tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

法人税減税でどうなる?

2014年06月30日 10時56分11秒 | 経済
法人税減税でどうなる?
 安倍政権は、今後の成長政策の一環として、法人税減税に力を入れているようです。

 経団連はもちろん賛成しています。経団連は、もともと大企業の利益になることは、社会全体とのバランスはともかく、「まずは賛成」という性格が強い組織ですから当然と思いますが、本当は社会全体のバランスの中で、法人税減税がいかなる意味を持つのかを確り分析・検討して「この方が日本経済・社会の成長と安定にプラス」と判断出来て初めて政策に組み入れる意味が出て来ると思う所です。

 政府の説明しているのは、周辺のアジア諸国は20パーセント台が多い。アメリカは名目は高いが、種々の個別是正措置がある、ヨーロッパ諸国も日本より低い、これでは日本への投資が伸びない、といったことのようです。

 日本の法人税率が高いから日本に企業進出しないといった話は、あまり聞きません、日本は賃金が高い、間接部門の生産性が低い、日本語が難しい、規制や制度の違いで入りにくい、といった話はよく聞きます。 それなら円安誘導、規制緩和で対応すべきでしょう。

 法人税減税には、恒久財源が必要という声は財務省から聞こえます。それはその通りだと思います。 
 しかし恒久財源を見つけるということは、大企業中心の法人減税分を、別の誰かが負担するということです。大局的に見れば、「なんだ、消費増税で負担するという結果になるのか」という見方も成り立つでしょう。

 政府の方は、租税特別措置法を見直すとか、中小企業減税を見直すとか、まさにパッチワーク(弥縫策)のようなことをいろいろ言っていますが、どういう性格の税金を増やして法人減税の財源に充てるという、租税政策の基本に亘るような意見はありません。

 法人減税を企業がどう使うのかについてもいろいろ意見があります。それで賃金が引き上げられるなどという意見もあるようですが、連合は見向きもしないようです。大体法人減税で賃金を増やし、消費を活発にして経済成長などと言いうのは「桶屋哲学」より迂遠です。

 企業が内部留保して、新技術のR&Dに使うというのが最も経済成長に近いようですが、今、企業の内部留保の増加は「溜め込み過ぎ」と(故ない)批判にさらされています。

 実は、法人税が多少高くても低くても、それは、ヨーロッパの付加価値税の高さ、アメリカの社会保障の遅れた競争社会、日本のような成長と安定のバランスの取れた社会(強いられた円高による失われた20年は別)といった国の在り方の中で、企業、家計といった個々の経済主体の行動が、大数の法則(今ならビッグデータ)に従って、落ち着くところに落ち着くようになっているのです。
 
 大切なことは、日本をどういう国にしていくかを見定め、その目標に最も適切に働くような制度設計を、税制も含め、個別事象ではなく、国の在り方という総合的視点で考えて行くことでしょう。
 
 その中には、日本が戦争をする国になった時、税制が受ける影響なども入ってくるはずです。昔日本が戦争をしていたころのことは、いろいろ参考になるでしょう。

我が家のホタル:ヘイケ全盛

2014年06月26日 20時00分42秒 | お知らせ
我が家のホタル:ヘイケ全盛
 昨年の今日、「今年のホタルは」を書かせて頂きました。
 多少気候は不順でも、自然のサイクルは着実に回っています。先週以来、我が家では、産卵用のケージの中で、ヘイケボタルのオス・メスが入り乱れて乱舞しています。

 といっても実際はメスは下に敷いた水苔の上でどちらかというと静かに光り、オスの方は、籠の網を登ったり羽を広げて飛翔したりしながら下のメスに狙いをつけて交尾・産卵というのが習性なのだそうです。

