tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

悲観論を丁寧に説明しても誰も喜ばない

2023年10月31日 17時44分38秒 | 労働問題
前3回にわたって、「賃上げ圧力の低い社会では生活は良くならない」ことを説明してきたつもりです。

「矢っ張りそうですね」とご理解いただいた方もおられますが、お読みいただいた方も、書いた私自身も、少しも面白くないと思います。

それならどうすればいいのか考えますと、「こうすれば良いでしょう」との提案が、実現可能かどうか別にしても、付け足されるべきだと気付きました。

アメリカやヨーロッパの労働組合は、先ず自分たちの生活を考えて、目いっぱいの要求をします。労使関係は元々敵対的なのです。
経営側と交渉してお互いの徹底的に突っ張って、最後に妥協したところがベストの結論というのが労使交渉の哲学です。

人間中心でコンセンサス社会の日本では、企業は人間集団、我儘より皆の事を考えて一致したところがベストの結論なのです。
労使関係でも当然相手の事も考えます。これは素晴らしい事ですが、相手の方が上手だったり強かったりすると上手く行きません。

日本の高度成長期にはラッカープラン(労使で望ましい労働分配率を決めてそれに従って利益と人件費を配分する方式)なども流行り、利益と人件費は同じ率で伸びるようにする企業もありました。

しかし、不況になって利益は半分に減っても、人件費は半分には出来ないので、不況になると止める企業が多かったようで、今は見られないようです。

日本の労働組合は殆ど企業単位ですから、従業員にも会社が潰れたら元も子もないという意識があります。最後は経営側の意向で妥協といったことも多いでしょう。

連合にしても、日本経済を大事にしなければという気持ちは強いでしょう。ですから経済成長がゼロか僅かの時に大幅賃上げなどとは言いにくいでしょう。

この生真面目さが、かつては労使協調、低インフレで「ジャパンアズナンバーワン」を生みなしたが、残念ながら今は、経済の停滞を生んでいるのです。

この違いを生まれる原因は何でしょうか。
具体的に言えば、「定昇+実質経済成長率」という連合の賃上げ基準が、合理的な賃金決定基準ではないという国際経済環境に、今の日本はあるという事なのです。

今の日本は、恐らく来春闘で10%程度の賃上げをしてもビクともしないでしょう。
「とんでもない、そんな余力はない」といわれる経営者は多いと思います。従来の感覚を前提にすればそうでしょう。

しかし、もし「人件費上昇分は製品・サービス価格を上げて結構です」という産業界全体の雰囲気が出来ればそれは可能でしょう。
政府・日銀の言う「賃金上昇を伴うインフレ目標」では「サプライチェーンの賃上げによる賃金コストの「2%」は、賃金上昇の価格転嫁はその範囲でOKなのです。

2%というのはアメリカのFRBがゼロ金利にした時決めたもので、日本は日本の状況に応じて決めるべきなのです。そして、政・労・使が合意すればいいのです。

今、賃金は(家計調査によれば)殆ど上らず消費者物価の食料品、飲料、外食、宿泊費などは10%前後の上昇です。政府・日銀はそれを注視(放置)しているだけです。

その程度物価が上がってもインバウンドは増えるばかりです。しかもアジアの途上国からです。彼らの購買力は賃上げで上昇、日本の物価は円安で下がっているのです。
一方、日本人の購買力は、この所の円安で、国際的に見れば下がるばかりです。購買力と書きましたが、これは賃金と置き換えてもいいでしょう。

こうした状況の中で、日本の企業の支払う賃金水準の決定基準はどう「あるべきか」というのが、与えられている本当の問題なのです。(長くなるので次回にします)

賃上げ圧力の強い社会、賃上げ圧力の弱い社会(まとめ)

2023年10月30日 16時59分15秒 | 経済
前2回で指摘して来た事は、欧米は賃上げ圧力の強い社会、日本は賃上げの弱い社会ですが、欧米は強すぎ、日本は弱すぎるといった方がいいようです。

このブログの認識では、今の日本経済の最大の問題点はこの「弱過ぎ」にあると言っていいようです。そこから出発して、2013年以降の日本経済の動向の「まとめ」として問題点を順に列挙してみます。

1、 賃上げ圧力が弱いと、国民の消費意欲が鈍ります。一方、付加価値(国民所得)の配分は人件費より企業への資本が過剰に配分されます。
2、 企業サイドが自主的に賃金(人件費)配分をするケースもありますが、全体的には低い賃上げ要求をさらに削った賃上げに抑え、長期不況で増やした低賃金の非正規はそのまま使う事が出来ます。

3、 企業の資本蓄積が進み投資意欲を刺激します。しかし国内は需要が少ないので、海外直接投資が増え、第1次所得収支(利子配当)が増えます。(賃金部分は外国で支払済)
4、 GDPは、ある程度増えますが、企業の設備投資中の片肺飛行状態が続き、消費は伸びず、資本分配過剰でPBRの低い企業が増えます。

5、政府は、政権の人気取りもあり賃上げを奨励し、給付金や賃上げ減税なども考えますが、赤字財政ですから国民は将来展望の不安から貯蓄優先で消費は増えません。
6、政府は国民の貯蓄が増えるので日銀の異次元緩和を背景に国債を増発、財政で景気浮揚を考えますが、逆に国民の将来不安を煽り、平均消費性向は下がり続けます。

7、日銀は異次元金融緩和の効果が、賃上げ圧力の強い国と同じと勘違いし、勘違いに気づいてもこれ以上の緩和策は無いので、賃上げ圧力上昇を注視して待つだけです。

8、その間も海外は皆インフレですから、エネルギーと食料の輸入依存度が高い日本では、消費者物価がじりじり上がり始めます。これに円安が拍車をかけています。
8、家計は、財源のない子育て支援策など当てに出来ない事を見越し、コロナ明けの消費増加も一時的で、見込みの立たない将来設計に苦慮、節約と貯蓄に戻るようです。

