tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

恐ろしい円高とデフレのスパイラル

2009年11月29日 10時17分29秒 | 経済
恐ろしい円高とデフレのスパイラル
 デフレを心配する声が高まって来ています。デフレの恐ろしさについては既に度重ねて指摘してきましたし、デフレの真因についても述べてきました。デフレ論議が高まることは、日本経済をデフレにしないためにも大変重要なことですから、的確な論議を期待したいものです。

 大新聞も、「国債を一杯出して日銀が引き受ければいい」などという単純な貨幣数量説を唱える学者の意見などを大きく紹介したりしていますので、その辺が気がかりです。

  デフレの原因シリーズでも指摘しましたが、デフレの原因は、「日本の物価が国際比較して高い」からです。国際自由競争の時代ですから、高い物価は下がらざるを得ません。しかし、物価が国際価格以下にどんどん下がり続けるようなことはありません。 理由は、国際価格以下なら世界中に売れますから、物価をそれ以下に下げる必要がないからです。

 プラザ合意 による円高の結果、世界一の高物価国になった日本は、20年かけてコストダウンを重ね、ようやく物価を国際価格並に下げてきました。2002年からの日本経済の小康状態はそのおかげでした。

 しかし、サブプライム(リーマン)ショックの金融ショックは別として、改めて日本経済にデフレの懸念が出てきたのは、円が$1=¥110近辺から$1=¥85近辺まで進んできた円高のためです。折角国際価格に近づくまで引き下げてきた日本の物価が、改めて国際比較の中で高くなってきたのです。「円の独歩高」の状態は、日本経済にとって極めて危険な状態です。

 デフレがデフレを呼んで、いわゆる「デフレスパイラル」に陥るといったことは、円レートが安定している限り起こりませんが、日本のコストダウンによる物価引下げ努力を「帳消し」にするような更なる「円高」を国際投機資本などの思惑でやられますと、日本経済は、「物価引下げ努力(デフレ)と円高のスパイラル」で、とめどない価格引下げ努力を強いられることになります。
 これは最悪のスパイラルです。

 デフレの中では正常な金融は 機能しません。多くの資金は投機に向かいます。日本の多額の貯蓄もそうなるとすれば、それは国際投機資本の格好の餌食となる可能性なしとしません。
 
 デフレによる産業の疲弊、投機による貯蓄の損耗を座して待つのではなく、日本経済が元気であることが世界に最も貢献する道であることを明確にしつつ、日本経済防衛のために毅然たる国家戦略を世界に提示することが何より必要なのではないでしょうか。


デフレと円高:最悪状態の日本経済

2009年11月27日 16時59分13秒 | 経済
デフレと円高:最悪状態の日本経済
 アメリカ経済のサブプライム破綻(リーマンショック)から1年を過ぎて、世界経済は、いくらか落ち着きを取り戻したようです。不安定ながらも、米、欧、アジアの株式市況も多少持ち直し、中国は経済回復に自信を示しています。

 日本も新エネ、省エネなどの技術革新を中心に、企業の業績も回復の兆しを見せるかと期待され、現に雇用情勢も底打ちの様相を見せてきたところでしたが、このところの円高、株安で日本経済は更なる打撃を受けそうです。放置すれば最悪の状態を招く危険もなしとしません。

 世界中株高なのに日本株ばかり低迷などといわれますが、日本だけがこのようなことになる理由はなんでしょうか。最も基本的な問題点を挙げるならば、それは円高でしょう。
 「ドル安」は傾向としては世界の共通認識でしょう。しかし、現状は、円が逆に独歩高の気配で、ユーロに対しても、ついこの間の135円辺りから128円台になっています。

 5パーセントの円高は何を意味するのでしょうか。これは、日本国内の要素費用(人件費、資本費)と凡ての価格が一律に5パーセントアップしたということです。仮に$1=90円が85円になれば、賃上げゼロでも、国際的には5.9パーセント賃上げしたのと同じことになリ、ただでも高い日本の物価が一律5.9パーセント値上げされたのと同じことになるのです。

 この影響は、マスコミが好んで取り上げるような輸出企業にとどまりません。通信料金も、航空運賃も、その他あらゆる物価、サービス料金、JR運賃もホテル代もすべてが、国際的は5.9パーセント引き上げられたことになるのです。そして国際競争力を取り戻そうとして5.9パーセント分の値下げ努力をしようとすれば、それはダイレクトに賃金や雇用に影響します。

