょうか?(どうも赤字財政の元締め「政府」が臭い・・・)
 
 もし、この家計の貯蓄に1%の利息が付いたら、15兆円近いおカネが家計に入ります。安倍政権が3%賃上げを推奨した昨年春闘でも今年度の雇用者報酬は4.6兆円しか増えていません(政府経済見通し)。

 預金金利がゼロでなく+1%になれば、家計にはその3倍のカネが流れ込みます。多分消費は増えますね(経済成長率上がる)。利息は使えて元本は減らないのですから。

 3%賃上げしたら税金を負けるなどといっている現政権ですが、ゼロ金利据え置きもほどほどにして、為替政策の目配りも怠らずは当然ですが、金利正常化の方向に欧米と歩調を合わせる姿勢も大事になってくるのではないでしょうか。

2017/10-12月期GDP速報

2018年02月16日 12時10分11秒 | 経済
2017/10-12月期GDP速報
 インフルエンザ罹患の様で、寝たり起きたり。ブログもままならない状態ですが、そろそろ何とかなりそうです。治りかけが一番他人にうつし易いと言いますが、ブログ経由の感染というのは多分ないでしょうからご安心を。

 標記の速報が14日に発表になりました。日本経済は、まだちょっと力足らずという所ですが新年に期待したいと思います。
 マスコミ報道では実質の伸びは前期比0.1%、年率換算0.5%と低いながら、8四半期連続プラスというものでした。

 2016年10-12月期から今回発表の2017ねん10-12月期までの各4半期の対前期実質GDP伸び率(季節調整済み)は、
0.4、0.3、0.6、0.6、0.1(%)
で年末一寸息切れといった感じですが、これは民間住宅の-2.7%(マンション建設一段落?)が響いているようで、家計消費は7-9の不振(天候のせい?)から回復+0.5%でした。

 より基本的な傾向を示す「対前年同期比」の数字を見ますと、上と同じ期間で、
1.5、1.4、1.5、1.9、1.5(%)
で、一年前に比べるとほぼ1.5%の実質成長を維持していることが知られます。
 成長を支えているのは民間企業設備で同期間の対前年同期比は
1.7、1.8、2.9、3.8、3.0(%)
 これに対して、家計最終消費支出の同期間の対前年同期比は
0.4、0.7、1.7、0.6、1.1(%)
 ですから、家計の消費支出が出てくれば、日本経済は様変わりになるのではといった感じがします。
 
 一方で個人貯蓄は増えています。もし、貯蓄にまともな金利が付いたら、例えば1000万円定期にしておけば、年間30万とか50万円の利息が付くという事であれば、少なくとも利息の分は安心して使えるのではないでしょうか。

 日銀がゼロ金利に固執するのは、円高を恐れるからと言われますが、アメリカは利上げをしても、ドル高にならず、ドル安です。ゼロ金利だけが、円高防止の手段というのは、少し違うのではないでしょうか。
 経常黒字拡大の悪循環という点に、もう少し経済・金融政策の検討の視点を置くことも考えたらと思うのですが。

非正規労働はなくせるか

2018年02月14日 11時29分13秒 | 労働
非正規労働はなくせるか
 最近、非正規労働をなくそうといった意見をよく聞きます。
 このブログでも、正規、非正規という用語を使っていますが、「非正規」というと「イレギュラー」ですから、何か差別的で感じがよくないのかもしれません。

 それではと考えてみますと、非正規の中にはパート、アルバイトから派遣社員、期間契約社員、定年退職後の再雇用の社員などいろいろあるわけで、それらをみんなひとくくりにして非正規という事になっているというのが現状でしょう。

 これらの中でも、高い専門能力を持ち、企業から乞われて期間契約で仕事をしている人とか定年再雇用といった人たちは、非正規の範疇に入ったとしても、特に差別感など感じないでしょう。

 派遣は派遣で、非正規といわれても、法律で制度が確立している分野です。
 そうしてみると、問題はパート・アルバイトといった働き方の場合に、差別的という事になるのでしょうか。
 今後、同一労働同一賃金で問題にあるようなことについても、問題は多分パート、アルバイトが主でしょう。

