tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

平成という時代:リーマンショックの前と後、2

2018年07月31日 10時14分17秒 | 経済
平成という時代:リーマンショックの前と後、2
 「プラザ合意」でアメリカの為替政策にまんまとしてやられた日本経済ですが、その円高によるデフレ不況に必死のコストダウンで対応し、10年余を経て何とか1ドル:120~130円の円レートでも何とかやれるまでになりました。然し事はそれでは終わりませんでした。

 2008年、リーマンショックが起こります。「 グリーンスパン・マジック」でも書きましたが、本来返済に問題のあるサブプライムローン(アメリカの低所得層への住宅ローン)を政府関係機関などが証券化し、アメリカの格付け機関がAAAのランクをつけて、世界中に売り捌き、挙句の果てに大量の焦げ付きで、価格は暴落、世界中の銀行のB/Sに大穴を空けることになったのです。

 リーマンブラザーズの倒産はその象徴的なものでしたので「 リーマンショック」という言葉が生まれました。皆様やお身内の中にも、その証券を組み込んだ外貨建ての投信などで折角のへそくりが大きく目減りさせた経験をお持ちの方もおられると思います。

 これは世界金融恐慌に発展するかもしれないと恐れたアメリカではFRB議長のバーナンキが自らの信じる理論に従って「ゼロ金利政策」を軸に超金融緩和とインフレターゲット(2%)政策を取りました。
 その結果起きたのが、ドルの暴落です。円レートで見ますと$1=¥120が2011年には79円となり、日本は改めて、急激で大幅な円高に苦しむことになりました。

 これが平成不況の後半、リーマンショック後の日本経済の異常な低迷をもたらしています。
 プラザ合意による円高を漸く自力で乗り切った日本経済・日本企業も、アメリカのゼロ金利導入による円高には、もう対応する力はありませんでした。企業は正社員を削減、非正規に置き換え、人を育てる教育訓練費まで削って、当面のサバイバルに賭けることになりました。

 1次災害からの復旧が済まないうちに2次災害が来たような状況の中で、対抗する気力も術も殆ど失い海外脱出に賭ける日本企業の状態は2013年まで続きます。
 その中で、漸くこの不況に本質を理解した日銀は、従来の円高容認の姿勢を変え始め、 白川総裁の下、アメリカの金融緩和に倣って、金融緩和、インフレターゲット(1%)を打ち出しています。円高容認・デフレ容認の日銀の大きな変化でした。

 そして結果は意外な展開になりました。白川総裁が任期を終え、伝統的な日銀とは全く異なるマネー資本主義を主軸に置く 黒田総裁が就任、民主党から政権をもぎ取った安倍総理とのコンビで、バーナンキ流の手法、異次元金融緩和で円レートを引き下げる政策、いわゆる「黒田バズーカ」を立て続けに二発発射、円レートを$1=¥120に戻したのです。
勿論インフレターゲットもアメリカと同じ2%に設定しました。

 2013年から2014年にかけての異次元金融緩和で円レートが120円になるとともに、企業には円安の恩恵が一度に訪れることになります。
 円レート80円→120円でドル換算の日本の賃金は3分の2の水準に下がり、コスト高は解消です。輸出企業には円安差益がどっと入ってきます。

 日本経済は忽ちにして競争力を得て立ち直り、安倍総理は「アベノミクスの成果」と胸を張ることになります。
 ところでこれで、日本経済はめでたしめでたしになったのでしょうか。
 リーマンショック後の異常な不況、そしてそれからの脱出の過程は、それからの日本経済にいろいろな影響を残したように感じられます。(以下次回)

平成という時代:リーマンショックの前と後、1

2018年07月30日 16時45分43秒 | 経済
平成という時代:リーマンショックの前と後、1
 「平成という時代」のシリーズで、いろいろな面から日本経済・社会の側面を書いてきましたが、今回は平成のほとんどを占める深刻な不況の時期を、アメリカ発の世界不況「サブプライム・リーマンショック」の前と後に分けてみるという事をしてみたいと思います。

 1990年(平成2年)のバブル崩壊から始まる深刻なデフレ不況の原因をさかのぼれば1985年の「プラザ合意」による円高であることは繰り返し述べてきました。
 プラザ合意は、アメリカが拡大する対日貿易赤字を何とか減らそうとG5の場で日本に円レートの切り上げを迫り、日本が「はいはい」と応じたことから始まります。

 その後、2年で円は$1=¥240から$1=¥120に切りあがり、日本は世界で物価も賃金も最も高い国などと言われるようになりました。
 本当はすぐにデフレ不況になる所でしたが、アメリカのアドバイスもあり超金融緩和をやりました。結果は土地バブルで担保の土地さえあれば銀行は金を貸し、地価も株価も暴騰、「ウサギ小屋売れてドイツで城を買い」などと言われる状態でした。

 地価暴騰で手にしたカネは円高でドル換算では2倍の価値になっていましたから、円は世界で猛威を揮い都市銀行は殆ど世界のランキング入りでした。

 1990~91年、株価と地価の暴落でバブルがはじけ、平成2年(1990年)から深刻な不況に突入したわけです。ですから、平成の不況は土地バブルの崩壊のせいという認識が強く、円高のせいという理解は当初ありませんでした。円は強くて当たり前と思う人も多かったようです。

 しかし現実、2倍に切りあがった円では、日本企業は採算が取れません。そしてコストカットの時代に入るのです。
 コストカットの時代はその後も長く続いたわけですが、よく見れば、2000年から2002で強引なコストカットはほぼ終了、その後は地道なコスト削減を続けながら、多少は利益も出るという「いざなぎ越え」(統計上は好況だが、実感は不況)に入ります。

