tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

格差問題、スーパーリッチ、社会不安

2013年08月29日 11時53分31秒 | 経済
格差問題、スーパーリッチ、社会不安
 シリア問題が泥沼化し、更なる深刻化の様相も見えています。表題は、放置すれば末恐ろしい三題噺ですが、最近、世界中が不安定になっているように感じられます。日本は例外でいられるでしょうか?

 日本では、終戦の日の前後、戦争の悲惨さを思い起こさせるイベントや報道も多く、改めて平和の有難さを痛感した方も多いと思われますが、世界中で、国内紛争、テロ活動などが頻発、それを大人の知恵でなく、力ずくで解決しようという動きが強まっています。何がそうさせるのか、抜本解決に何が必要か、人類の知恵が問われています。

 こうした問題の根っこに何があるか見てみますと、多くの場合、貧困や格差問題があるように思われます。
 もちろん人種や宗教の問題もあるでしょう。しかし、それが貧困や格差の問題と絡まりあった時、具体的な紛争といった問題に発展することが多いのではないでしょうか。
 領土問題というのも、古代からの領土が広い方が豊かになれるという領土奪い合いの誤った考え方の残滓でしょう。

 歴史的に見れば、人類の作ってきた制度というのは、力の強いものがなんでも独占するという世界(ガキ大将的社会)から、力ではなく知恵に頼り、正義(justice)を尊重する格差があまり拡大しない社会(大人の社会)に代わってきたようです。

 社会福祉、社会保障といった制度、福祉国家の概念などはまさにそうでしょう。さらにそれは、国家間にも広まって行き、低開発国援助、経済協力、国連・アンクタッドの積極活動、といったレベルまで上がっていっていました。

 それがいつ頃からでしょうか、また、内外ともに格差拡大、弱肉強食の社会に戻りつつある様に見えます。社会保障費抑制、規制の撤廃、競争重視が一般化し、社会的強者と弱者の格差が拡大してきたのです。その根は「競争社会への逆戻り」にあるようです。

 その典型が、金融自由化、金融工学、マネーゲーム中心のマネー資本主義の隆盛です。いつも指摘しますように、マネーゲームは新たな価値を生みません。マネーを自分の所に移転させることにより、他人の購買力を奪って自分の購買力を高めるだけの事です。

 こうして生まれたのが、いわゆるスーパーリッチです。スーパーリッチは自分の生活を更に良くしようとマネーゲームをしているのではないようです。自分が集めたカネを使い切れるかどうかなどは関係なく、単に集めたカネの大きさを競うことになるようです。
 タックスヘイブンなどの形で、スーパーリッチを集め、国づくりをしようという所さえ出てきます。マネー偏重と競争社会信仰の「あだ花」でしょう

 こうしたマネーは、低開発地域の開発や途上国援助に使われることはありません。マネーゲームは、リッチがリッチを生み、更にスーパーリッチを生むためのもののようで、購買力格差の拡大を進める手段です。マネーゲームの当事者は、自分が価値を生んでいると錯覚しているだけです。

 こうした格差拡大の傾向は、社会不安をますます拡大させるでしょう。そして、国内紛争に繋がり、国際的なテロ活動にも繋がり、国際紛争に発展する可能性を大きくします。
 世界は今、深い洞察力を持って、国内・国外を問わず格差問題の改善のために、改めて本質的な考察と対策への論議を始めるべきではないでしょうか。


TPPが本来目指すべきものは?

2013年08月26日 12時25分18秒 | 経済
TPPが本来目指すべきものは?
 TPPに関しては、今秋から暮れにかけて、今後もいろいろな問題が起こって来るでしょうから、その際には、またその点について論じなければならないと思いますが、矢張り今の時点で、この問題はもう少し深く論じておく必要があるような気がします。

 TPPはもともとアメリカが言い出したものですから、最初の発想はアメリカにとって、環太平洋の国々がみんな良きパートナーとして共存共栄の実をあげられるように、というのが本来あるべき原点でしょう。
 しかし最初から引っかかっているのは、アメリカが40年も経常赤字を垂れ流し、何時まで経ってもそれが直せないという「具体的な事実」です。