 前置きが長くなってしまいましたが、ここで取り上げようと思ったのは、非正規労働そのものをなくせるかという問題です。

 戦後、日本の経営者は、 従業員の身分差別をなくして、全員を「社員」としました。日経連の初代会長であった桜田武もそれを誇りにしていたことも書きました。でも今からそれに倣う事は可能でしょうか。

 戦後の貧しく不安定は社会では、雇用の安定こそが生活の安定につながるわけで、全員正社員は素晴らしい発想に立つ制度だったということが出来ましょう。
 しかし、今日の日本は違います。当時とは比べものにならない豊かな社会です。種々の形の蓄積社会でもあります。
 
 勿論、雇用の安定が生活の安定につながるという立場の人が太宗でしょう。しかしそうでない人も次第に増えてきています。
 かつて、大手デパートが「働きたいときにだけ働きに来てください」と言って「サムタイマー」という制度を作ったこともあります。

 やりたい事や、やるべき事が他にあり、家計では補助的な役割、しかし、時間が余れば、世のため人のためになり、プラスアルファの収入にもなるから、出来るだけ縛られない自由な立場での仕事の機会を求める人は増えてきました。豊かな社会では、当然働き方は多様化するのです。

 こうした柔軟な働き方を希望する人たちは、今後も徐々に増えるでしょう。豊かな社会では多様な働き方が求められます。
 非正規という呼称は別として、こういう人達に出来るだけ都合よく働いてもらえるような雇用の仕組みは必須です。
 
 こうした仕組みは法律を作れば出来るわけではありません。やはり戦後の経営者が、戦後の社会に合った「全員正社員」制度を考えたように、今日の経営者も、企業の都合だけで物事を考えるのではなく、社会の多様な要請に応えられるような多様な雇用の在り方を模索すべきではないでしょうか。

仮想通貨のつかいみち

2018年02月11日 12時38分05秒 | 社会
仮想通貨のつかいみち
 マウントゴックスに続いて、今度はコインチェックの事件が発生し、仮想通貨の闇はますます深くなるようです。

  ビットコイン雑感でも書きしたが、仮想通貨なるものが、いったい何に使われるのかという問題が、今に至る何も整理されていないような気がします。

 マウントゴックスのCEOは堂々としていて、会社更生法でなく民事再生法で再建を図るという事のようでしたが、その後ニュースもありませんから、私などには知る由もありません。

 ただ、ビットコインの値段が$100にもなったので(1年で10倍ほど)、十分再生は可能ではないかといった意見がどこかに出ていたのを見た覚えがあります。
 $100というので正直びっくりしていましたら、このニュースの影響でしょうか、そのすぐ後、$200にまで上がったようです。その後はいろいろあって大幅下落ですが、それでも$70~80でしょうか。

 こうした仮想通貨はブロックチェーンデータベースという技術で安定性を待つことが出来るという理論のようですが、それ自体は「金」に似た安定性を持つとしても、現実には、一般的に利用される各国通貨との交換比率が異常な変動をすることは避けられませんから、(決済が簡単だからなどと)現実のビジネスに活用されることは恐らく「無い」に近いのではないでしょうか。

 結局、仮想通貨の使い道は「投機対象」という事になってしまうという事は開発者のサトシ・ナカモト氏は知っていたのでしょうか。
 日本でも、若い人たちの投機の手段が主という事のようです。

 IMFや各国の通貨当局に相当する組織が無くて、健全に運用できる通貨という理想は、現状ではとても叶わない夢という事でしょう。
 ハッカーによる問題というのは、一般の通貨システムでも起きうる問題ですが、その防衛システムも、仮想通貨の場合、まだまだ弱いところも多いのでしょう。

 ギャンブルと割り切れば、面白い対象かもしれませんが、現状ではその域を抜けられないようです。
 将来は有効な通貨になりうるといった意見もあるようですが、そのためには、多くの社会ステムの進歩や技術開発のハードルがあるのでしょう。

 ますます経済のギャンブル化が進む今の世の中です。このままでは仮想通貨が本当に「通貨」の役割を果たすことは多分ないでしょう。
カジノでなくてもできる「何も実体のない」ギャンブルの対象に堕する、といった気がするのは私だけでしょうか。

経常黒字拡大を喜ぶべきか?