 昨年の今日、ブログを書いてから、その後10日ほどで次第に「蛍の光」は消え、ケージの中は静かに暗くなり、華やかだった黄緑の光の乱舞は、まさに一場の夢のようでした。
 しかしホタルたちは確りと卵を残してくれ、7月下旬には無数の幼生が、水を張った、発泡スチロールの箱の中に落ち、餌のモノアラガイ、サカマキガイ、幼いタニシなどを食べ、秋にはもう1cm程に成長していきました。

 今年の春、上陸して繭を作る段階まで成長した幼虫が約150、これを半分はベランダの人工上陸装置、半分を庭のU字溝を利用した簡易ビオトープに放流して、6月の羽化を待ちました。人工上陸装置の方は水道水、U字溝の方は雨水タンクからの水です。

 これまでに50~60匹が羽化、U字溝からの方が時期は早めで、人工上陸装置の方はまだ羽化が続いています。羽化したホタルは産卵用ケージに取り入れ、来年に備えるのですが、暗くなると近所の方々がかわるがわる見物に来られたりしています。

 もう少し幼虫の育つ数が多くなると、採卵用のケージに取り込む数を決めて、ある程度は自然に飛ばせるようになると思い、幼虫が数百ぐらい上陸するところまで持って行きたいと努力しているところです。

 今年は、より大きくてよく光るゲンジボタルの飼育にも挑戦しようと、ゲンジの幼虫を仕入れましたが、こちらの方は、どうもうまくいかないようです。もう少しノーハウの蓄積が必要なのでしょう。

 我が家のホタルは、今年はまだ清盛の時代、頼朝・義経の時代にはなっていないようです。

 

ファンドの欲望・アルゼンチンの対応

2014年06月23日 15時43分50秒 | 国際経済
ファンドの欲望・アルゼンチンの対応
 今日、新聞の朝刊にアルゼンチン政府の全面広告が出ているのをご覧になって、驚いた方は多いと思います。私も正直驚きました。
 一国政府が外国の新聞に全面広告を出すといったことは、あまり見たことがありません。余程困って、世界の世論に訴えたいということなのでしょう。

 主な内容は、
・アルゼンチンは2001年のデフォルト以来、経済再建に努力している。
・大部分の債権者は債務カットに協力してくれている。(注:92パーセント)
・一部のヘッジファンドがアメリカの連邦裁に提訴し、全額返済を認められた(グリーサ判決)。
・ファンドはデフォルト債を安く買って、17倍に増やそうとしているのだ。
・これを認めれば、債務カットの応じた債権者は黙っていない。
・そうなればアルゼンチンは再びデフォルトで、再建努力は水泡に帰す。
・多くの国、国際機関、専門家も、判決に懸念を表明している。
・公正でバランスの取れた司法判断を期待する。

 同様な全面広告はウォールストリートジャーナルが皮切りだそうですが、マネー資本主義の、カネ、カネ、マネー、マネーの醜い面丸出しの事件のように感じます。

 何年か前、このブログで、「ファンドの敗北」というタイトルで書か出ていただきました。また、「労『資』関係の復活?」というテーマでも書かせていただきました。
 
 資本主義勃興の初期に露わだった、資本の強欲が労働者や他のすべてを犠牲にしても資本の増殖だけに邁進するという「カネに弱い人間性」の側面は、マルクス思想、福祉国家の理念、企業における経営者革命などなどによって、超克されてきたと思われてきました。

 しかし近年アメリカ主導のマネー資本主義、その手段としての金融工学の発展などが、再び「資本原理主義」とでもいうべき、カネで金を創るという作業に専念する人達(例ヘッジファンドなど)を生んだようです。

 折角、資本主義の進化が、資本主義は経済成長を進め、技術革新を促進して、「人類社会を豊かで快適なものにする」ためという方向を見出してきた20世紀後半から21世紀にかけての人類社会の進歩の中で、「資本の強欲の復活」は許されるべきではないでしょう。

 勿論アルゼンチンの行動も、多少確りしていません。頑張って債務返済に努力して来たのに疲れたのでしょうか、ここ3年ほどは経常収支が赤字になり、外からのファイナンスが必要になっています。

