tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

第二回米朝会談、結局は「ふりだし」に戻っただけか?

2019年02月28日 23時00分27秒 | 国際関係
第二回米朝会談、結局は「ふりだし」に戻っただけか?
 トランプさんの「きっと良い話し合いができる」「きっと良い結果が出る」などの言葉から、「何かが起こるのではないか」といった期待を持った人は多かったのではないかと思います。

 しかし、トランプさんのそうした発言は、単なる自己宣伝だったのかと落胆することになりました。会談は物別れ、問題は「ふりだし」に戻ったようです。
 事前に両国の担当者が綿密に調整をして、最後のトランプさんが出て行って、「事態はこんなに進展しました」と胸を張るという筋書きだったのではないでしょうか。

 外交交渉とは難しいものだと思いますが、考えてみれば、世界の安定を目指した米朝交渉とは言いながら、その実、トランプさんと金正恩さんの最大の関心事は、それぞれの個人的な事情にあるようだと考えれば、あまり難しく考えなくても、結論は見えていたようにも感じられるといった指摘もあながち見当違いではないようにも感じられます。

 金正恩さんは、「体制維持」と言いながら、本音は金王朝の存続、ご自身の身の安泰が最大の関心事でしょう。
 トランプさんは、来年の大統領選挙に勝つことが最大の関心事で、おまけがノーベル平和賞でしょうか。

 切実感から言えば、金正恩さんの方が深刻でしょう。核のボタンに象徴される絶対権力を維持できなくなれば、粛清、処刑、暗殺といった手段も使って(?)固めてきた現体制の崩壊は必至という予感は常に付きまとっているのではないでしょうか。
 独裁者、独裁国家というのは常にそうしたもののようです。

 トランプさんの方はアメリカの大統領という権威と名誉からの失墜をいかに避けるか、そのためにやり易いことは何か、「北朝鮮への経済制裁と金正恩を煽てること」(飴と鞭)で、北朝鮮の非核化実現の期待を維持できれば、これはまたとないチャンス、来年の大統領選挙をまたいでも(急がないと言っています)、その可能性を認めてもらえれば、再選に絶対有利と考えてもおかしくないと思います。

 多分こういうのを「下司の勘繰り」というのでしょう。
本当は、トランプさんは、北朝鮮の非核化を通じて世界の平和と安定に最大限の貢献をしようとしているのでしょうし、金正恩さんは、優れた国民を持ちながら、未だに貧しい北朝鮮を、ベトナムやシンガポールの様に早く豊な国にして国民を幸せにしようと思って真剣な努力を続けていると考えるべきなのでしょう。

 日本の拉致問題についても、トランプさんは懸命に金正恩さんに訴えてくれているでしょうし、金正恩さんも、古い時代の問題を何とか早く解決したいと内心思っているのでしょう。

 直接に「腹を割った」話が出来ないと疑心暗鬼や誤解ばかりになって本当に良くないですね。

トランプ方式の限界とアメリカ

2019年02月26日 23時24分03秒 | 国際関係
トランプ方式の限界とアメリカ
 米中問題が中国の態度軟化で余り荒立たないのではないかといった観測で、NYダウが上がったりしていますが、短期視点で動く株価は別として、行く先は容易でないようです。
 世界にとっても日本にとっても、アメリカは立派な国であって欲しいと思うのですが、トランプさんのアメリカは急激に堕ちつつあるように感じられます。

 中国との交渉を見ていますと、何か、アメリカが力でゴリ押しをし、中国の方が大人で、農産物輸入などアメリカに譲歩しながら、何とか事が穏便に納まるように考えていのではないかと感じすら受けます。

 もちろん中国は、共産党一党独裁の国で、まだ途上国部分も多く、国の運営は民主的とは程遠い国家権力優先のかたちですし、特に知的財産権などの問題では何10年か遅れているようなところもあります。
 しかし中央集権の力で、巨大な人口を背景に低廉な労働力と急速な技術の吸収を梃子に、世界の工場と言われる生産力を築き上げ、覇権獲得への積極的な動きを続けているのでしょう。

 一方アメリカは、最強の軍事力を背景に、巨大な農業部門と最先端の技術開発、基軸通貨国としての金融政策を駆使して対中貿易赤字解消を狙います。
ところがアメリカの現実を見れば、国民の買うものは、安価な労働量を利用して中国を始め海外で生産した製品を輸入品ですから、ラストベルトに象徴されるように製造業の現場は空洞化し、国内生産は輸入に切り替わり、貿易赤字問題が深刻化というのがまさに現状です。

