tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2022年 世界も日本も多難な年でした

2022年12月30日 18時12分40秒 | ご挨拶
今年も多くの皆様にお付き合い頂き誠に有難うございました。

今年は、世界も日本も、心配事が随分多い年になりました。
2月にはロシアのウクライナ侵攻、コロナは第6、7、8波と3つの大波、年末には、日本も戦争する国になりそうな動きが顕著に、などなど。

来年はこれらがどう展開するかです。心配の多い年にならないように願うところですが、何か難しそうですね。

それでも皆様とともに、行方を確り見守り、できればトラブルシューターとしての努力を続けたいと思っています。

あと1日で迎える2023年も、何卒よろしくお願い申し上げます。 (tnlabo)

民主主義と共産主義という問題の行方

2022年12月29日 16時36分13秒 | 文化社会
今年も今日を入れて3日、コロナもそうですが、国際紛争の問題も「暦」に関係なく困った状態は続いていきます。

戦争を含むあらゆる紛争は、ユネスコ憲章の前文にある「戦争は人の心の中で始まるものであるから・・・」という英国の故アトリー首相の言葉がすべてを説明しています。

そこで人間が何ゆえにそんな心を持つかと考えますと、その人は何か自分の心の拠り所となる考え方を持っていて、それが正しいことだと自分を納得させているからでしょう。
一般的に言えば、それは「イデオロギー」「主義主張」「思想信条」などの言葉で言われるものでしょうか。

この表題でも今、世界を二分するように言われる「民主主義国 vs.共産主義国」の対立も「主義」の違いに根差すものでしょう。

ところで、この民主主義国と共産主義国の対立というのも、実は、自分で書きながらあまり適切ではに様な気がしています。

民主主義に対応する言葉は、専制主義・独裁主義でしょう。これは「政治体制」の問題です。
旧ソ連邦や毛沢東の中国に見られるように、共産主義が往々にして独裁制に陥るという歴史の経験から民主主義と共産主義を対立概念となっているのでしょうか。

ロシアは典型的な独裁制で、プーチンの「心」が戦争を起こし、独裁性のゆえに国民がついて行っているという意味で、民主主義国は独裁主義国を認めないのも当然でしょう。

という事になりますと、共産主義に対応する言葉は資本主義という事になります。これは経済的に生産要素(人間・資本)をどいう配置するかという問題です。

中国は共産党一党独裁の共産主義国ですが、鄧小平以来、改革開放で生産要素の配置は大幅に自由化して資本主義型になっています。しかし、政治の形態は独裁制で、いざというときは政治の力で生産要素の配置はコントロールできるという事のようです。

しかしこれは元々馴染まないものを無理に馴染ませているようなもので、平穏無事の時は問題なくても、経済危機や国際紛争に際して独裁制が適切に機能できるか、いずれ問題になるなどと言われます。

香港では、長い間かなりの混乱がありましたし(今も潜在?)、今回のゼロコロナ政策では、政府は白紙運動を容認する民主的な政策をとっています。これは中国国民にとっては大きな成果でしょう。
白紙運動の容認は、国民の自由が政府の「ゼロコロナ政策」という規制を転換させたという事ですが、これはもう1つの主義の対立「自由と平等」の問題に繋がります。

「自由と平等」も一般的に使われますが、自由主義の反対は、統制(規制)主義のはずで、これは社会体制の問題です。
勿論、人間社会に統制や規制は必要ですが、その範囲は自由主義社会の人たちに任せましょう。

こう見てきますと今、世界を2分するような問題や、紛争、戦争を起こしている状況というのは
民主主義と独裁主義: 政治体制から見て
資本主義と共産主義: 経済体制から見て
自由主義と統制主義: 社会体制から見て
といった事になるのではないでしょうか。

〇〇主義というと、どうしても片意地張ったものになってしまいますが、並べてみれば、どちらが「住みやすい世の中を作か」は誰にも容易に想像がつくのではないでしょうか。

歴史を見れば、時間はかかっていますが、だんだん住みやすい方に動いているのですが、此の所一寸ゴタゴタしています。やっぱり「民主主義のトリセツ」のようなものが必要なのかもしれません。

防衛力重視か、経済成長重視か、一石二鳥の方策は?

2022年12月28日 17時20分53秒 | 経済
真面目に取りあげようと思っていたのですが、何か「笑い話」の様なことになってしまいそうでもあります。
いややっぱり真面目に考えるべきだと思うのですが、問題はこんな事です。

日本の場合、総理になると、どういう訳か日本よりもアメリカの方を向いているのではないかと思われるような傾向が顕著のように毎度感じられるのです。

安倍総理の場合も、トランプというアメリカの大統領に極めてふさわしくない人と随分仲良くしたようです。
カジノを3か所作るなどと突然言い出したのでびっくりしましたが、後からアメリカらのニュースが入って来て、トランプ大統領が安倍さんに、候補者も挙げてカジノ建設を持ちかけたという事だったようです。

岸田総理の場合も、明らかに、総裁選の時には、「新しい資本主義」と「成長と分配の好循環による経済成長」といった日本経済重視のスローガンだったと思っていましたがどうでしょうか。

来年1月からの通常国会では「防衛費の50%増」への議論が大きな論点、争点になりそうな気配です。
そのためには余計な問題に時間を取られないようにと、問題閣僚などの更迭も終えています。更迭の閣僚は、異口同音に「国会審議を妨げないため」と言っています。

そこまでして、嘗ての公約では記憶のない、敵基地攻撃能力も含む防衛費50%増という国民も驚く方針を打ち出し、来年度予算にその手はじめを確定したいという事でしょう。

「日本も戦争をする国の仲間入り」という認識は「敵基地攻撃能力」の保有で世界に広まってきているようです。

中国は日本にとって大事な国ですが、明らかに対日認識を変えて来るようで、米中関係の険悪化の影響が日本にも降りかかるような気配も濃厚と指摘する人も多くなるようです。

一方、マスコミでは防衛費で軍艦を建造すれば、その分GDPが増えるのが国民経済計算です、などと教えてくれますので、税金が増えたり、年金が減ったり、戦争の準備に国債を発行をしたり戦争の準備は経済成長促進策なのかと驚く人も多いでしょう。

