tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2010、混迷のまま迎えた年末

2010年12月31日 12時20分58秒 | 経済
2010、混迷のまま迎えた年末
 2010年は、日本経済にとっては、政治、経済、社会など各面で、大変残念な年になってしまったような気がします。

 経済の面では、日本経済への打撃が最も大きかったのは$1=¥80を抜けて過去最高を更新する円高になるかと懸念されるような円高の進展でしょう。
 $1=¥90円台の半ばであれば、という淡い期待も、アメリカの圧倒的な金融緩和策で80円に接近することになり、6年半ぶりの市場介入も、日銀の金融緩和政策もその甲斐なく、多くの日本企業は日本脱出に追い立てられる状況になっています。

 リーマンショックからの回復過程が終わってみれば、企業収益の回復のペースは弱まり、しかも、その収益のより多くの部分が海外展開によるもので、国内の仕事は減り、結果、雇用も増えない、その皺寄せを最も受けるのが就活戦線というのが現実でしょう。

 政局は混迷、6月発表の経済政策も国民に訴えるものはなく、逆に、消費の梃入れを目指したエコカー補助金やエコポイントは財政不如意から先細り、「まさに貧すれば鈍す」です。

 雇用重視の掛け声だけは聞こえますが、具体的政策は見られず、国民不在の与党内、与野党間、政官関係のごたごたばかり。
 考えられないような犯罪が起こり社会の劣化を実感させられる国民は、やり場のない不満を何処に持っていけばいいのでしょう。

 ジャパンアズナンバーワンから転落し、こんな状態になってしまっている日本なのに、円だけは国際投機資本から大変な信用を勝ち得ているのは、国民が真面目で、堅実な生活を固守するからで、所得が減っても、生活を切り詰つめ貯蓄に励むという生活パターン の故でしょう。

 こうした生活倫理は、固定相場制の下では、大いに力を発揮するのですが、変動相場制の下では、実は自分の首を絞めるものだということに、どうも日本人は気付かないようです。
  ブレトンウッヅ体制で固定相場制を主唱したアメリカが、キリギリス生活 で赤字国に転落してから、変動相場制の盟主に変節した事が、変動相場制の本来の意味を雄弁に説明しています。
 
 今、日本に課せられているのは、そうした世界経済社会の中で、日本はどう生きていけば良いのかを、国の意思決定をする国会が、本気で「目的を共有して」真面目に知恵を絞り、日本として取るべき道を見出すべく 政策論議を戦わせることではないでしょうか。

 今の状態では国民は選挙に行っても、何処に、誰に、何に投票したらいいのか解りません。


2011年は雇用を大事にする年

2010年12月28日 21時42分27秒 | 労働
2011年は雇用を大事にする年
 菅総理は「1に雇用、2に雇用、3に雇用」といわれました。何処の国でも一国のリーダーは雇用に最も気を使うようです。それは必然でもあるし、また大変結構なことでもあります。

 しかし、昔から定義されていますように、雇用は経済の従属変数です。経済活動が停滞したままでは、雇用は通常は回復しません。今の日本の場合、経済が縮小している中で、雇用を増やそうというのですからこれは大変です、おそらく何か特別の政策が必要でしょう。

 雇用不振が凝縮されているのが、新卒の就職氷河期の問題でしょう。学校教育という社会人への準備段階を終えて、いざ社会人への旅立ちというときに躓くことが、本人にはもちろん、社会全体にとっても深刻な問題を生じることは、失われた10年 の経験から明らかです。

 ところで、日本人の生産した国民所得(GDP-減価償却)を構成するのは「雇用者報酬」「営業余剰「財産所得」の3つです。
・ 雇用者報酬=賃金や福利厚生費、社会保険料などの人件費の総額、
・ 営業余剰=法人企業、個人企業の挙げた利益の合計
・ 財産所得=預金利子、地代・家賃、株式配当など
 日本経済では7割強が雇用者報酬です。 この雇用者報酬を、働く人みんなで分け合っているわけです。