 プラザ合意による円高を20年かけて必死のコストダウンで乗りきり、ヨーロッパ水準にまで物価を下げてきた日本、自国通貨切り上げの恐ろしさを 世界一知っている日本のはずですが、何故、円高に対して「強い」意思表示が出来ないのでしょうか。

 今日、日々の為替レートは実体経済によって決まるのではなく、投機資金の思惑によって決まります。明確な意思表示をしない円は、国際投機資本の格好なオモチャにされるのが落ちでしょう。そしてそのシワ寄せを受けるのは、われわれ日本人です。

 巨大な個人金融資産を持つ日本です。しかしそれは日本人が自らの将来ために蓄えたもので、国際金融資本に与えるエサではないのです。
最も恐ろしいのはデフレと円高のスパイラルでしょう。この問題は次回にします。


デフレ、金融政策の限界

2009年11月25日 11時07分23秒 | 経済
デフレ、金融政策の限界
 前回のテーマ、デフレ3悪は本当に性質のよくない困ったものですが、中でも3番目の金融不安は、金融が経済の血流といわれるだけに、経済の基本に関わる問題を引き起こします。現に引き起こしています。「流動性の罠」などと言われますが、解り難い専門用語は避けましょう。

 問題は大きく2つあるような気がしています。1つは、金融機関の収益低下、もう1つは資金の海外流出です。さらにもう1つ、投機への誘惑を加えても良いでしょうか。

 物価が下がっても、預金金利はゼロ以下には下げられませんから、貸出金利が下がると金融機関の利鞘は狭まります。その上、企業は、前回も書きましたように実質金利負担が高まりますから、いわゆるバランスシート調整(資産を圧縮して借金を返す)に必死です。当然資金需要は減ります。

 それでも資金需要がある企業というのは、デフレに関係なく伸びている企業か、業績不振で資金繰りがつかない企業でしょう。多分前者はごく少数で、ほとんどが後者という事になると、金融機関は貸し渋り、貸し剥がしで自衛ということになります。業務縮小、収益低下です。
 預金を集めても、国債で1パーセント台の運用というようなことになるわけです。そしてこの低い国債利回りとて、日本経済の成長では払えないのを無理して払っているものでしょう。

 国内で運用するとしてもそんな状態では、デフレでない資金不足で資金需要の高い海外の国での運用が考えられます。うまくいけば、金融機関の収益にはプラスになる可能性はあります。
 これは同時に相手国の経済発展に寄与しますが、日本経済にはゼロかマイナスの効果しかありません。

 実体経済をベースにした地道な資金運用で利益が見込めないと、ついつい投機的な運用に走り、キャピタルゲインを得ようとする誘惑も出てきます。キャピタルゲイン は、単にマネーのある場所が振り変わるだけで、実体経済とは関係ありません。

 金融機関がこんな状態で、手足が動かせない時、金融政策が効果を持つでしょうか。デフレの時の金融緩和が何をもたらすか、日本は「前川レポート」「新前川レポート」で推奨した内需拡大の結果の土地バブルとその崩壊 で十分経験しています。日銀が動かない(動けない)のにはきちんとした理由があると理解しています。

 日本にはお金は沢山あるのです。1400兆円を超える個人金融資産を誇る国です。デフレの原因は、お金の量や金利にあるのではなく別のところにあるのですから、打つ手も別のところにあるはずです。


デフレ3悪

2009年11月23日 15時03分05秒 | 経済
デフレ3悪
 政府はデフレ宣言をしたようですが、プラザ合意以来長期のデフレに悩まされてきた日本にとって、またデフレ宣言とは・・・、改めて気が重くなるようです。

 私は以前から自分勝手に考えて、「デフレ3悪」という指摘をしてきました。デフレの時は、自動的にこんなことが起こり、自動的に景気が悪くなるという指摘です。

1. 消費不振(先延ばし)
 消費者は、先行き物価が下がると思えば、消費を先延ばしすることになります。例えば、来年あたりに、もっと良い車が安い価格で出ると思えば、新車への買い替えは急がずに、差し当たってもう一度車検を取って、新しい車が出るまで待つでしょう。これでは消費は伸びません。