まさか分配を防衛費に多く回して、防衛設備の建設で経済成長を目指すというのが、嘗ての「成長と分配の好循環」の公約の中身だったという事ではないでしょう。それでは岸田政権の公約は「落とし噺」で終わってしまうという事になってしまいそうです。

やっぱり国民の望んでいるのは、コロナの終息の気配に期待し、、来春闘では連合が賃上げ幅を拡大し、経団連もある程度の賃上げは容認と言っているという形の成長と分配の好循環に突破口を開くタイミングが来ているという状況に即した経済政策でしょう。

国民に増税を認めさせ、年金は減額、その上国債を発行してまで、防衛費の増額を図り、基地や軍艦を創れば「それも経済成長」というのは、笑い話のネタ限りにしてほしいというのが本音でしょう。

来春闘は、日本経済の起死回生の鍵になる重要なポイントと言われることは、岸田政権の皆さんも十分ご承知だろうと思います。
しかし、残念ながら来年度の経済成長率は今年度より低いというのが先日発表された「政府経済見通し」です。国民に希望を与えるには、些か悲観的に過ぎるように感じます。

岸田政権の、国民には理解できないような豹変ぶりが大変気になる年の暮れではないでしょうか。

政府と日銀、目指す所は同じでしょうが

2022年12月27日 21時40分07秒 | 経済
先月ですか、岸田首相と黒田日銀総裁の会談があって、「賃上げの重要性」で意見が一致したという報道がありました。

両者とも賃金決定とは直接関係ない立場の人ですが、政府と日本銀行の責任者が共に賃上げが重要という点で、同じ意見なんだということが解りました。

この所意見が何か食い違う事が多いようで気になっていたので、一致したという事はいい事かなとも思いましたが、日銀の本業の金融政策で一致してくれるともっと良いんだがなどと余計なことを考えてしましました。

黒田総裁は10年程前に、安倍総理が国会の承認を得て任命し、来年は2期目の5年が終わり後任人事などが取りざたされています。

振り返れば、安倍総理の時は黒田総裁になれば、円安が実現という予想があり、それは安倍総理のアベノミクスの3本の矢の第一番目だったです。

これが2013-4年の2発のいわゆる「黒田バズーカ」で大成功、円レートは$1=80円から120円になって、日本経済は円高の泥沼から脱出しました。

政府と日銀は蜜月で、2~3年で「インフレ目標2%」を達成し、アベノミクスは大成功というシナリオで、先ず円レートの正常化が実現したので、後は第2の矢「財政政策」、第3の矢「構造改革」へ邁進という予定だったのでしょう。

日銀はそれの完全支援体制で、異次元金融緩和を維持、円高に戻らない条件を堅持しました。

日銀の考え方は、異常な円高を是正してほぼ正常な円レートにしたから、後はこれを死守(当時の感覚)していけばそれで貫徹できる、アベノミクスの第二の矢、第3の矢で賃金水準も上がり、諸外国ほどではないが2%ほどの自家製インフレになるまで、この円レートを守る(円高にしない)事がベスト、というものだったのでしょう。

勿論そのためには2パーセントインフレ目標達成に必要な賃金水準の是正をし、消費を喚起して経済活動の活発化を経済政策の目標にするという政府の政策が必要ですが、賃金水準の引き上げや、財政政策による経済活動の活性化は日銀の仕事ではないのですから、日銀は政府の「アベノミクス」に期待して金利引き上げの日を待つというし姿勢になるわけです。

所がアベノミクスは掛け声だけで全く実績が上がらず、物価も上がらないので、次第に円高になって、110円から100円の方に近づいていくので、これは異次元緩和を続けるしかない、金利引き上げなどと言ったら、また100円を割って90円台の円レートになる恐れがあるというのは実感だったでしょう。

しかし結局、賃金水準は上がらず、物価も上がらず、政治は混乱、そこにコロナ襲来で日本経済は散々な状態になってしまったのです。

日銀は動きが取れませんから、政府の財政政策の援助です。国債を買い、それでも足りないというのでETFで株まで買って金融を緩め政府を金融面から支えます。

そんな中で、原油高が起き、ロシアのウクライナ侵攻で、LNG価格が上昇、アメリカでは輸入インフレが自家製インフレに転嫁、物価が急上昇、FRBは慌てて政策金利を大幅引き上げ、お蔭で日米金利差は急拡大、結果は大幅円安、これはマネーゲームのせいです。

日銀はこんなことは一時的だから半年か1年のうちには元に戻ると予想して金融緩和は継続の姿勢を崩しませんでした。(口先だけでも柔軟の方が良かったのかな)

アメリカの都合でとんだ円安になったのですが、日本では日銀の政策が悪いように言われています。

少し長い目で見れば、物価の上がらない日本は国際競争力が強くなり、いずれ円レートは120円になり、110円、100円の方に向かい、場合によってはG7で、少し円高にすべきではなどと言われる可能性もなきにしもあらずです。

日銀だけが責められていますが、日銀は金融政策しか手段はないのです。日銀が連合や経団連と賃金問題を話し合うわけにはいかないでしょう。

経済運営全権を握る政府が連合や経団連と会合を持つ「産労懇」は嘗ては頻繁でした。

政府と日銀が「賃上げが重要」で一致したらアクションを取るのは政府でしょう。
来春闘が日本経済の試金石とは最近多くの方が言うところですが、政府は全く違った困りごとに手を焼いて忙しいようです。

2023年度「政府経済見通し」を見る

2022年12月26日 20時44分07秒 | 経済
先週の22日に政府経済の通しが発表になりました。
政府経済見通しは、このところずっと、些か無理と思われるような高めのものが多かったのですが、岸田内閣になって方針が変わったのでしょうか。
2023年度の経済見通しは、実質経済成長率1.5%という控えめな数字です。

ロシアのウクライナ侵攻問題も、プーチンの発言など聞きますと何か長引きそうな気配で、世界経済も何となく落ち着かない状況が続きそうです。
中国のゼロコロナ政策が失敗し、感染急拡大などという噂も広まり、日本経済についての良い話も見つからないようです。
来年は少しは何とかなりそうな賃上げもある国内経済についてはどうなのでしょうか。

