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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「〇〇ファースト」で熟慮すべき視点を考える

2025年07月28日 14時28分50秒 | 経済

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アメリカでもヨーロッパでも程度の差はありますが「自国ファースト」の意識が強まっているのが最近の状況です。

しかし、誰も、これが人類社会にとって望ましいと感じてはいないでしょう。やむを得ず言わなければならないという感じだと思います。

その理由は2つでしょうか。①我が国の文化(identity)が壊れる事、②国民にとって経済的なマイナスになる事、でしょう。

前回も指摘しましたように、国と家族は本来出入り自由ではありません。そして侵入者には警戒的です。

しかし昔から「労働力」は必要でした。とくに労働を苦役と考える文化では被征服者を奴隷労働力としてきました。日本では縄文時代から戦争はなく、征服、被征服の関係も奴隷制度もなかったようです。

「自由・平等・博愛」の思想が一般化してからは、人権は普遍的で、博愛意識が必要となりました。

しかし、国と家族についてはそれぞれの独自性は広く認められています。その中で認められる「博愛」は、多様性の共存、経済協力、途上国援助、難民対応などの形で進んできたのでしょう。

然し、1960年代に入り、世界各国が経済発展を競う時代になり先進国で労働力不足が深刻になると、途上国から方の労働力に移入が活発化しました。

アメリカは中南米からヨーロッパはアフリカ・中東・アジアからといった感じです。当然移民問題も発生しました。

日本の場合は、差別意識に繋がりかねない単純労働力の導入は是とせず、アジア諸国の若者の技能向上に協力する目的で、技能実習制度が発足しています。(欧米と日本の文化の違いが見られるところです)-注-

今、欧米で問題にされ、日本でも意識が高まりつつある問題は、先進国経済が外国からの労働力の移入を必要としていることが大きな原因でしょう。

そして日本でも「日本人ファースト」をいかに考えるかが話題です。

観光客急増の問題:これは日本にとって圧倒的にプラスが大きいものでしょう。日本らしい受け入れ方で確り親切な対応が必要でしょう。

技能実習制度:本来素晴らしい制度だと思います。しかし良い制を作れば、必ずそれを悪用するケースも出てきます。その点の防止が重要でしょう。

社会保障制度の危機:感情的な判断ではなく、定量・定性両面の検討が必要でしょう。日本への好感を維持する必要も大きいでしょう。

難民受け入れ問題:母国が安定すれば帰る人たちです。母国の安定に、日本政府の積極的努力も必要でしょう。

永住希望者の場合:最も大事なのは、日本文化への包摂、統合が出来るという点でしょう。現実には、そういう人達が日本に帰化、永住しているのではないでしょうか。

戦争をしない国日本ですから、更に日本を理解し、日本を好きになってくれる人が世界で多くなってくれることが最も大事ではないかと考えています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

-注-『幻のジパング』田中恒行著、幻冬舎 技能実習制度を舞台にした珍しい小説参照。


東京都の消費者物価指数は安定傾向を示す

2025年07月25日 14時47分59秒 | 経済

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参院選の重要争点の1つだった消費者物価の上昇は、参院選にしては些かポイント外れだと思っていました。

参議院議員の選挙ですから、もう少し国の運営の基本的な思想や哲学をベースに民主政治の在り方を議論するのが本来でしょうが、何故か、国民の関心は物価問題で、各政党の方はそれに応じて消費税を下げて消費者物価を下げるといった方法論が主要論争点になり、民主政治の中の大問題の企業・団体献金の問題は霞んでいました。

国民がそう考えていたからでしょうが、誰かが参議院と衆議院は存在する意味が違うんだよと言った方が良いような気がしました。

それはさておき、このブログは毎月、生活密着の物価問題を取り上げていますが、今後の見通しについては、消費者物価は、毎月の分析から、次第に落ち着いてくるのではないかというか見方をしています。

今回発表になったのは全国の数字の先行指標といわれる東京都区部の消費者物価指数の7月分(中旬速報値)で、マスコミでは、天候などの影響を受ける生鮮所品を除いた指数で、前年同期に対し2.9%の上昇となっています。

この所、暑いですが生鮮食品にも特に値動きはなく、生鮮食品を含む「総合」も同じく2.9%です。もう一つの系列は「生鮮とエネルギーを除く総合」という系列で、総務省統計局は、エネルギー価格は、我が国ではほとんど輸入で、これは国際情勢で動くので、生鮮食品とエネルギーを除いた系列が、基本的な日本の消費者物価の動きを表しているという説明です。

という事ですが、この系列では昨年同期に対し3.1%の上昇です。

何が上がっているのかと見ますと、やっぱり食料の上昇が大きく6.9%ですがそのなかでは、「生鮮食品」が4.4%、これは昨年秋の天候不順や鳥インフルによる鶏肉鶏卵などの影響が残っているようです。特に上がっているのは「生鮮食品を除く食料」で、これが7.4%と食料の上昇を引っ張っています。中身は皆様ご承知のコメの値上がりで、これは備蓄米放出で下がっても80%の上昇で、政府の補助金で下がった水道・光熱のマイナス4.5%を超えて2.9%という消費者物価全体の上昇をもたらしています。

東京都区部の消費者物価の上昇も基本的には全国と似た動きですが昨年7月コメの値段が上がり始めた時は対前年2.2%上昇でしたが4月、5月は3.4%とピークになり、その後備蓄米放出で2.9%まで下がってきた所です。然し銘柄米の価格は相変わらず高止まりです。

参院選で問題なった物価問題というのは、結局コメの値上がりに振り回された、庶民の台所の切実な問題が大きすぎた結果でしょう。

いわば、コメ問題が、最悪のタイミングで、参院選でなされるべき民主政治の基本問題への関心を、身近な生活の問題に置き換えてしまったという皮肉な結果をもたらしたようです。

しかし選挙結果を見れば、自民党惨敗で、コメの価格が1年で2倍になるような政権党の主要派閥の政治姿勢が国民に見えていまい、これまでの「民主政治」の持つ問題点に国民を気付かせたのかも知れません。


