tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

欧州主要銀行の国債売り

2011年11月29日 20時26分01秒 | 経済
欧州主要銀行の国債売り
 欧州の主要な銀行が、手持ちの国債を一斉に売っているといいます。もちろん全部売るわけにはいかないでしょうが、国債価格の暴落で評価損が大きくなり、バランスシートが傷んで、動きがとれなくなるのをいくらかでも軽減しようかということでしょう。

 しかし、EU経済の安定を保つという面から見たら、全く誤った行動でしょう。EUの経済の安定を保とうということで、お互いの国の国債を持ち合うという面もあったのではないでしょうか。単に利回りのいいのを選んで買ったという単純な商行為でしかなかったとは思えません。
 将来のEUの繁栄を目指して、EU経済を安定堅固なものにという意識を持って、お互いの国の国債を、EUの主要な銀行が持ち合ったという面はなかったのでしょうか。

 もしお互いの国の繁栄を目指して支え合おうという意識があったとすれば、いわば、安定株主と思って頼んだ相手が、いざとなったら売り逃げるといった、まことに頼りない「絆」でしか、じつはEUは結ばれていなかったのだ、ということになります。

 個々の銀行にしてからが、売れば売るほど国債価格は下がり、手持ちしている分の評価損が増えるという泥沼のジレンマが解っていてのことでしょう。慌てふためいているのでしょうか、それとも、大銀行もギャンブラーに成り下がったのでしょうか。

 落ち着いて考えれば、こんな時こそお互いに支えあって、国も巨大銀行も、借金財政、借金経済からの脱出方法に知恵を出し合い、経済の健全化のために努力し合うというのがEUを作った原点でしょう。
 ソブリンリスクは金融政策で根治することは出来ません。経済を立て直すことだけが解決の道であり、その道筋が見通せるようになれば、ソブリンリスクは自然に消え、ギャンブラーは当てが外れて大損というのが、どう考えても解決の王道でしょう。

 大銀行は得意先の面倒を見るように国民経済の再建に貢献して、金融機関の本来の役割を果たすべきでしょうし、EUや加盟国同士は、赤字国の経済健全化に役立つような援助(金融支援だけではなく)を考えるべきでしょう。

 それができなければ、EUというのは、所詮、その程度の単なる利害関係に立ったものだったのかということになり、クーデンホーフ・カレルギーが草葉の陰で嘆き悲しむということになるのではないでしょうか。


ギャンブルは賭博場で:2

2011年11月27日 11時45分38秒 | 経済
ギャンブルは賭博場で:2
 前回、経済のギャンブル化の中で6つの教訓・問題点を書きましたが、よりご理解を頂くために、その具体的な説明をここでさせて頂きたいとと思います。

① 「経済の中での投機は、本来のギャンブルより、儲けの確率は極めて高い」 ですが、経済の動きは、こうすればこうなるという理屈が、かなりはっきりしています。
 リンゴが豊作ならリンゴの値段は下がりますし、経常赤字の国は、いつかは経済的に行き詰まります。
 本来のギャンブルは、胴元が儲けて、客は損をします。支配するのは確率の法則で、誰にも予測はできません。最近も100億円も損した人がありましたね。
 テレビの解説に出てくる××ストラテジストなどというのは、予測の専門家でしょう。それなら儲かるのは当たり前です。これはインチキではないのでしょうか。

② 「資本力が巨大だと、市場を操作できる(個人の中でのインサイダー情報)」 がそれに拍車を掛けます。巨大な投機資本が売りに出れば、ほとんど確実に市場価格は下がります。自分がやると考えて、その結果を予測しながら、自分が動くのですから、まさに純粋な「インサイダー情報」です。そんなのいいんですか?

③ 「実体経済や善意の人たちが、大変迷惑する」 については、土地バブルの時、善意のサラリーマンが、自分の住むところを確保するためにいかに苦しんだかです。いまだにローンを払い続けている方もおられると思います。
 我々は土地の上でしか生活きません。そういう人間生活に基本的なものをギャンブルの対象にするなよ、と当時つくづく思いました。天然資源、農産物、などなど、儲けやすいからギャンブルの対象にするのは、一種の犯罪でしょう。

④ 「本来の経済活動の魅力が希薄化 する」 ですが、理工系の優秀な人たちが、製造業に魅力を感じなくなり、金融界に入り「理工系の製造業離れ」が問題になりました。優秀な人材が、「GDPを増やす」実業に行かずに「「富の移転 」だけを業とするマネーゲームを職業にするのは人的資源の無駄遣いでしょう。

