tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

輸入物価値下がり、企業物価上昇: 2022年8月

2022年09月13日 19時42分12秒 | 経済
今日、日銀から8月分の輸入物価指数と企業物価指数が発表になりました。例月通り、輸入物価数、企業物価指数と総務省の消費者物価指数(8月分東京都区部速報)の三指標を並べて、日本の物価動向の現状を見てみましょう。

上のグラフは、日本でも物価上昇が始まった2021年の1月の3つの物価指数を、今回のインフレの出発点として基準時点(=100)とし、3物価指数の上昇がどんな関係になるかグラフで毎月点検しようというものです。

         主要3物価指数の月次推移

                     資料:日本銀行、総務省
まず輸入物価ですが、これは8月は反落しました。原因は、石油、石炭、天然ガスの価格が反落したことが大きいようで、一方食料品(小麦、豚肉、水産物)などは値上がりが続いているようです。(食料品については、日本の消費者物価にもこの所影響が出ています。)

石油・天然ガスの価格は、ロシア次第、OPEC次第ですから、今後の事は解りませんが、何とか上昇が止まれば、国際的なインフレ事情も一息つけるでしょう。

企業物価指数についてはマスコミの見出しで、115.1過去最高、前年比9%上昇、という事になっています。上のグラフでは企業物価が少し上がり始めた2021年1月基準なので、上昇率は114.2になっています。

日本は無資源国ですから、輸入物価の影響は厳しく受けます。ただし末端の消費者がインフレ嫌いですから便乗値上げなどは出来にくい国で、輸入物価の企業物価への影響はほぼ合理的な範囲にとどまっていると言えるようです。

メノコで計算しますと輸入物価も企業物価もほとんど「モノ」の値段でしょうから、こんな計算になります。

日本経済の全体であるGDPの半分強が人件費(雇用者報酬)ですから物の部分が半分として輸入依存度はGDPの1割ですから、物の分の20%が8割値上がりしますと物全体の価格は16%値上がりすることになるわけです。

企業物価指数の12%程度の値上がりというのは在庫時間のタイムラグもあり、輸入価格の
国内価格への転嫁の遅れもあり、資源の節約(資源生産性の向上)で吸収している部分もあるのでしょう。ほぼまともな水準ではないでしょうか。

という事で消費者物価指数について見ますと、GDPの1割の価格が80%上れば、最終的にはそれだけで8%の物価上昇が起きる計算ですが、上述のタイムラグ、価格転嫁の遅れ、生産性の向上などで、まだ3%程度しか上がっていないという事です。

総じてみれば、企業物価の場合は、そこそこ転嫁は行われているといえそうです。最も値上がりの大きい石油、ガソリンの関係で見ますと、業界は大変だと言って政府は補助金まで出していますが、元売り企業の決算は総じて好調、史上最高の利益といったところもあるようです。

一方消費者物価の場合は、相手が収入の増えない所帯や個人ですから価格転嫁が困難であるのと同時に、コロナ禍で消費意欲が阻害されるという格別の問題が価格上昇の大きな障害になってきているといった様相が感じられます。

今起きている、消費物資、消費サービスの値上げの波の広がりは、アベノミクス時代から蓄積している、じりじりと高まる海外価格、異常な消費不振で上げられない小売価格という、いわば長年の鬱積が、今回の世界的インフレの中で表出したものでしょう。

この始末をどうつけるか、3本、3色のグラフを毎月引きながら、数字は嘘を言わないが、対応すべき人間の理解(知恵)不足が、日本経済の低迷を齎しているのではないかなどと考え込んだりしています。

2022年7月家計調査:消費性向上昇傾向か?

2022年09月12日 14時15分34秒 | 経済
先週9月6日に、総務省から7月分の家計調査が発表になりました。

マスコミにはあまり大きく取り上げられていませんでしたが、このブログで毎月観測している「2人以上勤労者世帯」の消費性向に何か少し変化が出てきたような気もしますので、そのあたりも含めて報告しておきたいと思います。

2人以上世帯全体の数字を見ますと消費支出は7月は285,313円で、前年同月比は名目6.6%の上昇、実質3.4%の上昇でした。

この差の3.2ポイントは、物価上昇分ですが、消費者物価上昇率の7月分2.6%より高いのは、2人以上所帯のウェイトでは物価序章が消費者物価平均よりきついという事のようです。