 「いざなぎ越え」の中では景気が回復しているという人はほとんどいませんでしたが、統計数字を見れば、利益率は改善、有効求人倍率も徐々に高まり、1997~8年ごろからは、日米の話し合いで$1=¥130にもなり、就職氷河期もいよいよ解消かという状態でした。

 平成不況で典型的な非正規雇用者の増加の動きを見ますと、平成元年に19.1%だった非正規労働者は平成18年に33%に載せましたが、その後比率は伸びず、平成22年にも33.7%です。

 平成20年(2008年)にはリーマンショックが起き世界で金融恐慌が懸念されましたが、当初日本には影響は少ないなどと言われ、比較的軽く済むとの見方もあって、企業もそれまでの「努力の成果にある程度の自信を持っていた」のではないでしょうか。

  非正規比率がさらに40%に向けて増え始めたのは2010~11年からで、その、今日まで、ほぼ増え続けています。
 以上がバブル崩壊から、「いざなぎ越え」までの素描ですが、何か、この時までは、日本の企業・経営者は、大幅円高も、バブル崩壊も、自力で克服したという自信を持っていたように感じています。

フェイスブックの時価総額13兆円減

2018年07月28日 12時31分58秒 | 経営
フェイスブックの時価総額13兆円減
 昨日、今日の経済ニュースの中では、フェイスブックの時価総額が13兆円も減少になったというのは極めて大きいニュースという事でしょう。

 株価が19%下落したのですから、時価総額も19%下落する事になるのは当然ですが、株価下落というよりも、時価総額の減少といったほうが、確かに、昨日まであった巨額のカネが、一朝にして無くなってしまったという感じが強く出ます。

 企業を評価する指標として、時価総額という指標が言われるようになってもうかなりになりますが、伝統的な企業評価の指標としては、時価総額で企業の価値を測るという方式は、かなり新しいものという感じです。

 時価総額が企業の価値を示す指標としてもてはやされるようになったことにはそれなりの理由があるように思います。
 企業の役割が、財やサービスの生産活動をし、実体経済を豊かにして(GDPを増やして)社会に貢献するという事が主要なものだという認識だった時代には、売上高や付加価値、生産性や主要な利益率などが企業の実力を評価する指標として使われるのが普通でした。

 しかし、財やサービスを生産するのではなくても、カネでカネを儲けるというマネーゲームが経済活動の大きな部分を占めるようになると、次第に インカムゲインとキャピタルゲインを区別しなくなり、何で稼いでも懐に入れば同じカネ、という感覚になって、「現在現金になるものが最も大事」といった風潮が強まり。それなら「時価総額が最も適切」といった感じになったのでしょう。

 しかし、株価というのは人気や思惑で動きます。本当にその企業が収益性や発展性があり、それが評価されているという部分がベースで、それに人気や思惑の部分がプラスになったりマイナスになったりして形成されているのです。
良い会社だけど株価は安いですねという場合も、中身は良く解りませんが株は高いですねという場合もあります。

 そういう意味では時価総額というのはいわば実力部分とバブル部分を総合計したものでしょう。バブルの部分は何時消えるか、あるいはマイナスに変化するか解りません。それでもマネーゲーマーにはその乱高下がビジネスチャンスなのです。

 1991年日本のバブルが崩壊した時、「あんなにおカネがあったのに、あのおカネは何処へ行ったんだ」などといった議論がありましたが、「評価」というものにはそういう部分が必ずあります。それでも残るのは実体経済(GDP)、経営実態(生産性)で、これが本当の経済や企業の価値なのです。

 実体経済学とマネー経済学が混在する世の中ですが、経済分析や、経営分析をするためには、この両者の影響を的確に見分けていくことが大事なのかもしれません。

消費増税と経済成長の両立の知恵を

2018年07月27日 10時52分17秒 | 政治
消費増税と経済成長の両立の知恵を
 多くの人が「消費税を増税すると景気が悪くなる」と考えているようです。政治家は特にその考えが強く、特に与党になると消費増税をして選挙に負けては大変ですから「何とか消費増税は避けて通りたい」と思うようです。

 安倍さんもそう考えているようで、2016年には「2017年4月からの消費増税は2年半延期します」と言ったうえで、「ただし国民の意見を聞いて決定します」そして「7月の参院選で国民の皆様の意見を聞きます」という説明だったと思います。

 消費増税は国民の懐には痛いし、景気が悪くなるのは嫌ですから「延期してほしい」という意思表示をするためには自民党を勝たせようという事になります。
 そのうえ、安倍さんは「延期しても、財政再建には影響ありません」と言っています。
 しかし現実には、2020年のプライマリー・バランス達成を反故にしたことはご承知
の通りです。

 しかし、もし国民が、「消費増税をした方が、財政も健全になり、経済政策も取り易くなり、格差社会化の歯止めにもなり、経済・社会は安定し、ひいては景気にも好影響がある」と理解するようになれば、結果は全く違うでしょう。

 という事で、「消費増税は、国民生活や景気にプラスかマイナスか」を、政府は「丁寧に、真摯に」国民に説明しなければなりませんし、それは政府の義務ですが、マイナス・イメージが一般的だから、それをうまく利用して、選挙に利用したりするという事になるのが現実のようです。

 消費増税をマクロ経済の見地から見れば、現状では一般的には、景気には中立で、長い目で見れば、経済にはプラスというのが真実に近いのだろうと思います。
 
 具体的に考えますと、消費増税で政府の収入が10兆円増えたとします。支払うのは家計ですから、家計に購買力は10兆円減ります。
 しかし、政府は「消費増税分は全て社会保障費に充てます」と言っていますから、国民の社会保障費の負担は10兆円減ることになります。
 違いは国民が直接使うか、国民は政府に払って、政府が使うかだけです。

