tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「マルチ咲き」ではなく「枝咲き」でした

2019年04月29日 16時30分15秒 | 環境
「マルチ咲き」ではなく「枝咲き」でした


 今年もネットバーゲンで、100球1000円という色とりどりの チューリップで、狭い花壇をびっしりにして、本人は豪華なチューリップ・ガーデンだと楽しんできました。

 最初は赤系統が多く、それから濃い茶色や赤の混合色、ピンク、黄色とまさに色とりどりで、早いのが散りかけると後からあとからいろいろなのが伸びてきて、ずいぶん長く楽しめます。これも雑多な品種混合のご利益です。

 ところで、そろそろ終わりの時期を迎えるのですが、掉尾を飾っているのは白い花が多くなりました。

 白いのは、背は高くないが、花数は多いな、それに八重咲というか花弁がぎっしり詰まって、花弁の先が飾りになっているようなあまり見ないチューリップが何本もありますので、これも写真にとっておこうとよく見ますと、どうも1つの球根から出た茎が4つの花を咲かせているのに気が付きました。(写真)

 私自身は球根をびっしり植えすぎたから花がまとまって咲いているのだろうと思っていましたが、違っていました。
 大体チューリップというのは1つの球根から1輪の花と思っていたので、これは変種か突然変異かと思って、ネットで調べてみました、

 なんて入力しようかと思い、差し当たって「マルチ咲きチューリップ」と入れてみましたが、何も出て来ません。あれこれ考えた末、家内に、「こんなのが咲いているよ」と言いますと、こともなげに「ああ、それ枝咲きって言いうのよ」という返事。

 「枝咲き」で羂索すると、我が家の白いのよりもカラフルないろいろな「枝咲き」の写真がたくさん出ていました。
 「知らぬは亭主ばかりなり」ではありませんが、やっぱり世の中進んでいるのだなと実感です。

 チューリップの間で妍を競っていた「つりがね水仙」も終わりに近づいて、連休中にはオオムラサキが満開になるでしょう。
 そして花壇は、ナスときゅうりの畑に変わることになります。

“休まない 人が支える 10連休”

2019年04月27日 21時33分01秒 | 労働
“休まない 人が支える 10連休”
 何処かでこんな川柳を見たような気がしますが、今日から待望の10連休です。テレビは空港や新幹線のターミナルで、荷物のカートを押したり引いたりの家族連れや友達同士などの楽しそうな顔を映し出しています。

 毎日が日曜日の高齢者にとっては、特に変りもなく、あっという間の10日間かもしれませんが、この機会が、一生の思い出になるような人たちも沢山いるでしょう。
 やっぱり休みはあった方がいいし、時には少し長めの休みもあった方がいいですね。

 しかし、表題の川柳のように、休む人たちが楽しめるのは、休まない人たちが働いていてくれるからなのです。
 
 昔から「駕籠に乗る人 担ぐ人 そのまた草鞋を 作る人」などと言いますが、これはいろいろな仕事が支えあって社会が成立しているという事を、解りやすく教えたものでしょう。 
 これが「仕事の分担」だとすれば、表題の川柳は、「時間の分担」という事になるのでしょうか。
 
 仕事の分担にしても、時間の分担にしても、働く人々は多様な分担・依存関係を持ちながら、上手に支えあって社会の安定した活動の継続を実現しているのでしょう。

 この10連休中を、交通インフラ、レジャー施設の現場、グルメの食欲を満たすホテル・レストラン等々で働く方々も、お客の多さを張り合いに、10連休のチャンスを成果として生かそうと仕事を頑張るというのが最もいい形でしょう。

 10連休をレジャーで楽しむ人も、その人たちが楽しむ場を仕事で支えている人たちも、年間労働時間でみれは同じようなものであることが「支えあい」の納得性を作り出しているのでないでしょうか。

 働き方改革が騒々しくなってきていますが、そうした意識と現実がが一般的になれば、国レベルでも、企業レベルでも、職場レベルでも、バランスの取れた支えあいという形で、自己都合の10連休が楽しめるという事になるのでしょう。

 また。国際的に見れば、ゴールデン・ウィーク、夏休み、シルバー・ウィーク、年末年始という日本型の定番の休暇/レジャー方式も、夏休み1か月というヨーロッパ方式も、違いはありますが、それぞれに、季節あり方や夏冬の日照時間といった自然の環境の中から生まれてきた文化を背景にしたものでしょう。
 ワーク・ライフ・バランスという点から見ても、社会の伝統文化と人それぞれの考え方を生かしながら、個々人の自主性を中心に、意識的には納得性のない格差が存在するなどとは感じられないような形の在り方が、制度的にも、慣習的にも出来上がっていくことが最も望ましいのではないでしょうか。

