tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

大寒の霜柱、片隅の春:リュウキンカ

2021年01月31日 10時12分16秒 | 環境
大寒の霜柱、片隅の春:リュウキンカ
 今日で1月も終わり、もうすぐ今年は1日早い立春です。

 暦が「まだ大寒ですよ」と言いたかったのでしょうか、都下の国分寺では早朝の気温は零下2℃、寒い朝でした。

 朝の日課、生ごみを庭の端に掘った穴に捨てに出ましたら、狭い庭もチューリップの球根を植えた花壇も霜柱で一段高くなっていました。

 今年はずっとカラカラに乾いていましたので、霜柱が立たなかったのですが、先日来の霙や雨で立派な霜柱が立ったようす。

「 サクサクと霜柱を踏んで」という昔の教科書の一説を口の中で暗唱しながらごみを処理して、振り返れば、踏んだところは、2㎝近い霜柱が横倒しに倒れていました。



 その足で玄関わきの塀際のリュウキンカ(立金花)を見に行きました。ここは午前中だけ日が当たるところで、ここのリュウキンカの株は開花が最も早いのです。開花に気づいたのは昨日夕刊を取りに行った時ですが、予想通り、未だ1輪だけですが綺麗に咲いていました。





 このところ、わが家の庭で最も早く咲いてくれる花としてリュウキンカの事は、毎年このブログで取り上げているのですが、昨年「今年は早く」と書いたのが 2月の15日です。

 それにしても今年の早さは異常で、まだ1月、大寒の最中です。(なぜこんなに早いのかは解りませんが)
 確かにあけぼのつつじの下の株などは、未だ良く見れば蕾が出てきた程度ですが、玄関の塀際の株の開花の速さは驚きです。

 やはり毎朝、朝日を浴びると植物も特別元気が出るのでしょうか。そういえば今年は晴天の日が多かったですね。よく見ると同じように日の当たる玄関わきの窓の下の原種のチューっリップも、細い鋭い浅緑の葉が、少しづつ伸びてきていました。



 狭い庭でも、大寒と早春が混在する面白さを、すっきり晴れた空の下で爽やかに感じる日曜日の朝でした。 








 

ダイエットと緊急事態宣言は似ている

2021年01月29日 23時07分35秒 | 政治
ダイエットと緊急事態宣言は似ている
 若い時からの知人で、若い時はスリムでハンサムだったおとこがいます。 
 中年になって、かつての60キロが80キロ近くなって堂々として貫禄十分になりました。会社での地位も上がって、如何にもそれにふさわしい体格でした。

 小柄で痩せている私には大変羨ましく思えるのですが、本人は痩せたいと言ってダイエットを始めました。
 その成果か翌年には、精悍で行動的な男という感じになって、また出世したようでした。

 「リバウンドは大丈夫かい」と聞きましたら、「ダイエットしているうちに胃袋が小さくなったようで、大食いしなくなったんだよ」という返事でした。

 つけ加えて、「リバウンドしているのは、大体元の大食いに戻っているからだよ。おれの胃袋はよく言う事を聞いてくれたから良かったみたいだね」と言っていました。

 そんな昔のことを思い出したのは、2月7日で、対コロナ緊急事態宣伝をどうするといった話が喧しくなってきたからです。

 東京の新規感染者数が500人を切ったらいいんじゃないかとか、データがステージ3になったらOKだろうとか、いろいろな意見がるようです。

 しかし考えてみれば、そうした基準を決めるというのも大変奇妙な話のようにも思えるのです。

 新規感染者や重傷者、死亡者などの数字が減ってきたとしても、それは緊急事態宣言で、人と人との接触の機会が減ったからで、いわばダイエットと同じです。
 
 私の友人の場合は,ダイエットをしているうちに、胃袋が小さくなって、ダイエットの状態が日常になったことでリバウンドがなかったのでしょう。

 コロナで言えば、緊急事態宣言が日常になれば、第4波は起きないでしょう。
 しかし、それでは人間の正常な社会生活、経済活動が成り立ちません。
 
大事なことは、人と人の接触が以前に戻って、さらに、補正予算のGoToをやっても、第4波は起きないという状態を作り出すことです。

 はっきりしていることは、人間とコロナウィルスの関係が変わらない限り、緊急事態を解除すれば、コロナ感染は集団免疫が完成するまで続くという事ではないでしょうか。

 人間とコロナウィルスの関係を変えるのは、現状ではワクチンしかないわけですから、どう考えても、ここは、ワクチンによるコロナ制圧が先で、緊急事態宣言の発出と解除をいくら繰り返しても、本当の解決にはならないことをよく考えて議論をしてほしいものです。

アストラゼネカ、日本でワクチン製造へ

2021年01月28日 18時02分00秒 | 科学技術
アストラゼネカ、日本でワクチン製造へ
 新型コロナ克服の決め手になるかと期待されているワクチンについての朗報が飛び込んで来ました。

 英国のアストラゼネカ社と日本政府は1億2000万回分のワクチン供給の契約を結んでいましたが、このほど、その内、まず3000万回分を3月までに輸入することが決まり、後の9000万回分を日本で製造することになったという事です。

 日本のワクチン産業については、日本政府そのものが全く考えも態度も表明したこともなく、すべては輸入枠確保の努力しか言っていなかったので、この報道は驚きでした。

 もちろん、アストラゼネカは東京に支社があり、アストラゼネカジャパンという日本法人もあり、今回の主役はそこでしょうが、実際にワクチンの製造をするのはアストラゼネカからの委託を受けた日本の中小医薬品メーカーです。

