tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経済政策の基本を変えてみたら?

2022年09月05日 14時52分44秒 | 経済
安倍総理、黒田日銀で、「プラザ合意」以降の「円高日本」という苦難を、バーナンキさんの示唆もあってでしょうか「2発の黒田バズーカ」で克服しました。

円レートは1ドル=80円から120円になり、円高という桎梏は解消、これで日本経済も順調にいくだろうと多くの人は思ったでしょう。

そしてその後10年近くが過ぎました。プラザ合意前の元気な日本を取り戻すかと期待されていたにもかかわらず、相変わらず日本経済は低迷、国民1人当たりのGDPの世界ランキングは下がるばかりです。

10年も低迷ですと、やっぱり経済政策が間違っているのではと考えざるを得ません。なんだかんだ問題はあってもよその国は経済成長していて、日本を追い越していくのです。

「何で日本だけ駄目なの」、「政策が悪いんじゃないの」という声はあるのでしょうが、「じゃ、こうすれば」という答えはなかなか出てきません。

理由を考えてみますと、日本人は真面目で、いろいろ工夫するので、悪条件の中でも何とか工夫してやるのに一生懸命で、大元の「悪条件」にまで気が回らないという事がありそうに思います。

平成不況の中でも、円高が元凶だから円高の是正が必要と考えるまでに30年かかりました。
今度は、円高は治ったけれど、10年も低成長・ゼロ成長というのは、経済政策の前提で大事なことに気が付いていないらしいという事になります。

ところが、それに気付いて直すべきだ考えないで、困った事があったらそこに手当てしようというパッチワーク(弥縫策)が経済政策だと考えているのが今の日本でしょう。

さて、それでは「是正すべき悪条件とは何か」です。この10年、現実に起きている現象から見れば、日本が他の国と全く異なっている点が1つあります。そこに何かヒントがあるはずです。

それは何かと言えば、既に皆様お気づきでしょう「物価」です。主要先進国が軒並み10%近い物価上昇の中で、日本はまだ2~3%。それでも日本政府は物価が上がって大変だと慌てています。(欧米主要国は苦笑かな?)

欧米主要国がインフレ昂進を心配するのは、賃金物価のスパイラルが起き、高物価国になって国際競争力を失うからです。(欧米の1970~80年代のスタグフレーション、政権交替の悪夢

日本の場合は労使が賃金物価のスパイラルについての十分な知識を持っているので、第二次石油危機以来その心配はありません。
そしてインフレを嫌うあまり、物価安定のために輸入物価が上がっても、国内価格に転嫁するのを抑えてしまうほどです。

そしてそのために国内の価格メカニズムが正常に働かず、付加価値配分に歪みが起きて経済の正常な活動を阻害し経済成長まで阻害する効果が出て来てしまう面が大きいのです。

2発の黒田バズーカの時も、当然上るべき物価が上がらず、輸出部門に差益が滞留、輸入部門に差損が滞留し、結果として1ドル80円が120円になっても物価はさして上がりませんでした。

その結果は、国内の付加価値の偏在をきたすとともに、物価が上がらない事から「賃金上昇への波及がなく」賃金上昇による付加価値配分の社会的均霑も起こらず、経済活動の阻害が長期に保持されたのでしょう。(最近の価格転嫁は当時からの分もありそう)

さて、これを直せば、日本経済は活性化して、成長経済を取り戻すでしょう。そのために何が必要か次回考えてみましょう。