 しかし対応すべき方向は、そこから金をむしり、デフォルトにして再建努力を水の泡にするのではなく、「稼ぎの範囲で生活し」借金をより早く返せるように努力することを支援するという事でしょう。
 関係する方々の、資本の強欲と支配ではなく、「人間が主人公」の世界経済の健全化、人類社会全体の着実な前進を見据えた対応を期待したいところです。
 

アメリカの選択、日本の選択

2014年06月19日 11時12分30秒 | 国際政治
アメリカの選択、日本の選択
 此の所の世界の状況は、気になることが連鎖的に起こってきます。
 ウクライナとロシアの関係は、何とか平和的な手段で解決をと思いますが、その兆しは見えたのでしょうか。

 今日はシリアの国連大使が、アメリカに対して、対テロ作戦で手を貸してほしい、とも受け取れる発言をしたと報道されました。
 アメリカは、シリアではアサド政権に反対し、反政府軍を支援していますが、イラクでは、マリク政権を支持しているようです。
 現政権がまともなのか、反政府勢力に理があるのか。テロなのかそうでないのか、真実がいずれにあるかの判断は極めて難しいことでしょう。

 世界随一といわれる諜報網を持っているアメリカですから、それなりの判断で行動を取っているのでしょうが、アメリカの選択が常に正しいと言えるかには、種々問題があるということは、過去の経験からも知られるところです。

 私自身、政治や軍事については、全くの素人ですが、経済については、今までこのブログで書いて来ましたように、アメリカの経済運営は根本的に誤ったものだと考えています。このままでは、アメリカ経済の立て直しも巧くいかないだけでなく、マネー資本主義の横行で、世界経済の行く末を危殆に瀕させるような結果になっていると予想せざるを得ません。

 現状、アメリカ経済は順調で、テーパリング(超金融緩和の巻き戻し)から、金利の引き上げも視野になどと報道されたいますが、アメリカの経常収支はは相変わらず常に赤字で、借金なしではやっていけない状況には変わりはありません。
 この点ではギリシャやスペインの方が真面目です。

 今日の日経平均もアメリカのダウが上がったからと、上がっているようですが、防衛論議でも経済政策でも、アメリカについていけばいい、という考え方では済まない時代になっているのでしょう。

 日本は日本としての確りした識見を持ち、アメリカが良いことをやれば賛成協力し、誤ったことをやればその是正についての忠告をするといった、理性も知性もある大人の関係の構築に努力する事が今こそ必要になってきているのではないでしょうか。

集団的自衛権は憲法解釈の問題でしょうか

2014年06月14日 10時48分34秒 | 国際政治
集団的自衛権は憲法解釈の問題でしょうか
 本心を言えば、こんな問題は書きたくない、書かないで済むような外交を政府がきちんとやってほしいというという所ですが、残念ながら書かせて頂きます。

 集団的自衛権の問題は、憲法の解釈で決めるような問題なのでしょうか。法律というのは検事と弁護士という職業があるように、多様な解釈が可能なものでしょう。 
 この問題はどう考えても、法律解釈の問題ではなく、「日本人の心」は本当のところどこに在るのかという問題ではないかと、最近のニュースを聞くたびに思ってしまいます。

 問題の本質は、戦後60余年、戦争によって人を殺傷することなく、世界から「安全な国日本」という評価を漸く作り上げてきた日本が、再び戦争によって人を殺傷する国になるかどうかを選択するという極めて重い、深刻な、世界史的にも重要な問題であるはずです。

 自衛隊が血を流すかどうかといった論議もあります。戦争の現場と言いうのは「狂気」そのものです。殺すか殺されるかの選択しかないのです。当然人を殺傷することになります。
 その事態にまで行かないようにすることが外交であり、日本人の知恵の発揮の場です。