2. 利益圧縮
  企業は原材料や商品を仕入れて、それを加工したり陳列したりして売りますが、必ず一定のたな卸し回転期間がかかります。デフレの時は、たな卸し回転期間中にも物価が下がることになりますから、高めの価格で仕入れて、安めの価格で販売ということになり、その分だけマージン(粗利益=売上総利益)は自動的に減ります。

3. 金融不安
 物価が下がって行く分だけ実質金利は上昇します。物価が下がるということは現金の価値が上昇することですから、現金を持っているだけで得をします(しかし余り実感しません)。
 一方、借金している人は、借金の価値が膨らみます。金利が1パーセントでも、物価が1.5パーセント下がれば、実質金利としては2.5パーセント金利がかかったのと同じです。
 預金金利はゼロ以下には出来ません。貸出金利は下がっても実質金利は高いので銀行利用者は減り、金融機関の収益性は落ち、銀行倒産が起きます。金融政策は効かなくなります(流動性の罠)。

 こんなデフレ経済は、本当に御免蒙りたいと思うのですが、またまたデフレに苦しむのでしょうか。何か脱出策はないのでしょうか。

 頭の良い日本人のことです、何か考えて、マーシャルでもない、ケインズでもない、新しいデフレ克服策を編み出すときではないでしょうか。
  従来の経済学などにとらわれない、自由な発想で、何とか日本経済を活性化したいものです。


日本の貿易相手国、主役は米中交代

2009年11月20日 21時12分56秒 | 経済
日本の貿易相手国、主役は米中交代
 ご存知のように日本の貿易依存度(輸出or輸入/GDP)は、趨勢的には上がっていて現在15パーセントを多少上回る程度です。黒字国ですから輸出依存度のほうが輸入依存度をいくらか上回っています。

  貿易依存度は、基本的には国の大きさ(人口の大きさ)に反比例するような形になるもののようです。アメリカのような大きい国は貿易依存度は低いですし、ヨーロッパ諸国は高いですが、EUという形で1つの国にして考えれば、大部分は域内貿易ですから、域外貿易だけが貿易依存度ということになり、ずっと低くなってしまいます。

 しかし貿易依存度は、それだけではなく、その国の経済の在り方によっても大きく変わります。中国の場合には、人口は世界最大ですが、改革開放以来、貿易依存度は急激に上昇し、現在では、輸出・輸入依存度とも30パーセントを超えています。WTOの活動、自由貿易協定の推進などで、更なる上昇の可能性も大きいようです。

 その理由は専門家の研究に任せたいと思いますが、ここで指摘したいのは、こうした事実を背景に、日本の輸出入に占める中国の比率がどんどん大きくなっているという事実です。
 従来の常識では、日本の最大の貿易相手国はアメリカといいことになっていましたが、それは2006年までで、その後は中国がトップです。

 日本の輸出入合計額に占める対中国と対アメリカの割合は、
対中国  2004年16.5%、2005年17.0%、 2006年17.2%、2007年17.7%、 2008年17.4%
対米国  2004年18.4%、 2005年17.7%、 2006年17.4%、 2007年16.1%、 2008年13.9% 
ということになっていまして、2007年からは米中のシェアが逆転しています。
 しかもアメリカの減少度合いがかなり大きいのが見て取れます。

 日本には、アメリカの消費拡大に期待する向きも多いようですが、双子の赤字を解消せずに消費を増やしても、いずれいつか来た道になることは明らかで、アメリカ経済の健全化のためには安易に消費の伸びを期待すべきではないでしょう。

 これに対して中国は黒字体質で、人口は巨大、経済は伸び盛り、逆転した上記の格差はさらに拡大していくことになるでしょう。

 国内需要の低迷する日本が今後、どこを貿易相手国の本命と考えるかは重要です。政治的配慮は別として、現実の経済の動きを直視して、これから進むべき方向を判断していくことがますます重要になるのではないでしょうか。


技術開発に注力する日本

2009年11月17日 12時37分50秒 | 科学技術
技術開発に注力する日本
 EUの発表によると、世界の主要企業の研究開発投資はトヨタがトップで1兆円を超え、トップ50社に日本に企業が13社(ホンダ、パナソニック、ソニー、日産など)入ったということのようです。

