tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ゲンジ蛍幼虫孵化始まる

2016年06月30日 10時59分26秒 | 環境
ゲンジ蛍幼虫孵化始まる


  元気に動き回る幼虫たち。黒い大きいのはカワニナのむき身、ミズゴケの切れ端も混在

 丁度1か月ほど前、ゲンジ蛍の羽化が始まったことを書きました。
 産卵用のケージに入れて、下にミズゴケを敷き、ケージは2cmほどの深さに水を入れた発泡スチロールの箱に、ミズゴケの一部が水につくような形で入れ、雌がミズゴケに産卵、孵化が始まれば、幼虫は水の中に落ちられるようにしていました。

 ゲンジ蛍が卵を産んでから孵化までは約1か月というので、この所、毎日箱の底の水の中を覗いていましたが、昨日になって幼虫を発見しました。
 経験者の話では、水底が真っ黒に見えるほど幼虫が出るよということですが、未だパラパラです。

 体長は縮めば2㎜、伸びると3㎜ぐらいで、元気に発泡スチロールの底を這っています。
 早速プラスックのスポイトで、吸い上げ、飼育用の小さな発泡スチロールの箱に120匹程移して、餌のカワニナを食べるかどうか、様子を見ています。カワニナは殻を取ってむき身にして入れてありますが、未だ食い気はないようです。

 メスが5匹いましたので、1匹が500~1000個の卵を産むというので、幼虫の数は千匹単位になりそうで、これから大変かなと思っています。

 

EUとイギリス:問われるヨーロッパの知恵

2016年06月29日 12時13分08秒 | 国際関係
EUとイギリス:問われるヨーロッパの知恵
 イギリスの国民投票の結果はヨーロッパ社会に新しい問題を提起したようです。
 報道によれば、イギリスの内部では、国民投票の結果に反省の意見も多いようで、「まさかこんなことになるとは」と戸惑いの声も聞かれるようです。

 しかし国民の意思決定として最も基本的な手段である「国民投票」の結果です。それに整然と守らなければならないでしょう。
 ならば、国民投票をやり直せといった意見もあるようですが。これはイギリス国民が改めて意思決定する問題です。

 投票直前までの国際マーケットの動きを見ても、より多くの判断は「残留」だったのでしょう、マネーマーケットも安定の方向に動いていました。世界の政治、経済・金融関係者の多くも「残留」と読んでいたと思われます。

 「読んでいた」だけではなく、残留してほしいという気持ちが、地球市民の多数の意見だったように感じるところです。
 夫婦の間でも、何らかの「はずみ」で離婚、などという事もないわけではないでしょうが、そんな感じさえする今回の出来事です

 しかし結果は「離脱」と出てしまったのですから、これからどうするかはイギリスがどう行動し、EUが如何なる態度をとるかで、国際関係も国際経済の動きも決まってくることになります。

 現状ではイギリスは新政権の発足は9月になるので、それまで猶予を欲しいといっているようで、一方EUサイドは早急に手続きを取ってほしいといっているようです。

 EUにとっても初めてのことです。手続き完了には長い時間がかかると予想されています。予期しない問題が起きることもあるでしょう。
 しかし、ヨーロッパとして世界史の中で良き潮流を創ろうと発足し、成長発展してきたEUです。僅差で離脱となった英国も、そしてEU自身は勿論、これまでの基本的精神に則った賢明な対応が求められるのでしょう。

 繰り返しますが、戦後70余年、ヨーロッパの平和への希求を掲げ、平和を基軸に経済・社会の安定と発展を求めてきたヨーロッパが今回の予期せざる難関をいかに乗り越えていくか、その知恵が問われているというべきでしょう。

 日本としては、真摯に先行きを見守ることしかできないのかもしれませんが、もし何か役に立つようなことがあれば、建設的な解決のために協力を惜しまない姿勢であって欲しいと思うところです。

ポピュリズム、短期視点、思索の欠如

2016年06月27日 17時10分44秒 | 国際関係
ポピュリズム、短期視点、思索の欠如
 イギリスの国民投票の結果は、世界に大きな影響を与えています。
 多くのニュースは、為替の乱高下や、株の暴落など、経済的な影響を報じ、リーマンショック並みなどといった意見もありますが、そうした当面の動揺は、今日の東京市場の動きなどから見ても、早晩落ち着く所に落ち着いていくのではないでしょうか。

 世界の主要銀行のバランスシートに大穴を空けたリーマンショックとは問題の形の質も違いますし、影響が出るとすれば、今後長い期間かけて徐々に影響が出てくるといった性質のものでしょう。