⑤ 「実体経済を過度に弱体化したり、破壊したりする」 今の実体経済が弱体化してきているのは、こうしたことの相乗効果が端的に現れているという面を見落としてはいけないと思います。

⑥ 「最終的な負担は結局納税者に回る」 ギャンブルの市場は乱高下しますから、時に金融機関は巨大な損失を出します。そうした時、経済社会の安寧のためにと政府が救済せざるを得なくなり、その負担は結局、ご承知のように、納税者に回ります。

 経済学者や為政者は、目先の対応策よりも、こうした問題を本格的に考えて、資本主義100年の計を建てていただきたいと思います。


ギャンブルは賭博場で 1

2011年11月25日 11時16分33秒 | 経済
ギャンブルは賭博場で 1
 前回、「経済のギャンブル化」と書きましたが、正確には、「ギャンブルを日常の経済活動の中でやる」というのが正確でしょう。

 先日も、ギリシャ国債CDF売買で大儲けしたヘッジファンどの経営者の雄姿(?)がテレビで放映されていましたが、「我々は、ギリシャ経済やヨーロッパ経済をどうこうしようというのではない。ビジネスチャンスがあるからそこで儲けるだけ」といった趣旨の言い訳けをしていました。どこかに後ろめたさの片鱗ぐらいはあるのでしょう。

 「次はどこを狙うか検討中」と言っていましたが、前回取り上げた土地バブルにしても、ギリシャのソブリンリスクにしても、日本の土地神話、ギリシャの借金過多経済といった問題があるから起こるので、実体経済に問題があるから、ギャンブラーに狙われるのです。
 極論の中には、ギャンブラーが警告を発してくれるのはいいことだという意見もあるようです。しかし「毒を以て毒を制する」というのは、本当は馬鹿げたことです。

 ところでこうした中からいろいろな問題点や教訓が出てきます。
①経済の中での投機は、本来のギャンブルより、儲けの確率は極めて高い。
②資本力が巨大だと、市場を操作できる。(個人の中でのインサイダー情報)
③実体経済や善意の人たちが、大変迷惑する。
④本来の経済活動の魅力が希薄化する。
⑤実体経済を過度に弱体化したり、破壊したりする。
⑥最終的な負担は結局納税者に回る。
 などなど。

 もともとギャンブルは人間の弱みが生み出すもので、社会に害悪を流すので、多くは禁止され、許されても、それは、カジノや賭場といった特定の場の中ということになっていました。
 カードやサイコロの目にしても、完全な偶然性を保証する以外のものはインチキとして断罪の対象でした。

 こうしたギャンブルのルールと、今日の投機資本の動きとは、どこが違って、どこが共通なのでしょうか。
 投資と投機ということで言葉が違いますが、資本主義は、両者の境界線をどこで引くのでしょうか。


ギャンブルと経済:土地バブルの想い出

2011年11月24日 12時19分14秒 | 経済
ギャンブルと経済:土地バブルの想い出
 前回は、ギャンブルが経済活動の役に立つかといいう問題を考えてみましたが、今回は、具体的な日本の経験である土地バブルの問題で考えてみましょう。

 プラザ合意による円高で、日本経済空洞化が言われる中で、内需拡大策をアメリカから要請され、政府・日銀が極端な金融緩和政策をとった結果、もともと土地神話を持っていた日本は、土地バブルに突入しました。

 銀行は、土地担保さえあれば企業に金を貸し、土地を持っていなければ金を貸して土地を買わせ、それを担保に金を貸しました。オイルショック後少し落ち着いていた地価は急激に値上がりをはじめ、当時の不動産研究所の調査では6大都市の平均地価は1985年から1990年の5年間に3.1倍になり、「日本の土地を全部売れば土地面積25倍のアメリカが4つ買える」などと言われました。

 土地を買って値上がりを待つ企業、ゴルフ場を作って会員権を高く売る企業、値上り期待でゴルフ場会員権を買う人々、日本中が土地ブームに沸きました。
 都市近郊農家は土地を切り売りして巨額の収入を得、練馬農協の預金残高が全国農協のトップになりました。
こうした所得はキャピタルゲインですから、地価がいくら値上がりしてもGDPは増えません。
 
 最も苦しんだのは、一般サラリーマンで、地価暴騰で一生かかっても家が買えない状況になりました。銀行は2世代住宅ローンを始めました。
 連合は、オイルショックの教訓から、賃上げは実体経済に見合ったまともな水準でしたからインフレにはならず、日本経済は安定し「ジャパンアズナンバーワン」といわれる世界最高のパフォーマンスを示していました。