日米交渉:やっぱり出てきた為替条項

2019年04月26日 14時49分24秒 | 国際経済
日米交渉:やっぱり出てきた為替条項
日米貿易交渉、実際には、日米FTA交渉として、今後時間をかけて着地点を探さなければならない交渉でしょうが、やっぱり、アメリカご執心の為替条項が出てきました。

 為替条項というのは、ひと口で言ってしまえば、国際競争力で「自国が有利になるように為替レートを操作してはいけない」ということでしょう。

 もちろんそんなことを認めたら、一生懸命生産性を上げて自国経済を健全なものにしていこうなどという建設的な努力は必要なくなります。
 生産性を5%上げる代わりに自国通貨を5%切り下げれば、即座に生産性の5%向上と同じ国際競争力上の効果が得られるからです。

 かつて、こうした経済戦略は「為替ダンピング」などと言われ、「近隣窮乏化政策」などとも言われて、世界経済の健全な発展を阻害したという苦い経験から、第二次世界大戦後の、いわゆるパックス・アメリカーナの中では、アメリカ主導で「ブレトンウッヅ」体制のもと『固定相場制』が採用されたわけです。

 これは大成功で、みんな国際競争力をつけようと生産性を上げ、1960年代までは、世界経済は順調に成長し、世界経済は最も順調な時代とみられています。

 ですから、為替レートを意図的に動かして国際競争力上有利な立場に立とうとするといったことは当然望ましい事ではないといいうことになるわけです。
 ならば為替条項を貿易交渉の中に位置づけようというのはまさに「正論」で、それを拒否することは何か「よこしま」な意図を持っているということになるはずです。

 今回の日米交渉の中では、アメリカが為替条項を持ち出し、日本は麻生さんが、貿易問題と為替問題は性格が違うものだから、一緒に論議すべきでないという立場で、為替条項についての議論を拒否しているという状況です。

 では、日本はなにか「よこしま」な意図を持っていて、為替条項の議論を拒否しようとしているのでしょうか。

 こう見てきますと、皆様には、「日本が拒否しているのは「よこしま」な考えがあるからではない」「アメリカの行動を警戒しているからだろう」というご理解を頂けると思っていますが、今後の展開次第では予断を許しません。

 この問題については、このブログでは、可能性、実現性は「別」として、理論的には、アメリカの好きな2国間交渉の中で、「日米固定相場制」はどうですかと提案していますが、どうでしょうか。

この辺りは、確りと今後の日米交渉の行方を見守り、何が本筋か、本当の解決策はなにかを、じっくり考えていく必要があるように思っています。

日銀、現状の金融政策を「当分の間」継続

2019年04月25日 23時28分28秒 | 経済
日銀、現状の金融政策を「当分の間」継続
 今日、日本銀行の政策決定会合が終わり、午後3時半でしたか、黒田総裁の記者会見がありました。 
 TVで様子を見ようと思いましたが、やっていないので、インタネットで拝見しました。

 大変大事なことだと思うのですが、TVの中継はないし、NHKの夕方7時からも、夜9時からも一言も触れていませんでした。

 マスコミとしては、特に変わったことがないのならあえて取り上げる必要はないという事なのでしょうが、やっぱり、変化する経済情勢の中で、2%のインフレ目標を6年続け、達成の気配もない中で、来年四月まで、さらにそれ以降も特に変更は考えないということ自体が重要な政策決定ではないかと考えて、やっぱり取り上げることにしました。

 黒田総裁が強調していたのは、本来の日銀、物価の番人としての日銀の基本的主張である「物価の安定」という「言葉」ですが、その意味は「2%の消費者物価上昇が物価安定であるという事でした。」
 (注:説明ではこの物価は「生鮮食品を除く総合」だということでした)

 そして「2%を超える程度の消費者物価の上昇がなければ、デフレ脱却とは言えない」という言い方で、現状はすでにデフレではないが「脱却」という意味ではそのくらいにならないと、いつまた物価が下がるかわからないようではだめ、という解説でした。

 温厚に解りやすく説明していましたが、何か、本当にそう理解した上での説明というより、日銀としては、そう説明せざるを得ないというレールに乗っての説明といった印象がどうしても拭えませんでした。

 やはり政府、日銀は一体になって、超金融緩和を続けるしかないという現政権の方針が強く反映しているのでしょうか。
 ゼロ金利による地銀の経営悪化という副作用についても、銀行の本来業務の収益は減少しているが、証券の売買益などで純利益は横ばいなので、あまり心配していないという感じの説明でした。(中央銀行がその認識でいいのかという意見もあるでしょう)

 ただ、 MMTについてどう考えるかという質問に対しては、あれは理論的に確立したものでもないし、日銀はそんな考え方を持っているわけではないと、きっぱり切り捨てていました。何といっても、物価の番人を以て任ずる「日銀」ですから、基本的には財政・金融政策の節度は重要という立場でしょう。