 ネットで見ましたらその会社は、兵庫県芦屋のJCRファーマという会社で、アストラゼネカから製造の打診をされ、トップ以下全社一丸でやる気がひしひし窺われるところです。

 ワクチンのもとになる生きたウィルスをアストラゼネカが供給し、それをJCRファーマが大量に培養してワクチンにまで仕上げるという仕事で、アストラゼネカの田中執行役員は、「JCRファーマの能力の高さを認めたので」といい、JCRファーマの芦田会長は「初めは断りましたが、遺伝子治療をやっているチームがあって、出来ないことは無いじゃないかというので引き受けました」「失敗できないと感じています。しかし、こういう時に作れと言われたら作るのが使命かもしれない」とのことです。

 同社研究本部の岡本さんは「我々の技術があったらできるなと。(製造)テストでは思っていた以上に順調に進めることができました」とのことです。(以上MBSnewsより)

加藤官房長官は、今日の記者会見で、「ワクチンの生産設備を整備する厚生労働省の補助制度への申請を27日に行った」と説明し「ワクチンを国内で生産できる体制を確立することは大変重要だ。パンデミックに備えて生産体制の整備をしっかりと進めていく」と言ったようです。

 何事も後追いになっている現政権ですが、出来れば1年前、遅くとも半年前に、その言葉を聞きたかったと思う人は少なくないのではないでしょうか。

 これが刺激になって、日本でもコロナワクチンの国内開発、国内生産が進むのでしょうか、それとも、これまでのような状態が続くのでしょうか。今後の業界の動きは、政府の方針と、力の入れ方次第のような気がするところです。

 

    

春闘を機会に、政労使の緊密な連携を

2021年01月27日 10時09分03秒 | 労働
春闘を機会に、政労使の緊密な連携を
 マスコミによれば、昨日が2021春闘のキックオフという事ですが、このコロナ禍の条件下で、労使が為すべきことは、例年の春闘とは、だいぶ違ったものになるのでしょう。

 労働側の連合は、一応、定期昇給プラスベアという形の賃金要求は基本方針としては掲げるという事ですが、片方で、現場では、賃金よりも雇用という意見は強いでしょう。リーダー格のトヨタ労連はそれぞれの単組の自主判断尊重という姿勢のようです。

 経営サイドの経団連は、(賃金上昇というモメンタムは維持しながら)一律に賃上げを考えるのは難しいという立場で、基本的には各企業の自主判断に任せるという事でしょうが、コロナ禍がそれぞれの産業・企業に与える影響は、様々ですからそれは当然でしょう。

 一方で、賃金や、雇用の問題に大変熱心なのは政府で、本来使用者負担を原資とする雇用調整補正金に政府も予算を割こうというのでしょうか(その辺の説明はありませんが)、賃金の補填割合を100%にしたり、申請しやすいように支援したり(選挙を意識してでしょうか)大変な気の遣い様です。

 これまでの戦後の日本経済の中でも、不況は何度も繰り返しています、最大の試練は二度にわたる以オイルショックでした。
 そして、そうした折には、労使がいろいろな形で協力し、賃金が大事か、雇用が大事かを論じたり、多くの場合、雇用重視という面では労使一致し、ワークシェアリングの検討や、在籍出向などで、従業員の貸し借り(今回も、自動車産業始まっていますが)、失業なき労働移動が望ましいという立場から産業雇用安定センターの設立など、多様な努力をしてきています。

 そうして歴史を見れば、今回のコロナ不況下においても、政府と労使の緊密な連携の下で、非常事態の中の緊急避難という側面、更には、近い将来くるであろうコロナ後の産業、企業、雇用の在り方などを、十分に論じて、短期だけでなく中長期も見据えつつ、政策制度と産業・労働の現場のすり合わせをし、今後の道を探ることが極めて大切だと考えるところです。

 端的に言って、今、政府は、補正予算でも、コロナ対策と、産業活動の二兎を追っているようですが、現場を担う労使がどう考えているか、先ずコロナ制圧、そして産業活動という選択肢はないのか、こうした問題も、政府と労使の緊密な話し合いがあって初めて、ベストの解が選択できるのではないでしょうか。

 かつて、春闘は、年に一度の労使の大学習集会といわれていました。政府が些か頼りない現在、労使はコロナ克服についても積極的に協力し、産業活動の現場から強力に発言・行動し、政府とともに、より良いコロナ後に向けての協調行動をとるべく努力するときではないでしょうか。
 

インドの3億人ワクチン接種計画に驚嘆

2021年01月25日 20時42分40秒 | 科学技術
インドの3億人ワクチン接種計画に驚嘆
 世界的製薬大国である事はあまり知られていないインドですが、この夏までに、3億人に新型コロナ・ワクチンを接種するとモディ首相が発表しました。

 いまやアメリカに次ぐ新型コロナ感染国になって心配されていたインドですが、この発表には度肝を抜かれた方も多いのではないかと思います。

 インドは、IT 技術では、世界に冠たる実績で知らますが、製薬大国の側面は、それほど有名ではありませんでした。
 今回の報道では「世界の薬局」などという見出しもありますが、私もインドの製薬業界の企業規模と収益力については、かつて驚かされた経験があります。

 現役の頃、たまたま知り合って一緒に仕事をしたインド人で、インドの外資系製薬会社の役員で、コンサルタントもやっていた友人がいまして、彼が私どもの使っていた経営分析手法が面白いというので、インドの製薬会社10社のデータをそれに当てはめて作って見せてくれたのです。

