tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「日本らしさ」を考えよう

2013年04月29日 16時23分54秒 | 社会
「日本らしさ」を考えよう
 アベノミクスで、行き過ぎた円高が急速に改善されたことは、日本にとても世界にとっても大変良かったと思います。これで日本経済の健康が回復すれば、改めて日本が、いろいろな面で世界に貢献できる可能性が大きくなるからです。

 そうした形で経済面の改善が進む一方で、中国、韓国との関係が主ですが、最近の日本の国際関係面で、徒にギクシャクが増えるような状況が見られることは大変残念です。
 「かつてアジア侵略に手を染めた日本が、その本性を改めて示し始めた」などという疑念や誤解を持たれないためにも、日本は「本来の日本らしさ」を取り戻さなければならないようにい思います。

 「本来の日本らしさ」と書きましたが、私自身日本人の原点と言われる縄文時代に生きていたわけではありませんから、多くの先哲の研究、種々の伝統文化、自分なりの感覚、日本の自然、人間関係、などなどから、まさに自分なりに考え、想い、納得する「日本らしさ」でしかありません。
 しかしその時代に生きていても、無意識でやっていたという面もあるでしょから、よく言われる「後世の歴史家が判断してくれる」方が、よく整理されているということもありうるかもしれません。

 そんな目で見ると、先ず、日本人は本来「争いが好きではなかった」と思われます。日本列島は地球上で最も多様なDNAが共存する地域 のようですが、人間だけではなく、自然との共存という意味でも、それは、国土の7割の森林面積の維持という面で見られるような気がします。山と海は友達(兄弟)、山(森林)が豊かになれば海(海産物)も豊かになるという理解は日本の縄文以来の伝統文化(知恵)です。

 また、縄文時代は戦争がなかったというのが考古学の研究者の意見の主流です。奴隷制もなかったと言われています。上のような多様性共存の状況証拠もそれを支持しているように思われます。
 その一方で、怨霊、祟りは広く信じられていたようです(梅原猛)。今でいえば、偶然に起こる自然現象を、恨みを持って亡くなった人の祟りと考えるのです。

 私なりに理解すれば、これは日本人が、伝統的に、「自分は何か他人に対して反省すべきことをしたのではないか」という謙虚な気持ちを強く持っていたことの表れだということではないでしょうか。
 以前、「加害者と被害者 」で書かせて頂きましたが、日本人には本来「加害者になりたくない」という気持ちが強かったような気がするのです。

 誰しも自分は大事ですが、知人、友人も、赤の他人も、袖すり合うも他生の縁で、自分と同じ人間であり、同じように生きている、人間だけではない、他の動物も植物も、生命を持つものとしては変わりがないという考え方です。だから、人間だけでなく、動物でも植物でも、更に無生物の針や筆に対してさえ『供養』をするのが日本人です

 こんな伝統から日本人の基本哲学(思想)である「和」が来ているように思われます。(以下次回)


雇用削減・教育訓練費削減の恐ろしさ

2013年04月25日 11時11分15秒 | 経済
雇用削減・教育訓練費削減の恐ろしさ
 かつて「5Sの起源」で書かせて頂きましたが、日本では「整理・整頓」「清掃・清潔」などは、家庭で母親が、そして小学校低学年で先生がしっかり躾けました。
 このしきたりが、世界が驚く日本人の整然とした行動の原点だったのでしょう。

 戦後、家庭や学校での躾教育の手抜きが言われ、その分企業での導入教育に手がかかると言われた時期がありました。今考えればその頃は未だ良かったのです。
 そして「失われた10年」に至り、企業は雇用削減に腐心、訓練不十分の非正規雇用の増加、正社員の教育訓練費も大幅削減、そして日本社会の劣化現象 となりました。
 
 新聞の三面記事にいつも見られる「犯人は無職・住所不定・・・・」、企業の現場で言われる「現場力の低下」、「職場のメンタル・ヘルス問題の増加」などなど。すべて自国民(日本人労働力)の活用、投資に手を抜いた結果です。

