tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

難しくて大事な「成長と分配」の問題

2023年03月31日 13時24分54秒 | 経済
前回、リクルートワークスが発表した2040年には仕事の担い手が1100万人不足するという研究に関連して、人手不足が最も深刻になるとみられる介護のような対個人サービスの例を取り上げました。

介護される人間は増えても介護する人間は増えないので大変という事でしょうが、介護が必要なのに人手不足で出来ないという事になると社会が不安的になっていろいろな問題が発生するので、介護の人材を増やさなければなりません。

そこで必要になるのが介護の担当者の賃金に引き上げです。しかし、介護サービスを提供する企業で、行き届いた介護をしながら生産性を上げるという事は至難です。
といって、介護の料金を上げれば、払えないから介護を受けられない人が増えるでしょう。これも社会の不安を作り出します。

貧しい社会では出来ない事も豊かな社会では可能になります。豊かな社会は技術革新を中心にした経済成長で支えられているのです。

何とかしなあければという事で、生産性を上げて豊かな社会をけん引する産業が稼いだ付加価値(GDP)を、稼いだ産業が独占するのではなく、社会全体の為にバランスのとれた配分をしようというのが社会保障の基本です。

社会保障、医療や介護、年金、広く言えば教育のこの中に入ってくるでしょう。そのために生産性を上げて付加価値を沢山作りだした産業・企業の利益、賃金の上がった従業員が(付加価値は利益と賃金になります)、税金や社会保険料を余計に払って、その分が社会保障の原資になって、生産性の上がらない産業のところに均霑して、社会は安定するのです。

それなら、一生懸命稼ぐ方は損で、社会保障で助けてもらう方が得をするのかという異論が出ることになりそうです。

実は、資本主義社会は、社会保障という方法論を持ち込むことによって崩壊せずに安定した制度になっているのです。

それは、社会不安を起こさないために、生産性の伸びる部門が税金や社会保障費を負担するのは稼いだ付加価値の、例えば、半分程度で、後の半分は、生産性を頑張って上げた産業企業、その従業員へのご褒美になっているからです。

つまり、今の資本主義は、100%資本主義ではなく、例えば50%資本主義、50%社会主義、という事で成り立っているのです。
そしてこの50%という例えは、アメリカなら資本主義の部分がより多く、北欧なら社会主義の部分がより多いという具合に、国によって違います。

ここで指摘しなければならない事は、国民が働いて生み出した成果である付加価値(GDP)をいかに分配するかで、国の姿が変わってくるという事です。

そして、国の在り方(配分の仕方)は、国民が望む国・社会を民主主義の原理によって、国民の選んだ政党、そのリーダーがより良いものにするように努力して出来上がるのでしょう。

分配が上手に行われ、国民が安心して、資本主義の部分を生かして経済成長(GDPの増加)が可能になるのです。社会主義的な分配。資本主議的な成長の組み合わせです。

その意味では「分配の在り方が成長を決める」というのが現実で、成長の成果を「適切に」分配するという場合の「適切」の在り方が問われているという事でしょう。
さて「成長と分配の好循環」を言う、岸田政権の場合はどうでしょうか。

「1,100万人の担い手不足」:労働力は不足か過剰か

2023年03月30日 13時37分23秒 | 労働問題
リクルートワークスが2040年には「仕事の担い手」(労働力)が1,100万人不足するという研究結果を出し、介護などの対個人サービスが不足第1位なので、「さて、どうしよう」と心配する人も多いようです。

真面目な研究で知られるリクルートワークスですから、真面目に心配する人も多いかと思っていますが、恐らくこれは「警告」の意味が強い研究でしょう。
「今のままで行くとそういう事になりかねませんよ」と読むべきではないでしょうか。

一方で、人事院は「公務員に週休3日制を導入したら」という提言を出しました。これは、公務員の勤務環境を改善し、人材確保につなげるという意味のようです。

「人手が足りなくなるのに3日も休んだらどうなるのですか」という疑問も強いでしょが、公務の担い手が足りなくなると困るからだそうです。

もともと先憂後楽であるべき公務員から先に週休3日制というのもどうかと思いますが、やっぱり人手不足を心配しているわけです。

では、本当に日本は人手不足になるのでしょうか。これは日本人次第でしょう。
日本人がどんな社会を作るのか、どんな働き方をするのかが重要な決定要因です。

「全体の仕事量」を「1人当たりの仕事量」で割れば、全体の仕事量をこなすのに必要な人間の数が出ます。「1人当たりの仕事量」というのは「労働生産性」で、産業界では労働生産性を上げて人手不足を解消するというのが最も大事な目標の1つです。

産業界の「全体の仕事量」が完成すればそれはGDPですから、生産性が上がればGDPが増えて、経済成長が可能になるということです。

ところで、日本人全体の(働かない人も含めて)労働生産性を見ますとかつては世界の5番以内に入っていましたが、最近は27番目に落ちています。これは長期不況のせいで、不況の時は後ろ向きの仕事が多いので生産性が上がらないのです。

今年から成長する日本経済になれば、労働生産性も徐々に上がって、2,040年ぐらいには「ベスト10」ぐらいに返り咲いていけば、あまり心配することはないとなりそうですがどうでしょうか。

勿論、そのためにはAIや量子コンピュータを使ったり、いろいろしなければなりませんが、そこで大事なことは、日本経済社会全体の中には、生産性を上げやすい所と、上げにくい所があります。介護などの対個人サービスは最も上げにくい所です。

そうした問題を解決するためには、生産性の上げやすい所で生まれる「人やカネの余裕」を対個人サービスなどの上げにくい分野に政策的に配分する事です、具体的には介護職の待遇を改善して人手を確保するといった政策です。