 しかし、現在やっていることは異次元金融緩和で、その結果を 日銀のB/Sで見れば、国債などを400兆円ほども買い上げた結果は、400兆円近い額の当座預金の受け入れになっている(巨大な行き場のないお金が日銀のB/Sの中で両建てになっているというのが現実です。

 本来、金融を緩めるのは、お金を使いたい人がいるからで、両建てになっているというのは、「供給したお金はほとんど使われていない」という事ですから、実体経済の役に立っていないことは明らかで、異次元金融緩和は 何か別の目的で利用されているということになるようです。

 このあたりが黒田総裁の説明が歯切れが悪い原因で、背後には、どこかの国の思惑で円高になれば忽ち日本経済はデフレ不況になるという恐怖感が常に存在するが、「それは口が裂けても言えない」という事情があるのではないでしょうか。

 やはり日本の経済政策は、「どうすれば異次元金融緩和を止めても円高を強いられなくて済むか」という本来求めるべき方向に梶を切っていかない事には、根本解決はないという事になるよな気がします。
しかし、いかにアベノミクスでも、これは大変難しいことのようですね。

「研究開発投資から海外直接投資へ」と日本経済の現状

2019年04月24日 12時42分25秒 | 経済
「研究開発投資から海外直接投資へ」と日本経済の現状
 この3回ほど、研究開発投資の停滞と海外直接投資の盛況を見て来ました。
 問題はそれが日本経済に何をもたらしているかです。

 端的に言ってしまえば、これは「日本国内で生産するか」、「海外で生産するか」の選択です。そして、海外で生産すれば、日本のGDPは増えません。増えるのは「第一次所得収支(利子・配当収入)」です。そしてこれはGDPには算入されません。
 「 GDPを上回るGNIが日本の実力」と書きましたが、この「実力増の部分」は資本の力によるもので、「生産力」によるものではありません。

 トヨタが年「300万台の国内生産は守る」としたり、産業機械メーカーなどの多くが、心臓部分の開発・生産は国内で行うといった方針を持っていると聞きますが、こうした努力は「研究開発」から出発してより高度な製品は自分で作れなければ産業の将来はない、つまり産業として将来への見通しが立たないという長期的視点を持っているからという事にほかなりません。

 アメリカのように、世界中に生産拠点を持つものの、国内では、かつての生産拠点は「ラストベルト」で、結局、「第一次所得収支は黒字でも、貿易収支は大幅赤字で、経常収支は万円赤字」、関税障壁とドル安で自国経済を守らなければならないという「将来像」が待っているという事になるのではないでしょうか。

 単純に計算してみても、いま日本の第一次所得収支は年間約20兆円の黒字です。これは日本企業が海外で創出した付加価値の中から利子・配当として受け取っているもので、海外で創出している付加価値の1割以下でしょう(7割が人件費、3割が資本費として、その半分を利子・配当として受け取っても7.5%)。

 つまり7.5円の第一次所得収支を得るという事は、海外で100円の付加価値を創っているろいうことなのです。
 逆にえば、7.5円の第一次所得収支を得るための海外直接投資を国内でやれば、GDP(付加価値)が100円増えるという事です。
日本の海外直接投資がもっと少なくて、その分国内に投資し、20兆円の第一次所得収支が12.5兆円だったら(7.5兆円少なかったら)、日本のGDPは100兆円多くなっていただろう、ということになるわけです。

 こんなのはまさにメノコ算(メノコメトリクスと言うそうです)ですが、「当たらずと雖も遠からず」かもしれません。
 もしそんな事になったら人手不足で大変かもしれませんが、「窮すれば通ず」で労働生産性を上げて対応するのでしょう(日本の労働生産性はアメリカの62%、ドイツの85%です:日本生産性本部2018年)。

 この所、日本の研究開発投資が盛り上がらないという所から出発しましたが、その背後には、為替レートへの不信・不安、海外企業の買収に走る企業、海外直接投資の著増、経常収支の大幅黒字、なかなか成長しないGDP、向上しない労働生産性と深刻な人手不足・・・、などなどの問題が複雑に絡み合っていることが見えてきたように思います。

 さて、アベノミクスはこれから何をしようというのでしょうか、相変わらずのポピュリズム、選挙対応中心、パッチワークの経済政策では、先は見えているような気がするのですが・・・。 

企業の研究開発投資行動の変化は「いざなぎ越え」から?