 主要国が賢明な対応をすれば、マイナスの影響を最低限に抑えられると前回書きましたが、一夜明けて、いくらか冷静になったイギリス自体でも、これで良かったのかといった反省があるようです。

 現地にいるわけではないので、現場の雰囲気はわかりませんが、私共の感慨とすれば、政治の面では「マグナカルタ」、経済活動では「産業革命」、経済学では「国富論」、といった多くの面で世界に先駆け、7つの海を制覇して覇権国として君臨したイギリスです。
 今回の国民投票には、イギリス人の「思索」の結果が反映されると思っていました。しかし結果は予想外の混乱のようです。

 イギリスを買い被り過ぎているといわれればそれまでかもしれませんが、矢張り我々が学んだイギリス的なイギリスであって欲しかったと思うところです。

 しかし、論戦にも「理性」や「思索」よりも「感情」や「即物的」な表現が多く、歴史の流れの中での長期的、基本的な問題意識よりも、短期的なポピュリズムに毒されたようなものが多かったように感じられました。
 伯仲した賛否は国論を二分し、今後の融和が案じられます。

 政治は専門ではありませんが、経営・経済で見れば、この所の流れは明らかに短期的な視点中心になりつつあります。「時価総額最大」といった経営目標は、正に短期的視点、ポピュリズムの典型ですし、少しでも高い経済成長率達成のためなら「将来を犠牲にしても」といった近視眼的経済政策は、正に政治のポピュリズムと裏腹でしょう。

 アメリカもかつての戦後世界の長期安定を目指した頃とは大きく変わったようです。アメリカ大統領選の行方も解りませんが、世界の主要国が、経済だけでなく、政治においても短期的視点で、深い思索を欠くポピュリズム主流のようなことになると、これは世界の危機ではないかとすら思われるところです。
 さて、日本はどうなのでしょうか。

瑠璃二文字とオオシオカラ蜻蛉(雌)

2016年06月26日 09時39分09秒 | 環境
瑠璃二文字とオオシオカラ蜻蛉(雌)


るりふたもじ


オオシオカラトンボの雌

 明日、月曜日、世界の金融市場は、まず東京から開きますが、どんな展開になるでしょうか。マネーマーケットは実体経済への影響を何倍も大げさに表現するのでしょうが、冷静に考えてみれば、実体経済は、各国の賢明な対応によって、悪影響を最小限に食い止めることも可能なはずです。
 英国、EU、アメリカ、中国、ロシアそして日本の知恵とその発揮の方向が試されます。

 今日、つかの間の平穏を、庭先の自然で楽しみたいと思います。
 各種取り混ぜの球根を植えた中から、今年は、るりふたもじ(瑠璃二文字)が伸びて花を開きました。30~40cmの茎が何本か伸び、紫やピンクの小さくてきれいな花が咲きます。

 「ふたもじ」というのは、寡聞にして知りませんでしたが、平安時代の言葉で「にら」の事だそうです。ねぎは「け」と言い一文字、「にら」は 二文字とのこと。当然「るりふたもじ」はニラ、にんにくの仲間で、英語は Society garlic だそうです。

 その花の一部が青い実になるころ黄色くて割合大きな蜻蛉が来てとまっていました。蝶はいろいろな種類が来ますが、蜻蛉はあまり来ません。写真を撮ってネットで調べたら、オオシオカラトンボの雌でした。
 子供の頃よく捕まえたシオカラトンボはもう少し小さくて青みがかった灰色で、黄色いのはムギワラトンボと言っていましたが、こちらは少し大型で、鮮やかな黄色で大変綺麗です。

 蝶はどこでも育ちますが、トンボやホタルは水がないと育ちませんから、繁殖が制限されるのでしょうか。

 何にしても、都下の国分寺あたりでも、何となく生物多様性が確認されてくるようで、ほっとするような、この所の情景です。

統合か分裂か:地球市民

2016年06月24日 10時59分56秒 | 国際関係
統合か分裂か:地球市民
 イギリスではEU離脱か残留かの投票が進行中です。
 ヨーロッパ28か国を1つのグループにまとめるまでに「統合」の方向に動いてきた EUの中で、今、イタリア、オランダ、デンマークなどの国々で、EU離脱の動きが、国民の一部から出てきているようです。

 矢張り、地球市民全体を次第に統合の方向にもっていくという人類の動きは多くの困難を内包しているようです。

 イギリスのEU離脱賛否の論争では、移民流入による社会秩序への影響が直接のきっかけのようですが、それに加えて、EUの規制が細かすぎる、イギリスの自由や独自性が阻害されている、イギリスの独立を取り戻そうなど、移民流入という直接のきっかけが、次第に「統合」そのものに反対といった議論まで誘発しています。

