tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

権力につくと判断が歪むのか

2021年11月30日 13時10分01秒 | 政治
今日も、あまり書きたくない事のブログになってしまいますが、人間を批判するのではなく、人間に体化した権力を批判するという事でお許しを頂きたいと思います。

公明党の代表が、5万円のクーポン給付についての釈明をマスコミに発表しました。
前回書きました18歳以下、所得制限付き10万円給付の問題の続きになってっしまいます。

公明党代表の発言の要点は、2つありまして、
・10万円給付をすべて現金にすると使われないことも多いという意見もあるので、使途を特定したクーポン券にすることで、使われることを重視した。
・そのために事務費がかさむという意見もあるが、これは最大限の見積もりで実際に必要な額はより少なくてすて済む。
といった趣旨のものです。

これを見て感じるのは、公明党党首は、給付金は貯蓄に回っているケースが多い事を理解している事、クーポンだと必ず使うと思っている事、事務費を減らすことは可能とお考えという事でしょう。

先ず、給付金を受け取った人が使わないのならクーポンにして使われるようにする、という発言から考えてみますと、当面給付金がなくても困らない人に給付金が行くことはご承知の上でという事でしょう。

更にクーポンの分は使うでしょうと考えていても、クーポンが来たのでそれを使って現金が浮いたので貯金が増えたというケースも結構あるのではないでしょうか。
事務費を削減というのも「どの程度か」はありません。

公明党としてこの給付の目的は何なのでしょうか。公明党が主張したからこの給付が出来たのだという実績づくりといってしまえば実も蓋もありまえんが、本当のコロナ禍対策は、将来を見据えた、あるいはもっと足元(本当の貧困層など)を見た、些か別のところにあるとは考えられないのでしょうか。

公明党は初心に戻れといった意見もあるようです。私は権力の座に長くいるとほとんどの場合判断が「独りよがり」の傾向を帯びてくるというところに問題があるような気がするのです。

遠く異朝のことですが、中国が台湾併合を考えているというのは、中国国民全体の意見でしょうか。歴史に名を残したいというリーダーの執念でしょうか。

近く本朝では、安倍総理はやはり長く居座ることによって、権力の私物化に鈍感になったのでしょうか、モリ。カケ、サクラ問題を起こし、働き方改革の様な(労資を共に困らせる)独りよがりの改革を進めようとしました。

古今東西を問わず、人間は往々にして権力という魔力には弱いようです。

コロナ禍で政治が混乱している中でも、今の日本国民の状態は異常に整然としてコロナに対抗しています。日本人にはそれが出来るようです、

政治家は、少し国民の行動の特質を理解したうえで、国民のことを考え、国の先行きを考えるようにしてほしいように感じるところです。

国産ワクチンへ、政府補助制度新設

2021年11月29日 22時21分47秒 | 政治
報道によりますと岸田政権は、国産ワクチンの開発、製造を支援するため新たな補助制度を設けることになったとのことです。

かつて、菅総理が、日本を世界トップレベルのワクチン開発拠点にするというメッセージを出していますが、その延長でしょうか、それとも岸田政権の新政策でしょうか。

いずれにしても、ワクチン後進国に堕した日本を、何とかしなければならないという気持に政府がなったとすれば、それは喜ぶべきことでしょう。

しかし、世界のトップレベルと口でいうのはやさしいですが、そのためには、まず世界のトップレベルの頭脳を集めなければなりません。

そういう人を育てるのには時間がかかるでしょう。世界から人材を集められれば結構ですが、魅力がないと人は来ませんし、それだけのレベルの設備も必要、研究開発の資金もまた巨大でしょう。研究開発のスピードは、投下資本量に比例するなどともいわれます。

政府は、今年度補正予算で2700億円を組むとのことですが、まず手始めとしてでしょうが、今後どの程度力を入れていくのかを見守る必要がありそうです。

というのも、コロナ問題という当面する問題がある事にもよりますが、政府の支出は、いわゆるバラマキ、現状対応の後追い支出が目につき、先行投資はどうも遅れ気味という気がするからです。

例えば、再び10万円の給付金が与党内での主要議論になるようで、ベタに払うか年齢制限か、所得制限をするかしないか、所得制限はいくらにするか、世帯収入か世帯主収入か、更には二回に分けて半分はクーポンにする方がいいとかの議論です。

結局18歳以下、世帯主収入で960万円未満、5万円は年度内にも、後の5万円はクーポンにして来年の参院選の前、合計金額1兆9473億円、という事になるようで、クーポンにすると配布の事務費が900億円増えて、1200億円になるといった経過が報道されています。

昨年の全国民に10万円のバラマキの効果の議論も多いですが、18歳以下にして、所得制限を付けたから良いでしょうといったことで済むのでしょうか。

半分をわざわざクーポンにして、そのために事務費が900億円増えるといった計算の根拠は我々に見当もつきませんが、ワクチン開発関係に予算がやっと2700億円付いたというのと比べると、庶民の常識では考えられないお金の使い方が感じられます。

どう考えても無駄な事務費より研究開発費にと考えてしまうのは、政治への無知という事なのでしょうか。ならば政治を理解するという事はどういう事なのでしょうか。

矢張り岸田政権の「新しい資本主義」には、庶民はより良い生活に向けての積極的な政策を期待しているのです。例えばバラマキな必要になるような貧困の撲滅の具体策の検討といった問題です。一方で、日本は世界トップクラスの個人貯蓄(1900兆円)を持っています。そうした矛盾について、真剣は議論をするような政治、その気概を実感できるような政策の報道が日々眼に触れるような政権であってほしいと思うところです。

もともと、今、貧困家庭がこんなに増えたのは、経済が成長しないからというのも大きな理由ですが、同時に、所得格差が大きく拡大した(1980年代、日本のジニ係数は北欧諸国と並んでいました)事がより大きな理由でしょう。

