tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

広島の豪雨災害に思う

2014年08月30日 09時44分22秒 | 社会
広島の豪雨災害に思う
 今回の広島の豪雨災害ではでは、被害は死亡、行方不明を含め70人を超える考えられない様な大惨事になってしまいました。
 亡くなった方々には謹んでご冥福をお祈りし、行方不明の方々には出来るだけ早く所在が判明することを願い、被災された皆様には公的支援も含め、早期に安定した日常が回復されることを望むばかりです。

 「今までに経験のなったような集中豪雨」とか「警報や避難指示の発令がもう少し早かったら」とか、直接の原因についての指摘はあります。
 しかし、現地の航空写真を見て、私が正直に驚いたのは、現地の地形であり、率直な感じとして、この災害の基本原因は、宅地開発の在り方にあったのではないかという点です。

 メインの川筋に沿って、ベッドタウンが開発され、しかもそのいく筋もの支流の両岸をさかのぼって宅地が造成され、背後は深い山、森林です。
 
 災害が発生してから、この地域は以前から土石流の発生があった所であるとか、全国には同じような状況の所が数多くあるとかといった指摘も聞こえたりします。

 思ったのは、1991年バブル崩壊以前の日本の土地政策、土地行政(核心は土地税制)です。土地神話を作り、土地の値上がりで経済を回し、そこから生まれる資金を活用して政権が政策を展開するといった構図ではなかったのでしょうか。

 銀行は土地融資に狂奔し、安易な土地造成が横行し、果ては原野商法とかで、過疎地帯の荒れ地まで投機の対象にするに至っています。
 おかげでジャパンマネーは世界を闊歩したかもしれませんが、その陰で泣いたのは、持ち家希望のサラリーマンでした。

 地価の上昇は、サラリーマンの賃金上昇をはるかに超えたものでしたから、サラリーマンの持ち家は年々困難になり、退職金まで当てにしてローンを組んでも、買える土地は不便で危険もありうる所に押し込まれていったと言えます。

 当時、通勤に便利な近郊の駅の周辺は空き地が目立ちました。高過ぎてまともなサラリーマンには手が出なかったからです。

 家族のためにと一生懸命ローンを組んだサラリーマンが、やっと手に入れた土地の価格はバブル崩壊で暴落、ローンだけは残るという痛手を負いました。しかし、既に住み慣れた所からは簡単には動けません。
 今、災害危険地域指定の問題を受けて、地価が下がるから反対という声が聞かれます。一生をかけて自宅を取得したサラリーマンの悲痛な叫びのように思われます。

 人間の生活にとって、絶対必要なもの「土地」。それを投機の対象にして経済を回し、土地バブルを演出した日本の政治、土地行政の結果が今回の災害に繋がっていると思われてなりません。

マツムシ、スズムシの競演

2014年08月29日 10時02分15秒 | 環境
マツムシ、スズムシの競演
 昨年10月、「頑張ったスズムシ」を書かせて頂きました。遅くまで頑張ったスズムシは、多分たくさんの子孫を残し、今年は我が家で多くのスズムシが育つと期待していましたが、冬の間の管理が悪かったのでしょうか、残念ながら孵化に至りませんでした。
 
 スズムシを分けて頂いた家内の友人は「虫かごを縁の下に入れておくだけで大丈夫よ」と言われるので、簡単に考えていましたが、矢張り家によって、自然環境が違うようです。
 そんなことで、今年も、お願いしてスズムシを分けていただきました。

 今年はもう一つ、いい話がありました。蛍の飼育でお近づきになった町内にお住いの虫博士・虫詩人の女性が、マツムシを飼育しておられ、今年はたくさん育っているので、鳴くようなったらお分けしますよと言ってくれたのです。

 立秋の少し前、ぼつぼつ鳴くようですからと言われるので、ホームセンタで虫かごと虫用の土を買い、お伺いして、♂、♀取り混ぜて分けていただきました。

 虫が正確なのか、暦が正確なのか解りませんが、立秋が来て、庭でコオロギが鳴き始めたかなと思ったら、マツムシが鳴きだしました。

 マツムシの鳴き声は「チンチロリン」です。以前、時折、山梨の笛吹川で夏の終わりの夕方、蚊針でハヤを釣っていましたが、土手の草むらでマツムシが競って鳴いていました。
 我が家のマツムシは、先ずは「チン」か「チロリ」ぐらいから鳴き始め、頂いた虫博士が「だんだん二度鳴きするようになりますよ」と言われたように、此の所は立派に「チンチロリン」と唄っています。

 3日前からそこにスズムシが加わりました。聞きなれた「リーン、リーン」です。
 虫籠を近くに置いておくと、お互いに刺激するのか、競って鳴くような気がします。まさに共演です。
 こちらは「あれマツムシが鳴いているチンチロ、チンチロ、チンチロリン。あれ鈴虫も鳴きだした・・・」と小学唱歌で合唱。

