◆パラグアイで何故大豆育種を行うか? 序文
パラグアイにおける大豆生産は,20世紀の後半,特にここ20年間で急激に増加し,400万トンの生産量を上げるに至った。この生産量は世界第6位(輸出量は世界4位)で,隣国のブラジル及びアルゼンチンと合わせると世界全生産量の約40%に相当する。今やパラグアイ国にとって,大豆生産はもっとも重要な産業である。輸出額が4億ドルを超えると言うだけでなく,生産及び流通に関わるパラグアイ国内の多くの人々に対する経済的な波及効果もまた極めて大きい。
また,パラグアイにおける大豆の生産力は高く,平年の全国平均収量がヘクタール当たり約3トンで世界の1位である。人々は,パラグアイこそが大豆生産に最も適した土地であると思うだろう。事実,パラグアイ東部に広がる主産地の大豆は,今年も生育が良く,高い収量を上げている。
しかし,このような栄華がいつまでも続くのか,危惧する点が無い訳ではない。開墾後わずか30年の肥沃な大地に頼り切っていないか,連作に近い栽培様式は新たな病害虫との戦いにならないのか,生産を支える技術開発が十分行われているか等々である。すなわち,持続的農業生産という視点が,パラグアイの大豆生産に備わっているのだろうかとの疑問である。
著者は,2000年5月から2002年9月,および2003年2月から8月にかけて,国際協力事業団から大豆育種の専門家としてパラグアイ国に派遣され,地域農業研究センター(CRIA)で働いた。この間,多くの友と語り合った話の中から,育種に関わる話のいくつかを此処に整理しておこうと思う。パラグアイの大豆生産が将来とも順調に飛躍するようにとの願いをこめて。
この本は,パラグアイで共に汗を流した若い研究者,育種家諸氏への応援歌である。テラロッサの大地に播かれた一粒の種子が,大きく育ち,豊穣の実りをつけることを願って止まない。
最後に,西語訳のお手伝いを頂いたMazae Sato,Ana Chiuki T. de Tanikawa さん,スペイン語の校閲を頂いたC/PのIng.Agr. Carlos Chavez, Ing.Agr. David Bigler,西語版の編集にご協力を頂いたPastor Kawamura,Javier Saucedoに御礼申し上げる。
参照:土屋武彦2003「パラグアイで何故大豆育種を行うか」大豆研究協力プロジェクトF/U,国際協力機構(JICA)- パラグアイ国農牧省(MAG-CRIA)
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