9、頼みの来春闘ですが、連合は、昨年要求に「以上」を付けただけで、賃上げで日本を救うといった気迫はなく、支持する立憲も、「賃上げよりバラマキ」指向です。

10、纏めてみますと、これでは来春闘の賃上げはあっても、基本的に状況は変わらず、実質賃金上昇の可能性は、アメリカのインフレの鎮静、金利の低下といった「人様頼み」になって、それが巧く行ったとしても(可能性は小さいですが)せいぜい、2,010年代の賃金は上がらないが物価も上がらにから良かった程度で、後はそれにしても防衛費の急拡大はどうするの、など将来不安は絶えないのではないでしょうか。

大変悲観的な「まとめ」になってしまいましたが、「賃上げ圧力の弱い社会」は元々明るく開けた未来を持つようには、極めてなりにくいという事なのではないでしょうか。

賃上げ圧力の強い社会、賃上げ圧力の弱い社会 :2

2023年10月28日 10時52分35秒 | 経済
前回は、世界のほとんどの国・社会は賃上げ圧力の強い国・社会ですが、そうした中で今の日本は稀に見る賃上げ圧力の弱い社会だということを指摘しました。

この所の原油などの価格高騰の中で、アメリカやヨーロッパでは軒並み10%前後のインフレが起きFRBやECBが金利の引き上げでインフレ抑制に大童でしたが、その原因は資源インフレに触発されて賃金インフレが起きているからです。

ところが日本では、政府や経済団体まで「もう少し賃上げをしましょう」と言っているのに、連合は要求基準を1%上げただけです。全労連などが10%賃上げを言っても、それは世論にはなりません。

その結果、賃金水準の上昇より消費者物価の上昇が大きくなり17か月連続で実質賃金が下がるといった現象が起きています。

こうした賃上げについての極めて慎重な姿勢が定着した主要な原因に1973年の石油危機の際の経験があることは前回書きました.

この労組の慎重姿勢への転換は第二次石油危機以降、日本産業の国際競争力強化に大きく貢献し、エズラ・ボーゲルは『ジャパナズナンバーワン』を書き、日本経済の黄金時代を作りました。
この成功は日本の産業界日本の労使に大きな自信を持たせたことは言うまでもありません。

しかし世の中はそう甘くありませんでした。相変わらず賃上げ圧力が高くコスト高で国際競争力を落としスタグフレーションに苦しむ欧米主要国は、独り勝ち状態の日本を何とか抑えようと1985年G5で日本に為替レートの切り上げを要請したのです。これが「プラザ合意」です。

日本は鷹揚にそれを受け入れました。G5に出席していたのは当時の大蔵大臣と日銀総裁です。そして2年後、円レートは$1=240円から120円になりました。
これは、この2年間に賃金を2倍に上げ、物価も2倍に上がる賃金インフレと同じことで、日本経済は欧米のスタグフレーションを飛び越えて、賃金も物価も半分に下げなければならない「円高デフレ」になりました。
 
それから2008年のリーマンショックでさらに$1=75~80円という円高になったことも含めて、2013年の黒田さんの異次元金融緩和で$1=120円に戻るまで、賃上げなどはとても考えられない状態が続きました。

1974年に石油危機で「無理な賃金引き上げは駄目」と学習し、その後は賃金引下げが要請されるデフレで2012年まで「賃上げは望ましくない」という30年近い経験は、日本人に

「賃金は上がらないもの」「我々は親の代より貧しくなる」という固定観念を植え付けたようです。

働く人たちの間でも、「これからは賃金の上がらない時代」、「年金も目減りする時代」といった意識が一般的になり、労働組合も「賃上げ要求」は必要最小限にとどめる(定昇程度)ということになりました。

そして異次元金融緩和で、為替レートが正常化し、賃金要求が可能な環境になっても、連合は、無理な要求は良くない、定昇+2%(希望経済成長率)程度にすべきという認識に従った要求に自制することになったようです。 

日本社会が「賃上げ圧力の弱い社会」になった原因はざっとこんな所でしょう。

経済成長は元来、需要の増加が無ければ起きません。経済成長という言葉は産業革命があって初めて生まれるのです。技術革新で社会はより豊かで便利なものになるという事に人類が目覚めたのです。

そして技術革新のためには資本蓄積が必要と知り、資本主義という言葉も生まれたのでしょう。

全ては豊かで快適な社会を望む人間の欲求から発し、その実現のために必要なものは所得、そして社会システムとして、所得の増加は賃上げによって可能になるのです。
これが賃上げ圧力の弱い社会では、巧く働かないという事なのでしょう。

次回は、日本の現状を見つつ必要なことを整理してみたいと思います。

賃上げ圧力の強い社会、賃上げ圧力の弱い社会

2023年10月27日 16時56分00秒 | 経済
黒田さんが日銀総裁になったのは2013年です。
安倍さんに見込まれて、日本経済を救うために就任したのでしょう。それまではアジア開発銀行の総裁をしていたと思います。

当時日本は、アメリカがリーマンショックで世界が金融恐慌の陥ることを避けようと、バーナンキさんがとった「ゼロ金利政策」のせいで、2009年以来$1=75~80円という円高で経済破綻の縁にいました。

黒田さんは就任早々、アメリカ流の金融緩和を実行しました。所謂2013年と14年の黒田バズーカで「異次元金融緩和を打ち出しました。
この効果は覿面で円レートは120円と大幅な円安になって、日本は国際競争力を取り戻し、アベノミクスの第1の矢は大成功、日本経済復活の土台が出来たのです。

黒田さんの描いたシナリオは2つの政策の上に成り立っていたようです。
1つは徹底した金融緩和で円高を正常な為替レートの戻すこと、もう1つは、正常な為替レートを梃子に、デフレ経済を2%程度の軽いインフレ経済に転換する事だったのです。

そして第一の政策は見事クリアされたのです。
しかし、第2の政策「2%インフレ目標」は10年の任期を終えて退任するまでクリアできませんでした。

黒田さんは第2の政策も楽観していたのでしょう。「二年程度で2%インフレは到達と言っていました。
アジア開銀で、多くの国の経済を見て来ている黒田さんにして、何故読み間違いをしたのでしょうか。

これが今日の表題の「インフレ圧力のある社会、ない社会」になっているのです。そして、黒田さんに代わって登場した植田総裁も、就任当初、同じ読み違いをしたようで、結果は打つ手がなく、黒田路線の延長になって、時を待つことになってしまっているのです。