 夕方、早く鳴きだすのはマツムシ、夜になってスズムシですが、スズムシは朝起きた時にもまだ鳴いていたりします。勤務時間帯が違うのでしょうか。

 いずれにしても、当分、清麗な虫の音の競演が聞かれそうで、有難いことです。今回は失敗せずに何とか産卵、来年の孵化につなげたいと思っています。

経常収支再論 2

2014年08月28日 10時41分27秒 | 経済
経常収支再論 2
 経常収支の赤字化の最大の原因は貿易収支の赤字ですが、原発停止により化石燃料輸入の急増、加えて価格上昇といった問題の外に、円安になったのに輸出が伸びていないことが指摘されています。 

 前回、輸出の数字を見ましたが、「伸びてはいるが伸び率は予想外に小さい」ということなのでしょうか。
 このブログでも国際投機資本の潜在的な動きとして「円安、国債暴落、日本売り叩き」などを過大に宣伝する向きもありますが、円安になれば、日本経済は息を吹き返すからそこまでの心配は当面杞憂でしょう」と書いて来ました。

 円安で、息を吹き返したことは明らかですが、円安で国際競争力が強くなったはずの輸出はどうなんだという意見は当然出るでしょう。円安がすぐに輸出増に反映する部門もあります。今輸出が伸びているのは、そうした部門でしょう。しかし、すぐには変化に対応できない種々の事情もあります。その辺りを見てみます。

 20円幅の円安になった後も、企業の海外での工場建設のニュースは多く聞かれます。
 そうした動きの背後には、現地生産、現地販売という基本的な流れがあります。
 理由の第1はこれでしょう。世界経済の安定した発展を考えれば、海外への工場進出が増えるのはある意味で自然です。日本国内では、海外では出来ないもの、いわば明日の製品の開発・生産に注力すべきでしょう。

 第2の理由は、既に一部に見られますように、海外生産の一部を日本に引き揚げるという動きに関してです。規模の問題を含め様々な事情有之、国内生産に切り替えるのは簡単ではありません。例えば、いすゞがピックアップの生産をタイに移し、日産がマーチの生産を同くタイに移しましたが、それぞれ十分な時間をかけてのことです。
 再び国内生産に移そうとしたら、為替レートだけではなく、様々な事情と将来予想を考慮しなければなりません。そうした決定にはそれなりの条件と時間が必要です。

 第3に理由は、この円安が安定的に維持されるかどうかという問題です。この2年ほどは何とかなっていますが、好調と言われるアメリカ経済は経常赤字の拡大を伴うようです。数年の内にはまたドル暴落、円高襲来の危険性はゼロではありません。

 企業はこの辺りを十分に睨みつつ、国内生産か海外生産かを選ばなければならないのです。容易ではありません。

 振り返ってみれば、円高に苦しんだ頃、日本はGDPの2~4パーセント、年間10兆円とか20兆円の経常黒字を計上していました。今、経常収支がトントンになって、海外の機関投資家は、円を買っていいものかどうか、多少は考えるでしょう。

 赤字の政府が無暗に金を使うのは問題としても、アメリカへの忠告も含めて、アメリカ国債を少し売れば(アメリカに貸した金をちょっぴり返してもらう)済む程度の経常赤字が、時には出たとしても、日本は経常収支を常時垂れ流す国にはなりそうもありません。
 それだけ日本は真面目に頑張っています。落ち着いて先行きを見て行きましょう。

経常収支再論 1

2014年08月27日 12時59分18秒 | 経済
経常収支再論 1
 この春、5月16日に「経常黒字急減の読み方」を書かせて頂き、経常収支への注目は大事だが、余り心配の必要はなさそうとうい指摘をさせていただきました。
 このブログでは、一国経済を論じるとき、「経常収支」を極めて重要な指標として見ています。
 企業で言えば、経常赤字の企業は安定した存続は望めない、家計で言えば、家計収支が赤字なら、貯蓄を食い潰すか借金するかで、いつかは行き詰まる、国も同じです。

 その意味で、日本の経常収支が急減し、今年の1-6月は5000億円の赤字で、昨年の7-12月の800億円から大幅増といった状態を心配する声もあるようです。

 ご存知のように経常収支は貿易収支と投資収支(第一次:投資収支、第二次:対外援助収支など)、サービス収支で構成されますが、昨年来の経常赤字の主因はご承知の化石燃料の輸入増と価格高騰です。
 昨年上期までは貿易収支の赤字を投資収支の黒字で賄って余りがあり、経常黒字を維持していましたが、貿易赤字が増えすぎた結果です。

 こう見て来ると、日本の経常黒字は、これからますます大変かなといった気持にもなりますが、統計その他の動きを見れば、私はそう心配の必要はなくて、おおむね望ましい方向に動いているのではないか、などと私は楽観しています。

 最近の経常収支の動きも、今年1月の大幅赤字のあと2-6月は小幅ながら黒字です。
 確かに円安で急伸するかと思っていた輸出は、それほど伸びないようですが、貿易統計(かつての通関統計)を見れば、2013年は円安の追い風で9.5パーセント増、今年は円安の直接の効果は消えましたが、最近の7月の速報では、前年同月3.9パーセント増で、政府の経済成長見込3.3パーセントを上回る伸びです。