今必要な明日に向けての社会・経済政策としては、この拡大した所得格差をいかに縮小に向かわせるかが最大の課題の1つでしょう。
しかし現実は、所得格差を縮小するような本格的な政策ではなく後追いのバラマキの議論が政治の場の中心では、「新しい資本主義」の意味は失われるのではないでしょうか。

現状の後追いではなく、将来に向かっての、納得のいく解りやすい政策の提示が今こそ必要なのでしょう。

岸田政権も賃上げ奨励、それでどうなる

2021年11月27日 14時21分36秒 | 経済
安倍政権が、本来政治の権限外である賃金問題に「賃上げ奨励」という形で口を出し「官製春闘」などという奇妙な熟語を生んで、結局は「余計なお世話」に終わった後を受けた岸田政権です。

まさかまた賃上げ奨励とは思っていませんでしたが、やっぱり言い出したようです。
ただし、「横からの口だし」だという事は、それなりに心得ているようで「官製春闘」ではありませんと言っているようですが、何が違うのでしょうか。

更に安倍政権が試みた「賃上げ減税」もやろうという事のようで、どうも経済と賃金決定と国家財政の関連がよく解っていないのではないかと感じられます。

大体、賃金決定というのは、自由経済の国では「労使の専管事項」という事になっていて、中でも、日本の労使は世界に類例をみないほど経済状態に適切な、合理性のある決定を実践したことで知られています。

ただ、この所、労働分配率が下がり、企業の内部留保が増加するという状態が統計でも示されていますが、はっきり言えば、これは経済政策の貧困から、企業が極度に防衛的になり、労働組合もその状況を理解していることの結果とみられます。

それが「官製春闘」の笛に労使が共に踊らなかった主因でしょう。政府は自らの経済政策の貧困、企業にも、労働サイドにも国民全体にも、日本経済の先行きに希望を感じさせる経済政策の出来なかった自らの経済政策にこそ、反省の目を向けるべきなのです。

その意味で、岸田政権の「新しい資本主義」の中身には注目しているのですが、自らの経済政策より、労使の賃上げに期待するような姿勢では先行きが案じられます。

昨年の1人10万円給付がどれだけ消費支出増に貢献したかも検証せず、今回も10万円給付に動いていますが、(それで救われる人がいないとは言いませんが)その大半以上が家計支出には回らず、銀行預金になり、国債引き受けかマネーゲームの投機資金になるのではないでしょうか。

「新しい資本主義」の「資本」は、バラマキの原資である国債引き受けや、デイトレの資金になる貯蓄に回るのではなく、GDPの成長に役立つ実体経済の活動の中の技術開発、生産性の向上、実体経済の成長に使われる「資本」でなければならないのです。
それでこそ消費活動活発化の原動力になり得るのです。

「資本主義」とは言っても、日本の場合は資本が中心ではなく「人間が中心」で、その人間の目指す「豊かさ」や「快適さ」の創出に役立つ、実体経済の成長に貢献する「資本」の蓄積・活用に着目した「資本主義」でなければならないのです。

賃金は、経済が成長することによって上昇します。と言うより、我々は「より高い賃金」の支払いを可能にするために経済成長に努力してきたとうのが実態でしょう。

賃金を上げて経済を成長させようと国のリーダーが考えるのは、物事の順序が逆ではないでしょうか。それで齎されるのは結局はインフレだけでしょう


リーダーの役割は、その国の経済社会が経済成長するような雰囲気、社会心理の醸成、国民意識の動機づけをすることではないでしょうか。

岸田総理の大先輩、宏池会を率いた池田総理は「経済のことは池田にお任せください」という名言を残しています。

「新しい資本主義」の中身が、真に日本経済社会の成長発展に役立つものに創り上げられる事を期待します。

原油価格問題、適切に対処できるか?

2021年11月26日 16時01分21秒 | 経済
アメリカの物価上昇率は6%に達したようです。EUも3%に達したようで、これまで言われていた「物価が上がらない時代」などという言葉は、すでに消えているようです。

アメリカの場合は、ガソリン価格は象徴的ですが、新車・中古車を始め多くの食料品、日用雑貨の値上がりもあるようで、景気の急速な立ち上がりで物流が追い付いていかない事が大きいとなど言われています。
当局は一過性のものと言っているようですが、それで済んでくれることを願うところです。

EUでは、イタリアが3%、スペインが4%に達し、何時も物価安定のドイツが3%を越え年内に5%を予測するなど、EUの2%インフレターゲットは一転して物価引き下げの目標になりそうです。

こうした物価上昇の各国の波が、原油価格の上昇をきっかけにしたという事はあるかもしれません。しかし、原油の値上がりだけで、物価上昇が起きているのではないでしょう。先行き要注意のような気がします。

日本はまだ1%以下の上昇率ですが、ガソリン・灯油が上がっているので、政府は慌てています。
バラマキの癖がついた日本政府は、さる17日に書きましたようにガソリンに補助金を出そうとしていますが、取るべき政策は、そんなことではないはずです。

一方、アメリカ、ヨーロッパの方は、物価上昇を賃上げで取り返そうという動きが出ることが懸念されます。
これをやると、かつての石油危機の時と同じく、輸入インフレが賃金コストインフレに転嫁され、一過性でなくなります。

結果はご承知のように、インフレが収まらない、引き締め政策、景気低迷、雇用悪化、スタグフレーションという、いわゆる先進国病、いつか来た道の再発です。

日本の場合は、政府の補助金政策で、表面上の物価は抑えられるかもしれませんが、それは、国債残高の増加となって、結局は回り回って、国民が、所得税、法人税、消費税といった形で「何時か」負担することになるのです。

原油価格の上昇は、日本経済のGDPのなかから、原油の値上がり分だけ産油国に上納金を納めたことになるのですから、日本国内で何をしようが取り返すことは出来ません。

出来るのは、そのうち原油価格が下がって、上納した分が返ってくることを待つしかないのです。そして、経験的には原油価格は上がったり下がったりするのです。

長い目で見れば「再生可能エネルギー」が豊富になって、原油価格が下がる可能性もあるのですから、政府には「補助金を出すなら、再エネの技術開発に出した方が合理的ですよ」と提言しなければならないところです。