 放射能汚染水の水漏れやトンネル作業現場での手抜き点検などが象徴的に示す作業現場の現場力の弱体化、教育訓練不足、日本社会は長いデフレがもたらした人間の技能・技術の劣化、そして心・精神の劣化、ひいては社会そのものの劣化に対し、早期に、より真剣な対応を迫られているのではないでしょうか。
 私がまだ若かった頃、同じ研修に参加した電力会社の社員が「うちなんか研修ばかりで、研修の合間に仕事をやってるようなもんです」と言っていたのを思い出します

 もちろん大多数の日本人は今でもきちんとしています。しかし、「2・8の法則」(注)と言われるように、手や気を抜けば、予想外に事故や事件は多発します。

 日本社会の健全化のためにも、円高を見越して海外移転を進めてきた企業は、円高が止まれば、改めて国内回帰の可能性を考えてほしいと思います。
 勿論、必須条件として、まず政府・日銀は、マネー資本主義横行の中で、今後は、何としてでも過度な円高を起こさないことに全力を尽くさなければなりません。
 そして企業は、国内の人的資源の最大限の活用を考えるべきです。

 本来、日本の労働力の質、労使関係の安定性は世界に冠たるものです。多くの欧米諸国が経常赤字やインフレをコントロールできないのは、基本的にこの問題です。
 アジア諸国にしても、今は低賃金でも、生産性向上を越えて年々賃金水準は上がり、さらに賃金の安い国に工場移転といった動きは常態になりつつあります。

 本来、日本企業の安住の地は、先ず日本でなければなりません。青い鳥は足元にいるのです。
 与えられた過度の円高を安易に容認し、結果的に自国のコスト水準の決定を他国(国際投機資本)に任せ、コスト高を理由に日本国内の人的資源の活用を怠った「失われた20年」という苦い経験を、日本政府も日銀も、そして多くの日本企業も、今回の円安実現を機に十分反省し、今後の日本経済の再生、発展に生かすべきでしょう。
  
   (注)「2・8の法則」:2割の人が、8割の事故を起こすなど


見かけは危うく、芯の強い日本経済へ

2013年04月21日 21時20分29秒 | 経済
見かけは危うく、芯の強い日本経済へ
 アベノミクスの当面の効果が大きかっただけに、海外からは、表立って文句はなくても、「日本はうまいことをやった」という目で見られがちのようです。
 しかし、もともと日本は自前で「経済成長のできる体質」を維持して来ているのに、過度な円高で邪魔されていたわけで、外国から文句を言われる筋合いはないのです。

 借金で資金繰りをつけたり、外国からの投資のお蔭で成長してきた国とは、基本的な経済の枠組みが違うという強みがあるのです。本当は日本政府や日銀が、その違いを、控えめでも淡々と解りやすくG20などで説明するべきなのでしょう。

 IMFのラガルド女史なども、その違いが解っていないので、ヨーロッパと日本を 一括りにしたりするのでしょう。
 そういった意味でも、日本にとって、今後必要なことは、「経済成長に必要な形 」をきちんと維持しながら、国際投機資本の「困った時の円頼み (円買い→円高)」を回避するという「かなり狭い道」を踏み外さずに歩いていくことです。
 
 具体的に言えば、こんなことではないでしょうか。
 日本経済が健全だと思えば、国際投機資本は迷った時は円を買い、「何かあれば円高」、そのたびに日本経済は円高・デフレ・不況に苦しむという従来型に逆戻りの可能性大です。
 それを避けるためには、日本経済の赤字化も近いとか、円もそろそろ信用できないといった雰囲気を漂わせることで円高を避け、しかしながら、中・長期的な健全性は決して損なわず、着実に日本経済の再生を果たすことが必要なのです。

 現状を見ると、幸い(?)、化石燃料の輸入急増で貿易収支は赤字続き、安倍政権の成長志向で財政赤字の累積は増加の一途と国際投機資本の円売りを誘うような状況もあります。
 その辺りも巧みに利用しつつ、しかも、一部の投機資本が手ぐすね引いて狙っているような「円暴落 」のシナリオに乗ぜられるような過ちは絶対しない、といった巧妙な政策を進めなければならないのです。

 その為には何が必要でしょうか。残念な事ですが、企業に安易に賃上げを勧めるような政府にそれが解っているとは思えません。では何をすればいいのでしょうか。
 最重要な選択肢を端的に示せば、いま日本に必要なのは投資です、円高で日本経済に生じた余裕は「賃上げ→インフレ」で浪費するのではなく、徹底して投資に使うべきです。

