tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

高度プロフェッショナル制度の本質

2018年05月31日 10時56分21秒 | 労働
高度プロフェッショナル制度の本質
働き方改革法案は今日採決されることになるようです。
この法案の意図する2つの主要点は、「長時間労働の是正」と「同一労働・同一賃金」という事だったと考えていますが、「同一労働・同一賃金」のほうは正社員には適用しないという事で、パートと正社員の均衡といった良く解らないものになりました。

「長時間労働の是正」は残業の上限規制など、生真面目で勤勉な日本人が、働き過ぎにならないようにという事を目指すのかと思っていましたが、裁量労働や高度プロフェッショナル制度など抜け道を作る事で、本来の趣旨が良く解らなくなっていました。

 裁量労働の方は根拠にしたデータが余りに杜撰という事で取り下げになりましたが、「高度プロフェッショナル制度」は残っていて、長時間労働が無制限に認められると野党は反対という事でしょう。

 ILO(国際労働機関)条約の第1号が「週40時間制」であることからも知られますように、労働時間を適切な長さにするという事は、歴史的にも働く者の悲願でしょう。

 高度プロフェッショナル制度というのは、その意味ではその枠を外すという事です。それが許されるとすれば、それは「労働」ではない働き方や仕事の仕方という事になるのでしょう。
 つまり労働基準法などで考えている労働というのは、自分の意思ではなく、他人の意向(指揮・命令)によって働き、その対価を受け取るという行動についてのものです。

 他人の掣肘を受けず、自分の意思で働くのは、労働基準法の労働ではないでしょう。
 高度プロフェッショナルという方たちは、企業に所属はしているが、働くのは経営者や管理者の意向に(あまり)左右されずに、自分が思うように働くという立場の人たちを想定するという事になります。

 現行の労働基準法では「管理者はそういう(自分の意思で働く)人達だ」という事になっているのでしょう。
(管理者の過労問題は周知のことですが、ここでは論じません)
 その意味では、高度プロフェッショナル制度の適用の要件に「年収」を用いるという事はどうも趣旨が違うようです。

 高度プロフェッショナルとして労働時間の枠を外す要件は「自分で自分の仕事を決められるかどうか」という事でしょう。
 これは企業の社員でありながら、実質的には個人で仕事を請け負う「企業内個人請負」でなければならないという事ではないでしょうか。
  法案では、この制度の選択は自由という事のようですが、基本的に「集団主義、チームワーク重視」の日本企業の中で、法律まで作ってこうした制度を作る必要があるのかは今でも疑問です。( 日本的な対応策は今までもあるのです)

法律になれば、企業としては、その適用者になる選択はあくまで本人の自由意志といったことの徹底、さらには、こうした自由度の高い働き方を選択する際の従業員自身の目的意識、意識改革など、運用を誤らないためのいろいろな条件が現場では必要でしょう。
 
 与党は他方では副業、兼業などの二重就業を奨励するような考え方もあるようで、働き方改革というのは一体何を目指しているのかどうにも良く解りません。

技能実習制度、最長10年検討へ

2018年05月30日 11時24分57秒 | 国際関係
技能実習制度、最長10年検討へ
 労働力不足を背景に、技能実習制度は拡大を続けているようですが、政府は現在の最長5年の在留期間を、一定条件を満たせば10年まで延長する方針を固め、「骨太改革」のなかに盛り込む入管難民法の改正案をこの秋にも国会提出の意向とのことです。

 この方針は、現状の労働力不足、特に働く現場における技能労働力の不足に対応する政策との理解が一般的ですが、勿論それはそうとして、本来の目的や従来の経験から学べることは、アジア諸国への技術・技能の移転に大きな効果を持つこと、ひいては技能実習生を出している国々の経済発展に寄与するという視点があります。
 
 さらにもう一つ大事な事は、実習生が若い時代に日本の社会で暮らすことによって、日本への理解、日本文化への理解を深め日本を自分の好きな国と思ってくれるようになってほしいという事でしょう。

 過日もTVで、日本で学んだことを生かし、アジアで評価の高い建設工事の企業を興して活躍する方へのルポがありましたが、日本企業で大事にするQCD(品質、コスト、納期)をモットーにする経営が現地で高く評価されていることを知りました。

 しかし、他方では、残念ながら、技能実習制度を利用して、安い外国人労働力をこき使うブラック企業の存在も、ネット上でも数多く指摘されています。
 
 今回の政府の構想は、より長い日本社会への滞在を認めることになります。技能実習制度によって、日本における生活や技能のレベルなどの条件設定の方針とのことですが、矢張り、それと同時に、受け入れる日本企業のついての条件も、従来よりもさらにきちんと整備してくことが一層重要になるといった気がします。