2018年02月10日 12時18分42秒 | 経済
経常黒字拡大を喜ぶべきか?
 2017年暦年の経常収支(速報)が一昨日の8日に発表になりました。21兆8700億円で、前年比5.9%の伸び(速報同士の比較)で、黒字幅は2007年(リーマンショック直前、24.9兆円)に次ぐ水準だそうです。これはGDPの約4%になります。

 経常収支は、単純に言えば、昨年日本が稼いだ金額から日本が使った金額を差し引いたものですから、家計になぞらえれば、収入を全部使わなかった、つまりその分が貯蓄として残ったという事で、国で言えば、対外債権として残ったという事です。

 アメリカの経常収支は日本と逆で万年赤字で、トランプさんは海外からカネを集めて資金繰りをつなぐことに躍起になっていますが、その点日本は超健全経営です。

 上記の2007年に次ぐ黒字幅という事ですが、マスコミが報じていますように、黒字の中身は随分変わってきています。
 先ず貿易収支の黒字は大幅に減り、第一次所得収支(海外からの利子・配当など)の黒字幅が増加し、サービス収支の中の旅行収支が2兆円の赤字から1.7兆円の黒字に転換しています。

 貿易収支の黒字の減少は、トランプさんではありませんが、「アメリカに輸出するな。アメリカに工場を作れ」という事で、日本企業の大きな投資は最近外国で行われています。輸出より現地生産、場合によっては逆輸入で、貿易収支の黒字は大幅に減っています。

 一方、日本企業が外国で生産して利益が出れば、利子・配当は日本に入りますから、日本企業が外国に出れば出るほど第一次所得収支は増えます。
 2007年には貿易黒字が経常収支黒字の57%でしたが、2017年には22%に減り、第一次所得収支が90.0%(19.7兆円)になっています。

 日本企業の海外進出はますます盛んですから、経常黒字の大部分は海外からの利子・配当などといった形になるようですし、多分旅行収支の黒字も増えるでしょう。
 これらは、貿易収支よりも、多分安定性が高いでしょうから、今後も日本の経常黒字は安定して増えていく可能性が高いようです。 
 ちなみに政府経済見通しでも、今年度の経常黒字は21.4兆円、来年度は22.8兆円となっています。

 この経常収支黒字の増加は、日本人、日本企業の頑張りの結果ですが、あまり黒字が増えるとどうしても副作用が出ます。
 この所、アメリカ発の株価暴落が見られますが、こんな時は、差し当って安全通貨として円が買われます。円高になると、それに反比例して日本の株価は下がります。
 株だけならまだしも、あまり黒字が増えると、プラザ合意やリーマンショックの時のように、日本は円高を強いられます。
 円高が日本経済にどんな悪影響を与えるかは日本人は痛いほど知っています。

 経常黒字の主体である第一次所得収支は実はGDP には入っていません。理由は外国で生まれた付加価値だから、国内(GDPのD:Domestic)ではないからです。
 これの入った数字は「国民総所得」(GNI)です。これが日本人の(稼いだ)使えるおカネですが、GDPより20兆円ほど大きい額です。

 使い残して経常黒字で日本は健全だと喜ぶべきか、黒字が増えるのは、使えるカネも使わず貧しく暮らしているわけで、そのために外国から円高を強いられる羽目になるか、アメリカが万年赤字で困っているだけに、日本は良く考えた方がいいように思うのですがどうでしょうか。

2017年、毎月勤労統計と消費者物価指数から見えること

2018年02月08日 12時33分18秒 | 経済
2017年、毎月勤労統計と消費者物価指数から見えること
 最近発表になった上の2つの統計を組み合わせてみますと、勤労者の生活の基礎的な実態が見えるように思います。
 マスコミでも、「2017年は、現金給与総額は0.4%の上昇にとどまったが、消費者物価が0.5%上がったので実質賃金は0.1%の低下だった(調査産業計・5人以上事業所)」といった報道がされています。

 一昨年の2016年は、現金給与総額は0.5の上昇で、消費者物価は-0.1%でしたから実質賃金は0.6%の上昇でした。なんだ、去年は景気が良いと言われたのにマイナスか、という事になります。