 ですが、この所、国民所得も増えませんから雇用者報酬も増えません。国民所得で見ると1997年が最大で414兆円、昨2009年は358兆円で、約14パーセント縮んでいます。そして
・ 雇用者報酬は279兆円から251兆円で、約11パーセントの減少
・ 営業余剰は72兆円から58兆円で、約19パーセントの減少 となっています。

 2010年、政府は1.1パーセントの名目経済成長を見込んで(実績見込み)おり、2011年は1.0パーセントの見込みです。
 雇用には賃金支払いが必要です。減ってしまってなかなか増えない雇用者報酬をみんなで分けて雇用を確保するという事は、具体的にはどういう事でしょうか。
 雇用を増やそうと思えば賃金は増やせない、賃金を上げようと思えば、雇用は増えない、というのが現実なのです。雇用増はその分の賃金抑制を意味します。

 正直に言えば、「1に雇用、2に雇用、3に雇用」というのは「1に賃金抑制、2に賃金抑制、3に賃金抑制」ということになります。でなければ、「1に経済成長、2に経済成長、3に経済成長」でしょう。もちろん望ましいのは後者です。
 僅か名目1%の経済成長を見込む政府です、どんな雇用政策を持っているのでしょうか。


経済・景気、気迷いの年末

2010年12月24日 21時23分20秒 | 経済
経済・景気、気迷いの年末
 リーマンショックから2年3ヶ月、世界景気は、何とか回復方向ですが、これには巨大人口をも持つアジア経済がテイクオフ期にあることが大きく寄与しているといえましょう。
 誠にご同慶の至りですが、日本にとっての問題は、実体経済のパーフォーマンスの良い日本がその中で1人長期のデフレ不況に苦しんでいるという困った現実です。

 2011年度の政府の経済見通しも発表されましたが、経済成長は実質も名目も昨年度より低く(1.1%→1.0%)、デフレ(消費者物価はゼロ%、企業物価は0.4%上昇なのにGDPデフレータはマイナス0.5%)から抜けられない予測なっており、その中で雇用だけが改善するといった奇妙なものになっています。閣議決定のあと発表される詳細は、どんなものになるのでしょうか。

 この所の経済の先行きは、為替レートの動向と企業収益の見込みを見ていれば大体見当がつくようですが。政府の為替レートの見通しは、今年度$1=¥85.6、来年度は82.4円で円高は進むことになっています。これはデフレ要因で、多分、消費者物価指数も企業物価も、政府の見通しに反して下がることになる可能性が高いように思います。

 もうひとつの企業収益の方は、主要上場企業ベースで、今年度はリーマンショックによる減益からの回復ということで50パーセント程度の増益になるようです。来年度は回復期も終わり、円高の影響が出て、増益幅は半分以下になるという予測のようですが、(証券会社の研究所等の予測)増益が維持できれば上々でしょう。

 しかも、企業業績の改善 は、アジアなどの低コストの国への進出による部分が大きくなりそうなので、従来のように、国内投資や国内での雇用・賃金の改善につながらない部分が増えてくるのが気がかりです。

 政府経済見通しでは、「雇用・所得環境の改善」という言葉が繰り返し使われていますが、新卒採用の状況、春闘の様相などを見ても、そう簡単に「改善」しそうにありません。
 例え名目GDPが1パーセント成長したとしても、雇用が0.7パーセント増え、企業所得も増えるとなると、1人当たり雇用者所得(賃金水準)の増える分が出てくるのでしょうか。

 更に心配なのは、経常収支黒字が今年度の16.4兆円を上回る17.6兆円となっている事で、相変わらずそれだけGDPを 使い残して、外国に貸すという、計算になっていることです。

 政府の希望的観測を入れても、経常黒字増加、円高、デフレを予想しているわけで、これがどう「雇用・所得環境の改善」につながるのか、国民の気迷いは続きそうな気がします。


エコ運転とメーター表示

2010年12月22日 13時00分30秒 | 環境
エコ運転とメーター表示
  現在はカローラに乗って3年余りになります。高齢者でセダンの好きな世代、通常は女房と2人、もう、大きな車は要らないのですが、時には、ゴルフバッグ3つぐらいは積む機会もあるので、トランクの広いものということで、カローラになりました。

