tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

非正規雇用vs. 日本的経営・人材育成

2014年11月28日 11時56分47秒 | 経営
非正規雇用vs. 日本的経営・人材育成
 今、日本の労働問題の中で最も重要な解決すべき課題の一つは「非正規社員の増加」でしょう。
 選挙戦の前哨戦、TVの政党代表の論戦でも、与党が「雇用が大幅に増加した」と言うと野党側から「増えたのは非正規雇用が殆どではないか」といった指摘が出ます。

 雇用が増えてもその大宗が非正規雇用、雇用労働者の37パーセントが非正規で、なかなか下がらないという状態は戦後日本が築き上げて来た雇用文化から見れば、明らかに異常で望ましくない状態です。

 政府は、派遣(非正規)でもいいじゃないか、派遣労働者の環境を整えれば派遣制度は良いものになるということでしょうか、派遣法の改正に熱心です。

 社員の中にも一社に留まっているより、色々な会社で仕事をしたい人もいるでしょう、そういう人が働きやすい制度があってもいいでしょう。しかしそれは雇用の中ではマイナーで「大々的に法律で」などと言うものではありません。本人と会社が話し合ってやればいいことです。

 日本的経営は、「人間中心」と「長期的視点に立つ」の2つが基本です。この2つには人を育てるのには時間がかかるというという接点があります。
 会社経営だけではありません、個人にしてみても、何時も行き当たりばったりでいいという訳には行きません。長期的に、自分の進むべき道を考えて人生を歩むのが本来の生き方でしょう。

 何か自分の技を極めるために、武者修行に出て、いろんなところで他流試合をするというのも一つの生き方かもしれません。しかしより多くの人は「一所懸命」と言われるように、自分の好きな企業文化の中で、自分の人生を極めていくことを選びます。

 ここで大事なことは、企業の在り方です。便利に派遣労働を使おうという職務中心、部品(人間)取り換え型の企業は欧米型で、本来職務給です。日本の企業では伝統的に、社内で人を育て、人を育てることで企業も発展するという行き方が主流で、属人給型です。

 実はドラッカーなども、日本企業の研究の結果、この方式に軍配を上げ、多くの著作で、経営における「人を育てることの重要性」を説いています。

 日本の企業が安易に改正派遣法の活用などを考えることはないと思いますが、コストカットだけがサバイバルの条件と言う「デフレ時代」は終わりました。
 最近、企業の使う人材育成のコスト(実は投資)は随分増えてきました。日本経済の新しい展望の源泉です。

金融緩和第二弾と財政の健全化

2014年11月24日 18時00分31秒 | 経済
金融緩和第二弾と財政の健全化
 今回の選挙の最大の争点は「景気の回復」だそうですが、もっとはっきり言えば、「消費増税を延ばすことで景気を良くしようという政策選択」についての賛否でしょう。

 安倍政権は、消費増税を延ばすことで、アベノミクスは失敗だったという批判を躱し、1年半後には「景気弾力条項」をやめて、何が何でも消費増税を実施するということで、財政健全化論者に迎合するということを考えたようです。
 消費増税は政権の基盤を揺るがすというトラウマは強烈なのでしょう。

 アベノミクスなどと中身のよく解らないことを言わずに、2回の超金融緩和による円安効果、1ドルが80円から120円近い円安状態の日本経済への影響と財政の大盤振る舞いによる景気振興策と消費増税の関係というように「通常の経済政策」の言葉で言えば、争点ももっと解り易いでしょう。

 円安の力は絶大です。短期的には日本経済に大きなウィンドフォール・プロフィットを齎し、国際的に見た日本の物価を3割以上引き下げ、国際競争力を強化し、デフレを終わらせました。今や日本の物価は国際的に見て安い方で、買物客が沢山来ます。
 すでに日本経済の健全な成長の基盤は整ったのです。

 ただしその基盤をどう活用していくかは、これからの日本人の知恵次第です。
 理由は、円安はトータルには大きなプラスですが、酒の醗酵と同じで、時間をかけて掻き回してやらないと均質の醗酵にならないのです。

 円安によるウィンドフォール・プロフィットは輸出部門に厚くなり、株価の上昇は金融、証券業界や富裕層に厚く、格差社会化が起きます。これを腕のいい杜氏が、時間をかけてかき回して、全体が巧く醗酵するようにするのが、今必要な経済政策でしょう。