 投資と言っても単なる拡張投資ではありません、「質向上」への投資です。投資分野はいくらでもあります。先ずは日本の生命線「研究開発」「技術開発」でしょう、同時に国民の安全のための災害防止、就中、老朽インフラの補修・更新投資、環境改善投資などなどです。
 使えるカネは、貯め込まずどんどん使いましょう

 そして最も重要なのは、これらすべてを支える「人間への投資」です。当然、雇用機会の提供が前提です。日本の社会教育・産業訓練は、企業が支えているからです。
 米百俵の例えではありませんが、円高による国内コスト高で手を抜いてきた国内雇用、から教育訓練費(人材開発投資)まで、失われた20年で手抜きを重ねてきた「国内の雇用と人間への投資」こそがこれからの日本の復活を支えるのです。


早めですが、2013年「春闘総括」

2013年04月18日 10時27分05秒 | 労働
早めですが、2013年「春闘総括」
 昨年12月、労使の春闘方針がまとまった頃は、日本経済がデフレから脱出するなどといった気配は全くなかったように思います。
 ところが年末ぎりぎりに至って、日本経済の雰囲気は変わり始めました。安倍政権の発言で円高が反転し、円安株高の兆候が出てきました。
 この現象は、黒田日銀総裁の誕生で加速され、今に至っています。

 今年の春闘は、この急速に変化する日本経済の為替環境が背景でした。株高に気を良くした総理、副総理が「賃上げをしませんか」などと春闘に嘴を入れるような状況すらありました。まさに異常な状態です。

 しかし、浮かれる政府に対して、労使は冷静でした。
 円安が一過性に終わらないかと危惧する経営者サイドが慎重なのは、ある意味では当然かもしれませんが、マスコミや「識者」の眼からは、少しでも余計賃上げを取りたいと思っているはずの労働組合(連合)が、極めて冷静に、日本経済の状態を賢察していたのは驚嘆に値します。

 表面上は「賃金決定は労使のお任せください」ということで応えていましたが、本心はまさに「余計なお世話」「素人は黙っていてほしい」と言いう気持ではなかったのでしょうか。
 冷静に考えれば、まさにその通り、政府もそれ以上のことは言いませんでしたから、事の本質は理解したのだろうと思います。

 結果的に賃上げが昨年を何円上回ったといった論評は、6月ごろに集計結果が発表され、労使や評論家筋から出るでしょうが、それは別として、大きく見れば、今年の労使の対応は、定昇の完全実施、ベアはあくまで慎重に、ボーナスは出来るだけ労働側の要求に応えようというものでした。

 円安が進行、日経平均が高値を更新し、為替差益の拡大予想が進む中で、労働側は、信じられないほど冷静だったと思います。

 思い出すのは、1950年春闘です。第一次オイルショックによる前年の33パーセントの大幅賃上げを受けて20パーセントを超えるインフレが進行する中で、経営側は、インフレが日本経済を破綻させるのを避けようと「50年の賃上げは15パーセント以下、翌年以降は一桁」というガイドポストを提示しました。

 それに対して、労働側はまさに賢明に応え、賃上げは50年13パーセント台51年は8パーセント台で決着し、日本経済は健全さを取り戻し、世界中から「日本の奇跡 」と驚嘆され、結果的に、スタグフレーションに呻吟し続ける欧米主要国をしり目に、ジャパンアズナンバーワンの基礎を築いたという経験です。

 今年の春闘で、日本の労働組合は、円安による日本経済の余裕は、人材育成、雇用改善を含む日本経済の立て直しのための前向きの投資に使うべきで、その結果日本経済が成長を取り戻したとき、本当の春闘が始まるという「労使関係と一国経済の本質」を、確りと理解していたように思われます。

 日本の経営者も政府も、優れた労働組合を持ったことに感謝すべきでしょう。


むささびたけ(ムササビ茸)

