カラオケ化する世界 ジュウ・シュン フランテスカ・タロッコ 青土社
個人的に言うとカラオケは好きではない。素人の下手な歌をいくら宴会の二次会だからと言って強制的に聞かされるのはたまったものではない。この日本生まれのカラオケがいま世界中で流行しているらしい。本書は世界各地のカラオケ事情を調べたものだ。韓国、中国、東南アジアで人気だというのはなんとなくわかったが、北米、イギリス、ヨーロッパでも大人気というのは意外だった。カラオケルームの持つ閉鎖性や胡散臭さが西欧の雰囲気と合わない気がしたからだ。ところが、さにあらず。今のカラオケの機器は高性能、場所もオープンなステージで行われるらしい。キリスト教の伝道にも一役かっていると聞いて驚いた。
カラオケの効用は人間関係をフレンドリーにするところにあるようだ。最初は嫌がっていた人が、しばらくするとまるで別人のようにカラオケファンになる。一種の宗教的陶酔とでも言うべきものか。しからばこのカラオケを世界で最も閉ざされた国、北朝鮮へ持って行って南北融和を図ればどうかという話しが最後に載っている(実際の援助物資の中に入れられたようだ)が、向こうの軍歌ばかり歌われたのでは効果はゼロだろう。もちろん、甘く切ない恋の歌がベストだ。