2019年04月23日 22時36分29秒 | 経済
企業の研究開発投資行動の変化は「いざなぎ越え」から?
 かつての高度成長時代、日本経済の基盤を形成したのは技術革新だったのでしょう。欧米の先進技術をどん欲に吸収したい日本企業は技術導入に邁進しました。

 自動車でいえば、ルノー、ヒルマン、オースチンなどの欧州車の旧型を国内でライセンス生産しているうちに、昭和40年代には、カローラ、サニー、ファミリア、等々の1000CCクラスの国産車が走り出すといった情景は、高齢のカーマニアには忘れられない記憶でしょう。

 ライセンス獲得のための「〇〇参り」などという言葉も随分使われれたものです。多くの技術導入がその後、日本企業の「守破離」のプロセスを経て、あらゆる部門で日本経済の急速な発展に寄与した技術の高度化をなし遂げたのは明らかです。

 当時、技術革新は日本流の生産性の向上を伴っていたようです。トヨタのカイゼンを世界に有名ですが、5S,QCサークル、TQMなどなど、新技術に人の働き方をマッチさせ生産性向上につなげる活動も最高潮に達していたのでしょう。

 労働事情の方は、景気が良くなるたびに人手不足になりましたが、生産性向上で何とか切り抜けてきたというのが経験です。生産現場からホワイトカラーの生産性向上まで、生産性向上は産業界の合言葉でした。

 こうして発展途上国時代を駆け抜けてきた日本経済ですが、その元気でオイルショックは切り抜けたものの、プラザ合意の円高は、為替リスクという新しい概念を伴って、日本企業の行動様式に大きな影響を与えたようです。

 プラザ合意による円高とそれ続いたバブル経済の崩壊は2000年までの10年をかけて何とか克服しましたが、企業はそのプロセスで「いくら生産性を上げて頑張っても、その分円高になれば、そんな努力は無意味」という変動相場制の問題点を知ることになり、これはリーマン・ショックで、さらに徹底的に思い知らされることになりました。

     資料:財務省

 上の図を見ていただけば一目瞭然ですが、2002年「いざなぎ越え」が始まり、その後二、三年、企業が多少的な動きを見せる中で、選ばれたのは「海外直接投資」のようです。
 「下手に国内投資を積極化して、円高になったら元も子もない」という事でしょうか。

 この傾向はリーマン・ショック後さらに強まり、円高差益もあって増加した内部留保は、海外企業への投資、買収、統合・・、といった形が多くなったようです。

 もちろん東芝の場合などなどのような残念な失敗もありますが、トータルで見れば、海外直接投資残高の増加とともに利子配当収入は着実に増えています。すでに見ました国際収支の中の 第一次所得収支の巨大な黒字がその結果を示しています。

 これもすでに述べていますが、これはGNP=国民総生産(GNI=国民総所得)に入りますが、GDP=国内総生産には入りません。生産は海外で行われ、利益の配分だけが「入金(所得)」となるからです。

 これが現状、国内の投資不足、技術開発の停滞にもつながっているのではないでしょうか。
 企業が国内で研究開発投資をするより、手っ取り早く高い技術、技術開発力を持った海外企業を買ってしまった方が戦略としては優れていると考える条件はそろっているのです。
 
 さてこうした動きは日本経済全体にとってどんな影響を齎しているのでしょうか。これは次の課題です。

研究開発が進まない日本、理由は?

2019年04月22日 17時35分32秒 | 科学技術
研究開発が進まない日本、理由は?
 前回、この10年、日本では研究開発費がほとんど増えていないという現実を見てきました。

それに引き換え、中国の研究開発費は、この10年間に約4倍、韓国でも2倍に増えていることがOECD の調査で示されていることも指摘しました。

 もちろん、研究開発費だけが科学技術の発展を決めるわけではありません。人間の能力如何も大きな要件です。
 ニュートンがリンゴの落ちるのを見て「万有引力の法則」を発見するのに、研究開発費は要らなかったという人もいます(冗談です)。

 しかし現在のエネルギー開発やエレクトロニクス・通信技術の研究開発には巨大な研究開発投資が必要なことは周知の事実です。
 企業経営もそうですが、あらゆる人間生活にかかわる進歩は「人間が資本を使って行う」活動によって起こるので、その際人間が活用する「資本(モノ・カネ)」はますます「高度化」、「高価化」しているのが現実です。

 ですから、日本の研究開発投資が増えないということが、日本の研究開発の遅れにつながるということはある意味では当然でしょう。

 ではなぜ日本の研究開発費は増えないのでしょうか。
 日本の科学技術関係の国家予算の対GDP比がこのところ低下傾向といった点も指摘されますが、国の政策の在り方が、このところ顕著にポピュリズムに堕し、当面の人気取り政策に偏るといったことも背後にある見逃せないことのように思われます。