コロナの感染状況が深刻な中で、消費支出が増えているという事は、コロナ感染の心配もさることながら、消費者物価の上昇傾向がかなりはっきりしてきたことから値上がりしないうちに買っておきたいものもあるという事かとも思いました。

支出の中身で増えているものを見ますと住宅関連(含維持修繕など)、被服・履物、交通通信、教養娯楽などで、値上がりよりも、消費の積極化の影響もあるような感じの動きです。

収入と支出の両面が解る2人以上勤労者世帯について見ますと、実質実収入は、消費者物価上昇の影響が大きいようで4月以降毎月、前年同月比マイナスで、7月はマイナス4.6%と落ち込んでいます。

世帯主の収入減を配偶者、その他の家族の収入で補填するといった動きもみられます。

可処分所得は527,343円、消費支出は317,575円で(いずれも名目値)例月見て来ています「平均消費性向」は60.2%で、これは前年同月の56.2%を4.0ポイント上回っています。

この所の平均消費性向を見ますと、前年同月比で、4月1.8ポイント、5月1.2ポイント、6月2.0ポイント、7月4.0ポイント前年同月を上回っています。

オミクロンの猖獗、消費者物価の上昇傾向といった環境変化が、平均消費性向の上昇にどう影響しているかは、しかとは解りませんが、4カ月連続の上昇ですから、何か傾向的な現象のようにも見られなくもないようです。

未だ、8月以降の動きをみなければ、簡単に判断できる問題ではないと思いますが、消費性向の上昇は、消費不況の日本経済にとっては明るい材料なので、今後に注目していきたいと思います。

今年の「バケツ田圃』<完結編>

2022年09月11日 11時19分40秒 | 環境
皇居で天皇陛下が稲刈りをされたというニュースがありました。拝見して、鎌の使い方の鮮やかさに感嘆しました。
流石に日本国の天皇陛下です。

古事記によれば、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天孫(孫の瓊瓊杵尊(ににぎのみこと))の地上(日本)への降臨に際し下された「神勅」の冒頭は「豊葦原の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂の国は・・・」でして、「日本は豊かな稲穂のみのる国」という事になっています。(我々の世代は神勅は大抵暗記しています)

皇室が皇居内に田圃をつくり稲を育てるという優雅な儀式も、日本が、稲作によって立つ国という、古い歴史の思いを今に伝える奥ゆかしい伝統文化の象徴のように思えます。

それとは全く関係ないのですが、偶々今年、我が家では昨年秋に頂いた稲穂で、バケツ稲作を試みました。
このブログで何回か経過報告をしましたが、今回が最終回です。

前回書きましたように、少量でも籾から精米して食べるか、それとも、以前赤米を育てたとき、スズメ来訪に悩まされたこともあり、スズメを喜ばせた方がいいか家内と話し合っていましたが、結局「スズメを喜ばせましょう」という事になりました。
戦後食糧難の時、当時は農家の敵と目されていたスズメが重要なタンパク源だったこともあります。今になって供養です。

バケツ田圃の顛末の報告は、以下の写真をご覧ください。

穂が出始めたころ


穂は出ましたが籾はほとんど残っていません。


以下、スズメたちの喜んで活躍の姿です。



動き始めるかデジタル政府

2022年09月10日 11時42分06秒 | 政治
デジタル政府が少しずつ動き始めるようです。
報道によりますと、政府が公金受取口座の情報を自治体に提供するとのことです。年度中にが目標とのことでしたが準備が整ったので11月から開始するようです。マイナカードの活用範囲が広がります。

自治体で「公金受取口座」をマイナカードに登録すれば、国からの給付金などを受け取る際、申請書への口座情報の記載が不要になるわけですから、マイナカードを持っていれば金融機関の支店名や口座亜番号を記入したりする手間が省けるのでしょうから便利です。

今、政府は住民税非課税所帯に一律5万円のバラマキ給付を考えているようなので、早速それに役立つかもしれません。

政府は今後年金や児童手当などの 給付についてもマイナカードへの登録を検討しているとのことですが、持っている情報を地方自治体と共有するのはそれほど面倒なことでもないでしょうから、早期に実現してほしいと思うところです。
私なども、認知症にならないように気を付けてはいるつもりですが、なってしまってもマイナカードさえあれば、色々なことが家族にとって把握可能になるのは結構なことだと思います。

