tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

復興の経済力に自信を

2011年03月31日 11時17分07秒 | 経済
復興の経済力に自信を
 原発の問題については、いまだ不確定要素が多すぎ、予測困難な状況が続いているようですが、地震・津波の自然災害については、復興、再建に向けて、すでに現地が確実に動き始めている様子が伝えられています。
 頑張る日本人の力強さが胸を打ちます。

 今後問題になるのはおそらく巨額にぼる復興費用でしょう。
 阪神淡路大震災の際は、政府は3度にわたる補正予算で3兆2千億円を投じたと聞きます。復興のための総事業費は10年に亘り累計16兆3千億円と「同復興基金」の資料に出ています。
 亀井さんが、10年かけ100兆円の無利子国債を発行したらといわれたという報道もありました。

 災害の規模が未曾有の巨大さだったために、すでに借金漬けの政府は苦慮することになるでしょう。しかし日本人が真面目に努力すれば必ず結果はついてくる、と私は考えています。
 しかも、復興費用については、決して心配することはないと思います。

 そんないい加減な楽観的なことを、と仰言る方も居られるかと思いますが、このブログでもずっと書いてきましたが、日本人は、年々、働いて生み出したGDPのうち毎年10~20兆円を使い残しています。その金額は、国民経済計算の 経常黒字として計上されるわけですが、平成21~23年の、閣議決定後の「政府経済見通し」で見ますと、
平成21年  15,8兆円(実績)
平成22年  16.4兆円(実績見込み)
平成23年  17.6兆円(見通し)
ということになっています。

 このお金はどうなっているかという事ですが、経済計算の定義通り、海外に流出しています。
ひとつの事実を申し上げますと、昨年は日本は米国国債を22兆円購入しています。序でにいえば、ガイトナー財務長官は、「日本はこれを売ることはない 」と言っているわけです。

 さすがに23年度の経常黒字(GDPの使い残し)17.6兆円という見通しは、今回の災害で縮小するかもしれません、しかしリーマンショック直後でも、節約してこれだけの黒字を出している日本人です。今回の震災で更に節約してある程度の黒字を出すことは間違いないでしょう。10年がかりなら200兆円近くになります。

 日本はこの巨大な黒字を、徹底して今回の災害復旧につぎ込むべきです。間違ってもアメリカの国債などを購入しないことです。アメリカは現状ゼロ金利ですし、今までは円高のたびに実質目減りで大損ばかりして来ているのです。
 おカネはあるのです。問題はこれをどう回すかです。政府の知恵が問われています。
 国民のみんなが作ったGDPです。国民のみんなが知恵を出すべきかもしれません。


電力供給の未来に生かせ

2011年03月27日 11時10分27秒 | 社会
電力供給の未来に生かせ
 地震、津波で多くの人命と積み上げてきた生活を失いながらも、その悲しさを乗り越えて、新たな日常の再建へと立ち上がる被災地の人々の強い意志が徐々に回復しつつある中で、原発の問題は、日本社会に、さらには世界のエネルギー政策にも大きな影を落としているように思われます。

 人間生活のベースである土地がある限り、伝統や文化や、人のつながりの再建は不可能ではありません。しかし、原発事故の場合は、土地があっても住むことができないという郷土喪失の問題が発生しています。

 「予断を許さない」といった発言が政府や関係者から出ますが、先行きが見えないことは、人間の意志の発揮の決定的障害でしょう。
 線量計を止めてまで復旧にまさに必死で立ち向かう方々の覚悟の行為に心を打たれながら、この問題を、将来に向けてどう受け止めるかを、我々も真剣に考えなければならないのではないでしょうか。

 福島第1原発でも、1~3号は稼働中で、4~6号は点検中だったようです。ベース電力を供給する原発の稼働率は意外に低いのだなという印象を受けました。それでも、原発の発電コストは相対的に低いということです。

 しかし、今回のような災害を考えた場合採算はどうなるのでしょうか。周辺装置まで含めた徹底的に安全な原発など考えたら、コストが膨大になって現実的ではなかった、という専門家の声も報道されていましたが、今後の技術革新でそれが可能になるのでしょうか。
 電力は今や我々人間社会のあらゆる活動のベースです。電力なしの人間生活が考えられない以上、我々は、電力供給の問題を徹底して考えていかなければなりません。