 政府がそんなに巧い政策を取れなくても、多少邪魔になっても、ある程度の時間の中で、日本経済は、2パーセントの消費増税などは吸収して、経済成長を進めるでしょう。
 200万社近い日本の企業が変わるのですから時間はかかります。しかしその動きは見えていますし、10-12月期から来年にかけて、徐々にその動きは統計数字に見えて来るのではないでしょうか。

 政府はいざという時、民間の手助けが出来るように、財政健全化に取り組んだほうが現状ではまともな政策選択だと思います。
 黒田日銀は、「折角財政健全化のために応援の金融緩和をやったのに、目先の虎と馬(トラウマ)に脅えて、消費増税を先延ばし、選挙で政治の空白期間を作り、900億円も無駄遣いするとは、嗚呼。」と嘆いているのではなどと勝手に想像しているtnlaboです。
 安倍さんは、この先、景気が回復すると「消費増税を延ばした選択は正しかった」というのでしょうか。

感想、アベノミクス

2014年11月22日 10時30分16秒 | 経済
感想、アベノミクス
 アベノミクス解散などという言葉もあるようですが、アベノミクスってなんなのでしょうか。安倍さん自身がアベノミクスという言葉を多用しますが、何時も違和感を感じます。普通の人は自分の綽名の付いた言葉などは遠慮して使はないでしょう。

 日銀の政策変更による20円幅の円安こそが、日本経済をデフレから救出し、正常な経済活動の軌道に乗せたことには、ほとんど異論はないでしょう。
 これがアベノミクスだとすれば、「アメリカの真似」とはいえ、大きな効果を上げたと評価できるでしょう。

 財政の方は、公共事業(含む原発問題)に大盤振る舞いをし、経常黒字を殆どゼロにし、「円は強固な安全通貨」という見方に疑問符をつけ、円高になりにくくした(デフレの戻りにくくした)効果も結構大きいと思います。しかしこれは安倍さんの意図したことではなくて、「怪我の功名」でしょう。

 その余の事は、見当違いも多く、ゼロかマイナス評価でしょう。「3本目の矢が全く効果ない」と言われるのはそのせいだと思います。

 それでもtnlabo は日本経済は着実に健全な成長路線を進んでいくだろうと確信しています。その理由は、何時も述べていますように、日本人、日本の消費者や企業労使が、的確な判断力を持ち、真面目な行動を通じて、日本の家計や日本の企業経営が健全なものになるよう真摯な努力を続けているからです。

 例えて言えば、安倍さんは、上手な運転をしているドライバーの車両に同乗して運転のシミュレーション装置を操作している人のように思えてなりません。
 本人は自分で運転している様に感じていても、本当に運転しているのは、熟練した運転手です。シミュレーション装置で多少間違っても、現実の車はきちんと正確、安全に走っているのです。

 先日も安倍さんは、「私が賃上げを要請したから今春の賃上げ率は高くなった」と言っていました。安倍さんが何も言わなくても高くなったでしょう。来年の春闘もそうでしょう。安倍さんは来春も、またそれを自分の手柄にするのでしょうか。
 かつて、 「部下の業績を自分の業績にする上司」といことを書きましたが、矢張りそれは良くないことです。

 リーダーには、リーダシップと同時に謙虚さも併せ持ってほしいと思います。

KAITEKI(快適)

2014年11月20日 10時14分20秒 | 環境
KAITEKI(快適)
 「快適」という言葉はいい言葉だと思っています。
 このブログでも「企業は社会に豊かさと快適さを提供するシステム」とか、企業の役割は「人間が資本を使って社会に豊かさと快適さを提供する事」などと繰り返し書いて来ました。

 この春でしたか、ある環境問題の専門家のお話を聞いているとき、パワーポイントの中で、「快適」をわざわざ「KAITEKI」と書いておられるのを見て、

 「トヨタの "KAIZEN" はローマ字になって世界で通用していますが、"KAITEKI" とローマにしておられるのは、「快適」を世界語にしようという意図ですか」とお伺いしたら。
 「その通りです」というお返事があり、意気投合したことがありました。

 企業活動とか、経済活動というと、「豊かさ」ばかりが前面に出てきますが、既に豊かさについては、半分ぐらい「卒業」して来ていて、今「より多くの付加価値」を創造するのはモノよりも、心や感覚、心地よい「カイテキ」感を求める要素の方がどんどん増えているのではないでしょか。

 日本の食文化が世界文化遺産になったり、「かわいい」や「Japanese cool」が世界の人気になったりしているのは良より質、さらに心や感覚と人間の求めるものが進化してきているからでしょう。