 というのも、長期不況の中で生まれたブラック企業という言葉が示しますように、日本の労働者に対してもまともな労務管理が出来ない企業も多々あるようです。そんな企業で就労した実習生はまさに悲劇でしょう。制度がマイナスの効果を生みかねません。

 日本での就労、技能習得を夢見て来日する人たちが、「日本の企業で働いた経験が本当に一生の財産になった」と言ってくれるような結果にするのは、政府の政策とともに、受け入れる企業の心掛けが、より大事かもしれません。
 
 政府も、人手不足だけでなく、その点を十分に強調すべきでしょう。
 政府、実施に関係する諸機関、実習生を受け入れる企業の方々の、技能実習制度の理念への確りした理解が、相手国への将来に亘る日本の貢献と、日本への良き理解を促進することを願うところです。

必要なのは需要サイドへの政策

2018年05月29日 22時24分19秒 | 経済
必要なのは需要サイドへの政策
 昨5月28日、経済財政諮問会議があって、PB(プライマリー・バランス)の目標年次や、来年10月の消費増税(8%→10%)などが議論され、総理のまとめの発言があったと茂木内閣府特命担当大臣が記者会見で述べています。

 茂木大臣によれば、PBの達成は2025年を「目指すべき」と、何となく及び腰で、消費増税もあり、中間目標も目標より指標だそうです。
総理から「団塊の世代が75歳以上に入り始める2022年度の前までの3年間で、持続可能な経済財政の基盤を固めていく必要がある。本日の議論を踏まえ、私に、来月、骨太方針を取りまとめられるよう、具体案を作成してほしいと指示があったとのことです。

 記者との質疑応答では、消費増税前後の「駆け込み需要」と「その反動減」の問題や、PB達成の中間目標などのやり取りがあったようで、民間議員からは、経団連の首脳企業からが3%以上の賃上げをおこなったとの回答があったが、これが消費の活性化につがることを期待する、また安倍政権の経済運営は需要面では大きな成果を上げてきたが、これからはサプライサイドの強化成長していくビジョンが必要などの意見があったとのとことです。

 政府は、今国会で、「働き方改革」が最重要法案と言っているようですが、これもより効率的な働き方をしようということで、サプライサイドの注目した政策でしょう。
 この重要な会議で何故サプライサイドの話ばかり出るのでしょうか。

 今、日本経済で問題なのは、消費不足だということは明らかでしょう。賃金が上がっても、その割に消費は伸びず、貯蓄が増えるのです。そのトータルの結果は「経常収支の黒字」で示されます。経常黒字は20兆円を超え、じりじり増え続けているのです。

 そして、消費が伸びない、家計は消費を抑えて貯蓄する理由はと言えば、国民の「将来不安が原因」と誰もが考えています。
 老後の安定した生活のためにはには3000万円必要と言われ、最近ではそれでは足りないという意見も多いようです。結果は消費を切り詰め貯蓄、貯蓄です。

 現在50歳前後のサラリーマンは誰しも公的年金は減額される、私的年金は確定拠出で、給付はいくらになるかわからない、社会保障関連の料率は確実に上がるし、医療費の自己負担率は上がりそう、将来不安は根強く、家計は貯蓄に励むが、ゼロ金利なので物価上昇で目減りするばかり、政府はもっと物価を上げようという、どう考えても、老後生活には自信が持てない・・・、といった所が本音でしょう。

 経済財政諮問会議のメンバーは政治家、経済人、経済学者(1人)で消費者、生活者の代表はいません。メンバーがサプライサイドの人ばかりだからでしょうか、GDPを増やせばいい、多少インフレでもいい、人手不足だから、「働き方改革」で生産性を上げればGDPが増える、賃金も上げられる、そこまでで思考ストップのようです。

 家計がカネを使って、国内で物が売れなければ、供給が増えても、また輸出が増えるだけで、トランプさんに文句を言われるのが落ちでしょう。
 1800兆円を超える個人貯蓄を持つ国民の将来を安心できるものにして、 現在の消費を増やさない限り、GDPは増えません。

 そこを忘れて、また来年の消費増税もやめ、財政赤字を増やして、国民の将来不安をさらに深刻にするような愚策はもうやめてほしいものです。

総理をダシに嘘を言って大学を作ってしまったのか?