つまり、GDPの配分を社会全体にバランスよく配分する社会にすることです。それには政府と国民の各分野の理解と納得と協力が重要です。
残念ながら、これはこの所どうも上手く行っていませんので些か心配です。

もう1つ、社会のあらゆる分野で、トラブルメーカーをできるだけ減らすことです(国会でも多いようでですね)。
仕事でも社会生活でも、1人トラブルメーカーがいると、大変な手間がかかります。
仕事ではスマートワーク、生活ではスマートライフを心がけましょう。

因みに、2019年の数字ですが、スウェーデンの国民1人当たりGDPは52000ドル(世界13位)、日本は41000ドル(世界27位)、日本人が、スウェーデン人水準の仕事や生活の仕方をすれば、人手も2割ほど余ってくるという勘定になります。

ハイブリッド車とメタネーション

2023年03月28日 17時11分02秒 | 科学技術
EUは今後の自動車としては電気自動車しか認めないという方針を打ち出していましたが、フォルクスワーゲンなどの意見も入れて、ハイブリッド車も認めるという事にしたというニュースがありました。

早速日本では、トヨタに有利だ、などという意見も聞かれますが。その理由は「メタネーション」技術の進展のようです。

メタネーションというのは、CO2と水素(H2)からメタンガスを合成することで、温暖化の元凶であるCO2を原料にしてメタンガスからガソリンまで作る技術が次第に具体化されてきているからという事のようです。

先日はCO2を食べて蛋白質を作りだす水素菌の事を書きましたが、嫌われ者のCO2が原材料になれば、気候変動問題対策にも、新たな展望が開けます。

炭素は燃えて(酸化して)炭酸ガスになるのが通常の化学反応ですが、炭酸ガスをまた燃料に戻すというのは逆反応で、こういう事に利用するのが「触媒」です。触媒の力を借りて、温度や気圧などを組み合わせて逆反応を起こす技術が進んできているようです。

触媒はコバルトが使われているようで、高価ですが、いかに効率的に活用して逆反応を起こす装置の効率も上げ、安いメタンを創りだすのが勝負なのでしょう。

メタンはCH4 とご記憶の方も多いと思いますが、いわゆるメタン系炭化水素の基本形で、炭素が2つ繋がるとそれを6個の水素が取り巻いてエタンに、3つ繋がると8個の水素が取り巻いてプロパンにと、炭素の数で名前がついて、8つ(オクト)繋がると水素は上と下に8つずつ両端に2つ付いて18個になって、オクタンになり、これが多ければオクタン価が高いガソリンになるようです。

こうしてメタンからe-fuel(合成ガソリン)が出来るようになるから、ハイブリッド車もOK
という事になるという事なのでしょう。

e-fuelを安く作る研究は世界中で競い合っているのが現状ですが、日本も頑張っているようです。

ドイツではBMWで研究が進んでいるといわれますが、日本でもトヨタやエネオスなど6社が組んだ研究、東京ガスや大阪ガスは本業につながる研究ですし、電機メーカーの日立も総合力を生かしてなどな、どしのぎをを削る状態のようです。

中でもIHIはすでにメタネーションの実験、試験運用のための標準化した装置(1時間にメタノール12.5立方米製造)の販売を開始したようです。

電気自動車もバッテリーを大容量にすれば重量がかさむ問題で、航続距離の問題が在りますし、特に寒冷地では暖房に電気を使うと航続距離が短くなる問題があるようで、EV(電気自動車)だけというのは、特に寒冷地では難しいようです。

その点ガソリンエンジン併用であれば、熱源はエンジンの副産物利用ですから容易です。
ハイブリッド車は、航続距離の問題は既に解決済みという事で、冒頭のEUの方針変更も理解できます。

勿論自動車だけではありません。何よりも、CO2が資源になるという意味で、メタネーションは多様な温暖化対策の中で本命とも考えられるものですから、ますますの研究の進展が期待されるところでしょう。

新型コロナはいよいよ終息でしょうか

2023年03月27日 16時04分42秒 | 文化社会
この所、東京の新規コロナ感染者が減少を続けて来ていましたが、この2日ほど、先週比で増加しているようです。
まさかこれが第9波の始まりではないと思っています。矢張り終息は世界的な傾向のようですから、多分安心だろうと楽観派を決め込んでいます。

それにしても、この3年間、世界も日本も、世間も我が家も、コロナ非常時とでもいうような生活を経験しました。

外に出る機会が極端に減ったので、私の場合、脚力がめっきり落ちました。それはこれからの日課の散歩で取り戻せるかもしれませんが、取り返しのつかない3年間という場合もいろいろあるようです。

例えば、中学3年間がコロナの3年と重なってしまったこの3月の卒業生、3年前の4月に憧れの大学に合格したけれども、勉強は非対面が多いし、新しい友人をつくり、クラブ活動の楽しさを期待していた大学生活に残された時間は1年だけです。

こうした人たちにとっては、コロナ禍の3年間は、まさに取り返しのつかない生涯の損失になりかねません。
これがこの世代の人達の生涯にどう影響するかは、今後、教育学の研究テーマになるのかもしれません。

企業社会においても、対面の機会は大きく減り、リモートワーク、テレワーク、在宅勤務、ネット会議など対面の機会は、呑み会を含めて大きく減りました。

こんな状態が始まったころ「転んでもただでは起きるな」と書いた記憶があります。このコロナ禍によって強いられた状態を逆手にとって、より効率のいい、時間もコストも削減できる仕事の仕方を開発できる可能性もあると考えたからです。

そして産業社会、企業社会の場合、多様な努力がなされ、そういった面でも、新しい技術開発、会議の形式、対面を要しないより効率的な仕事の仕方など、多くのノーハウ、それへの合理的な対応の仕方が実験・実習され、生産性向上に貢献した面もあるようです。