黒田さんも植田さんも、共通に見誤っている点は、日本も、世界の多くの国と同じように、「賃上げ圧力の強い国」という前提に立っているのです。そしてそれは経済学者の常識としても当然で、今の日本が、世界でも稀な「賃上げ圧力の弱い国」だという例外的な国なのです。

日本も1974年までは結構強い賃上げ圧力のある国でした。
当時の日本の労働組合の春闘における要求は、必ずしも「%」などは決めずに「前年プラス・アルファ」というのが一般的でした。「昨年より高い賃上げ」です。

これでは結果は「賃金コストプッシュ・インフレ」になるのは当然で、日本でも、1974年、第一次石油危機の翌年の春闘賃上げ率は33%に達し,その年の消費者物価上昇のピークは26%に達してています。当時、これは労働運動としては当たり前で、世界の主要国でも軒並みインフレに悩まされていました。
  
インフレ目標と言えば、賃上げを抑えてインフレを低くすることが目標というのが当たり前で、賃上げ抑制で、国際競争力を維持強化する事の経済健全化に必要というのが世界の経済の常識でした。

経済学としては、これを「所得政策」と名付けて賃金と生産性と物価(インフレ)の関係を正常化して国際競争力の確保を確実にするのがあるべき経済運営というわけです。 

日本は労使がこれを守り、労働組合も石油危機の経験に学んで、「余計な賃上げ圧力は日本経済のためにならない」という極めて健全な感覚(理論)を持つようになったのです。

その後、この賃上げ圧力の抑制が予期せざる事態に発展します。(以下次回で続けます)

政治と企業経営

2023年10月26日 21時19分56秒 | 経済
政治と企業経営
政治と企業経営と並べてみても、あまりピンと来ないかもしれません。しかし政治と企業経営とは基本的な共通点があります。

以前、日本経済が好調で、世界の多くの国が、日本の経済成長力を羨み、Look East! とかLook Japan! といったころ、日本では「日本株式会社」という言葉が流行っていました。

日本という国には沢山の会社がありますが、日本という国自体が、あたかも1つの会社の様に、成長、発展という目的に向かって進んでいるといったイメージを持たれることが多かったからでしょう。

会社でも「全社一丸」などという言葉がありますが、みんなが同じ目的に向かって助け合い、切磋琢磨して成果を上げるというイメージでしょう。

日本人はこうした共通な目的を持った「人間集団」になった時、力を発揮するようで、スポーツでも、団体戦に強い日本などと言われます。
そんな訳で、多くの国で、欧米の職務と個人重視の経営と一味違う人減中心の「日本的経営」が注目されたのです

今は日本はゼロ成長の冴えない国になってしまいましたが、長期不況の中で、多分日本的経営を忘れたからでしょう。でも、社長以下一丸になって頑張る会社もあって、そういう会社は今も業績が良いようです。

そこで政治の話になりますが、政治というのは「国を経営する」という事です。経営の基本は、持てる経営資源を最高度に活用する事であると言われ、経営学の大家であるJ.バーナムやP.ドラッカーもそういっています。

日本は資源のない国で、持てる資源と言えば「人間」という事でしょう。
ですから、日本国、日本株式会社の経営においては、人間を最大限活用することが一番大事という事になります。

そのためには日本株式会社の社長である総理大臣が、国民の心を掴み、日本の経済社会の成長発展という共通の目標に向かって頑張るようにリードしなければなりません。

ところが、今の現実は、岸田内閣の支持率は、僅か29%だそうで、これでは国民が打って一丸の実現はとても無理でしょう。

「うちの社長はダメだね」などと社員が言っている会社が業績だけ良いという事はないようです。
それなら、今の日本株式会社の経営は上手く行かなくて当たり前だね、と言って政府に不満を言っていればいいのかというとそれも駄目のようです。

理由は明らかで、政治家は皆、国民が選挙で選んだ結果だからです。現状は、より多くの人が間違った選択をした結果です。選ばなかった人(棄権した人)はもっと無責任なのです。つまり責任はすべて国民にあるのです。だから、逆もあり得るはずです。

「国民が 思慮深くなれば、思慮深いリーダーが選ばれる」とい言葉を信じて、次の選挙から思慮深くなるよう、お互いに努力しましょう。

日本経済低迷の実態をGDP統計で見る

2023年10月25日 22時09分09秒 | 政治
日本経済低迷の実態をGDP統計で見る
昨日のブログで、この10年来日本政府の経済政策は、全く見当違いの事を続けて来たのではないかと書きました。

そのあたりをGDPの構成の推移から見てみようとしたのが今日の試みです。

昨日は、実質GDPの構成の日米比較をして、アメリカ経済の元気の源は国民の消費需要の旺盛な所にあるのではないかと指摘しましたがそれはその通りだと思います。

日本でも政治家も経済学者も評論家も殆どに人たちが、日本経済の不振の原因は個人消費の不振にあると指摘し、消費需要の喚起が重要と言っています。

そして不振の原因は、将来不安、老後不安で貯蓄に走り、消費は節約の対象になっている事や格差社会化が進んで、貧困世帯が増え、中間層が薄くなって来てしまっていること、更にはコロナ禍で巣篭り生活になったことまで挙げられて来ている事は 皆様ご承知です。

政府もそれに手を打とうと、国民の貯蓄が増えているのを担保に、赤字国債を大量に発行して補助金、給付金のバラマキを重ね、それで何とか消費需要を支えて、経済活動の活発化につなげようとしています。

また企業の業績が良いこと、株価が上がって来ている事を背景に、貯蓄から投資へと庶民のカネを誘導し、企業も得、庶民も得と言っています。

しかし、そうした動きでは、どうも経済は活性化しないという事がこの10年来のGDPの実績から見えて来ている事には気付いていないようです。

下の図を見て頂きますと、そうした問題点が見えてくるように思われるのです。

過去10年間の実質GDP 構成の推移

                 資料:総務省「国民経済計算」

2011年度はリーマンショック後の日本経済の最悪期でした。そこから出発して2012年度には日銀の白川総裁が1%インフレ目標で少し円安に、13年度、14年度と黒田総裁のゼロ金利政策進み、円レートが80円から120円と正常化が達成されました。