 いつも、「インドにはどんな薬でもあるよ」などと冗談を言っていましたが、「こんなデータ出してもいいの?」と聞きましたら、「上場企業の公表データだから問題ない」とのことでした。

 拝見しますと、規模が大きいだけでなく、その収益率の高さはまさに驚嘆に値するものでした。いくつかの会社で、総額人件費よりも課税前利益の額の方が大きいといった実績が公表されていたのです。  

 その後インドは、ジェネリック薬品の大国だという事は、多く聞くところでしたが、恐らく今回の発表の背後には、そうした中で培った技術・ノーハウのっ蓄積が生きているのでしょう。

  報道によれば、今回接種するワクチンは、イギリスのアストラゼネカと提携する1社と、自国産ワクチンの1社という事ですが、製薬技術とIT技術が、インド流に噛み合った結果でしょうか、速さも、供給能力も、大変なものだとまさに驚嘆です。

 すでにネパールなどへの輸出も進めつつあるという事ですが、モディ首相が強調するように「世界最大のワクチン・プロジェクト」で、政府の力の入れ方の凄さが窺われます。

 先週の国会では、維新の片山氏が、ワクチン国産の重要性を指摘していましたが、現政権は当初から、国民に対しては外国産ワクチンの輸入枠確保についてしか説明していません。
 国産ワクチンの開発について、日本政府として本気で取り組もうという気概を、総理からも、担当大臣からも聞いたことはありません。

 戦後一貫して技術立国、技術大国の目指すと言ってきている日本です。しかし、数字で見れば、この10年、日本の研究開発費はほとんど伸びていません(https://blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/4d4fd6af93bfe3f6a21a1a047aac35b1)。
 
 研究開発は一朝にして成るものではありません。不断の人間と資本への投資、長い懐妊期間が必要です。
 残念ながら日本は、その努力に後れを取ってしまったようです。しかも、政府は、それへの反省の心も持ち合わせていないように見えます。

 目先の事にかまけて、バラマキや人気取りといったポピュリズムに陥った如く見える現状の日本の政治の在り方に、日本の将来を任せて日本は何処に行くのでしょうか。

カジノもトランプさん共に去ってほしいですね

2021年01月23日 20時32分18秒 | 文化社会
カジノもトランプさん共に去ってほしいですね
 このブログでは、1年前に「カジノ抜きのIRは如何」と書きました。
 
 その前にも「カジノで観光客を?」や「カジノへの執念は卑しさの表れ」、「北海道のIR誘致断念に賛意」など、思う所を書いてきました。

 トランプさんは「この連中に日本でカジノをやらせてくれないか」と当時の安倍総理に、3人ほどの胴元の候補を紹介してくれたようでした。

 そして安倍さんは「前向きに検討しましょう」とでもいったのでしょうか。その後日本では3か所のjカジノをIR建設という名目のもとに作る事になって、横浜市をはじめ立候補しているところも出ています。
 オマケもついて、早くも中國の進出希望者との関係で汚職事件(?)まで出て来ました。(ギャンブルは犯罪の温床です)

 日本では歴史的に御法度のギャンブルを政府が公認してトランプさんの顔を立て、そのおこぼれに与かろう等というさもしい根性は、この際「トランプと共に去りぬ」か「安倍と共に去りぬ」で、はっきりとおさらばして頂きたいのですが、現政権はどうでしょうか。

 一年前の「カジノ抜きのIRは如何」には勿論政府の返答はありませんが、北海道の知事さんは、はっきりと反対の態度を表明されました。

 心ある日本人は、ギャンブルをやりたくて日本に来る人ではなくて、日本の歴史や文化、世界で最も安全と言われる日本社会訪れて日本の人達との交流、そして豊富な観光資源目の当たりにしたいといった目的で来られる人達こそ歓迎という気持ちでしょう。

 もう多くは書きませんが、カードゲームなら。汚れたカードはもう捨てて、すべてニューディールで明るく健全な観光客を招くことを考えたら如何でしょうか。


 

アメリカの「トランプ現象」を考える

2021年01月22日 21時26分15秒 | 文化社会
アメリカの「トランプ現象」を考える
 1月20日、バイデンさんが、新しいアメリカ大統領として無事就任することになりました。
 無事、などという言葉を使うのもおかしいと思いながらも、武装した州兵の警備の様子を見せられれば、平穏に就任式を行うのは大変な事だったのではないかと想像してしまうからです。

 トランプさんは退任のスピーチで、「私たちは、何らかの形で、帰ってくる」(
We will be back in some form)と言っていたという事です。
 これを熱狂的に支持した人達も多かったようです。

 我々の目から見れば、 覇権国の大統領が、自国第一を掲げ、国連とその関連組織も国際関係も蔑ろにして、世界の安定を意識するバランス感覚もなく突っ走るといった行動はどう考えても不適切としか思えません。

 私の知人で、日本で十年ほど仕事をしたのち、アメリカに転職した女性が、トランプさんの大統領就任の直前の年賀状代わりのXmasカードに「アメリカもこれから4年間、世界中から馬鹿にされそうです」と書いてきたのを覚えていますが、まさに馬鹿にされたか、迷惑がられたかの4年間でした。
 
 確かに4年後の大統領選で負けましたから、私もアメリカの良識が発揮されたと、このブログにも書きましたが、アメリカの現実は、我々の認識よりもっとずっと深刻だった様です。

 バイデンさんの勝利も、最後まで僅差の勝負でした。
そして選挙戦にはオマケもついて、トランプさんは、選挙に不正があると言って譲らず、それを無条件で支持する、半数近い選挙民がいたわけです。