特に目立ったのは、NTTの、勤務は原則在宅、出社した場合は主張旅費支払という徹底したトライアルなどでしょう。

ある意味では、アフター5も含め、濃密過ぎた日本流の対面重視の企業世界が、デジタル社会の進展の中で、どこにベストの合理性を発見するかも検証されるでしょう。

在宅勤務の経験が家庭における夫婦の家事分担に影響を与えたことも想像できます。

個人にとってみれば、コロナの3年間は、その3年が人生のどの部分にあったかで、個人個人に与えた影響は様々でしょう。

然しその経験をそれ以降の人生にどう生かすか、個人も企業も社会も、「転んでもただでは起きない」ように仕上げて行かなければならないようです。

これからの雇用ポートフォリオ(試論)

2023年03月26日 13時00分32秒 | 労働問題
昨日「雇用ポートフォリオの再構築」を書きました。

何か、勝手に再構築と書いているだけで、中身はどんな事かを何も言わないのでは無責任といわれそうなきがして来ましたので、未だ生煮えの試論ですが、自分のメモ代わりに何とか整理しておくことにしました。

<試案・雇用ポートフォリオ>
Ⅰ 企業の将来を託すグループ

Ⅱ 企業の現在を支えるグループ 
① 中途採用者など
② 外国人労働力
③ 定年再雇用者など
④ 超高度専門職(役員待遇を含む)

Ⅲ 短期雇用・単純定型業務グループ

ざっとこんな所でしょうか、現在あるいは近い将来を想定しています。

Ⅰ 企業の将来を託すグループ
このグループは現在の正社員をイメージしています。採用は新卒一括採用、人間の資質中心採用で、入社してから、OJT、Off-JTで育成する対象。
育成の目標は役員、中堅管理職、高度専門職、高度技能者(高度熟練、技能継承指導者)、10年20年かけて、ローテンションが重要な育成手段。
<処遇>
職能資格制度を適用するのが適切。職能資格制度は柔軟な制度で、職務(ジョブ)が変わっても職能(職務遂行能力)は変わらないので、若い時は年功習熟的、中高年になるに従って職務的な制度運用にもなえます。企業内ローテーション育成には最適。企業によって多様な使い方が出来るという特徴がある。

Ⅱ 企業の現在を支えるグループ
企業の必要により、即戦力として採用するグループ。ジョブ型採用が一般的。新規分野進出、優れた外国人の必要など今後増える可能性が大きい。
定年制があれば、定年再雇用者もこのグルールに入ることになると考えられる。
経営管理や専門技術、特殊分野の高度専門家などの役員待遇者もこのグループに入る
<処遇>
ジョブ型賃金(職務給)が一般的であろう。job&performance でperformanceには種々の形がとりうる。

Ⅲ 短期雇用・単純定型業務グループ
このグループは従来の非正規従業員、パート、アルバイトに相当し、企業の必要と働き手の都合の合致したところに雇用が生まれる。
<処遇>
地域別、職種別のマーケット賃金が基本、企業による諸種の味付けは可能である。

最後に、特に「留意点」について触れておきます。
企業内で、こうしたポートフォリオを自社に合わせた形で作っていただいた場合、十分に柔軟な制度にしていただき、本人と企業の合意により、グル―プ間の移動には十分な可能性と配慮が必要なように思います。
特にⅡグループから人材をⅠグループに異動、パートの熟練者のⅡ乃至Ⅰグル―プへの異動など人材の活用重視です。

日本的な人事管理は本来、従業員の能力を出来るだけ伸ばし、伸ばした能力を確りと活用するという形での、人間中心、「企業はそれを構成する人間次第」という「人を中心にした経営」が基本です。

人事担当者、職場の管理監督者には、そうした人間中心の、人を生かし活用する見方を十分に備えてもらうという事も、より良い経営の大きな力になるように思うところです。

雇用ポートフォリオの再構築

2023年03月25日 14時39分32秒 | 経済
雇用ポートフォリオをこのブログで最初に取り上げたのは2007年9月18日でした。

その時は、この言葉は1980年代から日経連が使っており、1995年に日経連が出した「新時代の日本的経営」以来広く使われるようになり、その後長期不況の中で、企業が人件費削減のために非正規を多用する論拠になった事などを書き、最後に、
「日本経済の回復基調とともに、これまでの非正規社員多用の「雇用ポートフォリオ」のあり方も、その中身となる人事制度のあり方も、次第に見直しされていくのではないでしょうか。企業の自然な努力で、格差問題の改善が進むのを期待したいと思います。」
と書きました。

これはリーマンショックの前年で、日本経済に復活の兆しが見え、就活が売り手市場になった年でしたが、この翌年の秋にはリーマンショックで$1=76~80円という超円高になり日本は一層深刻な円高不況に沈みました。

この不況は「日本経済が頑張れば頑張るほど円高になる」という最悪の不況でしたが、2013~2014年の、まさに「異次元の円高対策」、黒田日銀の2発のバズーカ砲で、$1=120円と為替レートは正常化しアベノミクスに期待がかかる事になりました。

この段階途中の2013年1月25日から4回ほどに亘って、「円安と企業の果たすべき役割」のシリーズを書き
「企業は・・これをチャンスに生産活動を活発化します。円安で増加した円建ての付加価値はこうした生産活動の活発化、それによるGDPの増加になって、利益増、雇用増、賃金上昇を生み、実体経済の改善、経済成長につながります。」
と書いていますが、そううまくはいきませんでした。

この2007年と2013年のブログに共通しているのは、日本経済が円高の克服、あるいは円高からの脱出が可能性が見えた時、それまでのコスト削減のための雇用・賃金構造の歪み(低賃金の非正規の多用など)の是正が必要という意味の「雇用ポートフォリオ」の再検討の必要を指摘したつもりでした。