という事で、見通しの中身を見てみましょう。閣議了解の段階ですので主要項目しか出ていませんが、
            名目  実質 (同昨年度)
国内総生産(GDP)   2.1   1.5   (1.7)
民間最終消費支出    3.2   2.2   (2.8) 
民間住宅        1.9   1.1  (-4.0)
民間企業設備      6.2   5.0   (4.3)
内需寄与度       2.5   1.6
財貨サービスの純輸出 -0.4  -0.1(寄与度)
という事になっています。
  
通常、閣議了解の数字が閣議決定の数字が出るまでの間に変更される例はなく、より細目や関連数字が確定されて発表されるので、この数字も変更されることは無いと思いますが、ご覧いただきますと些か「気落ちする」様な数字ではないでしょうか。

ロシアのウクライナ侵攻問題の勃発、とエネルギー価格上昇問題、加えて、コロナ感染第6波、第7波、そして今の第8波、とコロナの猛威の下にあった2022年度は、日本の経済活動には相当マイナスの影響があったと思うところですが、来年度の実質経済見通しは、今年より低いという事になっています。

勿論経済見通しは、アベノミクス時代のように、見通しではなく希望的数値だなどと言われるものであってはならないのですが、可能性のある範囲ならば、頑張って達成しようと国民に呼びかけられるようなものであってほしいとも思うところです。

2023年度が、何故悪条件が重なった2022年度より低いのか、政府の説明の中では、官民連携で新しい資本主義の旗印の下、物価問題も克服して新しい持続な成長路線に乗せると意気込みながら、実質成長率が前年度に達しないのでは、国民も「え!なぜ?」ではないでしょうか。

統計を見れば、平均消費性向は今年に入って上向き傾向にあります。春闘では、すでに大幅賃上げを春闘を待たずに行っている企業も出て来ています。
連合は賃上げ要求の幅を広げ、経団連もある程度は理解を示している状況です。

そうした中で、民間最終消費支出が2.2%の見通しと今年度の2.8%を大きく割り込むというのでは、政府はどこまで本気かと疑われそうです。

上の見通しでは、日本経済を引っ張るのはやっぱり実質5.0%伸びる(今年度は4.3%)民間企業の設備投資で、これでは消費不振に苦しんだアベノミクス時代と同じパターンと思われてしまいます。

新しい資本主義、成長と分配の好循環と、国民の耳に心地よりスローガンでスタートして岸田政権ですもう少し何とかならなかったのかなと、残念でなりません。
その分、見通しではなく、結果で頑張るというのでしょうか。それならそう明示してほしいと思います。

ゼレンスキー大統領の演説を読む

2022年12月24日 13時57分42秒 | 国際関係
ウクライナのゼレンスキー大統領が、アメリカの上下両院合同会議で演説しました。

今、世界で大変苛酷な立場にある国の大統領が、あれだけの覚悟の決意を持ってふるった弁舌に対して、アメリカは深い共感と賛意、恐らくそれに感謝の気持ちを表す起立と拍手で高く評価したようです

ゼレンスキー大統領の演説は、2つの大きな論点を持っています。
1つはアメリカの支援に対する深い感謝、そしてもう1つは、アメリカの支援によって、ウクライナは絶対負けない、何も恐れることはない、我々は世界に勇気を与える、プーチンは我々を支配することは出来ない、
という2点を極めて明確に説得力ある演説をしているのです。

ゼレンスキー大統領のこうした強い信念の言葉を支えるのは、今ウクライナのやっていることは、この戦争は領土を守るためだけではなく「民主主義のための戦い」だという明確で強固な意識でしょう。

ついこの間まで、ウクライナは美しい都市キーウを中心に、多くの国民は平和で豊かな生活を優れた芸術の文化とともに楽しんでいたのでしょう。

そうした世界が、一人の独裁者のために突然破壊と人の生命の犠牲を平然と伴うような戦争に巻きこまれたのです。

戦争の惨禍に耐えられない人は国外に出ましたが、この戦争が自分たちの自由で平和な生活を取り戻すために必要と意識する人達は、戦場に立つことになったのでしょう。
そしてそれには、自由と民主主義の世界を独裁者から守るという、人類社会の基本的な問題が重ねられているのです。

ゼレンスキー大統領は、我々が戦う、アメリカには支援だけを要請する、ロシアは我々より多くのミサイル、航空機を持っている、我々にはアメリカの支援は不可欠だ、それは勝利を齎す、世界の安全と民主主義への投資だと理解してほしい、と述べています。

世界の将来のためにウクライナが(多くの犠牲を払ったとしても)勝利まで戦うという、まさに犠牲的な気持ちが明確だという感じを与えるところです。

ところで、いま日本は、集団的自衛権を認め、敵基地攻撃能力を持とうとしています。そして、国民は何処の国がどう動いて、そういう事態が起きるのか、政府が何を想定しているかを知りません。

恐らく政府も国民と同じ程度にしか理解していないのでしょう。ロシア、中国、北朝鮮、などがマスコミには出て来るのが一般的です。

しかし、どの国も、将来は友好関係を保ち、相互に発展を支え合うように、かつてより考えて来たし、今後もそうするべき国のように思われます。

日本は一体何をしようとしているのでしょうか、現政権が何か考え方を持っているのでしょうか。でなければ、誰かに頼まれた結果なのでしょうか。

ゼレンスキー大統領の演説は、心を打ちます。ウクライナには深甚な感謝をしなければならないでしょう。

同時に日本は、本当にそうしたことが出来る国なのでしょうかと考えてしまうところです。
今の政権がどう考えているのか国民は皆知りたいのではないでしょうか。

11月消費者物価、値上げはほぼ一巡か

2022年12月23日 14時40分18秒 | 経済
今朝、総務省統計局から、11月分の消費者物価が発表されました。
今年に入って、原油やLNGなどのエネルギー価格の大幅上昇を受けて、輸入物価、企業物価、消費者物価と値上の波が日用品や生活必需品などにまで押し寄せて来ていました。