 同じ統計で輸入を見ると前年同月比3.4パーセント増で、電子機器や同部品は2ケタの伸びですが、鉱物性燃料はマイナスに転じています。
 確かに製造業の海外移転で、かつてに比べれば輸出は伸びず輸入は増えるといった傾向はありますが、(次回検討します)この調整には些か時間が必要でしょう。

 しかし、基本的には、日本経済は健全な動きを示しているようですし、いつも指摘しますが、余り経常黒字を出すことは、円の動向に良い影響はないので、十分に対外関係も考慮しながら、企業としては、慎重で着実な選択を、まさに「模索」していく時期ではないでしょうか。

軍隊と警察

2014年08月26日 09時56分10秒 | 国際政治
軍隊と警察 <2009年3月11日付のリメイク版>
 軍隊と警察はどう違うのでしょうか。
 
 軍隊は国と国との争いに備えるもので、一旦争いになれば出動して国のために戦うというのが昔から多くの人が認識している使命でしょう。
 国と国との争いですから、どちらが正しいとは中々決まりません。たいていは勝ったほうが正しいということになるのでしょうか。
 
 これに対して警察は、国の中で、国の定めるところに反するものがあれば、それは犯罪行為として取り締まるのが役割でしょう。したがって、どちらが正しいかはおのずから決まっていて、国は正しく、犯罪者は悪いのです。

 かつて、ソマリア沖の海賊対策に複数の国が軍隊を派遣し、日本も自衛隊が出動したと 記憶します。あれは本来、警察行動であるべきだと書きました。
 今、シリア、リビア イラクなどいくつかの国で内戦があります。国の警察活動で収拾できなくなったものを内戦というのでしょうか。
 内戦ですから、その国の中で解決出来ればいいのですが、多くの場合、いろいろな理由で外部の国が口出し、手出しをします。

 その場合も、内戦の仲裁のような仕事をして、何とか収めるのではなく、内戦のどちらか一方を援助する場合が殆どです。もう一方の側を援助する国が出てきたりもします。手は出さないが、カネを出したり、武器を売ったりして商売をする国も出てきます。

 国と国との戦争の場合もそうですが、内戦の場合も、どちらが正義かと決められません。双方がそれぞれの正義を掲げるのです。
 冷静に考えれば人類として実に情けない状態ですが、現状ではこれを合理的に解決する方法はないのです。

 翻って国の状態が正常な場合は、警察が問題を解決します。アメリカではミズリー州で、警官のやった事が非道だと混乱が起きていますが、結局は国が正邪の判断をするでしょう。

 国と国の戦争、国内で解決がつかない内戦といった問題を解決するには、国よりも一段高い統治組織があって、それが正邪の判断をして、収めればいいのでしょうが、今の世界ではそれが出来ていません。

 本来そうした役割を担うのが国連でしょう。国連が人類社会の代表として、正当性を確立し権威と力を持った国連警察が解決するというのがベストでしょう。しかし、現状では国連そのものが、国と国との対立の場になっているのが実態です。

 折角世界中が合意して国連というシステムを作りながら、今の人類にはそれを有効に機能させるだけの能力がないのです。
仏作って魂入れず、どころではなく、自動車は買ったが運転が出来ないといった方が適切かなと思われるような、本当に情けない状態です。

 国連中心を標榜してきた日本ですが、最近、紛争のどちらかに肩入れしようという人類社会の進歩に逆行するようなことになりそうな情けない選択が進んでいて心配です。

舛添都知事の健全な見識

2014年08月25日 08時20分58秒 | 社会
舛添都知事の健全な見識
 過日、8月3日付で「カジノで観光客を・・・?」を書かせて頂きましたが、この度報道で、舛添都知事が、カジノに否定的な見解をお持ちで、候補地でもあったお台場の土地を別用途に決めたと聞き、現知事は健全な見識をお持ちと知り、何となくほっとしたというのが本音です。

 舛添都知事は、「カジノは賭博」と指摘し、「青少年などに有害」と言われたようですが、青少年だけでなく立派な大人にも結構有害な場合が少なくないでしょう。
 賭け事をまともな行為とする考え方は、もともとイギリスの競馬などからの外来文化で、日本にはなかったように思われます。

 もちろん賭博はありましたが、基本的に「どば(賭場)」は非合法な存在でした。江戸時代にも「富くじ」はありましたが、落語の種にはなっていますが、積極的な財政再建策として後世に語り継がれるのは矢張り長岡藩の「米百俵」や米沢藩の上杉鷹山の治績でしょう。

 舛添都知事はさらに「カジノがないと日本経済は甦らないという人もいるが、そんなものはなくても、日本経済は甦る」という趣旨のことを言われたようですが、そうした気概こそが今、日本には必要なのではないでしょうか。

 カジノがなくても日本には世界に誇る優れた観光資源やモノづくりの成果、多様な無形の文化が存在しますし、経済発展に必要なのは、ギャンブルによるあぶく銭や、博打の胴元になって儲けることではなく、技術開発や生産活動における、真面目で勤勉な努力でしょう。