 今朝の新聞に、全面の企業広告で「KAITEKI」というローマ字が目に飛び込んできました。三菱ケミカルHDのものでした。
 ネットで見ますと、三菱ケミカルは「KAITEKI」をキャッチフレーズに掲げておられるようで、大変親しみを覚えました。

 貧しさゆえの紛争や不幸も、未だに絶えない今の世界情勢ですが、本当に人びと(人間)の求めるのは快適さではないかというメッセージも含めて「KAITEKI」が世界語のなるような日が早く来ることを願うところです。 

2014年7-9月期GDP速報

2014年11月17日 12時28分30秒 | 経済
2014年7-9月期GDP速報
 標記の速報が出ました。実質GDPは前期比でマイナス0.4パーセント、マスコミ発表で使われる年率換算、いわゆる瞬間風速ではマイナス1.6パーセントです。
 安倍さんは、集計過程でこの数字を聞き、内閣支持率の更なる低下を心配して消費増税先延ばし、衆院解散総選挙を決心したのでしょう。
 選挙で勝てば、「国民は安倍内閣のやっていることを支持している」という主張が成立するという論理でしょう。

 この発表で日経平均は午前中に400円以上も下がって、国際投機資本は「日本経済もいよいよ不況化か」などと論評しているようですが、一方で円を買って、います。

 短期的なキャピタルゲイン極大化を狙う筋の話は別として、今回の発表をよく見ますと、日本経済は矢張り健全な成長路線に向けて、個々の問題を乗り越え、ゆっくりですが着実に進んでいるように思われます。

 マイナス0.4パーセントという数字は前四半期のマイナス1.9パーセントからは改善で、放っておいても、来期はプラスに転換すると思われます。
 中身を見ても民間最終消費支出はプラス0.4パーセント(数字はすべて実質値)で、マイナスになっているのは、企業の設備投資、民間住宅投資です。

 消費は消費増税の反動減、輸入物価上昇があっても(4-6月期の-5%から)プラスに回復、企業の設備投資は円安の行方も睨んで慎重ですが(-4.8から)、マイナス0.2パーセント、機械受注増加の動きなどから見ても、来期にはプラスでしょうか。

 落ち込みの大きい民間住宅ですが、マイナス10.0からマイナス6.7(4-6月期と7-9月期)ですが、住宅建設の判断は何年もの長期で判断すべきものでしょう。
 余計な事を言えば、何十年も住む家に取得時に纏めて消費税を掛けるシステムがおかしいので、耐用年数でも基準にして、分割納税にすべきものでしょう。

 こう見て来ると、日本経済には現状特に心配する点はないようで、最近の企業の活発な研究開発、新技術実用化の動きなどを見ても、力強く感じておられる方が多いのではないでしょうか。

 景気が悪くなる時には、まず主要企業が減益になり、その回復が見えてこないというのが最も解り易い先行指標でしょう。
 その点から見ても、表面の漣に一喜一憂せず「真面目に働くことだけが、経済成長を齎す」と達観して、日本人らしく真摯な努力を続けるのが最善の道でしょう。

解散総選挙と日本経済

2014年11月15日 10時29分02秒 | 環境
解散総選挙と日本経済
 解散権は総理にあるのですから、これでもいいのでしょう。問題はこれが日本経済・社会にとってどうかということです。

 消費増税は1年半先延ばしになり、アベノミクス第3の矢は積み残しになりました。どうせ自民党が勝つのだからということでしょうし、それからやればいいということなのかもしれません。

 選挙で勝てば、安倍政権のやってきたことは国民の支持を得たというお墨付きを得ることになるというポピュリズムを逆手に取ったようなやり方に、「野党がだらしないから」と嘆く方も多いでしょう。

 政治はともかく、日本経済は今後ゆっくりかもしれませんが着実に成長路線を辿るでしょう。理由はいつも述べていますように、日本人が勤勉に働くからです。

 他方マスコミが書きたてますように、国際投機資本は、日本の財政の改善が遅れること、国際収支に不安があることなどを理由に円安を演出し、日本の株高を更に進め、国際的な株高も視野に、あわよくばバブルとその崩壊で往復稼ごうと手ぐすね引くのかもしれません。

 株高は資産格差の拡大を齎しますが、税収は増えるかもしれません。民間部門としては、そのウィンドフォール・プロフィットを奇貨として、日本経済の更なる成長のために巧みに使うよう知恵を絞ることが大切でしょう。

 政府のやることに民間が口出しは出来ません。せめてその結果を日本経済の健全な成長に最大限に活用するような「知恵と行動」が民間セクターの役割でしょう。
 巧く行けば政権は自分の成果だというでしょう。それもいいでしょう。結果よければすべてよしです。それを成し遂げられるかどうかは、企業や消費者の行動次第ということではないでしょうか。