皆で協力して経済再建に本腰を入れよう

2025年07月24日 21時27分44秒 | 経済

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関税交渉も、一応それなりの決着を迎えたようです。相手がトランプさんですから「これで安心して」という訳には行かないかも知れませんが、交渉を担当した方々の労をねぎらいつつ、先ずはこれからの日本の行く道をしっかり議論し、誤りない選択をして頂きたいと思うところです。

それにしても、気になるのは、自民党内部の抗争、反目、足の引っ張り合いという醜い面が、我々一般国民の目や耳にまで、あからさまに飛び込んでくる現状です。

石破内閣の支持率は低いですね。しかしそれは、自民政権から自公政権の失政の連続による長期の政治不信の累積の結果でしょう。

特に安倍政権以降はひどかったようです。至る所で嘘を言い、国民の信用を無くし、その挽回の努力にも誠意を欠きました。

そうした長期間にわたる信用失墜の過程を忘れ、今の総裁だけに責任があると思っているとすれば、とんだ見当違いだという事でしょう。

逆に、今度の対米関税交渉で、石破内閣の評価は上がると予想する人もいるようです。

日本は30年以上にわたる経済低迷で、後からくる走者に次ぎ次ぎ追い抜かれる国際経済マラソンの走者です。国民の無力感、閉塞感は強まり続けてきています。

そして、漸くこの2年ほど、民間労使の意識変化の中で、経済再活性化の気運が春闘中心に芽を出し始めたという所でしょうか。

そんな時に、失政を続けてきた与党の中で、人間関係が背景の骨肉の争いにも似た抗争が起きているようです。

本来ならば、挙国一致で経済再建努力に邁進すべき時、最大与党が内部で派閥抗争では、やっぱりこの政党では駄目だという印象を国民に植え付けようというのでしょうか。

国民や産業界の目から見れば、今回の関税交渉は、予想より良い成果という事で、昨日、今日と日経平均が上昇を続けています。国民は、石破政権に対して、それなりの評価をするのではという感じもします。

そして今、日米経済関係がある程度の見通しを可能にするまでになったのです。この機を逃さず、与野党は、新たな経済環境を前提に、先ずは、それぞれの公約実現の原資となる「経済成長」を共通目標に、本気で協力邁進するのが本筋でしょう。分配は成長が実現してからの問題です。

実質1%成長などという情けない目標ではなく、最低3%を目指すぐらいの意気込みが欲しいところです。

取り組むべき課題の基本は生産性の向上です。「人手不足には、求人ではなく、徹底した省力化で対応するという技術と社会体制を作る」という発想の転換が求められているのです。日本の労働生産性はOECD主要国の中では最も低いというのが今日の状態です。

生産性上昇は、物価の上昇への最大のブレーキです。せっかく経済活性化への気運が出てきたところに、コメの大幅値上げを許すような政策は最悪です。

昔からコメの相場に手を出して破産する人は多いのです。ミニマムアクセスの活用で、トランプさんを喜ばせ、コメの売買に利益求めるような動きを封じ、米価を下げ、消費者物価の上昇を止め、実質賃金の低下を食い止めることも不可能ではありません。

与野党も企業も労組も、協力して、本気で日本経済の再建に向かう時が来たようです。


相互関税、自動車関税15%、コメ輸入大幅増で決着

2025年07月23日 14時29分35秒 | 経済

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今朝、急転直下、日米の関税交渉決着のニュースが入ってきました。関税については表記の通りですが、トランプさんの発言の中では「日本が5500億ドル(80.6兆円)の対米投資を、私の指示によってする、そしてその収益の90%はアメリアに落ちる、これは素晴らしい事だ」との説明があります。

5500億ドルの内訳は解かりませんが、日鉄のUSスチール買収が2兆円(150億ドル程度)ですから、これからトランプさんの指示で随分沢山の対米投資をすることになるのでしょう。その収益の9割はアメリカに帰属するのです。

トランプさんは自画自賛が得意ですから、話半分で聞いておきましょうか。

関税政策というのはそんなに上手くいかないことがトランプさんにも解かってきたようです。

通常、アメリカの輸入業者が関税を払うようですが、高い関税を払って売値に上乗せできるかが不明ですから、現場は心配ばかりだそうです。

トランプさんの構想はその分輸出国が輸出価格を安くするから、輸出国が損して、アメリカの消費者は従来の家価格で買え、政府には関税が入るはずだという事のようですが、それならアメリカでは相変わらず日本車が売れてGMやフォードは低迷を続けることになるのでしょう。

日本車が値下げをしなければ、日本車は高いという事で、アメ車の競争力がつくかもしれませんが、日本車ファンからは高い関税は評判が悪くトランプさんには逆風でしょう。車以外でも同じことが起きますから関税による物価上昇が起き、インフレになり、貿易量は減って世界中の経済にマイナスでしょう。

その点からいえば、日本からの対米投資を増やして、日鉄が狙っているように、アメリカの製造業などを日本が経営することで、再活性化するといったことが一般的になれば、日米関係は大きく変わるのではないでしょうか。

勿論そこまで行くのは、日本企業にとっても容易な事ではないでしょう。アメリカの賃金水準は高く、従業員も自尊心が高く、しかも日本がカネを持ってくるなら大いに使ってやろうといった形で、当てにされる可能性も十分あります。

全米自動車労組傘下のGMのフリーモント工場で、徹底した経営改善をやろうとしたGM/トヨタのNUMMIのプロジェクトも大変難しかったようですし、東芝のウエスチングハウス買収も、コストの上昇で挫折しています。

これから始まる日鉄傘下のUSスチール経営では、全米鉄鋼労組傘下の従業員をいかに使いこなせるか、それにトランプさんの持つ「黄金株」がプラスに働くかマイナスに働くか(トランプさん次第)予測不能の中で、いわば、アメリカ産業社会の改革をしなければならないのではないでしょうか。