2018年05月28日 22時22分25秒 | 政治
総理をダシに嘘を言って大学を作ってしまったのか?
 加計学園の設立は奇妙な話になってしまいました。
 加計学園の獣医学部新設については、愛媛県と今治市で100億円近い補助金を出す(一部は出した?)のだそうですが、設立の申請のプロセスで、加計学園が、安倍総理に会って説明し、「いいね」という意見を頂いたという「嘘」の報告を、県と市に言っていて、県も市も、それを本当と思って対応していた、ということだったのだそうです。

 まさか、地方公共団体に対して総理の名を騙るような大胆なことをやるとは誰も思わないでしょうから、真に受けた方が「迂闊だった」と言っては気の毒のような気がします。

 「自らの発言が嘘だった」というのは、当の加計学園が、いわば「自白」の形で述べたものですから、今度は嘘ではないでしょう。これが嘘だったら、嘘のウソは本当になってしまいます。 

 名を騙られた安倍総理は国会の質疑で、私はあずかり知らないこと、私には関係ないと極めて冷静(名を騙られても気にしない)という態度でしたが、これまさに大人(たいじん)の態度なのでしょうか。

 大学というのは教育機関でしょうが、そういう所の設立の段階で「嘘」「騙り」が使われていたというようなことで、文部省などは構わないのでしょうか。
 お咎めがないのであれば、今後いろいろな所で、「首相の賛同を得ています」という嘘を活用して、何かをやろうという輩が輩出するかもしれません。

 そんな事が起きないように、こうした行動に対しては一罰百戒で臨んでほしいと思うところです。

米朝会談、再び6月12日の可能性が

2018年05月27日 10時55分30秒 | 国際関係
米朝会談、再び6月12日の可能性が
 武器による戦争をせずに、以前なら戦争になっていたであろう国際関係の難問を解決しようというのが今の米朝交渉でしょう。

 双方の思惑で、状況は二転三転します。再び6月12日の米朝首脳会談が現実味を帯びるというのも、多くの人には予想できなかったでしょう(当然私にも)。
 矢張り、金正恩さんは急いでいるようです。そしてトランプさんも行動は早い方がいいと考えているのでしょう。
 それで、順調に事が「前に進む」のであれば・・、と願うところです。

 考えてみれば、本当に事態の進展を望んでいるのは金正恩さんでしょう。ここまでもってきた北朝鮮の、いわば「国際社会への新しいデビュー」を「やっぱりやめた」ということが出来るでしょうか。

 国際的には「やっぱりしょうがない国だ」で済んでも、足元の北朝鮮の国民が、素直に納得するかどうか、粛清、処刑、暗殺といった手段さえも使って、維持してきた独裁者が、「国際社会に認めてもらって、国民のために平和と経済建設の国にします」といったのです。

 疲弊した多くの国民は勿論、上層部の中にも、「また元に戻って苦難の道を選ぶ」ことには疲れ果てた人もいるでしょう。
 どこの国でも選挙の際に「チェンジ」「チェンジ」と叫ぶようですが、現状に不満な人は、良くなるか悪くなるかわからなくても「現状を変えてほしい」と考えているのが一般的なようです。

 経済制裁がとけて、海外資本が流入してくれば北朝鮮がどう変わるか、先進国、新興国より国民の情報量は少ないかもしれませんが、この情報化社会の中です。情報量の多い人ほど、国を開いたらきっと良くなると中国の改革開放からの発展を羨みながら新しい将来を夢見ているのではないでしょうか。

 そうなれば、金正恩さんは、「また経済制裁の苦境になるが、これは国のためだ」と言って国民を説得できるでしょうか。
 いったん動き出した期待の流れを押しとどめるのはかなり大変でしょう。

 アメリカの方では、トランプさんも急いでいるようですが、中間選挙、ノーベル平和賞など、成功はトランプさん人気を大いに高めるでしょうが、状況によって、取るべき行動には余裕があるのはアメリカの方でしょう。
 ここまで来たら、北朝鮮も核弾頭付きミサイルをアメリカに向けて撃つことはないだろうとの予測もあるのかも知れません。

 その辺りが、北の主導で、急遽再実現した南北友好の会談という事なのでしょうか。
 思惑と思惑のせめぎ合い、世界にとって、良い方向へ行く可能性の方が高い事を祈りながら、市井の片隅から見守るところです。

「トランプの札の出方で金動く」
 これはカジノの話でしょうか。それとも・・・。

副業、兼業、二重就業、現実は多様です

2018年05月26日 10時51分25秒 | 労働
副業、兼業、二重就業、現実は多様です
 「働き方改革」は、長時間労働阻止が主要な目的かと思っていましたが、安倍首相は副業や兼業の普及は極めて重要だと言っているようです。それを忖度してか、厚労省が用意する「モデル就業規則」もこれからは従来の副業禁止規定などは止めて、副業、兼業を原則容認に変えていくようです。

 サラリーマンが副業をやるかどうかについて、政府が方針を出すということになるわけですが、そんなことを税金まで使って 政府がやる必要があるのかと大変おかしな感じがしました。
 