しかし、残念ながら諸般の事情の中で、日本の労使は、アベノミクスの期間を通じても、「雇用ポートフォリオの再検討」の作業をせずに、更にコスト削減を続け、非正規雇用は雇用者の40%にも達したのです。

そして今年の春闘で、初めて労使はその反省に立ち、賃金引き上げについて合意しました。しかし、またも残念ながら、非正規雇用の問題を含む雇用・賃金の新しい在り方に繋がる「雇用ポートフォリオの再検討」という問題への言及はありません。

折しも「働き方改革」の中で、「ジョブ型」の雇用賃金の問題がクローズアップされています。
この問題も包括して、「新・新時代の日本的経営」を検討しようという動きが起きて来るかと期待していますが、現状、何処からも聞こえてきません。

しかし、今の日本の経済・社会にとって、これこそが必要なことではないでしょうか。今、企業は、今後に向けての雇用ポートフォリオの再構築を必要としていますし、若者はいかなる雇用を選択すべきか迷っているのではないかと思われます。

権威ある経団連、連合といった組織、更にはアカデミアの協力も得て、そうした検討が為されることが、政府の「働き方改革」に対する、産業に直接従事する民間の回答にもなりうるのではないかと思っているところです。

消費者物価、一見上昇鈍化、先行きは?

2023年03月24日 17時10分28秒 | 経済
今日、総務省統計局から2月分の消費者物価指数が発表になりました。
既に、輸入物価指数や企業物価指数は上昇の鈍化傾向(対前年上昇率の鈍化)が顕著ですが、消費者物価の動きにそれが反映するかどうかが注目点です。

こうした状況の中で発表された2月の消費者物価指数は、鈍化傾向が見えたようです。
原指数を見ますと下の図のように青い線の総合は1月の104.7から104.0へ、赤い線の生鮮食品を除く総合も104.3から103.6へ下がっています。

残念ながら緑の線の生鮮とエネルギーを除く総合は102.2から102.6へ相変わらずの上昇で、これについては後ほど触れますが、消費者物価にも上昇鈍化の兆しが見えてきたのでしょうか。

 消費者物価指数(原指数)の動き

                    総務省:「消費者物価指数」

もともと今回のインフレはエネルギーの国際価格高騰から始まったものですから、輸入物価、企業物価が下がれば消費者物価も下がってくるはずですから、青い線と赤い線はエネルギー料金(電力・ガス)が入っていますから国際価格が下がれば下がるのも当然です。

ただ、日本の場合は、色々な意味で政府の介入があって、価格形成が歪められます。今回の消費者物価の上昇率鈍化に政府の電力料金抑制策の影響がります。10大費目の中で水道・光熱だけが前月比マイナス(-1.14%)でこれが全体を引き下げています、

電力・ガス料金が入っていない緑の線は、残念ながらまだ上昇傾向です。いずれまた、政府が電力料金の値上げをするのでしょうから、この段階で消費者物価が安定の方向に向かったと言い切る訳にはいかないのかもしれません。

という事で最近の動きを、より見やすい対前年同月の比較を見てみますと、総合と生鮮を除く総合は、政府の電力料金政策のお陰で上昇率の鈍化は顕著です。

       消費者物価指数対前縁上昇率(%)

                       飼料:上に同じ

政府は4%というインフレ率は嫌いで、何とか3%台に下げようとしているように感じられます。
問題は緑の線、生鮮食品もエネルギーも除いた消費者物価ですが、そろそろ上昇率鈍化かという予測は当たらず、対前年同月で3.5%の上昇と、昨年夏以降も、輸入物価や企業物価の上昇鈍化をしり目に一直線に上昇を続けています。

これは一体何によるのでしょうか。消費者物価の中身に入ってみますと、生鮮を除く食料品9.4%の上昇(乳卵類、油脂・調味料は10%超、調理食品、飲料、菓子類、などは7%超など)です。
家庭用耐久財も11%の上昇(電気冷蔵庫26%)といった大幅上昇です。。

昨年春辺りから始まった消費物資の一斉値上げの動きは、日本の商品は安いという海外の評価、インバウンドの印象、価格転嫁困難への同情から、一部に見られる値上げ・賃げムードなどとともに、拡大の傾向もあるようです。

この緑色の線は、政府、日銀の2%インフレターゲットにほぼ見合うものですから、これが4%を超えるようなことになれば、アメリカ・ヨーロッパと同じ「インフレ抑制」の金融政策が必要になるのでしょう。

今迄安定していた消費者物価の動きについてもこれから警戒が必要になるのかもしれません。

国際関係の基礎は「競いの文化」で築こう

2023年03月23日 14時10分07秒 | 国際関係
新形コロナというパンデミックが世界を揺るがし、延び延びになっていた第5回WBCの優勝者は「侍ジャパン」でした。

昨年優勝のアメリカは、連覇を目指して途中、対メキシコでの失点もありましたが、満を持して決勝に勝ち上がってきたようです。

日本は準決勝でメキシコに逆転勝ちで決勝進出。夢の日米対決の優勝決定戦がマイアミでくり広げられました。
そして結果は、大谷、ダルビッシュ、村上、それに吉田の驚異の打撃力、そして、メジャーリーガーの強力打線を要所で封じる継投に活躍した投手陣等々の総合的な頑張りで「侍ジャパン」が念願の3度目の優勝を3‐2で飾ったのです。

放送席からは「呆然としているアメリカチーム」などという言葉も聞かれました。
そしてこれは、次回への切磋琢磨、それぞれの力と技の向上で、次回の優勝を目指しての研鑚に繋がっていくのでしょう。