2013年04月14日 11時20分41秒 | 環境


むささびたけ(ムササビ茸)
 家内が「きのこ生えてきたの見ました?」という。「どこに」と聞くと「皇帝ダリアの根っこのあたり」とのこと。私がキノコ「大好き人間」と知ってのことです。
 さっそく庭に出てみると昨年暮れに枯れた皇帝ダリアの株のあたりに直径3~5センチぐらいの茶色の笠がいくつか見えます。

 狭い我が家の庭でも、東南の隅の大紫やのうぜんかづらの下は藪になってしまっています。草取りをするのも面倒だし、いろんなものが生えてきて面白いということもあります。
 何年か前からそこに家内が皇帝ダリアを植え、秋の終わりには3メートルぐらいないなって、大きな花を沢山咲かせます。霜が降るとバッサリ倒れて株が残ります。

 その株の周りに春4月というのに、茸が沢山生えてきたのです。もう凋んだのもありますが、十数本ぐらいは生えたのでしょうか。
 早速1本とってきて「菌類」という図鑑で調べてみました。「ムササビタケ」でした。

 ヒトヨタケ科、分布は日本、ヨーロッパ、北アメリカ、夏から冬、広葉樹の朽木あたりに群生、「食用」とありました。この科には毒茸もあります。

 小学生のころ、父とよく茸狩りに行きました。甲府市近辺の山に出る茸を覚え、夏から秋、近所や小学校の仲間と愛宕山に行きました。一緒の仲間に、「それ食べられる」「それはダメ」などと教えて、得意になっていました。
 
 戦災で現在の笛吹市に疎開し、夏休みには毎日のように金川原のくぬぎ林で茸を探しました。「じこうぼう」という立派な茸が生える河原でした。
 たくさん採って来ると、食糧難の時代です、母が「良く採れたね」と喜んで、おつけの身や煮付け、混ぜご飯などにしてくれました。
 今は、カブトムシやクワガタの聖地として有名だそうですが、当時はそんな虫たちはゾロゾロいても見向きもしませんでした。

 昭和30年代の終わり、都下国分寺に移り住んだ後でも、近所の丸山に雑木林が残っており、そこ「ナラタケモドキ」があるのに気づき子供と採っていると、やはり子供連れの方が来られて、「あれ、今年は先を越されましたか」などと言われこともありました。

 庭の「ムササビタケ」を味噌汁に入れて食べようと家内に言いましたら。「やめてよ。毒かもしれないわよ。」と一言で却下でした。
 



消費者に求められる意識と行動

2013年04月12日 11時20分52秒 | 経済
消費者に求められる意識と行動
 振り返ってみれば、日銀の政策変更で円安が実現してから、まだ漸く1週間なのに、今はもう、誰も日本経済が円高デフレに押し潰されるだろうと心配している人はいないのではないでしょうか。$1=¥100は全く新しい世界を拓きました。
 まさに円高デフレに呻吟した「失われた20年」は一体何だったのかという感じです。

 ただ、忘れないで頂きたいのは、「過度な円高を強いられることは、国民をこれだけ苦しめる という事実です。言い換えれば為替レートの恐ろしさです。

 ということで、前回は企業行動について、そして、今回は消費者はどう考え、いかなる行動を取るべきかを一寸考えてみたいと思います。

$1=¥100はそろそろ日本の国内物価が海外物価と面合わせする水準でしょう。
 日本経済はデフレを脱却して、そろそろインフレという環境に入ります。
 日本の国内物価水準が国際物価水準に面合わせになれば、もうデフレは起き得ませんから(海外からより安いものが入って来ませんから)、今後は、出来るだけインフレをひどくしないことが大事になります。
 もちろん政府が「2パーセントのインフレターゲット 」と言っているのですから、2パーセントまではいいということにしましょう。

 日本の輸入依存度は10~15パーセントですから、その分(輸入原材料、輸入品など)のコストは従来価格に比べ20パーセント上昇します。円高の時、輸入価格が下がった事の逆です。その分だけ、ガソリンや灯油、輸入原材料を多用するトイレットペーパー、豆腐、うどん、パンなどが値上がりします。
 ただし、加工や輸送のための人件費などの国内コストは上がりません。上がるのは輸入原材料費分だけです。それ以上上がるのは便乗値上げでしょう。