 ですから、アメリカとしては、多分、TPPによって、自国の赤字を少しでも減らせればと考えるでしょう。第二次大戦後、世界を援助したアメリカと今のアメリカは全く違いますから、多分わざわざ経済的にアメリカの負担になるようなことで、環太平洋の国々の役に立ちたいなどと考えてはいないでしょう。

 国際経済関係ですから、それはそれでもいいと思います。自国の利益を優先しつつ相手国と交渉して、適切なところで折り合い、お互いにプラス、「ウィン・ウィン」の結論に達すれば、まさに望ましい結果と考えるべきでしょう。

 日本で問題になっている農業でもそうでしょう。国土そのものの問題として、なかなか生産性が上がりにくく、日本の農産物は高いといわれます。日本の消費者も安い農産物は歓迎です。TPPでの論議と活動の結果、日本の国土という与件の中で、農産物の生産性を上げ、価格を下げ、結果的に日本の食料自給率を上げることが出来れば、ベストでしょう。
 TPPが日本の農業を壊滅させるのではなく、競争力を持つ農業に早く脱皮するために役立つ会議であれば素晴らしいと思います。

 アメリカの車が日本で売れなければ、売れるような車をアメリカが作れるように協力することが大事で、関税引き下げを延ばしたり、日本の車についての制度を変えろ(たとえば軽自動車問題)というのでは、何ら本質的解決にはなりません。
 かつてトヨタがGMに協力して頑張ったNummiの様なアプローチこそが本物でしょう。アメリカ自身の努力で経常赤字を減らすように日本も各国も力を貸すのです。
 シェールオイルによるガソリン安で、「もう省エネ車は要らない」とフォードが言っているなどと聞きますが、それが本当なら、TPPをやっても無意味でしょう。

 かつて、CSRとNGR(Nation`s Global Responsibility)を書かせて頂きましたが、世界一豊かなアメリカが、世界から金を集めて自国の赤字の穴埋めに使うような構造が世界を不安定にしているのであって、先進国、途上国が出来ることで協力し合い、よりバランスのとれた、故に平和な国際関係を作り上げていくのが、多様な発展段階の国々を含む「パートナーシップ」の本来の在り方なのではないでしょうか(格差門題は次回)。 

 国連の機能が未完成な今の世界においては、こうした「多様共存」を実現する国際関係を多角・多様なシステムで模索していくことが最も大事のように思われます。


TPPで日本がやるべきこと

2013年08月23日 14時52分48秒 | 経済
TPPで日本がやるべき最も大事なこと
 もう2年近く前になりますが、2011年の11月に「TPPの胡散臭さ」を書かせていただきましたが、ここに来てやっと日本もTPPに入れてもらえることになったようです。

 報道では、「日本が入れてもらうのにはいろいろ大変で、やっと全面的に入れてもらえることになった」みたいな言い方のものもありましたが、もともとアメリカにとっては、TPPとは日本に入ってもらわなくてはあまり意味がないものでしょう。

 アメリカはすでに日本との間で、いろいろな問題について、事前協議で日本の譲歩を引き出しています。
 例えば、自動車の対日関税率の引き下げは、最大限後ろ倒しするとか、保険の第3分野(がん保険など)についてはかんぽ生命は参入しないなどです。
 一方、日本はコメなどの聖域化などを望んだようですが、その辺りは一蹴されて、TPPの本来の意義である「聖域なき自由化」論議になっているようです。

 この辺りは、日米の交渉力の違いということでしょう。その背後には、日本はアメリカのお蔭で経済的繁栄を実現してきたといった日本の負い目があるのも事実でしょう。
 しかしそんなことばかり言っていると、いつまでたっても日本はアメリカの御意向を承らなければ、国としての政策も取れないということになり、日本人の対米不満も益々鬱積して日米関係に良くないのではないでしょうか。

 歴史を振り返れば、戦後のアメリカの占領政策は「日本に再び戦争をさせない」(第一次大戦後のドイツの例も考慮してでしょう)ということを第一義としたものでしょうから、戦争放棄、徹底した平和教育・民主主義教育だったのでしょう。
 戦後の日本を指導した人たちは、嘗ての札幌農学校のクラーク博士ではありませんが、純粋に理想主義的な人達が多かったと私も思います。