 社会保障費の場合は、所得の多い所帯より少ない所帯の方に手厚くなりますから、格差是正の効果があり、社会はより安定します。
 という事で、ヨーロッパ、特に北欧諸国などは豊かで快適な社会を作ってきたのですが、日本で問題になるのは、全額社会保障に使ってもらえるかどうかといった「 政府の信用」の問題があるという事でしょうか。

 モリ・カケの様な事が起こると、国民は、こういうのは氷山の一角で、消費税は払ったけれど、時の政府の都合で、勝手に使われ、きちんと家計に還元されていないのではないかと疑心暗鬼になります。それなら私も消費税増税反対となるでしょう。

 来年秋は消費増税をすることになっていますが、それまでに、この辺りの事をしっかり説明してもらわないと相変わらず間違った政策が続くことになり、結果も間違ったものになるという事になります。

 蛇足ですが、消費税増税前には駆け込み需要があり、上がった直後は消費が減ります。然しこれも均してみれば、傾向線に沿ったものですし、政府がきちんと家計に還元してくれることが解っていれば、こうした変動も少なく刈るでしょう。

 こうしたことは、国民と政府のきめ細かい対話があって成立することで、虚偽の説明や改竄、記録破棄、記憶にないなどと言って、国民への説明責任を果たさず、その上で、国民からの不振を逆手にとって「消費増税を延期します」と言って国民を喜ばそうとするようでは、国民の不信はますます強まるばかりでしょう。
 消費増税来年10月。あと1年の間に政府はきちんと説明できるでしょうか。

人口減少と日本経済、視点を変えよう

2018年07月25日 15時07分50秒 | 経済
人口減少と日本経済、視点を変えよう
 これから日本の人口は減少していく。人口減少が続く国の経済は低迷するもの、当然これからもの日本経済は、人口減少に制約されて成長は難しくなるというのが多くの専門家の解説です。
 
 人口減少の予測(社会保障・人口問題研究所)を見ますと日本の人口は現在(2015年)の1.27億人から50年後の2065年には、0.88億人(69%)になってしまう(中位推計)という事で、「3割も人口が減るのに、経済成長しろといったって無理だよ」というようなことになるのでしょう。

 しかし、そんなことは全くないのです。大体豊かさというものは一人当たりの問題で、ヨーロッパの主要国は人口は大体何千万人といった規模ですが、日本より豊かで、社会保障も行き届いた国は沢山あります。

 地球は有限です。国土を拡大しなけれ、ばとか人口が増えなければ、というのは「量」の時代の考え方で、今は「質」の時代なのです。
 それによく考えてみれば、50年間に人口が3割減るというのは平均的には1年に人口が、0.993%になる、つまり0.007%減るだけということです。

 日本経済は、政府経済見通しによれば今年度1.8%の実質経済成長ですが、人口が減ると1人当たりではその分豊かさが増えるという事にもなります。
 いまの日本経済は、将来不安による消費不振で毎年低成長に甘んじていますが、日本経済の将来見通しが明るくなれば、2~3%の成長は十分可能でしょう。
 人口減少を越えて、プラスの経済成長を達成するのが当たり前にもなれるでしょう。

 人口減少、少子高齢化、社会保障負担増で先行き真っ暗というのが政府の見方のようで、だから『1億層活躍プラン』だといっているようですが、政府がそんなことを言わなくても、日本人は精一杯活躍しています。

高齢者の就業率は先進国の中では抜群に高いですし、すでに人口は2010年をピークに減りはじめ、高齢化はますます深刻と言われますが、「労働力調査」で見ますと、労働力人口は、2010年の6298万人から2017年には6530万人に232万人、3.7%も増加しています。

 経済活動が活発になり、元気な高齢者が増えれば、労働力率の高まりで、人口減少の就業人口への影響は、より軽減されるでしょう。
 要は高齢者を含めて、人々がより豊かで快適な生活を、好みのワークライフ・バランスの中で楽しめればよいわけで、そのためには、その時点、時点のGDPの国民の将来不安を消し去るような配分が実現されればいいのです。日本は世界でも豊かな国ですからそれは可能でしょう。

 残念ながら、この所はどうやら格差社会化が進みつつあることで、また、高齢化の中で財政は大幅赤字のまま、増税は選挙にマイナスと放置、財政政策が取れないので金融政策任せで、何時まで続くゼロ金利、これでは折角の貯金もゼロ金利で生きてきません。

 インフラの劣化、自然災害の増加のなかで、何故かギャンブル産業重視、国民には副業、兼業、二重就業で稼げというのでは、国民の将来不安は消えません。

 折角の経済成長、豊かさの増加を、より多くの国民が望むように配分することで、将来不安の払拭が出来れば、日本経済も日本社会ももっと良くなるはずです。人心も明るく前向きになるでしょう。政府への信頼も上がりましょう。
 今は何か迷路にはまり込んでいるように思います。

アメリカの将来を憂う

2018年07月24日 13時21分20秒 | 国際関係
アメリカの将来を憂う
  国連を含め、世界のより良い明日を目指して、かつてのアメリカ主導で作られた多くの組織を蔑ろにし、自らの思い込みだけに忠実に行動しているように見えるのが、現在のトランプさんのアメリカです。