 副業・兼業をやるかやらないかは、まず本人の意思です。兼業農家もそうですが、政府が世話を焼くことではなさそうです。
 趣味を副業にしている人も大勢います。書道や生け花、算盤の先生、私もサラリーマンの傍ら、翻訳をしたり関連する原稿を書いたりしていたこともあります。

 どこの企業も、勤め先に迷惑を掛けなければ、副業を制限するようなんことはしません。こうした副業は自己判断の世界です。
 ただ、問題があるすれば、これは従来から企業は真剣ですが、社内の技術やノーハウの流出の可能性がある場合です。これは当然に規制されるべき問題でしょう。緩められたら大変です。

 この問題については、高度技術を持つ企業は、従来から適切に対応してきています。企業の死命を制する問題ですから当然です。
 政府が副業は良いですよと言っても、この問題は、全く関係ない分野でしょう。

 さらに別の問題があります。これは副業というより二重就業といったほうがいいでしょう。今の仕事では給料が足りないから、夜などに別の会社で働くというケースです。
 本人にすれば、生活出来るか出来ないかという深刻な問題ですから、あえて、長時間労働も辞さずの二重就業です。

 会社で残業させてくれれば、25%の割増賃金ですが、残業はダメだというから、安い時給で慣れない仕事、自分の健康をすり減らしてというのが本人の感覚でしょう。

 安倍さんの言う、「副業や兼業の普及は極めて重要だ、」というのはどういう意味なのでしょうか 収入が増える、新しい技能の習得になるなどの説明もあるようですが、現実はもっともっと複雑で、一概に「副業や兼業」と括れるようなものではないでしょう。

 政府が決めるのではなく、それぞれの企業、個々の労働者の選択を尊重して、余計は世話を焼かずに働く現場に任せるのが最も合理的な選択だと思うのですが。

トランプ大統領、米朝会談中止申し入れ

2018年05月25日 10時37分06秒 | 国際関係
トランプ大統領、米朝会談中止申し入れ
 「何とかうまく進めばいいな」と期待できないかと思いながらも、期待していた人も多いと思います。しかし結果は中止になるようです。

 正直言えば、多分多くの人たちはスムーズな進展は難しいと見、今回の結果に「やっぱり」という感想かと思いますが、 米朝双方の思惑の違いがハッキリしてしまったという事でしょう。

 金正恩さんにしてみれば、わが身大事、その表現は「体制の維持」ハッキリ言えば金王朝の存続という事でしょうから、丸裸になってアメリカにお任せにしたら、全ては終わるかもしれないというが最大の危惧でしょう。

 どういう意図かわかりませんが、そうした状況を解っていながらでしょう、ボルトンさんは「リビア方式」でと言いました。
 リビアは核を放棄したのち、内戦になり、カダフィ大佐は殺害されました。金正恩さんはこれでは困ります。
 
 アメリカを信じられなければ、かつての盟友中国の力を借りようとします。中国は「朋あり遠方より来たる」か「窮鳥懐に入らば猟師これを捕らえず」か知りませんが、温かく迎えました。しかし、中国がどこまで体制維持を保証できるかも不明でしょう。

 しかし金正恩さんは少し強気になったようです。米韓演習を機に、強気の主張をしました。南北の友好ムードは暗転、核実験坑道の爆破も「ショウではないか」と言われるようになりました。

 アメリカは、強大な核軍事力を背景に、北朝鮮を完全に降伏させようとしているのでしょう。これは武器を使わない戦争なのです。
 振り返れば、アメリカが日本の降伏させるのには足かけ5年の悲惨な戦争と、最後には二発の原爆の使用を必要としました。

 今、アメリカは(ある意味では世界もアメリカに頼んで)戦争を経ずに(特に核戦争は絶対に避け)北朝鮮を降伏させようとしているというのが実態ではないでしょうか。
 そしてその見返りが「北朝鮮の体制の維持」(金王朝の存続)という事でしょう。

 アメリカが本当に「体制の存続」を保証してくれるのか、金正恩さんは疑心暗鬼にさいなまれているのでしょう。国内にも敵はいると見る人も多いようです。
 国連の仲介を頼む声も出てきました。これは1つのまともな方向でしょう。

 これからの国際関係では、こうした形の戦争が増えてくるのではないでしょうか。
 人類の知恵が問われるところですが、武器を使った戦争を回避し、国際問題を解決しようという方向は大きな進歩かもしれません。

