tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ファンドの敗北

2007年06月30日 10時35分24秒 | 経営
ファンドの敗北
 3月期決算の株主総会が大方終わりましたが、報道によれば、いわゆるファンドの攻勢は、おおくの場合効を奏さなかったようです。

 特に外資系ファンドにしてみれば、「せっかく増配を引き出して、ほかの株主にも喜んでもらえると思ったのに・・・。 反対とは、なぜだ!!」といった感じが強かったのかもしれません。

 日本の株主の多くは、「ファンドの要求を聞き入れた場合、長い目で見て会社がよりよく発展するのだろうか?」といった疑念を持っているのでしょう。

 これは「経営」という視点から見ても大変合理的で、もしファンドの経営者が、コンサルタントとしてその会社の中・長期の発展計画の立案に携わっていれば、「配当は適切な範囲にとどめて、十分な内部留保をし、それをテコに、発展のための投資計画を立てるべきでしょう」といった助言をするだろうからです。

 中には「増配して時価総額を大きくし、それをテコにM&Aをやって会社を大きくするべきだ」という助言もあるかもしれませんが、日本人のメンタリティーにはこれはあまりあわないようです。

 これは日本人の「モノづくり」や「人づくり」の考え方とも密接に関連することだと思いますが、「経営文化」の違いが、こうした株主総会の攻防にもはっきり出ていることを痛感するところです。

ブルドック対スティール

2007年06月25日 23時01分45秒 | 経営
ブルドック対スティール・パートナーズ
 昨日開かれたブルドック・ソースの株主総会で、スティール・パートナーズのTOBに対する対抗策が、株主の8割の賛成を得て決まったとニュースが報じました。スティール側は、その実行の差し止め請求を裁判所に提出したそうですが、これは、今後ますます発生しそうな、こうしたファンドによる企業買収に対する日本人の反応を示す”はしり”の事例のひとつということになりそうです。

 ニュースでは、個人株主の多くがブルドック側を支持したことを報じて、個人株主への取材や街頭インタビューをしていましたが、多くは、スティール側の説明が「対抗策には金がかかるから、それなら株主配当にまわしたほうがいい」というだけで、ブルドックをどう経営して株主に報いるかには触れなかった、といった意見でした。

 ブルドックのような伝統のある会社の場合は、投資して金を儲けるというよりも、安定した資産株として持っていて、会社に愛着を感じていたりして、株主優待などを楽しんでいるといった個人株主が多いのでしょう。そうした人たちは波乱はあまり好みません。

 最近のアメリカのように、金さえ儲かれば、といった投資が多くを占める風土とは(かつてのアメリカはそうではなかったようですが)日本は違うようですし、多分将来もアメリカのようにはならないでしょう。

 だからといって、物言わぬ株主に便乗して、ぬるま湯経営をやるといいうのなら問題でしょうが、今の日本経済はぬるま湯経営をやれるような状態ではありません。

 しかし、こうした経験を積み重ねると、日本の株主も「物言う株主」に多少はなっていくでしょう。それは経営に良い刺激を与えるものかもしれません。そうした中から、日本は日本らしい企業と株主の関係を作っていくことが出来れば、それは大変結構なことだと思います。

 日本の企業の経営者と従業員の関係(労使関係)は、国際的にも認められ、評価されているように日本独特なものです。企業と株主の関係も、日本は、新しいいろいろな経験の中から「日本的なもの」を積極的に模索していけば、結果は必ずいいものになると思うのですが。

原油価格高騰とデフレ脱出

2007年06月16日 14時11分49秒 | 経済

原油価格高騰とデフレ脱出

 原油価格の高騰が、ガソリン代に波及し、タクシー料金にも波及しようとしています。そのほか原油を燃料や原材料にしているところは、それぞれに大なり小なり影響を受けているわけです。

 しかしデフレ症状から完全に抜けきっていない日本経済の中では、値上げは思うに任せません。賃金もあまりあらず、税金や社会保険料の負担が増える中で値上げは消費者から強い批判を受けます。

 そんな中で、原油値上がりで、物価が上昇傾向になるので、いよいよこれでデフレ脱出になるのではないかといった見方が、経済学者や金融関係者の中から聞こえたりします。

 確かに物価が低下から上昇に転ずれば、定義上は、デフレ脱出ということになるのでしょうが、何か少し現実離れしているように思われます。

 というのは、日本の物価が下がり「長期デフレ」といわれた本当の原因は、円高で日本の物価が「世界一」といわれるほど高くなってしまったからです。最近でこそ内外価格差は小さくなりましたが、国際競争が熾烈な今日、国際的に見て高ければ日本の物価が下がって当然です。

 では原油高はどうなのでしょうか。原油高は世界市場で起こっていますから、石油消費国はみな同じように影響を受けます。国際的に見た日本の相対的な物価水準は原油高では、特に変わることはありません。

 デフレは一国の事情ではなく、国際的にみて物価が高いから起こるというデフレの真因がわかれば、原油高でデフレ脱出といいうのは、やはり日本経済の現状についての理解からいえば、少し違っているようです。


インターンシップの活用

2007年06月08日 21時55分40秒 | 教育

インターンシップの活用

 インターンシップというのは、一言でいえば「学生の就労体験」ということでしょう。このところ日本でも次第に注目されるようになってきたようです。

 確かに「金を払って勉強する」という学生の身分から、「金をもらって仕事をする」という社会人に転換することは、考えてみれば人生の中でもっとも大きな転換のひとつでしょう。親や先輩もみんなそうなのだからと「知識」としては知っていても、現実に自分の生活が大転換をすることになると、今の若者にとって、移行はそう簡単ではないようです。

 一生懸命受験して就職した会社なのに、3年たったら大学卒で35パーセント、高校卒で50パーセントやめてしまうというのも、また、社会人への意識転換がうまく出来ずに、ニートになったり、半分ぐらい転換してフリーターになったりという人が沢山出るのも、この大転換にうまく適応できないからかもしれません。

 この転換を漸進的に上手くやってこうという試みのひとつがインターンシップでしょう。学生のうちに企業で働く経験をして「そうか、社会人になるというのはこんなことなのか。まんざらでもないな。」と解ることで、転換をスムーズにやれるようになれば大変結構なことです。

 アメリカでは、インターンシップを推進するのは「大学と企業で作る民間団体」です。ところが日本では、経産省と文科省と厚労省というお役所です。お役所は別々に予算を取って、それぞれに活動をすることになります。財政不如意ですから、活動はだんだん縮小します。それなら、日本でも民間で大学と企業が協力してそのための推進組織を作るかというと、そうした動きも見られません。

 誰かがきちんと考えてやらなければならない大事なことでしょうが、今のところ、若者にとっての人生の大転換への支援体制がしっかりしないというのは、日本の若手人材の有効活用に無用な摩擦やロスをもたらすものだけに大変残念な状態なのではないでしょうか。