 国連決議については、自分に都合のいいもの(北朝鮮制裁)は世界中に遵守を強制し、自分に都合悪いもの(エルサレム問題)は無視するといったことが罷り通るものでしょうか。
 国連組織の良心ともいうべきユネスコから脱退、GATT以来の歴史をもつWTOについては脱退や解体をほのめかすなど、その他パリ協定、TPPなどより良い明日へ向けての多国間協定の場は性に合わぬと二国間のディールに走るアメリカです。

 前回触れました強いドルを堅持するG20でのムニューシンさんの意見と、ドル安が貿易赤字削減に有利とするトランプさんのツイッターの食い違い、金融システムの正常化を目指すFRBの金利引き上げ政策にドル高につながり迷惑とツイートするトランプさん。

 プーチンさんとサシで会談し、ロシア疑惑などはなかったと2人の意見が一致しても、多くの状況証拠から一斉に問題視するアメリカのマスコミ、今後もこうした状況が続き、さらにエスカレートするようなことになれば、アメリカは一体どうなるのでしょうか、というより世界は一体どう行動すればいいのでしょうかという問題が、早晩深刻化する事になるのではないでしょうか。

 トランプさんは「2国間交渉に持ち込めば、アメリカの力で何とでもなる」とお考えかもしれませんが、「はいはい」と言う事を聞くのは日本ぐらいで、 日本の失敗の歴史をつぶさに見ている中国などは、礼儀正しくきっちり対抗するでしょう。

 もともと第二次大戦の戦勝国をリードして国連を組織したのも、ブレトンウッズ体制、GATT、IMF体制を主導したのもアメリカです。

 しかし覇権国としてカネを使い過ぎ、赤字国に転落し、 ブレトンウッズ体制のベースであった固定相場制を放擲、変動相場制にし、その後ドル切り下げ、マネー資本主義、金融工学で資金繰りをつけて来たものの、サブプライム・リーマンショックで挫折、今度は貿易戦争と古代に戻るようなことになってしまったという事でしょうか。

 さらに使っているメディアはツイッター、46時中、勝手に発信できますが、あんな短文で、他人の理解を得るのは 常人の表現力では不可能です。詰まる所は悪口雑言や脅しの類になって、互いに傷つけ合い、社会・世界の混乱の源を作るのではないでしょうか。

 アメリカが100%変わってしまったとは思っていませんが、何らかの形で、早くアメリカの良心を取り戻して世界に見せてほしいと思うばかりです。

ブエノスアイレスG20とアメリカ

2018年07月23日 22時58分24秒 | 国際経済
ブエノスアイレスG20とアメリカ
 ブエノスアイレスG20 は 、スムーズに共同声明を発表し、昨日2日間の会議を終えましたが、これで、この所のアメリカが仕掛ける貿易戦争がどうなるというようなものではなかったようです。

 共同声明では最初の部分で、「世界経済は引き続き強固で、失業率も低いが、短・中期の下方リスクは増大している」と淡々と書いています。
 そしてその理由には、解りにくい表現で、金融や貿易、地政学上の問題などで国際的な不均衡が増大し、特に複数の先進国で「構造的に弱い成長」が含まれるから、十分監視していかなければならないといっています。
 
 また、昨年7月のハンブルグ・サミットの貿易に関する首脳の合意を再確認し、リスクを緩和し信任を高めるための対話や行動の必要性を認識、経済に対する貿易の貢献の強化に取り組む、といっていますが、従前のように、単刀直入に自由貿易の推進といわず何か持って回った表現なのが気になります。

 ムニューシンさんは、アメリカの従来の姿勢である「強いドル」を肯定したようですが、トランプさんは相変わらずドル安をお好みのようで、勝手にツイートし、影響で円は一時、110円台になって、日経平均は300円超の下落をしたりというのが現実で、覇権国首脳の口先介入は「為替操作」ではないのかなんて言われたりしているようです。

 ブルームバーグは、「ムニューシンさんの発言で貿易戦争のリスク懸念が後退」と成果を主張していますが、まだまだ、どこで何時飛び出すか解らないトランプさんにツイートを懸念する人の方が多いのではないでしょうか。

 このブログでも一貫して指摘していますように、トランプさんは選挙公約の時から貿易赤字の削減を指向しており、そのためには為替戦争も辞さず、アメリカにカネが流入することならなんでも歓迎というお気持ちのようです。

 そのためにアメリカの産業の国際競争力を強くしてといった迂遠な発想はお持ちでないようで、輸入品に関税をかけるか、手っ取り早くドル安にするかといった方法論が先行するようです。

 それに対して、機転の利く中国が先回りして人民元安に動いたことは、またトランプさんを刺激したようです。
 矢張りトランプ政策というのは、経済の本質に関わるような行動を主体に置くのではなく、将来どうなるかは別として、ごく短期的に辻褄を合わせる「近視眼的」政策のために覇権国の力を利用するといった思考回路が中心のようです。

 今回のG20にもどこかその影が落ちていて、共同声明も「そのものズバリ」の表現が消えているのでしょうか。
 そんなことを繰り返していても、長い目で見れば、アメリカ自身が弱体化し損するのでしょうが、その辺り、トランプさんの頭の中ではどんな回路がどう繋がっているのかどうにも解りません。

 世界が迷惑し、特に日本は関税と円高のダブルパンチを受けそうな困った事態が進んでいきそうです。
 安倍さんは3選されたら、何はともあれ憲法改正で、経済の行方にも財政赤字の問題にも、あまり関心をお持ちでないようで、心配です。

この通常国会は何だったのか

2018年07月22日 11時25分58秒 | 政治
この通常国会は何だったのか
 20日、週末土日を前にして、通常国会は、カジノ法案の参議院での強行採決で掉尾を飾り(?)、実質的に閉幕しました。