5500億ドルの中身は次第にわかってくるのでしょう。安倍さんのカジノ誘致ではありませんが、正確な情報は日本政府からでなくアメリカ政府筋から入ってくるという事になっているようです。

5500億ドルは巨額ですが、日本はアメリカ国債を1兆ドル以上持っています。

日本もトランプ流ディールをするつもりになれば、色々な可能性もあるのではないでしょうか。

今日は日経平均が大幅に上がっています。これを糠喜びにしないような政策の舵取りを政府に期待したいと思います。


相互関税、自動車関税15%、コメ輸入大幅増で決着

2025年07月23日 14時25分53秒 | 経済

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今朝、急転直下、日米の関税交渉決着のニュースが入ってきました。関税については表記の通りですが、トランプさんの発言の中では「日本が5500億ドル(80.6兆円)の対米投資を、私の指示によってする、そしてその収益の90%はアメリアに落ちる、これは素晴らしい事だ」との説明があります。

5500億ドルの内訳は解かりませんが、日鉄のUSスチール買収が2兆円(150億ドル程度)ですから、これからトランプさんの指示で随分沢山の対米投資をすることになるのでしょう。その収益の9割はアメリカに帰属するのです。

トランプさんは自画自賛が得意ですから、話半分で聞いておきましょうか。

関税政策というのはそんなに上手くいかないことがトランプさんにも解かってきたようです。

通常、アメリカの輸入業者が関税を払うようですが、高い関税を払って売値に上乗せできるかが不明ですから、現場は心配ばかりだそうです。

トランプさんの構想はその分輸出国が輸出価格を安くするから、輸出国が損して、アメリカの消費者は従来の家価格で買え、政府には関税が入るはずだという事のようですが、それならアメリカでは相変わらず日本車が売れてGMやフォードは低迷を続けることになるのでしょう。

日本車が値下げをしなければ、日本車は高いという事で、アメ車の競争力がつくかもしれませんが、日本車ファンからは高い関税は評判が悪くトランプさんには逆風でしょう。車以外でも同じことが起きますから関税による物価上昇が起き、インフレになり、貿易量は減って世界中の経済にマイナスでしょう。

その点からいえば、日本からの対米投資を増やして、日鉄が狙っているように、アメリカの製造業などを日本が経営することで、再活性化するといったことが一般的になれば、日米関係は大きく変わるのではないでしょうか。

勿論そこまで行くのは、日本企業にとっても容易な事ではないでしょう。アメリカの賃金水準は高く、従業員も自尊心が高く、しかも日本がカネを持ってくるなら大いに使ってやろうといった形で、当てにされる可能性も十分あります。

全米自動車労組傘下のGMのフリーモント工場で、徹底した経営改善をやろうとしたGM/トヨタのNUMMIのプロジェクトも大変難しかったようですし、東芝のウエスチングハウス買収も、コストの上昇で挫折しています。

これから始まる日鉄傘下のUSスチール経営では、全米鉄鋼労組傘下の従業員をいかに使いこなせるか、それにトランプさんの持つ「黄金株」がプラスに働くかマイナスに働くか(トランプさん次第)予測不能の中で、いわば、アメリカ産業社会の改革をしなければならないのではないでしょうか。

5500億ドルの中身は次第にわかってくるのでしょう。安倍さんのカジノ誘致ではありませんが、正確な情報は日本政府からでなくアメリカ政府筋から入ってくるという事になっているようです。

5500億ドルは巨額ですが、日本はアメリカ国債を1兆ドル以上持っています。

日本もトランプ流ディールをするつもりになれば、色々な可能性もあるのではないでしょうか。

今日は日経平均が大幅に上がっています。これを糠喜びにしないような政策の舵取りを政府に期待したいと思います。


消費者物価の安定化に官民の協力を

2025年07月19日 14時35分58秒 | 経済

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昨日、総務省統計局から2025年6月消費者物価指数が発表になりました。

「総合」も「生鮮食品を除く総合」も対前年上昇率は3.3%で上昇基調は弱まったので、マスコミではあまり大きく取り上げられなかったようです。

折しも参院選で、物価上昇は重要な論争点になっていますから、あまり触れないほうがいいという事もあるのでしょうか。 

日銀は、独自の消費者物価の見方を持っていて、その上昇が年率2%程度に安定すれば金利を引き上げるという事のようですから、金利正常化のためには、消費者物価の安定傾向が続いてほしいものです。

具体的な上昇率の動きは下のグラフです。

ご覧いただきますと青線(総合)は下向き、赤線(生鮮を除く総合)は横ばいです。生鮮食品下がっているという事でしょう。昨年、悪天候で暴騰しましたから正常化の過程でしょう。

緑線(生鮮とエネを除く総合)は相変わらず上がっていますがその原因は「生鮮を除く食料」の上昇、つまり主因は米の値上がりです。

コメの暴騰がなければ消費者物価指数は下げに向いたと言えるようです。

この時期に、政府・農協が足並みをそろえて米価の値上げを演出したことは、金利正常化にも影響する消費者物価の動きを異常な高騰にしたという点で、日本経済に混乱をもたらした大きな失点というべきでしょう。

6月の消費者物価指数の「前月比」を見ますと、総合と生鮮を除く総合は0.1%の上昇、年率換算で1.2%で安定状態になった感じですが「生鮮とエネを除く総合」は0.4%の上昇で、年率にして4.9%ということになっています。