 主要な原因は、現金給与総額の上昇は余り変わらないのに、消費者物価が上がったからです。
 一方、労働時間の動きを見ますと、2017年は前年比0.3%の減少で、一昨年は0.6%の減少ですから、1時間当たりの現金給与総額で見ますと、一昨年との差はさらに大きく、昨年は景気が良くて、忙しく、労働時間の短縮も少なく、賃金の伸びも少なく、物価だけが上がったという事になります。

 消費者物価が上がったのは、消費者物価統計でみますと、総合物価の上昇が0.5%で、生鮮食料品を除く総合も0.5%の上昇と同じで、生鮮食品とエネルギーを除く総合の上昇は0.1%です。
 という事は、消費者物価の上昇はほとんどがエネルギー価格の上昇によるものという事が解ります。つまり、実質賃金がマイナスになった主因は、国際的な石油価格の上昇という事になるようです。

 消費者物価統計の10大費目別の項目を見ますと、それぞれにプラスマイナスはありますが、すべてが対前年比1%未満の変化で、「水道・光熱」だけが2.7%という上昇になっています。
 勿論水道料金がそんなに上がっているのでなくて、石油・ガス関係でしょう。しかしこの項目は、一昨年までの4年間、4.6%、6.2%、-2.6%、-7.3%と国際価格の変動で上がったり下がったりです。

 下がった時は輸入国が得をし、上がった時は産油国が得するという事で、世界共通です。日本政府の国内政策ではどうにもなりません。
 それ以外日本の物価は安定基調です。これは賃金コストプッシュが少ないからで、賃金上昇が生産性の上昇で吸収されている結果です。
 サービス部門や、加工食品など、生産性の上がりにくい所では価格の上昇がみられますが、平均的には基礎的な物価は安定です。
 これは、消費者サイドから見れば、いわば理想的な状態で、特に年金生活者などからは歓迎でしょう。

 一方、政府・日銀は物価を2%まで引き上げたいという主張ですが、生産性が順調に上がりませんとコストプッシュ・インフレになります。
 今回のアメリカの株暴落も、賃金上昇の加速でインフレから金融引き締めというシナリオを読んでの事のようで、この辺りには、経済全体をバランスよく見渡した適切な判断がが大事なところでしょう。

株価までアメリカに全面追随とは

2018年02月06日 11時40分00秒 | 経済
株価までアメリカに全面追随とは
 経常赤字を垂れ流しながら、雇用と消費、物価上昇を目指して快進撃(怪進撃?)を続け、NYダウが史上最高を更新するたびにマスコミで報じられていたところですが、アメリカの株価が急落しました。

 報道される状況から、インフレの予想外の加速から金融引き締めの可能性を予測しての行動らしいという事は前々回書きましたが、75日以上たってリーマンショックの教訓も忘れたのでしょうか、活況を呈し始めたマネー資本主義の先兵たちの活動の結果です。

 トランプ大統領も、金融規制はお嫌いなようで、ドッド・フランク法の見直し、ボルカールールの緩和とった方向へ動きはじめるという報道がされ、マネーゲーマーたちを元気づけていたのかもしれません。
 
 確かにアメリカの予算執行が一部不能になるといった双子の赤字体質のアメリカ財政ですから、国際的な規模でのアメリカへの資金還流の必要性は強いのでしょう。トランプさんもダボス会議出席の際「あそこにはおカネがいっぱいある」といわれたようですが、対米投資を含めて、アメリカへの資金還流はどうしても必要でしょう。

 そんな波に乗って「更なる高みを」を目指したNYダウの急落を受けて、日経平均も先週末500円、今日更に1000円と急落を続けています。
 株価までアメリカ追随しなければならないのかと思いますが、NY市場も東京市場もメイン・プレーヤーは同じなのでしょうから、仕方なのでしょうか。

 日本経済を見ると、堅実に安定成長路線に乗りかけている状態と思っています。企業業績は堅調ですし、何より経常黒字国です。財政こそ大赤字の累積ですが、これは国内問題で、外国から借金をする必要はありません。
 
 株価も無暗に高いわけではありません。ゼロ金利政策で、いくら銀行に預けても、ほとんど利息は付きませんが、安定して2~4%の配当利回りの会社は沢山あります。
 優良企業の株価というのは、勿論上下しますが、長い目で見ればトレンドとしては上がっていきます。定期預金よりよほどいいのです