 トランプさんは司法の場で勝負といい続け、保守派を多く任命した最高裁まで戦う事を目指しましたが、司法は選挙に不正はないと認め、混乱には一応決着がつたという事でしょう。

 しかし、それですべて収まったわけではありません。
トランプ支持者の数は巨大で、しかも、無条件でトランプ支持を頑なに通しているという、まさに信者のような人たちです。 
 その人たちの国会乱入事件が起き、やっと反省した人達もいたようですが、トランプ支持者はまだ巨大で頑なで、バイデンさんはこれから国民の融和に苦労するだろうと言われています。
 
 第二次大戦後、スイスのジュネーブに本部のあった国際連盟を国際連合に改組し、本部をニューヨークに置き、自由世界をリードし、世界最高の学術、文化、生活を実現して、覇権国の役割を果たしてきたアメリカが、ここにきて急速に変質し、トランプを大統領に選び、「アメリカ・ファースト」のトランプ現象を世界に撒き散らし、それによって巨大な支持層を固め、4年義も再選かといわれるまでに変質したことは、世界史の中でも驚きに値するのではないでしょうか。

 歴史に「もし」はありませんが、「もし」トランプさんが再選され、トランプ現象が更に世界を覆うようになったら、世界はどうなったでしょうか。

 世界の最先進国のアメリカで、こうしたトランプ現象というべき事態が起きたのは何故か、これは、今後全世界、特に自由世界で、徹底して研究されるべき対象ではないかと思われるところです。

 その中で、アメリカと最も親密な同盟国、そしてトランプと最も親密だった日本政府は、このアメリカの経験から、多くの重い課題を学ばなければないでしょう。

そして今後の日米関係にそれをいかに生かし、また、今後の、世界の在り方にかなる貢献がかのうかを、単なるアメリカ追随ではなく、自ら本気で考えていかなければならないのではないでしょうか。

 今の日本政府には、その心構え、そのための知恵があるのでしょうか。なにか心もとないと感じる人は多いのではないでしょうか。

2021年度「政府経済見通し」を見る

2021年01月21日 22時32分41秒 | 経済
2021年度「政府経済見通し」を見る
 今週月曜、18日に内閣府より来年度(平成3年度)の「政府経済見通し」の閣議決定版が発表されました。

 昨年出した平成2年度の「政府経済見通し」は、「見通し」ではなく「希望数値」だなどと言われましたが、結局はコロナ禍で、現実は政府の希望とは反対のマイナス成長になっています。

 来年度の「見通しも」多分に希望的なものですが、国民も、まともな経済への復帰を希望していますから、そのつもりで点検してみたいと思います。

 まず実質GDP の成長率ですが、今年度の「実績見込み」5.2%のマイナス成長、そして来年度の「見込み」はプラス4.0%で、今年のコロナによる落ち込みを7~8割がた取り返すという数字になっています。(以下、数字はすべて実質値です)
 
 勿論、コロナは第3波で終わり、4波は避けられ、ワクチン接種は順調にいき、コロナ禍は沈静に向かい、オリンピック、パラリンピックも何とか実施され、世界経済も、日本経済もコロナ終息の見通しが立って、ほっと一息という前提でしょう。

 世界経済については「国際機関等の見通しを基準にした」と注書きしています。

 中身を見ますと、GDPの過半を占める「民間最終消費支出」が今年度のマイナス6.0%から3.9%のプラスに、民間住宅も同マイナス6.7%から1.8%プラスに小幅回復、頼みの民間企業設備は、あまり期待していないようで、同マイナス8.1%から2.9%のプラスの回復の見込みです。

 こう見ますと、確かに回復は回復ですが、今年度の落ち込みに比べれば、回復な鈍く、政府としては、民間の回復のペースについては慎重な見方が目立つといった所です。

 一方、政府支出の方を見ますと、巨大な補正予算を組んだ今年度が、政府支出全体で3.7%のプラスで、内、政府消費支出が3.2%、固定資本形成(政府の投資支出)が5.4%です。公共投資でGDPの落ち込みを支えようとした形ですが、1人10万円や、GoToの補助金、企業への給付金などは、合計10兆円~20兆円という巨大な額ですが、GDPにはそれほど反映されていないような気がします。

 来年度については,政府消費支出、固定資本形成は共に3.3%のプラスで、ほぼ今年度並みの財政テコ入れを見込んでいるようです。
 経済成長には役に立つでしょうが、いずれ赤字財政で賄うのでしょうから、財政再建はますます遠のき、将来への心配の先送りは明らかです。

 そして、予想外に大きくのGDPに寄与することになっているのが財貨サービスの純輸出(輸出-輸入)です(輸出には外国人観光客の買い物も含む)。
 昨年度-6.7%、今年度マイナス13.1%だった輸出の伸びが来年度は11.4%のプラスになる見通しで、来年度のGDP成長見込みの4.0%の内0.7%が純輸出によるものです。

 その他気の付くもの挙げますと。雇用者報酬の伸びは1.5%、雇用者の伸びは0.7%で、この差0.8ポイントは、1人当たりの賃金(正しくは人件費)上昇の見通し、企業所得は今年度19.4%のマイナス、来年度は17.2%のプラスで、かなり回復、失業率も今年度3.1%から来年度は2.7%に改善、世界のGDP成長率は5.9%で日本より高い(国際機関予測)、円レートは $1=¥104.4としている(円高になると成長率は見通しより落ちる)などです。

 コロナ次第、ワクチン次第、日本人の適切な行動次第、そして最も重要なのは「政府の誤りない政策の実行」次第の来年度ですが、何とか予想外の改善が実現して欲しいものです。