 円高による失われた10年、その後のサブプライムローン証券化の挙句のリーマンショックと、海外から不況を強いられているような日本経済、そしてその中の日本企業ですが、研究開発については、本当によくがんばっていると思います。

 ここまで頑張っているのも、これからの日本の生きる道は技術開発以外にないということが日本企業には解りすぎるほど解っているからでしょう。
 折しも、今世界は、地球環境問題に直面し、同時に、少し長期的に見れば、化石燃料の供給問題に直面する可能性が大という状況です。

 いずれにしても、化石燃料からの脱却は、これから数十年の間には本格化する問題で、それが遅くなればなるほど、資源争奪の国際紛争などの激化につながる可能性も高いように思います。

 かつて西欧世界は、資源確保による豊かさの実現のために版図の拡大や植民地の獲得に狂奔しました。
 最も遅れてその真似をしようとした日本は大失態を演じましたが、しかし何が幸せをもたらすかわかりません。戦後の日本は、図らずも、版図の拡大や植民地獲得をしなくても、国民が真面目に努力すれば、その国の経済はいくらでも発展するということを世界に実証 して見せることになりました。

 経済は誰が作るものでもなく、その国の国民の活動が作り出すものです。その国の経済がよくなるかどうかは、国民の経済活動が適切に行われたかどうかの結果でしょう。

 日本の主要企業が、厳しい不況の中でも、研究開発投資により多くの原資を割いて、積極的な努力を続けていることの裏には、戦後の原体験があるのではないでしょうか。

 核になるのは、発電の脱化石燃料化、電気の貯蔵、そして省エネ技術開発などでしょう。こうした技術は、さまざまな基礎から応用までの多分野の多様な技術で支えられています。こうした多くの分野で日本が世界に先行することができれば、日本は世界に必要とされる国であり続けることが出来るでしょう。


EVAも付加価値概念?

2009年11月13日 10時16分05秒 | 経営
EVAも付加価値概念?
 MBA上がりの人と付加価値の話をしていたら、本当の付加価値はEVAではないかという意見をいわれました。

 私はかねがね、EVAのようなものに「 付加価値」という名前をつけるから付加価値概念が混乱して困ると思っていたのですが、今様のMBAコースで習って来ると、白紙の上にEVA(Economic Value Added、経済的付加価値)とスターン・スチュアート社の登録商標のついたものを刷り込まれて、単純に信じてしまうようなことになっているのでしょうか。

 繰り返して述べることもないと思いますが、一応述べておきますと、EVAというのは税引き後の営業利益 (税引き後当期利益という説明もありますが、当期利益はすでに実際支払った資本コスト《金利》は払ってしまっていますから税引き後営業利益のほうが正しいのでしょう) から本来かかるはずである資本コスト(機会原価として)を差し引いたもの、ということになっています。

 これはどう見ても「利益 概念(の一種)」です。 
付加価値というのは、人間が資本を活用して創造した価値ですから、その配分は人間と資本に対して行われます。したがって、付加価値は、基本的には人件費と営業余剰(利益)です。
そのうちの資本に関するリターンだけを計算して、人間への配分は全く捨象してしまっているものに、Economicという形容詞をつけるにしても「付加価値」などという名称をつけて良いものでしょうか(もともと付加価値はEconomicなものですし)。

 この最も大事な「人間への配分(人件費)を全く捨象して、資本投下に対するリターンのみを計測するための概念に、「付加価値」という言葉を使った(誤用した)スターン・スチュアート社の不見識もさることながら、それをそのまま教えて良しとしているMBAのコース(少なくとも最高学府でしょうから)も困ったものだと思います。些か言い過ぎているのかもしれません。たまたまその学生が不勉強で誤解しているという可能性もあります。

 「経済的付加価値」などといわずに、せめて「税引き後正味利益」とか「税引き後実質利益」とか、英語ならば、RNPとかRNR(Real Net Profit/Return)とでもいってくれればよかったのに、と思うところです。