 矢張り、リーダーが優れた見識を持つことが大事で、ギャンブルで東京を賑やかにしようなどということを本気で考えるようなリーダーが続いたのでは、東京も堕ちたものだと嘆いておられた方も多いと思いますが、先ずは「良かったですね」と共に喜びたいと思います。

核分裂と核融合

2014年08月24日 09時44分45秒 | 科学技術
核分裂と核融合
 専門外ですが、今回もエネルギーに関わる科学技術の問題を取り上げました。
 原発への対処は、恐らく今日の日本の最も困難な経済と科学技術の問題でしょう。今の原子力発電は核分裂という現象を利用しています。

 一口で言えば、ウランやプルトニウムを利用して(ウラン濃縮など)ウラン235などの核分裂物質(放射性同位元素)を作りその分裂時に出すエネルギーを利用して発電するというこ仕組みです。

 核分裂物質は原子核にある中性子を放出して崩壊していくわけですが、中性子は他の放射性元素に当たって核分裂を促すとともに、放出された中性子はE=mc² の公式にしたがってエネルギーとなり膨大な熱を出すという訳です。

 しかも核分裂物質は崩壊を続けながら超長期にわたり放射線を出し続けるため原子炉で使えないレベルになってもその放射能ゆえに人体には有害なので、放射性廃棄物の処分が大問題になるわけです。

 放射能が低レベルになっても放射線が出る限りエネルギー源として利用するといった技術はなく、最高の放射能力を持つ時だけ利用して、後はお払い箱ですから、核分裂物質としても、「もっと使い切ってくれ」と不満を言うのではないでしょうか。

 核分裂をエネルギー源として利用するなら、とことん使い切る技術開発が必要なようです。使用済み燃料棒を水で冷やしていますが、冷やすより、その熱で発電できるはずですが、ペイしないというのでしょうか。
 いずれにしても核分裂物質は超長期に亘り分裂を続けるのですから、それをエネルギー源にしようというのなら、最後まで面倒を見る心構え(技術開発)が必要なのでしょう。

 ところで、核融合の方は全く違います。基本的には、太陽は内部で4個の水素原子が融合してヘリウムの原子核になる核融合反応で、その時減る質量がエネルギーに変換され、あの膨大なエネルギーを出しているという原理を、地球上でやろうという試みです。

 技術的には大変難しいことのようですが、水素もヘリウムも大変安定した元素ですから、核分裂のような後腐れの心配はありません。

 素人目には、核分裂の後処理で、いくらかかるか解らないカネを使うより、核融合の技術開発にカネを使った方が前向きでいいと思うのですが、既に核廃棄物が出てしまっているので、矢張りそちらも何とかしなければならないわけです。
 それなのに、電力会社や政府はもっと核廃棄物を出そうとしているようで、経済的にも科学技術的にも何か勿体ない話になっているような気がします。

蓄電・発電の新しい試み

2014年08月23日 16時37分53秒 | 科学技術
蓄電・発電の新しい試み
 このところ、日本経済の先行きについては明暗が交錯しているようです。私自身は、円高の制約さえなくなれば、日本人の勤勉さとその努力によって、長期的に安定した発展が期待できると思っていますが、国際経済、国際情勢についての不安はなくなりません。

 残念ながら、現状では国際面で日本の出来ることは限られていますから、それはそれとして、日本としては真面目な努力を続ける以外の選択の余地はないと思いますが、そうした意味で、このところ、電力供給に関する大変意欲的なチャレンジが報道され、矢張り日本の取り組みは素晴らしいと感じているところです。

 その一つは、極めて安全な大容量蓄電装置の誕生です。
 これはレドックス・フロー電池というもので、報道によれば、40年ほども前にアメリカのNASAが基本原理を考え出したものだそうですが、住友電工と北海道電力が協力し、この度世界に先駆けて実用化の装置の起工式を行ったのだとのことです。

 特徴は、従来の多くの電池に共通な発火の危険性が全くないこと、装置も大きいが供給エネルギーの量も大きく(今回の装置は6万KwH)、しかも劣化がほとんどなく、セパレータなどのメンテナンスを行えば数十年たっても同じ性能を維持するということです。

 この量産体制を整えたのは、世界で住友電工だけで、今後、サイズの小型化、生産のコストダウンの可能性も高く、国際的な受注を期待できそうに思われます。
 ドイツで発明されたローリーエンジン実用化に成功したのは世界でマツダだけ、といったかつての話を髣髴させます。

 もう1つは、多様な再生エネルギーを組み合わせて使う「組み合わせ発電」の試みです。これは東芝と神戸製鋼所が開発した「風力」、「太陽熱」、「木材資源」の三者を組み合わせで安定した発電を可能にするシステムで、既に淡路島に設置し、来年3月まで実験運転を続けるというものです。

 晴れた日は太陽熱を使い、雨が降れば地元の木材利用のバイオマスボイラー、風力発電は電力会社への売電と蒸気発生の補助電源に活用、代替フロンを使ったバイナリー発電機で発電をするという仕組みだそうです。