スポーツの世界は「清々しい」世界です。勝っても負けても、それは努力・向上の「糧」となって将来に進んでいくのです。

優勝の感激で少し長く書き過ぎましたが、この清々しさは「競いの文化」に基礎を置くからと考えています。

「競いの文化」の対極は「争いの文化」です。これは今、現実に「ロシアのウクライナ侵攻」という形で起きています。

「争いの文化」では、石や棍棒から戦車、ミサイル、核爆弾まで、武器によって相手を滅ぼし自らの優位を保つという人類の野蛮な時代の遺物のような文化です。

今、この文化が残っているのは世界の少数な独裁国においてで、民主主義国ではほとんど見られない文化です。

そうした意味で考えてみますと、プーチンのロシアは「争いの文化」を是とする国であることをウクライナ侵攻で証明しました。

もう1つの問題国は、中国です。中国は南シナ海、更には台湾問題で、「争いの文化」を含む意識をもつ国であることを示唆する態度・行動をとっています。

但し中国は、これらの問題は国内問題という主張で国際関係には影響しないという立場のようですが、現実が「国内問題」と言えるものかどうかが、中国が独裁国家であるかどうかを(国際的に)に判断する証左になるのでしょう。

こうした中で、最も重要なカギを握るのは、アメリカでしょう。

中国は、台湾進攻を言いながら、交渉による平和的解決が望ましいという事も常に発言しています。
恐らく、独裁者の様相を強めている習近平も、プーチンの様に、国際輿論から「独裁者」と決めつけられるのは避けたいという気持ちはあるようです。

心配なのはアメリカの態度で、揺れ動く習近平の気持ちを、独裁者としての存在に踏み切らせるかどうかは、アメリカがこれからいかなる態度で習近平の中国に接するかにかかっているのではないでしょうか。

経済的には米中覇権争いという問題があります。経済覇権は、あくまでも「競いの文化」の問題であるべきです。経済発展を競い合うべき問題でしょう。
相手の経済力を潰して勝つような、たとえば、行き過ぎた経済制裁、関税合戦、貿易制限などは「争いの文化」の経済版で、人類社会の豊かさへの阻害要因でしょう。

「競いの文化」こそが人類社会の発展を支える文化で、「争いの文化」の要素がそこに入り込むことは結局人類社会の破壊や発展の阻害であることを覇権国アメリカが、十分に認識し、民主主義社会の良さを世界に示すことが期待されているのではないでしょうか。

首相ウクライナ訪問、平和の出発点に

2023年03月22日 15時59分49秒 | 国際関係
岸田総理が、ウクライナと報道され、びっくりした人も多かったのではないでしょうか。

今年は日本はG7の議長国、G7各国の首脳は岸田総理以外はすでにウクライナを訪問し、議長国の首相としては、そのタイミングを考えていたのでしょう。

昨年から今年にかけての世界の最大の課題は、ロシアのウクライナ侵攻問題をいかなる形で終わらせるかでしょう。その中で、今年はG7の議長国、しかも平和憲法を持つ国の総理として、戦争の現場が如何なるものか、確り見とどけることは必須でしょう。

こうした状況に中で、平和憲法を持つ日本の首相は、G7議長として今年1年、大変難しい役割を強いらえるのではないかと誰もが想像するところでしょう。

ロシアはすでにクリミア問題以来G7から外されており、そのロシアのプーチンという独裁者が、自分の邪な野望を満たすために、国民を騙してまで、隣国ウクライナに侵攻したというのが現実の問題です。

自由世界はこのプーチンの邪な野望を阻止しなければならないのですが、国対国という対等のレベルでは、交渉に応じない相手には力、つまり戦争でしか解決の道はありません。

結局自由世界はG7を中心にウクライナを支援してプーチンのロシアと戦うという現実になってしまっているのが現状でしょう。

日本の立場は極めて難しくなっています。自由主義国で当然「ストップ!プーチン」が目標ですが、「平和憲法」を持っている以上、戦争は勿論、直接の協力も出来ないのです。

かつて日本に戦争放棄を促した同盟国アメリカは、今は日本に出来るだけ自由世界の戦争に加担せよとの意向です。
その日本が、今年はG7の議長国で、岸田さんは日本の総理です。

力(戦争)によってプーチンのロシアを押しとどめようと自由世界が一致して行動するときに、日本は戦力による協力は出来ないのです。

然し更に現状を注視すれば、ウクライナを含め多くの国が、日本には戦力による協力・支援は求めないという事を認めてくれているのです。

それは何故でしょか。問題の核心はここにあるように思われるのです。

憲法で戦争を放棄している国は大国では日本だけです。それでも、何処の国も「日本はズルい」とか「日本だけ得をしている」と言わず、それを認めてくれているのです。

それは、「戦争をしない」と宣言することは大きな危険を冒すことかもしれない、しかし、地球社会の国のとしての「理想的な在り方」を世界に先駆けて「思い切って率先選択した」という事に対する敬意の表れでしょう。

戦争のない世界・人類社会という理想を誰もが持っているからこそ、そこに戦争を放棄した国への敬意が生まれるのではないでしょうか。
日本人にとって、そうした国の在り方は大きな誇りでもあるはずです。

岸田首相には今回のウクライナ訪問を含め、G7議長国総理としての多くの経験の中で、、平和憲法を持ち、戦争を放棄した国日本の意義を改めて実感して欲しいと思っています。

もし、日本が戦争をする国になれば、地球社会の時代を先取りしたという日本人の誇りも、それに対する諸外国からの敬意もたちどころに消滅するでしょうから。

アマゾンに見るアメリカの賃金と雇用

2023年03月21日 22時03分05秒 | 労働問題
安倍政権の「働き方改革」以来、政府は、アメリカ流の雇用制度を目指して「職務(ジョブ」をベースにした雇用・賃金制度の導入の推進に力を入れて来ています。