年間の動きがわかる「対前年比」のグラフは以下の通りです。

今年に入って「総合」は着実に上昇率を低め、主因は生鮮食品価格の低下、高校授業料の無償化などと思われますが、下がっている生鮮を除くと上がっています(赤線)。

これは主に、エネルギー関係、電気、ガス、ガソリンなどの上昇と思われますが、補助金を出したり止めたりすることで不自然の動きが入ってきます。

国際的にはエネルギー価格は下がり気味ですし、円高もあって、輸入物価は下がり気味ですが、国内価格には未だあまり反映されないようです。

緑線の「生鮮とエネを除く総合」は、昨年夏まで安定傾向でしたが、それ以降の一貫した上昇は米価の高騰が主因であることは明らかでしょう。

日本経済が正常化路線に乗れるかどうか、最も大事な時期に、消費者物価指数の安定に官民を挙げて協力していく努力が必要でしょう。

産業分野など、一部の利害の主張をするのではなく、共通の目的は日本経済の成長路線への回帰という意識を、皆が共有することが大事ではないでしょうか。

昨日、総務省統計局から2025年6月消費者物価指数が発表になりました。

「総合」も「生鮮食品を除く総合」も対前年上昇率は3.3%で上昇基調は弱まったので、マスコミではあまり大きく取り上げられなかったようです。

折しも参院選で、物価上昇は重要な論争点になっていますから、あまり触れないほうがいいという事もあるのでしょうか。 

日銀は、独自の消費者物価の見方を持っていて、その上昇が年率2%程度に安定すれば金利を引き上げるという事のようですから、金利正常化のためには、消費者物価の安定傾向が続いてほしいものです。

具体的な上昇率の動きは下のグラフです。

 

ご覧いただきますと青線(総合)は下向き、赤線(生鮮を除く総合)は横ばいです。生鮮食品下がっているという事でしょう。昨年、悪天候で暴騰しましたから正常化の過程でしょう。

緑線(生鮮とエネを除く総合)は相変わらず上がっていますがその原因は「生鮮を除く食料」の上昇、つまり主因は米の値上がりです。

コメの暴騰がなければ消費者物価指数は下げに向いたと言えるようです。

この時期に、政府・農協が足並みをそろえて米価の値上げを演出したことは、金利正常化にも影響する消費者物価の動きを異常な高騰にしたという点で、日本経済に混乱をもたらした大きな失点というべきでしょう。

6月の消費者物価指数の「前月比」を見ますと、総合と生鮮を除く総合は0.1%の上昇、年率換算で1.2%で安定状態になった感じですが「生鮮とエネを除く総合」は0.4%の上昇で、年率にして4.9%ということになっています。

年間の動きがわかる「対前年比」のグラフは以下の通りです。

 

今年に入って「総合」は着実に上昇率を低め、主因は生鮮食品価格の低下、高校授業料の無償化などと思われますが、下がっている生鮮を除くと上がっています(赤線)。

これは主に、エネルギー関係、電気、ガス、ガソリンなどの上昇と思われますが、補助金を出したり止めたりすることで不自然の動きが入ってきます。

国際的にはエネルギー価格は下がり気味ですし、円高もあって、輸入物価は下がり気味ですが、国内価格には未だあまり反映されないようです。

緑線の「生鮮とエネを除く総合」は、昨年夏まで安定傾向でしたが、それ以降の一貫した上昇は米価の高騰が主因であることは明らかでしょう。

日本経済が正常化路線に乗れるかどうか、最も大事な時期に、消費者物価指数の安定に官民を挙げて協力していく努力が必要でしょう。

産業分野など、一部の利害の主張をするのではなく、共通の目的は日本経済の成長路線への回帰という意識を、皆が共有することが大事ではないでしょうか。


為替レートは経済戦略の一環

2025年07月16日 20時48分03秒 | 経済

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日本経済はこれまで為替レートに振り回されてきました。

日本人は、真面目に考え、確り働くことで、経済力を強くました。経済力が強くなるという事は、企業間競争と同じで、良いものを安く作る能力ですから、国際的にみれば国際競争力が強くなって、日本製品が海外でも好まれ、よく売れて、日本の国際収支は黒字になるといい事です。

自動車を例にとれば、トランプさんは、日本人はアメ車を買わない、アメリカ人は日本車を沢山買っている。これは不公平だといいます。

日本人も、車を買うときは、どこの国の車かでなく、性能がよく値段も割安で、故障も少なく、維持費も安い車を選ぶのが一般的でしょう。

トランプさんもそれは解かっているのでしょうが、政治家は何処の国でも選挙が大事で、人気の出ることを言うのが仕事ですから、「不公平だ!」と言った方が人気が出るのでそういうのでしょう。 

トランプさんは、それを是正するのは「関税政策だ」という事で、世界中でトラブルですが、経済学的には、関税よりも、為替レートのほうが影響は直接で大きいのです。

しかしアメリカは、為替操作は悪だと言い、もしやれば、為替操作国に指定して、経済行動を監視するといっています。

しかし、これには抜け道があります。というのは、為替レートは金利に反応して即座に動くからです。つまり政策金利を上げれば、その国の為替レートは高くなり、その逆も即効的です。

例えばリーマンショックの時アメリカはゼロ金利政策をとりました。結果は大幅ンドル安、円との比較で「$1=120円」が80円になりました。

日本は、金融的にはリーマンショックの影響は小さい国でしたが、大幅円高になったことで経済破綻寸前にまで追い込まれました。

アメリカは、金利を下げただけで、為替レートのドル安はその結果だから

為替操作ではないという立場でした。

日本もゼロ金利にすれば、円レートは多分120円に戻って、円高で苦しむことはなかったのでしょうが、それに気が付いてゼロ金利にするまで7~8年かかりましたから、その間、円高で苦しみました。

こんなのが金利政策と為替レートの関係で、日本にとっては、円高の行き過ぎは死命を制する重要問題です。

にも関わらず、日本も今まで、為替レートというのは国際経済関係で与えられたものと考えていました。その考えをこれからは変える必要があるようです。

日本は、資源がなく、資源は輸入して、それで優れた製品を作り上げ、その付加価値でGDPを生み出す国です、為替レートの影響は極めて重大です。

であればこそ、日本は望ましい為替レートを想定し、多様な経済戦略で、その現実化に向けた経済政策をとるという考え方を明確にするべきでしょう。

変動差相場制の時代にあってこそ、為替レートは与えられるものではなく、努力して作り出すものといった考え方と戦略を持つべきではないでしょうか。

円高で苦しみ、円安で慌てるだけでは、情けない国というべきでしょう。


格差社会化を避け、安定した社会を作る!