 ついでに考えてみますと、アメリカがインフレ高進を抑えるために金融引き締め政策を取り、それによって、ドル高、円安となり、円安で輸入物価が上昇するわけで原油価格も上昇幅がその分大きくなると心配する向きもあります。

これについては、現状の日本経済の実情を考えた場合、今は、円安より円高を警戒すべきと考える範囲にあると考えるべきでしょう。

更にもう一つ付け加えますと日本の原油輸入は年間4.3兆円(2020年:GDPの0.8%ほど)で、これが2倍に値上がりして、全額国内価格に転嫁されても物価上昇は0.8%(GDPデフレーター)ほどだという事も計算しておくべきだろうと思います。

こじれ始めたか、原油価格問題

2021年11月25日 15時51分22秒 | 経済

多くの国で、国民の油断を突いたのでしょうか、コロナがまた猛威を振るい始めているようです。

それに重なるように、原油価格の高騰の問題が起きてきました。
産油国は多くを語らないようですが、産油国の身になってみれば、世界中が「化石燃料から再生可能エネルギーへ」と努力を始めているのですから、原油の埋蔵量が豊富だなどと言って楽観していられる状態ではないという事ではないでしょうか。

当然、今の内に少しでも原油価格を上げたいと考えるのは人情というものでしょう。
そうなれば、原油は投機対象商品ですから、当然値動きは荒くなって来るでしょう。

またこれにタイミングがあっているわけですが、多くの国がコロナ禍からの経済の回復に舵を切っています。当然多様な資源や半導体など材料、部品への需要が多くなり、資源価格を始めそうしたものの一般的な値上がり傾向が出るときです。

更に経済回復を目指す国では、政府の梃子入れで物価は上昇基調です。
そこでかつての石油危機ほどではないにしても原油価格の値上がりを産油国が期待するというのもある意味では当然かもしれません。

再エネ、再エネと言っても、現状、石油は圧倒的に主要なエネルギー源です。多くの国で原油価格の高騰は物価上昇の動きを強くし、典型的にはアメリカの様な物価上昇が、ヨーロッパでもアジアでも見られそうな気配です。

2%インフレターゲットなど疾うに超えているアメリカでは、FRBはインフレ懸念から金融の引き締めを示唆し、まずは量的、更に金利の引き上げも視野という事のようです。

その結果、国際投機資本の動きはドル買いとなり、ドル高、日本にとっては円安の動きが出ます。
しかし、アメリカにとってドル高は大きな痛手になるでしょう。インフレは避けたい、しかしドル高にはしたくない。FRBは難しい選択を迫られているようです。

石油消費国は、原油価格の高騰を何とか止めてほしいと思っています。
そこでアメリカは、アメリカも原油の生産を増やすし輸出もするが、日本などの消費国でも備蓄を一部放出して原油相場を冷やそうという手に出ました。

慌てたマーケットは「一瞬だけ」原油価格の下落をみましたが、よく考えれば、例えば日本の場合の備蓄は140日余だそうですが、そのうち何日分が放出可能かと考えても、供給増加は知れていると気づいたのでしょう。

結果は理論通り原油の先物の価格上昇という形になってきました。

マーケットは、備蓄の放出など高が知れていると読んだのでしょう。そしておそらく、日本のやりくりの様子を新聞記事で見ても、とても対抗手段にはならないが、要請された通り真面目にやりましたという程度と見えてしまいます。

という事で問題は今後です。
この先さらに原油価格が上昇し、世界中がインフレムードになってくるようなことが起こり得るのでしょうか。

基本的には産油国次第でしょうが、これまでの経験から見ても、原油価格が高騰した後はまた下がることの繰り返しです。

ただ、下手な対応をすると、かつての石油危機の後遺症で先進国が一様にスタグフレーションに陥ったようなことが起こりかねません。

さてどんな問題が待ち受けているのでしょか。この辺の検討を次回してみたいと思います。

小菊満開:今年はそのまま育ててみました

2021年11月24日 15時20分04秒 | 環境
もう30年以上前でしょうか、庭に小菊を植えました。そのころはF1(1代雑種)ではなかったので、小菊は、わが庭でも古い住人となり、長い年月、毎年、可憐な花を咲かせてくれています。

小さな枝を1、2本とってきて洗面所や台所の端の一輪挿しに挿して置きますと、それなりに格好もついて何となく気分のいいものです。

ところが、毎年株も増え、あまり伸びるものですから、いつも剪定をして小さくしていました。その後、塀際に山茶花を植えたので、小菊はその根元になりました。

ところが一昨年山茶花に茶毒蛾の大発生し、それに懲りて枝をほとんど切ってしまい、去年は花をつけなくなって何か殺風景になったので、今年はせめて山茶花の足元の小菊を伸びるだけ伸ばしてやろうと思って剪定せずに数本の株を纏めて束にして伸ばしてみました。(山茶花は今年は数輪の花をつけました)

伸びると倒れてしまうので、支柱を立てて上に伸びるようにした結果、腰丈ぐらいまで大きくなって沢山の花をつけ、家内も、「伸ばして大きくしても結構サマになってるわね」というほどになって、私も「これなら菊人形みたいに何かすればよかったのかな」などと勝手なことを言いながら、写真を撮りました。



よく見ると気が付くもので、みんな同じ花かと思っていましたら、本卦返りか突然変異か、色の濃い真っ赤の花が所々咲いています。





地植えですから懸崖のようにはなりませんが、来年はもう少し何か考えてみてもいいかななどと思っています。




日本の元気は戻るか:製造業の付加価値率の推移をみる

2021年11月23日 21時35分14秒 | 経済
企業経営の元気度を見る指標はいろいろ考えられますが、売上や利益の伸び率といった量的なものがまずあげられるでしょう。