安易に賛成できないコロナ特措法

2021年01月19日 16時35分07秒 | 文化社会
安易に賛成できないコロナ特措法
 菅内閣は、通常国会で早期に特措法の改正を行い、新型コロナウィルスの感染拡大を防止しようという姿勢のようです。

 たしかに、新型コロナウィルスの 感染爆発がここまで来ると「新型コロナウィルス対策特別措置法」を更に厳しいものにし、感染拡大を防ぐことが大事というのは理屈でしょう。 

 しかし今回の改正には「1年以下の懲役」とか「100万円以下の罰金とか」いった、異常と感じられるような厳しい罰則がみられます。
 
 勿論、感染防止に非協力的な場合、罰則というのも、国民の安全な生活を確保する為には、現状を見れば必要との意見もありましょう。
 しかし、考えてみなければならないのは、「なぜこんな感染の爆発が起きたのか」そして一歩ひいて考えれば、日本人はそんな厳しい罰則を必要とするような国民だったのかという疑問です。

 昨年4-5月の緊急事態宣言の時を思い出してください、あの時は、文句や愚痴はありましたが、みんな政府の要請通りに「蟄居・閉門だよ」などと言いながら、素直に従っていました。

 結果、第1波は予想通りの結果を生んだのでしょう。宣言を4月から5月に1か月伸ばした政府は、その間に適切な対応を取るのだろうと思っていた人は多かったと思います。わたくしもそう思っていました。

 しかし、政府は、何もしませんでした。これでは解除すれば、また感染が増えると思った人は多かったでしょう。そしてその通りになりました。その後は、おカネのバラマキとGoToです、その結果が現状です。そしてやり直しの緊急事態宣言です。

 振り返れば、これまでの政府の取ってきた政策と、今回の「宣言」を軽く見る日本人の増加の間には関係があると思わざるを得ません。その理由は政府の言う事を聞いても事態は改善しないという「政府の政策への不信」が多く聞かれることです。
 
 今回の厳罰主義の原因を作ったのは、これまでの政府の対コロナ政策の在り方だったという事にになるようです。

 多少先走りかもしれませんが、こうした政府の態度、失敗してもその認識を持たず、生じた混乱に対して規制を厳しくしてそれに従う事を強制する・・・。これは危険な道、これを繰返して行くことが、民主主義から独裁制への道なのです。

 恐らく菅総理も、周囲の人達も、日本を独裁制の国にしようと思ってはいないでしょう。安倍政権もそうでしたが、ウソをホントと言いくるめて、それを押し通していく先には独裁制が待っているのです。

 以前の自民党は、党内に是々非々があったように思います。今は党内は「是」ばかりです。「非」は葬り去られるのでしょうか。今の自民党と自民党政権は、多分意識もせずに「目先のこと」にかまけて、危険水域の水際にまで来ているのではないでしょうか。

 アメリカでは共和党の中に、今やっと「非」を言う人たちが出てきました。少し遅すぎましたが、これは健全性が残っている証拠です。
 さて日本の場合はどうなるのでしょうか。

 

2020年中国経済成長率2.3%に思う

2021年01月18日 23時03分42秒 | 経済
2020年中国経済成長率2.3%に思う
 中国国家統計局は、今日、中国の2020年の実質経済成長率の速報で2.3%になったと発表しました。

 速報とはいえ凄く早いですね。人口も国土も日本の10倍以上の国です。日本は10-12月の四半期速報が2月中旬に出るのですから年報はその時かその後でしょう。

 あまり速いので、よく、中国の統計は信用できないなどとも言われますが、ここでは信用しましょう。

 この数字を聞いてすぐに思ったのは、日本はマイナス成長という予想と比較して残念という事と、中国は良くやったなという感慨です。

 類似の経験は以前にもあります。アメリカが日本に円高を要請し(プラザ合意)、日本はOKといったばかりに結果は平成円高不況への突入でした。

 それに引き換え、中国はアメリカの人民元高要請を常に拒絶し、「人民元の価値はアメリカに決め貰うものではない」といっていました。
 中国政府の方が、問題に対処するやり方は、日本より上手だなと思いました。   

 今回は、外交問題でなく、コロナ対応ですが、感想は「やっぱり、中国政府の方が日本より上手だな」 というものです。

 コロナ対応で成功している国や地域は、中国、ベトナム、台湾などでしょうか。
 台湾については。閣僚として、その道のプロが就いている、などなどの解説があり、さすが台湾と理解している人も多いでしょう。

 中國やベトナムは共産党一党独裁の国だから政策がやり易いという意見もあるでしょう。
それにしても、ベトナムは、2か月弱でコロナを制圧、死者は35人という事です。
 中国の死者は4635人です。日本は今日現在で4,583人まだまだ増加します。

 ここでコロナ問題を論じたのは、経済成長を確保したいのなら、先ずコロナの制圧が必須という事を明確にしたかったからです。欧米諸国はことごとく失敗です。

 こうした状況の中でつくづく思うのは、日本では、第1波でコロナを制圧すべきだったという事です。当時からのグラフは毎日TVでみられますが、昨年4・.5月の緊急事態宣言の時の柱の低さを見てください。

 あの2か月が最も重要な時期だったのです。あの時に、後から補正予算で注ぎ込んだ巨大な対策費の何分の1かで、「検査と隔離」を徹底すれば、日本は最もコロナ対策に成功した国の1つになっていたでしょう。

