tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「日本再生戦略」の戦略ポイント

2012年07月31日 13時55分38秒 | 経済
「日本再生戦略」の戦略ポイント
 前々回、政府は経済政策やってないのではないか、と書きましたが、タイミングよく、かなり具体的な内容を盛り込んだ「日本再生戦略」が発表され、今日、閣議決定をするとのことです。

 環境適応型自動車、医療、農林漁業を3本の柱に、3年間の予算の重点配分を行って、中小企業の活力向上、デフレからの脱却、などを厳しい進捗状況管理のもとに行い、名目3パーセント実質2パーセントの経済成長をめざし、環境関連で50万人、介護医療関係で284万人の雇用を創出する、などという事になっています。

 民主党は政権をとった当時にも、新経済戦略を打ち出し、新政権という事もあって、本当にやってくれるのではないかと期待しましたが、何にも起こらなかったということもありましたが、我々国民としては、今度は本当にやってくれるのではないかと、また期待してしまいます。

 そんな気持ちで、いつも指摘している円高についての所を見ますと、残念ながら、あまり新味はありません。
 以前から言っている「緊張感を持って市場の動向を注視し、必要な時には断固たる措置をとる」、日銀に対しては「デフレ脱却が確実となるまで強力な金融緩和を維持するよう期待する」というものです。

 デフレの原因が「日本物価が国際的に見て高い」からで、その原因は「円高」である(国内インフレではない)という現実を明確に理解しているとは思えないような表現も含めて、なんとなく頼りなさが残る感じは否めません。

 それでも厳しい進捗状況管理と言っているので、じりじり円高になって、$1=¥77とか¥76とか¥75円とかいったことにはならないと信じたいところですが、これはこちらの方が、しっかり政府のやり方を監視しなければならないところでしょう。

 問題はアメリカが何というかです。アメリカは日本の為替介入にはどうも、不快感を示すようで、それに対して、アメリカが「解った」というぐらいの説得力のある返事が出来ないと駄目でしょう。再生戦略の戦略ポイントは多分ここにあります。

  何はともあれ、今回の戦略が曲がりなりにも、実績を上げる方向へ進む ことを期待したいものです。そして、円高さえ止まれば、日本人、日本企業は、黙っていても必ず頑張ると思います。


いじめ問題で不思議に思う事

2012年07月29日 22時48分02秒 | 教育
いじめ問題で不思議に思う事
 いじめ問題で学校に警察の手が入ることになりました。
 これやっといじめ問題に対する当局者たちの取組みの態度が変わるのであれば、良かった、本来なら、もっと早く変わるべきだった、と感じています。

 この事件をきっかけに、過去にも同じようなことがあったという事実が、あちこちで明らかになってきているようです。
 今回の事がなければ、そのまま闇に葬られていたのではないでしょうか。

 それにつけても今回の事件でもそうですが、最初は、学校サイドや教育委員会、地方自治体の発言は、おおむね『いじめとは認識していなかった』というものでした。
 今までもそうですが、大体、学校や教育当局側の発言は『いじめとは認識していなかった』「必ずしもいじめとは言えない」「単なる遊びの範囲だと認識していた」「いじめと遊びの区別は難しい」といったものが殆どだったように感じています。

 ほとんどのケースが、いわば異口同音にこうした発言で報じられて、「いじめと認識されずに」済まされてきているというこの同質性に、なんとなく不思議さと違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか。まるでマニュアルでもあるかのように同じ発言です。

 先生方をはじめ教育に携わる方々は、少なくとも、社会学や、心理学、とくに発達心理学などには縁が深いはずです。多くの事例にも触れておられるでしょう。
 我々のようにそういう問題の素人でも、いじめの無い社会は理想郷のようなもので、人間集団がある限り、いつでもどこでもいじめは「あるのが当然」と思っています。

 企業社会にしてからが、セクハラ、パワハラがこれほど問題になっているのです。さらに言えば、恋愛問題でも、昔は振られれば諦めるのが普通でしたが、今は凄惨なストーカー事件が頻発するほど、自己抑制のできない人間が増えていると感じられる世の中です。
 いじめそのものが、昔よりエスカレートするのも当然かもしれません。

 にもかかわらず、先ず「いじめではないか?」と心配しなければならない学校で、「いじめとは認識していなかった」といった、我々の感覚からすれば白々しい発言がまかり通っていた背景は一体なんなのでしょうか。

