tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ジョブ型人事と日本的経営

2021年07月27日 22時30分12秒 | 労働問題
ジョブ型人事が言われる中ですが、就活は相変わらず学生にとっても企業にとっても大問題のようです。
このような現状を見ていますと、やっぱり日本の企業では、ジョブ型人事は、騒がれる割には結局一部の人材にとどまるのだろうなといった感じです。

前回、戦後、日本企業でも職務給導入が言われ、先進企業の中には職務給を取り入れたところも沢山(鉄鋼業などは典型)ありました。
しかし、実際には賃金の1項目として部分的に職務給部分が入ったという事でした。

それでも、年功給が太宗の給与の一部に職務評価による部分が入ったということは、従業員の意識を変えることにもなり、合理性の導入として評価されるべきでしょう。

今回のジョブ型人事制度の場合は、「賃金の一部」ではなくて、「従業員の一部」に、欧米流の『職務に必要だから採用』という人達がいるということになるのでしょう。

考えてみれば、そういう人は今までも沢山いたわけで、いわゆる非正規雇用の人達はほとんどがジョブ型人事の対象者です。
非正規の人達は、仕事があるから採用され、決められた業務だけを必要な時間だけ時給をもらってやるので、まさにジョブ型です。

それなら別に「ジョブ型」と大騒ぎすることはないでしょうというかもしれませんが、これから問題になるのは、そうしたジョブ型従業員を従来であれば定期採用の正社員の中にも取り入れていこうという考え方が出て来ているからです。

ジョブ型人事の最も基本的なところは、職務(ジョブ)が決まっていて、それが出来る人が欲しいという事ですから、いわゆる「即戦力」になる人でないと採用されません。
問題は何処でその能力を身に着けたかです。通常の就活で入った新規学卒には多分適任者はいないでしょう。

そうした能力を持つ人材を獲得するためには2つの方法があります。1つは素質のある人を採用して企業内で育てること、もう一つは、どこかの企業・研究所などで育った人をスカウトすることです。

前者は伝統的な日本の方法、後者は欧米流で、日本でもこれから増えるでしょう。
冒頭で書きました就活問題、つまり新卒一括採用方式は、素質のある人を採って、社内で育てる方式が前提です。

上手くいけば、この方式はそれぞれの企業で高い能力を持つ人が増えますから、高能力の人材の総量がが当該産業で増えるというメリットがあります。
一方、高能力の人材をスカウトする方式は、少ない人材の取り合いになり給料は上がりますが、人材の数は増えないという問題があります。
従って、大学の研究所とか研究機関などで即戦力になる人材(たとえばアメリカ流MBA)を育てるシステムがどうしても必要になるのでしょう。

こうした状況を考えてみますと、最新の多様な高度技術の進歩という問題もあり、日本の大学も大学発ベンチャーを育てるなど、日本も欧米も似たような状況になって来ているといえるような気もします。

特にこうした高度人材を引き合いに出しましたのは、こういう分野で、ジョブ型人事制度が必要になる場合が多いと思われるからです。

もう少し一般的に言えば、企業内で育った専門職と、外部からスカウトした専門職をどう分けるか分けないかといった場合もジョブ型雇用(処遇)の使いどころでしょう。

こうした場合、一番大事なことは、本人が、日本的文化圏の属するか、欧米的文化圏に属するかといった問題でしょう。本人の意思は、どちらにしても最も尊重されるべきでしょう。