 日本は世界に先駆け戦争を放棄した国として、こうした場で、日本らしい貢献ができたのではないかと思うのですが、現状では全く無理のようですね。

5月月例経済報告、消費の判断に甘さ

2018年05月24日 12時34分29秒 | 経済
5月月例経済報告、消費の判断に甘さ
 昨日、内閣府から「月例経済報告」が発表になりました。
 月例経済報告は毎月出ていて、日本経済の概況を主要項目別に淡々と記述する形のものです。

 根拠になる統計などは、だいたい2か月前ぐらいまでしか出ていませんので、5月の報告は3月辺りまでの統計をベースにしたものになっています。
 個々の主要統計については、注目すべき点や変化があれば、このブログでも発表の都度取り上げていますので、ご理解を頂いている向きもあるのではと思いますが、どんな表現になっているか概略を見てみましょう。

 <日本経済全体については>
1-3月は外需がプラスだったが、民間在庫や民間住宅建設がマイナスだったため、実質値は9四半期ぶり、名目値は6四半期ぶりのマイナスになった。

 中身に入りますと、
「個人消費は持ち直している」
 個人総合所得は緩やかに増加、消費マインドは持ち直している。家計消費の3月はマイナス、小売販売額も減少、先行きについては、雇用、所得環境の改善で持ち直すことが期待される。
「設備投資は緩やかに増加」
 法人企業統計の設備投資の昨年10-12月は増加、資本財供給サイドは持ち直し、ソフトウェア投資は横ばい、「日銀短観」「機械受注統計」も持ち直し、企業収益増で増加が期待される。
「住宅建設は弱含み」
 持ち家の着工は横ばい、分譲住宅は弱含み、首都圏マンションは横ばいで、今後は弱含みと予想される。
「公共投資は底堅く推移」
 地方単独事業の増加で底堅い推移が予想される。
「貿易収支は黒字横ばい」
といったものです。

まとめとして報告の冒頭に書いてあるのは
「景気は緩やかに回復している」
「先行きについては、雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。」
という言葉ですが、どう見ても、この報告では、GDPの最大の部分である個人消費については、見方が些か甘いように思います。
    
 雇用環境や所得環境が改善するといっていますが、それが春闘賃上げ率の多少の増加を勘案しているとしても、「消費性向の低下には全く触れていない」という点、現政権の経済政策上の最大の問題である点を全く見過ごしているという分析には問題を感じます。
 
 私自身も見通し通りに行ってくれれば良いと思いますが、内容をつぶさに見れば、もっと「やれる事、やるべき事」があったはずですよという所でしょうか。

「働き方改革」が要請するもの

2018年05月23日 21時14分58秒 | 労働
「働き方改革」が要請するもの
昨日は、書く気力を失ってしまって失礼致しました。
 偶々と言っては良くないかもしれませんが、アメフト問題での渦中の学生が、自分の思う所をすべて正直に話すのを見て、その生真面目さに、改めてこれが本来の人間の姿だとつくづく感じ、私自身もめげてはいられないと気を取り直すことが出来ました。

 今日は、「働き方改革」法案を衆院の委員会で採決する予定だったようですが、これまでも書いてきた、働き方改革法案の問題点を前提に、「働く現場」にもたらされる影響、必要になると思われる事柄などを考えて見たいと思います。

 働き方改革で政府の構想は、大きく2つの点に関わります。1つは、長時間労働をなくそうという側面、もう1つは、職場での均等待遇の実現の側面でしょう。
 しかし長時間労働を無くそうという側面には2つの全く違った視点が混在しています。その1つは高度プロフェッショナル制度(かつては裁量労働も)、もう1つは副業の奨励です。
 
 均等待遇については正規と非正規労働者の均等待遇という事のようですが、これは、恐らく実効性の無いものになりそうで、成立しても無駄なものになりそうな気がします。

 改革を謳う政府の考え方のベースにあるのはどうも「自由な働き方を選択できるのが一番いい」という事のようです。
 おそらく欧米流の、「職務中心・個人ベース」への舶来崇拝があって、「人間中心・集団主義」という日本の文化は遅れた非合理的なものという先入観を持つ人たちの発想に引きずられたものなのでしょう。

 キリスト教を中心にした西洋文化圏の働き方意識と、日本の共存と共生、人間集団の凝集力を生み出す働き方の違いがほとんど見落とされているのが今の働き方改革でしょう。

 多分、日本社会、日本企業は、法律の趣旨を換骨奪胎して、日本らしい形に咀嚼変容して対応するという事になるのではないかと思いますが、法律が出来てしまえば多少は都合が悪くても強制されることもあるでしょう。