 真面目な日本人はそれを忠実に守り、平和と民主主義の実践者になったのです。予想以上の成果を上げたアメリカにとって、その徹底ぶりは些か行き過ぎで、今では「少しアメリカの軍事行動に役に立ってくれよ」ということになって来るのでしょうか。

 話がそれましたが、経済面においても、プラザ合意のような難題を「ハイハイ」とOKし、20年苦労しても、また経済力を取り戻しつつある日本を、何とかアメリカ経済に貢献させよう、もともとアメリカが守ってやってこその経済繁栄だから。という意識を持っていても不思議ではありません。
 戦後の力強いアメリカと違って、40年も経常赤字を続け、世界中に不義理をし、半ば堕ちた偶像(覇権国)のようになっているアメリカです。

 TPPで日本がアメリカに問うべきは、「アメリカ国民の自助努力なくしてアメリカ経済の健全化は不可能」「アメリカ自身が経済健全化の具体的な日程をTPPで示してほしい」ということではないでしょうか。
 そして、それを前提にして、日本は、出来るだけアメリカの経済健全化に力を貸す(アメリカへの恩返し)努力をすることでしょう。

 アメリカを「ゴリ押ししてくる上司」としてではなく、「力を貸して自立させる相手」として話し合いをしていくことが。今の日本に求められているのではないでしょうか。


消費税増税:メリットを生かし、マイナスを最小限に

2013年08月20日 21時18分31秒 | 経済
消費税増税:メリットを生かし、マイナスを最小限に
 消費税には、いろいろなメリットもあります。その辺もはっきりさせて、出来るだけ消費税増税を成功させるようにみんなで努力するということも必要でしょう。

 まず消費税というのは、非常に解り易い税金です。特に税率が一本であれば、先にこのブログでも1パーセントで3兆円と概算したように、誰でも簡単に税収が計算できます。
 税率が多様でいろいろな特例などがあり、増税・減税と言っても、その結果がいくらになるのか極めて解りにくい所得税や法人税に比べて、これは国民にとっても大きなメリットです。「解り易い」ということは税制の最大のメリットです。

 これだけ国債発行を減らすことが出来ましたとか、これだけ社会保障の財源が増加し、こんな改善が出来ましたという場合でも、国民が金額を把握していますから、財務省がごまかそうとしても(そんなことはないでしょうが)やりにくいでしょう。

 今、1500兆円と言われる個人貯蓄の多くは高齢者が持っています。安倍さんは、「金持ちに負担してもらって、困っている人に・・・」と言いますが、現実、資産の把握やそれへの課税は至難です。
 しかし、消費税の場合は、たとえ収入ゼロでも、贅沢な暮らしをしていれば、税金を沢山払うことになります。家計調査の年齢階層別でみると、高齢者の場合「所得と消費」の関係ないのが目立ちます。
 消費税は逆進的と言われますが、それは所得だけを考えた場合です。メタボの体脂肪のように日本経済を苦しめてきた過剰貯蓄是正の一助にもなります。

 政府にしてみれば、租税弾性値が極めて安定していますから、税収の不安定さが改善され、財政政策、経済政策がとり易くなります。
 同時にこれは、国民にとっても同じですから、政府と国民が「同じデータ」で意見を交わすことをより可能にします。これも大変結構なことです。

 最後にこれは、今年の7月26日の本ブログ「世界経済の混乱とアメリカの責任」に関わる問題です、健全財政、健全経済の国の通貨が投機資本の思惑で勝手に切り上げられるといった困った国際金融システムが解消出来ればなくなる問題ですが、日本にとっては大変大事な問題なので、付け加えておきましょう。

 輸出の減少や、国内での災害復旧その他の負担急増で、日本の経常黒字もかつてのように、毎年20兆円といった大きなものではなくなってきていますが、それでも年間数兆円から10兆円ぐらいになりつつあるのではないでしょうか。

 これがある限り、アメリカを始め赤字国は、日本にカネを出させようと考えるでしょう。慶州G20 の指摘のように、日本の経常黒字を減らしていくことは矢張り大事です。
 国債発行か、消費税増税か、あるいは国民の自主的な消費拡大かでこれを実現していく努力は常に必要でしょう。

 数字の解り易さをベースに、この問題を広く適切に論議し、それを経済政策に反映させることで、「円高デフレの失われた20年」を招来したり、その反動で、「インフレ、金利上昇、国債暴落、日本経済破綻」をまことしやかに論じたりして、国民の不安を殊更に掻き立てるようなことも、是非阻止してもらいたいものです。


消費税増税:消費税導入で消費が萎縮するか?