改めて最近の物価問題を考える

2014年11月13日 11時37分53秒 | 経済
改めて最近の物価問題を考える
 IMFが日本の物価は実質的には0.2か0.3パーセントしか上がっていないと世界中に触れ回ったようです。
 何のためにやったのか解りませんが、2パーセントインフレ目標と言っている政府には有難くないことでしょう。

 IMFの言っているインフレ率は、消費税増税分や円安による輸入インフレ分(共に一過性)を差し引いた日本経済自体のホームメイドインフレということでしょうから、統計上ではGDPデフレーターから一過性のものを差し引いたものという意味でしょう。

 政府としては、今年度の経済見通し(閣議決定)のGDPデフレータは1.9パーセントですから、IMFから「全然ダメじゃないの」と言われているようなものです。
 もともと今年度の政府経済見通しの中でこの1.9パーセントは、3パーセント消費増税を考えれば、何か「中途半端」な数字で、いろいろ考慮したうえで、鉛筆を舐めたものでしょう。「閣議決定」というものも当てにならないもののようです。

 こうしたことが起こるのも、政府も官僚も「インフレの本質」を理解していないからのように思われます。
 今の円レートではデフレは起こること多分なくて(円高にならない限りデフレは起きません)、今後、日本経済の物価問題はインフレにということになるでしょう。

 では、インフレについてはどう考えるべきなのでしょうか。
 経済を長期的に見て、庶民にとって最も有難い状態は「物価はマイナスではなく、プラスで『なるべくゼロに近い』状態」ということが出来ると思います。
 インフレは2パーセントより1パーセントの方が、それよりも今の0.2~0.3パーセントの方がいいようです。今の状態こそベストに近いのです。

 2パーセント目標というのは、デフレ下のキャッチコピーとしてはいいかもしれませんが、2%が35年続けば物価は二倍になります。年金積立金に例を取れば、35年後には積み立てたお金の価値が半分になるという事です。その分金利が余計ついてくれるという保証はありません。

 政府としても、デフレを脱却した今、インフレに対する認識を確り考え直し、2パーセントなどという腰だめの目標は見直し、「インフレ率を低く保つことは政府の義務」ぐらいの信念を持って、IMFに対しても、「今がベスト」と胸を張ればいいのではないでしょうか。

 インフレにしなければ経済成長が高まらないなどという異論もあるでしょう、しかし、経済成長とインフレを連動させるのは実証経済学から見れば邪道です。
 多分、今後の日本経済が、それを証明してくれるでしょう。

「雇用」の果たすべき役割と改正派遣法

2014年11月12日 21時16分28秒 | 労働
「雇用」の果たすべき役割と改正派遣法
 改正派遣法は、今臨時国会でも先送りになりそうですが、これに関わる論議を聞いていても、何となく心配な事もあるような気がします。

 今、日本の雇用問題の中で最も大事な問題は、何でしょうか。有効求人倍率は、徐々ながら上昇傾向、失業率は今後も低下傾向を続けるでしょう。学卒の労働市場は、すでに就職氷河期の氷河は、景気温暖化のせいで跡形もなく消え、売り手市場の様相が強まっています。

 人手不足は社会経済的に見れば、広く国民の生活の安定、所得の均霑、ひいては社会の安定と大変結構なことであることは明らかです。これは、どこの国の政府も完全雇用を目指していることからも明らかです。
 その意味では、今の日本の状態は「失われた20年」を脱して、望ましい方向に向かっていることは明らかですが、未だ問題も残っています。

 その最大のものは「増えすぎた非正規雇用」という問題の解決が、未だに遅々としていることです。確かに非正規雇用の正規化の動きは出ています。しかし、統計数字を見ると、雇用者に占める非正規雇用の比率は殆ど改善を見ていません。

 今、派遣労働の問題を考えるとき、「失われた20年」の中で、使いやすくなった派遣労働者を含め非正規雇用の増大という形で歪みに歪んだ日本の雇用構造を、「働く人々がそれぞれに望んでいる形の雇用形態」に、出来るだけスムーズに就くことが出来るように労使も政府も考えることこそ、中心の課題ではないでしょうか。

 派遣法の改正を考えるならば、目的を明確にそこに絞ってその内容を考えるべきでしょう。
 今回の改正については、「派遣を出来るだけ安心して働ける形にするため」という理屈と、派遣という不安定な就業形態を固定化するもの」という危惧の両論が対立しているように思われます。