 今、与野党間で一番問題になっている高度プロフッショナル制度などが典型的ですが、多くの日本人は、たとえ高度の職業能力を持っていても、「1匹オオカミ」的な人は少ないでしょう。
 野党や連合などが心配していますように、一旦決まると適用範囲が広がる可能性もありましょう、上司の管理に仕方や、職場の人間集団の雰囲気によっては、真面目で責任感の強い日本人です、組織のためなら(今の官庁に典型的に見られますね)と考え、無理な忖度も長時間労働もしてしまう恐れは無きにしも非ずです。

 これからの本当の働き方改革は、それぞれの個人が、集団に埋没しない個人の自立力を持ちながら、日本の伝統文化に根差す集団の凝集力を発揮するような「精鋭の集団」、最近の言葉で言えば、「スマート・ワークが出来る人たちの人間集団」を創っていくことでしょう。

 そこで最も重要になるのは経営管理者の能力でしょう。しかし、ここ30年の長期不況の中で、残念ながら経営管理者の教育はかなり手抜きされてきたようです。
 恐らくその分、労働組合の活動に頼らなければならないことが多くなるように思います。労組も、長期不況の中でその活動は沈滞してきましたが、「高プロは組合員ではない」などといわずに、高プロからパートまで、幅広い分野での、より良い働き方実現への活動の積極化が期待されるようになるのではないでしょうか。

米中貿易摩擦は双方の努力で

2018年05月21日 10時49分17秒 | 国際関係
米中貿易摩擦は双方の努力で
 アメリカが中国に対して2000億ドルの対米輸入増加をと主張して始まった米中の貿易交渉ですが、多分、日本政府も固唾をのんで見守っているでしょう。現状、一応の総論段階の調整が進んだようです。

3年ほど前に、同じ問題が起こった時、中国は、 ボーイングの旅客機300機を購入するという手土産を持って交渉に臨んだ経緯があります。

今回も、中国は、2000億ドルとは言いませんが、アメリカからの農産物の輸入の積極化などを約束、アメリカも、中国がその努力を続ける間は、鉄鋼・アルミなどへの高関税は棚上げするという事のようです。
当初の言論戦では、中国も一歩も引かずといった報復の姿勢を見せていましたが、現実の交渉では柔軟な大人の姿勢を見せたことは評価できるでしょう。

今回のトランプ政権の鉄鋼、アルミの高関税問題は、最初からトランプ流で、アメリカの貿易赤字が大きいのは、黒字国が悪いからという一方的な主張から発していて、同じく対米黒字国日本から見ても、また客観的に見ても、理不尽なところがあります。

典型的なのは、アメリカ車が日本で売れないのは日本の非関税障壁のせいだといった主張ですが、日本人のほとんどは、「日本人の買いたくなるような車を作ってくれよ」と考えているのでしょう。

中国の場合は国が大きすぎますし、まだ発展途上国の側面も多いので、特に知的財産権など先進国レベルに達していない面もあるのでしょうが、中国としても改善を急ぐ様子は見られます。

こうした摩擦問題は、単純に一方的な形で起きるというよりは、矢張り双方に問題があるということが多いのでしょう。
アメリカは、「輸出国はアメリカ市場で儲けて良い思いをしている」と言いますが、良い思いをしているのは輸入しているアメリカの企業や、輸入品を購入しているアメリカの消費者も同じで、それによって喜んでいるというのがもう一面の真理でしょう。

トランプ流の戦術・戦略は威丈高ですが、交渉が始まれば、より合理性も出るでしょうし、何より、輸入品値上がりで、アメリカ経済が受ける打撃も出てくるはずです。
日米間では繊維から鉄鋼、牛肉オレンジ、自動車、半導体と、日米貿易摩擦は連綿として続いてきましたが、TPPで目指した総合的な解決策はアメリカの脱退で頓挫しました。

トランプさんはなかなか納得しないかもしれませんが、こうした問題は矢張り、双方の合理的な努力で解決していくことが一番大事ではないでしょうか。
アメリカ、中国という2つの超大国の、今後の交渉の行方に注目しましょう。

財政再建は実体経済の成長で

2018年05月20日 11時23分50秒 | 経済
財政再建は実体経済の成長で
 5月6日に「 いよいよ本格化する財政再建問題」を書きました、2020年のPB(プライマリー・バランス)達成が、今度は2025年に伸びて、新しい対策が作られるようですが、5月6日に書きましたように、一番大事な事は、総理大臣から上級官僚まで、先ず「嘘を言わないこと」でしょう。

 今の状態では、政府要人の言うことには「嘘」が一杯あって、どうにも宛にならないので、真面目に聞く気にならない、といった気持ちが国民の中に充満しているのではないでしょうか。

 これではいくら政策と立案しても、国会で議論しても、結局は言葉が空回りしているだけで、国民は本気になって政府の努力に応えようなどという気は多分起きません。
 まさに「信なくば立たず」です。