 それはあくまでも、生産と消費を繰り返す中で、技術革新と生活の快適さ、そしてより良い社会環境の実現を目指す「この社会に生活する人々」にとって、より望ましいものでなければならないでしょう。
 原発災害のこれ以上の拡大を防ぐべく、まさに決死の活動を続ける人々の安全を心から念じ、また祖先から受け継いだ生活の場を追われる人々との痛みを分かちながら、この最悪の経験を、将来・未来の日本のエネルギー政策にどう生かすのかをみんなで考えなければならないのでしょう。

 そのためには、この経験のあらゆるデータを克明に積み上げ、コストと安全のすべてを考えつくした、利害や立場の偏りのない判断が必要になってくると思います。
 政府、関係業界、関係学会などの、未来に向けた誤りない判断を願うや切です。


ガイトナー財務長官の発言

2011年03月23日 12時44分53秒 | 国際経済
ガイトナー財務長官の発言
 今回の大震災の発生後、投機筋の思惑が先行して円高が進行する中で、アメリカのガイトナー財務長官は、上院の委員会で、
「日本政府の復興費用や、保険会社の保険金支払いのために、米国債の売却が進むか」との質問に、
「そうは思わない」と答えたのをユーチューブで見ました。その説明として、「日本は、ベリー リッチ カントリーだ」といい、さらに、「日本の貯蓄率は高く、復興の力はある」といっています。

 投機筋の思惑で円高が進む中では、これは日本から見ても、大変適切な発言で、その後の協調介入を受けて円高は一応の落ち着きを見せました。

 円高の落ち着きは、22日の東証株価の大幅高にも繋がったのでしょうが、こうしたアメリカ国内のやり取りの中から、アメリカが何を考えているかが何となく読み取れるような気もします。

 「日本が米国債を売ったらどうする(どうなる)」という質問は、投機筋の思惑による円高進展の中で、アメリカが感じる危険を踏まえた、財務長官に対する突っ込みでしょう。

 財務長官として、即座にそれを否定したのですが、「多少売るかもしれないが、問題ない」というのではなくて、「売ることはない」と明言しなければならなかったという事は、日本による米国債の売却は、アメリカにとって、「大変な問題だ」と認識されていることを実感させます。

 そしてその理由として、アメリカ主要格付け会社が揃って日本国債の格付けを下げているにも拘らず、あえて「日本は大金持ちだ」と説明し、さらに「貯蓄率が高い(経常黒字が大幅 )」と指摘し、災害の再建はアメリカ国債を売らなくてもやれる」と言い張っているわけです。

 輻輳する日米経済関係の中で、こうした発言の中から、アメリカが日本との相互の財政の関係のあり方をどう考えているのか、確りと読み取っておくことも、日米関係の今後を考える上で、大事ではないかなどと何となく感じた一幕だったように思います。


頑張れ日本、日本人

2011年03月20日 12時48分35秒 | 社会
頑張れ日本、日本人
 巨大災害から1週間余が過ぎましたが、日本人はその中でもまた沢山の勉強をしているように思います。第1次オイルショックから学んで、第2次オイルショックでは世界の注目を浴びる対応能力の高さを見せた日本人は、今回も、日々、災害対応、復旧への取り組み方を学び、日々改善を行い、短期間に目覚ましい対応力を発揮しています。

 桁外れの広域災害、地震だけではなく巨大津波の恐ろしい破壊力、これらは車を主要な生活手段にする社会にはまさに壊滅的な打撃です。
 車社会は、道路とガソリンで生きている社会です。水、電気、燃料といったライフラインの維持も、道路とガソリンによって維持されているという構造になっています。

 マスコミもあらゆる手段で、災害地域の生の情報を広く国民に知らせ、さらに、経験に即して現状に対応するノーハウを持った方々を登場させ、正確な情報が行き渡ることによって、チェーンメールや無責任は風評・伝聞といった社会的なウイルスの除去に大きく貢献しました。

 こうした多様なインフラの上に乗って、医療品、水、食糧、基礎的な生活物資、ほぼ1週間という素早さで、なんとか行き渡ることが出来たように感じられます。
 マスコミとネットからしか情報を得られない私にも、これは素晴らしい実績なのではないかと率直に感じられます。

 多少の買いだめもあったようです。買いだめというのは、1人が普段1個買うところを2個買うだけで、生産量が2倍にならないと対応できない状況を作りだします。すでに第1次オイルショックの時に経験済みですが、今回はあの何分の1の規模でしょう。

 我が家ではパンを買いに行かずに、非常袋の乾パンの缶詰を出してきました。賞味期限は2009年ですが、何も問題はありません、「1日に乾パン10個と味噌と少しの野菜を食べ・・・」などといいながらも、退職高齢者には特に不自由はありません。