戦後日本の人事・賃金制度は、独自の発展を遂げて来ましたが、海外の研究者からは、いずれ欧米流の制度になるだろうと見られることも多く、日本の経営者や研究者のなかにも、欧米流の制度を見て、この方が合理的と考える人もいました。

古くは戦後の職務給導入の動きから、マネジメント・バイ・レザルト、不況期に導入が言われた成果給そして今回の「働き方改革」といった系譜は、欧米流の人事賃金制度の方がより合理的という考え方によるものでしょう。

しかし現実は欧米流合理性は日本社会の文化の中では、合理性に欠ける所があるようで、部分的導入はあっても人事賃金制度の中核にはなれませんでした。

その結果、欧米流の合理性が認められ賃金制度の基本になったのは、企業の将来を託す基幹従業員・正社員ではなく、現在必要な仕事を充足するための非正規社員においてでした。

ところで現状を見れば、雇用者の約4割が非正規従業員です。現実は日本の雇用者の4割が欧米流の「職務:ジョブ」をベースとした雇用制度、人事賃金制度で働く従業員です。

そこで、最近マスコミを賑わしているアマゾンの賃金と雇用関係のニュースを見てみましょう。
2018年頃からアマゾンの賃金はだんだん高くなってきたようです。最低賃金を上回る水準で、それが地域の賃金水準に影響する事が問題になっていたようです。
アメリカの最低賃金は州によって違い10~13ドルるですが、アマゾンは15ドルを最低にしていたそうです。

然し昨年はNYでは19ドルでもホームレスなどといわれるようになりNYの事業所でアマゾン最初の労働組合が出来たりし、時給19ドルのケースもあったそうですが、この所一転して、昨20日「アマゾンで9,000人解雇」といった報道です。

報道では1月までに18,000人の解雇を決めてとのことですが、それでは間に合わないという事のようです。対象は倉庫や配送関係ではないようで、クラウドや広告関係という事で、解説によれば、大手企業でデジタル関係の人員削減が目立ってきたとのことです。

またアマゾンでは倉庫関係の時給労働者などは常時募集していますが、職場の離職率は年160%などと言われ、求人源が枯渇するのではという危惧もあるなどといった報道もあり、時給に関わらず従業員の定着率は大変低いようです。

更に、アマゾン関係の報道を探しますと昨年秋に年末商戦に向けて1万数千人の採用を打ち出し、1月に18,000人、今回さらに9,000人といったリストラは、ジョブ型採用(仕事があれば採用、無くなれば解雇)という欧米方式の典型のようにも見えます。

「ジョブ型」が合理的といった見方は、企業の利益が中心になり易い傾向を持つようで、日本の様に、「企業で一番大事なのは人間、」「人を育てるのは企業の役割の一つ」といった社会の認識が一般的な日本では、ジョブ型と言っても、欧米のそれとは、まるで違ったものになっていくのだろうと思っています。

今春闘を出発点として、日本の労使は、正規、非正規問題の望ましい解決の方法を探ることになるでしょうが、日本は不合理で欧米が合理的という単純な舶来崇拝はもうさっぱりと卒業しなければならない時だと思っています。

繰り返される金融危機、マネー資本主義のあだ花

2023年03月20日 14時45分32秒 | 経済
世界金融恐慌の再来かと危ぶまれたリーマンショックが2008年でした。
それから15年でしょうか、アメリカで中堅のシリコンバレー銀行とシグネチャー銀行が破たんし、それと関係があってかどうかはわかりませんが、スイスではクレディスイスの危機が報じられスイスユニオンバンク(SUB)によるM&Aが今日決まったようです。

アメリカでは政府が預金者の100%保護を早期に打ち出し、金融不安の火消しに一応の成功はしたようですが、株式市場は一件落着とは思っていないようです

さらに世界では、アメリカ、EU、イギリス、日本、カナダ、スイスの6つの中央銀行が協調してドル資金の市場への供給拡充を今朝発表し、金融不安の発生を未然に防止する体制を整えるという事までしています。

シリコンバレー銀行の破綻については、シリコンバレーの新興企業などを中心に業務を展開し、全米10何位かの資金量という事ですが、資金運営に債券を組み入れていたものが、FRBの金利引き上げで債権の価格が下がり、SNSで危機情報が急速に広まり、預金引き出しが加速して破綻、という事になっています。

何か日本の昭和恐慌時代の地域の中小銀行の倒産とかわらない説明で、違うのは「いまはSNSの時代で噂が急速に広まる」、「銀行に行って並ばなくてもネットですぐに引き出せる」時代だからなどといった解説があります。

もともと銀行の自己資本比率というのは10%以下でOK という自己資本の少ない、他人の資本中心の経営ですから、健全経営が最も重視されるべき業態でしょう。

ですから、破綻、倒産の危険の気配があれば、噂は昔も今も忽ち広がるのです。
ただ、昔は現物が中心で、いわゆる相場も単純でしたが、今はマネー資本主義の時代です、多様な形でレバレッジ、デリバティブが組まれ、利益も損失も巨大になりがちです。

今回の場合も、シグネチャー銀行は暗号資産取引で問題が在るようで、買収に名乗りを上げた銀行、政府の対応が今後どうなるか危惧されます。

考えてみれば、この程度の中小銀行の破綻で、世界の6大国の中央銀行がドル資金の供給の宣言をというのは些か「鶏を裂くにに牛刀」で理解を超えている感じもします。

繰り返しますが、もともと銀行というのは、他人のカネを集めて、他人に貸して利鞘息を得る商売で、経済活動の潤滑油としては、大変重要な役割ですが、今のマネ―資本主義は、地道な利息収入よりギャンブルまがいのキャピタルゲインに精を出すようです。