 私は個人的には改正派遣法案にあまり賛成ではありませんが、それはそれとして、法律というものは、鋏やナイフと同じで、使い方でどうにもなるのではないでしょうか。
 例えば、「残業制度」についても、うまく利用すれば従業員、企業ともにハッピーですが、使い方が悪ければ、深刻な悲劇を引き起こすこともありうるのです。
 法律をいくら精緻にしても、これを完全に防ぐことは出来ません。

 その意味で言えば、改正派遣法も、労使双方に納得される良い内容にする努力はもちろん必要です。しかし、それだけでは問題は解決しません。
 「雇用」の在り方は人間の生き方や社会の健全さ、長い目で見た企業の成長・発展などなどにとって極めて重要です。そしてそれを最終的に良いものにするかどうかは、現実の企業の場における労使の取り組みによって決まるのではないでしょうか。

 そう考えた時、最近の風潮で危惧されるのは、一部の企業が長期に亘る不況の中で、長期的なビジョンを失い、短期的な利益の極大化を良しとするような行動に傾斜していることのような気がする点です。

 「企業は人なり」というのが日本的経営の原点でもあります。人を育ててこそ企業は長期的に発展できるという企業経営の原点と、従業員にいかなる「雇用」の在り方・場を提供するかという問題とを、これからの日本企業は、再び本格的に考える必要があるように思う所です。

値上げの秋

2014年11月11日 14時51分49秒 | 経済
値上げの秋
 このところ値上げのニュースがいろいろと飛び込んできます。
 夏にはマヨネーズの値上げがありましたが、その後、インスタントラーメン、さらにはインスタントのカレーやシチュー、冷凍食品の空揚げ、などなど。

 菓子類は値上げせずに、中身の量を減らす動きもあるようですが、来年3月からのアイスの値上げを発表したところもあります。

 そのほか、ハム、ソーセージ類も値上げになったようで、ファミリーレストランのメニューも目立たないほどですが値上がり。ドリンクバーも値上がりです。
 その他、皆様も、いろんなところで、しのびよりる値上げに気が付いておられるのではないでしょうか。

 政府・日銀は、未だ2パーセントのインフレ目標には達していないと、賃上げを奨励し、金融緩和をして何とか2パーセントになるようにしたいようです。

 賃上げの方は冷静な労働組合の方針で、インフレを加速するようなものにはなっていません。金融の方は、お金をジャブジャブ出せば物価が上がるという貨幣数量説通りにはいかず、金融緩和で円安になり、輸入物価が上がって輸入インフレという形でインフレ要因になっています。

 これで政府目標の2パーセントが達成されたら、「2パーセントになった!」と喜べばいいのでしょうか。どうも庶民には納得できないように感じられます。

 それなら、賃金が上がればいいのかというと、無理して賃金を上げれば、その分は賃金インフレになり、もっと賃金を上げなければということになって、賃金とインフレのいたちごっこになりかねません。

 何か政府のやっていることは、国民が望んでいることとは違うような気がしている方は多いでしょう。
 政府は、日本経済がデフレ対応で必死だった頃、何とか意識を変えようと、理論も政策もなしに2パーセントインフレ目標を決めました。

 今日銀の政策変更で円安実現、それで国際的に見ればデフレは解消、その後遺症として輸入インフレが起きているというのが現状でしょう。これは理論的にも避けられないところです。
 政府におかれましては、何を意図しているのか、はっきり説明して欲しい気がします。

重荷を背負うGPIF:半分真面目な笑い話

2014年11月11日 07時27分34秒 | 経済
重荷を背負うGPIF:半分真面目な笑い話
 いよいよ厚労省はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポーフォリオ見直しの具体化に作業チームを作って着手し、年内に作業を終えて、来年の通常国会に法案を提出することになるようです。

 GPIFは130兆円という巨大な「機関投資家」ですから、例えば、1兆円売買しただけでも市場の大きな影響があるなどと囃す向きも多いようです。
 既にGPIFが日本株の運用比率を倍に引き上げるという方針が出ただけで株価は大幅に上がっています。

 もちろん誰も予想しなかった2日で1200円の日経平均の暴騰は、日銀の金融緩和とGPIFのポートフォリオ変更の「ダブルバズーカ」のせいで、金融緩和の方が大きかったのでしょうが、GPIFもバズーカ砲には違いないようです。

 「方針を変えると言っただけでこんなに影響があるのだから、本当に買いに回ったら、大変なことになる」などと言ったら、多分投機のプロは呵々大笑でしょう。株式市場は何か良い情報があれば、常に早期に織り込んで上昇し、それが実現した時は「織り込み済み」と言ってあまり動かないのが現実のようです。