 今アメリカのとっている対策は、累増する貿易赤字を減らすために、関税障壁を設け、相手国にアメリカの農産物や航空機、武器等を買わせ、時に強大な金融システムを使って、金融制裁を行い、他国の金融の自由度を奪って、何とか赤字を減らそうと些か見当違いの努力をしているように見えます。

 本当は、アメリカの高い賃金水準で自動車を作っても、生産性の高さと性能の良さで、中国や日本に十分対抗できる製品を作るのが貿易赤字削減策でしょう。アメリカ国内で原料、部品、最終製品というサプライチェーンの再建が必要なのです。
 モノづくりを外国に任せ、出来た品物を輸入して、それで貿易赤字が出ないようにするというのは本来不可能でしょう。

 アメリカが輸出できるのは、農産物、シェールガス・オイル、航空機(これも部品は殆ど日本製)程度、日本にはイージス・アショアや戦闘機を売りますが、中国には売らないでしょう。

関税を上げるという事は、国民が輸入品を高く買って、高い部分は政府の収入という事ですが、これは国民の負担を増し、国民生活を不自由にすることでしょう。
こんなこと長く続くことはあり得ないと思うのですが、いったいアメリカは何時までこんなことを続けていくつもりなのでしょうか。

リュウキンカ(立金花)、昨年より2週間早く

2019年02月24日 22時38分23秒 | 環境
リュウキンカ(立金花)、昨年より2週間早く



 先週からリュウキンカの花がちらほら見えていました。そういえば昨年「リュウキンカ咲く」と書いたなと思い出し、調べてみると3月11日でした。

 猫の額の我が家の庭で、春になると、真っ先に咲くのがリュウキンカで、深緑の艶のある葉に鮮やかな黄色の花が目立つので、気に入っているのです。

 昨年と同じような写真を載せても、芸がないと思いましたが、やっぱり写真を撮って載せることにしました。
 今年は、サクラの開花も早いと予想されていますが、我が家のリュウキンカはほぼ2週間早いようです。

 庭に降りてよく見ますと、12月に植えたチューリップの球根も続々と角(葦ではありませんが)を出し、釣鐘水仙の芽も伸びて来ていいます。
少し前まで随分寒い日もありましたが、急に暖かくなったのは矢張り地球温暖化でしょうか。今年の春は何か足早です。

 もう少し暖かくなると、 U字溝のメダカも顔を出すでしょう。植物も動物も動き出す春です。
 「年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず」と言いますが、総理大臣は同じですね。それで景気の方はどうでしょうか。

これも異常気象の影響でしょうか?:「野川」干上がる

2019年02月23日 23時49分49秒 | 環境
これも異常気象の影響でしょうか?:「野川」干上がる
 我が家の少し北側を「野川」という川が流れています。
 この川は国分寺駅の北口から5分ほどの日立中央研究所の中にある「大池」を源にして、JR中央線の下をくぐって国分寺崖線沿いに、田園調布の先で多摩川にそそぐ一級河川です。

 昭和30年代までは豪雨で氾濫するので「野川太郎」などと綽名がつけられましたが、40年代に下水道が完備してから氾濫はありません。
 もともと国分寺崖線の湧水(名水100選の国分寺「真姿の池」の湧水も合流)で下水道が完備してからは魚や貝も住み着き、現在は3面コンクリートですが、都では将来緑地化の計画を持っています。

 ところで問題はその野川の水が、こんなことは初めてですが、無くなってしまったのです。通りがかりに覗いてみましたら、コンクリートの水路は未だ湿ってはいますが、湿った水草の上に落ち葉やごみが風で飛んできています。

 水が減ったというのは聞いていましたが、まさか干上がるとは、愕然とすると同時に、大慌てに慌てることになりました。
 理由は、 我が家で育てているホタルの幼虫の餌であるカワニナの供給源は、ほかならぬ野川だからです。

 ホタルの幼虫は自家孵化のものと、新規購入のものとの混成ですが、これから暖かくなると、食欲旺盛になり、大きくなって、5月の連休頃から上陸して蛹になり6月には羽化するのです。

 「カワニナが全滅したらどうしよう」と慌てたわけです。
という事で、今日午前中に大急ぎで容器を持って、柵を乗り越えて川に降り、水のたまっているところ、湿った藻が絡んでいるところなどからカワニナを拾い出し、150ほど集めて、家の水槽に入れ、水槽の縁に這い上って来るのを見てほっとしたところです。

 それにしても、昭和30年代にここに住み着いてから、こんなことは初めてで、これも異常気象の影響か、こんな状態が続いたら、これは大変とカワニナやホタルに成り代わって心配しているところです。

国会での「毎月勤労統計」論議の不毛

2019年02月22日 21時25分27秒 | 政治
国会での「毎月勤労統計」論議の不毛
 今国会で、毎月勤労統計の問題が、こんな形で、やり取りの繰り返しになるとは思ってもいませんでした。