 お願いしたいのは、学校サイドに、「いじめの無い方が不思議」ぐらいの認識を持って、周到にいじめ問題への対応をするという基本的視点を持ってもらうことです。


日本は経済対策をやっているのか

2012年07月25日 12時34分28秒 | 経済
日本は経済対策をやっているのか
 先ごろまで、日本経済は少しずつ持ち直しているという見方が結構ありましたが、このところ、「また深刻な不況になるのでは」といった雰囲気が出て来ているのでしょうか。気分を暗くしているのは株式市場の低迷です。

 株式市場が低迷しても、企業収益の先行きが改善見通しであれば、いずれ株価も反転するだろうと楽観するのが多くの見方でしょうが、このところ、企業業績の改善はどうも期待できそうもないといった雰囲気が出て来ています。

 例えば、今日の新聞でも、シャープが大幅リストラに踏み切るのではないかという報道がされていました。
 ついこの間までは「世界の亀山工場」などと液晶では世界をリードするシャープでした。この変わり様、単なる経営戦略の失敗と片づけられるものではないように思うのはわたくしだけではないでしょう。

 その他多くの企業が、収益予想を見直すようです。アジア経済の低迷なども言われますが、他方で、多くの日本企業が海外に工場進出をしたり、海外で生産を開始するといった報道が連日見られます。
 そのたびに日本人は、これでは雇用不安は改善しなくて当然、企業は利益を上げても、国民には活躍の場はないと先読みをして理解することになります。

 政府は政争に明け暮れ、日銀は、様子見で動こうとしません、わずかに財務相が、「最近の円高は日本経済の実態を反映していない」等と呟いたようですが、国際投機資本には無視され、円高はじりじりと進んでいます。国際投機資本は日本の出方を試しているのでしょう。
 
 政府は「不況対策を考えるほど暇じゃないよ」と言うのでしょうか、日銀は、「矢張りインフレを招くようなことはしたくない」と昔に帰ったのでしょうか。

 1日10銭、20銭の円高でも、数日続けば、今の日本企業には決定的な収益悪化をもたら可能性は十分です。この程度の円高と言っているうちに、茹でガエルならぬ凍死ガエルになっていくでしょう。

 いま日本の経済対策を考えるとすれば、それは、まともな経済学による景気対策ではないでしょう。まさに強力で巧妙な「国際投機資本との駆け引き」こそが経済政策になっているのです。それが今日の変動相場制の特徴なのでしょう。

 ならば、政府、日銀は、いかに国際投機資本の意図、思惑を読み、有効な円高対策を編みだしうるかを景気対策、経済政策として問われているのです。
 国際投機資本にしても、ただ闇雲に投機利益を求めて動いているというだけではなく、その背後には、格付け会社なども含め、計算しつくした国際政治、国際経済の戦略の主体の多様な意志もありましょう。

 政府、日銀に、国民のために身を挺して経済対策を考え、実行することを期待します。


蓄電技術で世界制覇を

2012年07月19日 10時17分20秒 | 科学技術
蓄電技術で世界制覇を
 かつて高度成長期に、ボトルネックは成長の原点といった論議がありました。まさに日本人にうってつけの論議だなと思った記憶があります。

 第二次大戦で壊滅的な打撃を受けた日本経済社会は、狭小となった国土に多くの人口を抱え、食糧生産のための土地も足りないといった状況でしたが、10年後には「もはや戦後ではない」と言われるまでになりました。

 当時まだ世界の常識は、経済発展のためには版図を広げるというのが主流でしたが、日本は、国土面積に関係なく、技術開発でいくらでも豊かになりうる、という事を実証し、世界を驚かせました。
  今では領土を広げなくても経済発展できるというのは常識です。

 ボトルネック(隘路)があれば、それを克服するところに新しい発展の源泉がある、古い諺でいえば「窮すれば通ず」「必要は発明の母」というところでしょうか。そのための技術開発は、世界に通用しますし、世界に売れます。

  レアアースが不足すれば、レアアース使用量10分の1で同じ効果の製品が発明され、CO2の増加が心配されれば、CO2を原料にプラスチックを作る技術が開発される日本です。

 今日本経済の大きなボトルネックになっているのは電力不足です。そして今その克服のために急速に進んでいるのが、クリーンエネルギー開発と蓄電技術です。
 特に蓄電技術に関しては、従来の常識「電気は貯められない」が急速に変化しつつあるのではないでしょうか。

 究極の蓄電技術、常温超伝導に行き着くのは容易なことではないでしょうが、今、自動車、住宅などの民生を中心に、蓄電技術に関する様々な技術開発が、まさに花盛りです。
 従来の鉛蓄電池と、揚水発電といったレベルから、われわれ素人の想像を圧倒的に超えるような技術開発が連日発表されているように見受けます。