 日本経済はこれからも、海外でトンデモナイことが起こらない限り slow but steady の成長を続けるでしょう。株価も底堅く、2008年「いざなぎ越えのピーク」、リーマンショック前の日経平均18,000円台クリアも十分ありうるでしょう。
 実際にGPIFが買い出動するのはその頃になるのでしょうか。このままいけば今度の景気上昇は「安定長期」の可能性が高いですから、これからもGPIFの話が出るたびに株価は上がるでしょう。

 しかしどうでしょうか、アメリカの金融緩和終了で、今は(慣性の法則で)上昇しているアメリカの景気も、さて利上げとなれば、元気を失う可能性もあります。
 最近サブプライムローンが自動車金融で復活している(前回は住宅)という報道もあり、相変わらずの経常赤字も含めてアメリカ経済は「危うさ」は常に内包しています。

 イスラム国問題も含め、国際情勢はますます問題含み、世界経済は決して健全ではありません。
 そうした問題の何かが現実化すれば、膨れた株価は収縮に転じる可能性も小さくありません。今の株価は世界中で同期するようです

 来年になって、GPIFの本格的な買い出動の時期まで株価が上昇していたけれど、後から「残念ながらあの時がピークだった」なんていうことになったら、安倍政権はどう釈明するのでしょうか。 杞憂であれば結構ですが。

ECB追加緩和示唆、ユーロ急落

2014年11月07日 12時03分01秒 | 経済
ECB追加緩和示唆、ユーロ急落
 先日(10月22日)「今なぜ世界経済は不振なのか」のテーマで、ギリシャ、スペインなどの経常収支黒字化で、ユーロ圏の経常黒字が拡大し、これがユーロ高を呼んで、ユーロ圏経済はデフレの様相、「第二の日本になるな」と金融政策出動でマイナス金利、と書かせて頂きました。

 日本のように、円高になってもじっと我慢してコスト引き下げの努力を20年も続けるなどという国は日本以外にはないだろうと何度も書いてきましたが、ECB(ヨーロッパ中央銀行)は、6日、理事会後の総裁の記者会見で追加緩和を打ち出しました。
 
 日本のようにデフレを我慢して頑張るのではなく、早期に金融政策で対抗しようという姿勢です。
 国際投機資本は、この発言に敏感に対応し、ユーロは急落しています。

 アメリカが金融緩和の終結に動く中、日本の金融緩和、ECBの金融緩和と続き、株価は上昇、EUのデフレ懸念も差当たって薄れるといったところですが、アメリカもこれを歓迎している様子です。アメリカは世界の金融が緩めば、アメリカへの資本流入がしやすくなるということなのでしょうか。

 こうした動きを見ていると、「地球の歩き方」ではありませんが、マネー資本主義の地球の中ので経済政策の『歩き方』が良く見えてくるように思います。

 日本もすでに日銀の政策変更で実行してデフレ脱出を果しましたが、自国通貨が切り上げられて、経済がデフレに陥りそうなときは、なりふり構わずウルトラでも異次元でも良いですから、タイミングよく金融緩和を実行し、国際投機資本が損得勘定で、自国通貨を売ってくれるように仕向ける行動を取ることです。
 
 日本のように、円高に日本経済を合わせるために20年もコストダウンの努力をする必要はないようです。
 宮沢回顧録で、宮沢さんが、「あの時は毎日のように大幅な円高で大変困りました」と書いていますが、日本の真面目すぎる経済政策が「失われた20年」を齎したのでしょうか。

日銀の金融緩和と日本経済

2014年11月06日 12時02分50秒 | 経済
日銀の金融緩和と日本経済
 日銀の金融緩和で世界の株価が軒並み上がった金曜日から2日後の週明け月曜日には主要国の株価は軒並み下げています。

 冷静に考えれば、日銀の金融緩和で円安が進行し、日本は明らかに有利になるわけですが、ヨーロッパアメリカの経済に必ずしもプラスの影響があるとは言えません。
 国際投機資本は此の乱高下を演出し活用したのかもしれませんが、それはマネー経済学の世界で、実体経済は違います。そして、株価も長い目で見れば、実体経済を反映することになるのです。

 今回の金融緩和はいずれにしても日本経済にはプラス要因ですが、それは円安に振れたこと、株価が上がったことで日本経済の「モノづくり力」強化になるという面で、実体経済にプラスだからです。