 どうも野党側は、政府が賃上げ率が高く出るように統計を歪めて使うようにしたのではないかといった形で、政府を攻撃しているように見えますが、まさか一国の運営を担う政府が、嘗ての大本営発表の真似をするところまで堕ちてはいないと思っています。

 今問題になっている、サンプリングのやり方を、総入れ替えにするのを総理が了解したが、後から補佐官が部分入れ替えがいいといったとかいう問題にしても、どちらの方が賃上げ率が高く出るかということ誰にも解らないことでしょう。

 決定的な取扱い錯誤と思われます「東京都の500人以上の事業所におけるサンプルデータを全数と勘違いして(?)、母集団に復元しなかった」という問題については、(賃金の高い900の事業所が統計から抜け落ちるので)結果数字が低く出ることは明白でしょう。
 それを昨年1月に至って、黙って(?)復元したことが、対前年上昇率の異常な高さにつながり、私のブログでも昨年5月9日、1-3月の「毎月勤労統計」の数字を見て数字を見て、「 賃金上昇率の動きに変化?」と?マーク付きで書くことになったわけです。

 こんな指摘は、私がするまでもなく専門研究者がきちんとブログに書いておられることを発見しました。
 東北大学の田中重人准教授のブログです。(「毎月勤労統計調査における「母集団」の「復元」-https://remcat.hatenadiary.jp/entry/20190114/Maikin」他の一連のブログをご覧いただければとおもいます)
 統計については、こうした本格的な、統計理論に基づいた議論が必要なのではないでしょうか。

 そうすれば、何が間違いで、何が間違いでなかったのか、本当の問題点がはっきりすることになるのでしょう。
 マスコミで指摘された、「賃金構造基本統計調査」は実地他計であるべきところを郵送にしていた問題は、国会では全く取り上げられません。毎月勤労統計では、中小事業所は郵送ですが、郵送にしても調査結果に問題はないという認識からと理解しています。

 ならば、早く調査方式を改めるというが対策で、これは総務省の所管でしょう。
旧指定統計の調査、集計の統計処理のルールについては、まさに専門性に基づいた立派なものが作られていると思っています。

 ただ作った方がたの様な確りした統計理論の知識のない方々が、いわば見よう見まねで、それに則ったつもりでやっているという現状が見えるような気がします。

 国会論議で本当に必要なのは、デジタル時代にふさわしい、新たな統計調査の手続きを、早期に整備するための議論ではないかと思われるのですがどうでしょうか。

貿易収支は回復するか?

2019年02月20日 17時23分33秒 | 経済
貿易収支は回復するか?
 今年(2019年)1月の貿易収支が発表になって、赤字幅が1.4兆円、4か月連続の赤字とマスコミが報じています。

 トランプさんは中国や日本に、アメリカの対中貿易赤字、対日貿易赤字が怪しからんと言って、2国間交渉で迫ってきています。先ずは対中交渉という事で、まさに今始まるところです。

 お互いにもう大人だし、こじれれば双方に打撃になるといった面もありますから、何とか穏便に済むのではないかという予測で株が上がったりしていますが、対中国では「知的財産権」の問題があるので大変ではないでしょうか。

 日本の場合は、安倍さんは、モノの貿易だけにしたいという事で、 TAGなどという言葉を作ってみましたが、アメリカは「モノもサービスその他もすべて含む自由貿易交渉」と言って、これから本格化するのでしょう。

 日本にしてみれば、対米より対中の方が貿易額は大きいのですから、米中摩擦の方が問題という面もあるでしょう。下の図で見ますように、日本の貿易収支は、もう黒字はあまりでなくなっています。


 原油価格が上がって貿易赤字という説明もありますが、下の図から解ることはリーマンショックの後のように「円高になれば貿易赤字は増える」(2018年もそうですね)という傾向は明確です。

 一方、円高になった時は、対外直接投資が増え、第一次所得収支(海外からの利子配当種入)が増えるという動きも明らかです。
 いま日本の経常収支の黒字は殆どが第一次所得収支ですから、何時かはこれもG7やG20などで問題になる事も考えられます。

 ところで、この茶色の柱がどんどん低くなって、青い柱が高くなるという傾向は、「モノづくりの国日本」としては 矢張り問題なのでしょう。
 外国にモノを作らせ、投資収益で暮らそうとすると、何かアメリカ型に近づくような感じになります。