 正確に言えば、日本の物価水準が、国際水準と同じ($1=¥105前後?)になった後は、輸入品の価格上昇は、原則国内物価に跳ね返りますから、2割の円安×1割の輸入依存度=2パーセントは理論上消費者物価の上昇になります。インフレターゲットは2パーセントですから、消費者は、便乗値上げなどに厳しく目を光らせなければなりません。

 最も留意すべきは、円安によって輸出産業や、輸入品競合産業で生まれる余裕を、安易に賃上げして人件費(最大の国内コスト)の上昇に使ってしまわないことでしょう。これは、円安で生じた経済成長への可能性を、インフレ発生で浪費してしまうことですから。

 そこでどうすればそれが防げるかです。
 円高で発生する日本経済(主に企業)の余裕は、あくまで一時的なものです。長年の我慢に対して、国際投機筋が賠償金を払ってくれたようなものです。
 問題はこれを飲み食いに使うか、経済立て直しに使うかです。そして、ここは賃上げで楽をするのではなく、もう1つ我慢して、将来の日本経済発展のための研究開発、財・サービス生産の活発化、それを支える人間への投資である教育訓練といった前向きのものにこそ活用すべきでしょう。それこそが日本経済の安定成長復帰への早道です。

 その結果、年々の経済成長が現実のものとなりGDPが増えた時、その増加に応じた(正しくはその増加を生み出した生産性の上昇に応じた)賃金上昇が可能になるのです。
 インフレを2パーセントまで許容するのなら、生産性上昇率より、2パーセント大きい賃金上昇率にすれば、2パーセントのインフレターゲットは完成です。

 円高から円安に転換し、デフレからインフレに変わるという正に過渡的なプロセスで、今まで経験しなかったことが起こりますが、その際、決して慌てず、冷静に賢く対処して、このデフレからインフレへの180度の転換を見事に切り抜けて見せられるかどうか、日本人の知恵と行動能力が問われているのです。


いよいよ企業 (企業労使) の出番

2013年04月08日 11時31分01秒 | 経済
いよいよ企業(企業労使)の出番
 長い間、日本政府、日本銀行は、失われた20年に苦しむ日本経済に対し、殆ど本質的な手が打てませんでした。打つ手を封じられているといった思い込みのせいか、実体経済を乗っ取ったマネー資本主義の性質が解らなかったのか、余りに真面目過ぎてマネー資本主義否定で通していたためか、恐らくそれらの複合だったのでしょう。

 今回の新政策は、乾坤一擲、真面目過ぎる実体経済中心主義をはみ出して、アメリカ仕込みのマネー資本主義の中では「これが正解だ 」という政策に切り替えた結果と言えるのではないでしょうか。
 その意味で、政府・日銀は、まさに「一皮むけた」という事でしょう。

 もし、残る問題があるとすれば、それは、この円安転換が、腰折れになって、また円高の進行に戦々恐々としながら経営をしなければならないような状況に戻ることのないよう、政府・日銀はあらゆる知恵を絞り、政策を動員して、国際的にも、国内的にも、そうした認識を確りと将来に向けて長期的に定着させるためのに徹底して政策を継続することでしょう。

 これからの論議も、それを前提にしない限り、成り立たないということを、最初にお断りしておかなければならないと思います。

 さて、政府が役割を漸く適切に果たしてくれたということは、企業にとって、適切な経営環境が用意されたということに外なりません。多分日本の企業はそれに適切に反応して行動を起こし、日本経済を再建の軌道に乗せてくれるだろうと私は考えています。
 ただ些か心配なのは、余りに悪い環境が続きすぎたため、正常な感覚を喪失してしまっているようなケースがないかということです。
 
 円高は日本の国内コストを高めて、日本企業に国内で財やサービスを生産することを出来るだけ減らし、海外で生産することを強いてきました。
 その結果の企業の国外脱出、国内での付加価値創出の不振(経済のマイナス成長)雇用減、雇用の質の劣化、賃金減、所得格差拡大、(ひいては社会の劣化)だったわけです。