2013年08月16日 10時19分33秒 | 経済
消費税増税:消費税導入で消費が萎縮するか
 消費税増税論議の中で、今、一番懸念されているのは、賃金は上がらない、物価は上がる、その中で、消費税が増税になったら、家計は益々萎縮して、消費不振になり。経済成長が阻害される。橋本内閣の消費税増税が、いかに日本経済に深刻な影響を与えたか前例もあるではないかといった指摘ではないでしょうか。

 一見そうだそうだと言いたくなるような論じ方ですが、よく考えて見ると、いろいろ問題点もありそうです。

 まず、賃金は上がらないという問題ですが、賃金は経済成長の配分ですから、来年の春闘以降、労使が経済成長を認めれば、賃金も上がるでしょう。円安になったから賃金を上げろというのは誤った考え方(円安の無駄遣い)だと指摘してきました。

 円安で物価が上がっているというのは当然で、これは経済成長を取り戻すまでの一過性の現象です。円安は次第に成長率を押し上げるでしょう。雇用も、経済成長率も、税収もだんだん良くなっています。

 確かに、来年4月から消費者が9兆円負担するというのは楽ではありません。しかし、橋本内閣の1997年の消費増税と直接比べるのは誤りでしょう。
 あの時は、プラザ合意の結果の長期デフレの中の話です。ただでも消費が萎縮する状況でした(デフレ3悪)。

 しかも考えなければならないのは、消費税増税分は、国債発行の代替ですから、その分国債発行が減って国民は国債を引き受けなくてもよくなるのです。これは民間資金に余裕が出るということです。
 
 消費税増税は社会保障制度の健全化が主眼のはずです。消費税増税分が社会保障費に使われれば、国民の老後の心配は減少します。無理な貯金をして老後に備える必要も軽減されます。
 つまり、国民総支出(=GDP)は変わらずに、国の中のカネの流れが変るだけです。お金持ちの使った金にかかる消費税が、必要な年金、医療、介護や子育てに使われれば、日本経済のおカネの流れがより合理的なものになるという事でしょう。

 残る問題は、①政府がきちんと説明し、カネの使い方を間違えないか、②国民が政府に金をとられたように感じて、過剰に防衛的になり消費を節約するかどうかという問題です。
 日本経済が先行き明るいというのは、大きな好材料ですし、従来から家計支出は雇用情勢と最も相関が強いことは明らかですから、雇用改善傾向も重要な好材料です。

 政府は、このように国民生活にプラスであると確り説明し、国民も、自分たちが節約して貯蓄してきたお金が何をもたらしたかという従来の経験を十分に理解して、稼いだ分は確り使って、日本経済を元気にすることを考えるべきでしょう。

 政府がきちんと使ってさえくれれば、そして、政府が十分に解り易い説明をしてくれれば、消費税増税は、日本人同士のより良い相互扶助の積極策として、日本経済をより健全にしていくために役立つものとすることが出来るはずです。


日本中が晴れて暑かったあの日

2013年08月15日 13時41分28秒 | インポート
68年前の今日
 68年前の8月15日も、今日のように、日本中が晴れて暑い日でした。
 あの日から日本は、戦の無い国になりました。

 
 疎開先の向かいの家にラジオがあり、近所の人、何人にかが集まって、雑音ばかりでよく聞き取れない玉音放送を聞きました。
 陛下の、「この上戦争を継続せんか・・・」という一節が聞きとれたよいう人がいて、戦争は終わったんだなとみんなが理解しました。
 通りがかった、リヤカーに野菜を積んだ人が、「戦争は負けたんだ、もうどうでもいいや」と言って、何故か積んだ野菜をその場に放り出して行きました。
 食べ物の無かった時代、その野菜が有難かったことを覚えています。

 あの日から、日本は戦をしていません。私は、あの日から日本は、戦の無かった縄文の時代に戻った、と考えたいと思っています。
 日本の歴史の中に、争いをせずに物事を解決しようとする種々の知恵の活用の痕跡を私は見ます。失敗も成功もありましたが、こうした努力は、狭くなった地球の中で、ますます重要になっているように思います。