結果的に、経済活動の潤滑油であるべき銀行が、経済活動の障害になることが多くなり、その反省がリーマンショックでの教訓だったはずです。

しかし、リーマンショックの教訓は、金融機関が破綻したとき、超金融緩和で乗り切るという結果対策面では活用されていますが、金融機関の健全な行動を監視するという原因対策面では、今回の問題に見るように大変不十分なようです。

この問題が今後、どうなっていくのか、影響や問題認識がどこまで広がるのか、良く見ておく必要がるように感じるところです。

チューリップも負けじと頑張っています

2023年03月19日 15時44分38秒 | 環境
今日は日曜日、朝起きると、昨日の雨とは打って変わって上天気です。

狭い庭も、良いおしめりで雑草も急に伸び、早速草むしりが必要になりそうです。

ミニ花壇の様子を見ますと、こちらは勝手に生えてきた一面のリュウキンカが、これも急に育って葉も大きくなり、一面に黄色い花をつけ始めています。

チューリップ用の花壇のつもりが、今年は、差し当たって、リュウキンカを育てるための花壇になってしまったようです。

一方チューリップの方は、先日はまだ、ところどころで伸びて来たな、という感じでしたが、今日写真を撮ってみますと、一応、3列に植えた形に葉が伸びて来ています。



チューリップも負けじと頑張って、ひと花もふた花も咲かせようとしているようです。
一面のリュウキンカの中から大きく伸びて一段高い所に、色とりどりの花を咲かせようとチューリップらしい気位の高さを示そうというのでしょうか。

いずれにしても、こちらは、両方とも元気に伸びて、それぞれの綺麗な花を咲かせてくれれば大喜びです。

これからひと月ぐらい、リュウキンカとチューリップの花の競い合いを見られるのであれば大いに結構と楽しみにすることにしました。

折に触れて、どんなことになるか、また、ご報告したいと思っています。

国際刑事裁判所プーチンに逮捕状

2023年03月18日 15時10分48秒 | 国際政治
今朝突然のニュースが入ってきました。
国際刑事裁判所が、ロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したというニュースです。

国際刑事裁判所(ICC)は、個人の国際犯罪を裁く裁判所です。(国家間の紛争を裁く国際司法裁判所とは異なります)。今回ICCから逮捕状が出たのはロシアのプーチン大統領とリボワベロワ大統領全権代表(子供の権利担当)の2人です。

犯罪と認定されているのは、占領地のウクライナの大勢の子供がロシアに移送されたことで、これは国際犯罪に当たるとのことです。

ロシアでは大統領令でこうした子供たちにロシア国籍の付与を促進、養子の促進の方針が出され、永久にウクライナには返さないという容疑が固まったという事のようです。

何か、北朝鮮の日本人拉致事件と共通するものを感じますが、こんな事が世の中にあっていいものでしょうか、ロシアという国は一体何を考えているのか、日本人としては全く理解に苦しむようなことが起きているようです。

この問題を担当する国際刑事裁判所の判事3人の中には、日本出身の赤根智子氏も入っているとのことです。ご努力に敬意を表するところです。

一方現実の事情はどうかと言いますと、国際刑事裁判所の条約締結国は123か国ですが、ロシアはかつて署名はしたが、撤回か、批准の意思はなことを明確にしているとのこと、アメリカはクリントン大統領の時に批准したが、ブッシュ大統領になって撤回、中国は未加盟ということだそうです。

ロシア外務省は「ロシアはICCには加盟していない。逮捕状は法的に無効で何の意味も持たない」と言っているとのことで、中国の習近平主席は今日ロシア訪問、アメリカのバイデン大統領は「プーチンが戦争犯罪を行っていることは明白」と言っていますが、法的な問題には触れていないようです。

こうした重要な国際的課題を担う国連組織に、安全保障理事会の常任理事国の5か国のうち3か国が入っていないというのが、今の国際情勢ですから、主要国それぞれの考え方、行動の在り方が、国連という組織を通じて、世界の安全保障に役立っているとは、残念ながら言えないと痛感するところです。

結局、国連のグテーレス事務総長の正直な発言の様に「国連は戦争を止めることは出来ない」という言葉がすべてを象徴しているという事なのでしょう。

プーチンの行動を、戦争をエスカレートさせずに止められるのは、ロシアの世論、公式的には選挙の結果あるいは国民の力ずくの運動かしかないのです。

今回の国際刑事裁判所のプーチンに対する逮捕状が、直接、間接を問わず、1人でも多くのロシア国民に、プーチンの行動は誤りであることを気付かせ、ロシア国民自身がこの時代錯誤の悲惨な戦争を終わらせる決定に辿り着くための一里塚になって欲しいものです。
今、人類の知恵が問われているのでしょう。

日本経済:失敗を繰り返さないために

2023年03月17日 12時27分58秒 | 経済
これまでのところ今春闘の結果は予想外に高めのものになりそうな気配です。
産別労働組合の組織としては我が国最大のUAゼンセンは、昨日春闘結果の一次集計を発表しました。
賃上げ率は、正社員で4.56%、パートは5.9%という事で、大方の予想を大幅に上回るものです。

集中回答日までに回答する所は一般的に高賃上げが可能なところですから、第2次以降の集計は次第に低くなるのでしょうが、いずれにしても予想をかなり上回りそうな気配です。

とはいえ、日本の労使関係の中では欧米の様に賃金インフレなって中央銀行が慌てて大幅な公定歩合引き上げでインフレ阻止を図るような無思慮な賃上げは起きません。
予想外に高いと言っても、ほぼ日本経済・企業の実力の範囲でしょうから、これからの日本経済の正常化、活性化を支える動きに役立つ範囲に収まることは間違いないでしょう。