では、そうして元気の源になる質的なモノ、例えば技術開発、製品開発といった企業成長の原動力になるようなものは何で見るかといいますとやはり「付加価値率」があげられるのではないでしょうか。

付加価値率はご承知のように 付加価値/売上高 を%表示で示したもので、企業のバイタリティの指標などとも言われます。

人気商品でも時がたてば価格は下がります。新しい人気商品、高性能商品をを出し続けることで付加価値率の維持、向上は可能になります。
それができる企業は元気のある企業ということになるわけです。

日本は最近いくつかの先端技術、先端商品の分野で、何となく後発のアジア諸国、例えば中国、韓国、それに台湾などに後れを取っているように感じられますが、その付加価値率の推移にも出ているのではないかと思い、財務省の「法人企業統計年報」を使って日本の製造業の付加価値率の動きを調べてみました。

その結果を示したのが下のグラフです。日本の製造業の付加価値率はほぼ安定的に20%前後、というのが常識といわれていますが、長期にみると、明らかに変化が出ているようです。

製造業の付加価値率の推移

            財務省「法人企業統計年報」

左端の1979年~80年というのは、日本経済が第一次オイルショックから立ち直る時期ですが、その辺りからグラフは上昇傾向です。

1985年は「プラザ合意」の年で1987年あたりで円レートは$1=240円から120円と大幅円高になりますが、付加価値率は 上がり続けます
1990年まではバブルの時期で、エレクトロニクスや自動車などで日本製品が世界で人気でした。

1990年、91年で土地バブル、株バブルは崩壊しますが、付加価値率は何とか22%水準を維持しています。
しかしこの辺りは円高対応で、日本は徹底したコストカットに呻吟する時期で、企業は体力をすり減らし、次第に前向きの力を失い、技術力も元気も失われていくプロセスでした。

2000年代に入ると、日本企業は守り一方の状況になり縮小均衡で最低限の利益を確保する「好況感なき上昇」と言われる中で、我慢して耐える努力の継続中にリーマンショックでさらに1ドル80円を切る円高となります。

付加価値率の動きを見ますと、縮小均衡の中で前向きの企業力は失われ、じり貧状態になり、リーマンショックの時は16.6%に落ちています。

そこからの脱出は容易ではないようです。2012年から円高解消のプロセスが始まり2013、14年の日銀の異次元金融緩和で為替レートは正常な水準(購買力平価相当)に戻りましたが、一旦遅れた技術開発や製品開発力は容易には戻ってこないようです。

2018年には 一時的に漸く20%に載せましたが、19年には再び割り込んでいます。
その後はコロナ禍で、世界の国々の経済もみな変調ですが、日本の場合、いつになったら、製造業の
付加価値率が、かつての22%水準に戻るのか、それには,日本人自体の長期不況の中で失われた元気な心を如何に取り戻すかという、いわば日本社会全体の意識改革のようなものが必要になってくるのではないでしょうか。新政権はよくその任に応えるでしょうか。日本の元気は戻るか

自己資本比率から見る日本企業

2021年11月22日 15時00分55秒 | 経営
2021年度の中間決算の数字がそろい始めたようで、証券会社などがコロナの中でも増益の企業が多いといった報道をしています。

この所コロナのせいでいくらか停滞した自己資本比率の改善も多少進むかな、などと思いながら見ています。

自己資本比率というのはB/Sの右側、資産負債のサイドで、総資産(=総資本=資本+負債)の中で、資本(=自己資本)が何%を占めているかという数字です。
企業経営では固定資本、運転資金などのカネが必要ですが、経営のために使っているカネの内、自分で賄っているカネ(自己資金=自己資本)が何%かという事で、あとは外部から借りているカネです。

経営の安定を考えれば、借入金は少ない方が良いのですが、経営者はそのバランスを考えて経営をしているわけです。
早く成長するには借金も活用した方が良いのですが、借入金が多くなると、返済を迫られたりする可能性の大きくなりますから、バランスが肝心です。

会計の世界では自己資本比率は50%(半分は自分のカネ)が標準と言われますが日本企業は戦後ずっと自己資本不足で、高度成長の真只中の1970年代には法人企業統計の全産業(除金融・保険)全規模の平均の自己資本比率が13%などという事もありました。

そんなに低くて大丈夫なのかと思いますが、当時はメインバンク制といわれる企業と銀行の関係が一般的で、土地は必ず値上がりするという土地神話の時代でしたから土地を持っていれば資金繰りは銀行が面倒を見てくれる(融資してくれる)時代でした。

その後アメリカが日本企業に投資するようになって、業績に関係なく土地を持っている会社の株が高いなどという経営は透明ではない、資産は時価表示にすべきだなどと言われ、だんだん自己資本比率も実態を示すようになりました。

私も企業の財務諸表を見るときは先ず自己資本比率を見て50%を超えていれば、まあ確りしているなと思う事にしています。

その後、日本企業は自己資本の改善に努め、特に注目すべきはバブル崩壊後も、長期不況の中で、総資産圧縮努力なども重ねて自己資本比率を高め、経営の健全化に努力し、リーマンショック前には法人企業統計の全産業全規模で37%を超えてきていました。

その後リーマンショックの影響は受けましたが、2019年(統計最新時点)には42%を超えてきています。資本金10億円以上に企業では45%水準に届いてきて、賃金は上がらないのに、資本蓄積偏重などと言われるようです。

ただ、自己資本比率が高い企業は、賃金も高いという傾向はあるようで、そうなるのが理想的でしょう。

蛇足ですが、今でも日本人は、企業の自己資本に直接投資する(株式投資する)という考え方は少なく、どちらかというと銀行に預けて元本の安全を図るという考え方が強いのは変わっていません。

昔は、企業が銀行からどんどんおカネを借りたのでよかったのですが、今は自己資本が充実してきて、企業が銀行からあまりおカネを借りなくなりました。

その結果、借り手の無くなったおカネは何処へ行っているのかというと、今度は政府が巨大な借り手になっています。
結果は、国債残高の著増、財政再建のめどが立たないという財政の現状になっています。