 二度の大戦を経験し、ヨーロッパに戦争をなくそうという高い「志」で出発したEUです。もちろん、そのためには、加盟国それぞれが統合のための妥協をし、犠牲も払って、より良いヨーロッパを選ぶという努力が必要です。

 そうした努力の動きの中で、中東の内戦という思わざる事態が結果的に「分裂」の動きを生むというのは大変残念なことに思われます。
 
 新興国社会が成熟した安定社会になるまでには、多様な経験とプロセスが必要でしょう。時にそれが破壊的なものにまで行き過ぎる現実が地球市民の全体社会を混乱させているのです。

 先進成熟国社会も、これに適切に対応する術を持っていません。そうした内戦に、アメリカ、中国、ロシアといった「強い」国が動いても、基本的に国と国は対等です、解決は「力」に頼ることになりがちです。

 力でなく、対話や説得、地球市民の総意に基づく社会正義の立場で行動できるのは国連しかありません。
 主要国は自らの力に頼るのではなく、その力を国連という地球市民の代表組織の中でベクトルを合わせ、あるべき方向を模索するべきなのでしょう。

 そうした協力が実現すれば、国連安全保障理事会は立派に機能し、新興国の経済社会の安定にも寄与し、その成果として、今日のような巨大な難民の発生、ヨーロッパ社会の不安定の助長、EUの歴史的な努力にまで影響を及ぼすといった事態は、その発生を未然に防ぐことが出来るのではないかなどと考えてしまうところです。

現状の日本経済に似合う為替レート

2016年06月22日 12時51分10秒 | 経済
現状の日本経済に似合う為替レート
 いよいよ参議院選挙ですが、安倍政権が、争点にしたいといっている日本経済は、円高進行のせいで、なかなかうまくいきません。

 アベノミクスが功を奏したのは2回に亘る20幅の円安計40円の円安、1ドルが80円から120円になった時が絶頂で、その後は次第に円高の影に怯えるようになりました。
 
 日本の実体経済自体は今の円レートでも確り持ちこたえようと努力をすると思いますが、そう簡単ではないでしょう。
 一方、毎日の為替の動きに一喜一憂するのは株式市場で、此の所の株価は円レート次第の色合いを強めています。

 アメリカでは、実体経済重視のFRB議長のイエレンさんは、投機筋の思惑など気にせず、利上げには極めて慎重です。加えて、アメリカは、ななんとしてでもでもドル高にはしたくないというのが本当の気持ちでしょうから日本としては円安にするのは容易ではないでしょう。

 黒田日銀総裁も、まだまだ金融緩和手段はあるといっていましたが、この所は現状維持で黙しています。

 海外投資資本やマスコミは、かつての「有事のドル」という言い方から、「比較的安全な円」という表現で、中国経済が、ギリシャが、アメリカの利上げが、イギリスのEU離脱が、・・・と何かあるたびに円を買う状況です。

 リーマンショックの直前、「いざなぎ越え」の中で円は1ドル120円を付けていましたが、リーマンショックで80円を割り込むまでに円高になり。これでは日本経済壊滅と言われる中、黒田日銀のアメリカ式異次元金融緩和で再び120円を付けました。

 日本の金融界にもさらなる円安という待望論はあったようですが、このブログでは「 過ぎたるは猶 …」と書きました。
 対日旅行者の急増、爆買いの発生など、国際的にみて円は安いという見方が定着する中で、国際投機資本は、これから、どこまで円高に出来るかを試すかもしれません。

 もともと変動相場制というのは「制」というに値しない、「なるようになる」ということですから、自国通貨のレートは自国で守らなければなりません。
 そしてそれは「日本の実体経済」に相応しいものでなければなりません。(日本の生産性が上がれば、円はより円高に耐えられるようになるでしょう。)

 明言する、しないに関わらず、日本の政策当局は、現状の日本経済に相応しい円レートの認識を持つべきでしょうし、徹底してそれにコミットしていくことが大事でしょう。
 変動相場「制」だから「マーケットなりでいい」とはだれも考えないはずです。

 1ドル=120円は円安水準、110円がらみが適正水準などという意見もあるようです。さて皆さまはどんなお考えでしょうか。

ワーク・ライフ・バランス再考

2016年06月20日 13時42分11秒 | 労働
ワーク・ライフ・バランス再考
 今回は少しへそ曲がりなことを書きそうです。
 近年「ワーク・ライフ・バランス」言葉が広く使われるようになりました。カタカナですから勿論外来語で、いまだに適切な日本語訳はないようです。