 実験装置の規模は数十軒の家庭の電力をまかなう程度ですが、地域の特性をいかした電力の地産地消を目指した動きで、山間部などでの利用が期待されます。

 蓄電の重要性はつとに指摘されるところですが、地域に似合った、地産地消型の電力供給システムも、今後ますます必要になってくるでしょう。
 
 最近の国際紛争には背後にエネルギー問題がある場合の多いことは誰しも感じるところですが、こうしたエネルギーに関する開発は、その意味で、国際紛争の縮小に貢献するかもしれません。また組み合わせ発電技術の高度化、コストダウンの推進などは、途上国援助にも大きな役割を果すのではないでしょうか。技術開発の更なる進展に期待するところです。

自己資本比率についての2つの見方

2014年08月22日 14時21分51秒 | 経営
自己資本比率についての2つの見方
 自己資本比率が高く、経営が安定している企業の例としてファナックを挙げさせていただきました。私は個人的にはこうした安定重視の経営の方が良い行き方ではないかと思っていますが、最近は、必ずしもそうでなくても良いとする考え方も、結構広範に存在するようです。

 それは、安定志向よりも、拡大志向、発展志向の経営ということが出来ると思います。
 例えば、1億円の資金があったら、その1億円で仕事をするのではなく、銀行から2億円借金をして、合計3億円で仕事をすれば、3倍大きな仕事が出来るという考え方です。

 端的に言えば、自己資本比率100パーセントで1億円の仕事をするか、自己資本比率33.3パーセントで3億円の仕事をするかの選択という事になります。

 最近流行の言葉で言えば、1億円の自己資金で、3億円の仕事をするは「レバレッジ3倍」という事になります。ご承知のようにレバレッジというのは梃子という意味で、梃子の部分の長さを3倍にすれば、3倍の重さのものを持ち上げられるのと同じことです。
 もちろん、3分の1の力ですから、3倍の距離、手を動かさなければなりません。

 ビジネスの場合で言いますと、借金の規模を、大きくするだけ大きな仕事が出来るわけです。自己資本比率10パーセントにすれば、10倍の規模の仕事が出来ます。
 その場合は手を動かす距離が10倍になる代わりに、企業として取るリスクの大きさが10倍になるという事でしょう。

 リスク10倍というのは、あまり適切ではないかも知れません。巧くいけば10倍儲かる、失敗すれば10倍損するという事です。株の信用取引をおやりの方は先刻ご承知です。

 自己資本比率重視の見方では、自分の金でやるのだから、思い切ってリスクも取っていける、たとえ失敗しても、再起は十分可能といった主張が出来るでしょう。
 レバレッジ重視の見方では、出来るだけ大きな仕事が望ましい、借金に頼る危険はあるが、それだけ失敗しないように考えるようになる、仕事によりやり甲斐が生まれる、などという主張が可能でしょう。

 もう一つ、借金には利息が付きますから、利益が出ても、利息分は差し引かなければなりません。しかし今はゼロ金利時代で、利息は極めて低いので、レバレッジを聞かせる効果は大きいのも現実です。

 アメリカ式の経営は、かつては自己資本比率重視でしたが、最近はレバレッジ重視になってきているようです。
 一方日本の経営はかつては(メインバンク頼りの)借金経営が一般でしたが、最近は自己資本重視の経営が主流になってきているように思われます。

優良企業のバランスシート

2014年08月19日 09時28分52秒 | 経営
優良企業のバランスシート
 財務の専門家が、企業のバランスシートを開いて、最初に見るのは右側、貸方の総合計(総資本)とその下半分にある資本の部(自己資本)でしょう。
 もちろん見るだけではなくて、その両者の関係、割合を見るわけです。具体的に言えば、総資本の中で、自己資本が何パーセントを占めているかです。

 この比率が財務比率の要である「自己資本比率」です。数式で書けば、

自己資本比率(%)=自己資本/総資本×100  

という事になるわけですが、この意味するところは、会社の活動のために使っている金のうち、自前の金は何パーセントかという事です。残りは「負債」、借金、他人の金です。

 借金の多い会社は、財務的には経営が不安定です。自己資本が多いほど経営は安定しています。
 私もB/Sを見ると、先ず総資本と自己資本を比べて、自己資本が総資本の半分近くか、半分を超えていれば(自己資本比率50パーセントか、それ以上)、これは割合良い会社だなと判断します。
 さらに昨年のB/Sがあれば、昨年の自己資本比率と今年の自己資本比率を比べてみて、今年の方が高くなっていれば、経営状態も順調だなと判断します。

 株式市場でも、自己資本比率の高い会社は、通常、株価も高く、配当率も高く、一般的には配当利回りもいい場合が多いと言えるでしょう。

 自己資本比率が高くて有名な企業としてよく例に挙げられるファナックは、何時も自己資本比率が90パーセント前後で、ほとんどすべて自前の金で仕事をしているわけですから、最優良企業の代表格で、絶対安心できる会社などといわれます。