企業は借りた金はキチンと利息も払い、返済もしましたが、国は性悪で、利息は低くして、しかもキチンとした返済計画も立てないようです。
戦後の企業が借金経営だった時代と、今の政府が借金まみれの時代と、どちらが一体まともなのでしょうか。

就職内定率上昇、よかったですね

2021年11月19日 22時47分02秒 | 労働
日本独特の統計に「就職内定率」というのがあります。
大学卒については民間企業にリクルートが毎年、翌年の卒業者について毎月発表しています発表しています。こんな統計を取っているのは多分日本ぐらいでしょう。

日本では、企業は先ず良い人を採ろうというので、来年卒業する学生を、卒業前から試験や面接をして「採用内定」を出します。
学生は来年4月から行く会社が決まりますから、学生生活の最後を安心して過ごせます。

大変結構だと思うのですが,安倍政権肝いりの「働き方改革」では、仕事の経験もない即戦力にならない学生を纏めて採用するなどは無駄だと考えているようです。

しかし、日本の大学や企業の考え方からすれば、人生で授業料を払って勉強する時期から、社会のために働いて給料をもらう時期という大転換の時期ですから、その移行期をスムーズにすることは非常に大事だと考えるわけです。

人間一人前になったら、社会のために働いて、社会の役に立っているという証拠が給料だという事でしょう。

欧米では若年層の失業率は平均失業率の2倍ぐらい高いのが一般的で、それだけ、「授業料支払」から「給料の受け取り」への転換期で躓いているということになります。

欧米では、新卒一括採用はありません。職務給(ジョブ型賃金)が一般的ですから、仕事ができる即戦力でないと就職ができません。

日本では無垢の素材(人材)を採用して、企業が、仕事や社会人としての生き方を、新入社員教育を皮切りに教え込んでいくという社会人教育と職票教育を引き受けてくれているのです。

なぜ日本の企業はそこまでやるのかといいますと、日本企業は基本が人間集団で、企業というのは人間が集まって協力してやるもの、つまり人間中心だと考えているからです。

欧米企業は、基本的に職務が中心の組織で、それぞれの職務に、それができる人がついて稼働する、つまり人間は職務遂行のために必要という職務中心主義です。

こうした違いは、日本と欧米の伝統文化の違いからきていることです。日本のように企業は人間の集まりという文化の中では日本型の採用システムが合理的です。いい人を集めたいという事で新卒一括採用が一般的なのです。

その日本で、「働き方改革」が推奨するように、企業が新卒一括採用をしなくなるとどんなことが起きるでしょうか。

新卒の時点で、企業という人間集団に参加出来なかった人が増えるでしょう。、社会に役立つ仕事が働きながら身につくという企業の教育訓練システムかラ疎外され、無技能でもできる単純業務を転々とするのが社会人のスタートになる可能性が高くなるでしょう。

若年層失業が欧米並みに増えるでしょうし、企業内教育のシステムに乗れない、職業能力の蓄積の出来ない人が増えるでしょう。

日本でも、偶々就職氷河期に卒業した人の中にはそうした不運に見舞われた人が出てしましました。昨今「80・50問題」などと言われるケースがそうです。

もう舶来崇拝の時代はとうに過ぎているはずですが、日本の伝統文化、それに根差す日本の企業文化といった人の心につながる問題の十分な理解もなく政策を考えるような事の無いようにお願いしたいものです。

米中関係の中で問われる日本の外交力

2021年11月18日 17時12分11秒 | 文化社会
米中首脳会談で当面の両国のスタンスが見えてきました。
 
双方とも礼儀正しく、バイデン大統領は独特の柔和な笑顔で、習近平主席は、かつて副大統領だったバイデン大統領を「老朋友」と呼び親しさを感じさせました。
 
 経済規模で世界の1、2位の大国を率いるお二人ですから、無駄なトラブルは避けたいという気持は、多分共通なのだろうという感じの双方の表情で、見ていても、安心感の様なものが感じられるシーンでしたが、話し合いそのものはどうなるのかなと思っていました。

詰まる所は気候変動などの共通する問題については協力という点では一致するのですが、南シナ海、東シナ海、台湾問題といった領土問題になりますと 最後まで平行線という事だってようです。

アメリカは3億5千万の人口を抱え、トランプ後遺症(国家の分断状況)の中で、何とか国論を収斂させ、世界をリードする立場を守るという難しい事情があります。

一方中国は14億という巨大な多民族、多言語の人口、宗教問題も抱え、更にはかつての内戦の相手である台湾との立場の相違もあり、国のまとまりを経済成長と一党支配という政治体制によって確保しようという、これも大変難しい事情があります。

中國はいまだ発展途上の国であり、自国の発展を最優先に考える国でしょう。アメリカは成長を遂げた大国で、世界のリーダーの役割を課せられた国でしょう。

そしてともに、国を纏めるためには、政府は国民の意思を代表し、それが国際的にも認められ、多くの国から支持を得ているという状況を作り出さなければならないでしょう。

そうした狭間で、日本は、戦後復興も独立も、更に防衛もアメリカに依存するという面が大きくなり、外交力はアメリカに頼ることが通常になって来たようです。

既に、世界はハードパワーよりもソフトパワーの時代に入っているのですが、この所の日本は、(平和憲法を掲げるのだから?)ソフトパワーでもアメリカ依存でいいのだ、といった残念な状態が通常化しているようです。

そうした関係から、この所は、残念ながら、アメリカにとって、日本ほど与し易い国はないといったことになっているように感じられます。

偶々、今回の日米2国間の貿易交渉の問題でも、アメリカの提案する新しい日米通商協力の枠組みの中で、従来日本側が最も重視していたアメリカの日本車への関税問題などは消え、日本の希望であるアメリカのTPP加盟は議論の外になったようです。