2025年07月12日 15時11分04秒 | 経済

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前回は、就職氷河期世代は、円高に呻吟する日本経済を救うための犠牲者だったと視点もあるので、その救済には、日本社会全体が配慮していくべきではないかと指摘しました。

確かに「プラザ合意」によって、2年ほどの間に、国際的には賃金も物価も一律2倍になるという状況を強いられた日本は、理論的には賃金を半分に切り下げ、物価も半分に引き下げ、国際競争力を何としてでも回復させることが至上命題となったのです。

バブルの宴が崩壊して、その現実に迫られた時、まさに緊急避難として取った日本の政策は,日本経済自体が全てに緊縮することで、中心は、最大のコストである人件費圧縮、そしてそれがコストの安い非正規労働の多用という形で進められたのです。

そして、日本は急速に格差社会になったようです。

何処の世界でも共通ですが、格差社会化は社会を不安定にします。日本の場合、30年を超える成長しない経済の中で格差化が進む事になり、象徴的なものが「80・50」問題などの家庭の貧困、家族の崩壊といった形で表れています。

本来であれば、国民経済の緊縮と生産性向上に全力を挙げ、同時に、国会議員を始め公務員の報酬、民間企業ではトップの報酬から初任給まで大幅に切り下げ、国際競争力の回復に邁進するという事になるのでしょうが、現実の人件費の圧縮は非正規労働者の多用にしわ寄せされた結果の格差社会化という形なってしまったというのが現実でしょう。

その反省から政府はようやく就職氷河期世代対策を打ち出しました。国民に円高不況の苦難を強いた政府には大きな責任があるでしょう。

同時に、非正規従業員を未だに多用している企業も、所謂「不本意非正規」の早急の正規化を進めるべきでしょう。

こうした問題が、長期にわたり十分な対策も取られず格差社会化が進む様な状況がなぜ続くのでしょうか。

その大きな問題の背後に見えているのは「経済成長のない社会」という日本の現実です。

今度の参院選挙に関連して何回も論じているところですが、減税の主張、社会保障負担の軽減、バラマキ給付金、手取り増加策、エッセンシャル・ワーカーの処遇の改善、動き始めた最低賃金の引き上げ論議、などなど、問題はいろいろありますが、議論の前提が当面する日本経済が成長のない「ゼロサム」だという事に大きな原因があるようです。

与党も野党も、石破さんのGDP1000兆円構想などには見向きもせず、自分の主張する予算の分捕りが最も優れているとの主張を繰り返すだけです。 

結果は最も強い所が分捕りに成功して、それが格差社会化を進めてきました。

30年余の成長しない経済であれば、どこに行っても足りない、足りないという主張ばかりでしょう。

だからやっぱり分捕り合戦が中心になるのでしょうが、少し視点を前向きにして、日本経済を成長させるという目標を掲げてみれば、景色は変わるのではないでしょうか。

成長の中での分配では楽しい事もあります。ゼロサムの中では「あなたのプラスは、私のマイナス」にしかならないのです。

強いものが勝てば、結果は日本の格差社会化の進展という従来の図式です。

今から言ってもどうにもならないとは思っていますが・・・。


就職氷河期で苦労をされた方々が日本経済を救った!

2025年07月11日 12時11分57秒 | 経済

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就職氷河期の世代の問題が、今になって取り上げられています。

遅きに失したという所ですが、わたくしは遅きに失し過ぎたといいたいぐらいに感じています。

これは、日本の政府が、経済音痴で、その結果、経済外交で大失敗をしたことが決定的な要因で、その上に積み重ねた経済政策、雇用政策の失敗の積み重ねが問題を大変深刻なものにしたという事ではないかと考えています。

就職氷河期は1992年あたりから始まり1995から2005年あたりまでは大変深刻だったと思います。

原因は、日本が人件費も物価も世界一高いといわれたように、基本的に国際競争力を失い、GDPの太宗を占める人件費を下げるしか対策がない時代だったことにあります。根因は「プラザ合意」で円レートが240円から120円と2倍に切り上がったことです。

バブルの時は、浮かれて気づかなかったのですが、バブルが崩壊してみれば、国際競争力で飯を食わなければなりません。しかし2倍になった物価・賃金では国際競争力はありません。始まったのはコスト削減です。

特に2000年までは、当時の「法人企業統計年報」で見れば大企業もほとんどが減収・減益か赤字です。コストを削っても売り上げの減少方が大きいですから減益か赤字です。

しかしコスト削減に努力の結果、2000年に至って、減収・増益というケースが出始めました。売上減少よりコスト削減の方が大きい場合です。

このコスト削減を可能にしたのが、賃金の大幅に安い「非正規社員の増加」です。この時期が就職氷河期の最も深刻な時期です。

これは統計的には正規社員の賃金水準はほぼ横ばいで、一人当たり雇用者報酬は大幅に下がり、原因は非正規の増加によることが明白です。

2002年から日本経済は「好況感なき上昇」と言われた局面に入り、2007・8年には、新卒に「売り手市場」という言葉も聞かれました。

しかし2008年にはリーマンショックが起き、円レートは75~80円とさらに円高になり、氷河期に逆戻りし、これは日銀の政策変更で、円レートが100円・120円と正常な値になる(2013.14年)まで続きます。