 とはいえ、同じ人たちが、「今日からは嘘は申しません」と言っても、「それも嘘だろう」と言われてしまえばそれまでです。「信」を取り戻すのは容易ではないでしょう。

 愚痴を言ってもしょうがないので、財政再建問題へのアプローチで、大事だと思われることを指摘しておきたいと思います。

 これまでの政府・日銀の方針は、そのベースに「2%インフレ目標」がありました。はっきり言えば、インフレで借金の実質負担を減らすことで財政再建をすると読めます。
 しかし日銀は2%インフレは 当面不可能と諦めたようです。

  インフレで財政再建が駄目となれば、残るのは、「増税」か「実体経済の成長」かということになるでしょう。
 増税だけではまりに誠意がないので、「インフレ目標」の代わりに「実体経済の成長目標」を立てて、国民の豊かさを実現する中で、増税もする、ぐらいの配慮が必要でしょう。

 国民にとっては、物価が上がって名目GDPが増えるよりも、物価はあまり上がらずに実体経済が成長して実質GDPが成長したほうがいいにきまっています(財政再建にはどっちでもいいのでしょうが)。

 であれば、インフレ目標の代わりに「GDP600兆円」などといいう腰だめの目標ではなく、実質経済成長の確りした目標を立て、それに向かって、政府も労使も国民も本気で頭をひねり協力するような気概と協力体制が必要でしょう。
 インフレになって金利が上がらないと問題は大きいですが、インフレ率が低ければ金利の上昇も低くて済むでしょう。政府にとっても有利です。

 こんなことを実現するためには、政府は、経済活動を担う労使や、消費支出の財布の紐を握る家計と本気で対話して、知恵も借り、経済活動への協力を要請しなければなりません。恐らく嘘をついたり隠ぺいをしたり状況は無くなっていくでしょう。

 改めて聖徳太子の「17条の憲法」の 第17条を、政権・政策担当者に読み直して貰いたいものです。

カジノへの執念は卑しさの表れ

2018年05月19日 11時06分31秒 | 政治
カジノへの執念は卑しさの表れ
 振り返ってみましたら、「 カジノで観光客を・・?」と書いたのはもう4年前です。安倍政権はその後いろいろな反対にあって本来なら「国民の良識に従ってカジノは止めよう」と考えるのが当然と思うのですが、また、今国会でも「IR法案を何とか通したい」と考えているようです。

 人間の弱さの一である射幸心につけ込んで、カネを稼ごうというのがカジノというギャンブル産業です。儲かるのは胴元に決まっているのです。
 これだけ反対にあっても、まだやろうというのは何故なのか、安倍さんがギャンブル好きなのか、本人はそうも見えませんが、周囲に「カジノは良いよ」という人がいるのか、執念の理由が何処から来ているのか、全く理解できません。

 途上国が外貨が欲しくてカジノをやるというのもあるようです。アメリカやヨーロッパの一部のように、カネが万能で正業でもギャンブルでも稼いだカネは同じカネという文化ならば、カジノもOKでしょう。しかし、日本にはそういう必要も文化もありません。

 今の日本は、経常黒字が大きすぎ、問題視され、何かというと円高にされて、困っています。
 また、日本には「額に汗したカネ」を貴び、「あぶく銭」は「卑しいカネ」とする、伝統文化があります。
これはマネー資本主義を善しとせず、実体経済を重視するという、G7やG20などが重視する世界経済の発展の基盤に通じるものです。

 その日本に何でカジノが必要なのでしょうか。現政権の閣僚は皆日本人です。文部省や文化庁に関係する、あるいは責任を持つ人たちから「やっぱり日本文化には合わないのでは」といった声が聞こえるかと思っても全く聞こえて来ません。

 現状、カジノも、IRもありませんが、日本への観光客は急伸しています。その大部分は、日本の伝統文化をいろいろな形で満喫しようと日本に来ているのです。
 そして日本文化の現状や源流に触れて、それぞれに感慨を持って帰られるようです。

 その上に何ゆえに、「日本に行ってカジノで損した」経験を持つ人たちを増やさなければならないのでしょうか。
 安倍総理や、閣僚の皆様には「インカムゲインと キャピタルゲインの違いの本質」、「 カネに対する日本の素晴らしい伝統文化の感覚」について、もっともっと感覚を研ぎ澄ましてほしいと思ってしまいます。