国際競争力は回復、企業利益は急速に復活です。賃金も上昇を始め経済が回り出します。この期間には政府支出の赤い線は下降気味、民間消費(青)と設備投資(緑)が上向きです。多くの人は、これで景気回復と期待しました。

ところが、その後がおかしくなっています。民間の経済活動が元気になり、財政の梃子入れは後退するはずが、どうでしょう、設備投資の緑の線は順調に伸びていますが、民間消費の青い線は一貫して下降気味です。

結果、財政テコ入れは相変わらず続き、日本経済は消費不振で設備投資の片肺飛行、財政の役割は減らない形で20年度コロナ禍による「消費沈滞、投資も減少、財政出動」という最悪の状態になっています。

ここで問題は、なぜ民間消費が伸びなかったかです。このブログとして、1つの答えを出しておきましょう。

多分それは、政府が全てを取り仕切らなくてはならないと考えるようになり。その権力と能力を過信するようになったことにあるようです。

典型的な例を挙げれば、「働き方改革」然り、「成長と分配の好循環」然り。これらは民間の現場の創意工夫から生まれるものです。
政府の指示で出来るものではありません。もともと、政府はノーハウの開発もその実行もできないのです。

政府が手を出せば出すほど、民間労使はやりにくくなり、やる気をなくし、そこまでうるさいのならやらせておけという事になり、「神の見えざる手」の反対の「政府の見える手」がはびこって、経済効率は悪化するばかりなのです。

「来春闘は労使にお任せします」と言えば、労使は「貧困家庭の増加は、我々の責任だ」と考えることになるでしょう。

「何でも決める、何でも出来る」は独裁政権の特徴です。独裁政権は今、世界に害をなしています。日本の政府は十分気を付けてください。

日本経済低迷の実態をGDP統計で見る

2023年10月25日 22時09分09秒 | 政治
日本経済低迷の実態をGDP統計で見る
昨日のブログで、この10年来日本政府の経済政策は、全く見当違いの事を続けて来たのではないかと書きました。

そのあたりをGDPの構成の推移から見てみようとしたのが今日の試みです。

昨日は、実質GDPの構成の日米比較をして、アメリカ経済の元気の源は国民の消費需要の旺盛な所にあるのではないかと指摘しましたがそれはその通りだと思います。

日本でも政治家も経済学者も評論家も殆どに人たちが、日本経済の不振の原因は個人消費の不振にあると指摘し、消費需要の喚起が重要と言っています。

そして不振の原因は、将来不安、老後不安で貯蓄に走り、消費は節約の対象になっている事や格差社会化が進んで、貧困世帯が増え、中間層が薄くなって来てしまっていること、更にはコロナ禍で巣篭り生活になったことまで挙げられて来ている事は 皆様ご承知です。

政府もそれに手を打とうと、国民の貯蓄が増えているのを担保に、赤字国債を大量に発行して補助金、給付金のバラマキを重ね、それで何とか消費需要を支えて、経済活動の活発化につなげようとしています。

また企業の業績が良いこと、株価が上がって来ている事を背景に、貯蓄から投資へと庶民のカネを誘導し、企業も得、庶民も得と言っています。

しかし、そうした動きでは、どうも経済は活性化しないという事がこの10年来のGDPの実績から見えて来ている事には気付いていないようです。

下の図を見て頂きますと、そうした問題点が見えてくるように思われるのです。

過去10年間の実質GDP 構成の推移

                 資料:総務省「国民経済計算」

2011年度はリーマンショック後の日本経済の最悪期でした。そこから出発して2012年度には日銀の白川総裁が1%インフレ目標で少し円安に、13年度、14年度と黒田総裁のゼロ金利政策進み、円レートが80円から120円と正常化が達成されました。

国際競争力は回復、企業利益は急速に復活です。賃金も上昇を始め経済が回り出します。この期間には政府支出の赤い線は下降気味、民間消費(青)と設備投資(緑)が上向きです。多くの人は、これで景気回復と期待しました。

ところが、その後がおかしくなっています。民間の経済活動が元気になり、財政の梃子入れは後退するはずが、どうでしょう、設備投資の緑の線は順調に伸びていますが、民間消費の青い線は一貫して下降気味です。

結果、財政テコ入れは相変わらず続き、日本経済は消費不振で設備投資の片肺飛行、財政の役割は減らない形で20年度コロナ禍による「消費沈滞、投資も減少、財政出動」という最悪の状態になっています。

ここで問題は、なぜ民間消費が伸びなかったかです。このブログとして、1つの答えを出しておきましょう。

多分それは、政府が全てを取り仕切らなくてはならないと考えるようになり。その権力と能力を過信するようになったことにあるようです。

典型的な例を挙げれば、「働き方改革」然り、「成長と分配の好循環」然り。これらは民間の現場の創意工夫から生まれるものです。
政府の指示で出来るものではありません。もともと、政府はノーハウの開発もその実行もできないのです。

政府が手を出せば出すほど、民間労使はやりにくくなり、やる気をなくし、そこまでうるさいのならやらせておけという事になり、「神の見えざる手」の反対の「政府の見える手」がはびこって、経済効率は悪化するばかりなのです。

「来春闘は労使にお任せします」と言えば、労使は「貧困家庭の増加は、我々の責任だ」と考えることになるでしょう。

「何でも決める、何でも出来る」は独裁政権の特徴です。独裁政権は今、世界に害をなしています。日本の政府は十分気を付けてください。

「経済」3連呼、気持ちは解りますが

2023年10月24日 14時13分10秒 | 経済
「経済」3連呼、気持ちは解りますが
岸田総理の所信表明演説で経済重視は解りました。
国民もみんな期待しているのですが、現実はそう簡単ではないようで、「成長の分配の好循環」を掲げてからもう2年ですが、基本的に低成長、実質賃金低下、物価の高騰といった予想しない事ばかりの中で、日本経済は相変わらず低迷状態です。

所信表明演説で、総理は、GDPギャップが需要超過に転じた中で、供給力強化をめざし半導体や脱炭素、省力化に取り組むと言われていますが、どうも国民の思いとの「ずれ」が目立つようです。

