tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

メモリー、記憶装置、人類の進歩を支える日本へ

2024年07月16日 13時44分43秒 | 科学技術

人間の脳は、自分が経験し、見聞きしたことを時系列に整理して記憶することが出来るようになっているという事です。多分、これこそが人間を他の動物と違うところでしょう

多くのことを経験し、知識を吸収し、それを確り覚えていれば、いろいろな面で便利です。ですから人間はできるだけ多くの知識をため込もうとするようです。

「友を選ばば、書を読みて」ですから本は大事でした。蔵書の多い人は尊敬されました。

現役のころ資料室の担当をしたことがあります。高度成長の時代です。先輩に「必要な本は必ず買っておくように」と言われました。一番困ったのは、資料室のスペースに限りがある事でした。「蔵書は無限に増える。資料は化け物だ」と思いました。

今人類もそんな経験をしているのではないでしょうか。

コンピュータが生まれ、紙に書いたり印刷したりの時代より、知識の量は急速に増え、それを活用するための検索も極めて簡単にできるようになりました。

そして人工知能,生成AIが生まれました。

人間の脳は、記憶の必要なものと、不要なものは適当に判断しますが、AIは教えたことは皆覚えています。そしていつでも検索出来ないといけないのです。

そんなに覚えきれないよ、という事は許されないのです。必要になるのは大容量のメモリー、記憶装置です。状況は昔の「資料室」と同じで、知識は「化け物」で無限に増えるのです。

ということで、これからあらゆる面でAIが活用されるようになると、あらゆるところで膨大なメモリーの蓄積が必要になるわけで、メモリー蓄積のための「省スペース」と「省電力」が大きな課題になってきているのです。

メモリーは、古くは磁気テープから、フロッピーディスク、SSDと進歩してきましたが、最近また磁気テープが脚光を浴びることになっているようです。

特筆すべきは、時期テープの場合、今後の技術進歩によっては、省エネ性能では、SSDの何十分の1から何百分の1になるといわれている点です。

ここまで書いてきたのも、これから記憶装置として磁気テープが省スペース、省エネでますます重要になるのではないかという見方があるという事と、もう一つは、磁気テープという事になりますと、日本には富士フイルムとソニーという大変な会社があるという事を多くの人に知ってほしいと思ったからです。(先刻ご承知の皆様には失礼)

磁気メモリーの性能の向上は、磁気粒子を小さくすること,テープ、フイルムを薄くすることのようですが、こうした材料技術は日本の得意技でもあります。「磁気」記憶装置の省エネ性能や、耐久性については、その本来の性質からの有利性があるようです。

人類の知識技術の進歩はこれからも知識をいかに集積できるか、そしてそれを便利に使いこなせるかに大きく依存するでしょう。

その最も基本的な分野で日本が実力を発揮することが出来れば、近頃落ち目の日本ですが、「流石は日本」と言える分野が拡大する牽引力になっていくのではないでしょうか。

この分野での日本の技術力に期待するところです。


AIとの付き合い方

2023年12月04日 16時38分16秒 | 科学技術
AIとの付き合い方
「カーテンに日足も細く師走かな」(AI?/ tnlabo?)  
最近、AI俳句というのがはやっているようです。

結構名句も生まれるようで、人気のようですが、今のAIでは、多くの俳句をAIに教え、このキーワードを入れて俳句を作れと命令し、出てきた5・7・5を点検して、これは物になりそうとか「いいね」が付きそうなのを投句するという事のようです。

勿論、人間が俳句を詠んだり詩を作ったりするのは、自然の景色や、生き物の動きや、自然と人間の交流などから自分の感じたもの、それが自分の心に映った心象を、何らかの形式の決まった言葉という枠の中で表現するという事でしょう。

日本語の場合は字数、5・7・5とか5・7・5・7・7、あるいは7・5調の詩などにすることが多いし、中国語や欧米の言葉では約束に従って足韻を踏むことが多いようです。

こうした言葉の形式というのは、朗読したときに美しくきこえるようにという事、滑らかに響くという事が大きいのでしょう。
俳句の場合はそれに季語が必要ですが、これは四季のある日本の環境と感覚から生まれた独特のものでしょう。

ここでとくに俳句を取り上げたのは、特にその短さの故です。
短い言葉で思いを表現する事は大変難しいですね。ツイッター(X)がそうですが。凡人が使うと、どうしても単純な悪口や否定語、良ければ「いいね」といった事になりそうです。

5・7・5で、人の心を打つような心象を表現するのは常人には困難で、芭蕉の句でも「奥の細道」のように、紀行文という背景の中に俳句を載せれば、多くの人は、その句の心を理解し易いでしょう。

ところで。AI俳句は、先ずAIに多くの俳句を教え、その上で、望ましい俳句の条件を指示(プロンプト)し、覚えた俳句や言葉を上手く組み合わせて名句を作れという事になるのです。
重要なのは、AIの特技である「教えた事は絶対忘れない」「計算(思考)速度が極度に速い」の2つの組み合わせで、人の驚くような成果を出させるという事なのです。

一茶の句を端から読み込ませたAIは、瞬間にそのすべてを検索、指示に合う5・7・5を作ります。結果は、全く意味をなさないものから、指示した人を驚かす名句まで、たちどころに数百句という事で、まさに『俳諧大矢数』のチャンピオンです。
指示した本人は、撰者の立場で、その中で良いのを選び、場合によっては、自分好みに手直しすればいいという事でしょう。

テーマを変えて、既に多用されている議事録の纏めなどでも、AIは、何人もの部下に一斉にその作業をやらせるのと同じことが出来ます。難しいのは指示の仕方で、後は出てきた答案の中から良いのを選べばいいのです。当然素早く出来ます。