 しかしまだ大きな問題が残されています。原発への対応です。こうしたものは作った人が一番よく知っているはずです。メーカーの積極的協力は何といっても心強いことですし、急を要する対症療法的な行動としての自衛隊、消防庁などなどの適切な判断と対応は偉大です、特に現場で体を張って事に当たるすべての方々には、ただ頭を下げ、深甚の敬意と感謝を表すのみです。

 自衛隊ヘリの測定による構造物の表面温度の安定と、外部電源工事の綿密な進展の様子に、素人なりによい兆しを感じながら、頑張る日本・日本人を実感しつつ、関係する皆様方にただただ感謝し、成功を祈っています。


国際投機資本の跳梁阻止を

2011年03月17日 10時12分27秒 | 国際経済
国際投機資本の跳梁阻止を
 円が一時1ドル76円台をつけたというニュースが入りました。現在は78円台のようですが、日本の災害状況の行く方次第では円高の進展は予断を許しません。これは容易ならざることです。

 日本国内がこのような巨大災害に見舞われ、その影響が原発に及ぶという世界が憂慮する重大な問題が発生し、多くの国々が、緊急援助の暖かい手を差し伸べている中で、円高を演出する「国際投機資本」は一体何を考えているのでしょうか。

 彼らの意識は「この危機を利用して、最大限の利益(キャピタルゲイン)を挙げたい」ということだけなのでしょう。まさに「資本の本能」丸出しです。
 その結果、日本の災害対応、経済復興にいかなる影響があるか、国際的な援助にどのようなマイナスの影響があるかといった問題は、彼らの頭の片隅にすらないのでしょう。

 金、かね、カネ。 金のためなら、実体経済、人々の生活、人間の善意などに関心など払っていられない、というい国際投機資本の本性が、こうした危機的な時にこそはっきりと示されます。

 そうした者の跳梁跋扈を黙って許すことは、経済面の政策当局としては、決してすべきでないでしょう。日銀は徹底した金融緩和策を取っていますが、政策当局には市場介入から、為替制限まで、とりうる手段はいろいろあります。IMFやG20 がやるべきだと言いながらなかなか出来ない金融規制ですが、こうした原因・結果とその悪影響が目の当たりに見えるときこそ「資本主義の鬼子 」への本格的な対応を考えるチャンスではないでしょうか。

 日本人の中にすら、片方で巨大災害に心を痛めながら、片方でこうした国際投機資本の掌に載せられ、マネーの信用取引の手を染めている人もいるはずです。

 円高の問題は、プラザ合意以降の経験 から学んだように、日本人すべてに降りかかってくる「経済的災害 」です。しかもその対応には極めて長期の時間と、経済的、社会的な大きな犠牲を要します。
 政策当局に早期かつ賢明な対応を望むや切です。


巨大災害と冷静な対応

2011年03月15日 22時23分10秒 | 社会
巨大災害と冷静な対応
 巨大地震、大津波から原発の損壊事故、そして首都圏一円にまで及ぶ多様な仕事・生活上の問題まで連鎖を延ばす歴史上稀に見る巨大複合災害の中で、日本人がそれにどう対応するか、世界中が注視しているようです。
 しかし、注視しているかどうかに関わらず、いま、現実に、日本人は冷静に、見事な対応をしているのではないでしょうか。

 特に、自然災害に対しては、日本人の伝統的意識、「自然のなすことについては、それが恩恵であれ、災害であれ、受け入れる以外に人間は取るべき行動を持ち得ない」という自然観がそのまま反映されたものであるように感じます。

 受け入れ難いような悲しみの中で、多くの苦難に耐え、極めて冷静に、今何をすべきかを判断し、そのための努力を積み上げるといった真摯な行動が、あらゆる場所で行われている様子が、テレビの画面からも確りと伝わってきます。同じ日本人として、尊敬と賛嘆の念で一杯です。

 まだ、自然災害の全貌もわかっていません。更に人為的なものも絡んだ、原発の事故がこの後、どのように推移するかは、全く予断を許しません。
 しかし、多分日本人は、あとから見れば、矢張りその時点、その時点で、ベストの対応をしたといわれるような対応をしつつあるのではないでしょうか。
 
 この巨大災害の今後の推移が、これ以上ひどくならないように願いながら、これからも我々一人ひとりが、その置かれた場所で、それぞれにベストの対応をするよう、更に一層心がけたいものです。

 海外からの、温かい支援の手も、差し伸べられつつあります。連日映し出される日本人らしい、それぞれの場面における冷静で適切な対応を見習いつつ、私も、市井の片隅で、この問題に対する私なりの真摯な対応を続けて行きたいと思う毎日です。


東北・関東大地震お見舞い

2011年03月13日 16時49分53秒 | インポート
東北・関東大地震お見舞い
今回の巨大災害にあわれた皆様に、心からのお見舞いを申し上げます。
歴史的な巨大災害に打ち勝つよう、ご健闘をお祈り申し上げます。
市井の片隅から、ささやかながら、応援しております。
     Tnlabo’s blog


ジャパン シンドローム?

