レベニュー・ニュートラルなら、所得税累進強化で
このシリーズの前回の「3」で、増減税をする場合、最も納得の得られやすいのは「レベニュー・ニュートラル」の考え方を取ることと書きました。
レベニュー・ニュートラルの意味は「歳入中立」です。つまり増税とか減税をしますが、それと同額の減税とか増税をして、政府の歳入、言い換えれば国民の税負担は、総額では変わりませんという事です。
枝野さんの提案のように、時限的ということになると、その間だけ少し我慢をすればいいという事ですが、それではすまない場合もあります。
今回も、「いつ10%に戻すのか」という意見はあって、その時は大変でしょう。
消費税を減税した分をどこかで増税すれば、そしてそれが合理的な増税であれば、正式な政策としてえ成立するわけですが、そのためのいい方法はあるのでしょうか。
ここで大事なのはこのシリーズの最初に述べたSDGs(永続性のある開発目標)であり、それを可能にするための最も重要な要素である「格差社会化の阻止」でしょう。
格差社会化の進む社会には永続性のないという現実は歴史が証明しています。
ところで、日本の場合、「ジャパンアズナンバーワン」と言われたプラザ合意前に比べて現状は大幅に所得格差が拡大していることは明らかなようです。
ちなみに数字を拾ってみますと1980年代前半には、北欧のスウェーデンやデンマークと最小のジニ係数を争っていた日本でした。
ところが現状は、スウェーデン0.28 ドイツ0.29、カナダ0.31日本0.34、アメリカ0.39(OECD2017)と、格差社会の代表アメリカに近づいています。
2013~4年、円レートが正常化しても、労働市場における非正規労働者は減らず、正規との格差は縮まらず、最近はコロナ禍の中でさらに拡大しているのではないかと憂慮されるところです。
また実体経済の分野で活動する企業と、マネーマーケットで活動する企業の賃金・報酬格差、年額報酬1億円以上の経営トップの増加傾向など。格差拡大の垣間見えるマスコミの報道も気になるところです。
一方、所得税の累進度を見ますと、アメリカがレーガン税制でフラット化を進めたのを真似たのでしょうか、事情の違う日本でもフラット化を推進していることは、すでに触れました。(blog.goo.ne.jp/tnlabo/e/851519c6e8535061a38d8ddb06c956e4)
こう見てきますと、コロナ後の日本経済が健全でサステイナブルの安定成長路線に入るためには、消費税減税の財源は所得税の累進税率の見直しで捻出するというのが、最も解りやすい、納得性のある思考の方向だと言えるように思います。(消費税と所得税の減・増税のすり合わせが必要です)
勿論税制にはいろいろな要素がありますから、いろいろな意見があるでしょうが、個人、家計の収入・支出の面から見た格差是正の基本方向はそこにあるのではないでしょうか。
このブログでは、コロナ後の日本経済の在り方の基本は前述のようにSDGsに適うものであり、それを可能にする基本要件は格差社会化の阻止という歴史の経験の教えるところに則って考えると、こうなるように思うのです。