 一方資産の部(借方)の中身でもいろいろなことが解ります。
・JRやコンビニのような掛け売りのない会社は「売掛債権」(売掛金・受取手形)が少ない。売掛債権の多い会社は、運転資金が多く必要になるし、販売先の経営不振の影響を受けやすい、
・棚卸資産が多い会社は、その分運転資金が多く必要で、また不良在庫などがある可能性があるので、棚卸資産はスリムの方がいい。JIT(ジャストインタイム=トヨタ方式)は在庫のスリム化の教科書で、世界中で真似されている、
などなど。

 こうした資産の中身の構成は、業種や業態によって大きく異なりますから、比較するときは同じ業種・業態どうしで比べるか、同じ会社で、年々改善が進んでいるか(時系列比較)どうかを見ることが大切です。

 これ以上の分析は、売上高や付加価値といった「損益計算書」の数字との関連で分析しなければなりません。

 ここでは、先ずは「バランスシートを見たら自己資本比率確認」だけでも、会社の 基本的な状態は見当がつくという事をご理解いただけたらと思います。

バランスシート(貸借対照表)の原理

2014年08月18日 10時02分55秒 | 経営
バランスシート(貸借対照表)の原理 <2008年3月16日付のリメイク版>
 もう疾うにお馴染みの方には、初歩的なことを書いて申し訳ありません。最近政府もNISAなどで、株式投資を勧めていますから、多少でも何か参考になればと思って、改めて取り上げてみました。

 バランスシート(B/Sと略されます)は、今その企業が財務の面で、どんな状態にあるかを解り易く示したものです。

 個人でも、財産と言えば、現金、銀行や郵便局の貯金、株式、国債といった現金化しやすいものと、持ち家などのすぐには現金にならないものがあります。前者は流動資産、後者は固定資産です。
 通常はこの合計が自分の財産ですが、他方、住宅ローンなど借金が残っていれば、それは負債です。前述の財産から借金の残高を差引いたものが「正味の財産」になります。

 企業でも基本は同じです。B/Sを見ると、左側に「借方」(資産の部)というのがあって、右側に「貸方」(負債および資本の部)があります。
 これらも、あなた個人の財産を考えた場合と同じで、原理はきわめて単純。「資産の部」は、現金にしやすい「流動資産」と、工場や本社ビルといった「固定資産」の合計です。
 負債の方は、個人の場合の借金・ローン残高に当たり、仕入れ先への買掛金や銀行からの短期・長期の借入金などです。資産総額から負債を引いたものがその会社の正味の資産(自己資本)で、個人の正味の財産に当たります。

 こんな風にも言えます。現実に活用しているものが「資産」で、そのために調達して寝かせているお金が「負債および資本」です。だから左側の借り方と右側の貸し方の金額は必ず同じです。資産は目に見えますが、資本は目に見えないとも言われます。

 少し中身に入りますと、企業はお金を使って(運用して)仕事をしています。そのお金をどんな形にして使っているかが「資産の部」(借方)に示されています。現金や預金で持っていたり、売掛金になっていたり、材料や仕掛品や製品在庫になっていたり(流動資産)、工場や機械、本社ビルになっていたり、関係会社の株だったりします(固定資産)。

 ではそのお金をどこから調達してきたのか。それを示すのが「負債および資本の部」(貸方)です。買掛金や銀行からの借金、社債などの外から調達した分が他人の金、つまり「負債」(他人資本)です。自前で出している金が「資本の部」(自己資本=資本金+これまで蓄積してきた積立金)です。自己資本と他人資本を合わせて総資本です。
 
 余談ですが、バランスシートを発明したのは、イタリアの学者・修道僧で、レオナルド・ダ・ヴィンチとも親交があったといわれる、ルカ・パチョリという人で、この貸借のバランスは神の摂理と考え、スンマ(算術・幾何・比及び比例全書)という大著(1494年)を書き上げています。

 次回は、このB/Sから何が解るかを見てみましょう。

ゼロ金利と株の利回り

2014年08月17日 12時04分39秒 | 経済
ゼロ金利と株の利回り
 超低金利、ゼロ金利の問題についてはこれまでも種々書いて来ました。
 何故こんなに日本の金利は低いのか。デフレの時は致し方ないとしても、政府も日銀もデフレ脱却と言っているのに、定期預金1年物の金利は0.025パーセント、銀行に100万円預けても、1年たって、書き換えに行けば、電車賃・バス代で利息はマイナスでしょう。

 国債金利も0.5パーセント、定期預金よりはいいかもしれませんが、これではほとんど増えません。定期預金や国債を持っている人は、私も含めて、「増えなくても減ることはないから」という意味で持っているのでしょう。

 ところがネットで、上場企業の配当利回りのランキングというのを見てみると4パーセント前後の利回りなどという株ゾロゾロあります。3パーセント台は数知れず(?!)。
 「利回りが高くても株価は下がることが多いから危険」という意見も多いようですが、この会社なら潰れないと誰もが考える会社もいくらでもあります。株が上がればダブルでプラスですが、庶民はリスクには敏感で、「増えなくても減らない」を選ぶのでしょう。