振り返って見れば、レーガン=中曽根の「ロン・ヤス」の日米蜜月と言われたのさ中に、アメリカは「プラザ合意」を仕掛け、大幅円高による日本経済の追い落としを、30年間もほとんど成長しない日本経済実現という形で成功させています。 
 
矢張り覇権国アメリカは、世界のどの国に対しても、極めて厳しい国だという事ではないでしょうか。

勿論対立する事が良いと言っているのではありません。
日本は、米中首脳二人が共にそう思っているのであれば、その通り「無駄なトラブルは避けよう」と米中双方に常に働きかけることを徹底して行うべき立場にあるのでしょう。

そして、そうした行動が説得力を持って出来るように、世界から信頼される国としての行動を常に堅持して、そうした行動力を基盤に、独自の外交力を身に付けて行かなければならないのではないでしょうか。

アメリカの驥尾に付して、それで何とかなるかなどと考えていて、なんとなかる時代では、もう既にないのですから。

ガソリン高に補助金、それでどうなる?

2021年11月17日 15時07分45秒 | 経済
ガソリン高いですね。160円を超えてビックリしていましたが、170円台になりそうな気配もあります。

1970年代に2度にわたって起きた石油ショックを体験している人なら「慌てない方が良いよ」というかもしれませんが、今の現役のバリバリの方々は、やっぱりこれは大変だと慌て始めているのかもしれません。

そんなことからでしょうか、経済産業省が(経済産業大臣かもしれませんが)「元売りに補助金を出して、ガソリンの価格を抑えよう」と考えたようです。

今の政府は(今の政治家は?)バラマキの人気取りがお好きなのかもしれませんが、政治というのはそんな近視眼的な事では困るので、こういう場合には「如何なる政策が日本経済にとって最も適切か」を十分議論して、誤りないことをやってほしいと思う所です。

かつての石油危機の時もそうでしたが、原油などの輸入に頼るものが値上がりして、日本国内でも関連する商品・サービスが値上がりするといことの意味をキチンと理解すれば、無駄な政策、誤った政策で、日本経済を混乱させることはないはずです。

先ず、輸入原材料などが値上がりするということの意味ですが、それは、価格変動によって、日本のGDPが輸出国に流出するという事です。
言い換えれば、家格が上がった分だけ日本経済が損をするという事ですから、日本の国内で、それを取り戻す方法はありません。

甘んじて損を受け入れるしかないのです。そしてその損は日本国民がそれぞれに負担するのが最も合理的なのです。
そして「それぞれに負担する」というのは、値上がりした原材料を使っている程度に従って、負担するのが最も合理的なのです。

それのやり方は単純で、仕入れの値上がりした分を正直に売値に価格転嫁する事なのです。政府はその時に便乗値上げは許さないという基本原則をみんなが守るように見張ることだけが役割です。

それ以外の事をやると、必ず不公平が起きます。今度のように補助金を出しますと、それは税金か国債が原資ですから、車を使っている人は得をして、その分車に乗っていない人も負担することになります。

値上がりが大きい原油は補助金が出て、半導体や製鉄原材料は値上がり幅が小さいから補助金が出ない、となると不公平が起き、もう少し値上がりしてくれればよかったなどということになりそうです。

今は石油が上がっていますが、石油危機の経験からすれば、そのうち下がるでしょう。
その時はどうするのでしょうか、多分そのままでしょうから、補助金の貰い得でしょうか。

こういう政策は、「神の見えざる手」の正反対の「政府の見える手」で、自由経済の原則から言えば、価格機構という「神のみえざる手」よりも巧く出来るという権力への過信、あるいは、政治的配慮という些かよこしまな心によるもので、経済社会の無用な混乱のもとでしかないのです。

繰り返しますが、政府は、経済界に、便乗値上げをせず、原材料の価格上昇はきちんと価格転嫁してくださいと言って、みんながそれを守るようにするのが最もコストのかからない、最も合理的は方法だということを心得てほしいものです。 

参考:日本は第1次石油危機の時は慌てふためいて大失敗をし、第2次石油危機の時は、政府も民間も確り落ち着いて行動し、経済は順調、「ジャパンアズなナンバーワン」と言われるほどになりました。

中国は「台湾は国内問題」と言いますが

2021年11月16日 22時02分52秒 | 国際関係
米中首脳会談が始まりました。世界の1番と2番の大国のトップが話し合うのですから、人類社会の2大リーダーの(リモートとはいえ)直接対話ですから、何とかそれにふさわしい、世界人類のためになる結果を期待したいと思います。

アメリカもトランプさんの時代だったら、世界中が心配するでしょうが、バイデンさんになって、アメリカファーストはやめ、世界を良い方に導こうというお考えのようです。
しかし、国内ではトランプ流のアメリカファーストがいい人も沢山いるようで少し心配です。

中国は、習近平さんが、「覇権を目指そうとは思はないが、世界を良い状態にするにはアメリカ流の民主主義ではだめで、中国が(自分が)考えているような体制にしなければ纏まるものではない」というお考えのようです。

中国が今やっているのは、経済は自由経済の方が発展するからそれでいいが、政治は共産党一党独裁の専制型でなければならないという事に様に見えます。

心配なのは、習近平さんは、目標達成のために3選を目指していることです。
3選は、鄧小平さんが、毛沢東が中国の統一と発展を目指しながら、晩年は文化大革命といった過ちをしたことに鑑み、長期政権の弊害除去のために定めたものです。

習近平さんが、交替をしないという事は、自分でなければダメと思っているからで、「目指す世界」も自分しか解っていないという事から来るのでしょうか。
自由経済がいいと言いつつ、政治の世界では領土問題や人権問題を中心に国際的なトラブルが多いのが現実です。「目指す世界」は常人には理解困難です。