2011年03月08日 17時59分40秒 | 社会
ジャパン シンドローム?
 近頃、 ジャパン シンドロームなる言葉が使われます。英エコノミスト誌が書いた言葉の受け売りですが、エコノミスト誌は、この所元気のない日本経済を応援するつもりで書いたようです。

 昔から日本のマスコミは、外国の日本についての発言を、何か自虐的に受け取り、自分を蔑むようなところがあります。
 ドゴールが池田首相のことを「トランジスタ商人」と言ったとか、欧米が「日本人はウサギ小屋に住む働き中毒」と言ったとか書き立てたのをご記憶の方も多いでしょう。

 いまや欧米でも中国でも、首脳の外国訪問には、多くの経済人が同伴してまで、自国製品の販促をやります。これが今の常識です
 かつて、ドイツのコール首相(当時)が来日した際、「ドイツは労働時間が短いというが、二重就業が多いではないか」ときかれ「ドイツ人は勤勉だからそうやって働く人も多い」と答えていますし、アメリカが総実労働時間で日本より長くなったとき、アメリカ人が「アメリカ人はもともと勤勉なのだ、よく働くのはいいことだ」と言ったのを何度も聞いています。

 池田首相は首脳セールスの先鞭をつけた先覚者ですし、日本人は働き者だから、この円高に耐えて、世界に迷惑をかけず、貢献を続けているのでしょう。卑下することはないのです。

 確かに今の日本は元気がありません。政局も混乱の極です。しかし、「これで日本はもうダメだ」などと思っている日本人はいないでしょう。だめだ、だめだといいながらも、ほとんどの日本人は健気に頑張っています。

 ジャパン シンドロームは余り感じのいい言葉ではありませんし、「何がどう悪くてこうなっているのか」といった、原因と状況の明確な表現でないと対処方法も的確に論じられません。ただ、エコノミスト誌もふくめて、日本の人口減少問題を過度に悲観的に取り上げる傾向は、どうもあちこちに見えているようです。

 確かに少子化の原因は、必ずしも特定できていません。しかし、この少子化傾向が何時まで続くかといった将来展望も、実は誰にも解っていないのです。あと40年この傾向が続けば、2050年には日本の人口は・・・、というのは、あくまで「仮定」の話です。

 最近の婚活ブームなどを見ていると、近い将来、少子化傾向も変わって来るのではないかといった気もします。悲観しないでよいシナリオも考えて見ませんか。


食糧価格とマネー資本主義  (4)金融規制と生活者の行動と

2011年03月04日 14時27分52秒 | 経済
食糧価格とマネー資本主義  (4)金融規制と生活者の行動と
 表題は「食糧価格と」としながら、少し話が広がりすぎたかもしれませんが、実は食糧にしても原油にしても、その他もろもろの資源にしても問題点は共通です。資本主義という土俵の中で、本来人間生活に直接関わる「実体経済」と、お金の持つ毒に冒されてしまった「マネー資本主義」という鬼子が相克しているのが現在の資本主義ではないでしょうか。

 本来世界経済は、実体経済中心、金融市場はそれがスムーズに動くようにする潤滑油、という関係がベストなのでしょうが、鬼子は育ち過ぎてしまいました。 (情報通信技術の革命が、政治的な革命にまで及ぶ問題が起こっていますが、それとの関連には、あえて触れません。)
 
 ところで、日本人は、マネー資本主義は向いていないようです。未だ舶来崇拝の残る日本人は、鵜のマネをする烏のようにマネーゲームを試みますが、なかなかうまく出来ません。
 もともと日本人は、その伝統、文化、風土からして、モノづくり、実体経済の発展に勤しむことが向いているのです。人の良い日本人にはマネー資本主義は似合いません。 この面で日本の出来る国際貢献とは何でしょうか。