河野デジタル大臣は、「世の中の皆さんに、マイナンバーカードで便利になった、あるいは、デジタル技術を使って生活が便利になったと実感していただけるように頑張っていきたい」と述べたそうですが、それこそ本来のマイナカードの役割ですから、頑張って頂きたいと思います。

所で政府のデジタル化はマイナカードだけではありません。デジタル化が最も要請されるのは、先ず官庁統計でしょう。

アメリカの消費者物価指数の統計は明後日からの週に8月の数字が出るとのことですが日本で8月分が出るのは、今月の20日以降でしょう。アメリカは面積も日本の4倍で人口も3倍近い大きな国ですが、統計の発表は早いですね。多分デジタル技術っを上手く使っているからだと思われます。

日本の場合はまだ手書きで、郵便で送ったりしているので、建設受注統計のように、回答の遅れが、「それなら来たことにして推計値でも入れて早く集計しろ」「後から来たら消して直せ」という事で 消しゴム問題などの不正行為に繋がっているようです。

調べてみれば、デジタル機能を使った回答もできるようになっているとのことですが、現場がそれをほとんど使っていないのだそうで、デジタル化を遅らせているのは、こうした現場の遅れも大きいようです。

国民の頭がデジタル化していないのか、現場にとってデジタル化システムの使い勝手が悪いからか解りませんが、こうした問題は官庁統計の世界にはには沢山あるでしょう。

こうした問題も含めて、デジタル大臣の縦横無尽の活躍で、日本の政治、行政の効率化を大いに進めて頂きたいと思います。

政治と言えば究極は選挙のデジタル化でしょうが、先ずは国会の堂々巡りのデジタル化などは如何でしょうか。


ECB(欧州中央銀行)も0.75%の引き上げ

2022年09月09日 15時35分53秒 | 経済
EUのインフレは9.1%に達したようです。主因はロシアのウクライナ侵攻、それに発するロシア産原油、LNGの輸入がままならない事を中心にエネルギー価格の高騰、その他国際商品の値上りでしょう。

そうした中で、昨日(9月8日)、ECBは、インフレ対策として、政策金利を0.75%引き上げる事を決めました。

政策金利は0.5%から1.25%になり、銀行がECBに預金した場合の金利は従来のゼロ金利から0.75%になるとのことです。

0.75%の大幅引き上げはこれまで例はなく、まさに例外的な大幅引き上げですが、これはアメリカのFRBがすでに政策金利の0.75%の引き上げを2回連続でやっているという事実もあり、強力で即効性のあるインフレ対策を打ち出す必要に迫られてのことです。

アメリカ、ヨーロッパには1970年代の石油危機に端を発したインフレの抑制に失敗し、先進国病と言われたスタグフレーションに陥って、軒並みインフレ率と失業率の合計が20%に達するという状況に1980年代半ばまで苦しんだ経験があります。

今、急激なインフレに際して、この経験を繰り返したくないという意識は強いでしょう。
この意識と懸念を強く持ったのは先ずアメリカのようで、FRBのパウエル議長は、嘗てのボルカー議長の金利引き上げの手法の徹底活用を考えたようです。

ECBも、まさにこれに倣ったのでしょう。高金利による経済の悪化という犠牲を払っても、先ずインフレを抑えてしまう事が先決という政策でしょう。

アメリカの消費者物価指数の上昇は、一応7月には止まったように見えます、ただし、本当に止まるのかどうか来週発表の8月の数字が待たれるところです。

EUの消費者物価指数は8月速報で9.1%と史上最高に達していますが、今回のECBの政策金利の大幅引き上げの効果がどうなるか、確り見守る必要がありそうです。

金利引き上げの効果を引き出すうえで最も大事なのは、インフレに慌てて(便乗して)の買い急ぎ買い占めや、便乗値上げ、過度の賃上げなどをしないようにすることでしょう。

アメリカ、ヨーロッパの金融引き締めが、一般消費者をはじめ、企業や労働組合などの行動をより経済合理性のあるものにするよう効果を発揮することを願うところです。

日本は国民も企業も、労働組合もインフレ嫌いで、経済合理性のある行動をとることが出来ると思われますが、この所の多少の物価上昇もある中で、アメリカ、EUなどインフレ昂進の国との経済バランスの考慮の必要もあり、如何なる道を選べば、総てを丸く収めることが出来るか、政府・日銀は難しい立場にあるようです。