 こうして発電量はピークに合わせなければならないという、従来のいわば「至上命題」が次第に後退していく様子が、あたかも引き潮のように、目に見えて動いていくのが感じられるのではないでしょうか。

 しかも、これに関連する幅広い技術分野における開発においては、日本が最先端を行っている部分が少なくないように見受けられます。
世界の、人類の、地球の将来のために、日本の技術開発に大きく期待したいと感じている人は多いのではないでしょうか。
 クリーンエネルギーと蓄電技術の組み合わせによるエネルギー革命が、閉塞した日本の経済社会の新たな前進への本格的突破口の一つと期待するところです。


2012年1月から2012年6月までのテーマ

2012年07月17日 11時56分25秒 | インポート
2012年1月から2012年6月までのテーマ
2012年6月
為替レート切り下げで逃げ切れるか   労使関係は死んだのか   $1=¥80で「第2のいざなぎ越え」体制を   不勉強なIMF見解   地域金融機関向け特例措置の延長   G7、安住財務相の本音発言   企業・経済が成長できる形:その3 日本はどうする?   
2012年5月
企業・経済が成長できる形:その2   企業・経済が成長できる形とは   G8と日本の立場   出生率回復に注目しよう   背伸びしたままではジャンプできない   国は人減らしが出来ない   金融政策過信という過ち   
2012年4月
本当に必要な経済政策   多様な社会の共存を考えよう   この巣の主は?   舶来崇拝からの早期脱出を   為替レートと経済価値基準   世界経済は将来どちらを選ぶか:金融機能のあり方 3   世界経済は将来どちらを選ぶか:金融機能のあり方 2   世界経済は将来どちらを選ぶか:金融機能のあり方 1   
2012年3月
学卒採用に真剣な目を   円高と原油高、どちらがより恐ろしい?   デフレ脱出へ総力戦を   メダカの春   一体改革論議の盲点   アメリカの景気回復を喜んでいいのか   経常赤字過去最大   蓄積社会に必要な金融の安定   年金基金本来の性格   
2012年2月
AIJ:なぜこんなことが・・・蓄積社会と犯罪   80円の円安効果持続のために   動き始めるか日本経済   インフレターゲットと経済環境   白川総裁のクリーンヒット   中国、ドイツ、スイス、そして日本は?   海外展開で解決できるのか   今、一発で景気が回復する言葉   景気回復策の歴史   円高・円安、何でも心配?   マネー資本主義克服に何が必要か その2   
2012年1月
マネー資本主義克服に何が必要か   マネー資本主義は経済の退歩   マネー資本主義を使うと何ができるか   生産性とマネー資本主義とは別世界   マネー資本主義と生産性   マネー資本主義と日本   国債残高:資産か負債か まとめ   国債残高:資産か負債か 4   格付け会社は経済社会の混乱要因   国債残高:資産か負債か 3   国債残高:資産か負債か 2   24年度の政府経済見通しを見る   国債と振り込め詐欺(真面目な笑話)   国債残高:資産か負債か   明けましてお芽出度うございます


最低賃金と生活保護

2012年07月14日 12時24分11秒 | 社会
最低賃金と生活保護
 御承知のように最低賃金とは企業はこれより安い賃金で人を働かせてはいけないというもので、生活保護は、働かない(働けない)で受け取る生活のための最低費用という事でしょう。
 
 時給換算で、最低賃金が生活保護費を下回るという問題は従来からあるのですが、そういう県が11県に増えたというのが最近の報道です。
 最低賃金は全県一律で、生活保護費は県内通常6区分で金額が違いますし、社会保険料などは生活保護の場合は免除されるといったこともあるので、本当はもっと詰めた議論が必要なのでしょうが、ここでは今回の報道機関のものの言い方が従来と微妙に違うという点に気が付いたので取り上げてみました。

 従来から、マスコミの多くは、「働いているのに、生活保護より低い収入というのはおかしい。当然最低賃金を引き上げるべきだ。」といったものが殆どでした。しかし今回は、生活保護が少し甘すぎるのではないかといった、今までと逆のニュアンスが、報道の中に垣間見えるという感じを受けた方も多いのではないでしょうか。

 誰もが(本人も)不正受給だと認めるような事件もあったりしたせいもあるのかもしれませんが、同じ省庁(厚労省)の管轄でもなかなか調整がついていない問題です。

 もともと最低賃金というのは、毎年、政労使三者の審議会で市場賃金を参考に決めます。厚労省主導、中立、労働の意向が強く反映され、いつも一般賃金より上ずって決まるようですが、それでも、市場で決まる賃金と全く乖離するものではありません。
 しかし、生活保護費は、いわばマーケットバスケットで、理論的に決まります。