AIの特技は「与えた情報は決して忘れない」「思考過程は秒速」という2つであることを如何に利用するかにかかっているという事でしょう。

AI利用はプロンプト(指示)の出し方で、これは従来の仕事で上司に要請されるレベルより、大分綿密/適切を要するという事でしょう。(AIは気がきかないのです)

「AIは言われたことしかしない」というのも、AIの特技ですから、結構付き合いにくいかもしれませんが、上司に反感などは持ちませんから、その点は気が楽でしょう。

ホンダジェット米大陸無着陸横断へ

2023年06月15日 15時09分01秒 | 科学技術
ホンダジェット米大陸無着陸横断へ
このブロ後では、ホンダジェットの描き始めた軌跡を追っていますが、新しい発表がありました。
今迄の同サイズの小型のビジネスジェット機でのトップセラーという実績から、今度は、さらなる新段階のへの計画を披露したのです。

ホンダジェットを製造する「ホンダエアクラフト・カンパニー(HACI)はホンダがアメリカに作ったアメリカ国籍の会社です。

今回発表された新型機は、従来のホンダビジネスジェット「ホンダジェット エリート II」より一回り大きく、定員も8人乗りから11人乗りという事ですが、最大の特徴は航続距離で4862kmを目標にしている点です。

この航続距離は、アメリカ大陸の東海岸と西海岸の距離を無着陸で飛べる距離で、それが実現すれば、小型ビジネスジェット(ライトジェット・クラス)では初めてという事だそうです。

そのためには燃費を二割ほど節約しなければならないという事ですが、その点は今まで培ってきた省エネ技術がモノを言うという事になるのでしょう。

アメリカのように世界一のビジネスジェットの利用国で、国土が広大とはいえ、小型のビジネスジェットでは「ひと飛び」でアメリカ横断が出来ないというのは大変都合が悪いでしょう。しかしそこまで省エネ技術が届いていなかったという事だったのです。

今迄出来なかった「無着陸横断」をホンダの省エネ技術で可能にするというのも、ユーザーには勿論、技術としても素晴らしい事ではないでしょうか。

本田技研の創始者の本田宗一郎氏が、第二次大戦の戦時中、軍の下請けでピストンリングを作りながらの夢を、戦後モーターバイク、四輪車の世界的メーカーで実現、次は飛行機と考えておられたことは話に聞きますが、まさに、夢が花開いていく発展でしょう。

三菱航空機MRJ、後のスペースジェットが、素晴らし試作機を世に問いながら、最終的に生産を中止することになったのは、返すがえすも残念ですが、三菱航空機は日本の会社であり、ホンダエアクラフトはアメリカ会社であることも大きく影響しているなどといったことも聞かれます。

こうした問題には、市井の我々には解らないいろいろな問題が在るのでしょうが、それにしても今回のホンダエアクラフトの発表は、日本産業、ホンダの育てた技術力の成果という点からも素晴らしいものではないでしょうか。

新型ホンダビジネスジェットによる、米大陸無着陸横断の実現のニュースが期待されるところでしょう。
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写真はこちら。ホンダHPより:
url:https://www.honda.co.jp/news/2023/c230614.html?from=top_newsroom_area

核分裂と核融合

2023年06月01日 17時05分01秒 | 科学技術
広く原子力エネルギーと言ったり核エネルギーと言ったりしていますが、今、人類が活用しようといている原子レベルの工夫で、エネルギーを取り出そうという試みには大きく2つの方法があるようです。

既に使われているのは「核分裂」のエネルギーを取り出して使うという方法です。

もう一つ今は未だ研究途上ですが近い将来、人類がうまく利用できるだろうと思われているのが「核融合」によるエネルギーの獲得で、この研究では日本も世界の競争の中でトップレベルを走っているようです。

この2つの方法は、「分裂」と「融合」、つまり正反対の言葉になっているように、大きな違いがあります。

今の原発、原子力発電は、核分裂を利用しています。
一番小さい原子は水素ですが、原発の材料に使われるウラニュウム(ウラン)などになると、原子核が大きすぎて壊れやすくなるようです。

これは壊れると言わずに分裂(核分裂)というのですが、分裂するときに放射線を出します。この放射線の持っているエネルギーを閉じ込めてその熱を使って発電するのが原発です。

ウランは分裂を繰り替ええし、色々な名前の原子に変化して、最後は鉛になって安定します。
問題は、原発の使用済み核燃料も鉛になるまで放射線をだし続けることです。放射線に当たると人体に異常や損傷が出ますから、原発から出る廃棄物や汚染水の処理が大変です。「オンカロ」などという事にもなるわけです。

核融合は、太陽エネルギーの源である、太陽の中で起きている事を人間の手でやろうという事で、これは水素の原子を4つ集めて融合させヘリウムの原子にする際に放出される2個の陽子の持つエネルギーを閉じ込めて発電に使うという方法で、ヘリウムは化合も反応もしない不活性ガスで極めて安定していますから、発電後に問題は残りません。

つまり、核分裂は大きな原子が崩壊(分裂)するときのエネルギーを使うので使った後の使用済み核燃料も長い間放射線を出し続け、その処理の方法が出来ていない(トイレのないマンション)という未完成の技術だという事です。

どちらも、もともとアインシュタインが到達した「e=mc²」という公式「宇宙ではエネルギーと物質は互いに入れ替わっており、その関係は、物質の質量に光の速度の2乗を掛けた値のエネルギーになる」という原理から出発しています。