今は年末、折しもクリスマス・シーズンですが、菓子やケーキ類なども「今年は高くなったね」といった声が聞こえる状態です。

昨年まで数年、ほとんど上がらなかった消費者物価ですが、ことしは1月以来波状的に値上げの波が起きました。

原指数の動きを下図で見ますと、1月-5月が第1波、6月が中休みで7月-10月が第2波というところでしょうか。
確かに、物により値上げの幅は違いますが、大分上がったなという感じを受けるものも結構あります。

       消費者物価指数3指標の動き(2020年=100)

                       資料:総務省「消費者物価指数)

振り返って見れば、海外では年々ある程度の物価上昇があるのが一般的ですが、日本は物価が異常なほど安定していました。
不況で値上げ圧力が潜在していたという面もあるようですが、今回は、これまでのところで、そうした面がかなり顕在化したような感じがするところです。

確かに上昇幅(対前年同月比)は「総合」で3.8%と今年に入っての最高になっていますが、4月、8月、10月と上昇角度はだんだん緩やかになり11月は0.1ポイント(3.7→3.8%)で、長年の値上げ我慢の分もほぼカバーされつつあるような感じです。

        消費者物価指数対前年同月上昇率(%)

                       資料:上に同じ

勿論公共料金など、遅れて値上という分もあると考えられますので、未だ緩やかの上昇は続くでしょうが、対前年同月比では小幅になってくるような気がします。

輸入物価の反落もあり、企業物価も一時より沈静傾向ですから、今後消費者物価を押し上げるのは自家製インフレの部分が増えそうですが、これは賃金水準上昇の結果が大きいですから、来年の4月以降の新しい局面を見なければ、予想は不可能です。

グラフからも解りますように、緑の線、「生鮮食品とエネルギーを除いた総合」がそのあたりを反映すると思われますので、来春闘以降はこの線に注目が必要です。

マスコミの言う「悪いインフレ」が鎮静化し政府日銀のインフレターゲットに相当する部分が2.8%とインフレ目標2%をオーバーして来たので、日銀が金融政策を見直す(見直した)のも当然と言えるのかもしれません。

これで、当面、マスコミがインフレを大きく取り上げる時期は過ぎたように感じています。

高齢者の就業問題:7 年金設計とまとめ

2022年12月22日 14時09分29秒 | 労働問題
日本の高齢者の就業問題という論点を軸にして、高齢化社会日本の進むべき道を論じてきました。

改めて指摘できるのは、高齢化社会の概念、つまりは高齢者とは誰かという問題ですが、これが急速に変わってきた事です。

平均寿命の伸びと共に健康寿命も延びて来ました。60歳代は高齢者という時代から70歳はまだ高齢者とは言えないのではないかという時代に変わったのです。
健康長寿を楽しめる時間が10年以上伸びているのでしょう。

こうした大きな個人生活の変化に社会が追い付いていない所に高齢化問題の発生の原因があるというのが現実ではないでしょうか。

典型的には人間と仕事の問題、これは主として企業の問題。仕事からのリタイアと年金の問題、これは政府の問題でしょう。
この2つが、現実の健康寿命の伸びに対応しよう努力しているのですが、意識の遅れが対応の遅れになり、平均寿命の伸びた日本人の老後不安を生んでいるのです。

一方勤勉で堅実な日本人は、制度の遅れに不安を持ちながらも、着実に対応の努力をしている事は統計の数字が明らかにしています。

ならば、変化を先取りとはいかないまでも、企業の雇用制度、政府の年金制度を、発想を変え、今の状態に合うような新たな基本設計にして、「ここまでの事は企業経営、日本経済の中で可能です」という制度の改革ビジョンを早急に準備、国民がそれぞれに将来設計をし易いようにする事が望ましいと言えるのではないでしょうか。

企業については既に前回述べてきました。年金については言及して来なかったので、年金設計の在り方についての方向を考えながら、このシリーズのまとめにしたいと思います。

年金については、恐らく今政府が考えている方向は、いつかは年金支給開始年齢を70歳にし、企業の雇用義務(定年?)を70歳にし、老後生活の保障を明確にしたいというところではないでしょうか。

これまで述べてきた点からも、それは合理的な線だと考えます。ただ、定年は企業に任せていいのではないでしょうか。もともと法律で決めるものではなかったのですし、リタイアの選択は個人的な問題です。

年金は早期受給の場合は減額年金制で合理的に対応できます。つまり年金制度は70歳を「標準」に置いて、個人の選択によって早期なら減額、遅らせれば加算の適切なシステムを設計すれば済むことです。

今の様なゼロ成長、ゼロ金利の日本経済では、十分な金額にならない可能性は大きいでしょう。
個人的な蓄積と両方でリタイア後の生活を支えるのです。国民はその準備をしています。平均消費性向の長期的な低下は端的にそれを示しています。

政府は国民に、率直に事情を説明する義務があります。医療費や介護も、子育ても、敵基地攻撃能力も必要なのでしょう。
ただ、老後生活には2000万円足りないという審議会の答申の「受け取り拒否」といった不誠実はいけません。国民に不安と不信を与えるだけです。

本当の問題の所在は、日本経済が成長しない事にあります。年金という将来支払うものの原資は経済成長の中でこそ負担できるのです。

このシリーズの中でも見てきましたが、政府の政策宜しきを得て、また、企業が目先の収益より日本経済の成長による企業の成長発展と社会貢献を企業理念とし(以前はそうでした。社是社訓には「時価総額最大」などと書いてはありません。社会貢献、世のため人のためと書いてあるはずです)、日本経済がかつてのように成長を始めれば、状況は着実に改善するでしょう。

高齢者の雇用、就業がより順調になれば、個人の蓄積の期間も伸び蓄積も増えるでしょう。
ゼロ金利が解消し銀行預金に利息が付けば、一層有利でしょう。
老後資金をギャンブルで稼ごうという今の政府の政策「銀行預金を株式に」で泣く人も減るでしょう。GPIFの一喜一憂もなくなるでしょう。