 前回書きましたように、物価上昇には多分効果はないが、別の意味で、今後要注意(危険性)の面もあるという点について考えてみたいと思います。
 1つ気になったのは、日銀がJ-REITの買い入れ額を3倍にしたこと、そして今回の株価暴騰で、一時、金融機関、不動産の株が注目されたという点です。

 「失われた20年」以前の日本経済をご存知の方は、「そうか」と気が付かれる方も多いのではないかと思います。
 戦後長らく日本にはいわゆる『土地神話』があり、土地はもっていれば値上がりすると考えている人はバブル崩壊後の今でも少なくないようです。

 土地投機は典型的なバブル要因ですが、実体経済が必要とする以上の金融緩和は、マネーの行き所として「投機を選ぶ」可能性を高めます。
 株などはまだいい方で、土地や資源のように、人間の生活、実体経済に必要なものに投機が及んだ時、それは実体経済を傷つけます。

 ¥(円)の場合は基軸通貨ではありませんから、ドルのように海外でバブルを起こすようなことはないでしょうし、国内の不良債権に金融工学を応用してトリプルAをつけて海外に売ったりしないでしょうから、外国に迷惑をかけることはないと思いますが、この辺りの行方には十分注目しておく必要があるように思います。

 土地バブルとその崩壊で、問題は十分解っているはずの日本人です。「羹に懲りて膾を吹く」ぐらいの用心があってもいいような気もします。
 いずれにしても、このだぶだぶマネーが、日銀の当座預金に滞留するのか、あるいはどこかに流れ出すか、流れ出すとすれば、何に流れていくか、これからはまさに要注意ということではないでしょうか。

日銀の金融緩和と2%インフレ目標

2014年11月04日 15時02分47秒 | 経済
日銀の金融緩和と2%インフレ目標
 前回も書きましたように、黒田総裁は、今回の金融緩和に際し、「早期にデフレを脱却し、2パーセントのインフレ目標を確実にするため」という趣旨を強調していました。
 為替の円安は意識していない、消費増税は政府の事で、関係ないという説明もあったようです。

 大方の意見は、総裁発言は建前論として、消費税増税による消費不振対策とか、GPIFの株式運用枠増加と歩調を合わせた、株価上昇による景気振興策とか、もう一段の円安を狙ったデフレ脱出促進策とかそれぞれの立場からの思惑を述べ合っているようです。

 いずれにしても、現状では今回の金融緩和も日本経済に対してはプラスの方がマイナスより大きいと考えていますが、いくつか問題点はあるように思います。

 先ずデフレ脱出とインフレ目標2パーセントについてです。
 デフレからの早期脱出という点を見てみますと、$1=¥100を実現したあたりから、日本の物価は国際比較して高いとは言えないように思います。
 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ北欧諸国、オーストラリア、などなど、日常の生活物価は「日本より高い」という感じになっているようです。かつて、外国から帰って、「日本は物価が高い、外国は安いよ」とか「日本のタクシー代は世界一高い」などと言っていたのとは大違いのようです。

 日本の物価が外国より高くないといった状況は、日本はもう物価を下げる必要はないということで、それならば、日本はすでにデフレからの脱出は終了しています。
 現に、消費増税、輸入インフレを除いても日本の物価はプラスです。おそらくもうマイナスにはならないでしょう(また円高にならない限り)。

 2パーセントのインフレ目標は、いわばデフレ脱出の景気づけのようなものでしたらから、脱出完了なら、インフレは2%より1%のほうが良いに決まっています。放っておけば次第に高くなるのがホームメイドインフレの特性です。

 いつも指摘していますように、ホームメイドインフレを起こすのは「国内(賃金)コストの上昇」です。日本は金融緩和ではインフレにならないのです。
 日銀がマネタリーベースを増やしても、その金は日銀に当座預金として溜まっていて、使われていないということになるでしょう。
 
 使われない方が日本経済にとっては健全なのですが、それが使われる危険がないとは言いきれません。 次回その危険性について見て行きましょう。

日銀の金融追加緩和の功罪

2014年11月02日 22時16分11秒 | 経済
日銀の金融追加緩和の功罪
 アメリカが異次元金融緩和の終結のために、薄氷を踏む思いでテーパリングをやり、現時点では何とかなりそうだと終結宣言に踏み切った所で、日本は異次元緩和の拡大に打って出ました。
 さて、これはどう見て、どう判断すべきでしょうか。
 
 恐らく、日本経済は今回の金融緩和策がなくても徐々ながらきちんと回復の道を辿って行ったと思います。黒田総裁も多分そう思っておられただろうことはこれまで「日本経済は回復基調」との発言、さらには「金融はこの程度、後は政府の仕事」という趣旨の発言などからも感じられたところです。当然、金融緩和は予想されていませんでした。