人類は、結局太陽のマネをして核融合を活用できるようになるといいですね。

科学技術立国は問題含みの日本

2023年05月23日 14時25分01秒 | 科学技術
岸田内閣のスローガンの1つに「科学技術立国」があったと思います。

もともと人間以外に殆ど資源のない日本は、人間が頭を働かせ体を動かして付加価値(GDP)を稼ぎ出さなければならない、人間の働きに頼らなければ成り立たない国という事になっているのです。

そしてこれから必要な人間の働きというおは、「ものづくり」から「高度技術の開発」に進んで行かなければならない時代に入っています。

その日本で今、残念な現実が起きていると今朝の朝日新聞が心配しています。
事は「働き方改革」にも関係しますが、大学や研究機関などの研究者の雇用について10年という期間雇用を定め、期間雇用で10年勤めたら「無期雇用」にしなければならないという雇用制度(2013年4月、改正労働契約法)についてです。

これは10年研究を続けていれば、無期雇用にしなければならないと「雇用の安定」を推進するための法制度のはずです。
然し、これを逆用、10年の手前で雇用打ち切れば、無期雇用にしないで済ますという動きが起き、文科省の調査では全国の大学や研究機関で数千人が対象という状況とのことです。

なぜこんなことが起きるのでしょうか。
大学や研究機関も一種の企業体ですから無期雇用(正規社員に相当)にすると人件費がかさむ、研究開発という仕事は、何時成果が出るか解らない事も当然多いので、固定費を増やしたくないという経営上の都合からというのがまず考えられるところです。

この問題に関しては、大学や研究機関がひどいという見方も在るでしょう。また、研究開発が進まなければ仕方ないという意見もあるでしょう。

然し、成果がいつ出るか解らない研究開発という問題の性格を考えれば、問題の本質は、もう少し違った所にあると考えるのが妥当ではないでしょうか。
  
それは、研究開発立国を掲げる国が、研究会発にどれだけの予算を組んでいるかという、「研究開発にはカネがかかる」という基本問題を考えなければならないという視点です。

総務省の「科学技術研究調査」(2021年度)を見ますと、「科学技術研究費の総額は2年ぶりに増加、GDPに占める比率は前年度比0.01%の上昇」と研究開発費そのものの不足という実態を垣間見るような説明が書かれています。

日本のGDPもリーマンショック以来ほとんど伸びていませんが、GDPに占める科学技術研究費の割合は2008年度3.64%、2021年度3.59%で、下がっているのです。
  
結局、研究者の雇用問題の本質は、雇用する大学や研究機関の財政難で、その結果、研究という長い時間を掛けなければ成果が解らない仕事の性格と雇用契約の関係が、単純に当面のコスト問題に切り替っているので上手く行かないという事のようです。

これに対しては、成果が出るかでないか解らないものにカネをつぎ込むのは不適切という意見もあるかもしれませんが、コロナが禍が来て、日本がワクチン研究後進国だと解ったように、科学技術立国日本の研究開発は軽視されて来ているのです。

科学技術研究への手抜きは、こんなところにも影響が出ていますと今朝の朝日新聞では、この分野ではよく指摘される「引用数の多い研究論文のランキング」を出しています。

それによりますと、上位国と日本の順位は、
1998-2000年 ①米 ②英 ③独 ④日
2008-2010年 ①米 ②中 ③英 ④独 ⑤仏 ⑥日
2018-2020年 ①中 ②米 ③英 ⑤独 ⑥伊 ・・・⑪ 韓 ⑫日
となっています。
こんなところに結果が出ているというのは、何か情けないですね。
  

AI活用の原点を考える

2023年04月26日 21時25分53秒 | 科学技術
チャットGPTが生れてAIというものが急に身近になって来たようです。チャットGPTは固有名詞ですが「生成AI」という一般用語も生まれてきたようです。  

普通の言葉で質問すれば、それなりに納得するような返事が普通の言葉で帰ってくるというのですから、それなら自分も使ってみたいという気持ちになります。

何が変わって急にAIが身近に感じられるようなものになって来たのでしょうか。
AIに入っているデータは、みんなインターネットや会社のデータなどに入っているでしょう。

それならば、自分でインターネットを使って検索し、自分の質問に関わる十分なデータを集め、それをよく読んで理解すれば、求める答えは出て来るはずです。

しかし、それには大変な時間と労力が必要なことが誰でも直ぐに解るでしょう。それなら、まずAIにその質問をして、AIが出した答えを見て、それを参考にしながら、自分でも追加の検索をして自分らしい答えを出せば良いのではないかと考えるでしょう。

この辺りにAI活用の原点がありそうです。
コンピュータが人間より決定的に優れている点は2つあります。一つは、覚えた事は忘れないこと、2つは、計算など情報処理の速度が圧倒的に早い事です。

ですから決まった事をやるのなら、人間はとても電子機器に敵いません。年金や住宅ローンなどで使う金利計算、何%の利率で、何乗とか何乗根の計算は関数電卓では一瞬ですし、計算違いはありません。 
人間は、それを信用して使えばいいのです。

条件が変化する場合でも変化の範囲が決まっていれば、コンピュータは条件を変化させたケース全てを一瞬で答えてくれます。
条件の変化が決まっていない場合は、起こりそうな変化の起きる確率のデータを取り入れた計算も可能でしょう。

こうなると人間の考え方に似てきます。深層学習というのは、この辺りを人間の質問の仕方から読み取って、コンピュータが人間が教ええたとおりに持っている限りのデータを尽くして「忖度」して処理し、答えを出してくれるくれるという事になるのでしょう。
こういう風な形で、忖度してくれという思考方法をAIに与えるのがアルゴリズムでしょう。