しかし研究開発費の主な支出主体は企業と大学、研究機関で、その内企業の支出が7割以上ですから主要な問題は企業にあるのかもしれません。
 この点を考えますと「日本経済の先行き不透明」という問題がありそうです。アベノミクスは行き詰まっている様相ですが、政府は、少子高齢化の不安を煽りながらアベノミクスの成果を強調するばかりで、科学技術の発展が日本経済を救うといった「長期的視点の政策」は聞いたことがありません。

 いずれにしても、科学技術の振興は、その成果が今日・明日に出てくるものではないでしょう。「モノづくり」を言いますが、「モノ」の中身はますます高度な科学技術に支えられているのです。

 ポピュリズムに汚染され、長期的視点を失った国家政策の下では、企業も安心して 長期的視点の技術開発に腰を入れて取り組むといった気概はなかなか出にくいのかもしれないなどと思ってしまうところです。

 原発の再稼働に異常に執着することにも象徴的にみられますが、「当面のコストが安い」(将来までのコスト計算はできていない)エネルギー源を追い続けて、本当のエネルギー基盤の確立は出来るのでしょうか。

 こうした政府の政策の在り方が、民間企業の行動様式にも影響を与えているといったことはないのでしょうか。
 この点についても、研究開発については、企業行動の面からの検討が必要なように思うところです。
 次回、最近の企業行動について見てみたいと思います。

盛り上がりを欠く研究開発投資

2019年04月21日 20時45分04秒 | 科学技術
盛り上がりを欠く研究開発投資
 一昔前では考えられないことでしたが、スマホの5G化に関わる分野などで、中国や韓国の技術が日本を凌駕しているのではないかと思われるような事態が見られます。

 元はといえば、日本が超円高で長期の深刻な不況に苦しみ、就職氷河期と言われる中で若い人材がまともな仕事に就けず、運よく新卒一括採用で就職出来ても、企業は教育訓練費を大幅に削り、人材育成に手抜きをせざるを得なかったことも大きいと思います。

 また、高度な技術を持った中高年の人材が、人員削減や早期退職の憂き目にあったり、企業に残っても、賃金やボーナスのカットでアルバイトをしなければならなかったりして、結果的に韓国、中国の企業で働く事になって技術移転が実現したといった面もあるでしょう。

 しかし、円高が解消してすでに数年なります。日本企業の内部留保が空前の規模になっているという事はよく指摘されますが、その割に先端分野の研究開発がなかなか軌道に乗らないといった状況が見えています。

 研究開発分野で資金不足のため、外国資本の傘下に入ったJDIのような話も聞かれるところです。
 資金力の問題なのか、人材の育成・先端技術水準の遅れなのか、現場の実情はわかりませんが、何か日本の研究開発のエネルギーが弱まっているように感じられてなりません。

 そんなことで、日本の研究開発費について見てみますと、やはり、些か元気がないような現実が見えてきます。
 日本の研究開発費総額は、総務省の「科学技術研究調査」が調べています。この調査で2007年からの日本の研究開発費総額の推移を見てみたのが下図です。


総務省:科学技術研究調査

 一見してわかりますのは2013年以降急回復した日本経済ですが、研究開発費総額は10年前とほとんど変わっていないという事です。

 世界に目を向けますとOECD調査による各国の研究開発費は、図は省きますが、2015年でアメリカが5000億ドルでトップ、中国が2位で、4000億ドル、3位が日本で1700億ドルです。中国は2005年以降10年で4倍に増え、韓国は金額は少ないですが同2倍に増えています。
 何か日本の研究開発の元気のなさが見えるようです。

 なぜこんな状況になっていなっているのか、十分に検討する必要のある問題ではないでしょうか。かつて不況のどん底のころ、3K職種(きつい、汚い、危険)が、勘定科目の交際費、広告費、教育訓練費に変わって削減の対象たことがありましたが、この中の広告費が抜けて、代わりに研究開発費が入ったのでしょうか。

 冗談はともかく、最大の研究開発活動が企業である(研究開発費の7割強)ことを考えれば、日本企業も経営行動に変化が起きてるのかどうか、大変気になるところではないでしょうか。

混迷する消費税論議:戦術より本質を

2019年04月19日 12時16分50秒 | 政治
混迷する消費税論議:戦術より本質を
 安倍総理の側近といわれる萩生田自民党副幹事長の「消費税増税への疑念」の唐突な表明で、また消費増税問題がごたごたするのでしょうか。

 官房長官が否定していますから、現状ではそちらが正確という事でしょうし、一人の自民党副幹事長が勝手に言ったのなら大した問題にもならないでしょうが、萩生田氏が安倍側近という事でマスコミの反応は大きいようです。
 萩生田氏は、日銀短観の景況感の低下を引き合いに出していますが、日銀短観では企業は今年後半については 強気な計画を持っています。