 多くの国民が(世論調査では国民の7割ほどのようでした)反対する中で、数を頼んでの強行採決で、本来非合法である「賭博」を政府の権限で特定の業者にのみ合法化するという、まさに日本文化への冒涜をやってのけ、与党は、これで重要法案はみんな通ったとの勝鬨をあ挙げての閉幕のように見えました。

 折しも西日本豪雨で、200人を超える方が亡くなり、これまでの主要なインフラでは、気候変動による自然災害には対抗できないことが明らかになってきました。
それなのに、国民の生命・財産を守る政策の検討などはそっちのけ、被災地の人達との握手で安易に代替、首相も国土交通大臣も、カジノの方が重要と判断し、自公維新は一人の反対もなくそれに従ったようです。

 今国会は、先ず、働き方改革国会といわれました。しかし中身は日本の文化社会的背景には大変不具合な「欧米流の働き方」を導入しようというものでした。
 その次に突如として起こったが、参議院の6増、そして締めくくりは カジノです。

 しかし最も時間を取ったのは所謂モリカケ疑惑でしょう。国会審議では公文書改竄も含め新しい疑問が続出ですが、国民が納得する丁寧・真摯な回答はありませんでした。
 安倍総理の名を騙って嘘を言い大学まで作ってしまっても安倍さんはなぜか当たり前の顔。国民の疑念は深まるばかり、この記憶は75日では消えないでしょう。

 働き方改革は、労働時間短縮が主目的かと思いきや、例外づくりに与党は狂奔、果ては副業・兼業・二重就業推進に至ります。人事賃金制度は欧米流をお手本にしていますが、日本では、欧米流は企業、働く人に迷惑で、現実には使われないでしょう。

 財政のプラマリー・バランスの達成も見込めない中で、身を切る改革は口先だけ、 参院6増も押し通しました。

 カジノは、与党の縛りの中で賛成した議員の中にも、本心は「 やっぱり良くない」とお思いの方も多いのではないでしょうか。

 そして、これらの法案は全て強行採決で成立したものです。つまり、偶々選挙で勝てば、あとは何でもできるという民主主義の理念を冒涜する政治手法でしょう。

 今国会は、はしなくも、絶対多数と強権政治を合わせれば、民主主義は壊滅することを示しました。まさかこの勢いで、ヒトラーの様に独裁政権を確立しようというのではないでしょうが、争いを好まず本来穏健な日本人の権力に対する従順さ(長いものには巻かれろ)、他人の気持ちを大事にする「忖度」という意識構造を悪用し、日本の社会文化の水準を相当に貶めたようです。

 最近いろいろな所で、聞くだけでも嫌悪感を感じるような「言い逃れに終始する」発言が多くなっているように感じている人は少なくないのではないでしょうか。

消費者物価は超安定、経済政策に生かせ

2018年07月20日 16時54分34秒 | 経済
消費者物価は超安定、経済政策に生かせ
 6月の消費者物価が発表になりました。マスコミ報道では、0.8%上昇で18か月連続上昇を強調、物価上昇が1年半も続いている(この数字は生鮮食品を除く総合指数の対前年同月上昇率です)という点に力点を置いているようです。

 確かに消費者物価はほぼコンスタントに上昇を続けています。しかし、未曽有の求人難といわれるほど経済は活況を呈しながら、上がったといっても、インフレ率が年率0.8%と1%に満たない上昇で推移しているというのは、歴史的に見ても消費者物価は超安定というのが現実ではないでしょうか。

 アメリカのFRB(中央銀行)がなぜ物価が上がらないのか解らないといい、日銀は2%のインフレ目標を結局放棄しましたし、まともな経済状態を維持している国々ではインフレの様相はなく、その中でも日本は最も物価の安定している国になっています。

 しかし、経済運営の衝に当たる人たちは矢張り多少のインフレの方が経済運勢がしやすいという事でしょう。FRBも2%インフレ目標を置き、日銀もそれに倣いました。
 アメリカは何とか2%を超えてきました。しかしインフレ嫌いのドイツは1%は越えましたが2%には届きませんし、日本は1%にも届きません。

 財政不如意の政府は借金が多いですからインフレを好むでしょうが、高齢者が増加中、つまり年金生活者が増えていく日本などでは、物価はあまり上がらない方が国民(生活者)にとってはありがたいというのが本音でしょう。

 であってみれば、このインフレの進行しない(消費者物価が上がらない)状態を好機と捉え、かつて言われた「数量景気」、つまり物価は上がらず、財やサービスの生産量が増えて実体経済が活況を呈するという最も健全な状態の成長を求めるのが、今日の情勢に適した経済政策ではないかという発想があっても良いのではないでしょうか。

 現状を、グラフでじっくり見てみましょう。

 ちょっと見にくくて申し訳ありませんが、指摘したかったのは、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」の数字が極めて安定しているという事です。
 生鮮食品は天候などによって乱高下します。エネルギーは海外の市場価格の変動の結果ですから、国内では対抗手段はありません。日本経済として物価安定を維持出来るのは、それらを除いた一番下の数字です。

 この数字は驚くほどの安定ぶりです。消費者・生活者にとっては有難いことです。インフレによって生活に悪影響がないという事は、本当は安心して消費生活を送れるという事でしょう。
 それなのに、今、消費者は、貯蓄に励み、消費を控えるばかりです。これはこのブログで指摘してきていますように、政府の煽る将来不安と、ゼロ金利で貯蓄が利息を生まないという金融政策によるところが大きいのでしょう。