2022年4-6月GDP第二次速報

2022年09月08日 21時16分48秒 | 経済
今日、内閣府から、標記GDPの第二次速報が発表になりました。

第一次速報については、すでに8月6日に見て来ていますから、第二次速報まで報告しなくてもと思っていたのですが、大分数字が動いているので要点だけ書いておくことにしました。

数字は総て新聞発表用のGDP実質季節調整済み前期比です。
このブログでは、何時も前年同期比で原数字を使っていますが、前月比ですと季節による変化(年末や年始、ゴールデンウィークや夏休みなどで波があります)を均さないと増えた減ったの本当の姿が見えてきません。

ただ季節調整は過去の傾向の平均的な形を決めて、その季節の波で調整するのですからこの所のように季節よりコロナの波の方が影響が大きいような時は困るでしょう。

一次速報の時も「コロナ前を回復」と書いてありましたが、原数字ではまだまだでした。
しかし第二次速報ではGDPの前期比は一時の0.5%から倍近い0.9%になりましたからこれなら「コロナ前」回復になる計算です。

一次と二次の前期比伸び率を並べてみますと
GDPは0.5%→0.9%、年率にすると2.2%→3.5%の伸びという事です。国内需要と民間消費は共に0.5%→0.8%、これは家計最終消費支出が1.2%で変わっていないからです。

しかし、一次速報の1.2%という数字は、もともと結構な伸びで、これが年4回続けば4.9%成長です。

第二次速報で増えたのは、民間設備投資で、1.4%が修正されて2.0%になり、これがDGPを押し上げた大きな原因になってます。

そのほか、政府支出も0.6%→0.7%、輸入が減った(実質ですから)こともあって、全体の成長率が上がったという事です。

こうしてみますと。オミクロンの始まる前で、消費支出が堅調だったことが第一次から土台になっていて、その上に、企業の設備投資が順調に伸びたこと、つまり、消費、投資の両輪が回れば3~5%の実質成長は可能という事を見せてくれたのです。

政府はオミクロンと張り合って頑張ればいいと思っているようですが、他方では亡くなる方は増えているようです。そのあたりは、賢く、賢く、十分ガードを固めながら、誤りのないように進めてほしいと思うところです。

政権交代の目的は「変化・前進」でしょう

2022年09月07日 20時00分06秒 | 政治
安倍さんが、何か安倍さんなり成算を持って総理の座を降り、二階さんが、二階さんなりの判断で「君しか居ない」と言って菅さんが総理になり、自民党政権が次第に国民に「これでは駄目だ」と思われ、世論調査にもそれが出るようになって、岸田さんになりました。

「同じ自民党だから、今までと同じでいいの?」と言えば、そうではないのです。
国民は、今迄の延長では駄目だから、同じ自民党でももう少し国民がこれまでの閉塞感、ジリ貧感、不満足感から脱却出来るような政権担当者を望んでいたはずです。

そうした日本全体の雰囲気を、色々な自民党の人達もそれぞれに感じ取って、岸田さんが選ばれたのでしょう。

岸田内閣、最初の支持率は高かったですね。国民も、岸田さんなら何か今までと違った事をやってくれるだろう、聞く耳を持つ人だそうだ。などと噂しました。

モリ・カケ・サクラも頬被りでは済まさないだろう、日本学術会議の問題も、学会と政界の関係改善もやるだろう、賃金も上がるようになるかなんど、いずれにしても国民の声を聞いてくれれば少しは良くなるだろうなど、期待した人も少なくないでしょう。

確かに始めのうちは、国民の声を聞いてくれそうだというので、世論調査での支持率が高かったのですが。その後、残念ながら国民待望の岸田カラーは出てきません。

多くは述べませんが、期待外れの落胆が決定的にしたのは安倍さんの国葬問題でしょう。
ご本人の思い付きか、誰かの入れ知恵か、憶測は色々ですが、まず最小の経費を出して、後から何倍にも膨れ上がっても、「丁寧に説明して理解していただく」の一点張り。