 改めて、「なぜ日本にカジノが必要なのですか・・・?」

消費者物価4月分発表:見方いろいろ

2018年05月18日 22時30分44秒 | 経済
消費者物価4月分発表:見方いろいろ
 今日(5/18)総務省から前月2018年4月分の消費者物価指数が発表になりました。
 結果は、上げ幅・下げ幅(%)で見ますと
<前月比>(季節調整済み)
総合:-0.4% (好天で生鮮食品が下がった)
生鮮食品を除く総合:-0.1%
生鮮食品とエネルギーを除く総合:-0.1%
<前年同月比>
総合:0.6%
生鮮食品を除く総合:0.7%
生鮮食品とエネルギーを除く総合:0.4%
という事です。
 
 マスコミの見出しは「消費者物価0.7%上昇 4月、食品・電気代上げ影響」とか「
消費者物価:0.7%上昇 2カ月連続で伸び縮小」などですが、日本経済の基本的動向としては大きな変化はありません。

 上がっているのが問題という見方ですと、対前年同月比で最も高い生鮮食品を除く総合0.7%を取っていますが、政府のインフレ目標がますます達成されないという見方ですと同じく生鮮食品を除く総合が、対前値同月比で、2月の1.0%から3月0.9%、4月0.7%と下がっている点を重視しているという視点の置き方の違いが出るようです。

 基本的には、「生鮮食品とエネルギーを除く総合」が、対前年同月比で、1月0.4%、2月0.5%、3月0.5%、4月0.4%といった状態で、日本経済自体としての物価動向はこの程度の微弱な上昇が続く状態ということで、あとは石油の国際価格や国内の野菜や鮮魚の価格の影響で月々変化するという事です。

 日銀も2%インフレ目標は削除しましたし、賃金もあまり上がらず、年金は下がり、銀行預金に金利も付かない中で物価が上がって喜ぶ人は余りいないでしょうから、家計にとっては、消費者物価の上昇は0.4~0.5%程度で、高くならないことを願っているのでしょう。

 その意味では、基本的な物価動向はせいぜいこんな所で、後は、国内では生鮮食品、海外では原油価格などが上がらないような、良い天候、平和な国際関係が続いてほしいと願う所ではないでしょうか。

景気対策:政府が駄目なら労使が頑張れ

2018年05月17日 11時41分24秒 | 経済
景気対策:政府が駄目なら労使が頑張れ
 前回、今年に入って1-3月期のGDP統計が9ヶ月ぶりマイナスになった中身をみましたが、基本的には消費不振でした。

 企業活動の方では、景気の先行指標として知られる「機械受注統計」(総務省)も今日発表になって、3か月ぶりのマイナスということで、昨年来上向いてきた景気に翳りが出るのかという心配も一部にはあるようです。

 GDPの方は、構造的な消費不振という重い課題が指摘されていますが、機械受注については、時期的な踊り場で、一般的な景況を示すと言われる「船舶と電力を除く部分」では受注増になっていますし、3か月後の6月の見通しでは、全体的に増加に転じていて、総務省も強気の発言をしているようです。

 折角、順調な経済活動を取り戻し、米朝会談やイランの核合意、エルサレム問題など多様な不確定要素を含みながらも世界的に経済は安定成長路線に復帰するのではないかと期待されている時です、日本経済も、日本自身の政治問題の混乱で経済の足が引っ張られるようなことは何とか避けたいものです。

 とはいえ、この所、政府発言に対する国民の信頼度は極端に低下し、政府が何を言っても、国民はまず「本当かな?」と首をかしげる状態です。
 これではまさに「信なくば立たず」で政治の根幹が揺らいでいるのですから、政策を通す前に、まず政府への信頼を取り戻すプロセスが必要でしょう。

 それにもう1年以上もかかって、信頼度が上がらない状態ですから(政権支持率低下)、残念ながら、未だ信頼回復は容易ではないでしょう。

 企業が一生懸命頑張っているから大丈夫という面は確かにありますが、政策の停滞が余りに長期化すると、矢張り経済にとっては危険でしょう。
 
 ならば、混乱する国会はそれとして、日本の労使のナショナルセンター、連合と経団連が、日本の経済活動の担当者、責任者として、協力して議論を深め、日本の経済政策のあるべき方向を国民や企業に示すような活動をしてほしいと思います。

 日本の労使は同じ「日本丸」という船に乗っているのです。当面の意見は違っても、最終目標は共通でしょう。

嘗て、日本の労使は、二回のオイルショック対策から始まり、土地バブルの問題や、円高で世界一高水準と言われた物価問題、さらには通勤ラッシュ対策などについて、協力して研究し、結果を世に問うた行動もあったと記憶します。

 特に消費不振の問題は、労使が直接に関係する問題です、違いを強調するより、共通点を求めるという日本の伝統文化に根差す思考方法で、日本の労使が、改めて今、積極的な役割を果たすことを期待したいと思っていますがどうでしょうか。