 今の政策を続けても、どうにも明るい未来は見えてきません。アベノミクスは竜頭蛇尾でした。最後はカジノに行き着いて何をしようというのでしょうか。
 国民の不安を払拭できる政策が、今こそ必要で、それは物価の安定を前提に可能になるはずです。
 今の日本には、新しい発想の経済政策が必要なのです。

安倍さんの公約「賃上げで減税」はどうなっているのか

2018年07月19日 13時07分38秒 | 労働
安倍さんの公約「賃上げで減税」はどうなっているのか
 本来は労使に任せて、政府が介入すべきでない賃上げに、過剰な介入を続けている安倍さんですが、2018春闘ではとうとう「3%以上賃上げをした企業には減税する」という世界にも類例を見ない迷案を考えました。

 結果的に安倍さんの思惑は全く外れたようで、賃上げ率は、経団連調査(大企業中心)で2.54%(昨年2.34%)連合調査で、2.07%(昨年1.98%:調査対象企業異動あり)という事で、確かに前年より高まりましたが、昨年度が未曽有の好況だった事を考えれば、安倍迷案の効果ではなく、経済状況によるものと考えるのが自然でしょう。

 このブログでも、3%賃上げという数字は「いかにして計算すれば合理的か」という問題は 実は大変ですよ」と書いたつもりですが、昨年末の是正改革大綱廼閣議決定を見ますと、
「平均給与等支給額からから比較平均給与等支給額を控除した金額の比較平均給与等支給額に対する割合が3%以上であること」と書いてあるだけです。

これでは「昨年の給与支給額(残業代・ボーナス等含む)の従業員(非正規含む)1人当たりに比べて、今年のそれが3%以上増えたら」減税の対象になるという事です(日雇い関連は除く)。

 法律ですから、こんなところになるのは自然かもしれませんが、これでほんとうに安倍さんの言う3%以上賃上げをした企業に「ご褒美」という事になるのでしょうか。
 これはでは給与の計算は全て1人当たりですから労働時間は関係ありません。

 この制度は「生産性向上のための税制」と銘打っていますが、生産性向上で残業時間が短縮され、残業代が減ったので、その分すべてを賃上げに回した、賃上げは3%以上になったが、残業代が減ったので、平均給与支給額は上がらなかったといった場合はどうでしょうか。

この場合は、生産性向上分は、従業員の労働時間短縮に配分され、賃上げに配分されていません。賃金は上がっていませんが、生産性向上が目的なら、まさに評価されるべき状況です。しかし法人税減税という恩典はないでしょう。
 
 そのほか企業内の雇用の新陳代謝(高齢者退職、新人採用)や、パートの労働時間を延長したら給与の支給が増えたとか、いろいろ問題になるケースはあるでしょう。
 こういう事を「法律」でやろうとすれば、問題が全くないようにすることは不可能でしょう。
 矢張り基本は労使に任せ、それぞれの労使が状況に応じた納得した交渉結果が、進むべき方向に動くように、政府は「大きな経済政策」を考えるのがいいのでしょう。
 
 すでに条件が使いにくいとか、厳しすぎる、手間暇がかかりすぎるといといった苦情は種々あるようです。
 政府が実態を知らずに余計なことをやると、不公平が拡大するだけのような気がします。

異常な低反応、米ロ首脳会談

2018年07月17日 23時02分43秒 | 国際政治
異常な低反応、米ロ首脳会談
 新冷戦時代ともいわれるような状況の中で、アメリカ、ロシアのトップが、国際会議の場を利用してといったものではなく、わざわざ場所を選んで「さし」で話し合うのです。
 本来なら、さぞかし、世界中のマスコミが、色めき立って取材、報道合戦を繰り広げるところでしょうが、今日は何と静かなことでしょう。

 先日の米朝トップ会談でさえ、あそこまで賑やかに取り上げたのですが、今日の日本のTVニュースは大方は西日本豪雨の被災地の報道でした。
 
 国際的なマネーマーケットや株式市場にも当然影響があるかと思っていましたが、それらの相場の解説でも、米ロ首脳会談の影響でといった解説は殆どありませんでした。

 確かに共同記者会見では、互いに尊敬しあい、核軍縮、核不拡散問題などでも意見は一致し、これから良い関係をという表現はありましたが、マスコミがほとんど通り一遍の報道に終始したというのは、こうした記者会見が具体的に何か重要な成果を生むと見ていないからという事でしょう。

 過日、経済問題で「 アメリカ・パッシング」と書きましたが、今回の米ロ会談もマスコミから殆ど「パッシング」状態だという事は、米ロのトップが会談しても、「世界の情勢は変わらない」と読んでしまっているからにほかなりません。

 アメリカのマスコミは、大きな問題として取り上げているようですが、それは、世界の将来などに関わる問題ではなく、単にトランプ大統領のロシア疑惑を両首脳が揃って打ち消したという問題についてのようです。
 マスコミが「フェイク・ニュース」を流しているのか、米ロ首脳が口裏を合わせて「嘘を言っている」のか・・、しかし、これは米ロ問題で、世界の将来とはあまり関係ないのでしょう。

 そんな意味では、今回の米ロ首脳会談は、残念ながら、世界の将来のために何かをもたらしてくれるようなものではなかったようです。

 世界の覇権国のリーダーがわざわざ新冷戦の相手国のリーダーと会談を行ったからといって、それに期待を持つといった時代ではなくなっているのでしょうか、それとも、偶々リーダーたちがそのような人たちだったからという事なのでしょうか。