丁寧な説明というのは「同じことを何回でも丁寧に繰り返す」という点は安倍方式の踏襲です。

コロナの全数把握をやめると突如言いだし、地方の圧倒的多数が反対しても、一度言ったら押し通す。相談も聞く耳もないようです。

折しも、積年の経済活動の歪みから消費者物価の上昇が広範に及び、先が見えません。国民に何か問いかける様子も、日銀と相談する様子もありません。出て来るのは低所得者に一律バラマキ、これまでと何も変わりません。

恐らく、岸田さんはいろいろ考え思い悩んでいるのでしょうが、自分の識見を発揮できるリーダーの立場が確立できていないからなのだろうと同情しますが、それではことは済みません。

国民の望んでいるのは、国民との対話が出来るリーダーでしょう。現状では、国民や労使との「対話」、「対話」です、「丁寧な説明」ではありません。
そしてその可能性もほとんど閉ざされているような感じを、国民は受け始めている事は世論調査の支持率に出て来ています。

岸田さんは総理なのです。岸田さんの本当のカラーを、思い切って見せてほしいと国民は思っているのではないでしょうか。

国民の期待に応えたときに、世論調査の支持率は確り上がるはずです。

これで日本経済復活になるのでは?

2022年09月06日 15時02分03秒 | 経済
為替レートが正常化した2013~14年からそろそろ10年になろうというのに、日本経済は相変わらず低迷を続けています。

これは多分、基本的な経済政策が誤っていたという前提で、これまでの失敗の分析の結果から、ではどうすれば上手く行くのではと考えてみたのが前回です。
今回は、結論から先にして、こうすれば上手く回るようになるのではないですかという点から入ってみます。

先日、トヨタと日鉄が鋼材値上げで合意したというニュースがあり、民間の知恵だと書きました。それもヒントになります。やはり価格機構をきちんと働かせないと、経済というのは巧く動かないという事のようです。

先ず、国際価格上昇で(円安は後述)、輸入物価が上がったら、その分は国内物価に転嫁していくべきでしょう。(ガソリン値上げ、鋼材値上げなどはOK)

そうすれば、輸入部門だけがコストを負担するのではなく輸出部門も高い原材料で作ることになります。それは当然で、世界中共通です。国際競争力には影響はありません。

消費者も高い物を買うことになりますが、これは輸入物価の高騰によるGDPの海外流出分を国民みんなが負担するという事で避けられない事です。
生産性を引き上げて、経済を成長させて、海外に値上がりで支払った分(GDP流出分)を稼がなければ、元の生活水準には戻らないのです。

嘗ての日本は、こういう場合、(賃上げもしましたが)頑張って生産性を上げ、経済成長で取り返していました。毎年確り賃上げをすることが当たり前という春闘が機能していたので、投資と消費がバランスよく伸びていたから成長したのです。

多分今必要なことは、毎年、ある程度の賃金上昇があるという状態を創りだしことでしょう。
政府の賃上げ奨励は着想はい良いのですが、環境条件を整備しないで旗だけ振っても労使は動きませんから賃上げは僅少で、消費は伸びず、経済は成長しません。

物には順序があって、まず、輸入物価を国内価格に確り転嫁する、現状それをやれば、国内物価がそれだけで3~4%上がるでしょう。
政府は慌ててはいけません。賃金決定は労使の仕事です。価格転嫁が順調に進んで家計が苦しくなります。おそらく翌春闘に向けて、労使の動きが活発になるでしょう。

こうして労使の自主的賃金決定の在り方の見直しの環境が整備されます。欧米では大幅賃上げで大幅インフレになりましたが、日本の労使は適正な範囲で妥結します。

円安の場合も価格転嫁をプライス・メカニズムに従ってきちんと価格転嫁を行えば、為替差益と差損は中和・キャンセルされて、円安分だけ物価が上がり、国民からの賃上げ圧力で労組は賃上げ要求を組むでしょう。その分物価が上がっても、円安になっているので国際競争力は変わりません。

付随して変えなければならないのは金利です。日銀はゼロ金利を見直し、国債や定期預金には適切な利息が付くでしょう。預金は黙っていても毎年増えるようになります。
そして、金融の正常化が進み、金融経済面も正常化するでしょう。

20数年来溜っていた原材料などの負担の価格転嫁が始まっています。消費者物価も少しは上がるでしょう。ここから、世間並み(世界並み)の半分ぐらいの賃金上昇でも、労使が自主的以賃金上昇を考えるようになれば、このほかの種々の問題も含めて、日本経済は多分大きく変わるでしょう。

経済政策は「総じて後追い」のこの所の政府ですが、どうでしょう、少し先取りに転換してダメモトと思ってやってみませんか。

経済政策の基本を変えてみたら?