 経済の目的も、企業活動の目的も、人間の知識・能力を活用して「より豊かでより快適な社会を作ること」で、そのための原資が付加価値であるという付加価値の基本概念が大切であるがゆえに、付加価値という言葉の乱用が、大変気になるところですので、余計なことと思いながらも、書いてしましました。
 これも実体経済(GDP:付加価値ベース)をなおざりにしてマネーと利益中心になっている最近の風潮を反映してのことでしょうか。



経済学の役割

2009年11月09日 10時40分07秒 | 経済
経済学の役割
 経済学というのは、人間社会はどのようにして豊かになって来たかを研究して、その理由をいろいろな面から確かめ、それをベースにして、人間社会がさらに豊かになるためにはどうしてたらいよいか研究する学問でしょう。

 さらに最近では、豊かさだけではなくて、人間生活の快適さも視野に入れて研究するようになっています。
 快適さという面では、特に地球環境の面が重視されてきているわけで、これはエコロジーで、エコノミーと共にギリシャ語のオイコス(家)を語源とするといわれ、人間社会を最も大きく捉えれば地球、最小の単位は家庭ということで、家政学と経済学は基本的には共通なのでしょうか。

 ところで、今、世界中が不況になっていて、どの国も苦労しています。振り返ってみれば、1960年代までは世界中が第二次大戦後の好況に沸き、欧米でも日本でも、国民は生活水準の向上を謳歌してきましたが、欧米は70年代にはいっておかしくなり、日本も80年代後半からおかしくなってしまいました。

 そうした中で、発展している経済は、中国、インド、東南アジア、南米などの後発国です。しかしこれらの後発国も、欧米先進国の経済活動の失敗の影響を受けて、結構苦労しています。

 豊かさがある程度の水準に達すれば、経済成長のスピードが落ちるというのは、誰でも何となく理解できるような気がします。しかし、何故、マイナス成長になってしまうような馬鹿げたことになるのか、その理由をはっきりさせて、人間社会のまさに経済的安定、環境面の改善を維持できるようにするためには「何をしたら良いか」、「何をしてはいけないか」を指し示すのが「経済学の役割」でしょう。

 世界の経済学者の知恵を結集して、政策担当者が集まっているはずのG20でも、なかなか実効が上がるような方向が打ち出せません。景気討論会でも、エコノミストの方々が集まって、最後には来年の経済成長率はどのくらいになるのでしょうか、といった質問に答えています。

 経済学は、宗教ではありませんから「予言」は必要ないのではないでしょうか。予言ではなく、「こうすればこうなります」、「ああしたからああなったのです」、「だからこうすべきではないでしょうか」といった現実に実効性のある政策のあるべき方向を、誰にも納得のいくように、解りやすく解説してくれる経済学を、政治家はもちろん、家計に責任を持って「生産と所得と消費」を日々担っているわれわれ庶民、つまり「生活者」も、みんな期待しているのではないでしょうか。

 最大の経済主体は、われわれ「生活者」です。生活者のあり方が、経済の行くへを決めるのでしょう。「生産者」は生活者の消費行動を見て行動しています。
 アメリカのように消費過剰な生活者の国、日本のように貯蓄過剰な生活者の国で、経済の行くへは違います。ならば、経済が安定して発展するためには「生活者はどういう生活行動をすれば良いか」、生活者の行動を適切なものにするために「政策担当者はどうすべきか」など、生活者の誰にも解りやすいような経済学を期待したいものです。


自然エネルギーと電力会社

2009年11月06日 11時25分08秒 | 科学技術
自然エネルギーと電力会社
 金融は経済の血流といわれますが、同じような言い方をするとすれば、電気というのは社会の血流ということになるでしょう。

 原始、生物のそして動物の生命を支えたのは太陽の光でした。人間は、それに加えて火を使うようになりました。プロメテウスから雷神まで、人間に火をもたらした神話や民話は世界中にあるようです。

 火を使うことによって、人間の生活は格段に進歩しました。そして人類の歴史から見ればごく最近ですが、人間は蒸気機関を使うようになり、そして電気を使うようになりました。電気は、光源にも、動力源にも、熱源にも、そして情報の加工や通信にまで、人間生活のあらゆる面に使われるようになっています。

 電気の特徴は、エネルギーとしての移動速度の速さ、まさに光に次ぐ速さであり、その搬送の柔軟性にあるのでしょう。
 人間生活の中の生産、流通、消費、趣味活動から医療まで、凡て電気のお世話になっています。発電量はその時点の人間社会の活動の状態に最も一致する指標といわれる所以です。