そしてマクロ経済スライドは、年金減額の手段ではなく、年金増額の指標になるのではないでしょうか。

高齢者の就業問題:6 労働生産性低迷の原因

2022年12月21日 14時51分47秒 | 労働問題
まず最初に1つの数字を挙げておきましょう。日本とアメリカの労働生産性の比較です。

アメリカのGDPは大まかに20兆ドル、日本のGDPも大まかに5兆ドルというところでしょう。
アメリカの就業者は1.6億人、日本の就業者は6700万人、総人口は2.8倍ですが、就業者は2.4倍です。日本人の方が働く人の割合は多いのです。

ところが、GDPの4倍を就業者の2.4倍で割ると、1.67となって、1人当たりのGDPはアメリカが日本の1.67倍です。つまりアメリカの就業者は、日本の就業者の平均1.7倍近いGDPを生産しているのです。アメリカの労働生産性は日本の1.7倍近いのです。

この数字はドル換算ですから円レート次第で変わります。しかし、どう考えても日米間の生産性格差は3割から5割はありそうです。

という事は、日本は今、人手不足と言っていますが、日本人がアメリカ並みの生産性を上げれば、3割ぐらいは人が余ってくるという事ですし、もし、日本がそれだけ生産性を上げればGDPは3割から5割増えるという事です。

生産性を上げる基本は、1人当たりの資本装備率を上げること教育訓練をすることの2つが基本ですが、その背後には技術革新があります。
日本は、この3つにおいて、長期不況の中で大きく遅れてしまいました。

当面する身近な問題点を具体的に上げてみましょう。
① 非正規従業員が十分な教育訓練を受けず、高度技能・技術の保持者になっていない。
② 定年再雇用者が閑職などに配転され、熟練した得意な職務を続けていない。
③ 企業が国内投資より海外投資を優先してしまっている。
④ 国や企業が基礎研究を含む研究開発に十分な資本投下をしなくなっている。
などがあるのではないでしょうか。

30年にわたる長期円高不況で、コストダウンしか生き残る道はなかった事もあるでしょう。しかし円レート正常化後も同じことを続けた失敗は早急に改めるべきでしょう。

先ずは、企業の社会的責任として、非正規従業員の希望者を正規化して、それだけの賃金を支払える様な経営をすることから始めるべきではないでしょうか。

これからますます増える定年再雇用者(定年延長者)をいかに本格活用するか、高齢化時代の雇用、人事、賃金政策を産業界としてビジョンをつくり、長期勤続の中で育成した従業員の能力を最後まで使い切る人材の徹底活用策の策定は必須でしょう。

これからの国際環境の不安定化の中で、国内を中心にした企業発展を重視し、国内産業の高度化をベースに海外展開といった経営を基本とすべきでしょう。
そのためには。日本が戦争の破壊に巻き込まれないような国の在り方について、産業界の総力で政府の政策に関与すべきでしょう。

経済社会の発展の原動力はイノベーション、技術開発にあることを現場で実証するのは産業界です。この基本を政府に認識させ、産学協力も含め、世界の技術開発をリードする高度な産業国家として日本経済社会の将来を担う役割を果たすべき産業界、企業としての気概を持つべきではないでしょうか。

こうした日本経済の底上げのために、時間とコストをかけた高齢労働者の能力をフルに活用するシステムが一般化すれば、それは日本経済全体の生産性の向上に大きな役割を果たすと思われます。

端的な表現をすれば、日本の生産性向上のために貢献すべき人材を中国や韓国の生産性向上のために供給する余裕は今の日本にはないのです。
日本的経営は「人間中心」と言いながら、国内の人材を安易に無駄遣いしていたツケが、今の日本経済の生産性の低さに繋がっていることに気付くべきでしょう。

こうした人材の徹底活用、非正規従業員の教育訓練や定年再雇用の高齢労働者の積極活用が生産性向上、所得の上昇、将来不安の解消につながり、結果的に年金問題の解決を齎してくれるというのが、今後の日本産業社会の進む道ではないでしょうか。

高齢者の就業問題:5 企業に何が必要か

2022年12月20日 18時09分02秒 | 労働問題

前回は、高齢者の就業問題について政府がやるべきことは、基本的には1つだけで、日本経済の実力で支払うことが出来るベストの年金制度を早急に作る事だと書きました。

それが国民を納得させ得るものであれば、日本の高齢者は、必ずやそれに合わせた就業と退職の選択を誤りなくやっていくだろうと(これまでのデータから)考えているからです。

今回の問題は、そうした状況の中で、企業は何をすべきかという問題です。これからの日本の企業の役割は大変重要です。

今、日本の年金制度が行き詰まっている原因は少子高齢化と言われますが、それにもまして問題なのは、経済成長がない事、ゼロ金利が10年近くも続いていることがあります。ゼロ金利も経済成長がないからで、キチンと経済成長する日本になれば、金利の正常化し、年金もそれなりに安定するでしょう。

という事で、では経済成長しない原因はというと、大体は政府の政策が悪いと言いますが、実際に経済を動かすのは企業なのです。
政府の政策が多少下手でも企業が頑張っていれば、経済は成長するのです。

2013-14年に円レートが正常化した後も経済が殆ど成長しないという背景には、企業が経営政策の方向を誤ったという事も大変大きいと思います。

30年不況の原因の大幅円高になった時、日本企業は、雇用確保を優先し、賃下げと非正規労働者の増加で賃金水準を大幅に下げて乗り切った事は緊急避難としては適切だったでしょう。

ならば、円レートが、$1=80円→120円と円安になった時、雇用・賃金の復元、つまり非正規労働の正規化、賃金の引き上げは、経済全体の復元のために必須だったのです。
それがあって、初めて日本経済はGDPレベルの需給のバランスを回復し、順調な経済成長路線に乗ったでしょう。

しかし多くの日本企業は円安の差益、交易条件の改善を、国内経済の成長より海外展開に向け、GDPは海外で増え、日本経済の得たのは第一次資本収支の大幅黒字でした。
国内経済は、常に消費不振に悩まされ、国民は公的年金の不安を中心に老後不安に悩まされ平均消費性向は低下、消費不振に拍車をかけたのです。

