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人知れず強かに咲く「カタバミ」の花、恵庭の花-28

2021-08-03 18:01:47 | 恵庭散歩<花のまち、花だより、自然観察>

バス停で足元を見ると黄色い小さな花が目に留まった。花の大きさは直径7~8mm位だろうか。その植物は歩道と車道の境目に、瘦せ地のクローバーの風情で地面に張り付いている。花を愛する恵庭の人々でも、おそらく誰も気付かないだろう。たとえ気が付いても、その草花の名前まで詮索しようとは思うまい。人知れず秘かに咲く、可憐な野の花である。

散歩がてら注意深く観察すると、道端のほか畑地や公園の芝生にも、家の犬走や車庫の裏にも根を張っている。乾燥が続いたこの夏も強かに地面を這い、黄色い5弁の花をつけている。あたかも砂漠に転々とする星のごとくに。

この草花の名前は「カタバミ」。夜になると葉をたたむ特性がある。その様子は片方の葉が食べられたように見えるので、「片喰(カタバミ)」と名付けられたと言う。

 

◇カタバミ(酢漿草、片喰、学名: Oxalis corniculata

カタバミ科の多年草。大根のような主根を地中深く下ろす。茎は地を這い多数の小枝を出す。葉は3枚の小葉からなる複葉。小葉は小さなハート形(約1cm)でハートの先端を合わせた形になっている。葉色は緑~紅紫色の変異があり、夜は閉じる特性がある。

葉の形や匍匐する草姿が似ているのでクローバー(シロツメクサなど)と間違えられることもあるが、クローバーは葉形が卵型(円型)で白い線がありサイズが大きい。野に見られるクローバーは牧草用に改良された栽培種が野生化したもので、カタバミとは異なる種類である(マメ科)。クローバーの花は小花を密集して付けるので、容易に区別できる。

また、四葉クローバーを探した子供の頃を思い出して、四葉カタバミを探したが見つからなかった。カタバミもクローバー同様に多葉変異体を発生するが、環境耐性が高いためかカタバミの四葉出現率は低いと言われている。因果関係があるのだろう真偽は分からない。

春から秋に黄色い5弁の花(直径7~8mmと小さい)をつけ、日向では開花するが日陰に咲いた花はしぼんでしまう(夜も同様)。花が終わると円柱状で先が尖った果実が真っ直ぐ上を向いてつく。熟すと弾けて種子を最大1mも飛ばす。このためカタバミの繁殖は旺盛で、しかも根が深いので厄介な雑草の一つである。目立たぬ野草カタバミは、どんな過酷な環境にも生きながらえる強かさを有している。

下位分類として、アカカタバミ、ケカタバミ(毛が多い)、アカカタバミ(葉がやや小さくて赤い。通常のカタバミよりも環境に対する耐性が高く、都市部の路肩などにも生える)、ウスアカカタバミ、ホシザキカタバミ、タチカタバミ(茎が直立する)などが知られている。

また、わが国でよく見られるカタバミの仲間には「オッタチカタバミ(Oxalis dillenii)」「ムラサキカタバミ(Oxalis corymbosa)」などがある。

オッタチカタバミ(Oxalis dillenii)

地上部はカタバミ(Oxalis corniculata)より旺盛に見えるが、花の色やサイズ、葉の大きさは似ている。カタバミと同じ仲間であるが、根茎の節から地上茎が真直に伸び、出葉は2本ずつ少しずれて発生する特徴がある。茎が立ち上がることから「オッタチカタバミ」の名が付いた。北米を原産とする帰化種。

ムラサキカタバミ(Oxalis corymbosa

鉢植えの植物を購入して育てていたら、クローバーに似た葉が出て来て、ピンクの花をつけた。カタバミ属のムラサキカタバミ(Oxalis corymbosa)である。葉の大きさ、花の大きさは前述のカタバミより大きく、クローバーと同じ位のサイズである。地下に球根を形成し、球根上部の鱗茎から束になって葉柄が伸び葉をつける(根生葉)。茎が地上を這うことはない。

北海道で野生化したものは見られないが、関東以西を中心に道路や塀の隙間、畑や荒地などに繁殖している。原産地は南アメリカで、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアなど温帯から熱帯の各地に分布している。日本には江戸時代に観賞用として導入され野生化した。日本など温帯地域では結実せず、鱗茎(球根)の分球によって繁殖する。

オキザリスの意味は「酸っぱい」

カタバミ属の学名Oxalis(オキザリス)は「酸っぱい」に由来する。葉や茎はシュウ酸(oxalic acid)を含み、かじると酸っぱい味がする。そのため、酢漿草とも書かれる。地方名には「すいものぐさ」「しょっぱぐさ」「すいば」「かがみぐさ」「ねこあし」など多数あると言われる。多くは噛んだ時の味に由来する命名だが、「かがみぐさ」は古代鏡を磨くのに使用したこと、「ねこあし」はたぶん葉形から名付けられたのだろう。

全草は酢漿草という生薬名で、消炎、解毒、下痢止めなどの作用があるとされる。

家紋に使われる

戦国大名の長宗我部元親、徳川氏譜代の酒井氏など「かたばみ紋」を家紋とした。田中角栄の家紋も「剣かたばみ」だった。カタバミは繁殖力が強く、一度根付くと絶やすことが困難であることから、家が絶えないに通じ、家運隆盛・子孫繁栄の縁起担ぎとして家紋の図案として用いられた。

夏の季語。「蔵の陰 かたばみの花 珍しや(荷兮)」

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1 コメント

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Unknown (こんどう)
2021-08-29 08:16:02
島松のじゃがいもの農業試験場を調べてていましたらブログが出てきて懐しく読ませて頂きました。亡き母が50年ほど前3年間くらい勤めておりました。母に会いたくなって自宅の自衛隊官舎から自転車で ルルマップ川の下り坂上り坂を超えて 一面の色とりどりのじゃがいもの花の色 そして遠くに見える母を探した事を思い出しました。近年何度か行きましたが ルルマップの坂が昔よりなだらかに感じました。
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