そうした中で、バイデンさんの(世界中の!)大きな心配は、習近平さんが台湾をどうしようとしているのかという問題でしょう 。

台湾は、中国に併合されたくないという気持ちでしょう。しかし、習近平さんは、「台湾は国内問題」で外国は口を出すべきではないと言っています。

習近平さんの考えと国際世論とはかなり違うでしょう。しかし習近平さんは、まさに本気のようです。

ところで、中國にも離婚はあるでしょうが、夫婦喧嘩で別居していた奥さんが、威張る亭主に愛想を尽かし、もう帰るつもりはないと言っているのに対し、亭主は「力ずくでも連れ戻す」と強引だという場合、中国の多くの人はどう考えるでしょうか。

友人や知人が、「あんまり無理を言うなよ、もうお前のこと好きじゃないんだから」といっても亭主は「これは夫婦の問題だ、口を出すな」と当たり散らすといったところです。

中國でも大抵の人は、亭主に「もういい加減で奥さんの自由にしてやれよ」「嫌われたんだから、しょうがないよ。お前は身を引け」というのではないかと思うのです。

夫婦の問題なら、端から見れば、こんなふうに思うのですが、事が国の問題になると、価値観が変わって、奥さんの権利も自由も認めないとなるのでしょうか。
人間に関わる問題であれば、個人でも国でも良識は変わらないのではないかと思うのですが、国というのは何か異常に感情的になるような気がします。

習近平さんは本心ではどう考えているのでしょうか。それも解りませんが、長期政権になると、ますます頑固になるというのが多くのリーダーの場合ですが、この辺りが世界が最も心配するところではないでしょうか。

GDP(2021年7-9月期)、デルタ株で消沈

2021年11月15日 16時16分18秒 | 経済
今日、内閣府から標記のGDP統計の第一次速報が発表になりました。
この所の経済の動きは、いわばコロナ次第という事で、それが最大の経済活動の分野である「国民の消費活動」(GDPの半分超)と、2番目の企業の設備投資(GDPの十数%)、を左右し、それに国際環境や、政府の経済対策が多少影響してくるといった状況です。

国民としては、コロナの新規感染者の数字が一番気になるところですが、思い出していただきますと、デルタ株という感染力の強烈な新種が生まれ、国内の新規感染者数が連日ニュースのトップになり、みんなが「これからどうなる・・・」と心配したのが8月時点でした。

しかしワクチン接種の加速の効果もあったのでしょう。勿論デルタ型の猛威に、国民の巣籠り状態が徹底したこともあるでしょう、8月中旬をピークに新規感染者数は徐々に減少に転じ今日の、いわば小康状態に至っています。

7-9月というのは、あの巨大だった感染第5波の影響を最も受けた時期でした。GDP統計にもその爪痕ははっきりと残っています。

マスコミが報じていますように7-9月期は前期比0.8%のマイナスで、これは年率に換算すれば3%のマイナスです。数字は実質値です。以下の数字も同じです。

ここでは、少し長い目で、2019年と2020年、そして今年と見てみます。

2019年は、景気としては下り坂でしたが、まだコロナの影響はない時期です。
コロナで大幅な落ち込みが始まったのはこの2019年の4-6月で、前年同期比7.2%の落ち込み、続く7-9月は、同5.5%と連続大幅落ち込みです。

2020年の4月、5月は、第1回の緊急事態宣言で、6月には解除になって、政府も経済の落ち込みを心配して、GoToキャンペーンなども始めましたが国民は慎重でした。
当然その後も低空飛行でしたが、今年の4-6月期に至り、突如前年同期比7.6%のプラスになりました。

これは昨年の4月、5月が初めての緊急事態宣言で前年比7.2%の急減時期との比較でsから、大幅には見えますが、7.2%減って、7.6%増えても、正確に計算すれば、それでも2019年の水準には1.5%程追いついていません。

では今年の7-9月はどうかといいますと、昨年は一昨年に比べて5.5%の落ち込みですから一昨年を100とすれば94.5です。それに比べて1.4%しか増えていないのですから掛け算をすれば、2年前(コロナ前)の7-9月の水準の、95.8%ということになります。

こうしてみますと、経済がコロナ前に戻るのは容易でないように思ってしまいます。

しかし、10月11月になって、有難い事に新規感染者数は順調に減り、昨今は1日200人レベル、新規感染者の出ない県の方が多いといった状況になりました。

専門家の先生方も、なぜこんなに改善したのか解らいといわれるほどで、政府もこれに気をよくして、規制の緩和も進め、経済活動の活発化の方向に慎重に舵を切り始めています。今や、最重要の経済の「先行指標」はコロナの新規感染者数の行方でしょう。

このまま順調にいけば次回の10-12月期か来年1-3月期には「コロナ前水準を回復」という事になるのではないかと言えそうですが。さて、どうなるでしょうか。

「新しい資本主義」登場、「1億総活躍」など退場

2021年11月14日 22時55分21秒 | 政治
岸田政権は、去る12日、内閣官房の副長官のもとにある40ほどの分室の整理を発表しました。
コロナ対策関係の3つを1つに統合したり、安倍政権の看板でもあった4つの分室を廃止して総数も33に減ったとのことです。

分室というのは新しい政策を打ち出すときその企画や他の政策との調整などをする所だそうですが、数が増えるばかりだったようですから、不要になったものを整理するのは大変結構なことだと思います。

 今回、廃止になった4分室は、いずれも安倍政権の肝いりだったもので、

・1億総活躍
・働き方改革実現
・統計改革
・人生100年時代構想


の4つだそうで、並べてみますと、活字は立派ですが、一体具体的には何をやるのかやったのか、見当もつかなかったり、成果の記憶もない漠としたものばかりです。

「1億総活躍」はタイミングの悪く、この所は活躍するのはデルタ型のコロナウィルスで、人間様はなるべく外出も旅行もやめて巣籠りを宜しくになってしまいました。
もともと安倍政権の下では格差社会化が進んで、活躍できる人と、したくても出来ない人の分断が起きているのですから、担当の分室は何をしていたのでしょうか。
今では「そんなことを言っていた日もあったな」程度に印象も薄くなっています。