こうして企業は、結果的に、国民生活重視、そのための経済成長重視政策ではなく、海外投資収益重視の利益中心経営の道を選んでしまったのです。

円レート正常化から10年近くなって、国際経済の急激な不安定に遭遇して初めて、日本経済そのものの安定が、企業にとって大切だった事に気づき、経営側から小声ながら、賃上げ容認の声が聞こえて来ましたが、非正規労働の正規化の声は聞こえません。

こう見てきますと、企業は、折角日銀が異次元金融緩和で、為替レートを正常化してくれたにも拘らず、その活用を投資収益確保に向け、日本経済の正常化活性化に向けての活用を怠ったという批判を免れないともいえましょう

日銀は、待てど暮らせど日本経済が正常化しないので、異次元金融緩和を続けざるを得なくなって今に至るという事でしょうか。

こうした日本経済、企業の経営行動が、ようやく見直され、企業の設備投資が国内回帰の記事などがマスコミに登場するのは、大変結構な変化で、今春闘の労使の話し合いに期待するところですが、問題はまだまだ残っています。

それは日本経済が落ちに落ちた生産性の国別ランキングを回復させるためには、生産性を大幅に上げていかなければならないという事です。
国内投資が活発化すれば、これは漸次回復するでしょうが、そのためには、国内の労働力一人一人の生産性を徹底した労働力の高度化によって、早急に引き上げていくことが必要だという側面です。そしてこれは、高齢化問題とも、直接関連する事です。

残念ながら、今、日本は労働力不足だと言いながら、恐ろしいほどの労働力の無駄遣いをしているのではないでしょうか。
次回はこの点を見ていきたいと思います。

高齢者の就業をどう考える:4 定年制と年金問題

2022年12月19日 15時46分43秒 | 経済
前々回まで、3回にわたって見て来ました日本の高齢者、そして、その人たちが支える勤労者世帯の最大の問題の1つは、低迷の続く日本経済の中での老後不安、具体的な問題でいえば、定年制と年金の問題でしょう。

 政府は定年の延長、定年後の雇用の努力義務といった形で就労継続を企業に要請しています。それは2025年を境に65歳から70歳になるのでしょう。企業は対応を考えなかればなりません。

もともと定年制というのは、年功賃金制の企業が戦後の平均寿命、賃金制度、退職金制度などと一緒に従業員の福祉のためにと、成長経済の中で急速に普及したようで、どちらかというと大企業の雇用パターンに合わせたものでした。

政府が、社会保障政策に目覚め、1960年、戦前からあった厚生年金に加えて国民年金が始まり、いわゆる「あめ玉」福祉年金から次第に年金制度の充実が始まり、それは国民の老後の福祉向上に大きな役割を期待させるようになりました。

しかし、少子高齢化が視野に入りいつかは問題になりそうという時代になりました。金利の高いうちは未だよかったのですが、バブルが崩壊し、低金利、更にはゼロ金利時代に入ると年金財政の逼迫は、今のように大問題となりました。

こうして、年金財政の逼迫と、上記の法定化した定年問題は、切り離せない問題に発展したわけです。
高齢化の中で年金財政の破綻を防ぐためには、年金の支給開始年齢を遅らせ、年金の支給額を抑えるしかないのです。

そうなれば、当然、定年年齢と年金支給開始年齢のつながりという問題が出て来ます。定年が55歳で、年金が60歳支給開始の時は、55から60歳になる迄は、企業年金を厚くするなどという事が大企業で流行った事もありましたが、そんなことは法律ではできません。

結局は定年を伸ばせという法律改正になります。1986年の法改正で60歳未満の定年制は禁止と決め、その後65歳(2025年から)にし、さらに70歳に伸ばさなければならなくなりました。そこには、年金支給開始は70歳からという意図が明確です。

法律で定年を決めるという余計なお世話をしたために年金財政との関係で、法律の改定を繰りかえさなければならないというおかしな結果になったのです。

本当のことを言えば、政府は年金をキチンとすれば、それでいいのでしょう。定年は民間企業がそれなりに考えて決めます。定年を決めない企業もありますし。政府はそれも認めているのです。

いまの日本の社会にとって、本当に大事なことは、政府が年金について、はっきりした将来展望を国民に示すことです。
統計が示しますように、やるべきことが解れば、国民は確りやっていきます。現実の統計の数字がその可能性を示しています。

平均寿命が戦後の60歳で国民皆年金もない時代から、国民皆年金で、国民が老後は年金生活と考え、平均寿命が80歳に延びた(しかもゼロ成長の)現在、年金支給開始年齢は70歳にしなければ年金設計はとても不可能という事は国民はすでに解っているでしょう。

政府は定年制などは民間に任せ、今の日本経済が出来る限りの合理的な年金設計を国民に早急に示すべきでしょう。

老後不安の「不安」というのは解らないから発生するものでしょう。先行きが見えてくれば、日本人は勤勉に、誤りなく確り、それに対応するでしょう。
これについては企業の的確な対応も必要です。これは次回触れたいと思います。

戦争をする国に舵を切るのか

2022年12月17日 14時22分34秒 | 政治
今朝の各紙は、昨日、政府が閣議決定をし発表した「安保関連3文書」を一斉に取り上げました。

見出しを見て瞬間感じたのは、戦前の日本の「戦争に進むとも、それが正しい道なのだ」と国民に思いこませようとした軍国日本の政府と同じ雰囲気でした。

当時まだ小学生だった我々は、その政府の方針が正しいものと信じました。
勢いに乗って戦争に突っ込み、310万の日本人が亡くなり、それまでの経済建設などは総て廃墟になった経験を通じて、得たものは「人類にとって大事なのは平和である」、「戦争は殺戮と破壊をもたらすもの」という実体験による認識でした。

ユネスコ憲章の前文には「戦争は人の心の中で始まるものであるから平和の砦は人の心の中に築かなければならない」と書いてあります。最も忌むべきは「戦争を起こす人の心」なのです。