  馬力はあったほうが、いざというとき便利だろうと1800ccですが、結構燃費よく走っていて、給油するときの平均燃費は16~17キロというところです。
 友人と話をすると、1500ccから2000ccで大体10~14キロの平均燃費のようで、新型プリウスの友人はさすがに21~22キロだそうです。

 私自身運転していて気がつくのは、発進、急加速、急坂の上り、それに、アイドリング時に平均燃費が落ちることです。
 瞬間燃費だと変化が大きすぎて余り参考にならないのですが、平均燃費表示にしておきますと、満タンにし、表示をリセットし0から始めると、どんな時に平均燃費が悪くなるかよく解ります。

 上り坂はしょうがないとして、スタートはエンジンの回転音上昇が気にならないぐらいにすれば、平均燃費の低下はほぼ避けられます。

 高速では80~90キロで走ると随分燃費はよくなります。営業用のトラックで、そのあたりを厳守しながら走っている車が時々あります。多少スピードを我慢してそれについていくと燃費は大幅に改善しますから、大型トラックでも同じような設定になっているのかなと思っています。
 平均燃費表示が0.1キロずつ着々と上がっていくのを見るのも楽しいものです。

 平均燃費が19.9キロまでいったことが二回ありまして、1度は、自宅(国分寺)の近所で給油して大泉から高速に乗り、会津の喜多方で高速を降りる時。 もう一度は、同様にして所沢から関越に乗り、湯沢で一泊、ゴルフ場に行って、帰途、所沢インターを出るときでした。

 最も燃費が良かったのは中央高速の談合坂SAで給油し、国分寺の自宅まで帰ってきたときで、28キロ/リッターでした。考えてみれば、小仏トンネルへの登り以外、ほとんど下り坂を走ってきたので、当たり前かもしれません。

 こうしてみると、私に関する限り、メーターに平均燃費表示がついたことは、エコ運転に随分効果があったようです。


財政政策に舵を切るアメリカ

2010年12月19日 13時55分21秒 | 国際経済
財政政策に舵を切るアメリカ
 昨日の新聞は一斉にオバマ大統領がブッシュ減税の2年間の延長に署名、法律が成立したことを報じています。民主党政権のアメリカが改めて積極財政政策に舵を切ったことについては、注目の要ありでしょう。

 もともと「100年に1度の不況」などと言われた今回の不況は、アメリカが長期に亘って財政赤字と経常赤字、いわゆる「双子の赤字」を垂れ流した結果です。最終的にそのファイナンスに行き詰まって、サブプライムローンを証券化し、世界に売りさばいたことが直接の原因でした。

 不良債権化したサブプライムローンは、世界の銀行のバランスシートに大きな穴 を空け、金融恐慌が引き金になって、実体経済が大打撃という経緯は、記憶に新しいことと思います。
 主要国が機動的な金融の超緩和策を取り、かつての世界恐慌のときのような失敗をしなかったということで、金融政策に対しては、それなりの評価が与えられえたという事でしょうか。

 金融を経済の血液に例えるなら、今回の金融政策は大量の輸血のようなものでしょう。輸血で貧血は治っても、その後の体力回復には、体が「食物摂取と心身の活動のバランスを回復する」という健康な循環 を取り戻さなければなりません。そのためには適切なリハビリが必要です。

 アメリカ経済はきちんとしてリハビリをやって、健康を取り戻したのでしょうか。どう見てもそこまでいっていないように思えるのですがどうでしょうか。
 クリスマス商戦は好調といっても、雇用は低迷(失業率9.6%)、所得は思うように増えず、経常赤字なのに日本型デフレが心配されたりといった状態です。

 そこで、早く元気になるために「栄養剤を打ちましょう」というのが今回の財政出動でしょうか。もともと栄養剤の打ち過ぎ(財政赤字の積み重ね)で、基礎体力が弱ってしまっていたアメリカ経済です。改めて、財政赤字増大懸念の声も少なくありません(減税延長に対する民主党の反対票112票)。
中間選挙で大敗したせいでしょうか、オバマ大統領は財政健全化路線を変え、従来のキリギリス 型路線の継続を選択したようです。

