tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「中流危機を越えて」雑感:労使関係と経済1

2022年09月27日 14時38分45秒 | 労働問題
前回は、標記の「NHKスペシャル」の主題の1つであった、オランダの政府と労使が1982年に取り結んだ1970からの欧米を悩ませたスタグフレーション脱出のための3者合意、いわゆる「ワッセナー合意」と、いま日本政府が推進しようとしている「働きから改革」の関連を中心に取り上げました。

もともとワッセナー合意の主目的は、無理な賃金引上げをやめインフレを止めて失業率を減らしスタグフレーション脱却するという事で、イギリスではサッチャー改革(4回にわたる労働関係法制の改定で労組の力を抑えた)フランスではミッテランが賃金凍結令をだすといった荒業を必要としたのでした。

ところがオランダはそうした荒業ではなく「ワークシェアリング」を中心に政労使3者が話し合って問題を解決したというので世界中で評判になったという事です。

ワークシェアリングというと、仕事のある人の労働時間を失業している人に分けて、失業を減らそうという事と言われますが、「本当の意味は労働時間にくっついている賃金も、労働時間と同じように分ける仕組み」のウェイジシェアリングと表裏一体なのです。
 
その時に賃金を減らされるのは困ると言えば、ワークシェアリングは成り立ちません。賃金の付いていない労働時間だけもらって喜ぶ人はいません。

オランダの政労使はそこを賢く合理的に考えて賃金が下がりインフレは収まり失業率は改善してスタグフレーションから脱出できたのです。

一部の人に所得が偏り失業者が出ても賃上げ要求という労使関係から、今払える賃金と仕事(労働時間)をみんなで分け合って、失業率をなくす、つまり所得がより均等に配分され、中流層が多くなるという事で経済が活性化したのです。

オランダの契約労働時間自由、同一労働・同一賃金の原則の原点はそこにあるのです。

ところで今のオランダを見ますと、消費者物価上昇率は2月までは6%台6月までは8%台が8月は12%、エネルギーと食品を除くコア部分は6%という事で、日本とは違い、アメリカEUタイプになっています。

コア指数は自家製インフレの色彩の強い部分ですが、EUの影響は強いようです。
オランダ中央銀行はECBとともに早期の大幅な政策金利引き上げを言っているようです。
(賃金についての情報は検索中です)

今回の混乱についてのオランダ政労使の取り組みの情報は特にありませんが、ワッセナー合意の示す所は、所得を広くより均質に分布するように国民全体が合意すれば経済は安定的に発展するという事で、これは大変大事なことでしょう。

そこで「NHKスペシャル」のテーマに戻りますが、中流の多くが下流に移行し、中流層がやせ細って、今や子供の6人に1人は貧困家庭の子と言われるようになった日本社会の原因を考えてみましょう。

さきに述べましたように、2013~14年の2発の黒田バズーカで日本は円高不況を脱したはずでした。
アベノミクスは「1億総活躍」のスローガンを打ち上げ、これから徐々に「ジャパンアズナンバーワン」の時代に戻るだろうと予測した人も多かったでしょう。

しかし結果はさんざんなものでした、非正規従業員は増え続け、経済成長は殆どなく、結果、賃金は横ばい、国民は将来不安と生活防衛で消費を削って貯蓄に励む。しかしゼロ金利で利息は付かない。政府の奨励に従って株式投資を試みても、成長しない国の株価は上がらない、儲けるのは資本規模の大きい人(金持ち)だけ、・・・。

こうした政治を、規則を曲げてまで長くやった人の「国葬」が今日行われているのです。
一体何を間違えたのでしょうか?
長くなりますので、次回、番組の中から、答えを探します。


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