この間、非正規社員の割合はかつての20%弱から40%に上昇のままでした。

残念ながら、円レートが120円になり、国際競争力は完全回復したのにもかかわらず、非正規従業員の割合はほとんど下がらなかったという現実です。

このブログでは、円高克服のための苦肉の策として取ったはずの非正規の増加は、円安とともに「正規化」という復元現象が起きると思っていました。

日本企業は本来「雇用」を大事にし、「雇用は人材育成を含む概念」が日本では一般的と思っていたからです。

当時「IKEAに学ぶ日本的経営」などを書いて、就職氷河期の犠牲なった非正規社員の正規化に早期に企業や政府、労働組合も動くと期待していました。 

しかし、残念ながら非正規4割に大きな変化はありませんでした。

もしあの時、非正規の増加という方策がとられなかったならば、日本経済の回復は大幅に遅れ、正規社員の賃金水準が大幅に下がったという事になっていたと感が合えれば、生れ年の不運で就職氷河期の犠牲になった人たちは、日本経済を救う役割を果たしたといえるのではないでしょうか。

遅すぎた支援が十分効果的なものであることを願うところです。


5月の消費者物価指数:コメ政策の転換の契機

2025年06月21日 12時37分02秒 | 経済

5月まで上がり続けた米価ですが、6月に入ってやっと変化が出てきました。

昨日、総務省から発表になった消費者物価指数は5月分ですから、小泉農水相の登場で状況変化が起きる直前の月の実態がそのまま反映されています。

このブログでは毎月の消費者物価の動きを追跡してきていますが、その中から見えてきたのは、政府の米価政策の失敗が、日本経済再生を目指す努力に対し、マーフィーの法則ではありませんが、最も悪いタイミングで露呈し、その収拾策がまた大変な難事になってしまったようです。

まず、消費者物価指数の原指数の動きを見てみましょう。

エネルギー価格の動きに対しての政府の補助金などで、時々折れ曲がった線ですが、傾向的に昨年夏あたりから総合、生鮮を除く総合、生鮮とエネルギーを除く総合が揃って上昇の角度を上げているようです。

中でも生鮮を除く総合の赤い線が上げていますが主役は米です。生鮮食品はこのところ下がってきているのです。

そのあたりは、下の対前年上昇率を見るとはっきりします。

物価の基本的な動きを示す「生鮮とエネを除く総合」は昨年夏に、日用品の波状一斉値上げの波が収束し1.9%まで下げましたが、その後の上昇は、コメの値上がりが反映されています。

昨年の生鮮食品の急騰と、最近の値下がりは電力・ガスの補助金や高校の授業料無償化など共に青い「総合」の線に反映しています。

生鮮食品の上昇が反転した値下がりの動きが反映されない「生鮮を除く総合」は上がりっぱなしで、主役は米の値上がりでしょう。

昨日の総務省発表の資料で特徴的なものを見ますと。生鮮食品を除く食料は、前年同期比7.7%上昇と「総合」の二倍以上の上昇率、中でもコメは101%の上昇率(2倍強)です。

一方生鮮食品はマイナス0.1%と値下がりで、生鮮野菜-4.7%、キャベツは-39.2%、それに授業料等-9.5%となっています。

市場の価格決定機能に任せれば、価格は上下しますが時間がたてば安定します。生産者と消費者もそれに対して柔軟に対応するからです。

政府が、価格の上下を小さくしようと政策介入しますと、生産者も消費者も市場価格に対して適応する必要がなくなります。これは経済発展にマイナスです。

日本のコメ政策は、消費需要の漸減傾向に合わせて減反などをやり一昨年までコメの価格は殆ど一定でした。大変上手く行ったと思っていたのかもしれませんが、それでは生産農家の変化への対応能力が付きません。

行き詰まって、コメ価格を上げようとしました。どの程度上げていいかわかりません。放置したら2倍に上がりました。家計は対応出来ません。令和のコメ騒動です。

コメは日本人の主食です。コメ価格は直接、間接にいろいろな物価に影響します。小泉農水相はこれからも大変です。


アメリカ:ガバナンスは何処へ行った

2025年06月16日 15時05分15秒 | 経済

今年の1月、アメリカでは、盛大な大統領選挙戦の結果、トランプさんが大統領になりました。

トランプさんはアメリカの過半数の人たちの支持を得て大統領になったのですが、アメリカの過半数の人々は、今でも、トランプさんが立派な大統領だと思っているのでしょうか。

現在のアメリカは覇権国、基軸通貨国で、「国連」という重要な組織をわざわざスイスからニューヨークに持って来た国です。当然、世界のリーダーという意識を持っているはずです。なのに、トランプさんが選ばれてから、アメリカは、おかしくなってしまったようです。

「ガバナンス」という言葉があります。リーダーが、自分の責任ある組織を、安定した組織としてまとめているかどうかを問う言葉です。

この「ガバナンス」という視点から見ますと、トランプさんがアメリカ大統領に就任してから、世界も、アメリカ国内も、「ガバナンス」が千切れて飛んで行ってしまったようです。 

まず世界の方から見ますと、ウクライナとパレスチナの問題は「3日で片付ける」といったトランプさんの勢いでしたが、片付かないばかりか、益々酷くなって来ているようです。

トランプさんは、ロシアは言うことを聞かないからと、仲裁の意欲を失い、もう少し戦争をさせておいた方が良いという態度だとのニュースもあります。

パレスチナの問題では、トランプさんはイスラエルの後ろ盾と見られていますが、ネタニヤフさんは狂気のようにガザを攻め、今度は突如、イランを大規模空爆するという挙に出ました。

 トランプさんは、アメリカは関係していないというだけで、問題解決の意思は特にないようです。世界の多くの人たちは、問題解決へのアメリカのコミットメントを期待しているのではないでしょうか。

結局は、トランプさんは国際紛争の早期解決を実行するといって選ばれたのですが、アメリカには国際社会のガバナンス能力は無いことを世界に示したという結果になってしまっています。

では、国内問題ではどうでしょうか。今、アメリカは内乱状態のようです。

秦の始皇帝の焚書坑儒ではありませんが、ハーバード大を筆頭に大学との対立が異常な状態に発展、行政と司法の対立も深刻化、不法移民をめぐるカリフォルニア州との対立では州兵や海兵隊を派遣するという内戦のような様相です。

幸い、軍隊の方が良識があり、「拘束などは一人もしていない」と記者会見をしていますが、どう見ても「やりすぎ」のトランプさんです。

さらに、日鉄とUSスチールの問題では、投資は大歓迎、しかし経営権は大統領がすべてに拒否権を持つという、ガバナンスならぬ大統領の独裁権を民間企業の中に持ち込むという異常行動をとっています。

関税問題はとうに世界中を混乱させていますが、こうした困った大統領を大多数のアメリカ国民が支持している(いた?)のです。

アメリカは、今や、国民も、大統領もガバナンス意識の欠落した国に堕したように見えます。世界にとっても、不幸なことではないでしょうか。

 


労働分配率の上昇が経済を引っ張る?