「働き方改革実現」は企業の労使や、労使のナショナルセンターを巻き込んで、双方に混乱や誤解でトラブルは増えましたが、労働時間短縮と二重就業がともに推奨されたり、新卒一括採用がいけないといっても何も変わらないし、同一労働・同一賃金にすべしといっても、同じ仕事をしている1年先輩の給料は相変わらず高いままでいいそうで、労使の協議で決めるべき最低賃金を政府が無理に引き上げさせて中小企業の求人が減ったりで、なんの役に立っているのかさっぱり解りません。

統計改革に至っては、毎月勤労統計で重大な取り扱い錯誤がありましたが、あれは担当する公務員の不勉強か手抜きで、日本の統計システムは、世界のどこに出しても恥ずかしくないものでしょう。
それに政治家が、労働時間の調査やGoTo政策とコロナ感染者の数字について、きちんと統計を理解せず調べもせず聞きかじりの発言をして、世の中を混乱させました。これは統計を改革しても直らない問題で、政治家が統計の使い方を勉強しなければならないというだけのことでしょう。

「人生100年時代構想」などは保険会社や金融機関のコマーシャルで生き残っていますが、政府がなにをしたのか、全く記憶はありません。国民の最大の関心は100歳まで生きたら年金はどうなるのだろうという所にあるのは誰でも理解しているところですが、その肝心の年金の方は、担当大臣の諮問に応えて審議会が出した答申を、内容が都合悪かったのか、担当大臣が受け取り拒否をしたといったことで、国民は狐につままれたように感じています。

わるぐちばかり書いて申し訳ありませんが、「こんな良い事をやってくれた分室を潰すのはもったいない」などと書くような記憶は出て来ないので、こんな事になってしまいました。

こう見てくると、岸田政権が分室の整理に手を付けたという事は大変結構な事のように思われます。

これ以外にも、国民が安倍政権に対して「きちんと後処理をしてほしい」と思っている問題は沢山あるようですから、岸田政権はお手すきの時にでも、是非、そうした問題も順次片付けていってほしいと思う所です。

国民が能天気の方が経済が活性化する?

2021年11月12日 13時21分05秒 | 経済
今回の表題は些か問題かもしれませんが、世界の経験から見るとそうでもないのかもしれません。

個人の場合も、国民と纏めて見た場合も、同じように「アリ(蟻)型」と〔キリギリス型〕があるようです。

このブログでは「アリ型」の例として日本、「キリギリス型」の例としてアメリカを挙げたりしていますが、これはイソップ童話になぞられたもので、日本は冬に備えて備蓄する国、アメリカは稼ぎ以上の生活を謳歌して赤字を垂れ流す国という趣旨です。

赤字を出しても、アメリカは基軸通貨国で、例外ですが、普通の国では、かつてのギリシャやイタリア、ポルトガル、韓国などのように、IMF(国際通貨基金)が赤字を出さないようにと厳しい管理をして、黒字になるまで経済の緊縮を要請します。

〔キリギリス型〕の場合は、政府も国民もいわば能天気で、ついつい稼ぎより良い暮らしをして赤字を出してしまうという事です。
結局そのツケを、IMF管理になって、緊縮生活で何年も苦しんで正常化するのです。

日本の場合はどちらかと言うと、過度に心配性で、将来に備えて備蓄をすることにばかり熱心になり過ぎているように見えます。

外から見れば、そんなに生活を切り詰めて、節約しても楽しくないでしょう、「もっと現在の生活を楽しんだ方が良いんじゃないですか」などと言われそうな感じです。

そう言われて、「そういえばそうですね。あんまりしこしこ溜め込むのはやめて、少しパット行きますか」と言うためには、人間少し能天気になって、「明日は明日の風が吹く」と呑気に構え、駄目になったら、その時はその時で考えようといった処世哲学に頭を切り替えなければならないのでしょう。

さて、そんなことが今の日本人に出来るでしょうか。
財政赤字の解決のめども立たないし、「公的年金はこのままでは次第に目減りして、老後には最低3000万円必要だと言われる中ですよ。そんな能天気になれるはずがない」とお考えの方が多でしょう。

だからこそ、今の日本はこんな状態なのですが、現状の日本経済の状態から判断すれば、日本がIMF管理になるまでには、まだかなりの段階があり、そこに至る間には、確り計画すれば、日本をアリでもキリギリスでもないバランスのとれた状態に作りかえていく余裕は十分あるように思っています。

岸田政権の新政策がそうした方向を向いていることを願うところですが。日本経済にはまだ余裕があるとうのは、次のような点です。

コロナ明けを待って、日本人が少しキリギリス型になって、もっと生活を楽しもうと消費性向を上げる余裕は5~6%はあるでしょう。それだけでGDPは 3~4%成長します。

余り消費を増やすと経常収支が赤字になるかもしれませんが、そうなると円が弱くなり円安になって、その結果は、国際競争力が強化され、貿易やインバウンドで赤字国になるのを食い止めてくれるでしょう。

多分、こんな状態が繰り返されて、巨大な日本の対外債権もバッファーになり、IMFにご迷惑をおかけする事にはならないでしょう。

これは日本経済正常化のプロセスで、その間に金利も次第に正常化し、貯蓄にはまともな利息が付くようになるでしょう。

金利が正常化するといことは年金財政にはまさに干天の慈雨で、公的年金も、企業年金なども、かつての「確定給付」に復帰する可能性が大きくなります。

国家財政は利払いが大変でしょうが、国債の半分以上を日銀が持っているといった状態ではかなり日銀経由でカネは帰ってきますので、負担は軽減されます。

一番問題は、これまでのアベノミクスで、所得格差がかなり拡大していますので、これを税によって(所得税制の累進強化、金融収益への適切な課税など)適切に再配分する事は、大前提です。一時金のバラマキではだめです。これが一番重要で、早急の課題でしょう。

岸田内閣は、どこまで国民の意識を変えられるでしょうか。