 ですから円安に戻ったということは、海外生産を順次国内生産に戻していくプロセス(円高の逆)を進めるチャンスであり、それこそが、日本経済再活性化のプロセスでなければなりません。
 もちろん、海外に出た仕事の中には、そのまま海外での付加価値生産を続け、国内では、より新しい、より高度な仕事に進んでいくというケースも数多ありましょう。
 しかし、低コストの生産を常に海外に求めるという習性からの脱却は、円安とともに、積極的に進められなければなりません。

 もともと、より良質の生産がより合理的に可能だったからこそ、日本経済は、プラザ合意で円高を強いられるまで、日本経済は「ジャパンアスナンバーワン」と世界の羨望の的だったのです。
 政府の政策転換に続いて、いよいよ企業の出番です。日本企業は、円安で割高になる海外生産の国内回帰、競争力の有利化する得意技の更なる発展、新たなより高度な財、サービスの国内生産の拡大を求めて、日本企業は「国内経営資源の徹底した活用」の積極的推進に着手すべきです。

 ここでいう企業とは、労使双方を含む企業全体です。それこそが、今後の安定した経済成長、雇用・賃金の着実な改善に必須のプロセスです。そして、そのカギとなるのが、日本の労使の信頼、協力関係です。


様変わりの日本経済、今後は?

2013年04月05日 14時30分09秒 | 経済
様変わりの日本経済、今後は?
昨日、今日で日本経済は様変わりになりました。
 昨日の昼過ぎまでは$1=¥92台まで円高傾向が進み、日経平均は200円を超す下げになって、アベノミックスも化けの皮が剥がれて、また円高のトレンドか?といった疑心暗鬼もあったようですが、日銀の政策決定会合の結果が発表された途端、日本経済という舞台は、あっという間にどんでん返しになりました

 戦後最大の不況と言われた昭和40年不況からの脱却が当時の福田赳夫蔵相の、「国債を発行します」という一言で反転上昇に転じ「いざなぎ景気に」入ったように、今回は黒田日銀新総裁の予想外の超金融緩和、「兵力の逐次投入ではなく『一挙大量投入』こそが大事」という一言で、まだ24時間もたっていないのに$1=¥97台まで円安になってきました。

 昨年2月、このブログで、今、一発で景気が回復する言葉は「これ以上円高にはしません」と言いう一言だ、と書きましたが、今回の日銀の新政策は、まさにそれを内包し、それを超える政策的インパクトを持ったようです。

 今回の日銀の新政策は、極めて巧みに練り上げられているように思います。政策基本に据えられているのは「デフレ脱却」で、そのシンボルは「2パーセントのインフレターゲット」です。これはアメリカが掲げる目標と同じですから、アメリカとしても、自分がやっているのに、「日本はやってはだめ」とは言えないでしょう。

 しかし、デフレをインフレに転換するためには、「円安」というプロセスを通らなければ不可能です。もともと過度な円高で、世界で最も高いと言われる日本の物価が、国際価格に向かって下がるのは、水は低きに就くのと同じで、自由経済の自然現象です。日本の物価のインフレ化は、日本の物価が国際価格に面合わせしたところから始まるのです。それを可能にするのは円安だけです。

 日銀は、円安を目指すとは言いません。マーケットが円安にしているのです。$1=¥110~120になれば、日本の国内物価水準も、国際水準に面合わせとなるでしょう。その辺りから、インフレが具体的に日本経済の問題になるでしょう。

 問題は、マネーマーケット、国際投機資本の反応ですが、彼らの目指すのは、超短期のキャピタルゲインの極大化です。レバレッジをかけて、常にリスクを意識しながらの投機です、ですから政策当局の態度には、常に神経質で、極めて敏感に反応します。
 その反応を先読みして、巧みに彼らの反応を利用することが、今日の経済政策、金融政策の要諦のようです。


アメリカは経常黒字国になるか(偏見予見)

2013年04月03日 15時21分14秒 | 経済
アメリカは経常黒字国になるか(偏見予見)
 前回、アメリカのシェールガス・オイルの規模についての多少の手がかりなりそうな数字を見てみました。
 マスコミで見る解説が正しいのかどうかまだ解りませんが、アメリカのGDP比で年間3~5パーセントになる経常赤字を埋めるぐらいの規模になりそうな気配も十分あるように見られます。