 武器を以って人を殺傷することを、日本は、賢明にも、戦後、一貫してやりませんでした。そういう国が世界に存在することは、世界平和を目指す人類社会として、世界史的にも大きな意味があるはずです。

 この「積み上げてきた努力」をなし崩しに消し去る道を選択すべきでしょうか。縄文文化にさかのぼれば、日本人は、もともと争いを好まないということが知られると思います。
 
 この問題を法律論争で「法律をこう解釈すれば、武器で人を殺傷してもいいんだよ」ということで片付けようとすることこそが、基本的に誤りであることにすべての日本人が早く気付くべきでしょう。

 戦後日本人の真面目さで積み上げてきた究極の平和追求の姿という実績を、我々は、改めて自ら評価し、歴史観にたった冷静な判断をすべきではないでしょうか。

 ことを急いでいる人もいるようです。ここはまさに正念場です。
 日本には昔から「濡れぬ先こそ、露をも厭え」と言いう諺もあります。

残業ゼロ社員問題 追伸

2014年06月11日 17時41分02秒 | 労働
残業ゼロ社員問題 追伸
 一昨日、残業ゼロ社員問題について書かせて頂きましたが、今朝の新聞等の報道で、政府は年収1000万円以上の層を対象にする考えで調整に入るといった報道がありました。
 サラリーマンの常識では、「年収が1000万円を超える従業員で残業の付く人が何人いるの?」ということになるでしょう。あなたの会社で探してみてください。

 国税庁の民間給与実態調査(平成25年)で「株式会社・その他の法人」の従業員で、「1年を通じて勤務した給与所得者」の内、給与総額が1000万円を越える人は3.7パーセントです。 このほとんどは役員、「課長級以上の管理職あるいは対応する職能資格者」でしょう。

 誰のために、何のために、コストのかかる法律・制度でそこまでやるのでしょうか。企業内の人事労務管理で対応するという常識的な発想はないのでしょうか。
 それとも、これを踏み台に、何かほかの事を考えているのか、ついつい勘ぐりたくなるようなおかしな話のように思えてなりません。

残業ゼロ社員問題:日本的経営の視点

2014年06月09日 10時48分27秒 | 労働
残業ゼロ社員問題:日本的経営の視点
 産業競争力会議がいわゆる「残業ゼロ社員」の提言をし、政界、厚労省、企業、労組などからいろいろな意見が出て来ています。

 提言は、賃金は「成果」に応じて払うのが良くて、「時間」で払うのはおかしいという、「失われた20年」の中でさんざん論議されて、ある意味では結論が出ている問題を、また法律や制度によって、改めて実現したいと考えているように受け取れます。

 現状で考えますと、職制で管理職以上は残業代は支給されません。専門職でも、職能資格が管理職相当であれば一般的には支給されません。年俸契約の人にも支給されません。
 一方、パート、アルバイトについては、時間給ですから、労働時間に応じた賃金が普通です。請負は雇用者ではないので残業は関係ありません。 問題になるのは、正社員で管理職でない人ですが、工場でもオフィスでも機械の稼働と共に働く人は働いた時間に応じた賃金が当然です。

 残るのは、判断業務中心のホワイトカラーで、管理職手前の人という事でしょう。この人たちだけを対象に、時間でなく、成果で賃金を決めるということになります。

 こういう人たちの中には、仕事について、大きく2つの態度・考え方がります。1つはかつては多かったのですが、残業をして手取り賃金を増やしたい人です。もう1つは、自分の時間を大切にして、残業は出来るだけしたくない人です。前者は減少中、後者は増加中です。

 コスト削減のために企業として手を打たなければならないのは、その二者の内の前者、だらだら働いて、残業代を稼ぎたい人たちでしょう。この人たちは減りつつあります。

 その人たちだけのために新しい法律や制度が国を挙げて考えるほど大事なことでしょうか。常識的には、企業の人事管理、教育訓練、企業文化づくりの中で解決すべき問題でしょう。
 それなのに、法律・制度と「鶏を裂くに牛刀をもってする」ようなことを言い出すものですから、意図的なものを感じ「過労死助長策」などといわれるのではないでしょうか。