AIは、忘れない、速い、言われたこは守る、という事では信頼できるのです。そして人間の思考プロセスに似せて作られているのがすべての手順、アルゴリズムという事になるのです。アルゴリズムが極めて重要という事でしょう。

出てきた答えが、期待したものと少し違うという事であれば、その人の思考プロセスとAIのアルゴリズムに違いがあったのかな、という事になるのでしょう。

そこで、AI活用の原点ですが、AIに、仕事の手伝いをさせる場合、その問題に、自分なりの知識、理解、考え方、などを相当確り持っていないとAIを使いこなすことは出来ないという事になりそうです。

言い換えれば、AIの回答に対して、自分なりの判断、評価が出来るという事が、AIを活用するための必要条件ではないかという事です。

AIの回答を確り添削できれば、多分AIを使いこなせるということになるのでしょいう。
もし、AIの回答が、自分の考えていたものより「良い」という判断が出来れば、それも、その問題についての理解があるから出来る判断という事になるのでしょう。

AIは、これからますます進歩していくでしょう。人間の頭脳はあまり進歩することはないようです。

それでも人間はAIを使いこなすことは出来るでしょう。AIが人間の教えたことをやるための人工頭脳である限りは。

自動車の未来、当分続く混戦、抜け出すのは?

2023年04月24日 21時25分32秒 | 科学技術
自動車の歴史は二百数十年でしょうか。
その間の開発競争の中心はエンジンの性能をいかに高めるかだった、と言ってもいいのではないでしょうか。

殆どの機械は電気で動くようになっても、自動車はガソリンで動いていました。
最初は力の強いエンジンが主要な競争だったのでしょう。しかし、技術進歩とともに、静かなエンジン、更にはガソリン消費の少ないエンジン、更には排気ガスの綺麗なエンジンという事になりました。

そして今、排気ガスを出さないのなら、電気で走ったらという事になって来ています。
然し電気を作るときに排気ガスが出れば同じことですから、再生可能エネルギーでCO2削減という事になって来るという難題が出て来ました。

そこでクローズアップされていうのが水素で走る車です。水素は燃やしても水しか出ませんから、再生可能エネルギーで水素を作って、水素をガソリンの様に貯めておいて、それで自動車を走らせればいいわけです。

それなら電気でモーターを回してエンジンに置き換えよう、ということで、いま電気自動者の開発が盛んです。ところが電気は貯蔵が難しいので、問題は蓄電池だという事になりました。

そして今、蓄電池はどんどん進化していますが、いくつかの欠点があります。貯めておくコストが高い(自然放電する)、航続距離が短い、充電するのに時間がかかる、熱を作るとコストが高いなどです。

そこで、今度は水素の出番という選択肢も出て来ることになったわけです。
水素で車を走らせる方法な2つが競っています、1つはFCV(燃料電池車)、もう1つは水素エンジン車です。

FCVはすでに市販車が走っています。トヨタのMIRAI(ミライ)です。
燃料電池は水素と酸素を反応させて発電する装置で、家庭のエネファームでも使われています。発電する時出る熱で給湯は副産物というのがエネファームです。
ですからFCVには、燃料電池とモーターが必要になります。(この方式はガソリン車でもすでに走っています。「日産ノートe-power」:これはガソリンの排気ガスが出ます。

一方、水素エンジン車は、水素を燃料にしたエンジン車で、モータで走るのではありません。
これはトヨタが実験車で先行しているようで、ヤリスやヵローらのエンジンを水素で動くようにして、レースなどに出て活躍しているようです。
マツダでは、お得意のロータリーエンジンを水素で動くようにして車を走らせようという研究がされているようです。

水素自動車は、未だ市販車は無いので燃費性能は解りませんが、燃料電池車 のMIRAIは燃費が大体わかっていて、同じサイズのガソリン車と燃費は変わらないか良いという見方もあるようです(100円分の水素で100キロぐらい走る)。

充填の時間はガソリンと変わらないそうですから。充電時間とは大違いでしょう。
電気自動車がこれに対抗するには、充電スタンドではなくて、充電した電池が積んであって、「ハイ、満タンの電池です」と言って「置き換えて」済むようにならにと駄目でしょう。

最終的には技術開発と、燃費がどこまでよくなるか、水素スタンド、充電スタンド、置き換え電池スタンドがどこまで普及するかといった問題が利用者の車種選択の基準になるのでしょう。

私はカローラハイブリッドで終わりですが、これから車を乗り換えて行こうという方々が、車をお選びになる時、色々な可能性を考えて、間違いない車選びをされるのに「大変難しい時代」になるのかな(それも楽しみかな?)などと考えてしまうところです。

人間の知識とAIの知識

2023年04月22日 12時31分39秒 | 科学技術
人間がAIをうまく使いこなせるかという問題が起きています。

きっかけの一つは「チャットGPT」というAIのシステムが、無料で誰でもダウンロードでき、それを使って、あたかもベテランの先輩に質問して教えてもらうような感覚で、「回答を頂く」ことが出来るようになったことでしょう。

よく解らない事があったり、テーマを与えられて、それなりの意見を言わなければならないといった時に、自分でインタネットを検索し正しいと思われる答えを探し出したりしなければならない事は、学生でも、社会人の会社の仕事上でもよくあります。

それなりに解っている事であれば、適切なキーワードで検索したり、原資料である官庁統計などを使って、自分でも納得できる答えを探すこともできます。
しかし、慣れない分野や、最新の情報が必要だったり、複雑な判断が必要だったりすると、まず「どうアクセスするか」から模索しなければならず、試行錯誤の繰り返しになります。