 この言葉が出て来てから、いろいろな所でこのタイトルで書くことがあり。そのたびに、基調的には「自分の人生の時間配分だから、自分で決めることが最も大事でしょう。」と書いてきました。

 ところで今回に視点は少し違ったものです。大体ワーク・ライフ・バランスなどという言葉は日本人の考え方には馴染まない(本当は欧米でも)と思うからです。

 言葉というのは大変大事で、間違った言葉を使ったり、間違った解釈をしていると、考え方まで間違ってくることがあります。例えば、「情けは人の為ならず」は、「情けを掛けることは人を甘やかしてスポイルする」という意味だ、などと言った解釈も横行します。

 ワーク・ライフ・バランスにも同じような面があって、ワークとライフ相反する別物で、だから長時間労働は生活時間を圧迫し良くないと単純に理解し、法律で労働時間を短縮すればバランスが良くなる、などという理解が進みかねないのです。

 英語でもライフというのは「人生」でそれとは別に“working life”という言葉があって、職業人生とか労働生活とかいうことでしょう。
 日本で「労働と人生のバランス」といえば「人間の生涯の中での労働の意義」といった高邁な思想につながるでしょう。

 キリスト教社会では二分法(dichotomy)がよく用いられますから(「神と悪魔」で成り立つ世界)、workとlifeを対立概念として対置するのかもしれませんが、この欧米流の理解は日本には本来馴染まないのではないでしょうか。

 日本人には包括的思考(holistic approach)が一般的と言われますから、本来、職業人生とか労働時間は人生の中に包含されていて、「労働時間対生活時間」という表現はどう考えても不適切ということになります。

 さらに言えば、労働時間の中にも、所得のために自由時間を犠牲にするといった時間もありましょうし、また人生の中の最高の時間が仕事に生きがいを感じる時といった場合もあるでしょう。
 男性でも女性でも、振り返ってみれば、子育ての時間こそが人生の中で最も素晴らしい時間だった、という方も多いでしょう。

 現状では、家事労働は賃金を支払われないからworkではなくlifeだ、ということなのですが、他人の食事を作ったり、よその子の子育てをすればworkで、家事労働としてやればlifeであるといっても、本当に納得できるものではないでしょう。

 workとlifeを対立概念にして、「どうバランスをとるか」などと考えるからおかしなことになるので、本当の問題は、国民のそれぞれの人生が本人の選択をできるだけ生かして、それが社会的にも最も合理的になるような社会ステムを考えることなのでしょう。

 workとlifeの誤った定義が、世の中に無用な混乱を起こすようなことのないよう、安易に二分法を使うのではなく、日本らしい総合的アプローチで問題の本質的な解決にアプローチすることが求められているのではないかと思うところです。

 矢張り、言葉とその解釈を正確にすることが基本なのではないでしょうか。

消費性向低下と政治不信

2016年06月18日 11時35分02秒 | 経済
消費性向低下と政治不信
 もともと「アリ型」(勤倹貯蓄型)の日本人ですが、このところ利息は付かなくても個人国債や銀行預金、さらにはタンス預金(振り込め詐欺の事例などで「自宅にあった何百万円を・・」などとよく聞きます)などが増えているようです。
 
 こうしたこ国民の防衛型の生活態度は、将来不安に大きく影響されていることは皆さまご自身が実感しておられるところでもありましょう。
 マスコミが老後生活には何千万円が必要などというのも危機感をあおりますが、その背後にはやはり「国は面倒を見てくれないのでは」という心配があるのでしょう。
 
 残念ながら、政治不信は次第に強まっているように思います。消費税は増税したが、年金の手取りは減る一方、子育ての難関である保育所問題では待機児童は増えるばかりのようです。

 もともと消費増税は全額社会保障に充てるといっても、深刻な高齢化だから年金は悪化を少しでも防ぐのがやっと、とか、保育所を増やしても待機児童の数はもっと増えるからとか、説明はありますが、3パーセントの所得増税が何円の増収を齎しそれが社会保障の核政策に全額このように配分されました、その結果がこうですといった解り易い説明は聞いたことがありません。

 一方で今回の2パーセントの所得増税延期で、社会保障の原資がこれだけ足りなくなるといった説明は聞かれたりしています。
 場当たり的な消費増税延期で 財政のマイナスがどうなのか、「2020年にぎりぎり間に合う時点で、消費増税をしますから大丈夫」では誰も納得しません。

 かつて「 政府の信用」を書きましたが、現状、日本政府の国民の間にはなかなか信頼関係が出来ないようです。
 伊勢志摩サミットでの世界経済危機発言が国内の選挙用だったことが判明したり、この間まで最大の政治の争点だった憲法問題を参院選の争点にしないと言ったり、日本の国づくりの理念といった根本問題が置き去りにされるようなこのところの状況は論外ですが、これでは国民も戸惑うばかりです。

 多くの政治家が「信なくば立たず」と言われるのを聞いています。理屈は皆お解りなのでしょう。知っているということと、やっているということのギャップが大きいのでしょうか。

 企業の人事考課でも「知っている」ではだめで、そう「やっている」が評価の対象になる時代です。今の経済不振の根底に残念ながら「政治不信」があることが、場合によっては致命的なのかもしれません。

日本の家計の将来不安は不可避なのか?