 しかしその中で起こっていたことは、日本経済の健全な成長に貢献しているサラリーマンの所得が、住宅取得等のプロセスを通じて、土地保有者に大幅に「移転」していたという現象です。
 
 当時財界では日経連が連合とともに「地価上昇を止めよ」と主張していたのに対し、経団連は「地価上昇は望ましい」といい、この点では真っ二つに割れていたのをご記憶の方も多いと思います。

 経済実体とかけ離れた価格(評価額)の上昇は土地であれ、証券や債券であれ、いつか暴落します。アメリカのサブプライム問題も全く同じです。

 ところで、経済のギャンブル化は、歴史的に見れば、有名なチューリップ球根バブルや南海泡沫会社から、わが国では上記の土地バブルなど、間欠的に起こっています。しかし最近では、金融取引の極端な多様化(金融工学の発達というと聞こえがいいですが)とそれによって超巨大化した「投機マネー」という形でいつでも起こりえます。

 さて、こうした経験や現実から、いろいろな教訓が引き出せるように思います。


経済にギャンブルは役立つか

2011年11月22日 11時41分45秒 | 経済
経済にギャンブルは役立つか
 誰もが心配しているように、世界経済は、かなり深刻な状態にあります。では、みんなが心配しているのかというと、そうではありません。この状況を絶好のチャンスとして、お金を儲けようとしている人たちもいます。国際投機資本といわれる人たちです。この人たちは、世界経済に役立っているのでしょうか。

 役立っていると考える人たちが多いから、その存在と活動が認められているのでしょうが、反対に、世界経済の破壊に貢献していると考える人も多くなっているようです。

 もともとマネーゲーム(ギャンブル)が経済活動として認めれているのはそれが金融取引における各種の価格(証券・債券価格、金利など)決定を「金融取引を活発にすることによって」よりスムーズに、より適切なものにするという考え方からでしょう。
 そうであれば、時価会計などもそれなりの合理性を持つでしょう。

 しかし最近の現実はそうではないようです。G20でFinancial Stability Boardの設置が決められ、行き過ぎたり不透明な金融取引、格付けの問題などを監視するということになったのも、今日の金融取引に問題が多すぎるからでしょう。

 実体経済の活動を促進するために活用されるべき金融がなぜそんなことになってしまったのを考えてみますと、大きく2つの問題があるような気がします。
1つは、金融取引が実体経済とは全く違った原理で活動するものであること
2つは、金融取引が実体経済に比しあまりに巨大になってしまったこと
の2つがそれです。

 御承知のように、実体経済は、経済発展のために活動していますが、金融取引は、瞬間的な利益の極大化のための活動ですから、空売りのように時に実体経済を破壊しても、それによってキャピタルゲインが拡大するならば、やらねばなりません。
 また、資金のあまりの巨大化で、一国経済の浮沈を左右するような規模のマネーが、瞬時に動くことを可能にしてしまっています。

 こうしたことを可能にした金融技法が、レバレッジやデリバティブの極端な活用、実体経済が悪化してもそれで利益が出る空売り(典型例はネイキッド ショート セリング)ということでしょう。こうした技法の発達の結果、上の2つは繋がっています。

 さらに、こうした金融技法は、安定を志向する実体経済とは正反対に、変動が大きいほどビジネスチャンスが大きくなるという決定的な違いを生み出します。

 もちろんマーケットが活発でないと適切な価格決定は期待できません。だからと言って、野放図な金融活動は、まさに「過ぎたるは及ばざるが如し」の状態を生み出しているようです。EUの金融危機もこうした眼で見る必要があるのではないでしょうか。


日米関係に知恵を

2011年11月17日 11時31分13秒 | 国際経済
日米関係に知恵を
 マスコミによれば、TPP参加問題を巡って、日米関係のきわどい面が露出してきたような印象を受けます。

 アメリカ側は、野田総理が、全ての物品、サービスを貿易自由化交渉のテーブルにのせるという意味の発言をしたといい、野田総理は、そんなことは言っていないと否定し、マスコミは野田総理は二枚舌などと書いています。

 客観情勢を見れば、アメリカは来年の大統領選挙を控え、オバマさんも大変でしょうし、また、日本の民主党政権がアメリカに対してどんな対応をするのかよくわからないこともあって、まずは最初が肝心と圧力を掛け続けるという面もあるのでしょう。