2025年06月12日 15時27分50秒 | 経済

前回は日本経済の労働分配率は、コロナ禍の経済停滞で異常な上昇を示しましたが、その後次第にコロナ禍からの正常化で下がってきたことと、2024年に至ってそれが上昇に転じる気配が出てきた状況を見てきました。

コロナ前の日本経済が少し元気だったころの水準に戻り、2023年には国民総所得の順調な増加もあって下がり続ける状態でしたが、2024年に連合が春闘に少しづつ力を入れるようになり、経営側も収益状況の改善で、いささか余裕も出たのでしょうか、消費需要の活発化のためは賃上げも必要という意見も出たことが大きな要因だったと思います。

その背後には、いくら賃上げをしても物価の上昇で、実質賃金は2年以上にわたり毎月前年を下回り続けたという生活者サイド、家計サイドの不満がマスコミの大きなテーマに上った事もあったようです。

コロナ禍からの回復過程では、2022年にコロナ明けで蟄居生活から解放され家計も少し元気が出て、一時的に平均消費性向も上がりました。

然し、やっぱり所得が増えなければということで、賃上げ期待の意識が出たことが23年、24年さらに今年と春闘の活発化につながったのでしょう。

この辺りの労働分配率の関連指標の動きが上のグラフですが、分母の国民総所得の伸び率はコロナの2000年に向けて下がり気味だったのですが、雇用者報酬は、変動しながらですが上昇傾向に見えます。

2000年度は落ち込みましたが何とか24年の元気な賃上げまで来ています。

国民総所得の方は、安定した第一次所得収支に支えられる面もありますが傾向的には上昇傾向でしょう。

この時期はアメリカの金利政策で大幅円安になり輸出基幹産業を中心に為替差益が多かったことや、ウォーレン・バフェットの発言で日本株が注目され日経平均が4万円越えをした時期も含まれます。

赤い線の雇用者報酬は2024年春闘でやっと国民総所得(青線)の上昇ペースを微かに上回ったという所です。赤線が青線の上に出た年は労働分配率が上がった年ということになります。 

いまだに問題になっている「実質賃金が前年に比べてなかなかプラスにならない」という問題を考えてみますと、現状程度の労働分配率では、どうも安定したプラスかは難しいといった感じではないでしょうか。

労働分配率向上のためには、理論的には、1つには賃金上昇率の押し上げ、もう一つは企業収益の上昇幅の縮小が必要ということになります。

企業が儲からなければ不況になるといわれる方も多いと思いますが、トランプ関税の問題や今後予想される円高などを考えれば、これからも大幅賃上げを続け企業収益はほどほどといった上昇が予想され、労働分配率の上昇は達成されそうな気配もするのですがどうでしょうか。

その時、日本経済の活況を支えるのは、消費需要の活発化による、内需中心の経済成長とになることが必要でしょうが、上手く行くでしょうか。


労働分配率は上がってきているのか

2025年06月11日 18時06分58秒 | 経済

ネットでも印刷物でも、大方の表現は、日本場合、労働分配率は低下傾向といった表現が多いようです。昨年今年と、春闘の賃金上昇率は高まってきたようですし、この状況なら労働分配率も上がってきているのではという感じもするのですが、労働分配率が上がってきたというニュースはあまり聞かれません。

調べてみればそれなりに解かることですが、労働分配率には大きく分けて2つの指標があります。

1つはマクロレベル、日本経済全体の労働分配率で、これは国民経済計算の中で算出されるものです。

もう1つは大変複雑で詳細な企業統計の、財務省の「法人企業年報」です。産業別、企業規模別といった企業レベルの労働分配率の基本的なデータです。

経営分析の立場からは法人企業年報のデータが最も頼りになるのですが、四半期ごとに発表される「法人企業統計季報」では、付加価値の調査がされていませんので、労働分配率の計算はできません。「年報」の方は調査や集計に時間かかるため2年遅れということで。今の最新版は令和4年度(昨年11月発表)の数字です。

ということで割合早く労働分配率の状況の解かるのはマクロレベルのGDP統計の四半期速報ということになります。もちろんこれでは、日本全体の付加価値であるGDPと日本全体の人件費の雇用者報酬しかわかりません。

それでもマクロ経済の動向を見るのであれば、現状、速報値ですが今年の1~3月期まで、つまり令和6年度、2024年度の数字まで出ています。

ということで国民経済計算を使って日本全体の労働分配率を見てみました。

労働分配率は、ご承知のように付加価値の中で人件費として支払われた分がいくらかということで、「人件費/付加価値*100」で%表示です。

もちろん付加価値はGDPを使っても良いのですがGDPのGはGrossですから。これは「付加価値」で減価償却費が入っています。

減価償却費というのは、大きな買い物をした時発生する大きなコストは一度に払えませんから、分割で何年かかけて払うもので、本当は経費ですから、それを抜いた「純付加価値」の中で人件費が何%かが本当の労働分配率です。

ということで、ここではGDPから原価償却を引いた「国民所得」とそれに、海外から入ってくる利子配当も企業収益ですから「国民所得+第一次資本収支のGNI(国民総所得)を分母にして「雇用者報酬」を割っています。

結果は上のグラフの通りで、2020年度がピークでその後下がっています。2020年はコロナの深刻化の年で、マイナス成長になり、企業収益は深刻な落ち込みで賃金も上がりませんでしたが、利益減で労働分配率上昇になったのです。 