2016年06月17日 11時51分15秒 | 経済
日本の家計の将来不安は不可避なのか?
 今日の日本経済の不振の原因として格差社会化と将来不安そして政治不信を挙げてきました。前回、格差社会化がいかに消費性向を低下させ、経済不振を齎しているかを見て来ました。

 格差社会化が世界のどこでも消費不振に直結していることは次第に明らかになっています。日本の場合、これにプラスして消費性向を下げ、金利もつかないのに貯蓄性向を上げている(消費性向+貯蓄性向=100%)のが「将来不安」のようです。

 将来不安の原因の最大のものは「高齢化」でしょう。将来益々働き手の割合が減り、支えられる人ばかりが増える、「大変だ」、という数字です。
 政府のいわゆる中位推計でも2010年1億2800万人が50年後の2060年には8674万人と2/3に減ることになっています。確かに鬼面人を驚かせます。

 ではこれで人口が平均年率何パーセントで減るのかといいますと、0.776%の減少です。ということは日本経済が年1パーセントの成長をすれば、一人当たりの豊かさは平均的には増えていきます。この所、合計特殊出生率も中位推計より上がってきましたから、状況はもう少し良くなりそうです。

 勿論これは平均の話ですから、これからも格差社会化が進めば、確実に将来不安を感じる人は増えるでしょう。この先は、政治不信の問題で、「これまで通りなら、とても駄目だな」と思えば、国民は将来不安に駆られるでしょうし、「政府は格差社会の是正を進めてくれる」との信頼があれば、国民は安心するでしょう。

 現状でも、高齢で元気な高齢者は増えています、多くの方々が、GDPに勘定されない社会貢献活動をしておられます。労働力不足も高齢者活用も政策次第です。
 現在日本の国民経済生産性はアメリカの約6割です。アメリカ並みの生産性にすれば労働力は6割で足りるという計算もあります。(公式統計ですが些か疑問?)

 ここでも数字を出していますが、人は数字を出されるとすぐ信用するという傾向があるようです。数字は説明の仕方、グラフの作り方などで、与える印象を操作できることは、統計学の初歩でも教えてくれます。

 本当の問題は、GDP(GNI)を国民に如何に配分するかで大きく違ってくるというところにあります。このブログでは、 資本主義が生き延びたのは社会保障制度(福祉国家の概念)を取り入れたからだ(もう1つは経営者革命)と指摘していきます。

 「その心は」といえば、「格差社会化にブレーキを掛けたから」ということでしょう。本当のことを言えば、「ブレーキ」ではなく、国民とともにGDP(GNI)の最適配分を考える政策こそが望まれているのでしょう。
 企業でも、経済でも、「 現在の配分が将来を決定する」のです。

 国民は貯蓄し政府は国債発行という配分の在り方、 本当は消費税増税が必要なのに、選挙の前はやめておく政策、累進税率を大幅に緩める一方で非正規雇用を増やす税制と雇用政策ミックス、金融政策を重視し、株価上昇がまず優先されるような政策などなど。

 総じて問題を先延ばしし、国民の将来不安をますます深刻にしかねない政策のように感じられます。
 
 失われた20余年の苦い経験で、なかなか将来不安を、払拭できないのが、今の国民の多くではないでしょうか。国民は、これならストンと腹に落ちるというような堅実で解り易いシナリオを待ち望んでいるように思います。

所得・資産と消費行動:格差社会化と消費支出

2016年06月16日 11時35分35秒 | 経済
所得・資産と消費行動:格差社会化と消費支出
 前回、1ドル80円から 120円への円安で、「日本人の働きの成果が正当な価格で評価されるようになった」と書きました。
 日本製の品質への信頼は高い、しかしあまり価格が高いと手が出ません。過度の円高が是正されて、外国から見て価格が適正になれば、欲しい人は沢山います。

 円安で海外から日本への旅行代金も安くなれば、観光客や爆買いも起こります。
 アベノミクス第1の矢、円安政策は大成功でした。輸出産業は売り上げを伸ばし、加えて為替差益を満喫することになりました。