 黒田総裁は、今回の緩和に際して、「2パーセントのインフレ目標の実現のため」と繰り返していますが、1パーセントでも、1.5パーセントでも、2パーセントでも本質的にどうこうという問題ではないように思われます。2パーセントに固執するのにはそれなりの理由があるのでしょう。
 
 マスコミは今回の金融緩和については一様に「サプライズ」と評していましたが、まさにサプライズとしての金融緩和をすることが目的だったように感じられます。
 このサプライズの結果起こる(起こった)ことは何でしょうか。
・株価の急騰
・円安の更なる進行
が「サプライズ」のもたらす主要な効果でしょう。

 この2つが「図った通りに」起こったということはまさに狙い通り巧く行ったということでしょう。
 しかも、その影響が日本経済と余り関係ない様な国々にまで波及し、世界中の国々で株価が上昇し、下がったのはロシアだけ、という現実は、今のマネー資本主義に覆われた世界経済の実態をはしなくもあらわにしたように感じられます。

 円安は、円建ての輸入物価の上昇につながるでしょう。同時に、日本の景気という面では「ものづくり」のコスト低下による日本経済のポテンシャルの向上、当面の為替差益の拡大といった意味で、プラス効果は小さくないでしょう。
 しかし、これで「ホームメイドインフレ」が促進されるかというと、多分その効果はごく小さいように思います。
 株価上昇は、日本経済の雰囲気の改善には効果あると思いますが、社会的には所得・資産格差の拡大につながるでしょう。

 この「サプライズ」に踊らされた国際投機資本が、次第に冷静になって、いかなる行動を取るか、それによって、日本経済・世界経済の今後にどんな影響があるか・・・。
それを見極めることが、我々に新たな種々の教訓を与えてくれそうです。

無邪気な国会のGPIF論議

2014年11月01日 10時09分54秒 | 経済
無邪気な国会のGPIF論議
 テレビの国会中継で年金積立金の運用問題をやっていました。論争点はGPIFの運用のポートフォリオのうち、国内株式の運用に回す分を、現在の12パーセントから25パーセントに増やそうという政府の考え方についてです。

 野党側の追及は、従来の運用実績を見れば、国内株式での運用はマイナスで、運用を委託する運用会社は喜ぶかもしれないが、GPIFが収益をあげられるかどうか危ないものだから、そんな不安定な運用を増やすのは反対ということのようです。

 一方政府からは、マイナスだというのは期間のとり方で、「私が就任してからは株価は大幅に上がって儲かっている」と安倍総理は発言し、厚労相は、年金の運用には4パーセントぐらいの利回りがないと国民に約束した年金が払えないので、国債などで運用していても足りないのだ、などという説明をしていました。

 株価が上がったのは基本的には20円幅の円安のせいで、日銀総裁の交代で日銀が異次元の金融緩和をした結果ですから、日銀総裁の交代を安倍さんの功績とすればその通りということになるでしょう。
 しかし、安倍政権が続く限り株価が上昇するなどという保証はないわけですから、またアメリカやEUがガタガタして株価が下がったら、安倍さんは何というのでしょうか。

 年金運用は利回りが4パーセントないと国民に約束の年金が払えないということですが、日本経済が2パーセントほどしか成長しないのに、株取引のキャピタルゲインで年金原資だけ4パーセント増やすことは、国民所得の中から、年金への分配を毎年2パーセント増やすために、その他への配分から「掠め取る」ということに他なりません。

 GDPを4パーセント成長させて、年金を払えるように努力しますというのならいいでしょうが、それは無理なので国がデイトレをやってその分稼ぎますと言っているわけです。

  公的年金制度というものは、本来国の経済力の中できちんと賄える様に設計してこそ、サステイナブルなものになりうるのでしょう。
 経済力以上の年金設計をして、カネが足りなくなれば、(悪い言葉でいえば)ギャンブルで儲けて支払うよう「努力します」というのが「株式運用」の本来の意味ですが、株式運用で「必ず」儲かるという話は聞いたことがありません。

 キャピタルゲインとインカムゲインの区別もせずに、儲かるか儲からないかのレベルの論議を無邪気にしているのを聞くにつけ、年金についても、もっと日本らしい(アメリカ流ではない)真面目で高レベルの経済の本質論が聞ければいいなと思ってしまいます。
 余計なことですがカジノでもなんでも「金さえ落ちれば」いいというのも同列でしょう。