tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

コロナ後を見据えた経済政策 9

2021年07月11日 17時11分37秒 | 文化社会
財政再建は急ぐべからず、先ず経済成長、財政再建はその結果
このシリーズでは、SDGsの理念に従って、持続可能な安定成長路線に日本経済をのせるには、という検討をしているわけですが、これまでに消費拡大のために必要な所得税の改革、高度技術の開発を促進するための法人課税の改革をとりあげてきました。

税制を改革するということは、政府がこの国の在り方を改めるという事ですから、その政府の意思が国民に伝われば、国民の意識や行動も変わり、国民生活も、技術革新活動も活発になり、経済はは安定成長路線に乗るはずです。

多分その辺りで出て来る問題が、税制改革も結構だが、今まで政府が積み上げてきた膨大な財政赤字、GDPの2倍以上の国債残高はどうするのか、という疑問、意見が出て来るように思います。

安倍政権は財政再建を言いつつ何もできず、菅政権はコロナでさらに巨大な赤字国債を積み上げたばかりです。
財政再建の目標は、先ず、基本的にはプライマリーバランスの回復ですが、安倍政権も菅政権も、目標は決めるものの、実現性は全くないという結果の繰り返しです。

では、財政再建問題は、どう考えるべきなのでしょうか。
昨今、アメリカ発のMMT理論(新時代の貨幣理論)などというのが出て来て、日本のような借金財政でもインフレにならないのだから、財政赤字は特に心配することはない。インフレにならなければそれでいいのだ、などと主張するようです。

この問題については、このブログでは昨年、MMT問題のシリーズ、また、日本の国債が紙屑になる条件のシリーズとして検討してきて、ほぼ結論は出ています。
単純に言えば、MMT理論はアメリカ発で、日本の状態を前提にしているから成立する、とまあそんなところです。

理由は、アメリカは基軸通貨国で、ドルを刷ればよい、日本は万年黒字国で、外国の持っている日本国債は数%で、海外取引上の信用が当面無くなることはないといった条件の上に成立することのようです。

もう一つ付け加えれば、政府主導の新自由主義で、労働組合の力が弱まり、先進国では賃金インフレが起きにくくなっているという事もあるでしょう。

昨年来の検討で見て来ましたように、現状では日本の国債が信用を無くする(円が暴落する)という事は、起きないようですので、巨大な政府債務を早く何とかしなければならないと政府が言って、国民を心配させることは大変まずい政策選択です。

安倍政権も菅政権も、財政再建を旗印に掲げて、出来るはずがない様なプラマリー・バランス回復計画を立てて、当初予算だけは辻褄を合わせ、計画の期限が近づくと「駄目でした」と先延ばしの再計算を繰り返しています。
コロナ対策で、緊急事態宣言を4回も繰り返すのと似ています。失敗の繰り返しです。

財政健全化は経済が成長しなければできません。ゼロ成長でやろうとすれば、多分それは、日本がかつての韓国やギリシャのようにIMF管理になった時でしょう。

ですから、日本が万年黒字国で、世界的に信用があるうちに、早く経済が成長する政策を取り、地道に時間をかけて、国際的な信用を維持しながら、小幅でも確実に進めていくというのが最善の政策選択でしょう。 
 
財政再建は大事なことですが、出来ないことを焦って、じり貧になるよりも、万年黒字国という信用を確り維持しながら、先ずは、このシリーズで見てきたように、GDPの配分を税制も活用して「成長できる形」に組み替え、牛歩でも進めれば、何時かは片ついているということになるのです。

 世界がSDGsを最重要な課題としていることを確りと理解し、税金を決める政府も賃金を決める労使も協力して格差社会化を逆転し安定所得層を増やし、もう一方では先端技術開発により多くの資源を割くような国づくりが必要なのでしょう。