 こうした思わざる利得はその時だけのもので、またもし円高になれば消えます。思慮深い日本の企業はこうした利得は分配してしまわずに、 当面様子を見ます。(現状円レートは104円がらみになり、アベノミクスによる円安効果の半分近くが消えようとしています。)

 企業が儲かればトリクルダウンでみんなが潤う、というのは、健全な成長が安定しているときには起こりますが、いつでも起こるというわけではありません。

 もう一つ問題がありました。それは「失われた20余年」の中で、企業はあらゆるコストダウンを強いられてきました、中でも、日本経済の最大のコストである人件費(GDPのほぼ7割)削減のために、企業は非正規雇用を大幅に増やして、平均賃金を下げてきました。
 政府のPRを必ずしも信用できない企業は、この是正( 非正規の正規化)にも慎重でした。

 この背後には、長期不況の中での労使関係の変化(対話の希薄化)もあったように思います。マスコミは春闘の終焉と書きました。そして、本格的な的な労使対話、「春闘」の復活も遅れています。

 さらに加えて、円安によって状況が一変したのが株式市況です。政府のGPICの資産の株式運用を増やす決定は象徴的です。
 しかし株価上昇の恩恵を受けるのは、どちらかというと富裕層です。
 さらにもう1つ、低金利があります。これは円安と裏腹です。庶民の貯蓄に利息が付きません。

 これらはすべて所得格差、資産格差の拡大の要因です。さらに加えれば、 累進課税は大幅に緩和されたままです。

 こうして発生した格差社会化は、富裕層のキャピタルゲインの拡大(蓄積の増加)と庶民層の生活防衛の姿勢を強めることになります。
 結果として現れるのは、 消費性向の低下です。これは繰り返し指摘していることです。

 つまり異次元金融緩和による円高で救われた日本経済の中で起こったことは、格差社会化の進展で、それが消費性向の低下をもたらしているのです。
 格差社会は、おカネのない人も生み出しますし、おカネがあっても使わないという行動も助長します。特に日本人の堅実(先憂後楽:キリギリス型でないアリ型の思考)な行動にも注目すべきです。

 すでに ピケティが指摘していますように、資本主義社会は放置すれば格差社会化が進むようで、特に今日のような、金融政策依存、マネー資本主義全盛の時代には、この傾向は一層顕著なようです。

 アベノミクスは、まさに、この陥穽に嵌ってしまったのでしょう。この問題はさらに、「将来不安」、「政府不信」を伴って、深刻化そうとしているように見えます。

「格差拡大」「将来不安」「政治不信」

2016年06月15日 10時09分37秒 | 経済
「格差拡大」「将来不安」「政治不信」
 先ずは都政のトラブルが一件落着の方向になり、良かったですね。

 ところで、前回、今の日本経済の不振の原因は「格差拡大」「将来不安」「政治不信」などで、これは社会学的なものだから、金融政策で直ることはないと書きました。
 そのあたりを少しきちんと考えてみたいと思います。

 先ず、日本経済は本質的に良くない状態なのかといえば、どうもそうではないようです。これだけ真面目に,しかも十分に賢く国民が働いている国の経済が、本質的に悪いなどということはあり得ません。

 1ドル80円という過度な円高の中でさえ、「いざなぎ越え」と言われた経済回復を記録した日本経済です。リーマンショックでさらなる打撃を受けても、立ち直りの早かったことは明らかです。

 そしてその後の、(アメリカに倣った)異次元金融緩和で、正常な為替レート($1=¥120)を取り戻してからは、為替差益も含めて企業経営は大幅な増収増益を記録しました。
 安倍さんは、恐らくこのペースで経済は急回復し、日本中がアベノミクス万歳というと思ったのでしょう。

 しかし現実はそう運びませんでした。その最大の理由は「消費不振」だと誰もが気が付くようになりました。
 安倍政権は、消費を増やそうと「賃上げ」を奨励しました。しかし労使ともに『笛吹けど踊らず』です。

 この辺からアベノミクスはおかしくなります。日銀の政策変更で為替レートが劇的に円安になったように、財政出動、構造改悪というスローガンを掲げれば、どんどん良くなるはずがそうならないのです。

 些か脱線しますが、NHKの世論調査(2016/6)でも、今も「安倍政権の経済政策を評価する」が49パーセントで「評価しない」の45パーセントを上回っています。私が回答するにしても、やはり「効果あり」の方だと思います。