そんなときに「チャットGPT」は、与えられた問題を、そのまま入力すれば、すんなりと、解り易い言葉で、恰好のいい答えを出してくれるようです。

これは正に救世主のような存在です。早速利用すれば、先生には褒められ、会社の上司は「お前よくやったな」とOKサインといったことになる様なのです。(時には良く出来過ぎていると疑われたりもあるようです)

特に自然言語処理の発達で、言葉や文章が確りしているし、下手な文章で、変換ミスがあったりもしないので、ますます立派なものに見えるようです。

こうしたことが一般的になった時、一体どんなことが起きるかを考えると「恐ろしい」というのが世界中で心配されているのです。
理由ははっきりしていて、AIが間違った答えを出したり、意図的に誤った方向への輿論づくりに使われるといったことも当然想定されるわけです。

どういう訳かそうした心配は欧米で強く、日本では、今のところ心配よりも、国会や官僚組織も含めて、「うまく活用したい」という動きの方が中心のようで、イタリアの様に当面使用禁止などといった事は起きないようです。

この辺りは大変難しい問題ですが、産業化革命以来、発達する機械に人間が使われるという意識は絶えないようです。
本当は機械に使われているのではなく、資本家や経営者に使われるのですが、機械が悪いと感じる気持ちも解ります。

これまでは機械が肉体労働に置き換わったのですが、AIの時代は頭脳労働まで置き換えてしまうのですから、仕事のなくなる人も沢山出るのではないかという惧れもあるようです。

しかし考えてみれば、AIの中に存在する知識は、総て人間が入力したものですし、深層学習と言っても人間の思考法を部分的に真似たものでしかありません。

人間より圧倒的に優れているのは、「絶対的な記憶力」と「計算(情報処理)のスピード」です。これは「答え一発カシオミニ」の電卓の時代から量子コンピュータまで想像を絶する進歩です。

人間は、自らの短所をそれで補い、人間の活動分野は、極微の世界から広く宇宙空間まで広がっています。

ここで重要なのは、人間がAIにいかなる情報を入れるかです。
今朝の新聞では、G7が連携して「責任あるAI」のために、入力する情報についての共通基準をつろうという動きが報道されています。

現状では、これがAIの人格(機械格?)を決めるのでしょう。G7の成果に期待しましょう。

ハイブリッド車とメタネーション

2023年03月28日 17時11分02秒 | 科学技術
EUは今後の自動車としては電気自動車しか認めないという方針を打ち出していましたが、フォルクスワーゲンなどの意見も入れて、ハイブリッド車も認めるという事にしたというニュースがありました。

早速日本では、トヨタに有利だ、などという意見も聞かれますが。その理由は「メタネーション」技術の進展のようです。

メタネーションというのは、CO2と水素(H2)からメタンガスを合成することで、温暖化の元凶であるCO2を原料にしてメタンガスからガソリンまで作る技術が次第に具体化されてきているからという事のようです。

先日はCO2を食べて蛋白質を作りだす水素菌の事を書きましたが、嫌われ者のCO2が原材料になれば、気候変動問題対策にも、新たな展望が開けます。

炭素は燃えて(酸化して)炭酸ガスになるのが通常の化学反応ですが、炭酸ガスをまた燃料に戻すというのは逆反応で、こういう事に利用するのが「触媒」です。触媒の力を借りて、温度や気圧などを組み合わせて逆反応を起こす技術が進んできているようです。

触媒はコバルトが使われているようで、高価ですが、いかに効率的に活用して逆反応を起こす装置の効率も上げ、安いメタンを創りだすのが勝負なのでしょう。

メタンはCH4 とご記憶の方も多いと思いますが、いわゆるメタン系炭化水素の基本形で、炭素が2つ繋がるとそれを6個の水素が取り巻いてエタンに、3つ繋がると8個の水素が取り巻いてプロパンにと、炭素の数で名前がついて、8つ(オクト)繋がると水素は上と下に8つずつ両端に2つ付いて18個になって、オクタンになり、これが多ければオクタン価が高いガソリンになるようです。

こうしてメタンからe-fuel(合成ガソリン)が出来るようになるから、ハイブリッド車もOK
という事になるという事なのでしょう。

e-fuelを安く作る研究は世界中で競い合っているのが現状ですが、日本も頑張っているようです。

ドイツではBMWで研究が進んでいるといわれますが、日本でもトヨタやエネオスなど6社が組んだ研究、東京ガスや大阪ガスは本業につながる研究ですし、電機メーカーの日立も総合力を生かしてなどな、どしのぎをを削る状態のようです。

中でもIHIはすでにメタネーションの実験、試験運用のための標準化した装置(1時間にメタノール12.5立方米製造)の販売を開始したようです。

電気自動車もバッテリーを大容量にすれば重量がかさむ問題で、航続距離の問題が在りますし、特に寒冷地では暖房に電気を使うと航続距離が短くなる問題があるようで、EV(電気自動車)だけというのは、特に寒冷地では難しいようです。

その点ガソリンエンジン併用であれば、熱源はエンジンの副産物利用ですから容易です。
ハイブリッド車は、航続距離の問題は既に解決済みという事で、冒頭のEUの方針変更も理解できます。

勿論自動車だけではありません。何よりも、CO2が資源になるという意味で、メタネーションは多様な温暖化対策の中で本命とも考えられるものですから、ますますの研究の進展が期待されるところでしょう。