 最近、国内では現場力の低下などが言われ、不注意によるような事故や災害も散見されますが、やはり日本は「万全のモノづくり体制」を堅持し続けるべきでしょう。
液晶やELディスプレーでも韓国に先行されることが多いようです。かつては考えられなかったことですが、結果的に数字として出てくる国際収支の中の 貿易収支と第一次所得収支といった問題も今後の日本の進むべき道の中の重要なポイントになるような気がしています。

改めて平成という時代を振り返る:2 前回の補遺

2019年02月18日 15時59分32秒 | 経済
改めて平成という時代を振り返る:2 前回の補遺
<円高と日銀>  
 プラザ合意後、円高が急激に進行したとき、円が強くなったことに対し、それは日本の経済力が強くなったことで望ましい事だという意見と、円高でコスト高になり輸出競争力がなくなって国内産業の空洞化(特に製造業)が起きて大変だという意見、つまり円高歓迎論と円高脅威論の2つがあったことは前回述べました。

 ここで、留意しておきたいのは、日本の金融政策を握り「物価の番人」と言われた日本銀行がどういう見解を持っていたかについて見ておく必要があるように思います。

 結論から先に言えば、日銀は円高歓迎論だったようでした。
 大幅金融緩和で、バブルの行き過ぎとその崩壊で苦杯を舐めた経験から、「羹に懲りて膾を吹く」という感じだったのか、戦後の、どちらかというとインフレ傾向の強かった日本経済の経験からか、私の知っている日銀の方がたは、円高の行き過ぎを警戒するという考え方はあまりお持ちでないように思われました。

 2年間で1ドル=240円から120への円高は、2年で賃金2倍の賃金インフレをやったのと同じ事と理解していた私は、「物価の番人」である日銀の意見を聞きたかったのですが、その機会はありませんでした。

 後から次第に解ってきたことは、日銀は基本的に円高歓迎で、金融政策で円安誘導をしようといった考えは多分持っていなかったのだろうということでした。

 今、リーマンショック時の日銀の金融政策の遅れが言われたりしますが、日銀の円高への認識は、リーマンショック以降も基本的には変わらなかったようで、ようやく2012年に至り白川総裁が、アメリカの2%インフレターゲットに対し、 1%インフレを認めようという方針を出した時まで続いたということではないでしょうか。

 その後、黒田総裁になって、異次元金融緩和と、アメリカと同じ2%インフレターゲットをアベノミクスと共に掲げ、それがまた逆の意味で 金融政策正常化の遅れにつながっているという現状を齎しているようで、日銀の金融政策は、なかなか巧くいかないものだと思っているところです。

改めて平成という時代を振り返る:2

2019年02月17日 13時51分15秒 | 経済
改めて平成という時代を振り返る:2
 このテーマの第1回、前々回ですが、平成元年から平成4年を見て来ました。
 改めて、これからどんな区分で平成時代を見ていくか、区分けをしていきたいと思います。
1989年(平成元年)~1992年(平成4年)バブル絶頂から破裂へ
1993年(平成5年)~2002年(平成14年)円高対応の模索と克服へ
2002年(平成13年)~2008年(平成20年)「いざなぎ越え」の進展
2009年(平成13年)~2012年(平成24年)リーマンショックの円高で日本経済底抜け
2013年(平成25年)~2019年(平成31年)アベノミクスの成功と行き詰まり

 という事で、今回は、平成5年~14年、「円高対応の模索と克服への道」です。
プラザ合意からの2年間で、円の価値は対ドルで2倍になりました。$1=¥240→$1=¥120です。
しかし当初、円高の真の問題はあまり理解されなかったようです。金融緩和による土地バブルで高くなった円は世界を闊歩しました。三菱地所によるロックフェラーセンター買収などは象徴的でした。

バブル崩壊後も、「円の価値が上がったのは日本の価値が上がったという事で、喜ばしいことだ」といった意見も強く、高くなった円を活用すればいい、といった円高活用論などもありました。

 しかし、次第に解って来た事は、 円が2倍になるという事は、日本の賃金や物価が2倍になることだ、という事です。
 言い換えれば、日本は2年間で賃金2倍、物価2倍というインフレをやってしまったのと同じなのです、という深刻な事態が、次第に理解されるようになり、日本企業は、世界一高いと言われた物価を下げるために、賃金を中心に、徹底したコストカットをすることになりました。毎月勤労統計による賃金総額の推移を図にしました。平成9年以降はずっと低下です。

厚労省:「毎月勤労統計」

 そしてその結果、企業経営の面から見ると、バブル時の「増収・増益」から、一転「減収・減益」基調に、そしてバブル崩壊後10年を経て、次第に「減収・増益」という形で、まさに血の滲む努力で何とかプラザ合意の円高を乗り切ったのが2000年から2002年(平成12年から14年)でした。