 一方日本にしてみれば、未曽有の天災があり、その上に原発問題が重なり、対米では、民主党になってからこじれた普天間問題を引きずり、何よりも、1$=¥75という超円高で、円高の恐ろしさが国民にしみわたり、消費税増税問題も絡んで、日本経済の先行きが全く見えないというどん詰まり状態にあります。

 さらに60兆ドルなどといわれる国際マネーマーケットの動向は、儲けのチャンスとばかりヨーロッパの国々を順次血祭りに上げ、当面円高を演出しながら、もし日本が行き詰まったら円売りで大儲けしようと、まさに虎視眈々といった気配が感じられます。

 さて、国際的に「力ずく」では争わないことを決めている日本です。この難局をどう切り抜けていくべきでしょうか。基本は日米、さらには日中の関係でしょう。
 個人間の問題でも基本は同じでしょう。力ずくでは争わないことをきめている(争ったら負けるに決まっている)子供が、力の最も強い子供と、どうしたら対等に付き合っていけるのかと同じで、これには「知恵を絞る」しかありません。

 アメリカが(たぶん中国も)強硬なのは、やはり焦りがあるからでしょう。焦りの背景には、何か弱みがあるというのが通常の図柄です。
 日本は、自分が争わないだけではなく、他国も争わないように、どうすれば出来るかまで含めて知恵を絞ることを求められるようです。

 日本人は、自分できちんとやることは得手ですが、それを他人まで広めることは下手なようです。戦後60余年、日本は良いことをやってきていると思います。その自信に立って、みんなで知恵を絞りましょう。


世界における日本の役割

2011年11月13日 22時29分13秒 | 経済
世界における日本の役割
 このところのTPPに関わる日米のやり取りを見ていると、何か情けなくなってくるのはわたくしだけでしょうか。あまりにも受け身の態度が本当に情けないと思います。

 日本は本来、平和憲法を持ち、国連中心主義を掲げ、世界の安定と平和を希求し、世界に役立つ国を目指していたのではないでしょうか。
 平和憲法を持ち、武器輸出をしないことを国是としている日本は、日本の得意技である「経済面における貢献」さらに「技術面における貢献」ということで、世界への貢献をやってきています。

 これは、今まで大きな実績を上げ、アジアを中心に、途上国の経済発展に、かなりの実績を積み上げてきたと考えても、独りよがりの過大評価だと批判する国は少ないのではないでしょうか。

 これは日本的経営といった「経営技術」の面でも明らかです。すでに“KAIZEN”や“5S”は国際的にも定着した言葉になっていますし、アメリカから輸入したQC(統計的品質管理)を作業現場におけるQCサークル活動に展開し、TQC,TQMに進化させて、それがアメリカに逆輸入されて「6シグマ」になったことは、多くの方々がご承知の通りです。

 今回のタイの洪水で明らかになったことも、いかにタイが日本からの企業誘致、技術導入に熱心であるかを物語っているようです。タイだけではありません。アジアの多くの経営管理者は、それなりに評価していてくれているというのが私の偽らざる感触です。

 その上に実は、日本は、世界の中でやらなければならないことがあるはずです。それは「平和憲法を持っている日本」だからこそできることで、「世界各国は争うことを止めよう」という明確なアピールをあらゆる場合に、日本の国是として、常に発信し続けることです。

 端的に言って、アメリカと中国は、TPPを巡ってあからさまな鞘当てをしているようです。
 その中で、日本はアメリカに行けばアメリカにいい顔をし、中国に行けば中国にいい顔をしていればいいのでしょうか。

 アメリカと中国が世界の覇権を争っても、世界にとって決していい結果をもたらさないでしょう。アメリカも中国も、さらにはロシアもEUも含め、最終的には、国連という組織を育てることによって、人類全体の平和と繁栄を考えるのが最も良い方法だということはだれにも分かっていることでしょう。

 改めて言いますが、国連中心主義を掲げ、平和憲法を持つ日本だからこそ、言い換えれば「腕力がないからこそ」どこの国に対しても、あるべき姿を言い続けることができるのではないでしょうか。
 国と国との争いが起こるとき、多くの場合、経済的な問題が根底にあります。今明らかに、経常赤字から脱出できないという深刻な経済問題(アメリカ、EUの経済的困難の真因)を多くの国が抱えています。

 そうした中で、日本は、いかなる役に立つ率直な助言ができるのか、まずこのあたりに日本の役割があると自覚して、各国とお付き合いすることが、今の政権政党に求められていることではないでしょうか。


TPPと円高

2011年11月11日 11時26分28秒 | 経済
TPPと円高
 野田総理がゼスチャーかどうか知りませんが、TPP参加の発表を1日延ばすといって、今日の予算委員会で論議をやっているようです。