2022年09月05日 14時52分44秒 | 経済
安倍総理、黒田日銀で、「プラザ合意」以降の「円高日本」という苦難を、バーナンキさんの示唆もあってでしょうか「2発の黒田バズーカ」で克服しました。

円レートは1ドル=80円から120円になり、円高という桎梏は解消、これで日本経済も順調にいくだろうと多くの人は思ったでしょう。

そしてその後10年近くが過ぎました。プラザ合意前の元気な日本を取り戻すかと期待されていたにもかかわらず、相変わらず日本経済は低迷、国民1人当たりのGDPの世界ランキングは下がるばかりです。

10年も低迷ですと、やっぱり経済政策が間違っているのではと考えざるを得ません。なんだかんだ問題はあってもよその国は経済成長していて、日本を追い越していくのです。

「何で日本だけ駄目なの」、「政策が悪いんじゃないの」という声はあるのでしょうが、「じゃ、こうすれば」という答えはなかなか出てきません。

理由を考えてみますと、日本人は真面目で、いろいろ工夫するので、悪条件の中でも何とか工夫してやるのに一生懸命で、大元の「悪条件」にまで気が回らないという事がありそうに思います。

平成不況の中でも、円高が元凶だから円高の是正が必要と考えるまでに30年かかりました。
今度は、円高は治ったけれど、10年も低成長・ゼロ成長というのは、経済政策の前提で大事なことに気が付いていないらしいという事になります。

ところが、それに気付いて直すべきだ考えないで、困った事があったらそこに手当てしようというパッチワーク(弥縫策)が経済政策だと考えているのが今の日本でしょう。

さて、それでは「是正すべき悪条件とは何か」です。この10年、現実に起きている現象から見れば、日本が他の国と全く異なっている点が1つあります。そこに何かヒントがあるはずです。

それは何かと言えば、既に皆様お気づきでしょう「物価」です。主要先進国が軒並み10%近い物価上昇の中で、日本はまだ2~3%。それでも日本政府は物価が上がって大変だと慌てています。(欧米主要国は苦笑かな?)

欧米主要国がインフレ昂進を心配するのは、賃金物価のスパイラルが起き、高物価国になって国際競争力を失うからです。(欧米の1970~80年代のスタグフレーション、政権交替の悪夢

日本の場合は労使が賃金物価のスパイラルについての十分な知識を持っているので、第二次石油危機以来その心配はありません。
そしてインフレを嫌うあまり、物価安定のために輸入物価が上がっても、国内価格に転嫁するのを抑えてしまうほどです。

そしてそのために国内の価格メカニズムが正常に働かず、付加価値配分に歪みが起きて経済の正常な活動を阻害し経済成長まで阻害する効果が出て来てしまう面が大きいのです。

2発の黒田バズーカの時も、当然上るべき物価が上がらず、輸出部門に差益が滞留、輸入部門に差損が滞留し、結果として1ドル80円が120円になっても物価はさして上がりませんでした。

その結果は、国内の付加価値の偏在をきたすとともに、物価が上がらない事から「賃金上昇への波及がなく」賃金上昇による付加価値配分の社会的均霑も起こらず、経済活動の阻害が長期に保持されたのでしょう。(最近の価格転嫁は当時からの分もありそう)

さて、これを直せば、日本経済は活性化して、成長経済を取り戻すでしょう。そのために何が必要か次回考えてみましょう。

世界はIAEAに強力なサポートを

2022年09月03日 11時33分38秒 | 経済
今月1日、IAEA(国際原子力機関)は、ロシアのウクライナ侵攻で戦争地帯になっているザポリージャ原子力発電所の調査に入りました。

映像ではグロッシIAEA事務局長を先頭に、ヨーロッパ最大級と言われるザポリージャ原発の調査に入る専門家チームの雄姿を映し出していました。

IAEAのチームが入った時も至近に砲撃があり爆発音がしたそうですが、戦場の原発に、国連を代表して安全性の調査に入る専門家チームの姿に深甚の感謝と敬意を感じました。