 この辺りの売上高と利益の関係を「法人企業統計年報」で見てみましょう。

   法人企業全産業の売上高と利益の推移(1993-2002年度)      
     
 法人企業全産業(除金融保険)の売り上げと営業利益、経常利益の実額です。ただし、売上高は単位10兆円、営業・経常利益は単位兆円です。(統計数字のままでは関係が見えにくいので、目で見て増減関係が解るように便宜的にそうしました:売上高営業利益率は当時2%台、近年は5%台)

 ご覧いただきますと1999年(平成11年度)あたりから、何となく売上げの伸びに比して、利益の伸びが大きくなり、「減収でも増益」という企業が出てきていることが解ります。
 これはつまり、売上の減少よりもコストの方を余計減らしたことにほかなりません。

 企業というのは減益基調の時は積極的に動けませんが、たとえ売り上げが伸びなくても、利益が増えてくれば、何とか動けるようになるというのがその性質でしょう。
 2000年にはその態勢が出来たように見えますが、折悪しくアメリカでITバブルの崩壊があり、その影響を受けて、景気回復は2002年からになったようです。

 売り上げが伸びなくても、コストを減らせば何とかなるというこの時期の経験は、企業の経営態度にかなり強い影響を与えたように思われます。
 そして日本経済はいわゆる「いざなぎ越え」という「回復感無き長期景気回復」に入ります。

黄信号点灯?:2018年10-12月期GDP第1次速報

2019年02月15日 16時13分28秒 | 経済
黄信号点灯?:2018年10-12月期GDP第1次速報
 昨日、内閣府から標記最新時点のGDP四半期報が発表になりました。
 マスコミの見出しは「2期ぶりのプラス、年率1.4%成長、先行きは中国経済不振の影も」といったものが多いようです。
 何か10-12月期になって経済状態が良くなった(けれども先行きに問題も)という感じの見出しになっていますが、日本経済の基本的な動きはもう少し違うようなので、現状を見ておきたいと思います。

 という事で、最近5四半期の「対前年同期比」の動き(2017年10-12月期から2018年10-12月期)について名目と実質の両方を図にしてみました。


 各四半期の数字が前期に比べて上がったか下がったかは短期の変動ですが、前年の同じ期に比べてどう動いいているかは趨勢的、傾向的な動きをより良く示すと思われます。この図を見ますと、現状はかなり厳しい(難しい)方向に動いているように思われます

 名目値の方は既に7-9月期から前年同期比マイナスになっており、実質値が辛うじてプラスを維持しているのは、物価が下がったから、(総合物価=GDPデフレータがマイナスになったせい)という事です。
 10-12月になりますと名目値のマイナスをプラスにするような物価の値下がりも無かったので、実質成長はゼロ、厳密には政府統計では-0.0、つまり四捨五入するとゼロですが小数点以下2けたまで出せばマイナスですという事になっています。

 最近のニュースでは景気拡大がこの1月まで続けば戦後最長という事ですが、何となく危なくなってきているようにも見えます。

 という事で、上の図の実質成長率を、国内需要と海外からの需要(純輸出:外需))に分けで寄与度をみてみます。


 結果は図の通りで、輸出の伸び悩み、輸入の堅調という状態で、この2四半期では、内需のプラスの寄与を外需のマイナスの寄与が打ち消しています。10-12月期には、内需の寄与は0.5%ポイント、外需の寄与はマイナ明日0.5%ポイントで、結局GDPの実質成長率はゼロという事です。

 訪日客の爆買いも減り、対米貿易不均衡でアメリカからいろいろ買うことになったり、原油輸入が増加したりしますと、この傾向は強まります。
 10-12月期の内需の寄与度0.5%ポイントの内訳を見ますと、民間最終消費支出0.4、民間企業設備0.5ですが、民間住宅、民間在庫のマイナスで、結局0.5になっています。公的需要の寄与度はゼロです。

 過日 12月の消費性向が落ちたことは書きましたが、第2次速報では法人企業統計で民間企業設備がはっきりすると思いますが、投資減速の動きが出るか心配です。
 
 総じてみれば、内需はまだプラスの状態とみられますが、減速の状況は2018年後半からかなり顕著で、今後の国際情勢、国内情勢の厳しさを考えると、景気判断は楽観できない様相を強めているように思われるといった所でしょうか。

改めて平成という時代を振り返る:1

2019年02月14日 12時47分29秒 | 経済
改めて平成という時代を振り返る:1
 経済・経営の面を中心に、平成の30年を、いくつかの切り口から見て来ました。
残念ながら、平成の世は日本にとってはあまり良い時代ではなかったという事になるのでしょう。

しかし、基本的にエネルギーレベルの高い日本人です。この時代も、日本人なりに頑張り、日本人なりに学び、日本人なりにやることはやって来たという事になるような気もします。