 そういう東京市場の株価が、NY市場と歩調を合わせる事はないはずですが、そこが実体経済とマネーゲームの違いでしょう。短期市場のマネーゲームはボラティリティー(値動き)優先の世界ですから、慌てなければならず、これが振れ幅をますます大きくするのでしょう。

 なんでもアメリカに追随するのかなあなどと嘆く声も聞こえるようですが、アメリカが是であれば是、非であれば非、政治や芸能、スポーツはいざ知らず、経済などにおいては、中身が大きく違うので、あまり追随しない方がいいのではと思うのですが、マネー資本主義盛行の中では致し方ないのでしょうか。何か情けないですね。

企業の人材育成観は変わったのか?

2018年02月05日 11時09分46秒 | 経営
企業の人材育成観は変わったのか?

 大手企業で人材開発にも長く関わった友人がいます。今は、産業界の人材育成、教育訓練を主要な仕事にする団体に居られますが、リーマンショック以来の企業の人材育成の低迷期から、漸く、この所、何となく抜け出してきたような感じだと言っています。

 昔は、ひとを使うのと育てるのは両方とも企業の役割と考えていた企業が多かったのですが、つい何年か前まで、デフレ不況の中で、企業の教育費は3K(交際費、広告費、教育費)の1つだなどと言われて、産業訓練、人材育成の支出は随分絞り込まれました。

 「企業の人を育てる意欲が回復して来たことは本当によかったですね」などと話したところですが、反応はイマイチで、「いや、何か昔と違うんですね」というのです。

 聞いてみますと、企業の教育訓練担当者自体が、きちんと教育を受けていない世代という事もあるのでしょうか、今一つ腰が入っていないような感じがするようです。
 例えば、すぐに役に立ちますかといった、何か速効的なハウツーを求めているような印象とか、仕事が忙しくて教育訓練などを受けている時間が勿体ないから、出来るだけ短期で効率よく、といった感じを受けることが多いそうです。

 嘗て、1年の計は種をまくこと、10年の計は木を植える事、100年の計は人を育てる事などと経営者からお伺いしたことは何度もありますが、長期不況の辛酸を舐めて、日本企業も変わったのでしょうか。
 最近では「即戦力」という言葉も良く聞かれます。しかしそれは、誰かが育てたから即戦力になれるので、矢張り育てる人が必要なのです。

 そんなことで、それではと統計数字を見てみました。厚労省の「就労実体総合調査」で総額人件費の内訳を調べています。毎年ではなく、ほぼ3年おきですが、一応長期の数字が取れます。
 
 1973年は第一次オイルショックの年ですが、2.1%でその後第二次オイルショックもあり漸減しますが、1980年代後半に入り、バブル期は賃金こそ安定上昇ですが、教育訓練費は比重を増し2.4%に達します。

 1991年はバブル崩壊の年で、それから教育訓練費の比重は再び減少しますが、いざなぎ越えの微弱な景気上昇でも、1.8%への回復を見せます。
 しかし2009年のリーマンショック直後には1.4%という低水準に急落します。そして問題はその後です。
その後2013年からは、日銀の異次元金融緩和で景気は急回復に転じます。

 そして今日まで、景気は長期に回復、円安メリットも含め企業は自己資本比率を大きく改善します。
 ところが2016年(平成28年)企業の教育訓練費の比率は1.3%と未曽有の低水準に落ち込みます。これは何を意味するのでしょうか。

 いざなぎ越えの極く微弱な回復でも、教育訓練費の比率は回復しています。しかし今回の長期の好況の中で、教育訓練費は低下しているのです。
 リーマンショックの後遺症といえばそうかもしれませんが、これがもし、日本企業に教育訓練を自力でやろうという気持ちが失われ、他人の教育した人材を即戦力として採ればいいとか、すぐ役立つノーハウを教えてもらえばいいといった近視眼的な意識に傾斜しているのであれば、日本経済・社会の将来に禍根を残す惧れが大きいでしょう。

 多分、日本企業は、早晩本来の日本企業の考え方に立ち帰っていくと思っていますが、それには、経営管理者の早期の日本的経営(長期的視点に立ち、人間を重視した経営)の原点回帰が急務のように思われるところです。