Rapidus Corporation の今後に期待

2023年02月28日 16時06分35秒 | 科学技術

ラピダスが北海道に半導体の工場を作るとの記事がマスコミから報道されました。

いよいよ日本の半導体関係の巨大企業が本気で、日本製半導体の本格復活に動き始めたという事でしょう。最大の期待を持って、この動きを歓迎したいと思います。

ラピダス株式会社・Rapidus Corporationは、今日の日本の関連主力企業が一丸となって、最先端の半導体生産においての完全復活を狙うプロジェクトでしょう。

出資する会社はトヨタ自動車、ソニーグループ、NTT、ソフトバンク、NEC、デンソー、三菱UFJ銀行、キオクシアの8社です。

ソニーは、アメリカでショックレーが発明した半導体(トランジスタ)に目をつけ、当時アメリカでは補聴器ぐらいにしか使えないと思われていた半導体で世界に先駆けてラジオをつくり(トランジスタ・ラジオ)一躍半導体の将来を開いた企業。キオクシはもともと東芝の半導体メモリー部門が独立した専業企業です。

これだけの企業が集まって、かつて、世界の過半のシェアを持ち世界に君臨した「日の丸半導体」の再現を狙う会社が、その活動の舞台として北海道の千歳空港の近くに、いよいよ工場建設の具体的計画に入ったというのがマスコミの報道です。

思い返せば、日米半導体交渉という摩擦もあったでしょう。更には、円高による長期不況による日本経済の低迷、それによる関連技術者の賃金水準の相対的な低下、職場の縮小、その結果の関連頭脳・関連技術の海外流出といった長い時間があり、日本の半導体は韓国、中国に遅れを取ることになったのです。

既に円高の問題は解消して10年、しかし、一度低迷した技術力の回復は遅々としていたようです。

とはいえ、シリコンウェファから半導体製造装置まで世界トップラスの技術水準、シェアを持つ部門は日本国内にも残っています。
その上にこれから、回路線幅「2ナノメートル」以下の半導体の量産を世界に先駆けて目指すというのがRapidus Corporationの工場の当面する主目標になるのでしょう。

研究開発の方法論については、かつての「すり合わせ技術」のように、日本の研究と開発、技術と技能といった融通無碍の一体化が大きく役立つのではないでしょうか。

Rapidus Corporationはその経営理念として
1、世界最高水準の開発力、技術力、製造力を持つ工場経営を推進する
2、多くの大学、研究機関と連携しこの分野を拡大していく人材育成を核とする
3、真のグリーン化に向けてイノヴェーションを推進する
を掲げていますが、このうち特に「2」人材育成が注目されます。

Rapidus Corporaionという新たな壮大なプロジェクトが、企業が人を育てるという意味でも、大きな成果を挙げる事を期待したいと思うところです。
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最後に一つ、管轄する経済産業省へのお願いです。Rapidus Corporationに金を出すのは大変結構です。しかし、口と人は出さないでください。

炭酸ガス(CO2)が資源になる日

2023年02月20日 15時36分11秒 | 科学技術
空気中のCO2の濃度の増加、地球温暖化の加速、氷河の後退、永久凍土の溶融、そして海面の上昇・・・。

それだけではありません。異常な気候変動、異常な高温・乾燥の発生、集中豪雨の深刻化、まさかCO2が地震にまでは関係ないと思いますが、もしかしたら「今は解らない」という事なのかもしれません。

いずれにしても化石燃料の多消費は人類社会に深刻な影響を与えつつあります。

その一方で、人類の英知はその解決に向かって地道な対応を始めています。このブログでも、注目すべき技術開発などについては折に触れ取り上げて来ています。

今日の日経産業新聞には、水素菌(水素酸化菌)によるCO2を原材料にしたタンパク質生産技術についての記事がありました。

水素菌というのはCO2を食べて、動物性蛋白質を作る性質があり、種々の水素菌の中でも効率の高い「CO2資源化研究所」(東京江東区)の開発した「CUDI水素菌」に着目した富士フイルムが、その水素菌の驚異的な早さでの増殖を可能にしているそうです。

その増殖のスピードですが、1時間で2倍に増えるのだそうで、大したことは無いようですが、10時間で1000倍(正確には1024倍)20時間で100万倍、24時間(1日)経つと1600万倍、つまり1グラムが16トンという事だそうです。

出来るのは粗蛋白質で、プロテイン、バイオ食品から、組み換え技術でプラスチック、ジェット燃料などになるのだそうです。

もともと炭素は、食品からエネルギー源まで、人間に最も役立つ元素ですが、燃えて(酸化して)CO2になって安定するのです。

それをまた炭素と水素にバラスのが大変なのです。
それが細菌や触媒の力で出来れば、というのが温暖化対策の基本でしょう。

自然の中では木や草の葉緑素がCO2を吸収し、太陽光線を使って光合成で幹や枝や葉や花・果実をつくり、余った酸素を放出して、動物の生命を支えているのですが、人間が化石燃料の多用でそのバランスを崩してしまった事が困った結果になっているのです。

矢張り人間の責任で、太陽光・太陽熱の利用、それに触媒の働き、更には細菌の活動などを生かして、化石燃料の消費を減らさないといけないのでしょう。

そうした中で、CUDIのような水素菌を発見してその働きを大幅に促進して新しい未来を切り開く様な技術が日本で進んでいる事には、やはり確りと注目しておかなければならないのではないでしょうか。

水素菌登場、脱石油の生分解プラ、燃料、タンパク質を!

