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ラ・マンチャの風車(スペインの旅-5)

2011-12-15 16:45:37 | ラテンアメリカ旅は道連れ<南米旅日記>

丘の麓にあるコンスエグラ(Consuegra)は,マドリッドの南方120km人口8,000人ほどの小さな町である。この旅では,コルドバからマドリッドへの移動の途中に立ち寄った。午後の時間帯であったこともあり通りに人の姿はなく,街は乾燥し,赤茶けて見えた。市街の坂道を家の軒に触れそうになりながら,バスは小高い丘の上に向かう。

丘の尾根に沿って風車が立っている。サイロのような円形の石積みの塔に,想像以上に巨大な羽が4枚。羽の向きを変えるために,屋根ごと回転させるための丸太(支柱)が恐竜の尾のようについている。ラ・マンチャの男ドン・キホーテ(Don Quijote)が巨人と思ったのも頷けるが,立ち向かうには大きすぎ,サンチョ・パンサが止めるのも当然だ。製粉のための施設であったが,今は使われていない。

 

 視界は360度,隣の町まで見渡せる。6月の初め,この地域は赤い土が風に飛ぶだけで緑はほとんど見えない。ラ・マンチャ(La Mancha)はアラビア語で「乾いた土地」を意味するというが,まさに曠野である。「なるほど,こんな所に風車が立つんだ」と思わせるほどに風が強い。

 

中央イベリアのこの地帯は海抜600mほどの台地で,カステージャ・ラ・マンチャ(Castilla La Mancha)と呼ばれる。カステージャとはスペイン語で「城」(castillo)を意味する。この地方にはレコンキスタ800年の歴史の中で生み出された城や砦が多いいことから,こう呼ばれるようになった。ちなみに,カステラの語源もカステージャであるし,中南米ではスペイン語のことを「カステジャーノ」と呼んでいるが,江戸のことば(東京弁)が日本語(標準語)になったようなものだろう。

 

イベリア中部のこの地帯は,昼夜の気温差が大きく夏は暑く冬は寒い大陸性気候で,麦類,ブドウ,畜産が主な産業である。統計には出てこないが,それにサフラン。スペイン人に「コンスエグラで思い出すものは何か」と聞けば,「アラブの城に風車にサフラン」と答えるという。サフランはクロッカスの雌蕊を乾かしたもので,パエージャの黄金色の素である。スペイン語でazafránと書き,その綴りからアラビア人が伝えたものであることが分かる。ラ・マンチャはイスラム教徒の入植が多かった土地だと聞く。

 

スペインの中では人口密度が少なく,経済的に恵まれなかった歴史がある。セルバンテスがドン・キホーテの舞台にしたのも納得がゆく(ドン・キホーテについては話題が多すぎるので,別の機会に譲ろう)。

 

ラ・マンチャの丘でドン・キホーテに触れた旅の一時だった。

 

 

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