 問題は「効果あり」は、円安実現による経済好転がほとんどで、あとは見るべきものはないけれども、しかし円安で、明らかに日本経済は息を吹き返した(日本人の働きの成果が正当な価格で評価されるようになった)ことは評価すべきだということでしょう。
 (余計なことを付け加えれば、その後の失敗で、円高に戻りつつあり、今後さらに円高が進めば「元の木阿弥」になりかねないという心配があります。)

 日本経済が当面する本当の問題は「では、これからどうするか」そのための政策のカギが、消費の拡大なのです。その消費拡大のカギが「格差社会」「将来不安」「政治不信」の払拭にあるというのが現状の課題なのです。
 この3つが、どのように消費拡大を妨げているのでしょうか。皆様も実感として、疾うにお解りのことと思いますが、次回以降、少し整理してみましょう。

「流動性の罠」の逆襲

2016年06月13日 11時16分20秒 | 経済
「流動性の罠」の逆襲
 5月のはじめ「鳥の巣箱、スズメの逆襲」を書きましたが、スズメはその後、隣家の樋に引っ越し、巣箱は「始終空」となり、雛誕生は残念ながら不発でした。
 隣家では「ゴミや雛が落ちて来て困るんですよ」と業者が巣を撤去していました。

 ところで問題はスズメならぬ「流動性の罠」の日本経済への逆襲です。
 日銀は2月16日、マイナス金利を導入しました。2月19日から6回のシリーズで日本経済初体験のマイナス金利 について分析してみました。
 結局のところ、私の結論は「これはまともな経済政策とは言えない」というものでした。

 二回の異次元金融緩和で ドル・円レートを80円から120円に戻し、デフレ脱却を果たした日本経済を、さらに無理に押し上げようとして、新たな金融政策「マイナス金利」に踏み込んだのですが、120円以上の円安は国際世論も認めないようで、国際投機資本に先読みされて、逆に円高方向に動き、今の106円がらみになってしまいました。

 日本経済の動向はといえば、四半期GNPは、対前年同期比で 今年1-3月に入って失速気味、選挙に向かって安倍内閣は、確約した消費増税を「新しい判断」という造語で延期せざるを得なくなりました。

 はっきり言えば、日本経済の不振は「格差拡大」「将来不安」「政治不信」といった社会学的なもので、こうしたものが、金融政策で改善することはないでしょう。
 市中の余剰マネーは、健全な経済活動には向かわず、向かうとすればギャンブル経済です。

 しかし我々庶民は土地バブルの崩壊を経験し、さらにリーマンショックで株や投信は結局損するものと信じさせられています。使い道のないマネーは国債に向かっていたのですが、マイナス金利で、「国債よ、おまえもか!」になりそうです。

 かつて書きましたように、預けて預かり料(マイナス金利)を取られるのは、預け先に面倒をおかけするからです。
 マイナス金利というのは「おカネを預かっても活用できない」つまり「 お金は役に立たないもの」ということを日銀が公式に認めたようなものでしょう。

 役に立たないものをいかに増やしてみても(金融緩和してみても)経済活動が動くはずはありません。これは金融政策の理論的否定です。

 結果は、「流動性をいくら増やして経済に効果はない」という「流動性の罠」の逆襲に、日本の金融政策は立往生ということになってしまったようです。
 これをまともな状態に戻すのは容易でないかもしれません。心配しています。

赤米の田植え

2016年06月11日 13時42分20秒 | 環境
赤米の田植え

  

 ひと月余り前、知人から話がありまして、国分寺に由緒正しい古代米(赤米)があり、それを多くの人に栽培しいてもらい、市内に広めたいと思っているので、ご協力を、ということでした。

 早速種籾を50粒ほど頂いてきて、蛍の幼虫を育てる発泡スチロールの箱に入れ、浅く水を張っておきました。
 2-3日で根が出て、1週間もすると葉も伸びてきました。2週間ぐらいして、葉が伸びて来たので土を入れて苗床風にして育てたところ、立派な苗に育ちました。

 そこで昨日の田植えになったわけです。
 最初は発泡スチロールの大きめの箱を田圃にしようと思ってたのですが、どうも深さが足りないようなので、結局漬物桶にしました。

 終戦直後、現在の笛吹市に疎開し、3畝ほどの畑でジャガイモやサツマイモ、小麦などを育てて、食糧難の時代を食いつないだことがありましたが、田圃はなかったので、コメ作りは初めてです。

 昔の覚え、見よう見まねで桶に土を入れ、水を入れて、田起こし、代掻きの真似をし、苗は良く根を洗い、3-5本まとめて時計回りに6株植えたのが左の写真です。苗はへなへなでしたが、明日になれば元気になるだろうと思ていました。