2022年08月03日 19時20分47秒 | 科学技術
土の中には、色々な細菌がいるのは知られています。川奈ゴルフ場の土中から発見した細菌をベースに熱帯感染症の特効薬イベルメクチンを開発したノーベル賞の大村智博士の業績は有名ですが、此処でのお話は、100年以上前の1906年に発見された水素菌で、人類の食糧危機と地球の気候変動を救おうという動きです。

すでにNHKの特集でも取り上げられご存知のお方も多いと思いますが、現状、カネカが先陣を切り、土中・海水中で分解され、水と炭酸ガスになるプラスチックの多様な製品を生産して、多くの企業がすでに利用しています。

カネカのホームページでは詳しく報告されていますが、既に年間5000トンの生分解性ポリマー(プラスチックの原材料)を生産し、ポリ袋から、スプーン、フォーク、ストローなどが作られ、多くの企業で石油由来のプラ製品に置き代わっているとのことです。

特筆すべきは、こうした新製品は。通常価格は多少高いが地球環境の改善のためにと使われている事が多いのですが、既に、石油由来のプラ製品と十分競争力があるレベルに達しているという点のようです。

カネカでは、30年来の研究の成果と言っていますが、こうした先行企業の実績に、また最近の環境対応意識の一層の高まりもあるのでしょう、水素菌の特性を利用した各種のスタートアップも活動を始めているようです。

そうした活動の紹介をネットで拝見しますと、水素菌の活用により、脱化石燃料といった巨大、壮大な動きが、着実に現実となってくるような予感がするところです。

全ては「水素菌」の活用次第という事なのでしょうが、水素菌にも多様な種類があって、多くは植物由来の油脂とか、バイオマスを食べるのですが、中でも面白い例は、CO2を食べて、エタノールを作り出す水素菌で特許を取得した、東大発ベンチャー「 株式会社CO2資源化研究所」というところです。

カネカも既にCO2を食べる水素菌の開発は進めているとのことですが、上記の東大発ベンチャーでは、CO2を食べて24時間に1個が1600万個に増殖する水素菌を使って、飼料用植物性タンパク質、高機能タンパク質、バイオジェット燃料、プラスチック原材料などの生産につなげ、食糧問題と脱石油問題の両方を一挙に解決すべく研究開発を進めているとのことです。

最近「水素時代」という事が良く言われ、エネルギー源としての水素が脚光を浴びていますが、水素菌を使った多様な研究開発の進んでいくのを見ますと「水素菌時代」も来ているような気になって来ます。

カネカでは、「当社の開発は世界で最初」と明言していますが、長期不況の中で遅れに遅れて来た日本の研究・技術開発の中でも、こうした大切なものが育っていることを見ますと、これからの日本は何かやりそうだと感じて心強くなると同時に、国としての政策の視点も、もっともっと確りしてほしいとつくづく感じるところです。

経済安全保暲と国内生産、人材活用

2022年05月11日 15時24分12秒 | 科学技術
経済安全保暲法案は今日、成立の予定だそうです。

コロなというパンデミック、米中経済摩擦、そしてロシアの暴挙で対ロシア経済制裁と世界経済が混乱する中で、世界の平和と安定を前提に進行していた経済活動の国際分業、具体的にはサプライチェーンの国際化が、あちこちで不具合を生じています。

日本の場合も、安価な労働力や、自前の技術開発の手間を省こうなどなど、より安いコストと安易な経済運営を狙ったサプライチェーンの海外展開は、一転して生産の停滞を引き起こす事になったのです。

こうして状況変化により、出来るだけ国内で生産が完結するように心掛けようというのが経済安全保障の趣旨でしょう。
サプライチェーン強化、サイバー攻撃防御、官民協力で高度技術、高度な武器の特許非公開が4本柱だそうですが、要するに「自国で出来るだけ」というのが基本精神です。

国際関係が不安定になって、まさに「泥棒を見て縄をなう」ような面もないではないですが、これからの国際関係は益々不安定になると考えれば必要なるのでしょう。

然し、こうした、世界経済の混乱に対処するための「経済安全保障」という側面だけでは
ない、より本質的な見方も同時にしておく必要があるのではないでしょうか。

というのは、この所の日本の産業政策、産業企業の態度は、経済発展の本筋を外れ「コストの安さ」を求めることに重点を置き過ぎたという問題があったからです。

30年に及ぶ円高不況の中で、低コストを求め海外投資、国内空洞化は必然だった面もありますが、2013年以来、円高が解消しても、その惰性が続いていたことは反省に値するでしょう。

これは官民に共通する問題で、政府も企業も研究開発投資より海外展開に力を注いで、国内の技術開発は、韓国や中国に後れを取ってしまったことは明らかです。

これは同時に、国内の熟練した高度技術者の処遇にも関わってきます。賃金が高いというだけで高度熟練の軽視し、賃金カットや早期退職などで熟練技術の使い捨てに走り、熟練技術者の海外流出を招くといった事にもつながったようです。

こういう技術開発や保有する高度熟練技術を大切にしない傾向が技術立国こそが生きる道である日本の国力の低下を齎したことは否定できないでしょう。

今回の産業安全保障法案の成立が、自由圏対独裁国という、新たに生まれつつある地球的対立抗争に備えるためだけのものになるのか、日本の産業経済をその基盤から改めて活性化する役割をも果たし得るのかは、新法の運用次第でしょう。

エネルギーをはじめ資源、食糧についても海外依存が不可避の日本です。基本は世界の平和と安定を目指し、世界人類の進歩のための技術の研究開発において先進的立場を確立し、世界に貢献出来る日本であるための新法の活用を心がけてほしいものです。