 周囲の人に聞いてみても、「株は大体は損するね」「損得トントンでも、手数料や税金だけマイナス」「株やってる?深手を負わない内に止めとけよ」などといった意見が多く聞かれます。儲けた人は黙っているからかもしれませんが。
 失われた20年はひどかったですが、昨年来株価は上げ基調です。政府もNISAをやったり、株式市場に年金原資をもっと投入しようなどと株価引き上げに熱心です。

 冗談を言えば、国民の貯蓄が挙って株式投資に向かったら、国債の引き受け手がいなくなりますよ、という事ですが、矢張り多くの国民は「安全第一の国債・銀行預金」のようです。

 日本人の貯蓄は伝統的に安全追求型で、株式投資は少ないのですが、その背後には日本人の堅実さ、真面目さ上がるのでしょう。ギャンブルは不道徳といった観念があるのかもしれません。

 でも株の配当は、ギャンブルではありませんし、上記のような利回りなら、株式投資がもう少し注目されてもいいような気がします。
 背後には、日本の株式市場も国際投機資本の掌中、アメリカ市場のコピー、日本経済の動きをなかなか反映しない、といったマネー資本主義の潮流(跳梁?)もあるのでしょう。

 さらには政府や証券会社が「株を買え」と勧めるときは株が高い時ですから、結局、高い時買って低い時に売ることになって、何時も損する、といった長い経験が染みついているのかもしれません。
 政府も証券会社も、日本経済の成長発展に役立つような、実体経済重視の堅実な投資の在り方を中心に、株式市場政策を考えるべきで、取引高が増えさえすればいいなどという、今様マネーゲームに踊っては、良いことはないのではないでしょうか。

アメリカの雇用統計とアメリカ経済

2014年08月15日 14時55分37秒 | 経済
アメリカの雇用統計とアメリカ経済
 前々回まで2回、雇用の発生について見ましたが、今回はアメリカの雇用統計です。
 国際経済の場でみると、今最も注目されているのはアメリカの雇用指標でしょう。アメリカの雇用統計は毎月最初の金曜日に発表されますが、世界中のトレーダーやギャンブラー(失礼)が、挙ってそれに注目しています。

 アメリカの雇用統計は、アメリカ経済の動きを端的に反映するのという事で、重要なのは、その数字いかんに、世界の為替レートも株価も敏感に反応するからです。

 本来雇用指標というのは景気の遅行指標で、経済が順調であれば雇用が増え、不調なら増えない(減る)という事で、景気の動きを検証できるという事なのですが、最近のアメリカ雇用の見方はそうした伝統的なものとは大分違います。

 今のアメリカ経済の見方は「消費中心」ですから、雇用が増えれば消費が増える、消費が増えればアメリカのGDPが増える、景気が順調に回復、となるわけです。

 そうなると、それに真っ先に反応するのがマネーマーケットです。まず為替レート、FXではpips単位(ドル・円なら1銭単位)の動きでもレバレッジを利かせた架空市場が動きます。当然株価も動きます。

 こういう取引はコンピュータがプログラム通りに、その瞬間に最も利益が出るように通貨や株や関連デリバティブを売買するのですから、実体経済とは無縁です。サイコロの目の代わりに、雇用指標という予測しやすい数字を利用する(ギャンブルは賭博場で1-3)だけです。

 これは、繰り返し書いて来ましたように、マネー資本主義の生んだ鬼子で、リーマンショックやヨーロッパ金融危機を演出し、批判は多いのですが、規制は難しいようです。

 株価を上げて第3の矢の足しにしたい安倍政権は、これを巧く利用したいと思っているようですが、提灯をつけるのでは、本体(米系資本)にはとても敵いません。

 鬼子の跳梁は別として、雇用が消費に繋がり、アメリカ経済の回復に繋がるというのは、それなりの経済論、経済予測でもあります。しかしここにも落し穴があります。

 金融取引ほどではありませんが、今日のアメリカ流経済論は、矢張り短期的視点が特徴です。当面良ければ、そのあとはまた考えよう。という事でしょうか。

 アメリカはテーパリング(信用拡大の抑制)をやって、それでも景気が落ち込ませないという難路を歩きつつ、何とかうまくいって、ゼロ金利政策脱出も可能と言っています。

 それが巧く行けば、短期的には、それも結構でしょう、しかし、そうした消費拡大、経済拡大の背後で、拡大に追いつかないのが生産力、競争力です。
 その結果は経常収支の赤字の拡大です。シェールガスも出て助かっているはずですが、IMFの予想によれば、今年のアメリカの経常赤字は、昨年の3,793億ドルから3,911億ドルに増加するそうです。

 赤字は毎年外国からのファイナンスで埋めなければなりません。もうそんなに簡単にアメリカに金を貸す国もないでしょう。
 こう見て来ると、アメリカがTPPでガムシャラに押してくるのも解る気がします。