国民の最大の関心は、賃金が多少上がったと言っても実質賃金は低下が続き、一体いつになったら日々の生活が改善するのかという事でしょう。

そんな意識で、景気が元気すぎて金融引き締めに苦労しているアメリカとGDPの構造を較べてみることにしました。

GDPは国民の消費需要、企業の設備投資、政府の支出そして純輸出(輸出-輸入)で構成されています。昨年来需要超過など言われたのは「コロナ明けと巣篭り疲れ」の反動で消費が堅調(平均消費性向上昇)だったことが大きいようです。

今春闘に賃上げを期待した家計も多かったと思いますが、あの程度では物価上昇に追いつかず、このところまた生活防衛で平均消費性向は下がりつつあります。
総理もご承知と思いますが、消費の伸びない経済は成長しません。

アメリカのGDPの中の個人消費の動きを見ますと一昨年からの物価上昇の中でも2022年から2032年の10年間、実質消費需要が年率平均1.9%伸びています。10年で続けは実質賃金は21%上がります。

アメリカ経済が元気なのは国民の消費需要が引っ張っているからという解説は多いですが、GDPの構成比の日米比較をしたのが下の図です。これは実質ベースの数字です。(基準年:日本2015年、アメリカ2012年)。

日米GDPの構造の比較

                         資料:各国統計

日本では民間消費の割合は50%ちょっとですが、アメリカは70%を超えています。
日本はその分企業の設備投資と政府支出が多くなっています。

つまり。企業と政府がカネを使って、家計は収入が増えないから使えないう構図です。

設備投資の多い割に、新興国に後れを取っているのは経済成長がないので金額が増えて行かないからでしょう。
政府は消費が伸びない分を補助金などで埋めようと赤字国債を出しますが、どうも給付金では(賃金が年々増えないと)国民は安心して消費を増やすことはないようです。

この図のような構図が続く限り、日本経済の成長は上手く行かないでしょう。理由は国民が楽しくないからです。
先行き給料が上がって生活が良くなるという希望があって国民の元気が出るのです。今の日本は「親の代より生活が良くならない」と国民が考えています。

個人消費が、実質値で増え、GDPの中の個人消費の割合が60%を超えて行くような政策が必要なのでしょうが、補助金と給付金では、そうなりそうにありません。

この10年程、政府は全く見当違いの政策を続けて来ているのかもしれませんね。

岸田政権の視線の先:アメリカか世界か

2023年10月23日 16時47分53秒 | 国際政治
今日は、岸田総理の1日遅れた所信表明演説です。

すでにマスコミでも、総理が時限的な所得減税の指示をしたとか、野党は社会保険料の軽減とか給付金支給とか、物価と庶民生活の問題についての論点は賑やかですが、いずれも国民所得の分配構造といった基本問題より、実質賃金の低下といった表面的な事象へのパッチワークをどうするという議論のようです。

そのあたりはこれからの与野党の議論を見ていくしかありません。今日は、パレスチナ問題で世界中が大きな心痛を抱く「報復の連鎖」についてです。こうした問題に根本解決はないという視点と、日本の取るべき態度について考えてみたいと思います。

パレスチナ、ハマスの問題は歴史を遡れば、十字軍の時代にい達するといわれます。
但し、宗教の問題は、歴史の中でも宥和の時代もあり文化的にも、イスラム教文化とキリスト教文化の融合は、ヨーロッパでもたくさん見られるところです。

庶民の世界では宗教の平和共存は日常生活の中で一般的なものでしょう。宗教が違えば対立しなければならないというのは、宗教が政治と結びついて、権力者が自分の権力拡大の野心を持つ場合に限られるのではないでしょうか。

この実態をつぶさに見れば、宗教の違いは実は口実で、本心は自分の権力の維持拡大のために宗教の違いを利用するというのが真実に近いようです。

ロシアの場合は、プーチンの領土拡大の野望が原点であることは明らかですし、イスラエルとパレスチナにしても、双方の住民の間では摩擦も相互依存もあり、ミサイルや空爆による相互に巨大な犠牲を強いる破壊と殺戮を望むなどという事はありえないでしょう。

にも拘らず、巨大な人的、物的犠牲を無視して、テロと呼ばれる攻撃を仕掛けるのは、自分の権力・立場の誇示、相手に大きな 損害や衝撃を与えれば権力者としての権威を誇示できるという、事の前後もを弁えない衝動の結果でしょう。

対立する相手は、当然こうした攻撃を座視することが出来ません。戦争に引き込まれざるを得ない事は正当防衛(反撃行動)が国際法上も認められているように、避ける事の出来ない状況に追い込まれるのです。

そして、こうした行動は、歴史的に見れば権力者の権力意欲が強いほど「報復の連鎖」となって繰り返されるのです。

この「報復の連鎖」を断ち切る話は、日本では仇討禁止令や菊池寛の「恩讐の彼方に」などいろいろあり、人類は知恵を発揮して来たのでしょうが結局は個人の場合は怨念、組織や国の場合は権力者の欲と人間性の在り方に帰結するのでしょう。

システムとして「権力者の欲望」を封じ込める主要な方法は民主主義でしょう。歴史が示すように戦争を起こすのは独裁者が殆どです。庶民は何時でも何処でも平和を望んでいて、その願望は武器の進歩とともに強くなり、原爆については決定的な反対となっています。

という事で、それでは、最後に日本のあるべき姿につてです。
日本は憲法で戦争放棄を謳う国です。そしてこの70余年、国際対立を無くすべく常に努力して来ています。
その成果は、多くの国が「多くの対立関係がある世界の国々の中で、日本は、対立を抑止し、話し合いを尊び、紛争を抑止するための考動の出来る国、という見方に結実しています。

ところがトランプ=安倍の蜜月以来、アメリカ追随の行動が多くなり、その見方にひびが入りつつあるようです。

アメリカが国際関係について一方的な見解を取る時、日本はアメリカに「対立は非、話し合い、融和こそが持続可能な世界の平和と安定発展を齎す」と率直に発言すべきだ、と言ってほしい。それが言えるのは日本しか無い、という意見が聞こえています。