 今のロシアではありませんが、では、アメリカも世界最大(?)の産油国になって、経常赤字国から経常黒字国に転換する可能性があるかというと、私には、どうもその可能性は小さいように思えてなりません。

 もちろん、シェールガス・オイルの産出量が巨大なものとなれば、アメリカの政府、国民の心がけ次第でそうなるのは可能なことですが、私には、どうもそうは思えないのです。

 今までアメリカは、いわゆる「双子の赤字」の削減あるいは解消のために、いろいろな努力をしてきました。
 プラザ合意で日本に大幅な円高を強いたこともその一環でした。住宅バブルの債権を証券化して外国から金を調達する努力をして、その結果世界中の金融機関が多く深手を負いました。強い反省もあったようです。

 長期的に見れば、$1=¥360が80円を割り込むまでにドル安政策をとってきたわけです。国内では、バイ・アメリカン政策から、今回のTPPまで、輸入制限や輸出促進策を含め、多種多様な方途を、場合によっては力ずくや、アメリカにより有利なデファクト・スタンダードの導入なども交えて展開し赤字削減の努力をしてきています。

 それにも拘らず、経常赤字は解消しないのですから、これは「肥満」や「喫煙」「アルコール依存」と同じように、本人(国)の性癖や気質によるもので、そう簡単に修正が出来る問題ないように感じるからです。
 ずいぶん以前に書かせていただいた「国際競争力への誤解」で述べたように、キリギリスに「アリになりなさい」と言っても、これはそう簡単なことではないのです。

 更にもっと深読みすれば、シェールガス・オイルはあるだけ使えば終わりです。バイオ燃料目的が増加しているトウモロコシなどとの関係も微妙です。どこまで生産を増やすかはアメリカの長期世界戦略と関わります。こうした中で、アメリカは経常黒字国を望むのかどうか、アメリカの世界戦略の在り方が、何がしか見えて来るのではないでしょうか。


アメリカ経済とシェールガス

2013年04月01日 11時25分29秒 | 経済
アメリカ経済とシェールガス
 先日このブログで、アメリカはシェールガスのエンジンで、一度膝を曲げなくても、ジャンプできるかもしれない、と書きました。
 ということで、シェールガスが、アメリカ経済の中で、どの程度の比重を持つのか、数字を拾ってみました。

 先月、シリーズで書かせて頂いた「付加価値で読む経済分析」から判断すれば、アメリカの消費が伸びて、雇用が改善し、世界が喜ぶというのは、資本蓄積を伴わない消費拡大ですから、結局は糠喜びで、結果はアメリカの経常赤字の拡大・継続、対外負債の増大で、世界に更なる迷惑をかけるだけ、ということになります。

 アメリカ自体は基軸通貨国ですから、ドル安を容認してドル供給を増やし、黒字国からドルを還流させていけば、デフォルトにならないのかもしれませんが、世界経済の不振と混乱をもたらし、本当の経済発展に繋がらないことは自明でしょう。

 その意味では、アメリカが世界最大の石油(ガス)輸出国になると言われるほどのシェールオイル・ガスが産出されれば、経常赤字解消、資本蓄積可能という状況になることも可能なので、そのあたりの数字を拾ってみたわけです。

 まずアメリカの経常赤字の動向を見てみます。最もわかりやすい数字でいえば、稼ぎ以上に金を使っているという比率、経常赤字/GDPをパーセントでみますと、

  2000年(4.18%) 2001(3.86%) 2002(4.30%) 2003(4.66%) 2004(5.30%) 2005(5.91%) 2006(5.99%) 2007(5.06%) 2008(4.74%) 2009(2.73%) 2010(3.05%) 2011(3.09%) 2012(3.11%)   (2012年は推計) 資料出所「世界経済のネタ帳」
         
という状況です。ちなみに具体的な数字でいえば、2011年の経常赤字は4,659億ドル、GDPは150,767億ドルです。
 
 では、アメリカの原油輸入額はどのくらいかといいますと、2012年で4,623億ドル(資料:「世界経済のネタ帳」)です。
 単純に言えば、両者ほぼ同額ですから、アメリカが原油・ガス輸出国になれば、アメリカの経常赤字は解消することになります。

 シェールガス・オイルのアメリカ経済に与える影響は、かなり大きそうですね。