tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日鉄のUSスティール買収:「祈!成功」だが

2024年09月03日 14時21分44秒 | 経営

日本製鉄がUSスティールを買収するというニュースを聞いて驚いたのはこの春ですが、多くの障害にもかかわらず、話はどんどん進んでいるようで、9月に結論は12月に伸びましたが日本製鉄の意志は固く、あくまで買収の成立を目指しているようです

この話を聞いてまず気になったのはUSスティールの労働組合USWが反対しているということでした。

しかしその後話が進んでくると、大統領選の期間でもあり、バイデン大統領も必ずしも賛成ではないようで、今日は、ハリス候補が反対を表明したというニュースが入ってきました。

アメリカでは、会社は株主のものですから、組合が反対しようが、誰が何と言おうが株主がOKならば、ということかもしれませんが、トランプさんは「そんな事はさせない」といっているようです。

日本製鉄にしてみれば、アメリカの株主の意向が頼りという所ですが、かつて、世界トップだった企業も今は世界鉄鋼業界では27位だそうで(日本製鉄4位)で、株主は日本製鉄に買ってもらって、少し株価が上がればと考えているのかもしれません。

もうだいぶ前から鉄鋼は斜陽産業と言われていますが、日本製鉄が新日鉄の時代に育てた中国の宝山鋼鉄が世界トップになったという経験もありますから、今後の世界展開で斜陽産業とは言わせないという気概もあるのかもしれません。

しかし、その宝山鉄鋼とは、体制の違いからでしょうか,縁を切ろうという状況のようですから、自由世界の鉄鋼産業のリーダーという立場を狙っているのでしょうか。いずれにしても世界的な視点での動きの一環としてのUSスティール買収のようです。

そうした目で日本製鉄の動きを見ますと、タイ、インドなど海外展開の積極化が見えているように思えます。

同時に、製鉄に必要な石炭にも確り手を打っているようですが、従来の高炉方式については環境問題の分野から、かなり厳しい目が向けられているようです。

この点については、いかにCO²を出さないかという新たな技術開発が要求されることになるのではないでしょうか。例えば、出したCO²は、すべてメタネーションに使うといったことが可能にあれば、素晴らしいななどと考えるところです。 

財務の面で見ますと買収金額は約2兆円ですが、日本製鉄のバランスシートでは、自己資金4.2兆円、有利子負債3.1兆円ですから、買収に2兆円、その後USWの対策費や他の追加費用の支出などもふくめれば、蓄積した自己資本の半分ほどを使っての買収ということです。

アメリカの企業は金食い虫のことが多く、東芝などは、ウェスティングハウスの買収で、下請け工事会社のコスト補填などで、自己資金を使い尽くし、撤退になってしまったようです。

日本は金持ちだということで、それを当てにされる面もあるようですので、要注意です。

まあそんなことは疾うにご承知での買収計画でしょうから、心配することはないかもしれませんが、誇り高い企業を買収するときには、USWという労働組合も含めて、その気位の高さにも十分気を使う必要があるように思うところです。

気になる事ばかり書きましたが、日本製鉄の壮大なプロジェクトが恙なく成功裏に進むことを祈るところです。


<月曜随想>結果かプロセスか?

2024年09月02日 14時37分34秒 | 文化社会

大谷翔平選手の活躍は凄いですね。昨年は投手と打者の2刀流、今、年は、投手役はお休みですが今度は打者と盗塁、やる事何でも記録を作ってしまいます。しかもいつもニコニコで楽しそうです。

天賦の運動神経と体力に、優れた人柄、羨ましいと思う人は多いかもしれませんが、あの記録を生み出している最大の原因は、大谷選手自身の努力だと解っている人も多いのではないでしょうか。

大谷選手のことはテレビや新聞でしか知りませんが、私もそう思っています。

ところで、分野は全く違いますが、経営学で良く出てくるマネジメントの手法に「目標による管理」と「結果による管理」というのがあります。

両者の関係から言えば、仕事を達成するのに、先ず「目標」を明確にし、目指す所を明らかにして「よしやろう」という気を起こさせるのでしょう。そのうえで出された「結果」によってその人間やグループの評価をするということになるわけです。

確かにこれは大事なことで、まず行く先がはっきりしないと人間は適切に動けないでしょう。

そしてその成果が出たら、それによって判断して、評価を決めるというのはそれなりの合理性があります。

しかし、経営学で「プロセスによる管理」というのは聞いたことがありませんでした。結果が出るまでのプロセスは、仕事をする本人たちにお任せということになっていたのでしょうか。

当然のことですが、仕事の出来具合は、そのプロセスでどんなことが起きているかで決まってくるのです。

「明日朝までに、これを纏めといてくれ」と命令して。明朝「これじゃ駄目だよ。やり直し」と言って、プロセスに無関心でいますと過労死につながる事さえあります。

やはりプロセスが大事だと気付いて、生まれたのが人間関係論で、どうすれば人間本気になって課題に取り組むかということで、人間の性格論や心理学に関係する分野に入っていったのが「リーダーシップ理論」や「動機付け理論」「交流分析」などの人間工学といわれる分野です。

こうした理論的発展は、ほとんどがアメリカの経営学の発展の中で生まれたもので

っすから、アメリカン・ドリームのアメリカでも、結果を出すにはプロセスが大事ということに気づいていたのです。しかし、その後の長期不況の中でアメリカも日本も「結果中心」に戻ってしまったような気がします。

話が飛んで、国の経営である政治の世界で見ても、安倍、菅、岸田政権の時代になって、目標のスローガンは次々出てきますが、ほとんど結果が出ません。プロセスの検討・研究、その重要性の認識に欠如があるようです

考えてみますと、やっぱり素晴らしい結果には、その前提となるだけの確りした「努力」のプロセスがあったと考えるのが本当でしょう。

嘗てスポーツでも「巨人の星」の様な根性モノ全盛の時代もありました。根性モノは今は余り流行らないようですが、大谷選手にも、子供のころからの長い努力の日々というプロセスがあったと考えるべきでしょう。

その努力のプロセスを、元気に真面目に楽しくやり遂げた結果が今の大谷選手なのではないかと思っています。