自画自讃をする人

2018年07月15日 15時07分54秒 | 国際政治
自画自讃をする人
 「自分で描いた画に、これはいいと自分で讃をする」のが「自画自讃」でしょう、手前味噌、独りよがり・・・。いずれにしてもこれは誉め言葉ではありません。
 だれも褒めてくれないから、仕方なく自分で褒めるというのかもしれませんが、日本人の感覚では「品がない」という事になっています。

 ところでこの所、自画自讃が目立つのがトランプさんの言動です。 (日本にも そのような人が1人おられるようですが)
 この間の米朝首脳会談で、私でなければ戦争になっていたと自讃したようでした。
 米朝首脳会談の成果についての評価は、その影響を受ける多くの国の人々の総意の中で時間をかけて定まってくるもので、当事者が決めるものではないでしょう。

 今回のNATO加盟国の分担金増額交渉でも、トランプさんは大成功と自讃しておられるようですが、アメリカにとって支出の減ることをもって大成功というのは、世界の覇権国のリーダーとして言うべき事かどうか、疑問を感じる人は多のではないでしょうか。

 もともとNATOはヨーロッパがソ連邦と対抗するための組織としての意義がその中心で、ベルリンの壁崩壊後、その意義は変わるかと思われましたが、最近の新冷戦模様の中では、アメリカもコミットせざるを得ないのでしょう。

 しかしヨーロッパでも、より望ましいロシアとの関係の模索はあるでしょうし、ヨーロッパが分担金を増やせば、アメリカもコミットするという事で、地球社会の安定や平和、進歩発展に叶ったものかどうか、それは疑問でしょう。

 いずれにしても、自分の努力した結果は、世間様が、あるいは歴史が判断してくれる。世間様や歴史に、「良いことしてくれた」と評価されるように、自分は努力するだけ、というのが、洋の東西を問わず、人間の行動の基本原理でしょう。

 トランプさんの場合は、明日、ヘルシンキでプーチンさんと米ロ首脳会談となっています。NATOの分担金交渉をして、今度はプーチンさんとの「ディール」に入るわけです。
 さて、どんなウルトラCの技が披露されるのか、世界が一斉に注目していることでしょう。
 
 勿論、tnlaboも真剣に注目ですが、本来、世界を動かすトップ会談ですから、今回は自画自讃で済ませるような事でなく、世界が唸るような素晴らしい、真に地球市民の将来に大きく貢献するような、質の高い内容の会談を期待したいものです。

カジノ法案強行の背景は何なのでしょう

2018年07月13日 16時56分02秒 | 政治
カジノ法案強行の背景は何なのでしょう
 安倍政権がカジノ法案に賭ける様相は異常ではないでしょうか。
 今回の西日本豪雨は豪雨という範囲を逸脱したような凄さです。TV画面を見る限り、東日本大震災の津波のシーンを思いだすような急激な増水、その流れのすさまじさ、異常気象もここまで来るのかといった恐ろしさを感じます。

 被災地の方が、単に豪雨という言葉で、ここまで災害が起きるのかと、そのすさまじさを述懐されていませいたが、死者、行方不明者が200人を超えるといった巨大な災害に、結果的になってしまったのです。

 恐ろしいのは、こうした異常気象による自然災害が、今後も起こる可能性が高まるような、年々の異常気象化の進行です。
 縄文以来、自然災害はあるが、自然は豊かで住みやすい日本列島と、われわれ日本人に思われてきたこの地が、こうした災害に頻繁に見舞われるようになるとすれば、改めて、それに対応する「日本列島改造計画」が必要になると考えられる事態なのではないでしょうか。これには巨大な財政支出、膨大な国民の負担が必要になるでしょう。

 こうした状況の中で、安倍政権は何ゆえに強硬採決までして「 カジノ法案」を通そうというのでしょうか。
 国民のために政府があるはずですが、今の政権は、国民にとって何が重要なのか解っているのでしょうか。

 「安倍さんが、先ず3か所のIRを造ると言っているのは、カジノをやりたいというお友達が3人いるから」などといった他愛のないジョークがありましたが、今、消息通といわれる人達の意見では、カジノ固執の背景にはアメリカの意向があって、日本のカジノの胴元を狙っているのは、アメリカのその筋のプロだなどといわれています。

 安倍政権の力の入れ方では、早晩日本にカジノを中心にしたIR施設が誕生することになりそうですが、その時カジノを経営するのはどういう筋の人たちなのでしょうか。

 金欠のアメリカが日本の巨大な貯蓄を狙っているというのは以前から言われていることですが、サブプライムローンを証券化し、AAAのランク付けをし、日本の金融機関からもカネを集めて、結果は多くの銀行のB/Sや個人の投信などに大穴を開けるという事をやってきたアメリカです。

 いまはNATOの分担金引き上げを欧州諸国に要請していますが、基本的に「あそこにはカネがあるから」というのがトランプさんの口癖のようです。

 こんな話をいろいろ聞いていますと、この大災害の後片付けも進まない中で、災害見舞はしたけれど、200人に達するかもしれない犠牲者の喪に服するのでもなく、あとはカジノ法案を、強引に通すという何かちぐはぐな姿勢、巨大災害への心痛とカジノㇸの異常な願望の心理的距離の遠さに何か違和感を持つ人は少なくないのではないでしょうか。

平成という時代:逆境の30年から何を学んだのか

2018年07月12日 13時09分50秒 | 経済
平成という時代:逆境の30年から何を学んだのか
 昭和は敗戦を2度経験したという見方があるようです。1つは、1945年、富国強兵、軍国主義に走った日本としての敗戦、もう1つは平和憲法を掲げ、経済発展に国の活路を求めた経済立国における敗戦、経済政策上の敗戦というわけです。