つまり日本にはアメリカだけではなく世界全体を見てほしい、日本なら、アメリカに率直に意見を言えるはずだという見方でしょう。

こうした意見がある事を日本は誇りに思わなければなりませんし、日本国民もそれを望んでいるでしょう。

岸田政権の視線の先には、アメリカだけではなく「世界人類社会」全体があって欲しいとという広汎な願いを岸田政権はどう理解するのでしょうか。

9月消費者物価、数字は沈静傾向を示すが

2023年10月21日 14時27分22秒 | 経済
昨日、総務省統計局から9月分の消費者物価指数が発表になりました。
マスコミでは、前年同月比の上昇率が2.8%と13カ月ぶりに3%を下回った事を見出しにしているようです。

これは政府の方針でしょうか、何時からか天候や節変動のある生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」の数字を使うようになりましたが、消費者物価全体の動きを示す「総合」は3.0%でした。(下図参照)

  消費者物価主要3指数の対前年同月上昇率の推移(%)

                資料:総務省統計局「消費者物価指数」

それにしても、青い線(総合)、赤い線(生鮮食品を除く総合)緑の線(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の主要3指数が揃って、下げているという事は大変結構なことで、これで消費者物価の上昇も一段落かと思いたいのですが、まだ問題があるようです。
 
赤い線は最も下げ幅が大きく8月の3.1%から9月の2.8%へ0.3ポイント下がって順調(値上がりした生鮮食品が入っていない)ですが、青い線は3.2%から3.0%へ0.2ポイントの下げ、緑の線は生鮮食品抜きですが4.3%から4.2%へ0.1ポイントの下げです。

夫々の線の高さを見れば、緑の線はまだ4%以上の年率上昇率で、あまり下がっていません。この「生鮮とエネルギーを除く総合」は、電気、ガス、ガソリンといった費目を除いたものですから、政府の補助金で安くなっている分が入っていません。

2月のところを見て頂けば分かりますが政府の補助金によって1%ポイントほど青と赤の線が下がっているのが解ります。緑の線は下がっていません。これが本当の消費者物価の状況で、補助金はいつか終わって、その時、結局消費者物価上昇は統計数字より1%以上高かったことが解ることになります。

下の図は消費者物価の上記3指数の長期トレンドを見たもので、2月に補助金で下がったことはここでもよく解りますがその前後で、それぞれの線の上昇角度には、未だ大きな鈍化は見られません。

消費者物価主要3指数の動き

                  資料:上に同じ

今、値上がりの中心になっている食料やその他の生活必需品(トイレットペーパーなど)を含む、緑の線は10月からの4000品目の値上げの影響をどのくらい受けるか気になるところです。

日銀の植田総裁は、今は一時的沈静で、今後、賃金水準上昇の影響が出て再び高くなるだろう言っていますが、同時に心配されるのはこの所の異常な円安が、アメリカの都合で当分続くのではないかという懸念です。
改めてそれが、企業物価、消費者物価の上昇にどの程度の影響を持つか、これも予断を許さないところです。

来春闘の賃上げがかなり高くならないと、実質賃金のマイナスは来年度に入っても続く可能性が「無きにしも非ず」と心配されるところです。

財界は「5%以上」でも難色か?

2023年10月20日 14時56分17秒 | 労働問題
財界は「5%以上」でも難色か
連合が来春闘の地投げ要求を「5%以上」という事で正式に発表しました。

このブログの分析からすれば、昨年・今年の「賃上げ」は日本経済の行方の決定的な判断材料になるもの。岸田総理の減税政策よりずっと重要な経済的影響力を持っています。
しかし、残念ながら新聞の記事などは、それに比し随分小さいようです。

政府の減税政策は、経済状態の後追いのパッチワークですが、連合の賃上げ要求は日本経済全体の過半を占める家計の消費需要を左右し、日本経済のバイタリティーに決定的な役割を持つ日本経済の原動力を左右するものだからです。

それにしては連合は慎ましやかだと思いますが、日銀は大きな関心を持っているようです。
日銀は「賃上げを伴う物価上昇」が起きることが異次元金融緩和政策の転換の条件と言っていますから実質賃金低下では動きが取れないとの思いもあるのでしょう。

要求は、昨年の「5%」に「以上」が付いた「だけ」ですが、財界からはすでに懸念の声が上がっているようです。

特に中小企業の代表とも言うべき日本商工会議所は「物価上昇をカバーする賃
上げが望ましいと言いながら「以上」が付くことには難色を示すようです。

財界総本山の経団連は「物価上昇以上の賃上げに昨年同様取り組む姿勢」のようですが、昨年は、その意気込みも成果なしでした。

財界は、連合の要求を受けて立つ立場ですから、受け身になるのは当然かもしれませんが、経済界として、日本経済を活力ある成長経済に持っていくために如何なる賃上げが必要かという、日本経済を支える立場からの発言が聞きたいところです。

経団連の十倉会長の言葉からは、そうした雰囲気が感じられるところですが、具体的な説明がないのが残念です。

「望ましい」のは、連合の「以上」をつけた要求がそれなりの成果を上げ、昨年以上の賃上げ率が達成され、一方、物価の方は現状がピークになり、次第に落ち着き、結果的に実質賃金がプラスになって行くというプロセスが「巧く」起きてくれる可能性です。

しかしこれはかなり難しいことになりそうです。今の消費者物価の上昇は3%台ですが、エネルギー関係の補助金で1%下げていますから本当のインフレは4%台となり、賃上げが1%増えても実質賃金プラスは難しいでしょう。
政府は補助金を当面延長と言っていますが、補助金は一時的で持続可能ではありません。

一方食料品や日用品のような生活必需品の値上がりは10%前後に達し、10月からの一斉値上げでさらに上昇の可能性もあります。

最近の物価上昇の主因であるアメリカの金利引き合上げによる円安は、アメリカの都合でまだ続きそうです。結果、物価は上がり、家計調査で見ますと、この夏から家計は緊縮の生活防衛に戻り、平均消費性向は低下する様相が見えています。

日本人は耐乏生活で、良いものを安く作って、外国やインバウンドを喜ばせているというのがアベノミクス以来の日本という事なのです。円安対応の方法論が間違っているのです。

