tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2021年最低賃金目安28円引き上げの意義

2021年07月16日 21時20分10秒 | 政治
2021年最低賃金目安28円引き上げの意義
2021年の最低賃金引き上げの目安が、28円(3.1%)で14日に決まり、きょう正式な答申になったようです。
 
最低賃金は、円レートが正常化して以来、政府の意向を反映して、年々引き上げ幅が大きくなり(昨年は別として)今年は28円と最高額になりました。
 
昨年はコロナショックで中央最低賃金審議会が例年出している引き上げの目安を発表出来ないという事だったようで、各県の最低賃金審議会は、これをゼロと理解し、がそれぞれに0~3円程度の引き上げで、いわば引上げお休みのような状態になっていたようです。
 
ところが、今年はコロナも気にせず、中央最低賃金審議会は時給ベースで28円(一昨年27円)というこの所最高の目安額を提示しました。今年はこれで全国平均の最低賃金は、1時間当たり930円になるとのことです。
 
最低賃金審議会というのは、中央も地方(県別)も公益、労働、経営から委員を出し、3者の合意で決めるという建前で、中央最低賃金審議会がその年の引き上げの目安を答申し、地方の最低賃金審議会は、それに各県別の事情を勘案して結論を出すというシステムです。
 
しかし、現実は、最低賃金の審議は、企業別の労使交渉とは違って、労使が合意というのは稀で、最終的に公益の意向が決め手になって決まるといった形でまとめているようです。
 
中央最低賃金審議会の目安決定もそのようで、中央の場合には公益の背後には厚労省事務局がいて、最近は政権の意向を重視してリードしているようです。
 
昨年は別としてこの所、政権は最賃の大幅引き上げを善としているようで、目安の金額を毎年数円、少なくても1円は引き上げて(昨年は別)28円まで上がって来たのです。
 
しかし、賃金支払いの現場はそう簡単ではありません。最低賃金を払うのは、コロナの打撃がひどい中小流通サービス業ですから、問題はそうした企業が四苦八苦することになり、場合によっては、パートの雇用削減を考えるといった事になりかねません。雇用と賃金は、いつもトレードオフの関係にあるのです
 
いわば、賃金支払いの責任は中小企業に丸投げで、今年の政府は、中小企業の右の頬は補助金・給付金で撫で、左の頬は最低賃金引き上げで平手打ちといった感じです。
 
最低賃金の担当は厚労省で、経営関係は中小企業庁ですから、政策のすり合わせなどは多分ないのでしょう。
 
ところで、最低賃金引き上げの目的が格差社会化の阻止ということであるならば、税制や社会福祉諸政策などとの総合的なバランスを取る形で、全体構想を構築し、最低賃金もその一環として適切な引き上げ幅も検討しなければならないないでしょう。
 
低成長の中で、官製春闘と言われるほど政府が賃上げに介入しても、労使の判断で決まる賃金は上がらないので、政府の権限がモノを言う最低賃金だけ無闇に引き上げてみても、結果は、中小企業経営や非正規労働者の雇用問題に皺がよるなど、中小企業の雇用や賃金構造に歪みが出るだけになりそうです。
 
自らの政策について、何事も、総合的、俯瞰的と言っていた政府の方針は何処へ行ったのでしょう。