 残念ながら、政府は国民が2か月の蟄居で与えたチャンスを活用しませんでした。それが今の。中国のプラス成長、日本のマイナス成長の差になっているのは明らかでしょう。

 対コロナの闘いは消耗戦です。消耗戦の中で経済成長することは不可能です、要は、消耗戦の期間を出来るだけ早く片付け、安心して全力を経済成長に注ぎ込むという手順しかないと知るべきでしょう。
 
 恐らく、残る対策は、ワクチンの早期徹底投与でしょう。しかし何故か世界の 主要国がワクチン開発を競う中で、日本政府は、他国の開発したワクチンの数量の確保が目標です。

当初ワクチンの自主開発に意気込んだ国内機関も、その後は開発戦列に顔をだしていません。日本の開発力は落ちてしまったのでしょうか。

 しかし、まだまだ日本国民は、基本的に真面目です、政府が真剣に国民の声を聴き、その声に応えるべく国民に訴えかければ、多分本来の日本に復元する力は持っていると思っています。

二兎を追うのか追わないのか

2021年01月17日 14時34分45秒 | 政治
二兎を追うのか追わないのか
 今日もNHKの日曜討論で、 コロナの問題をやっていました。
 政府からは西村再生相、そして医師会、研究機関、経済界、労働界などの代表者がメンバーで、真剣な討論をしておられました。
 
 出席者の関係からという事もあるのですが、聞き終わって、何か最後に疑問とし残ってしまった点が2つありました。

 1つは、政府代表は西川再生相ですが、経済再生相ですから、目標は日本経済の再生のシナリオをお持ちだと思うのですが、アベノミクスからの再生、そしてコロナ禍からの再生のシナリオについての認識が解らなかったことです。
 
 そしてもう1つは経済界、労働界の代表が出ておられましたが、コロナ禍に対応する労使の協力といった視点が良く見えなかったという点です。

 勿論、重要性としては最初の問題が、最も重要で、2つ目の問題は、コロナ禍の中で、雇用問題の深刻化の様相もありますので、これには、労使が協力して対応するような姿勢が重要のように以思われます。そのあたりの労使協力の取り組みがあまり見えなかったという点です。

 二番目の方は、私の、個人的な「望蜀の思い」によるものかもしれませんが、あえて付け加えておきたいと思います。

 西村再生相はコロナ以前からのお仕事で、アベノミクスが経済停滞状態になっているので、そこからの再生が本来の使命だったのでしょう。コロナ問題に経済再生相が出るというのは、当然、コロな問題そのものよりも、コロナの中でも、日本経済をなんとか健全な発展軌道に乗せることが目標でしょうから、この間までは、GoToキャンペーに一生懸命だったのでしょう。

 しかし、その結果(政府はエビデンスがないと言っていますが)第3波の感染爆発状態となり、改めて緊急事態宣言発出となっているのです。

 こういう状態の中ですから、経済再生相としては、コロナ対策と経済生成の関係を、誰にも解りやすく、国民に説明する必要があると思うのですが、残念ながらそのあたりが、どうもはっきりしなかったようです。

 GoToキャンペーンの時は、コロナ感染者の抑制については、国民の努力と専門分野の人達に任せ、出来るだけ経済の落ち込みを小さくするという視点で、いわばコロナ制圧と経済再生の「二兎を追った」のですが、矢張り新型コロナウィルスはたやすい相手ではないという現実に直面することになって、結局「緊急事態宣言」ですから、新たな経済再生の力シナリオに関する何らかの発言があるかと思っていました。

 はっきりいってしまえば、「コロナを抑えながら経済再生もやる]という二兎を追う事を続けるのか、「経済再生のためには、先ずコロナの制圧が必要」というシナリオに切り替えるのか、あるいは、もっといい考えがあるのかを国民に示す(本来なら諮る)べきではないかという事です。
 それこそが、日本経済の再生を願う国民に対する経済再生相の役割でしょう。抽象的な発言に終わったのが残念です。

 第2の疑問につきましては、産業活動と国民生活の接点におられるのは労使の代表だと思うのですが、かつて、日本経済が健全で、世界が注目していたころの日本では、国家的な問題が起きれば、日本の労使は常に話し合い、時に協力して、労使に出来ることはやり、政府のすべき事は政府に提言するという行動をとったように思います。今、国難ともいうべきコロナ対策についても、労使の話し合いと協力で、出来る事も多々あると思われますので、敢えて触れることにし次第です。個別企業では、協力して多様な取り組みをしている所も多いのではないでしょうか。
 
 

ご存知でした?アルミで水素製造

2021年01月15日 17時05分28秒 | 科学技術
ご存知でした?アルミで水素製造
 先日は、CNF(セルローズ・ナノ・ファイバー)製造の大幅コストダウンに東亜合成が成功したというニュースをご紹介しましたが、今回も未来につながる科学技術のご紹介です。

 富山県高岡市のアルハイテックという企業が、世界で初めてのアルミの廃材で水素を作るという実証実験装置作って研究を進め、この春にも水素製造装置の外販に入ろうという勢いだそうです。

 すでに地方紙でも日経新聞でも、日経産業新聞でも報道されていますから、ご承知の方も多いかと思いますが、世界で初めての装置(同社)という事ですし、アルミ(アルミの廃材)があればどこでも水素が作れるという魔法のようなお話ですので、つい取り上げたくなってしまいました。

 アルミは水と反応させれば水素を発生するという事はどこかで習った記憶がありますが、それが実用化されつつあるという事は、日本の技術開発もやっぱり凄いのかというのが実感です。

 同社はトヨタと組んでという事ですが、確かにアルミエンジンを作ればアルミの廃材は山ほど出るわけで、再利用しにくいアルミの廃材から水素という事であれば、素晴らしいことです。