 今、何かこうした知恵の大切さを無視するような動きが、日本の一部のリーダーの中に出て来ているのであれば、こうした、理性よりも感情に支配されやすい考え方は、早いうちに芽を摘んだ方がいいと感じている日本人は少なくないのではないでしょうか。

 戦争は、何時の世の中でも、世界のどこであっても 「狂気」そのものです。日本人の本来の姿である謙虚さと知恵の発揮に期待します。



消費税増税:財政の「プライマリーバランス」は矢張り重要

2013年08月13日 11時38分34秒 | 経済
消費税増税:財政の「プライマリーバランス」は矢張り重要
 日本経済が「ジャパンアズナンバーワン」と言われた1980年代前半にも、国債発行(特に赤字国債)を減らして財政の健全化を図ろうという意識は強く、そのための土光臨調(第二次臨時行政調査会)の活躍がありました。
 ただ、この取り組みは、当時の日本の公的部門の実態を反映して、無駄な財政支出を減らして、国債発行を少なくしようという意識がより強いものでした。その後、国鉄民営化などもあり、日本は変わりました。

 この時も目標とされたのは、財政の「プライマリーバランス」でした。プライマリーバランスをプラス(現在の日本はマイナス)にするというのは一口で言えば、「国債残高の増加率をGDP増加率の範囲内にして国債依存度を減らしていこう」ということで、いざという時財政政策を取りやすくする財政健全化の最低基準線という事でしょう。(http://blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/71acbf81a9192b4e6b6023dc7b5d82c6)

 今の日本場合を考えれば、、これから経済が正常化していくことが目指されているわけですから、いつまでも超低金利というわけにはいかないでしょう。金利が上がった時、国債の金利支払いのためにまた国債増発といった可能性が出てきます。

 更に、今の国際金融システムの中では、これは保有国債価格の下落につながりますから、金融不安の引き金になる可能性も大きいのではないでしょうか。

 やはりいつの世でも、どこの世界でも、片方の借金が際限なく増えていくというのは、どう考えても健全ではないようです。
 (ですから、基軸通貨国アメリカが、40年以上も一貫して経常収支赤字国で、世界中から借金し続けているというのは問題ですね。)

 その意味では、今日の日本の場合、外国が「日本の財政は不健全だ」と言うか言わないかは別として、日本自体として財政のバランスの回復が必要な事は間違いありません。
 そして土光臨調の時と違うのは、超高齢化社会の接近を控え、財政の合理化だけではその実現は困難という条件の下で、国民からの借金である国債発行を国民からの税金に振替える消費税増税にどうしても頼らなければならないというのが現実でしょう。

 賢明で真面目な日本国民は、その点は理解していて、ある程度の消費税増税は認めようと考えているでしょう。ただ、その際に起きる副作用をいかに最小限にするか、乃至は消費税増税を、日本経済健全化のプラス要因にすることは出来ないかといった、より前向きな方向を考えているのではないでしょうか。

 ということで、日本経済が正常な成長を取り戻そうとしている現在、当面、来年度からの問題として消費税増税の問題が出て来ているわけですが、では、現実に増税した時、どんな障害が起こりうるのか、考えてみましょう。


消費税増税:日本の国債残高はなぜ多い?

2013年08月12日 20時21分36秒 | 経済
消費税増税:日本の国債残高はなぜ多い?
 このブログでは、日本は「アリ型」の国(貯蓄をして将来に備える)、それに対してアメリカなどは「キリギリス型」の国(現在を楽しく)と例えてきました。
 今日の世界経済システムは、 アリ型の国の蓄えた貯蓄をキリギリス型の国が使う形になっています。

 おかげで損ばかりしてきた日本ですが、日本としてもこれからは「貯蓄してキリギリスに提供するのではなく「稼いだ分はすべて自分で使い切るべきだ 」とこのブログでは指摘してきました。G20もそういっています  。
 消費税問題を考える場合も、日本経済として、このスタンスを基本にすべきだと考えています。

