法人課税の構造改革でSDGsを目指す
「プラザ合意」(1985)前の日本の法人税率は40%、平成不況では30%に下げられましたが、その後、安倍政権で年々下げられ現在は23.2%です。
確かに消費不振に比べれば、企業の設備投資が僅かな成長率を支えてきたという実績はあるかもしれませんが、日本経済を安定成長とか力強い成長に向かわせるような効果は、法人税の減税で実現することはなかったようです。
勿論、消費需要が活発になって、国内経済を需要が引っ張るようになれば、企業の設備投資も活発になるでしょうが、SDGsを目指す経済ということになりますと、これには当然高度な技術開発が必要になり、法人税制もそうした要請に添うものでなければならないでしょう。
既に、日本の研究開発投資の停滞には何度も触れていますが、現在の最大の問題であるワクチンの開発についても、いかに日本が遅れてしまっているかということが、今回のコロナ禍で、はしなくも明らかになってしまいました。
これは、法人税減税の中で、法人課税の構造そのものを、技術立国と言われる日本経済のあるべき姿にふさわしい物にしてかなければならないという喫緊の要請を、国民の前に明らかにしたものではないでしょうか。
勿論問題はワクチンだけではありません。再生エネルギー、蓄電技術、省エネ、省資源、といった基礎的な物から、日本社会の高度情報化といった問題、例えば、マイナンバーカードやスマホが、国民生活をどう変えるかという問題、その条件整備のために必要となる基礎教育から高等教育までのシステム構想などなど、既に日本は先進国ではない分野がどんどん増えているような状態を変えていくのでなければならないでしょう。
サステイナブルな開発発展過程をたどる安定した成長路線を構築するために必要な政策、それに必要な法人課税構想ということになりますと、アベノミクスの中でのような単なる減税ではなく、望ましい研究開発に企業が経営資源を積極的に集中するような税制が必要でしょう。
最も解りやすい伝統的な方法としては、法人税は引き上げ、その増収は、レベニューニュートラルの原則に従って、望ましい研究開発投資に対しての加速償却制度に充てるといった方法があるでしょう。
法人税の基本税率は引き上げられますが、SDGsに適う高度な投資については積極的に減税の対象にするという方法です。
レベニューニュートラルですから、トータルの法人企業の税負担は変わりません。
そして、恐らくこうした政策の結果、消費の安定成長の効果も含めて、中・長期的に成長率が高まるでしょう、その結果は、租税弾性値1.1(高度成長期は1.2)に従って、税収は伸びるでしょう。
これこそが、国家財政のまともな姿で、経済が成長しないような政策を取りながら、国債を発行して何か国民の人気取りをしようなどというのは、まともな政府、まともな財政政策とは言えないと考えるべきでしょう。