 今朝起きてみると、苗は上に向かって確り伸びていました。右の写真です。風が強かったので、残念ながら、あまり違いが分かりません。

 さて、首尾よく赤米が何合か穫れるでしょうか。

「リーダー」と「諺」と「ロールモデル」

2016年06月10日 10時55分17秒 | 社会
「リーダー」と「諺」と「ロールモデル」
 今回もあまり書きたくないことを書いています。ここでのリーダーは勿論 Lのリーダーです。

 リーダーは フォロワーがその人柄や言葉や行動に感銘を受け、ついていこうという気になる人でなければなりません。
 そこで、フォロワーの立場からの判断基準として2つのものを挙げたいと思います。表題の「諺」と「ロールモデル」です。

 かつて諺は大事だと書きました。人類何千年の知恵が詰まっているからです。今回の東京都知事の問題に関わりそうな諺の例を挙げれば、

 ・瓜田に靴を納(い)れず。李下に冠を正さず。
 ・分を識り、足るを知る、己に克って礼に復(かえ)る。
 ・倉廩満ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知る。
などでしょう。

 フランスで勉強された都知事は「ノブレス・オブリージュ」という言葉(諺)も良くご存じだと思います。

 今、東京都民は、意識するしないに関わらず、こうした基準で今回の問題の推移を判断しているのではないでしょうか。

もう1つの判断ですが、「ロールモデル」という言葉があります。組織行動学や人材開発の分野でよく使われます。ロールは役割、モデルはその形・模範(考え方、言葉、行動など)です。

 組織の中で行動する人は意識、無意識に自分が模範にしたいような人を見つけ、その人のように行動しようと考えるものだというのです。

 「あの人の髪型がいい」、「あの人の着こなしを真似したい」、「あの人の説明は解り易い」、「あの人のようにカッコよく活動したい」、「将来はあの人のようになりたい」・・・・・。

 組織の中で、人間はこうして成長のプロセスを進んでいくのだそうです。言われてみれば「そうかな」ですが、場合によっては「あの人のようにはなりたくない」という反面教師もいるようです。

  リーダーは、フォロワーにとって「魅力」がなければ誰もついて来ないでしょう。誰もついて来ない組織は、組織としての機能は何分の1かに落ちるでしょう。
 
 現に、都政運営の重要課題を論議すべき都議会が、都知事本人の資質などの問題で何日もの時間を費やすような事態が起きていることが、都議会の生産性を大幅に低下させていることは否定できません。生産性低下は必然的にコスト高を齎します。

 都民としては、「早く」何とかなってほしいと願うばかりです。

2016年1~3月GDP第二次速報

2016年06月08日 11時46分44秒 | 経済
2016年1~3月GDP第二次速報
 今日、内閣府から標記の数字が発表になりました。第一次速報の後に発表された統計資料などを取り入れてより現実に近い数字ということで、最終報(確報)につながるものですが、多少改善の様子は見られるものの基本的な動きは残念ながら 5月18日に見たものとあまり変わりません。
 
 マスコミ報道などでは対前期比の数字が中心で、
・対前期の名目成長率は、0.5%から0.6%なり、年率換算では、2.0%から2.4%になった。
・対前期の実質成長率は、0.4%から0.5%になり、年率換算では、1.7%から1.9%になった、
ということで、何か日本経済は順調な成長といった印象を与えるものが多いようです。

 新しい数字が出て、実体が第一次の推計より少し良いようだ、というのは結構なことですが、やはり対前期の変化で年率2%程度の成長といっても、本当の経済動向のトレンドは解りません。

 前回も見て来ました対前年同期のGDP実質成長率を見ますと
第一次速報では2016年4-6月:0.7%
           7-9月:1.8%
           10-12月:0.7%
       2016年1-3月:-0.0%
と今年1-3月は急ブレーキになっていました。

 第二次速報で、内訳項目を含めた第一次からの変化を見ますと主なものは    
・GDP 成長率:マイナス0.0% → プラス0.1%
・家計最終消費支出:マイナス0.7% → マイナス0.5%
・民間住宅:プラス2.0% → プラス2.1%
・民間企業設備:マイナス0.9% → プラス0.4%
・政府支出:プラス0.9% → プラス0.6%
と、ウエイトの圧倒的に大きい家計消費が少し(0.2ポイント)良くなったのと企業の設備投資がマイナスからプラスになったので、政府支出は少し減ったけれどGDP成長率はかすかに良くなって、マイナス成長ではなくなったということのようです。

 とはいえ、過去3四半期、順調に伸びてきたGDPが今年1—3月に来て急ブレーキということには変わりありません。

 対前期比というごく短期の動きではなく1年前と比べてどう動いているかというトレンドをじっくり見て、経済動向の判断が必要なように思います。