確かに日本人は平成の間に少し変わったようです。この変わり方が、今後の日本にとって良かったのかどうか、これは後世になって結論が出るのでしょうが、その変わったプロセスを、何とかまとめておきたいと思っています。

 先ず、経済面から見た平成時代の大きな流れを整理してみましょう

<バブルとその崩壊期>1989年(平成元年)~1992年(平成4年)
 平成経済という困難な時代を、結果的に形作ることになった戦後経済史上の大きな出来事は1985年(昭和60年)のプラザ合意です。

プラザ合意による円高で日本は国際競争力を失い、企業の海外移転で国内経済の空洞化という問題に直面することになりました。
その日本に、アメリカは「内需拡大のために労働時間の短縮・消費の拡大と大幅な金融緩和すべきだ」とアドバイスしました。(忠実に従った「 新前川レポート」参照)

 この金融緩和が土地ブームに火をつけ、地価はうなぎ上りに上昇、土地バブルで日本経済は一時の金融の宴に酔うことになりました。

平成元年は、いわばバブルの絶頂期、日本の都市銀行の名前は世界の金融機関のトップテンに揃い踏みでした。
 しかし地価が無限に上がることはありません。サラリーマン住宅問題は深刻の度を増し、地価抑制論が勢いを増し、遂には土地融資の総量規制が行われ、1,991年(平成2年)に至って地価は暴落を開始します。

 翌平成3年には、土地ブームを背景に上昇していた株式市況が暴落、バブル崩壊は決定的な形をとることになりました。
 平成時代の初めに起きたことは、こうした、日本経済の天国から地獄への逆落としだったという点に象徴されるでしょう。

 すべては、それまで日本人が頑張って、日本の経済力、国際競争力を強くした結果、相対的に経済が弱体化し、インフレやスタグフレーションに悩まされていた欧米主要国の為替戦略に素直に敗れた結果ということが出来るようです。(中国は違いました)

 こうして、その後の平成時代の日本は、「円高」という地獄の責め苦から、いかにして脱出するかという、初体験の極めて苦しい道を、何とか自分の努力で切り開き、「日本経済再建」を果たそうと辛苦の道を歩くことになるわけです。

 平成時代の日本の歩いた道の大部分はこの苦難の道で、この道をどのように歩いたかというのが平成経済の歴史ではないでしょうか。

ベネズエラ:頼るのは国連ではなくローマ法王

2019年02月12日 23時47分51秒 | 政治
ベネズエラ:頼るのは国連ではなくローマ法王
 世界有数の産油国ベネズエラ、その資源を活用すれば、経済建設も国民の生活の安定も思いのままと言えるような素晴らしい条件を持つ立場にありながら、現実は500万人を超える難民が発生すると予想される惨状です。

 理由は、現マドゥロ大統領が独裁色を強めたことからなどと報道されていますが、巨大な石油資源を持ちながら、チャベス大統領からマドゥロ大統領という左派政権が続き、経済政策の失敗でインフレが高進、国民生活が不安定になったこと、左翼政権ですから反米姿勢を強めることで、対米関係が悪化したことなどがあっての事でしょう。

 惨状の中、国会議長のグアイド氏が暫定大統領を宣言し、アメリカや欧州諸国、中南米諸国など40カ国以上が支持を表明、一方中国、ロシアはマドゥロ大統領を支持しています。

 そんな中で入ってきたニュースは、マドゥロ大統領がローマ法王に、「グアイド氏側と対話できるよう助けてほしい」として、仲介を求める書簡を送ったという事です。
 そしてそれに対して、暫定大統領を宣言したグアイド国会議長側の代表団がローマ法王庁を訪問し高官と会談したというニュースも入ってきています。

 ローマ法王は、中立の立場で、「仲裁に入る用意がある」ことを表明している由ですし、バチカンの報道担当からは「ベネズエラ国民の人権を守り、流血の事態を避けながら平和的な解決によって危機を乗り越えることに、バチカンは重大な関心を寄せている」とする声明が発表されたとのことです。

 カトリックの国ですから、頼るのはバチカン、ローマ法王という事になるのでしょうが、考えてみれば、中世からバチカンはそれだけの権威を持っていたわけです。

 勿論、異教徒には通じないのですが、キリスト教社会が、そうした国家を超えた権威の存在を認めていたというのは、やはりそれなりの知恵だったのではないでしょうか。

 キリスト教社会から地球社会となった今日、国を超越した権威というは何でしょうかと問われれば「国連」と答えるしかないでしょう。
 もともと、国際連盟も、国際連合もそうした目的意識で作られたはずです。
 その国連は、主要国の意見対立で役に立たず、ベネズエラの対立政権が共に、バチカンに頼るというのは、今の地球社会の知恵が、中世カトリック世界の知恵に及ばないという事なのでしょうか・・・?