 もともと成果主義というのは、個人主義の欧米の文化に似合うシステムです。日本のような集団主義文化には成果主義は似合いません。デフレ不況の中で、一時もてはやされた成果主義ですが、企業の中で咀嚼された結果、高給の窓際族対策など日本にも適用可能な部分を残して消え去りました。

 戦後は、職務給と年功給の問題がありました。一部の経営者は欧米流の職務給が理想の賃金システムと考えました。しかし職務給は結局定着することはなく、日本の賃金システムは「職能資格給」になりました。
 賃金制度を考える場合は、その社会と文化を知らねばなりません。効率を上げようとして不似合いなものを入れても、相手は人間ですから、結果は非効率を助長するだけです。

 日本の賃金は、昔から「仕事が2倍出来ても給料2割増し、3倍出来ても3割増し」などといわれるように、能力のある人は寛容で、弱者に優しい社会なのです。これはいわば企業内の所得平準化システムで、企業内の良き人間関係、結束力、人間集団の凝集力を強め、企業の総合力強化に役立っているのです。

 どこの国でも国としては「社会保障制度」があります。これは、強者から弱者への所得移転制度です。これによって、資本主義は強者の独占にならず、社会の安定を維持できるのです。
 
 最近もマネー資本主義は、一握りの億万長者と貧しい大衆を生むと言われています。初期の資本主義の「労働者搾取の時代」は「経営者革命」と「 福祉政策」で超克された筈です。

 日本の政府も財界も、舶来崇拝(当ブログ2012年04月12日付参照)から脱却し、日本の文化、社会に適した人事制度、賃金制度のより深い検討を心掛けるべきでしょう。

ECBのマイナス金利、マネー資本主義の欠陥露呈

2014年06月07日 11時04分56秒 | 経済

ECBのマイナス金利、マネー資本主義の欠陥露呈

 米、日、欧の金融政策を単純化してみましょう。

 

◎アメリカ:サブプライム・リーマンショックの回復に異次元金融緩和で対応、経済が少し元気づいたので副作用を心配し今年1月から緩和縮小、首尾いまだ不明。

◎日本:昨年4月、アメリカに倣って異次元金融緩和、20円の円安実現で一息、経常黒字縮小で円安安定か、円高が避けられれば、経済回復の方向へ。

◎ユーロ圏:南欧の経常赤字でユーロ安、しかし南欧が真面目に経常黒字を回復、今度はユーロ高で日本の円高デフレを連想、マイナス金利+超金融緩和でユーロ安狙う。

 

 本来金融緩和というのは、通貨量を増やし、金利を下げて、実体経済の活動を活発にするというのが狙いのはずです。

 今回のユーロのマイナス金利政策でも、市中銀行は中央銀行(ECB)にマイナス金利でカネを預けるより、産業への融資にカネを回し、それで域内の投資が増えユーロ圏の経済が活発化するはずだという意見と、カネは域外の途上国に向かうという説、それより手軽にマネーゲームに走るだろうという説、いろいろです。

 

 しかし今回のマイナス金利という意表を突く政策は、超金融緩和を従えて、本当の狙いはユーロ安という「為替対策」でしょう。20年も円高に呻吟した後、やっとアメリカの政策を真似て20円の円安を実現した日本と発想は同じです。違いは、対応が早かったということぐらいでしょう。

 

 しかし20年も苦労して経済力も落ち、経常黒字もカツカツになった日本と違って、大幅黒字のドイツを擁し、 ギリシャもスペインもイタリアも経常黒字を回復したという現状を、国際投機資本もよく見ていて、ユーロ安も思うようにはいかないようです。

 