 今の日本にとって2つのことが重要のように思います。
 第1は、自分がうまく出来ないからというわけではありませんが、日本はG20などの場で、過度なマネー資本主義を規制し、人類社会の健全な発展に貢献する「実体経済の発展」中心の健全な資本主義の発展を徹底して主張し、そのリーダシップを取るべきでしょう。

 第2は、そうした活動が実るにはまだまだ時間がかかり、これからも食糧や資源の価格は、不安定を続けるでしょうから、国際商品の価格の乱高下に賢明に対処する具体的な生活者(消費者)のあり方を確りと実践して見せることでしょう。

 前者については、 日本の伝統と文化に立脚した新たな「本格的な国際デビュー」が必要でしょう。後者については、日本には実績があります。第1次オイルショック(原油価格4倍)で狂乱物価を経験した日本人は、第2次オイルショック(原油価格3倍)は賢明な対応で乗り切り、ジャパンアズナンバーワンといわれました。国民があわてなければ、経済変動は最小限になることを実証 したわけです。

 投機によって過剰に変動した価格は、少し時が経てば逆の動きになります。あわてないことが、投機筋の動きを鈍らせ、マネー資本主義の跳梁の抑制することになります。

 資源価格の変動が、実体経済の需給を反映したものならば、資源消費国から資源産出国への富の移転(経済価値の贈与)になり、それは資源の開発や節減、代替資源の開発などを誘発して、実体経済の安定発展に貢献するものです。 日本は、政府も国民も、最も合理的な消費者・生活者としての行動を実践し、世界に、こうした混乱の中で、あるべき方向を示すべきでしょう。


食糧価格とマネー資本主義  (3)金融工学の発展

2011年03月01日 11時24分16秒 | 経済
食糧価格とマネー資本主義  (3)金融工学の発展
 1960年代は、世界中が第二次大戦からの復興ということで、実体経済の成長発展に傾注しました。中でも敗戦国、日本と西ドイツの成長は目覚ましいものでした。
 しかし、アメリカの実体経済が次第に力を失い、1971年ニクソンショックで基軸通貨ドルが金(きん)と切り離され、変動相場制の下でアメリカの経常赤字が拡大するにつれて、アメリカはインカムゲインの不足をキャピタルゲインで補わざるを得なくなり、マネー資本主義に力を入れ始めたようです。

 こうしてアメリカ中心に、いわゆる金融工学 が発達することになります。
 マネー資本主義は、モノや証券、債券、通貨などの価格の変動で利得(gain)を得ることが目的ですから、価格変動(ボラティリティー)が命です。前々回の「株屋殺すにゃ 刃物はいらぬ・・・・・」の世界になるわけです。

 金融取引の原点としての信用、先物をベースに、レバレッジを大きくし、種々のデリバティブ(派生)商品を開発し、巨大な投機資金によるマネーゲームの世界を作り上げ、値動きさえあれば、値上がりでも値下がりでも利得が得られるシステムの構築を進めてきています。

 信用や先物というのは、現物の取引の価格の変化によるリスクをヘッジ し、実体経済の取引をスムーズにするための仕組みとして生まれたはずですが、レバレッジを大きくすれば、単なるヘッジではなく、ヘッジの何倍かの利得(何倍かの損失)を計上することが可能になります。
 こうして、現物取引のスムーズ化のための手段は、リスクのある投機、ギャンブルの世界に変貌していくことになりました。

 ギャンブルで最も望ましい立場は胴元です。胴元になるのには、巨大な資金を持つこと、ルールの管理者になることが必要です。そして一度手を染めると、なかなか実業、実体経済の世界には戻れないようです。こうして多くの大胴元、小胴元が資金の拡大にしのぎを削る状態が進んでいるように思います。

 こうした巨大なマネーが食糧価格を始め、原油その他の資源供給の過不足、債券や通貨市場の価格変動を、投機的売買によってより大幅 なものにし、キャピタルゲインを極大化しようと、実体経済の正常な活動を阻害、時には破壊してまで跳梁する状態です。

 金融市場の目的は、需給の安定のために適切な資金供給を行い、価格の安定、経済の安定的発展に貢献することでしょう。その金融市場を、本来の目的とは全く違ったマネー資本主義という鬼子の活躍の場に変貌させ、資本主義経済の正常・健全な発展を阻害するようなプロセスが、サブプライム、リーマンショック以降もその失敗の教訓にも学ばず、さらに進みつつあるのではないでしょうか。

  G20、IMF、世銀、などの役割と責任はますます重くなるようです。