政労使と言いますが、政府が本気で考えているのは「選挙」で、経済政策は後追い中心、労使は共に受け身で、自分達が日本経済を創っていく気概を忘れているようです。

石油危機の時には経営者が日本を救おうと立ち上がりました。そして成功し「ジャパンアズナンバーワンの基礎を作りました。
その伝で言えば、いまは連合が賃上げで日本を救う立場でしょう。変動相場制下の賃金決定論の理論的支柱になってくれることを期待します。
<蛇足>
問題は日本全体が受け身になっている事でしょう。政府はアメリカの受け身、国民はその政府の政策に受け身で注文を付けるだけ。
これがあらゆる分野で世界ランキングを落としてきた衰亡日本の最大原因のようです。

政労使協力して合理的な経済対策を

2023年10月19日 15時14分58秒 | 経済
政労使協力して合理的な景気対策を
いよいよ臨時国会が始まりますが、岸田総理は経済対策の方向として税増収の国民への還元を所得減税も含めて考えているとの報道がありました。

自民党内にも、防衛費増額や子育て支援などの財源が不明なのに、所得減税などが出てきたらという懸念もあるようです。
減税より手当の方が効果的(集票に?)という意見や、一時的な減税は貯蓄を増やすだけなどの意見もあるようですがどうするのでしょうか。

一方、立憲民主党は、物価高に苦しむ家庭に「給付金」という方向のようですが、所得制限なしの一律給付などと言われると、やっぱりバラマキか、ともなりそうです。

減税と増税の同時実施といっても、中身が合理性のあるものならば、それは大いに結構でしょう。本来格差社会の是正を所得税制でやるのには、累進カーブの是正が当然です。増税と減税が同時に発生します。

ところで、この所の税収増の原因を考えますと大きな要因が2つあるように思えます。
1つは、円安による為替差益:輸出関連部門、インバウンド関連の好調
2つに、物価上昇による消費税の増収。

円安による輸入関連部門の損失は、国内価格への転嫁容認とエネルギー関連部問への補助金などで、石油元売りや電気ガス事業の株価が上ったりしていますが、この財源は国債でしょう。

本来円安は輸出部門の為替差益、輸入部門の為替差損が対照的に起きるのですから、価格機構で相殺すべきものなのでしょう。
輸出部門が企業努力なしに為替差益を得、輸入部門が補助金で差損を埋める政策の合理性は余り無い様です。

こうした政策の結果、法人税収が増え、国債発行が増えると結果的にインフレになるようです。割を食うのは「消費者」という事でしょう。

ならば、政府が税の増収分を国民に還元するという場合の相手は国民といっても「消費者という立場」に対して還元するのでないと合理的ではないでしょう。

消費者に対して還元するのであれば、消費税減税が最も相応しいのではないでしょうか。
連合が大幅賃上げを勝ち取ってくれればと思いますが、前回指摘しましたように、この分では、実質賃金マイナスの解消はなかなか難しいようですが、消費税を一時的に3~4%下げれば消費者物価は多分2%以上下がり、実質賃金の上昇率は何とかプラスになるでしょう。

勿論、この消費税減税は円安がなくなって、消費者物価が下がれば漸次元に戻し、実質賃金が適切なプラスを維持するように調整すればいいのです。

政府が、所得格差是正が必要と思えば、それは所得税の累進度を変えればいい事で、これは税増収とは関係なく、社会政策としての問題です。

来春闘、連合「5%以上」を要求の方針!?

2023年10月18日 12時35分17秒 | 労働問題
来春闘、連合「5%以上」を要求の方針!?
最初に指摘しておきたい事:「連合が要求しなければ日本の賃金は上がりません。」

まだ組織決定ではないようですが、即座に感じたのは、これでは今迄の繰り返しになってしまうという危機感です。

解説には、昨年は「5%程度」でしたが、連合は「表現を強めた」と書いてありました。
連合は誰かに遠慮しているのでしょうか。マスコミでは17カ月連続で実質賃金低下と書かれています。国際的な日本の賃金は大幅に低下しています。

連合は労働者を代表する組織のはずです。殆どの日本の家計は労働者の賃金によって支えられているのです。当然賃上げは最大の関心事です。

政府は賃上げ奨励、昨年は経団連も賃上げ容認と言って、連合は3.8%の賃上げ獲得と自讃しましたが、その結果は17か月実質賃金マイナスの連続です。何かが間違っているのです。

今年は、加えて大幅円安の最中です、円レート149円は2年前に比べれば35%の円安で、ドル建てで見れば、日本の賃金水準は2年前に比べれば26%下がっているという事です。

連合の賃上げ要求は「定昇2%+ベア3%以上」という事ですが、円建ての賃金低下に較べればほんの僅かです。国際的に見て日本の賃金水準は下がる一方です。

日本は元々国際競争力で生きている国ですから、円安で強くなった国際競争力はどうなっているのかと言いますと、それは輸出関連部門の円高差益になって、増益の結果法人税収入は増え、企業と政府が潤っているのでしょう。

政府はそれと国債発行の収入で、輸入部門への補助金や、各種のバラマキです。
働く人々への分配は、連合の獲得力では、結果は17カ月連続の実質賃金マイナスという事に連合は気付いているのでしょうか。連合は勤労者家計を支えているのでしょうか

連合の誤解は、インフレを気にし過ぎている事でしょう。50年前、石油危機の時、当時の日経連が賃上げを抑えて、インフレを止めるべきだと主張したのは、インフレは日本の生命線である国際競争力の喪失に直結するという危機感からでしょう。

今は、国際化がさらに進み、インバウンドも含めて日本の競争力は目に見える形で実感出来ます。日本は為替レート110円でも国際競争力のあることはすでに実証されています。

いまの円レート149円が早晩110円に戻るというのなら為替レートの変動は一時的と片づけられるかもしれません。
しかし日銀短観にも見るように、企業は当面130円を想定していますし、アメリカ経済を見ても、円安は簡単には収まらないようです。

主要国がインフレを経験するたびに、日本の国際競争力は強くなります。
アベノミクスの時は、80円から120円への円レートの変化のかなりの部分を非正規労働の正規化や全体的な賃上げに使い、国際競争力の向上を労働分配にも使うという発想がなかったゆえに、10年近い消費低迷、ゼロ成長状態を招く結果になりました。

これからは世界の物価が上がれば日本の物価も上がります。国際経済の浸透はますます激しくなるでしょう。

連合は、賃金問題を、円建てのインフレ問題で考えるのではなく、日本の国際競争力とのバランスで考えるような感覚を持たなければ、日本の勤労者の家計の改善は進まず、日本の賃金水準の国際ランキングの上昇は望めないのではないでしょうか。