戦争という事態は、何が起きるか常識では予測できない場所でしょう。現地は今、ロシア兵の管理下にあって、ウクライナの従業員によって運転されるという状態とのことですが、占領軍が相手国の従業員を使って運転というのも、まさに異常事態でしょう。

もし原発に戦乱の直接の被害が及べば、ヨーロッパの広大な地域に放射能汚染の危険が広がることはすでにシミュレーションがされています。

着弾による損傷といった直接の被害が起きなくても、占領中のロシア兵による管理とウクライナの従業員の間に適切な意思疎通が保障されるかといった問題だけでも、状態は極めて危機的と言えるのではないでしょうか。

特にロシアの場合には、ウクライナ侵攻の状況いかんによっては、核戦力の使用もあり得るといった懸念を持たせるような発言がされているのです。

事は人類全体の危機に関わる問題です。IAEAが強い危機感を持って、ザポリージャ原発の調査に入ったこと、は人類の危機管理として極めて大事な一歩を進めたという事でしょう。

調査後 IAEAのグロッシ事務局長は、ザポリージャ原発にIAEAの専門化を常駐させる方針を示したとのことですが、こうした体制は絶対に必要なことでしょう。

国連のあるべき姿の本来からすれば、紛争地帯に原発などの核関連の何等かの施設があるような場合には、その範囲は紛争の場ではなくIAEAの管理下の特別な場所とすることが必要であり望まれるところでしょう。

今は、侵攻を仕掛けた国自体が、国連の常任理事国で、何事も拒否権で成立を阻む事の出来る国であるために、あらゆる不条理が罷り通っていますが、地球人類社会は、こうした困った状態を早期に解決する事を考えなければならないのでしょう。

IAEAのグロッシ事務局長以下の勇気に最大の敬意を表するとともに、地球人類が、その総意を持って、国連をより役に立つ組織に早期に進化させていくことを願うところです。

円安進行1ドル140円、日銀は放置?

2022年09月02日 15時41分35秒 | 経済
円安が進行しています。139円50銭超えるかといことで、少しモタモタしていましたが今日はスッキリ140円台に乗せ、15時半現在140円35銭です。

139円でも140円台に乗せても大きな変化ではないですが、やっぱり心理的なものはあるでしょうし、投機筋では1銭も大きいのでしょう。

140円台は28年ぶりだそうで、28年前は、バブル崩壊地価暴落の中で何とかやりくりの努力をしてきた長銀や不動産銀行がやっぱりアウトという事になった時でした。

今はそういった日本経済自体の問題は出はなく、アメリカの急なインフレ化を抑えるためのFRBの金利引き上げのとばっちりというのが主因です。

原因が日本かアメリカかは別として、為替相場があまり動くと実体経済に良い影響はないので、為替は安定が良いというのが一般的認識でしょう。

問題は、アメリカのインフレが急速で、それを抑えようというFRBの意思が強固で、「アメリカの企業や家計に犠牲が出ても」インフレ退治が優先といったパウエルさんの引き締まった表情です。

7月に、一見上げ止まったと見えるアメリカのインフレですが、行く先は未だ解りません。
それをこのまま止めたいというパウエルさんの一心が、余計な賃上げや便乗値上げは「許さん!」という気迫になっているのでしょう。

その気迫にマーケットは気押されて、未だ金利は大幅に上がると読んで、結果は異次元緩和の方針を一向に変えない日本の円は安くなるというのが物事の順序の様です。

ところで、アメリカの都合で円安に追いやれた日本では、輸出産業と輸入産業の収益格差がどんどん開きます。

国際的物価高と一緒になって我慢も限界、少しずつ価格転嫁で物価が上がると、微成長、僅少賃上げ、ゼロ金利のなかですから2%台のインフレでも政府も大騒ぎ、「悪いインフレ」更には「悪い円安」などという言葉まで出来て右往左往です。

漸く、トヨタと日鉄が合理的な対策を取り始めましたが、政府、日銀はさて来週からどうするのでしょう。

政府は、輸入業者は積極的に価格転嫁(転嫁であって便乗値上げはダメですね)すべしとか、日銀は口先だけでも異次元緩和の見直しとか言って、マーケットの反応を見るぐらいやってもと思うのですが、上手くやれるでしょうか心配です。
アメリカのインフレ抑制が上手く行かず、アメリカ経済が不調になれば、ドル安円高に戻る可能性もあるでしょう。
上手く行っても、アメリカの赤字垂れ流しが続けばやっぱりまた円高でしょう。