 マーケットで決まるものと、制度で決まるものでは当然動きに差が出ます。マーケットで決まるものは(人知を超えた)柔軟性があります。制度は人間の頭の中で決まりますから、頭が固ければ硬直的です。

 今回の微妙な変化というのは、最低賃金が、高く決めすぎると、企業がいなくなり(海外移転)雇用そのものがなくなる、という日本経済の限界にぶつかる中で、制度の方は、官僚の頭の中で、誤った環境認識から勝手に膨らんできた結果という事に、マスコミが漸くいくらか気づき始めたという事なのでしょう。

 マスコミにしてみれば、「弱者の味方」という正義感は大事かも知れません。しかし常に合理性という判断基準も、併せ持つ必要がありそうです。
 同じことが官僚の最賃行政、生活保護行政についてもいえるのかも知れません。


ホタル羽化

2012年07月09日 10時44分37秒 | 環境
ホタル羽化
 この3月に「メダカの春」というメダカ飼育の報告をさせていただきました。そこでは触れませんでしたが、雨水タンクを購入し、庭のU字溝をビオトープまがいにしたのには、もう1つ大きな目的がありました。それは「ホタルの羽化」です。

 昨年、メダカの購入と前後して姫タニシを1キロ購入し、U字溝に入れました。タニシは平家ボタルのエサです。タニシはメダカと共存、順調に増えたようです。
 私が、都下国分寺に移り済んだのは昭和38年でしたが、30年代前半までは、我が家の後ろの野川に平家ボタルが自生していたという事は聞いていました。
 近所に蛍を飼育している会のあることを知り、仲間に入れていただいて、先ず餌の供給に着手することにしたわけです。
 
  昨年は、ネットで平家ボタルの幼虫を20匹ずつ2回購入しましたが、上陸してさなぎになる環境の整備が下手だったせいか、羽化したのはわずか2匹、失敗でした。
 今年は餌の提供と引き換えに幼虫30匹を2回(1度目は昨年秋)近所の飼育家から分けていただき、さらに20匹をネットで購入、U字溝とベランダの発泡スチロールの水槽に分けて飼育してみました。

  飼育家の方の指導で上陸、さなぎ化の環境を整えたせいか、いつのまにか上陸し、6月中旬から羽化が始まり、U字溝とベランダの両方からそれぞれ十数匹、合計30匹以上が羽化し、「2年目にしては・・、」と褒められる程度の成績を上げることが出来ました。
 毎日暗くなると「今日は00匹光ってるわよ」と家内が数え、それを眺めながらビールを飲む、まさに内外のごたごたとは無縁の、平穏な初夏の宵です。

 一部は産卵させるために飼育籠に取り込み、一部はU字溝の周囲で産卵するように仕向け、結果はまだわかりませんが、ご近所に飛んで行ったのもいるようです。
 気が付く人がいるだろうかと、ホタルの光る飼育籠を表に出してみましたが、家の前を通る人々は、蛍よりも明るいケータイやスマホを見ながら道を急ぐだけで、ホタルのいることに気付く人は全くありませんでした。

 飼育籠の蛍は、国分寺の蛍の夕べ(来訪者900人以上)での展示に参加したり、ご近所の小さなお子さんたちに楽しんでもらったりしましたが、新たな羽化は、もうそろそろ終わりのようです。
 ホタルの命は羽化してせいぜい2週間、まだ元気に飼育箱の中を飛び回っているのも10匹ほどいますが、多分産卵は終わったので、そろそろ、U字溝のあたりに放そうかと思っています。
 
 多分今年は産卵、孵化にも成功するだろうと期待していますが、その幼虫を何とかうまく育て、来年の上陸、羽化につなげられるように頑張ってみたいと思っています。
 雨水タンクを備えれば、狭い庭やベランダでも、こんなことが可能になるのだと、まさに感慨を新たにしています。


マネーから人間への回帰

2012年07月04日 11時06分44秒 | 経済
マネーから人間への回帰
 今のマネー経済学、金融中心の経済政策全盛の時代というのは、歴史の流れから見れば、自由経済、民主主義の発展の中で、たまたま、誤った道に踏み込み、挙句、道に迷って戸惑っているという1つの段階という事になるのでしょう。

 多くの先進国の中で、ドイツや日本などのように、真面目な労使関係を築き上げ、労働と資本への分配関係を健全に保とうと努力する国と、その他多くの国のように、労使の信頼関係が薄く、常に労働分配率が上昇傾向で、それが賃金コストインフレを生み、国際競争力の弱体化からスタグフレーションになり、財政政策に頼った結果、財政も国際経常収支も赤字になり、結局は自国通貨の切り下げで凌ぐという国が出来てしまい、それが固定化してしまうという時期なのです。