 しかしこうした状態は、健全な経済活動が尊重されるべき本来の経済の在り方から言うと、極めて歪んだものではないでしょうか。

 アメリカのように、何時まで経っても経常赤字を直せず、借金しなければやれない国もあるのに、

IMFやECBから、赤字は止めなさいと言われて、最後には「解りました」と耐乏生活に耐えて、経済を健全化したら、「ユーロ高デフレ」で苦しまなければならないというのは、経済健全化努力に対して、「そんな努力は無駄ですよ」と言っているようなものです。

 

 これは、日本も、かつて一生懸命世界一の経済パーフォーマンスを目指して努力した結果、プラザ合意で円高を強いられ、国際投機資本に翻弄されて「失われた20年」を経験したから一番良く解っているはずです。

 

 この基本的な原因は、数十年に亘り経常赤字を垂れ流す基軸通貨国アメリカが、自国経済の維持のために、自ら主唱したブレトンウッズ体制を放棄し、変動相場制に切り替え、あまつさえ、金融工学、マネー経済学という、資本移動で経済をやりくる世界経済システムを作ってきたことの結果です。

 こんなことを続けていて、世界経済はどうなるのでしょうか。


年金試算を超える経済社会へ

2014年06月04日 12時12分03秒 | 経済

年金試算を超える経済社会へ

 厚生労働省は今後100年を見通した年金財政の状況について報告しました。田村大臣も、100年先まで見通せるものではないという趣旨のことは言われたようですが、こうした見通しを国民としてどう受け取ればいいのでしょうか。

 

 これまでの日本が、少子高齢化、「失われた20年」のゼロ成長経済に呻吟してきただけに、甘い見通しは禁物で、国民も気持ちを引き締めて考えてくださいということなのかもしれません。

 

 今回の試算の内容を見ると、何とか所得代替率50パーセントを維持しようと苦労されたようで、実質0.4パーセント以上の成長が出来れば、なんとか50パーセントが確保できるという結果になっています。

 

 年金制度というのは、最も基本的には、日本経済の生み出したGDPの内どれだけを公的年金制度に分配するかという問題で、年金専門家の細かいテクニックはあるにしてもそれで安心出来る年金が保障されるわけではありません。

 

 老後、年金で安心して暮らせるためには、日本経済がきちんと成長しなければなりませんし、無暗に少子高齢化が進まないといったことが最も大事でしょう。

 そういう意味では、こうした日本経済の最も根幹の部分についての本格的論議が本当は大事なのでしょう。

 

 今回の試算は、最も高い経済成長のケースを実質で1.4パーセントとしています。円高の桎梏を脱出し、正常な経済活動が可能になった日本としては、もう少し意欲的な成長率を掲げられそうですし、その実現の可能性の方が高いと思います。

 

 少子化問題にしても、30年、50年、100年先を考えたら、今、多少回復基調にある合計特出生率がさらに底上げされるような、国民意識の変革、それを支える日本経済・社会に対する明るい将来展望を持てるような積極的な政策が必要でしょう。

 少なくとも、子、孫の代には今の親の代より生活が良くなるという意識を国民が持つことが必須でしょう。

 

 これからの日本経済は順調に回り始めると私は確信しています。その為にはギクシャクしている政治、国際関係も、出来るだけ早く安定させなければなりません。現政権の最重要の課題でしょう

 そうすれば、公的年金を補完する、財形制度や私的年金の多様な発展も可能になり、自助、共助、公助、のバランスの取れる社会が実現できるはずです。

 

 日本は1980年代まで、そうした経済・社会、国づくりを目指して、かなりの成功の実績を上げて来ていました。「ジャパンアズナンバーワン」はそれへの評価でしょう。それを破壊したのは為替操作を含むマネー融資本主義です。

 今一度日本は、政府も企業も国民も、良きビジョンを掲げて、新しい時代の開拓に取り組み、あるべき姿を内外に問いかけるときのように思います。