 経済政策上の敗戦とは1985年、当時のG5で、いわゆる「 プラザ合意」を受け入れたことによります。
このブログではずっと指摘してきていますが、プラザ合意で円高を容認した結果その後2年で円の価値は2倍になり、日本は世界一物価も賃金も高い国になり、その後のリーマンショックもあり、その経済敗戦を克服するのに2014年までかかりました。

 平成30年のうち、最初の1年半ほどバブルの宴の最終章でしたが、それからのほとんどは、円高によるデフレ不況にいかに対応するかという苦難の時期でした。経済を担う企業は年々減少する売上や利益に人件費を中心にしたコストカットで対抗しました。

その結果、企業活動も家計も消費も縮小、ジャパンアズナンバーワンと言われ、500兆円を超えていたGDPは一時470兆円にまで縮小しました。人件費を中心にコストを縮小する縮小均衡で、経済バランスを回復する努力を重ねたのです。

 ある意味では日本は真面目にやり過ぎました。今のアメリカは覇権国の力で、自由貿易や国際協力を見捨てても、当面自国に有利な政策を押し通そうとしています。
 中国は、度重なる 人民元切り上げ要求をはねのけ、アメリカの関税引き上げには、対抗する関税引き上げで中国経済を守ろうとしています。

 日本は海外からの要求は素直に受け入れ、自らの骨身を削って真面目過ぎるような努力を続けたのです。
 しかしリーマンショック後円レートは$1=¥80を割り、そうした努力も限界が来ました。日本はアメリカに真似て、金融政策(ゼロ金利政策)を円安政策として活用し、円レートをリーマンショック以前($1=¥120)に戻しました。

 平成の時代を通じで、日本は、プラザ合意受け入れの結果の円高に対しては、自らの骨身を削って真面目に対応し、リーマンショックによる円高に対しては5年余の地獄の苦しみの後、 ゼロ金利政策で円安を実現するという、マネーゲーム時代の便法で乗り切ることになったのです。

 この円安実現は、アベノミクスの第一の矢でした。しかし政策そのものが、国際投機資本に働き掛けるという手段だったこともあり、その後の日本経済は、丁度平成の最後の6年ほどになるのですが、国際投機資本の思惑のまにまに、不安定な状況という事になったようです。

 円レートは、何とかまともな水準に戻りましたが、さて、そこで日本経済は何をすべきかという点で、中身が詰められていなかったのでしょう。
 エレクトロニクスやネット時代の先端分野では韓国や中国に後れを取るようになり、産業の基礎分野では日本の強みが生きる分野はありますが、何か「さえない」雰囲気があります。

 平成もあと1年を切りました。どうもこの何か本来の日本らしくない状況のまま、次の年号の時代に入って行ってしまうような気配です。
 昭和が、最後の時期に経済敗戦で苦しい平成時代を生んでしまったように、この、何か中途半端なままで次の年号にさえない状態を引き継ぐことは大変残念に思うところです。

異常な豪雨は、今後常態化する様相

2018年07月10日 11時28分24秒 | 環境
異常な豪雨は、今後常態化する様相
 西日本大水害には、お見舞いの気持ちを表す言葉もありません。月並みですが、心からのお見舞いとお悔やみを申し上げます。

 世界中で、豪雨、異常旱魃など、異常気象が激しくなっているようですが、世界が協力して対応策を考えようというパリ協定から、世界のリーダー、覇権国であるアメリカが離脱すなど、国際関係も異常になっています。世界も日本も問題ばかりです。

 極東のモンスーン地帯に位置し、美しい四季を愛でてきた日本ですが、この所、自然は必ずしも優しくなくなってきています。
 例えて言えば、主要都市の下水道は1時間50㎜迄の雨を想定しているとのことですが、最近では1時間100㎜という気象庁の発表を頻繁に聞くようになった気がしています。

 「台風直撃ではないので、まさかこんなことになるとは予想していなかった」という被災の方の言葉がありましたが、線状降水帯などという聞き馴れない言葉が解説され、同じ所に長時間豪雨が続く状態が多くなったようです。
 河川、橋梁から、道路、鉄道、さらには住宅地の配置まで、従来の常識では対応できないような現実を見せつけられるのが現実です。

 南海トラフなどに関わる地震の問題はつとに取り上げられていますが、いつ来るか解らない地震と違い、豪雨の問題は毎年起きている様な気がします。

 恐らく、従来の常識の範囲を超える総合的社会インフラの整備が既に必要になっているのはないでしょうか。
 早急な整備が必要とされる強固な社会インフラが、現実にはなかなか進まず、災害の激化につながる面もあるのでしょう。

 確か安倍政権は以前、インフラの本格整備を政策の軸の一つに挙げていたと記憶します。しかし、現実は、財政赤字の累積で、財政のプライマリー・バランス回復の公約も遅れに遅れ、2025年の回復もこんなという試算が出ています。
 高齢化対策、子育て政策に追われて、インフラ迄はカネが回らないのでしょうか。

 国会は、安倍総理が「李下に冠を正した」ことからその言い訳に1年以上を費やし、インフラ整備などの本格論議は聞かれません。
 災害地見舞いも大事ですが、政府にはインフラ整備で災害に先手を打つ役割が要請されているのではないでしょうか。

 気候変動の影響に関わる本格的なインフラ整備には巨額なカネがかかるでしょう。政府は本気になって、国民と話し合い、日本経済と財政構造、インフラ整備のコスト負担をどうするかといった問題にも確り取り組んでいなければならなかったのです。

 新たな国土造りの必要は焦眉の問題ではないでしょうか。アベノミクスは何か変な方向に迷い込んでしまっているような気がしています。