平和を創るのはなにか:8月15日を前に

2014年08月14日 10時18分45秒 | 国際政治
平和を創るのはなにか:8月15日を前に
 今年も8月15日が巡ってきます。69年前のあの日本中が晴れて暑かった日を境に、日本は歴史的な大転換をし、「争いをしない国」に生まれ変わりました。
 その後も世界にはいろいろな争いがありましたが、日本人は平和に過ごすことが出来ました。

 日本が国として「戦争はしません」と宣言したことは、絶大な力を持ったのです。今の世界は、種々問題はあるにしても、ルールも何もない弱肉強食の世界ではありません。 すくなくとも、国連もあり、国際法もあり、国際司法裁判所もあります。戦争をしないと宣言した国に戦争を仕掛けることは、世界の世論も認めないでしょうし、容易にできることではありません。

 かつては多くの人がそう思っていたかもしれませんが、強い武力を持つことが平和につながるという考え方は、次第に誤りだったという事が理解されてきているのではないでしょうか。

  今も毎日、TVで紛争地帯からの報道があります。そこでは、生活を破壊された人、家族を亡くした人、けがをした人、祖国に住めず難民になった人などが、一様に、戦争は止めてほしいと言っています。国民の大部分は「戦争は止めてほしい」と思っているのですが、一部に、戦争をしてでも、自分の主張を通したい、と考える人がいるのでしょう。

 そうした問題に対しては、「オレが出て行って事を収める」というのではなく、国連にその機能をしっかりと持たせるべきでしょう。
 もちろん、「国連はそこまで機能していない」という意見は多いでしょう。ならば、国連に頼るのをやめるのではなく、そうした機能を果せる国連にするためにはどうするかをみんなで考えるのが本当でしょう。

 今、何か世界が次第に不安定になっているような様相が見えています。ここで人類が今までと同じ過ちを繰り返すことは何としてでも避けるべきでしょう。
 幸い、日本は戦後の69年、そのために役立つ経験をしてきました。日本の為政者も、全ての日本人も、自分たちの本当の気持ちと、戦後の経験を素直に表現し、世界の本当の平和に向けて役立つような発言や行動をすべき時ではないでしょうか。

2014年4-6月期GDP急落の読み方

2014年08月13日 11時38分15秒 | 経済
2014年4-6月期GDP急落の読み方
 今朝ほど、甲子園の野球中継を見ていたら、テロップで「ニュース速報」が入り、4-6月の実質GDPが年率‐6.8%と急落したことを報じていました。
 すでに昨日、株式市場がこの辺りを察知し、弱気に転じたなどの報道もありましたが、この報道や、その後ネット上の各社の配信を見て、「やはりマスコミだな」と思わざるを得ませんでした。

 マスコミは真実の報道よりも、人を驚かすような報道を優先するのが当然ですから、まあこんな数字だろうなと思いながら、内閣府の発表の数字を見ました。結果はそんなに驚いたり、景気を悲観したり様なものではありませんでした。

 消費税導入で4-6月期の需要は反動減と皆さん解っています。しかし「マイナス6.8パーセント」と言われるちょっとビックリです。原統計のは4-6月の数字は前期比「マイナス1.7パーセント」ですが、これを年率に換算した数字(これが1年間続いた場合)を「瞬間風速」と言って、最も極端な数字になるので、解り易くするために使う場合もあります。

 時系列の統計は基本的にそうですが、各月統計でも四半期統計でも「前期比」と「前年同期比」という数字が両方出ています。前期比は、前の月に比べての上がり下がりをパーセントで表示したもの、前年同期比は前の年の同じ時期との比較です。

 季節によって、需要や値段が動くような場合は、需要期になると売上増加や値上がりが当然ですから、前の月に比べるより前年同月( 期 )と比べたほうが基調的な傾向が知られます。その為に前月(期)比では「季節調整済み」という数字も発表します。
 前年同月(期)比較の場合は当然、季節調整の必要はありません。

 今回の四半期GDPでは、季節要因ではありませんが、消費税3パーセントアップという特殊要因があります。誰でも、そのせいで1-3月は駆け込み需要があり、4-6月は需要が減ると考えています。
 報道のGDP統計は「実質値」ですから、消費税による値上がりの影響は消されていますが、購買心理の影響は当然出てきます。

 この影響は、需要の増えた1-3月期と減った4-6月期を比べれば、当然大きくなります。
 一方、前年同期比で見れば、例年の傾向に比べて1-3月は増えて、4-6月は減ったという当然の変化の様子が見えるはずです。

 という事で実質GDPの動きを「前年同期比」で見てみますと、2013年は4-6月の1.2パーセント増から、7-9月2.3、10-12月2.5と尻上がりに増え、今年1-3月は3.0パーセント増とピークに達し、4-6月は矢張り減って、マイナス0.1になっています。
 因みに内需だけ見れば、-0.0(小数点以下2桁目の数字が4以下ということ)で昨年の4-6月とほぼ同じです。

 この3月まで駆け込み需要が増えたことの反動があって、この程度ですから、消費も含めて経済の基調は、現状では矢張り「強いようだな」と私は感じています。
 皆様はどう判断されるでしょうか。