 固定化せずに、各国が赤字の年もあれば黒字の年もあるといった状態であれば、「お互い様」で済むのですが、これはどうしても固定化するようです。

 理由は、その根本原因が、国民意識、労使関係(労使の相互理解がどこまで進んでいるか)の成熟度の問題で、こうしたものは、国民性などもあり、一朝一夕には変わらないからです。

 そしてその対応策として、安易な為替レート変更や、国際資本移動で済まそうとするマネー資本主義が考え出され、何とかそれで解決できないかと模索する時代が今日という事でしょう。

 だから、労働経済や労使関係は(本当は最も重要なのに)影が薄くなり、金融工学者がノーベル賞を貰うという困った現象が起こり、世界経済の混乱に拍車がかかるようなことになっているのです。

 この混乱がますます深刻になり、マネーゲームでは解決不能という事が次第に広く理解されて、やっぱり、経済発展の基本は、実体経済にあり、実体経済の成長のためには、それぞれの経済主体(国家経済)における付加価値(GDP)の健全な労働と資本への配分関係の達成が最も大事だった、と気が付いた時、世界経済は正常化に向かうのでしょう。

 これは、経済の主(あるじ)として、マネーに代わって、人間が復権するという事です。
 やはり経済も社会も主人公は人間だった、という事に気づき、マネー経済学に代わって、労使関係、労働経済学の重要性が再認識される日が早く来ることを願うばかりです。


労使の分配関係から見れば

2012年07月02日 10時41分37秒 | 経済
労使の分配関係から見れば
 経済発展のプロセスを簡単に見てみましょう。ある意味ではこれは単純なことです。
 一国のGDPは、それを生み出した「労働(雇用者報酬)」と「資本(営業余剰)」に分配されます。その分配関係を決めるのは労使関係(労使交渉)で、税制などがその補完・調整をします。

 その分配の結果で労働(人間、家計)は生活し資本は蓄積(技術開発・企業設備)され、人間は、その資本を活用してより高い生産性を実現し、より大きなGDPを生産します。
 この繰り返しが経済成長で、生活水準は向上、技術は進歩、世界は人間にとって、より豊かで快適になっていきます。

 ここで最も大事なのは、人間が資本を使って生み出した成果、GDPを、労働と資本の間でどう配分するかという問題です。労働経済でいう「労働分配率(+資本分配率=100)」です。資本主義の初期には、資本への配分が多すぎ、労働搾取の問題や消費不足によるデフレという問題もあったようです。マルクスが正義感を持って主張したのは、この配分のアンバランスでしょう。

 一方、今日の民主主義社会では、多くの国で、労働組合の勢力が強く、賃金上昇は生産性上昇を上回り、労働分配率は上昇、利益(資本分配)は減り、資本蓄積は不足、経済は停滞、賃金コストインフレが常態化します。国際競争力は弱化、経常赤字国になります。政府は緊縮政策をとろうとしますが、国民は緊縮政策を嫌い、政権を失いたくない与党はポピュリスト化して、財政出動で景気刺激、賃金コストアップは続き、財政、経常収支の両方が赤字(双子の赤字)になり勝ちになります。

 緊縮政策をとらずにこれを是正するには、赤字国の賃金コストを下げ、黒字国の賃金コストを上げればいいわけで、黒字国の為替レートを切り上げればいいという事になります。例えば、10パーセント円高にすれば、日本の賃金コストは国際的には10パーセント上がります。国際投機資本や格付け会社がそうするように仕向ければいいわけです。
 日本の労使の賃金コスト抑制のための努力はこれで無意味になります。

 問題は、こうした対症療法で、赤字国と黒字国のバランスは回復するのでしょうか。経験的にはそれは無理なようです。赤字国が、その根源である、労使の配分関係を健全な形に変えなければ、為替レートで調整しても、単に一時的な改善で、また同じことが起こります。これはその国の、国民の意識・知識のレベルと態度の問題です。
 日米間では、$1=¥360から、$1=¥80まで日本が譲歩してやったのに、アメリカの赤字は止まりません。アメリカ人の意識と行動が変わらない限り、駄目なのです。

 最終的には、アメリカもギリシャもスペインもイタリアも、フランスも、労使関係を見直し、合理的な賃金決定が出来るようにならないと、この世界経済の混乱は直らないのです。そのことを知らしめる経済学、就中、労働経済学の教育、健全な労使関係への理解と行動が実は最も必要なことなのです。