「ホンダジェット」翼を伸ばす

2022年02月25日 11時33分19秒 | 科学技術
このブログでは2015年の4月に「ホンダジェット羽田に飛来」を書いています。そのホンダジェットがその後も順調に翼を伸ばし、先日小型ジェットの部門で5年連続納入機数が世界トップを続け世界17か国で200機以上が運航中とのことです。

ホンダジェットを作っているのは「ホンダ エアクラフト カンパニー」でホンダの全額出資の子会社ですが所在地は米国ノースカロライナ州グリーンズボロ市にあるアメリカの会社という事のようです。

ネットで検索すれば、大変可愛らしくスマートなホンダジェットの姿が沢山出てきますが、翼の上にエンジンがついているという独特な形、無駄を省いて豪華さはないが、性能は航空機の諸元で見れば抜群といった、まさに日本的な小型ビジネスジェットという感じです。

昨年はその活躍ぶりから米国航空宇宙学界から、ホンダ エアクラフト カンパニーの藤野社長に「リード航空賞」授与という名誉もあったようですが、現地でもアメリカの会社として存在価値を高めているようです。

航空機産業では、中国ロシアは別として自由世界では、アメリカのボーイングとヨーロッパのエアバスが旅客機(大型)の部門では双璧で、日本も旅客機部門への参入を目指し、かつてはYS11,そして最近ではMRJ,改称してスペースジェットという優れた中型機を生み出しましたが、諸種の事情から、三菱重工は中断(開発中止?)という事になっているようです。

そうした中で、自家用機部門だすが、ホンダジェットが、完成機のメーカーとして日本の技術で気を吐いているという事は、まさに頼もしい存在という事ではないでしょうか。

ホンダジェットは、乗客乗員計7名という、小回りの利く小型ジェットですが、ホンダ エアクラフト カンパニーは、やや大型版のコンセプト機「2600」を昨年発表しています。

これは11人乗りで、航続距離を伸ばしアメリカ大陸を無着陸で横断でき、燃費は類似サイズのものより20%から40%の改善を目指すものだという事で、ホンダ伝統の省エネエンジン開発が生きた高性能ビジネスジェットのようです。

世界の航空機業界の中で部品では気を吐く日本ですが、完成機については経産省の方針はあっても、思うに任せない日本です。

かつては航空機の開発大国の日本でしたが、戦後はまさに鳴かず「飛ばず」です。ホンダが、アメリカに進出、こうして気を吐いていることは、将来への可能性を広げる重要な前進ではないかと思うところです。
ホンダジェットの 益々の活躍を期待するところです。

全個体電池の開発競争を勝ち抜け

2022年02月21日 16時19分09秒 | 科学技術
長期不況の末期2012年に「蓄電技術で世界制覇を」を書きました。この長い深刻な不況脱出のために、起死回生の技術にもなりそうな蓄電技術について応援するために書いておこうと思ったからです。

その後、日本の関連企業は本当に頑張ったようです。
そして時代は変わり、自動車のエンジンがモーターに代わるEVの幕開けの時代に入って来ました。蓄電技術の高度化は、まさに決定的に重要になって来ました。

今世界に名をはせているイーロン・マスク氏率いるテスラの車は、当初からパナソニックの蓄電池で走っていたことは知られています。

そして今蓄電池は、電解液という液体を使う電池から「全個体電池」の時代に入ってこようとしています。

先ず本命は,リチュウムイオン電池の全個体化のようですが、すでに電池産業だけでなく自動車産業をはじめ、多くのスタートアップも含めて熾烈な開発競争が展開されています。

欧米は勿論、アジアでは、韓国も総力を挙げているようで、また玉石混交のようですが、原材料分野も含め、中国も本気で力を入れているようです。

世界はどんな状態なのかとネットで見ましたら、全個体電池関連の特許の出願件数のランキング(「全個体電池特許ランキング」で検索)がありました。

トップは韓国のサムスンでした、2位がパナソニックIP、3位がLG、4位がトヨタ、5位ボッシュ、6位から日立、ソニー、NEC、日産自動車、東芝 でベストテンという事です(2000~2018年計)。
中国は入っていません。事情は解りませんが、ニュースでは中国も航続距離の長いEVを出していることが報道されています。

全個体電池は、火災を起こしにくい点が最も優れていることは勿論、出力が大きくなり形状はコンパクトなど種々の利点を生かすべく、先ずはリチウムイオン電池の全固体化という事のようですが、欠点としては、リチウムやコバルトといったレアメアタルを使うという点だそうです。

レアメタルはその名の通り希少資源で、産地も限られているという事ですし、精錬工程が中国に集中しているようで、種々問題なしとしないようで、トヨタはナトリウムイオン電池の開発にも注力しているようです。

偶々今日の日経産業新聞が報じていたのは、日本電気硝子がレアメタル不使用のナトリウムイオン電池を開発、実用化を急いでいるという情報です。

ナトリウムイオン電池の電極に長年培ったガラスとその技術を使用することから、高価なレアメタルを 使わずに全個体電池の開発に成功して実用化を急いでいるという事で、こうした従来の事業で培った高い技術を新分野に活用して、会社の中身が蛻変して進化発展を遂げるというのは日本企業の特色(多くの繊維企業の変身、このブログでも取り上げた富士フイルムの例など枚挙に暇がない)ではないでしょうか。

電池の性能向上は今後ますます必要になる電気エネルギーの貯蔵問題の中でも最も身近なものですから、その中で全個体電池という安全で高出力の電池の開発競争はますます熾烈化するでしょう。

改めて、日本企業の頑張りに期待するとともに、これまで手を抜いてきた日本の技術開発政策を韓国、中国に負けないものにする努力を岸田政権に強く要望するところです。