 アルミが水と反応して水素を作るには、錆びていない純粋のアルミでなければいけないのだそうですが、その辺の技術は私には解りません。勿論その辺りが技術革新の心臓なのでしょうが、同社のHP などを見ますと、水素製造効率を高め、利用した後の水酸化アルミニウムは繊維製品の難燃剤の原材料として必要なものという結構なお話のようです。

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のニュースにもアルハイテックの紹介がありまして、実証装置は1時間2㎏の水素を生産できるが、早晩5㎏にする、とあります。
 
 5kgというとトヨタの水素自動車ミライが700キロ走れる量だという事です。どこでも、いつでも水素が簡単に製造できるようになると、水素自動車には随分便利になるという事でしょう。

 ネットで見ますと、何か所もの高専で、「アルミで水素」の研究が盛んなようです。
 水素の時代が来ると言われていますが、かつて取り上げたこともある 燃料電池 の多様な用途の開発・普及につながる可能性は大きいのではないでしょうか。

 こうした日本の中小企業の元気さが、ここ数年の沈滞とコロナの追い打ちで低迷・混乱の日本経済・社会の、力強い支えになって呉れそうな気もするところです。

政権はデータ音痴か

2021年01月14日 10時13分38秒 | 政治
政権はデータ音痴か
 最近の世の中はAI活用が盛んです。
 単純に言えば、AIというのは膨大なデータをコンピュータに記憶させて、共通するデータごとに分類してまとめる機能と持たせておくものでしょう。そこに新しいデータを入れてやると、これは今まで集めたデータの「これこれ」と共通するようですという答えが出てきます。
 そこで多分それと同類だろうと人間が判断するわけです。

 人間でも博識の人がいたり、ドクターGのようなプロフエッショナルがいて、微妙な特徴まで瞬時に判断し、解決にいはこれが必要とか、この病気の可能性があるので検査しましょうとか適切な判断をして尊敬されるのです。

 でも、人間は時に完璧ではありません。記憶が曖昧だったり、うっかり忘れていたりすることがありますが、コンピュータは、おぼえた事はその通りいつまでも忘れず、すべて瞬時に覚えたとおり思い出します。
 ですから、手数のかかることを正確にやろうと思ったら、AIに任せる方が簡単です。(現に、計算は電卓に任せるのが常識です)

 という事で、データを使って判断をするときには、感じや、勘や、人間の適切な判断より、AIの方が頼りになることが解って来ていろいろなところでAIが活用されるようになって来ているのです。

 前置きが長くなりましたが、今度の緊急事態宣言の発令された都道府県を見ますと、何が基準で11都道府県が選ばれたのかがよく解りません。
一方、緊急事態宣言が、何のために出されたのかは、はっきりしていいて、コロナの新規感染を減らそうというのが目的です。

 ならば、一番重要なデータは人口10万人当たりの最近1週間の新規感染者の増加でしょう。その上に人口、増え方のパターン、ウィルスの種類(変異種もあるようです]などを組み合わせて、基準を決め、それに従って、知事がどういおうと関係なく「緊急事態です」というのが本当でしょう。

 政府がそれをやらないので、現場の都道府県は困り抜いて、現場から声を上げて圧力をかけたというのが現状なのでしょうか。ですから声が出た所が中心で、声がないのに入ったとか、声があっても入らなかったとか、そんなことが問題になったりするのです。

 目的が感染拡大防止なら、その目的に最も適う条件をデータを基に作り、厚労省の専門家群を擁し、斯界の専門家の意見もいつでも聞ける中央政府が、先ずやらなければならないことではないでしょうか。

 都道府県からせかされ、基準の考えも確り持たずに、今週中にとか、明日専門家の意見を聞いて(その時はすでに内容は決定済み)で緊急事態宣言というのは、我々、コロナ感染を恐れる国民(特に高齢者?)から見れば、本気で「腰が入っているのか」と言いたくなるような状態です。

 こうした問題は数字で出てくるデータを検討すれば、スッキリと片付く問題で、もし、数字で基準が出れば、どの県にあってもそれに近づかないようにという努力目標が具体的に見え、現場の感染抑制の努力の促進にもつながるのです。

 政府には、こうした政策を打つ時は、明確なデータをきちんと使い、国民の誰にも解りやすいことを第一に、しかも素早く対応してほしいと思います。担当官庁の知識能力の活用、専門家の意見をいつでも聞けるのは政府以外にはないのですから。

 



政権は言葉の重さを理解して使用を

2021年01月12日 17時04分10秒 | 政治
政権は言葉の重さを理解して使用を
 今日も、マスコミの報道やネットの情報の中で、病床の利用状況の逼迫が容易でなくなっている状況が伝えられています。

 現場からの訴えの中で気になるのは、政権の主要な関心事はコロナでも、病院としては他の病気もいろいろあるので、現場の実態は、もっと複雑なんです、という声のように思います。

 ICUやエクモの利用状況は以前からテレビなどでも見ていますが、それが100%まではOKなどという事は当然ないわけです。
分野は違いますが、最近の電力でも、稼働率が100%にならないように節電を訴えています。

 病院などは人間が中心で、重症と軽症では、必要な人間の数が違います。それに、病院の外来、入院、ICUの利用は、病気にはいろいろあるのですから必要とする病気の種類、使い方も多様で、電力のように同じものを提供すれば済むという訳ではないので複雑さが大分違うでしょう。

 コロナの感染者数だけを見ていればいいわけではなく、ICUもいろいろな病気の人が使うのです。当然利用者の競合は起こるわけで、「状況を注視する」という事はあらゆる病気による需要を「総合的、俯瞰的」に見ないと施設の余裕度の判断などはできません。