 さて、日本の国債残高はGDPの2倍を超えて来ました。アメリカやイタリアでも1.1~1.3倍なのですから、単純比較すれば、まさに異常な高さであることは事実です。ただ日本の場合、国債は9割以上日本国民からの借金で、外国から借りているわけではありません。
 日本は黒字国で、日本国民は貯蓄が沢山あり、国債は安定資産ですから気軽に国内で引き受けてくれます。ですから、ついつい残高が増えてしまうようです。そこが、「国債を外国に買ってもらわなければならない」アメリカやイタリアとの違いです。

 
 いわば、日本の場合は、夫婦間の貸し借りのようなもので、例えて言えば、夫の小遣い月4万円と決めていた所、それでは足りず、どうしても妻から借りることになってしまう、妻は「もっと節約してよ。あなたもうウン十万円も私から借りてるのよ。」と言います。
 夫はどう節約しても無理なので、「小遣いを月6万円に上げてくれ」と言いたいところですが、「当面5万円に上げてくれないか。来年から2段階で6万円にしてほしい(消費税増税)」と言い出したといったところでしょうか。

 家に金がなくて、夫の小遣い増額のために借金するというのなら深刻ですが、家計には余裕があって、家計の貯金は毎年増えている(日本は万年黒字国)といった状況です。
 日本の政府がこの夫ほど真面目に節約しているかどうかは別として、政府(夫)がカネを使うのは国民(妻)が、景気刺激のために政府はもっとカネを出してくれと要求するからということもあります。(この辺が家庭内の夫と妻の関係とはいささか違って、問題を複雑にしています)。

 確かに、碌な利息も付かない、時には元本割れする金融商品に貯蓄をするよりも、夫の小遣いを増やして、夫に気持ち良く働いてもらうという選択もあるはずです。

 いいずれにしても日本の場合は、「黒字の家計の中」のやり繰りの問題です。アメリカやイタリアのように、家計が赤字ではありませんから、夫の小遣いも増やし、損ばかりする投資信託などは買うのをやめた方が、もっと快適な暮らしが出来るわけです。
 日本経済を考えれば、GDP(稼ぎ)を目一杯使った方が、インフラ投資や社会保障も良くなり、経済成長も高くなり、黒字がなくなるので、円高の可能性も遠のき、今の萎縮型の経済活動よりパフォーマンスが良くなる可能性が大きいのです。

 勿論、夫婦の間でも、夫の妻からの借金がいつまでも増え続けるというのは問題でしょう。同じように、国の場合も、余り国債残高が増えると具合が悪いことが起こります。特に、夫婦間では利息は付きませんが、国債には利息が付きます。(以下次回)


消費税増税論議を少し整理してみましょう

2013年08月11日 11時46分48秒 | 経済
消費税増税論議を少し整理してみましょう
 消費税増税は消費者にとって、どれだけの負担になるのでしょうか。先ずその金額を見てみましょう。あまり細かいことを言わず大まかで解り易くしてみます。
 
 日本のGDPが約500兆円その6割が個人消費です。ですから個人消費は約300兆円です。
 消費税が万遍なく1パーセント増えると消費者は同じ生活をするのに3兆円(人口1億として1人当たり年間3万円)余計支払うことになります。

 今の政府の計画では来年(2014年4月)に3パーセント引き上げて、8パーセントに、再来年 (2015年) 10月にさらに2パーセント引き上げて、今の5パーセントを10パーセントにするというのが政府の計画です。
 金額に直せば、来年は消費者にとって9兆円の負担、再来年はさらに半年分で3兆円、その翌年は通年ですから、更に3兆円負担増ということになります(経済成長等は省略した単純計算です)。

 この消費税増税は何のためでしょうか。大きく分けて、①日本の財政健全化のためと、②目的税として社会保障の財源を確保するため、の2つがあるようです。
 基本的には2つとも同じことなのでしょうが、アメリカ、EU、G20、IMFなどは、①の日本の財政健全化を重視し、日本国民は②の社会保障の財源確保を言うことが多いように思います。

 海外の意見は、何に使うかは別として、日本が財政を健全化してくれないと困ると言っているようです。世界経済にマイナスの影響をもたらすことを懸念すると言います。
 黒字経済を堅持して、国債も9割以上が国内消化で、外国に迷惑をかけていない日本に対し余計な心配をするより、自分たちの頭の蠅を追え(赤字垂れ流し対策を考えろ)と言いたい所ですが、一応、心配のお礼を言っておきましょう。