この時点で表題のような事を言うのは些か早いのかもしれませんが、アベノミクス以来の失敗の本質を考えてみれば、早い時点で、これからの日本経済の順調な成長軌道への復帰を誤りないものにするために、より多くの方の理解が必要と考えているからです。

結論から先に言えば、アベノミクスの失敗の基本的原因は、何でも政府がやろうとし、民間の力を生かすことをしなかったという点に尽きます。

ただそれでだけの事なのか、原因はもっと複雑だろうという見方もあるかと思いますが、複雑な現象は、殆どが基本的な誤りから発しているのです。

何故そんなことになるのかと言いますと、先ず、政府のしたい事と、民間のしたい事とは違うからです。
勿論「民のかまどは賑わいにけり」と喜ばれた仁徳天皇のようなリーダーであればいいのかもしれませんが、アベノミクスはそうではありませんでした。

「決める政治」と銘打って、労使の専権事項である春闘まで「官製春闘」と言われるように、何でも政府が決める、最終意思決定者は総理自身という人がリーダーですと、官僚も国民は「ついていくだけ」と、やる気がなくなってくるのです。

家庭でも父親が専制的であれば子供の自主性は育ちません。企業でも上司の主張が強すぎると部下は自分で考えなくなります。

アベノミクスは、理論的に間違っていたというより、安倍さんのやり方が間違っていたことにより大きな失敗の原因がありました。

もともと権勢重視の政治家の目的は、自分の政権を長く維持する事ですから、自民党が選挙に勝つこと、自分がリーダーになる事が最大の目的で、政策は国民の人気を得るために「格好の良いスローガン」を掲げるという「手段」の中の1つに過ぎなかったのでしょう。

結果は、企業は自社の利益・資本蓄積に専念、国民は、老後のために貯蓄に励むといった個々の立場が中心になり、国や社会のために国民全体のベクトルを合わせるといった「日本経済の発展」という総合の力が低下し、社会的沈滞が起きたのでしょう。

典型的には、国民がカネを使わず、政府がそれを借りて(国債発行)使うことになり、国債残高は著増しましたが、民間の努力に頼るべき「人材の育成」、「科学技術の振興」が大幅に遅れ、1人当たりGDPが世界28位に堕ちたという結果のなりました。

この同じ間違いを岸田政権がやらない事をこのブログは強く願っているところです。

集中回答日、2023春闘はスタート順調

2023年03月16日 15時06分20秒 | 労働問題
2023年春闘は、集中回答日以前から満額回答が出たりと、何か様変わりですが、昨日の集中回答日の結果を見ても、自動車、電機、産業機械、食品大手など満額回答の揃い踏みのような結果になっています。

何故急にこんな変化が起きたのか考えてみますと、きっかけは消費者物価の異常な上昇でした。これまでマイナスか1%前後の上昇だったものが昨年に入り上昇をはじめ4%台にまで達しました。

原因は、誰にも解っていました。今迄原材料や最低賃金の上昇の中で、コストの価格転嫁が出来ず我慢を重ねていた企業が更なる輸入物価の上昇でコストアップに耐えられず「一斉値上げ」に踏み切った事です。

この一斉値上げに対して消費者は、実質賃金の低下で苦しみながらも、事情を理解し、値上げを容認して来ました。

一方、アメリカやヨーロッパでは値上げも賃金上げも10%近くになり、金融引締めなどでインフレ防止に大童です。その影響で日本は大幅円安になったりで、大手企業も、今まで通りでは経済が混乱、企業にとっても良くないという事を理解したようです。

結果は、企業の総本山の「経団連」が賃上げ容認の姿勢を打ち出し、連合も状況をしっかり把握、今春闘の賃上げ要求水準を5%まで引き上げ、政労使の話し合いを提唱するという事になりました。

ここまでくれば、今春闘はいままでとは様変わりになることは明らかです。
未だ、コスト上昇の価格転嫁が出来ない、下請け部門などで問題は残っていますが、今は、先ず賃金引上げが必要な事態だという労使共通の意識が生まれてきたのです。

率先して大幅賃上げを打ち出し、マスコミを賑わす企業も現れ、それを批判するのではなく、評価するような雰囲気さえ生まれてきました。

集中回答日が近づき、シンクタンクの賃上げ予想も軒並み引き上げられ、今年は賃上げをすることが社会正義に叶い、日本経済の健全路線への転換にも役立つという認識が、企業、労組、消費者にまで浸透してきている状態と言えるのではないでしょうか。

そしてそれは極めて健全で、正常な認識ではないかとこのブログでは判断しています。
何故なら、それは現状の日本経済の実力の範囲内だからです。
黒田バズーカで「為替レートの正常化」が実現して以来、その後の政策の適否は別として、大企業中心に企業はかなりの蓄積をしてきました。経常利益率なども長期不況以前より高めの水準をキープしています(法人企業統計)。

加工食品や日用品のような消費者物価直結のところも、昨年来の一斉値上げで一息ついたところでしょう。

こうした環境条件もあり、「賃上げが日本経済を活性化する」と言われれば、程度の差はあっても賃上げが可能なところが増えてきたというのが現状でしょう。
あとは需要の増加待ちという面もありますから、賃上げ率は多分3%は越えるでしょう。

そして国際情勢の悪化などの異常事態がない限り、日本経済は、やっと、「名目成長4%、実質成長率2%、賃金上昇率4%、物価上昇率2%」という、政府・日銀が掲げた「2%インフレ目標」に近い安定成長が視野に入ってくるのではないかと思っています。

日本経済の将来を決めるのは、その中でいかに人材育成、技術革新、生産性向上そしてその成果である経済成長という果実を、中小企業と大企業、賃金上昇と資本蓄積(賃金と利益の配分)民間と政府(国民負担率)の間で、いかに適切に、格差が拡大しないように考えながら配分するかです。