 しかも、消費増税延期に加えて、解散総選挙の問題も提起しているという事から見れば、多くの人は、安倍さんが参院選を意識し、「自分では言えないことを言わせて、世論の反響を見た」などと勘繰るのは当然でしょう。

 ここでは、そうした政治的配慮を論じることはしませんが、問題は、消費税増税、官民分配率の変更という日本経済・社会の在り方の「長期的、基本的問題」を、ごく短期な景気の落ち込みにかこつけて、だしに使うようなことは本来やるべきでないし、また選挙戦略と消費増税は、話の筋が違うことを明確にすべきだといいたいと思います。

 萩生田発言に触発されたのか、野党からは、改めて消費増税はやるべきでないといった意見も出たりしているようですが、困ったことです。

 消費増税は、財政健全化という基本的な目標とともに、税と社会保障の一体改革で、増税分はすべて社会保障の充実に使い、日本経済の福祉的部分をそれだけ増し、 社会的格差の縮小を通じて、日本経済の健全な成長を確保するためのものだったはずです。

 これは与党・野党を問わず、これまでの政策論議の積み重ねの中で、国民の賛同を得てきた政策の基本的大方針ではなかったでしょうか。

 諸費増税分をすべて社会保障の充実に充てれば、それは自動的に低所得層の生活の安定や支出の増加につながり、増税分と国民の支出はチャラで、 理論的には消費増税が景気に悪影響を与えることはあり得ないという理屈も成り立つのです。

 今回の消費増税の中身が、軽減税率も含めて 合理的な物とはとても言えませんが、それでも長い目で見れば、日本経済の健全方向への力付けになることは明らかでしょう。

 政府・自民党が何を考えているかは解りませんが、政治の本義と末節とを混同することは避けるべきと思う人は多いのではないでしょうか。

中国GDP下げ止まる?

2019年04月17日 23時13分39秒 | 政治経済
中国GDP下げ止まる?
 今日17日、中国の国家統計局が、この1~3月のGDPの数字を発表し、対前年同期比の伸び率が実質6.4%と、前の10~12月期の伸び率と同じという事でした。

 かつて習近平さんが「ニュー・ノーマル(新常態)」として提示した7%には達していませんが、中国政府も様々な政策を講じている中で、現状、一応下げ止まったという事は、大いに良かったのではないでしょうか。

 このところ、中国経済の減速がいろいろと言われる中で何故か株式市場だけが比較的強い動きを示していましたが、またそれが勢いづくかもしれません。

 それほどに今では、全世界にとって中国経済は注目しなければならない存在という事でしょう。
米中交渉の行方が当事国である米中の実体経済にも大きな影響を与えるわけですから、あまりひどいことにはならないと予想しながらも、それぞれの関係筋が心配したり楽観視したりしながら注目しているという事でしょう。

 GMの車にしても、最大の生産は中国で2番目が北米という実態が象徴的に示しますように、アメリカの企業が中国に進出して、そこから収益を上げているという事も事実ですから、やはりアメリカとしても自分の首は絞めたくないという事もあるでしょう。

 中国も今回の日米交渉の中では、思いのほか大人の態度を示しているように感じられ、最大の問題である知的財産権の問題にしても、解決志向の行動をとっているように感じられます。

 客観的に見れば、自国の都合やリーダーのメンツといったことで世界経済の安定的な発展を阻害するといったことは、決して望ましいことではないでしょう。
 
 世界の二大超大国の問題ですから、何とか失敗のないような。トラブル・シューター同士の話し合いという形で進めていただければと思うところです。
 
 これから具体化する日米交渉についても、全く同じことが言えるのではないでしょうか。リーダーの知恵が問われているようです。

千円で豪華なチューリップ・ガーデン

2019年04月16日 22時58分45秒 | 環境
千円で豪華なチューリップ・ガーデン

 
 前々回、原種のチューリップのことを書いた際、載せ忘れた狭い花壇に咲き誇る現代のチューリップです。
 手入れが悪いので、雑草(ほとけのざ)も一緒に伸びていますが、球根をたくさん植えたので、結構豪華です。
 
 種を明かせば、ネットで「余りものの球根」を100球1000円で売っているのを購入、狭いところにびっしり植えたものです。
 どんな種類の花が咲くのかは全く解りませんし、発芽率も解りません。しかし100球びっしり詰めて植えれば、結構豪華に見えるものです。
 
 来訪される方も、通りがかりの方も(時に)「よく咲いてますね」と言ってくれます。
 中には背丈の低いのもあってこの写真では見えませんが、本当に多様なチューリップがそれぞれに咲き誇っている感じで、種類の多さも楽しめます。
 種類が多いと、開花の時期もいろいろで、その分長く楽しめるのも、結構だと思っています。