国連のさらなる役割に期待

2023年10月17日 14時07分25秒 | 国際政治
善と偽善をどう判断するかの典型のような事が、国連を舞台にして起きているようです。

ロシアがハマスの名を出さずに対イスラエル紛争の即時停戦と人質の解放、人道支援などを組み込んだ決議案を国連安保理に提出しましましたが、16日、否決されたそうです。

同様の決議案がブラジルからも提出されているとのことで、これは今日17日に持ち越されているとのことです。

常識的に考えれば、ウクライナに勝手に侵攻して破壊と殺戮を繰り返しているロシアが、どんな顔をしそんな決議案をと思うところですが、ロシアは自らの行動は正当なものとして偽善を押し通す国という事を天下に示したという事でしょうか。

ブラジルの決議案の採決結果はまだ解りませんが、こうした極限状態に至るまでに、国連の果たす役割はあったのではないかという事を感じさせるのはグてレス国連事務総長の記者団への発言です。

グテレス総長は、ガザでは100万人の人達を食料も水も不足し、住む所もないガザ南部に移動させることは危険で不可能ではないかと言い、イスラエルの包囲作戦の撤回を要請したようです。

勿論、国連事務総長に直接の責任があるわけではありませんし、この際、圧倒的な力を持つイスラエルに自制を求めるのは適切なことでしょう。

問題は国連としての普段からの対応という点で、何かもう少し適切な助言や要請があれば、こうした極端の事態になる事は避けられる場合が多くあるのではないかという気がしてしまうところです。

プーチンの様に端から見れば妄想と思われるような考えに捉われて突然に外国を侵略するというのはどちらかというと稀有なことで、今回のハマスの暴挙の場合も含め、外からの圧力に耐える限界が来て暴発というケースが多いのではないでしょうか。

勿論暴発せずに何らかの形で解決策があればという所ですが、そこで一番大事なことは、相談して解決できる機関などかあるかどうかという問題でしょう。

これは個人のいじめの問題でも、国同士の問題でも基本的には同じことでしょう。

若し国連が本当に頼れる組織であれば、国連に頼って解決するというのが最善の手段でしょう。

しかし今の国連は、現在の安全保障理事会の実態に見るように、地球人類に平和と安定を齎す力はないようです。

ロシアのウクライナ侵攻では、グテレス総長は国連の非力を嘆いておられました。
この状態を放置する限り、今回の様な問題が繰り返される可能性は消えないし、若し国連が何らかのガバナンスを持てば、人類社会はずっと安定したものになるでしょう。

矢張り既に広く認識されていますように、そのカギは安全保障理事会の改革、その名前通り「安全保障」の役割を果たす組織になる事でしょう。
人類がそう思うならば、出来ない事ではないでしょう。
人類の知恵が問われています。

平和の破壊者が居なくなる努力こそ必要

2023年10月16日 16時06分45秒 | 国際政治
平和の破壊者が居なくなる努力こそ必要
ロシアのウクライナ侵攻が長引き、世界の懸念が消えない状況が続く中で、ハマスの大規模なイスラエル攻撃が起きました。

既に双方に2000人を超える死者が出、こうした紛争への恐怖、惨状、希望を失う人々の苦悩の声が大きくなるばかりですが、こうした平和の破壊者がまた行動を起こしてしまったのです。

プーチンのあからさまな平和の破壊行動が、今回のハマスの行動に影響を与えたかどうかは解りませんが、プーチンがハマスの行動を自らの行動の正当化に利用しようとしている事は明らかです。

勿論ハマスにはハマスの事情があり、中東戦争も繰り返し起きていますが、今回の紛争は急激かつ近代兵器を多用した強烈な衝撃を与えるものです。

とはいえ、かつてはオスロ合意に到達するという世界の人々がホッとするようなこともあったイスラエル・パレスチナ問題です。
戦後のアメリカ主導の世界の中で、イスラエル、パレスチナの問題は未だに暫定自治区といった形で残っているのも不自然に感じます。

そしてイスラエルはキブツの活動から始まり急速に近代国家として発展し、パレスチナは、国としてのガバナンスの問題もあってでしょうか、ハマスのような勢力が実効支配する地域を持つという不安定状態にあるようです。

一方、アラブ世界も地球環境問題、脱石油、再生可能エネルギーといった大きな地球人類の歴史の変化の中で、新しい経済体制に脱皮の必要の迫られることを予見し、壮大な変革期に入っているようです。

こうした巨大な変革期の中で、覇権国であるアメリカの在り方は極めて重要でしょう。少なくとも、国連の申合わせを無視して大使館をエルサレムに移すようなことをするリーダーが出て来ると、世界は混乱するばかりでしょう。

武力による紛争、特に最近のミサイルや無人機を多用する紛争・戦争では仕掛けられた方は勿論、しかけた方も忽ちに大きな人的被害が発生るのは必定で、その多くは平和な日常を求めている一般市民なのです。

そうした犠牲を承知のうえで紛争を仕掛けるのは、多くは領土や独立性の問題がきっかけですが、それはその国の国民の意思ではなく、偶々リーダーになった人の個人的な意思によるのが一般的ではないでしょうか。

だからこそ国連憲章の第2章第4項は、「そうした行動は慎むべし」とはっきりと掲げているのです。

こうした問題は、仕掛ける国がなければ起きません。交渉、話し合い、ビジネスベースなど方法はいろいろあり、今日のような情報化の進んだ地球社会では、世界の世論を背景に国連憲章に則った結論を得ることは民主主義の原則が通れば容易でしょう。

若し、威嚇や武力で出した数多の犠牲の上の結論が罷り通ることになれば、平和より己の力を過信するリーダーは、こぞってそうした行動に出、地球社会は混乱するばかりでしょう。

今必要なことは、そうして紛争に走るリ-ダーが居なくなる事であり、そのためには、そうした企てが成功することはないという事、国連憲章の精神を蔑ろにするリーダーは、平和を愛する世界人類の意思によって、必ず自らの責任を取ることになるという実績を着実に積み重ねることでしょう。