今もウクライナで戦争があります。原因は「プーチンという人の心」でしょう、そして安易に「それについていけばいい」と考えている「人たちの心」でしょう。

今朝の新聞で上記「3文書」を見ました。そして「国家安全保障戦略」の「結語」を見て「ぞっ」としました。

そこには解りにくい言葉で、こんなことが書いてあります。
・日本は今、戦後最も厳しい安全保障環境の中に置かれている。
・世界は希望か困難と不信かの分岐点にあリ、選択は国際社会の行動による。
・国際社会の対立する分野では総合的国力で安全保障を確保する。
・国際協力すべき分野では国際協力する。

つまり、国際社会は民主主義と独裁専制主義が対立し、不安定で戦争が起きる可能性は大きいですから、日本は「総合的国力」で安全保障を確保するようにします。世界が協力するところでは協力しますという事でしょう。

平たく言えば、「戦争になるかもしれませんよ」と国民に恐怖心と被害者意識を植え付け、「共産圏の国々などは怖いですよ」、「だから『総合的国力』で国を守ることが必要です」と国民に申し渡しているのです。

『総合的国力』というのは多分日本だけでなくアメリカを含むのでしょう。しかし日本も相応の事をしなければというのは含意でしょう。
ですから、防衛費1.5倍、増税は当然で、国民は協力すべし、なのでしょう。

日本は、武力ではなく、外交によって平和国家としての責任を果たすという平和憲法の意識は、ここにはすでに「カケラ」もなく、積極的に戦争に参画することが義務といった認識に覆われた文書なのです。

誰が書いたか知りませんが、戦争の経験のある者にはこんなことが書けるはずはありません。戦争を知らない世代を恐れた田中角栄の言葉が、まさに現実になっているのです。

日本はいよいよ平和国家ではなくなるのだなという認識が世界に広まれば、世界の国や人の日本を見る目を大きく変えることになるでしょう。

日本は戦後積み上げた「戦争をしない国」という世界への印象を、一朝にして失い、改めて戦争をする国に「堕す」ことを自ら選択したようです。

日本国民はそれでいいのでしょうか。これは閣議で決めることではなく、日本人の総意で決めることではないでしょうか。

高齢者の就業をどう考えるか:3

2022年12月16日 12時26分26秒 | 労働問題

発表物があってとびとびになりましたが今日の日本における高齢者の就業問題を考える第3回です。

前回は日本の高齢者の就業率がこの20年で大きく上って来ている事を年代別のグラフで見ました。60歳代前半では50%から70%超へ、60歳代後半は34%から50%超へといった大きな変化です。これはまだまだ進むでしょう。

こうした変化に対して、多くの人は「少子高齢化で老後不安の深刻化のせいですね」といった理解ではないでしょうか。

勿論原因は日本人の平均寿命が延び、それに比例して健康寿命も延びている事です。しかしこれは、人間として自然体で見れば、「人生僅か50年」と言っていたのが「人生80年に延びた」という日本社会の健康長寿(昔の言葉では不老長寿)への努力の成果なのです。

このブログの視点は、こうして達成した日本社会、日本人の努力の成果を「老後不安」などという情けない言葉ではなく、誰もがより長く楽しめる、より豊かで快適な社会の実現という形で、達成の成果を謳歌しましょう、という点にあります。

そうすれば当然、これをいかにして実現するかを、国、国民全体で具体的に考えていきましょうという事になるはずです。

そこでヒントになったのが、働くという事についての日本人の伝統的な理解と、この所の日本人の長寿に対応する行動様式、高齢者の就労意欲の高さです。

既に日本人への与件となっている健康長寿の社会を「豊かで快適な長寿社会」にしていくためには、基本的に、「良く考え」、「良く働き」、「良く楽しむ」といった要素が大切です。

そして、「良く考え」、「良く働く」ことが「良く楽しむ」事を可能にするというのが人類社会共通の進歩発展の原動力であり、その中でも「良く働く」事が出来れば具体的に結果を出すことが出来るという事が、経験的に解っているのです。

という事で、日本人の高齢者の就業率が急速に高まっているという事実が、その可能性をすでに示していると考えてよいという結論が出て来るわけです。国や企業のせいどやたいどがかわれば、多分上手く成功できると思っています

という事で、この進歩のための3つの条件について現状を考えてみますと、プレイヤーは3人、政府、企業、国民です。さて、どんな状態でしょうか。

「良く考え」では、政府は年金財政の心配ばかり、アベノミクスでは「一億総活躍」と言ったが中身はないといった状態、企業は定年制や年金制度に縛られて、柔軟な考え方はまだ少数企業の状態、国民はそうした環境の中で老後の心配が大きく、考えるのは老後への貯蓄が中心といった状態です。

「良く働き」では、政府は大忙しですが最大の動機は票の獲得、国会は議員の不祥事で空転、企業は欧米のカネ中心に冒され人間中心は影が薄れ、人材の無駄遣いが多い状態、国民は、良い仕事をしたいが、それが企業の現状から不本意な非正規就労が多い。

「良く楽しむ」では政治家や官僚が楽しく仕事をしているようには思われません。政府の不条理で自死する官僚まで。企業も余り褒められません各種のハラスメント、Karoshi などという英単語が生まれる、国民の当面の敵はコロナ、老後不安、しかし楽しさ追求の潜在欲求は強い。

悪い面ばかり書いてしまいましたが、就業率上昇の数字が示しますように、国民は良い将来を目指して真面目に頑張っていることは明らかです。

この国民の望みを、政府、企業はどのように現実のものにするかが日本の課題でしょう。それを少子高齢化に対する後追いとして「困難を乗り越えて」というのではなく、「より豊かの健康長寿社会を目指して」という前向きな「希望に満ちた」活動にしてくことが問題解決の要諦でしょう。

そのためのエネルギーの源泉は国民の勤労意欲の高さ、「働く」ことは「端を楽にする」と考える伝統文化の中にあるようです。
それをいかにスムーズに国の政策や、企業の制度にして行くかは、話が戻りますが「良く考え」の中から出て来るのでしょう。

これからも折に触れてこの問題を具体的に取り上げていきたいと思っています。

経済混乱の中の「短観」を見る(2022年12月)