 その電気にも1つ大きな欠点があります。それは貯蔵が困難なことです。化石燃料の備蓄から揚水発電まで、発電の原材料の貯蔵で対応して来ているということでしょう。

 この社会の血流である電気の世界に、今、大きな変化の波が押し寄せています。その理由は、発電のために化石燃料を使うことによる地球環境の汚染、CO2による温暖化の問題です。
 人類にとって緊急で必須な課題は、第1に、発電手段としての化石燃料から自然エネルギー、再生可能エネルギーへの転換、そして第2に、蓄電技術の多様化と進展でしょう。

 自然エネルギーは、その源をたどれば、年々太陽が無償で贈与してくれる太陽エネルギーを使ってその年のエネルギー消費を賄おうということで、伝統的な水力発電、今日の太陽光・熱発電から、風力、波力発電、バイオエタノールまで凡て元はといえば、太陽エネルギーのお蔭によるものです。これが出来れば地球の生態系のエネルギーバランスは回復します。

 幸、日本は多くの企業などの努力の蔭で、この面では世界の先端を進みつつあるようです。ただ不思議なのは、主役であるべき電力企業が、ほとんどこの面での活動をしていないことです。
 自然エネルギー利用、蓄電技術からスマートグリッド まで、技術力にも資本力にも優れている電力企業の早期の参入と活躍を期待したいと思います。


始まるか?正規、非正規の賃金調整

2009年11月04日 11時20分49秒 | 労働
始まるか?正規、非正規の賃金調整
 失われた10年を何とか乗り切り、何とか改善の方向へという矢先、サブプライムの悪夢、リーマンショックで大打撃の日本経済です。
 アメリカ経済の凋落は、当然ドル安の可能性をもたらすでしょうし、それをめぐる為替戦争の中で、日本は多分巧く対処できず、更なる痛手を蒙る可能性は高いように思われます。
1%の円高は1%のコスト高です。 もともとコスト高の日本経済には大変厳しいことです。
 新政権の政策が、日本経済の活性化に巧くプラスをもたらすのかも、まだ見えてきません。

 企業は、そうした中で、自力で生き抜かねばなりません。最も大変なのは日本経済のコストの7割を占める人件費の問題です。コストの安い非正規社員の多用は次第に困難になるでしょうし、最低賃金引き上げなど賃金の底上げによる格差是正が単純に社会正義だと考える人も多いのが現実です。

 しかし、製造業であれ、非製造業であれ、正規社員だけで(正規社員の賃金水準で)利益を出せる企業は数少ないでしょう。その上、賃上げをしなくても、1%の円高になれば、国際的には、1%のコスト高 になるのです。

 こうした中で、非正規の賃金の引き上げだけでなく、労使が協力して、正規社員の賃金も総合的に考えて、本格的に人件費問題に取り組もうという例が生まれていることは極めて重要です。
 特定の企業の名を出して恐縮ですが、かつてはNTTで企業システム全体まで総合的に考える中で、正規社員の賃金構造の大改革をした例があります。最近では、広島電鉄の例が紹介されています。

 広島電鉄では、正規社員ではコスト高でやれないということで、会社が乗務員の新規採用は非正規に限るとした中で、労使が、正規・非正規を総合的に考え、全員正規にする方法を考えているのです。そして会社は、全員正規化を認め、組合は、ベテラン従業員の月数万円に及ぶ賃金引下げを認めるというのです。もちろん、移行期間は十分に取り、定年を65歳まで5年延長して生涯賃金の確保も視野という本格的な取り組みです。

 さらに特筆すべきは、労使ともに、この制度改定は、人件費コスト調整の効果だけではなく、全員正社員による社内の人間関係の融和改善、モラールの向上、安全運行への寄与などへの大きな効果を認めているということでしょう。

 製造業派遣の再禁止など論議のあるこのごろですが、こうした問題は本質的には法律で解決できる問題ではないでしょう。企業の労使、現場を最もよく知る労使が、知恵を出し合って、みんなに共通な、より良い将来を実現するように着実に努力していく問題だと思います。
 より多くの場で、労使の真剣な取り組みが期待されるところです。