翌年から企業はそのマイナスを取り返そうと賃金上昇も抑えましたが、24年度に至り春闘が活発化し、業績回復した企業も納得の大幅賃上げで労働分配率は上がり始めたようです。

今年度の統計が出れば、更に上昇かという気もしますが、この背後には国民総所得と雇用者報酬の微妙な関係もありますので、その点は次回見ていきたいと思っています。


コメ価格に市場原理が!政府の政策変更は重要ですね

2025年06月10日 15時21分56秒 | 経済

市場原理は何でしょうか? 経済活動が自由化さていれば、価格は需給関係で決まるという「価格機構」が正常に働いているということです。

アダムスミスはその著書『国富論』で国を豊かにするためには「レッセ・フェール(レッツ・ゴー・フリー)が上策で、そこでは「神の見えざる手」が働いて、最善の結果が出るといっていますが、スミスの言う「神の見えざる手」こそが価格機構(プライス・メカニズム)なのです。

このブログで最初にコメの価格の上昇が行き過ぎだと言ったのは昨年12月です。2月には、これはもう異常事態だと書きました。 

そして世論は次第に大きくなり、前農水大臣の失言もあって、小泉農水大臣が誕生、局面は大きく変わりました。

小泉農水大臣は、おコメの政策に「価格機構」や「市場原理」が働くようにしたのです。

話が横道にそれますが、自民党の中にも、まともな政治・経済理論を学び、自民党の政策がおかしいと思っている人はいるのです。 

然し党議拘束のようなものもあって、なかなか「異見」は言いにくいのでしょう。小泉大臣は強大な世論の支持を予見し「これは自民党が間違っている」と判断し、これまでの自民党とは違った政策を導入しました。

ということでコメ問題に「まともな経済理論」が導入されて、おコメの価格も次第に正常な状態に戻りつつあるのが現状です。

おコメの消費量は年々下がっています。昨年は平年作でした。今年は作付面積も増えて、コメは余ってくるでしょう。余ったコメは古米、古古米になって価格が下がります。

この所、中間業者の取引価格の取引価格「スポット価格」が下がり始めました。コメで持って居れば値段が下がる、早く売って預金にすれば金利が付く、金利は良くなりそうだ。何を選ぶか・・。これが価格機構の働きです。

銘柄の差がどのくらいになるか。これは政府や農協が決めるのではなく、消費者が決めるのです。売れれば上がる、売れなければ・・、価格は結局、最終消費者が購入して(スーパーや米店での売れ行き)で、初めて決まるのです。

農協は、本年産のコメの買い入れ価格も3割上げるといっているようです。

昨年、農協が買い入れ価格を3割上げたら、小売価格は2倍になりました。そして自民党のこれまでのコメ政策は破綻したのです。

また3割上げたら、コメの価格は1昨年の4倍になるでしょうか。

そんな政府・農協の価格政策は、消費者に受け入れられないことが解かってしまいましたから、多分それは取りやめになり、コメ農家には別の配慮ということになるでしょう。

本当の日本の課題は、良いコメを安く作るという市場原理に叶った政策で、今後コメ政策はその方向に変わっていくでしょう。コメ自給の問題は、そして、その先でしか見えて来ないのです。


物価上昇が消費支出を押し上げる?

2025年06月09日 11時06分55秒 | 経済

先週金曜日の6月6日、総務省から「家計調査」の家計収支編が発表になりました.新年度のスタート月ですから何か変化があったかなと思っていましたが、相変わらずのようで、マスコミもあまり取り上げていませんでした。

このブログでは、消費支出の活発化が日本経済を救う、という視点から、2人以上世帯の消費支出をはじめとして、特に、勤労者世帯の平均消費性向を毎月追っていますので、4月の動向も確り見てみました。

まず、平均消費性向のグラフを載せておきます。後ほど説明しますが4月は前年比0.2ポイントの上昇でした。

3月は、年度末ということもあったのでしょう。またコメの値段が前年の2倍を超えて上がってきているといった状況の中で、否応なしに消費支出は増えていましたが、4月は、新年度早々、賃金上昇のあった家計も結構あったかと思いますが、家計は、改めて新年度の計画を立て無駄な消費はしないという心構えのようです。

二人以上世帯の消費支出は、対前年で見て、年末の12月に2.7%の伸びでしたが、1月は0.8%の伸びになり、2月は-0.5%、3月に2.1%と順調に見えましたが、コメなどの物価上昇でやむを得ずという感じでした。そして4月は-0.1%と抑制気味です。あらあためて新年度は、しっかり計画的にということでしょうか。

増えている消費項目は、食料、自動車関係費、交通・通信といった物価上昇でやむを得ずというものが多く、積極的な消費としては住宅関係(リフォーム?)、それに教養娯楽です。教育は名目支出は-0.8%ですが、高校無償化で物価が下がる計算になるので、実質支出は5.1%という結果になっています。

4月の実質消費支出の伸びが-0.1%で済んでいるのはこの影響が結構大きいようです。

二人以上勤労者世帯について見ますと、気が付くのは家計の名目収入が4.1%増と結構増えていることで、世帯主の定期収入は4.3%対前年増加、可処分所得(手取り)は5.0%増です。ただし消費者物価上昇(総務省は帰属家賃を除く計算方式)4.1%なので、実質は0.9%の増です。(4月の実質賃金はマイナスでも家計の収入は実質プラスです。

そして消費支出は頑張って5.3%増やしていますから、平均消費性向は前年比0.2ポイント増の76.4%となっています。

コメの値上がり、高校無償化、電気・ガスの補助金の変動など、人為的(政治的)な要因が入っていて、傾向的な動きをつかむのは難しいですが、春闘の結果の名目賃金上昇、節約の傍ら、積極的な消費の気配も多少見えます。

このとこと備蓄米の米価に与える効果の議論が盛んですが、家計の健闘で消費不況脱出の動きが出るか目が離せないところです。