 アメリカは国内だけでなく世界中からいろいろなことを期待されています。アメリカなりの、国内にも、国際問題にも対応するための、やむを得ない判断という事なのでしょう。
 しかし、アメリカ経済としては、これは、いつか来た道の繰り返しにつながることは明らかなように思われてなりません。杞憂ならよいのですが。


法人税減税、問題は「何に使うか」

2010年12月16日 11時21分21秒 | 経済
 菅総理が5パーセントの法人税減税を指示しました。減税自体は、財界は一応、歓迎しているようです。

 確かに実効税率で40パーセントを超える日本の法人税率は高いことは明らかでしょう。アジア諸国の研修生などと経営計画のセッションをやって、その中で、法人税利を計画表に入れましょうというと、大体は20パーセントが相場のようです。地方税などを加えた実効税率でも25パーセントぐらいでしょう。

 5パーセントの法人税減税は、国税ベースで1.5兆円ほどになるということで、その穴埋めの財源をどうするかという事も問題になっているようです。

 多分問題は2つあって、ひとつは、法人税減税をしても、他の優遇税制などをやめて財源を捻出するのなら、結局は「いってこい」で、法人の負担は減りませんから、個別のプラス・マイナスはあってもトータルでは経済効果はあまり期待できないという事です。

 もう1つは、せっかく減税がされても、それが国内の企業活動の活発化のために使われなければ、日本経済を浮揚させるような効果はないということです。
 その辺りが気になるからでしょう、菅総理は、減税で企業の手元に残るカネは「国内への」投資に使う、雇用を増やす、給料を増やすなど、国内の景気を引き上げ、成長を促し、デフレを脱却するような方向に積極的に使って欲しいといっています。

 財界のほうは、5パーセント減税は実行すべきだが、「何々に使え、などと言われても困る」と反発しているようです。特に、雇用増や給与増は、経済成長の従属変数ですから問題外でしょう。
 一方、企業の方で、減税で浮いたカネを、対外投資や、自己資本充実(借金返済)などに使ったのでは、国内の経済活動にはほとんど効果はありません。

 このあたりは、日本経済の成長や雇用が大事の政治家と、自分の企業の収益性が大事の経営者の違いでしょう。今、国民経済と企業経営の利害は、いろいろな形で乖離 しつつあるのです。政界と財界のコミュニケーションが不足だと、こうした問題には対応できません。

 減税が、本当に国民と国民経済の役に立つことを考えるのなら、一般的な法人税減税より、例えば、サッチャー改革の中でやられたような、設備投資を1年で償却できるといった投資優遇税制などの国内投資でなければ減税にならない、目的意識のはっきりしたものの方が良いのかもしれません。


引き下げを避けられない「コストとしての賃金」

2010年12月13日 10時41分53秒 | 経済
 前回「コストのドル化」ということで、ドル化できない国内の賃金コストは、国際競争力が回復出来る水準までじりじりと下がらざるを得ないと書きました。

 もちろんこれは、コストとしての賃金ですから、いわゆる「賃金水準」ではありません。
 賃金コストは生産性と賃金の関係で決まります。例えば、中国の賃金水準が日本の10分の1であっても、生産性も10分の1であれば、両者の国際競争力はチャラです。

 しかし例えば、中国の賃金が日本の10分の1で、日本企業が工場を建て、生産性が日本の5分の1まで追いつけば、中国のほうが圧倒的に競争力が強くなるという関係です。

 ですから、日本としては、賃金を下げるよりも、生産性を上げることでコストを下げ、競争力を回復するというのが最も望ましい方法で、そう出来れば最もよいということになります。
 しかし、その場合でも、2つほど、大きな問題があります。

 1つは、デフレで景気が悪いですから、企業は儲かりません。企業は、教育訓練費を削り、研究開発費を抑制し、新規投資も控えます。

 そうした状況の下で、思うように生産性が上がるでしょうか。長岡藩の「コメ100俵」の故事は有名ですが、現実には、教育訓練費は削られ、現場力の低下、管理者の管理能力の低下などで、作業事故、メンタルヘルス問題などが深刻化しました。技術開発は韓国に追い抜かれ、設備投資はやるなら海外でといった状況です。