 もともと、決定の延ばすのではなく、決定はしていて、発表を延ばすということであれば、あんまり意味のないことでしょうが、反対や懸念がいかに多いかを示すのにはいいのかもしれません。

 その中で、TPPで関税撤廃というが、日本の問題は、関税撤廃よりも円高だという意見がありました。
 まさにその通りで、10年先に関税が撤廃されて、日本製品が売りやすくなる、外国にしてみれば、日本製品が関税分だけ安くなるといっても、その時に、円がいくらになっているかの方がよほど問題だということでしょう。

 経験的に見れば、円は対ドルでプラザ合意で240円から120円と2倍になり、サブプライム・リーマンショックで90円になり、その後、ギリシャ問題などで、ガタガタと75円まで来てしまっています。
 
 大体、世界で一番すぐれているといわれる日本のハイテク製造業でも、一番困っているのは、世界中で何か起こると、日本経済自体がないも変わらなくても、それが円高になって跳ね返ってくるので、経営の見通しも計画も全く立たないという問題です。

 例えば、今後10年や15年は、日本経済が何か大きく変わらない限り1$=¥80ぐらいで変わらないという見通しが立つならば、日本経済は急速にデフレを脱却し、成長経済に向かって進むでしょう。日本も世界も、それで大きく裨益するはずです。

 しかしアメリカもヨーロッパも心ひそかに円高を望んでいるようで、先日の日本の円買い介入も、単独介入で、欧米が協調介入に踏み切ってくれる気配は全くありません。

 TPPと円高は、表面的には全く関係ないのかもしれません。しかし、アメリカも日本を巻き込まなければ、経済回復ができないというなら、1995年の時のように、円高阻止に、積極的に協力するぐらいの態度を示したらいかがでしょうか。

 アメリカもマネー資本主義に狂って、実体経済の見方を忘れ、他人の懐を当てにするようなことを、本当に反省する時期に来ているのでしょう。
 それをアメリカに直言するのが野田総理の役割なのではないでしょうか。


TPPの胡散臭さ

2011年11月06日 11時41分39秒 | 経済
TPPの胡散臭さ
 TPPという言葉が言われ始めた頃は、日本にとって、最大の問題は農業問題だといった論調が中心だったように思います。 テレビの画面でも、農業団体が反対をいう場面などが主流でした。
 確かに日本の農業は、これまでの保護中心政策のせいで、大変効率の悪い部分が多く、国民は、おかげで大変高い農産物を食べることになってしまっていて、それがなかなか治らないということで、少し外的な刺激を与えて、効率化促進などという意見も多かったでしょうか。

 しかし時がたつにつれて、金融問題、医療問題、国際投資問題、などなどいろいろな部門で多様な問題が提起されることになってきました。
 民主党、自民党の中でも、与党、野党という事ではなく、それぞれに賛成派、反対派がいて、意見は対立しています。

 野田総理が、加盟賛成を表明し、「最後は私の決断で」といっていますが、民主党内の反対意見をどう扱うのでしょうか。
 一方、谷垣さんは、「情報が少なくて判断できる状態にない」といっています。自民党総裁が「情報が足りない」というのですから、われわれ国民は当然十分な情報を持っていません。
 野田さんが十分な情報を持っているとすれば、それは「アメリカとの特別な関係にある」という事なのかと勘ぐったりしてしまいます。

 われわれ庶民は断片的な情報や、国際関係・環境という状況証拠から判断をしなければならないというのが実体でしょう。

 そういう目で見ると、一番気にかかるのは、言い出しっぺのアメリカが、万年赤字から抜け出せずに四苦八苦していること、その状態も最近はかなり切羽詰まっていること、今までもプラザ合意やサブプライム問題、リーマンショック、勝手な格付けシステムなどで、外国に迷惑をかけ続けていることなど、言い出しっぺの(道徳的)資格要件を満たしているのかという問題が気になります。

 一方、日本は、世界最大の貯蓄国で、また、独自のやりかたで、国内の安定した制度(国民皆保険、金融、法律・行政など)を作り上げてきている国です。国民は真面目で穏和で、20年もの間、円高という外圧を耐え忍んで、真面目に働いています。

 更にアジア諸国はといえば、社会システムなどに未整備な部分を持ちながらも、経済的には発展の時代を迎え豊かになりつつあります。

 アメリカにとっての美味しい餌は環太平洋にあり、という状況を客観的に見れば、矢張り「TPPは胡散臭い」という事でしょうか。