 多分本心は、日本が経常黒字を出せなくなって、円が暴落したり、貸している金を返せと言い出したりすると困るという、自分たちの都合をまず考えての事でしょう。出来れば日本の財政を健全化させ、また円高にして、日本を収奪しようという「下心」もあるのかもしれません。

 政府は高所得の高齢者も含めた負担で、総合的な社会保障の充実などと大風呂敷を広げていますが、それには消費税10パーセントではとても足りないでしょう。一方、国債発行を支える日本の経常黒字は此の所年間数兆円ぐらいに減っています。

 極めて難しい選択を迫られている日本ですが、一筋縄ではいかないこの問題を日本はどう解決していくべきでしょうか。この問題を少し突っ込んで考えてみましょう。



日銀政策決定会合と円高

2013年08月09日 14時09分31秒 | 経済
日銀政策決定会合と円高
 このところ日本経済に嫌なムードが漂っています。何となくじりじりと円高になっているからでしょう。 
 円高になって、最も早く反応するのは、株価です。そして、株価は、ビジネスマンの心理に大きな影響を与えるようです。

 折角$1=¥100がらみになって、街角の景気観も明るさを増してきたのに20円の円安が15円になってしまった。4分の1戻しだ、これでまた何かあって、さらに円高が進んだらたまらないな、といった感じでしょうか。

 円高の原因は、日銀政策決定会合(8月8日)という報道が多いようです。それも中身の問題ではなく、「政策据え置き」という言葉を捉えて、円高演出の口実にしているような投機筋の行動の説明が一般的なようです。

 投機筋というのは、短期的に相場の変動が大きいほど、ビジネスチャンスが大きいわけで、常に何か口実にするものはないかと探しているわけですから、長期的に見れば問題ないにしても、出来るだけ円高の口実にならないように、行動や発言をするというのは、それなりに大事なことのように思われます。
 「アメリカやヨーロッパが超金融緩和を続ける限り、日本も徹底した金融緩和を続けますから」ぐらいの「言い回し」があれば、事態はかなり違っていたでしょう。

 半分冗談で言えば、日銀総裁や政策委員の方々は、皆さん経済や金融の専門家でしょうけれども、投機やギャンブルの専門家ではないのでしょうから、そこまで気が回らないのかもしれませんが、現実の経営の場で、多くの企業は、日銀の発言、円の行方に相当な注意を払っていることに間違いはありません。
 
 特に、現状、日本経済は内外に多事多端で、企業行動は、国際政治環境から経済環境まで、特に円レートの行く末には、日本経済から個々の企業経営まで大きく影響されるという極めてタッチ―な時期にああります。

 表面は黙っていても、時に出て来る、「円高誘導は怪しからん」という本音 は、殆どの外国が持っているはずで、そうした中での円高は、政策当局自身は中、長期的は間違いなく「円安傾向にすると考えていても、現実に円高反転が起きてみれば、企業にとっては不安(疑心暗鬼)材料になるようです。

 今、日本経済が明るいのは、そのほとんどは、20円の円安 に負っているのが現状ですから、通貨当局は、間違っても円高にしないことを最大の使命として行動して頂くのが良いのではないかと思う所です。


日本の自信回復に期待する

2013年08月07日 20時46分35秒 | 経済
日本の自信回復に期待する
 先週来、多くの主要上場企業の2013年度4~6月の四半期決算報告が発表されていますが、円レート正常化の効果は大きく、予想通り(予想以上)の好業績の所が多いようです。
 マスコミの「トヨタ、リーマン以前を回復」などという見出しを始め、好業績を報告する記事内容が、経済全体の雰囲気を明るくしていることは明らかでしょう。
 
 株価は投機筋の思惑で乱高下していますが、水準そのものは一年前とは大違いです。
 此の大幅増益基調は、このブログでも繰り返し指摘していますように、円高によって失われていた日本企業の上げるべき業績が、円レートの正常化の実現で現実の数字となって現れたという事でしょう。