日米交渉で日本が言うべきこと

2019年04月15日 23時31分29秒 | 政治経済
日米交渉で日本が言うべきこと
 日米貿易交渉がいよいよ目前に迫ってきました。
 日本では政府が、「物品に関わる交渉」(TAG)だといっていましたが、これは日本政府が勝手に言っただけで、アメリカはFTAだとはっきり言い、さらに、日本に為替の円安誘導もさせないという事を言いたいようです。

 このところ、種々の問題で、アメリカの言うことは(トランプさんの言うことは)道理に叶わない事が多いようですが、日本政府としては(安倍さんとしては)世話になっているアメリカに顔を立てて差し上げなければいけないと思うのかもしれませんが、やはり、必要なことは、正論をきちんと述べる事ではないでしょうか。

 日本がアメリカの車を買わないのは(関税障壁はありませんから)非関税障壁を含め、アメ車を買わない様な政策をとっているといっても、日本人は誰も本気にしないでしょう。
 事実は単にアメ車に魅力がないからという事はみんな知っています。

 農産物問題で無理強いをしてくる可能性は大きいようですが、この問題をきちんと解決していこうというのであれば、アメリカはなぜTPPを最後の最後で蹴飛ばしたのでしょうか。アメリカ自身に責任はないのでしょうか。「二国間交渉なら力ずくで」と考えてのことではないですかといった問いかけも必要でしょう。

 為替問題で、円安政策はけしからんというのであれば、プラザ合意とリーマン・ショックで、ドル安、超円高状態を作り出した張本人はアメリカでしょう。黒田バズーカは単にアメリカと同じ政策をとって、円レートを正常な水準に戻しただけのことと言うべきでしょう。
 円安誘導をすべきでないというのなら、「固定相場制ならいつでも受け入れます」と日本は十分言える立場にあります。

 アメリカ(トランプさん)が困っているのは、アメリカの経済力が落ちてきているからで、例えば、アメリカがラストベルトの繁栄を取り戻そうというのならば、アメリカの鉄鋼産業をはじめとして金属産業を国際的に通用するものに再建するしかないのでしょう。
 
 自国の産業再建の努力をせずに、相手国に注文だけ付けるという行き方は、確かに多国間交渉では成り立たないでしょう(だから二国間に持ち込む)。
 加えて、ドル安の可能性だけを相手国に認めさせようなど迫るなどは、産業発展をしようと努力する国を叩いて、世界経済の発展を阻害する以外のなにものでもないでしょう。

 言い方は婉曲であった方がいいのかもしれませんが、世界経済社会の安定的発展の考えるとき、アメリカの昨今行動はかなりおかしいという事をアメリカに解ってもらわなければならないというのが一番のキーポイントではないでしょうか。

オランダのチューリップ、日本の朝顔

2019年04月14日 15時46分56秒 | 環境
オランダのチューリップ、日本の朝顔


 春に3日の晴れなし、などといいますが、昨年末から今年初めにかけての東京地方の干ばつは、春とともに終わりを告げたようです。
 干上がって心配した野川の水も、少しづつ戻って、今は何とかさらさらと流れるまでになりました。

 我が家の小さな花壇は、100球1000円で買ったチューリップが、色とりどりの花を咲かせています。
 家内の丹精で我が家は道からよく見えるところにチューリップを植え、通る方が「チューリップが綺麗ですね」などといって下さるのを楽しみにしていました。
 今年も今がその季節です。

 わが家では、もう一か所、玄関わきのハナミズキの下のスペースに、陽が当らなくても育つようなものを植えています。
 ギボシ(擬宝珠)、シラン(紫蘭)などですが、今年は急に春先から、ニラ(韮)のような、しかし白っぽい細い葉が一面に伸びてきました。 

 何かが急に増えてなと思って、家内に聞きますと、あそこは何年か前に「原種のチューリップ」というのをもらってきて植えたといいます。
 チューリップというのは葉の幅が広く濃い緑ですかが、「これがチューリップ」と思っていたのですが、やはりチューリップでした。

 葉も細いのですが、茎も細く花も細く心細い感じですが、赤と白のツートーンの花は確かにチューリップです。細い茎が伸び、これも細いチューリップらしい蕾が3つほど伸びてきて、写真の様に開きました。

 このチューリップを、かつて、オランダの好事家が品種改良を重ね、今の堂々たるチューリップに育て上げたのかとつくづく思いました。
 そこまで頑張ってやったからこそ、その成果を収入につなげようと17世紀には経済史に残る最初のバブル経済「チューリップ・バブル」が起きたのでしょう。

 それにしてもチューリップの品種改良は、チューリップを世界に普及させて、輸出や観光とオランダ経済にも大きなプラスになっているという点も含め、大きな成果を上げたものだと思うところです。