円高は日本が赤字国にならない限り続くのが自然ですが、アメリカの高金利政策が長くなりますと、その間は円安が続いて、日本はプラザ合意の前のように、物価の安い国になり、コロナが終息すればインバウンドはとめどなく増え、輸出は伸び、日本は意図的に円安にして怪しからんなどと批判されることになりそうです。
批判が高まれば、円高圧力が日本を覆うでしょう。

現状、アメリカヨーロッパは軒並み10%近いインフレですから、その辺の付き合い方も考え上手くお付き合いをしないと、世の中多数が正義の民主主義ですので、処世術(経済外交力)に長けた日本にはなれないのではないでしょうか。



トヨタ、日鉄、鋼材値上げで合意

2022年09月01日 21時05分49秒 | 経済
原油をはじめ、資源価格の値上がり傾向が続いているのに加えて、円安傾向が強まっている状況の中で、トヨタ自動車と日本製鉄が自動車用鋼材の大幅値上げについて合意したというニュースが入ってきました。

聞いた瞬間、今の日本であるべき企業間の相互理解が進んでよかったなという安心感を
持ったところです。

流石は日本のそれぞれの産業のリーダー企業の交渉です、2~3割の値上げという事で、かつてない大幅な値上げという事ですが、日本製鉄とトヨタ自動車が合意したのですから、それぞれの企業にとっての採算も、日本経済の中での経済合理性も、きちんと計算された上での合意だろうと思ったからです。

この所、輸入原材料が値上がりしても、日本経済自体が長期不況にさいなまれ、円レートが正常化して10年近くたっても経済成長はほとんど期待できず、輸入価格の上昇を国内価格に転嫁しようとしても、値上げすれば売れなくなるという恐怖感から価格引き上げを控えてしまう傾向が強く出ていました。

政府もそれを知ってか、石油元売り業者に補助金を出して国内価格を抑えるといった誤った政策を実施するという混乱状態でした。

つまり海外価格の上昇というのは、国内政策では対応できないことが解らず、国内での正常な価格機構の働きを阻害し、経済の混乱を一層複雑化しているのです。
輸入価格の上昇は、価格機構を通じて、総ての企業や家計、つまり日本全体であまねく負担するしか対策はないのです。

政府は本来であれば、輸入価格の合理的な国内転嫁の促進を経済正常化の指針とすべきところですが、全く誤った認識から、輸入部門や財政に負担を蓄積させる結果になっているのです。

同様な形で円安の場合を考えますと、円安が一方的に続けば、輸入部門に差損が蓄積し、輸出部門に差益が蓄積することになります。
この所の円安傾向は海外資源高騰で輸入部門に負担が蓄積されている上に、更に差損が重なり、一方、輸出部門では重価格の上昇の転嫁は不十分で、更に差益が大きくなるというアンバランスを作り出していました。

日本の場合輸出入はほぼ同額ですから、価格機構を通じて価格転嫁がスムーズに行われれば、輸出部門と輸入部門の差益と差損は価格機構によって調整され、結果は円安分だけ日本の物価水準が上がることで解決するのです。

こう見てくるともうお分かりと思いますが、トヨタ自動車と日本製鉄の今回の行動は、価格機構(プライス・メカニズム)による日本経済の活動の正常化を、民間企業の代表として政府や国民の前に「こうすべきなのです」とやって見せてくれたという事なのです。

経済の国際化が進めば、国内の政策で対応出来ることと出来ない事が発生します。政府は経済合理性よりも、得票につながることが大事ですから、政策は時に歪むのでしょう。

矢張り日本は、危機にあっては民間が知恵を絞ってその解決策を考えるという伝統の国のようです。
石油危機、プラザ合意、バブル崩壊、リーマンショック、いろいろありましたが、此処までやってきたのは殆どが民間の力です。

また、此処から民間が頑張ることになるのでしょうか。トヨタと日本製鉄の行動に、知恵と勇気を得て、産業、企業、そして家計が、持てる潜在力を、委縮せずに、思い切って顕在化させることを願うところです。