 政府は、この夏から、コロナについては「状況を注視している」という言葉を連発していますし、最近の2府1県の緊急事態要請の件でも、「状況を注視している」といってぃました。

 大変気になるのは、状況を注視しているというのは、言葉としては「しっかり見ている」という事でしょうが、通常そういった言葉の意味するところは、どの程度感染が進めば、医療供給体制のどのあたりまでどの程度の影響があるという予測の適切な判断をするために「状況を注視している」という事であることは当然でしょう。

 おそらく、厚労省の中には、そういった分野の専門家が大勢おられるでしょう。 勿論官僚だけではありません。審議会や今回のコロナに関しては専門家会議や分科会もあり、そこには、関係分野の日本の頭脳が集まっているはずです。

 にもかかわらず、「状況を注視」の結果が、爆発的な第3波の発生を許してしまい、緊急事態発令も、毎回、何日までにといった形で後れを生じ、それがコロナウィルスには増殖のチャンスになって、診療の現場は相当の無理がかかっているという現実があるようです。

 組織というものに良くある問題としては、こうしたことが起きるのは、組織内のコミュニケーションが最適な形をとっていないという事に原因があるのが一般的です。

 国民が直感的に理解するのは、優れた官僚組織を持ち、適切なアドバイスをする専門家の支援を得ながら、それを十分に活用していない政権の姿です。
 もちろんそんな推測は当たっていないといわれるかもしれません、しかし、国民は結果で判断するしかないのです。そして結果は上に述べた状況の推移なのです。

 近年、政権の発する言葉が軽くなったという意見は多く聞かれます。「注視する」といった言葉が、政府から出た場合、「確り見ていること」という簡易辞典の説明に照らせば正しいなどという事にならないように、お願いしたいと思う所です。

家計調査:平均消費性向に変化の兆し?

2021年01月11日 22時24分31秒 | 経済
家計調査:平均消費性向に変化の兆し?
 今月8日、総務省から2020年11月分の家計調査が発表されました。
 10月までは、昨年の消費税引き上げの影響という不規則要因がありましたが、11月からはほぼ平常の動きになるかなと思っていましたが、何か変化の兆しのようなものが感じられるので、報告しておきたいと思います。

 前月グラフでお示ししましたように昨年10月、コロナの渦中ですが、2人以上の全所帯の消費支出が、1年2か月ぶりに前年同月比プラスになりました。
 そして、11月も前年同月比プラスが継続しています。

 2020年は9月の消費税導入前の掛け込み需要でも対前年同月比でプラスにならないような消費不振(自主的消費抑制)の年でしたが、コロナ禍という異常事態の経験の中で、家計の消費に対する意識が変わってきたのでしょうか。

 勿論これはまだまだ分からないことですが、グラフを見て頂きたいと思います。
 いつも申しあげておりますが、平均消費性向は可処分所得(手取り収入)のうち何%を消費支出したかという数字ですから、調査対象になるのは収入面の数字も調査されている勤労者所帯だけです。 したがって下の図は2人以上の「勤労者所帯」のものです。

平均消費性向の推移(過去2年間前年同月比較方式%)

          総務省「家計調査」

 ご覧いただきますと、一昨年12月から昨年9月まで、赤い柱は、前年同月の青い柱に比べてずっとマイナス(低い)になっています。昨年1年勤労者所帯は前年に比し、収入のより多くを貯蓄に回し消費を一貫して節約したという事です
 そしてその傾向が昨年10月から変わったように見えるのです。具体的の数字は10月は前年より0.1%ポイント高く、11月は、同1.5%ポイント高くなっています。

 この間は、政府はGoToキャンペーンに力を入れ、それに乗って結構多くの人が、出掛けたり、食べたり飲んだりを楽しんだようです。
 おそらく消費支出が増加いたのはその影響もあったのでないかと思われます。政府の補助金も効いていたでしょう。

 残念なことに、お陰で今年に入って早速に緊急事態宣言になってしまったのですが、これは政府の読み違いのせいで、結果は「永続的な経済活動の活発化」にはならなかったわけです。

 しかし、もしそれが役に立った面があるとすれば、国民が、日本経済というのは、我々の消費によって良くも悪くもなるという事に気づいた可能性があるという事です。
 確かに日本経済は、家計の消費支出に大きく依存しているのです。コロナ禍の中で、消費を切り詰めれば日本経済は縮み、みんなが消費を増やせば経済は拡大することを身近に体験できたのです。

 今は国民が消費活動を活発にすれば、コロナの活動も活発になりますが、コロナ後になった時には、家計消費支出が増えれば経済成長率が高まるというプラス効果だけが残るわけです。

 巣籠り消費には限度もありますが、コロナ後は人と人との接触の制限はなくなるでしょうから、GoToのような消費活動の活発化は、人々の生活の楽しみを増すのと同時に経済成長を高める大きな手段になります。

 これまで、政府が将来不安をあまりに言うものですから、将来のための貯蓄に精を出して、結果的に経済成長力を無くしていた日本人が、今日の生活のより充実が必要という意識を持ち始め、それが経済成長率を高め、将来不安を解消していく大きな効果を持つ事に気が付けば、日本経済はかなり違ったものになるのです。

 12月以降の数字がどうなるかは解りませんが、このコロナ禍を経験し、日本の家計が、行き過ぎた貯蓄超過の生活パターンを少しでも変えるきっかけになればと思って、今後も「平均消費性向」の数字を追っていくつもりです。