なごり雪?

2019年02月11日 15時47分13秒 | 環境
なごり雪?





 2月9日の土曜日は大雪になるかもしれないとの予報でした。午前中、近所で会合があるので、心配でしたが、我が家のある都下国分寺では全く降りませんでした。

 年末以来のカラカラ天気で、降っても困るけれども降らなくても困る、といった所で、少なくなった野川の水を眺めながら、魚たちやカワニナ(蛍を飼っているので)は大丈夫だろうかなどと心配しています。

 9日の夕方から白いものがちらちら舞い、夜になってもちらちらしていました。10日の朝は雪景色かななどと思いながら、寝み、朝起きてみるとほんの少し、ほんのちょっぴり雪景色でした。

 曙の葉に1枚1枚盛ったような雪と、地面に落ちてまだら模様になった雪も、見ようによっては、自然の造形の妙などと、ひとりで悦に入ってみた次第です。

 今年は本当に異常気象でカラカラですから、今年の雪はこれだけでおしまいだったらと写真を二枚撮りました。
 陽が出たらすぐ消えてしまいましたので、これでも、今年も国分寺に雪が降った証拠と思ってパソコンにファイルして、序にブログに載せることにしました。
 これが今年のなごり雪でしょうか。

平均消費性向さらに低下、経済停滞の懸念

2019年02月09日 22時54分40秒 | 経済
平均消費性向さらに低下、経済停滞の懸念
 統計の信頼性に関わる問題が出て来ていますが、このブログでも毎月報告している「平均消費性向」を包含する「家計調査報告」(総務省)は信頼できるものであることを願っています。

 家計調査報告の「平均消費性向」は、2人以上の勤労者世帯における可処分所得(手取り収入)の中で何%を消費支出として使ったかという指標です、使わなかった分は「黒字」という形でその割合は「黒字率」で、「平均消費性向と黒字率を足せば100%」ということになります。

 バブルの頃は消費性向は高かったのですが、平成に入って、長期不況の中でだんだん下がり昨2018年の水準は恐らく最低になるのではないかと思っています。
 これはいわゆる所帯持ちの勤労者所帯で、賃金等が上がって使えるカネ(可処分所得)が増えても、節約して貯金に回し、将来に備えるという態度は一般的という事の反映ですから、たとえ賃金が上がっても、消費は増えにくくなります。

 つまり、平均消費性向が低くなるという事は消費不振状態になるという事で、サラリーマン所帯は、数からいっても、いわば代表的な家庭ですからそこでの消費性向の低下は一般的な節約ムードを示していると考えられ、消費不振による景気の低迷を示唆することになります。

 個人消費はGDPの約6割を占めますから、これが伸びないとGDPはなかなか増えません。一昨年、昨年あたりは、企業収益が良かったので、企業の設備投資が増え、GDPを押上げましたが、今年は米中関係の問題から投資を控える企業が増えると予想され、その上に家計の消費も伸びなければ、経済成長(GDPの増加)はままなえりません。

 こんなことを書きましたのも、ボーナスも良かったし、年末商戦が盛り上がって、12月の消費性向は多少高まるのではないかという期待に反して、昨日発表になった家計調査の12月分で、勤労者所帯の平均消費性向は、昨年の12月の71.6%に比し、65.5%と6.1ポイントの大幅低下になってしまったからです。下図をご覧ください。

平均消費性向の推移

 その結果、2018年を通じての勤労者所帯(2人以上)では、可処分所得は0.8%増えたのに、消費支出は0.3%減るという形で、平均消費性向は前年の72.1%から69.3%と2.8ポイントの大幅低下になっています。
 単純に言えば、所得が増えても消費を切り詰め、貯蓄を増やすという行動が一般的という構図です。

 つまり「賃金を上げれば消費が増える」という図式は既に成り立っていないという事なのです。なぜそうなっていないのかという原因は、基本的には「将来不安」、将来に備えて現在は節約するという意識が強いからと説明されています。

 いわゆる官製春闘で、「賃上げせよ」という一方で、政府の借金は1100兆円を超え、プライマリー・バランスの達成は見込みが立たず、社会保障のための消費増税はトランプさんの要求に答えるために使われるようで、将来は、増税や年金のめ減り、社会保障負担の増加ばかりになりそうだといった国民の意識(理解)の結果でしょう。

 アベノミクスのいう事と現実との乖離に気が付かないほど日本の国民は愚かではないことを政府が理解して、政策の大転換でもしなければ、このままでは行き詰まりになると感じている人が多いという事ではないでしょうか。