 かつて、「プラザ合意なかりせばの日本経済」 の簡易な推計をさせていただきましたが、円高で失われていた国富が、本来のあるべき形で日本企業、日本経済に帰属することになれば、これだけ変わるのだという現実を、改めて見せてくれたわけです。

 であってみれば、この好業績が日本企業、日本経済の実力だと考えて頂いて良いと思います。長い間の強いられた円高デフレで自信喪失と萎縮を繰り返していた日本経済、日本人が、漸く自らの実力の顕在化を実感することになったのです。
 日本経済も、日本企業も、企業労使も、日本社会も、勤勉に頑張ることで得られる本来の成果を改めて認識すべきではないでしょうか。

 もちろん順風満帆というわけではありません。円レートの正常化に対して、「円安誘導は怪しからん」という筋違いの意見もあります。容易に出口の発見できないアメリカの超金融緩和の行く方の不安定もあります。ドイツの援助と金融緩和で弥縫策から抜けられないユーロ加盟国の問題未解決という実態もあります。高成長のひずみ対策に追われる中国経済の不安もあります。日本に多くの難題を押し付けてくるであろうTPPの先行きも予断を許しません。

 しかし、「何かあったらさし当たって円高にしておけば・・・」という今までの国際投機筋の慣行を阻止する限りにおいて、日本経済は健全であり続けられるでしょうし、政府・日銀は、それこそが「日本を防衛する事」と心得、余計なことを考えずに円高阻止にあらゆる策を講じるべきでしょう。

 その努力も含めて、恐らくこれから、日本人、日本企業、日本経済が自信を取り戻す時期に入ると思われます。長かった失われた20年の悪夢を払拭し、改めて自信を持って、日本経済の正常な発展、それによる世界経済への貢献を目指し、確実に前進する日本経済、そして日本のあるべき姿を取り戻すことが十分期待できるのではないでしょうか。


きめ細かい高付加価値経営を目指して:日本復活の核心

2013年08月03日 23時17分38秒 | 経済
きめ細かい高付加価値経営を目指して:日本復活の核心
 このブログでは繰り返し述べて来ていますが、企業の目的は、地球上の人々の「より豊かでより快適な生活」の実現のために活動することでしょう。
 かつては「豊かさの実現のため」という言い方もされました。しかし単なる経済的豊かさが、より大きなGDPと考えられ、公害や環境破壊という副産物を生みました。

 経済的豊かさより心の豊かさが求められたり、スローフード、スローライフといったことが言われたりするのは、経済的豊かさより心の豊かさを重視したいという人々の願望の表れでしょう。

 そこでは「経済発展とは何なのか」を問われるかもしれません。しかし現実に起こっていることは、 より高い経済レベルの上により質の高い快適な社会が存在する ということだったようです。人間はやはり欲張りです.高い経済レベルは落とさずに、心の豊かさを重視したいというのが本音でしょう。

 であるならば、矢張り経済成長は必要です。豊かさも快適さの欲しいというのなら、創造したGDPを豊かさと快適さの両方に配分しながら、「より豊か」「より快適」を実現していかなければなりません。
 そしてそれを相対的に小さく狭くなった地球という環境の中で巧みに実現していくきめの細かい、地球上のあらゆる点に配慮した経済発展の「型」が必要になるのでしょう。

 実はこの点に今後の日本の活路があると私は感じています。日本の文化遺産の1つである、「里山」 のように、自然と人間のコラボレーションによって、より豊かな生産とより豊かな環境が現実に生まれてきます。

 高付加価値を実現する技術開発も、例えば、太陽光から化石燃料までの天然資源を最も有効に活用する技術革新を目指せば、環境汚染も資源争奪競争も大きく改善するでしょう。これはひいては「世界平和にも大きく貢献」するでしょう。

 最も身近な電力で言えば、ピーク対応のキャパシティー確保への盲進ではなく、 電力の貯蔵 や発電の分散で、発電設備の無駄の部分を減らすといった取組も大事です。
 現に日本はこの分野では世界のトップを走っています。一例を挙げれば、燃料電池開発や電力を水素に変えて貯蔵するといった技術はまさにその方向でしょう。

 水処理や高度な集約農業、水産養殖技術なども、素晴らしい発展を見せています。日本の伝統文化の上に新時代の技術開発を載せる、日本なら出来そうな気がします。