 もう1つは、首尾よく生産性が向上できたとしても、日本経済(GDP)自体が縮小しているような状態ですから、生産性向上の分は人員削減になり、雇用が減る(失業が増える)ことになり、特に新規学卒の就職などに深刻な問題を生じるという現実があるわけです。

 こうして円高は日本経済にコストの低減を強いますが、それに成功すればするほど雇用問題の深刻化をもたらします。
 政権や政策の行方も混沌ですが、今後の日本の政権政党には、こうした問題への的確かつ具体的な、国民にとって「解りやすい」対処方針がなければならないでしょう。

 能くその方針を示しうるリーダーが日本にはいるのでしょうか。それとも無策の成り行きまかせで、日本国民は改めて「失われた数年」に苦しむことになるのでしょうか。


コストのドル化

2010年12月11日 11時47分34秒 | 国際経済
コストのドル化
 これは、プラザ合意による円高後に、日本のフラッグキャリアともいうべき海運会社のトップの方が仰言っておられた言葉です。

 具体的にいえば、あらゆる調達コストを出来るだけドルで払うものにしていく、燃料動力などはもちろんだが、食材ややその他の資材も含めあらゆるコストのうち何パーセントをドルで支払っているかで国際競争力が決まってくる。もちろん、日本人船員を使っていたのでは、国際競争の中でペイしない、アジアなど、コストの安い国の船員を使っていかないとコストのドル化は出来ない。
 これは私なりの解釈ですが、多分仰言っていたのはこういう事だろうと思います。

 考えてみれば、円高というのは、極めて単純に円で払うコストは円高分だけ高くなるということですから、国際競争という面から考えれば、コストのうちドルで払う分が多くなれば多くなるほど、円高の影響(コスト高)が回避できるということになります。

 航空会社などは全く同じことがいえると思いますが、そうでなくても、国際競争力が物をいう分野では基本的には同じでしょう。
 生産拠点をアジアに移すというのは、$1=¥80の円高で、今後決定的に進むと思いますが、これも基本的には同じ発想によるものでしょう。

 問題は国内産業で、日本国内でもの買い、人間を雇う限り、コストのドル化は出来ません。国内で外国人を雇っても、原則内国民待遇で、最低賃金も政府主導で、円高に関係なく、毎年かなり上がっています。

 こうして円高で発生した内外価格差の是正は容易ではありません。国際比較して高い日本の物価が国際価格並みになるまでデフレが続くわけです。
 日本経済の最大のコスト(国民所得の7割強)は人件費ですから、人件費も結果的にじりじり下がることになります。

 $1=¥80で、日本の物価水準が国際比較して高くなくなる、具体的には、外国旅行して「外国の物価も日本と変わらないな」と感じられるようになるまでに、どのくらいの期間がかかるでしょうか。日本の物価の下がり具合、外国のインフレの進み具合によって変わりますが、何年かはかかるでしょう。
 その間デフレを覚悟しなければならないのが、今の日本経済の置かれた状態です。


アメリカのクリスマス商戦の見方

2010年12月08日 11時47分44秒 | 国際経済
アメリカのクリスマス商戦の見方
 経済ニュースでアメリカのクリスマス商戦が取り上げられています。
 先日はアメリカの 雇用統計が発表され、失業率は若干の悪化だったのですが、市場にはあまりマイナスの影響は見られず、一安心といった雰囲気の反応が多かったように見受けられました。

 事ほど左様に、アメリカの景気が良くなって欲しいと思っている人は多いようですが、クリスマス商戦も滑り出し好調のようで、ご同慶のいたりです。

 アメリカのクリスマス商戦は、1ヶ月ほどの間に、年間小売売上の20~25パーセントを売り上げるという比重の大きさですから、消費の動向がアメリカ経済を占う指標と考えれば、矢張り注目に値するということでしょう。