統計問題を政争の具にするとは

2019年02月08日 16時00分08秒 | 政治
統計問題を政争の具にするとは
 通常国会が始まりました。国会中継を見ていますと、野党側は統計問題で政府に失点を与え、自分たちの得点にしようと熱心なようです。

 問題の経緯から見れば、恐らく政治的な意図といったものではなく、単に手間や面倒を何とか省いて調査員の不足に対応しようとか、調査対象企業の非協力を何とかしようとかいった現場の事情が主要な原因でしょう。

それに担当部署の人間に十分な教育訓練がなされていず、その結果、責任感が乏しかったり、取り扱い錯誤が起きてしまったり、それを何とか誤魔化して、問題にならないように直してしまおうとかといった担当部署の人たちの怠惰や狡さの結果なのでしょう。

 大きな問題があるとすれば、デジタル時代に、紙と鉛筆の時代のやり方を相変わらずとっているという「制度設計」の時代遅れという問題に絞られるという感じもします。

 国会のレベルで、「意図的なものだ」などとして取り上げ、政争の具にして貴重な時間を浪費するのはやめてほしという気がします。

 今回の問題は、政治レベルより「事務レベル」の問題でしょう。与党も野党も、ともにこんなことが起きないよう、徹底した誤りの是正、善後策の在り方を関連部署に指示、あるいは要請して、早期に統計の信頼を取り戻すように協力すればそれでいいのではないでしょうか。

 実際に実務を担当する省庁の各ポジションの人たち、特に管理監督の立場にある人達は、統計に関する知識も、現場の実態に対する理解も、まさに専門分野のはずです。主たる担当組織である総務省中心に、執務態度を立て直すことを明確にし、その上で、専門能力を駆使して、現状にマッチした適切な業務体系を検討し、それを国会に報告して法改正なり何なりをするためのきちんとした報告を早急にまとめれば、国会はその報告を待つだけで良いのではないでしょうか。

 内外まさに多事多端、国会で議論して頂ければならない重要な問題は山積です、補正予算のプライマリー・バランス達成への影響などは明示されているのでしょうか。
 国会でなければできない重要な事についての充実した議論をして頂きたいと思う人も多いように思いますが。

直接投資アンバランスの国、日本、何故?

2019年02月06日 23時38分38秒 | 国際経済
直接投資アンバランスの国、日本、何故?
 このところ日本の経常収支は毎年20兆円を超える黒字で、そのほとんどが「第一次所得収支」つまり、外国に進出した日本企業からの利子・配当収入で、これは日本国外で稼いだものですからGDP(国内総生産)に入って来ないことは、折に触れて書いてきました。

 第一次所得収支は、GNI(国民総所得)には入っているので、日本人が使っていいカネですが、企業の内部留保などになっていて、活用を待っている段階のようです。

 海外に進出している日本企業というのは、財務統計上は海外への「直接投資」という形で計上されています。これは近年急激に増えていて、その結果、そうした企業からの利子配当などが増えるわけです。

 ところでこの直接投資という項目には、対外と対内があって、「対外直接投資」は日本企業が海外に進出した分、「対内直接投資」は外国企業が日本に進出した分です。
 今日のテーマは、日本の場合、海外に出る日本企業は多いのに、日本に進出する海外企業が異常に少ないという極端なアンバランスです。図にしてみました。(資料:財務省)



 これは年々の投資額ですが、平成29年末の投資残高を見ますと対外投資174.7兆円、対内投資は28.6兆円です。
 通常、どこの国も、対外直接投資と対内直接投資は共に伸びていくようで、年々の対外直接投資がトップテンに入るような国は対内直接投資もトップ10に並ぶことが多いのですが、日本は対外ではトップ5ぐらいに入りながら、対内では20位から30位といった状態です。

 そんなことで、日本は投資しにくい国だと非難されることもあります。こんな国は主要国の中では日本だけで、他には見当たらないようです。
 外国が日本に投資してくれれば、その分日本の経済成長も高まるのですが(アメリカはじめ多くの国は外資の誘致に熱心ですね)、日本は勧誘しないからでしょうか。

 アベノミクスも行き詰まり、少子高齢化、消費不振で、経済成長もままならない日本ですが、それと、この直接投資のアンバランスと関係があるのでしょうか。
 もしあるとすれば、そこに日本の経済不振のブレークスルーの1つの鍵があるのかもしれません。

 政府は、外国人旅行者の誘致にばかり熱心ですが、外国企業に来てもらった方が場合によっては、より効果的という事もありそうです。
 この問題は、日本として、少し確り考えなければならない問題でもありましょう。出来れば折に触れて取り上げてみたと思っています。