 日本でも、江戸時代に、戦乱がなくなり、やることがなくなった武士たちが、朝顔の品種改良に熱心になり、江戸時代なりの「朝顔バブル」を起こしたようですが、朝顔はなかなか世界には広まらないようです。 代わりに、今は盆栽が世界的ブームですね。

 バブル経済はあまりよくないかもしれませんが、時に華々しいこともある花にまつわる経済問題などはまさに「平和の象徴」でいいですね。

2019ワシントンG20 :日本、経常収支問題を提起

2019年04月13日 12時37分43秒 | 国際経済
2019ワシントンG20 :日本、経常収支問題を提起
 日本時間の今日未明、ワシントンのG20は閉幕したようです。
 今回は、共同声明は出さないという事がったようで、いわばそれぞれの意見の言いっぱなし終わったという事でしょう。

 入ってきているのは議長を務めた麻生さんと副議長の黒田さんの談話が中心ですが、二国間交渉に固執するアメリカと多国間交渉を良しとする多くの国々を纏めるのは容易でないようです。

 世界経済も、IMFが成長見通しを引き下げるといった状況の中で、やはり最大の問題は米中関係だったようで、それにヨーロッパでは英国のEUりだつもんだいがこじれにこじれていることも含めて、世界経済の下振れリスクは確認という事のようです。

 ただ、中国もアメリカも景気減速には極めて敏感に反応するという前提でしょうか、摩擦や混乱があっても、適切な景気対策の実行を予想して、「下振れリスクは短期的で、今年後半には回復に向かうというIMFの見方で一致したとのことです。

 一方では米中摩擦長期化という見方もあり、G20としては必要な政策をとるべき、という希望、あるいは希望的観測という感じもしないでもありませんが、せっかく安定してきている世界経済の成長にマイナスになるような国際間の問題は出来るだけ柔軟な交渉を通じて避けたいものです。

 ところで議長国としての日本は、国際間の問題の背景にある「経常収支の不均衡」という問題を提起したようです。
 貿易収支ではなく経常収支を取り上げたという事は、政策のあり方としてはより優れていると思いますが、経常収支黒字国として目立つ国の中には当然日本が入っているわけで、総論はともかく、日本としての各論の在り方が注目されます。

 日本は近年貿易収支は赤字になることもあるようなほぼ均衡状態ですが、経常収支は、ドイツなどと並んで、大幅黒字国になっています。

 現象的には、第一次所得収支(海外からの利子配当収入など)の大幅黒字が原因ですが、見方を変えれば、日本は、国としての(財政ではありません)収入に比べて、支出が少ない分が経常黒字となっているわけで、このあたりの日本の経済構造が問題にされる可能性は多分にあるのではないでしょうか。

 本来なら、経常収支赤字の国が努力不足、金の使い過ぎといわれるべきかもしれませんが、最近では、経済活動を頑張って黒字を出している国が悪いといわれるような風潮が顕著です。

 イソップ寓話ではありませんが、「貯め込むアリ」と「乱費するキリギリス」どちらが良いのか悪いのか、日本が議長国としてこれから開かれる福岡のG7や大阪サミットなどで、どんな議論になるか、ならないのか、何となく気になるところです。

平均消費性向は下げ止まるか

2019年04月11日 23時50分41秒 | 経済
平均消費性向は下げ止まるか
 報告が遅くなってしまいましたが、4月の5日に、今年2月分の家計調査が発表になっています。

 毎月、家計調査から勤労者所帯(2人以上)の平均消費性向を定点観測のような感じで取り上げていますが、昨年来の低下傾向が、2月は下げ止まっています。

 具体的な数字は、

可処分所得  435,994円、前年同月比-0.6%
消費支出   302,753円、前年同月比 3.6%
平均消費性向   69.4%、前年同月比0.6ポイント増(前年同月は68.8%)

という事です。
 平均消費性向69.4%という事は、可処分所得(手取り収入)の30.6%を貯蓄に回しているという事ですから、勤労者所帯の家計がいかに貯蓄志向が強いかがわかります。

 利息も殆どつかない貯蓄に励むのは、将来不安が強いからと言われますが、昨年12月6.1ポイント。今年1月3.6ポイントと、前年同月比で大きく下げた平均消費性向も、もうこれ以上の消費切りつめはとても無理という限界まで来たのでしょうか。

 将来不安が小さくなったとは思えませんが、異常なまでの消費縮小、生活防衛意識がこれ以上強まることは、日本経済にとっても深刻なマイナス要因と思われますので、少し家計が、財布のひもを緩めてくれるような気分転換を期待したいところです。

 消費増税前の駆け込み需要という面もそろそろ出てくるのかもしれませんが、元号も変わり、社会の雰囲気も少しは変わって、平均消費性向が上がるような状況を期待したいところです。