2022年12月15日 17時08分42秒 | 経営

高齢者の就業問題を中断して、昨日発表の日銀「全国企業短期経済観測」を取り上げます。

マスコミでは4期連続の景況悪化、非製造業は順調などと出ています。まさにその通りですが、決して全国企業の景況が悪化を続けているというものではないようです。

最初に出ている全体的な業況判断のDI(良い-悪い:%ポイントと)を見ますと、業種別に大企業、中堅企業、中小企業です。
先ず製造業から見ますと大企業が前9月調査の8から7に低下、中堅企業は0から1に上昇、中小企業は-4から-2に改善です。そんなに悪くはありません。

悪くなっている製造業大企業の中を見ますと、紙・パルプが-22(前回-14)、石油・石炭製品-33(前回7)、自動車-14(前回-15)などで、ロシアの材木輸出停止、原油・LNG価格の高騰+円安、半導体・部品の供給不足といった特殊要因の影響が感じられます。

中堅・中小企業は、こうした大企業の影響を陰に陽に受けている気配はありますが、特に悪化しているわけではありません。
中堅企業の石油・石炭製品は-10から5に大幅改善しています。

非製造業大企業を見ますと、前回の9月の14から19に改善その中身では、情報サービスの40、対事業所サービスの35、不動産、物品賃貸、卸売りの27などが目立ちます。宿泊飲食サービスは0ですがこれは前回の-28からの大幅改善です。

という事でコロナに対する規制の緩和が大きく影響しているようです。
結果的に、国際関係で環境悪化の製造業、コロナへの規制緩和で回復するサービス業という、それぞれ特殊要因による変化がマイナス効果、プラス効果を生んでいる様子が明瞭です。

所で企業の収益状況の項を見ます。
売上高経常利益率という解り易い指標が2021年度と2022年度(上期、下期)という形で調査されています。

製造業大企業は2021年度が10.48%で、2022年度計画が10.20%で、おおきな低下は見込まれておりません。中堅企業は6.21%から5.65%に低下の計画、中小企業は4.87から4.13にという事で、収益支払能力大幅低下の計画ではないようです。

一方非製造業は大企業が6.31から6.70に計画引き上げ、中堅企業は3.73から3.75に、中小企業は3.70から3.48に計画引き下げという事ですが、それぞれ安定的の範囲でしょう。利益率に大きな変動が見られるような状況ではないようです。

次に設備投資につて見てみます。
設備投資は全産業で2022年度は前年度に比し大幅増額を計画しています。全産業規模計で、対前年度の伸び率が、2021年度の-0.8から2022年度は15.1%です。
大企業では、製造業も非製造業も20%前後増加の計画で、先行きを睨んでいます。

特筆すべきは、設備投資の海外と国内の比率ですがが、対前年の増額が、製造業で海外20.9%、国内26.7%と、従来の海外重視が逆転している事です。

国際情勢や円レートの乱高下で、企業が国内投資を見直してきている事をうかがわせる数字ではないでしょうか。

高齢者の就業をどう考えるか:2

2022年12月14日 14時24分57秒 | 労働問題
前々回の続きです。
前々回は、総務省の「労働力調査」で、旧定年年齢の55歳以降の高齢就業者の「実数」を2002年―2021年2御年間5歳刻みでグラフにして見てきました。

特徴的だったのは団塊の世代の山が5年づつずれて、その高さが次第に低くなって団塊の世代退職による就業人口の減少に大きな役割を果たしている事と、も一つ、年とともに高齢就業者の数が各年代で漸増する傾向が重なって見えているという点でした。

つまり団塊の世代という就業者の山が高齢化する事による就業者の減少という動きと、高齢者の全般的な傾向として、高齢になっても引退せずに働き続ける人の比率が増えるという傾向が併存しているという様子が見られるという事です。

そこで今回は、旧定年年齢55歳以降の高齢者の就業率(労働力人口に占める就業者の割合)を「5歳刻みの年代別就業率」のグラフにしてみました。

  高齢者の就業率の推移 (単位:%)

              資料:総務省「労働力調査」

結果は上のようで、各年齢層とも一貫して顕著な上昇傾向を示しています。
とくに「60-64歳」の赤い線、「65-69歳」の緑の線の上昇が顕著です。

グラフの左端、2002年は、円高とバブル崩壊の重なった1990年代のダブルデフレがドン底に達し、さてこれから再起というスタートの時期です。

それからの20年間は、2002~2008年の「好況感なき上昇」と言われた時期、2008年リーマンショックによる更なる円高の日本経済の最悪期、2013-4年日銀の円安政策でアベノミクスの時期、更にその後のコロナ禍の時期という20年間です。

この間、非正規従業員の増加といった雇用の質の劣化のあったことは否めませんが、就業率(就業者/労働力人口)の上昇は著しいものがあります。

数字を見ますと
55-59歳の就業率は10ポイント上昇
60-64歳の就業率は20ポイント上昇
65-69歳の就業率は15ポイント上昇
70歳以上の就業率は5ポイントの上昇
大まかにみればこんな状況です。ところでこの原因をどう考えるべきでしょうか。

政府は定年延長、年金受給年齢の延伸をやりました。これも大きな影響を持つでしょう。
特に年金受給年齢の延伸は働く人にとっては絶大な影響を持ったでしょう。

しかしその背後には少子高齢化、年金財政の悪化という国民全体が考えなければならない問題が在っての事なのです。

しかし、それは同時に、日本人の世界トップクラスの平均寿命の伸び、それに並行する健康寿命の伸びという日本国民の人生の長さ、健康でそれを楽しむ時間の長期化という人間にとって、不老長寿に理想に近づくというプラスがあってこその事なのです。

そう考えれば、人間の最も基本的な欲求「不老長寿」が進展しているのに、悩んだり困ったりというのは馬鹿な話で、日本人は、この人間として望む変化に極めて自然に巧みな対応をしていると理解できるのではないでしょうか。

ならば、この現実を、日本社会としていかに活用していくかを、受け身でなく前向きに、「快適な長寿社会をいかに設計するか」という着眼点で考えるのが自然です。

さて、日本と日本人は、国として、企業として、個人として、これから長寿社会という喜ばしい与件をいかに快適な社会という現実に作り上げるかを考えなければならないようです。