 ニュースの中で、買い物客が、「使い過ぎないようにクレジットカードを使わないようにしている」というコメントをしているのがありました。
「デビットカードを使っているんだ。これだとお金を預けただけしか使えないから、買いすぎてしまう心配はないからね。」ということです。

 デビットカードは、日本のキャッシュカードをお店で使うようなもので、使った分は即時決済ですから、預金残高がなくなれば、それ以上は買えないわけで、クレジットカードのように使いすぎることはありません。

 バブルで値上がりする住宅を担保にして、クレジットカードを使い、収入以上の支出をしていたアメリカ人が、住宅バブルの崩壊で、いやおうなしに堅実な生活を迫られているとすれば、それは、アメリカ経済の健全化に大変結構なことといえます。

 ところで、アメリカ人がみんなデビットカードを使うような堅実な生活になったら、多分クリスマス商戦は、かつてのような盛り上がりはないでしょう。それではアメリカのクリスマス商戦の盛り上がりを期待している人たちには残念かもしれません。

 ということで、アメリカのクリスマス商戦が盛り上がれば、アメリカの景気回復で世界経済にプラスと単純に考えるか、アメリカ人が 健全な生活に戻って、アメリカ経済が過剰消費体質から脱却することが、アメリカ経済の健全化、世界経済の安定への道と考えるか、アメリカ経済が世界経済に大きな影響を持つだけに、確り考え、確り観察していく必要があるようです。


我慢は美徳か

2010年12月04日 16時25分01秒 | 国際経済
我慢は美徳か
 日本人は我慢強いといわれます。我慢強いことは昔から、美徳のように思われているのも事実です。戦中派ですと「欲しがりませ、勝つまでは」などという標語を思い出します。

 「我慢強い」というのはどういう事でしょうか。どういう場合に、「我慢強い」ことが美徳とされるのでしょうか。その辺りを考えてみると結構難しい問題です。

 寒い時にコートを着ずに我慢して風邪を引いてしまったとか、風邪を引いているのに、我慢して会社に出勤して仕事を続け、仲間に風邪をうつしただけでなく、自分の風邪もひどくなって、結局一週間近く会社を休むことになったとか、といった場合には「我慢強い」というより、単なる「やせ我慢」で無鉄砲とか無思慮ということになるのでしょう。

 相手に悪口雑言を言われても、場合によっては暴力を振るわれても、カッとならずに我慢して、全体を丸く納めるとか、上司に「どうしても」と頼まれて、自分が少し我慢をすればいいのだと腹をくくり、「解りました」と残業をやって、プロジェクトの早期達成に貢献するといった場合の我慢強さは美徳といえるのかもしれません。

 丁度1年前、「貯蓄は美徳か 」というテーマでも書きましたが、貯蓄とか我慢が美徳といえるためには、その貯蓄とか我慢をしたことが、周囲、あるいは社会全体にとってトータルとしてプラス効果を持ち、同時に、何らかの意味で、本人にも長い目でプラスになるといった条件が必要でしょう。

 ところで、今、日本は、国際経済環境の中で、大変な我慢を続けています。頑張って生産性を高め、高齢化の進捗の中で将来のために貯蓄をすると、そのたびに円高になり、生産性の向上の成果は享受出来ず、貯蓄は目減りして、さらなる我慢と努力を強いられます。

 日本人は文句を言いませんが、円高になるたびに就職氷河期になり、多くの若者はまともな仕事に就けず、雇用、所得のチャンスも失われ、社会人としての訓練の機会が失われ、社会が次第に劣化していきます。
 外からはこうした様子は理解されず、国際投機資本からは日本は相変わらず黒字国で、競争力も強いのだから、もっと円高にしても大丈夫だろうと思われているようです。

 先ほどの我慢の定義からすれば、日本の我慢で世界経済が救われているのなら、それは世界から評価される我慢でしょう。しかし実績から見れば、日本の我慢のおかげで、円高を強いるアメリカや世界経済がこのように良くなった、などという様子は全く見えません。

 日本の我慢が、世界経済お役に立っていないとすれば、何のための我慢でしょうか。