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【判例】*賃料不払を理由とする家屋賃貸借契約の解除が信義則に反し許されないものとされた事例

2018年10月24日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

賃料不払を理由とする家屋賃貸借契約の解除が信義則に反し許されないものとされた事例
(最高裁昭和39年7月28日判決 民集18巻6号1220頁)


       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人(賃貸人)の負担とする。


       理   由
 上告代理人宮浦要の上告理由第1点について
 所論は、原判決には被上告人(賃借人)甲に対する本件家屋明渡の請求を排斥するにつき理由を付さない違法があるというが、原判決は、所論請求に関する第1審判決の理由説示をそのまま引用しており、所論は、結局、原判決を誤解した結果であるから、理由がない。


 同第2点について
 所論は、相当の期間を定めて延滞賃料の催告をなし、その不履行による賃貸借契約の解除を認めなかった原判決違法と非難する。しかし、原判決(及びその引用する第1審判決)は、上告人(賃貸人)が被上告人(賃借人)甲に対し所論延滞賃料につき昭和34年9月21日付同月22日到達の書面をもって同年1月分から同年8月分まで月額1200円合計9600円を同年9月25日までに支払うべく、もし支払わないときは同日かぎり賃貸借契約を解除する旨の催告ならびに停止条件付契約解除の意思表示をなしたこと、右催告当時同年1月分から同年4月分までの賃料合計4800円はすでに適法に弁済供託がなされており、延滞賃料は同年5月分から同年8月分までのみであったこと、上告人(賃貸人)は本訴提起前から賃料月額1500円の請求をなし、また訴訟上も同額の請求をなしていたのに、その後訴訟進行中に突如として月額1200円の割合による前記催告をなし、同被上告人(賃借人)としても少なからず当惑したであろうこと、本件家屋の地代家賃統制令による統制賃料額は月額750円程度であり、従って延滞賃料額は合計3000円程度にすぎなかったこと、同被上告人は昭和16年3月上告人(賃貸人)先代から本件家屋賃借以来これに居住しているもので、前記催告に至るまで前記延滞額を除いて賃料延滞の事実がなかったこと、昭和25年の台風で本件家屋が破損した際同被上告人(賃借人)の修繕要求にも拘らず上告人(賃貸人)側で修繕をしなかったので昭和29年頃2万9000円を支出して屋根のふきかえをしたが、右修繕費について本訴が提起されるまで償還を求めなかったこと、同被上告人(賃借人)は右修繕費の償還を受けるまでは延滞賃料債務の支払を拒むことができ、従って昭和34年5月分から同年8月分までの延滞賃料を催告期間内に支払わなくても解除の効果は生じないものと考えていたので、催告期間経過後の同年11月9日に右延滞賃料弁済のためとして4800円の供託をしたことを確定したうえ、右催告に不当違法の点があったし、同被上告人(賃借人)が右催告につき延滞賃料の支払もしくは前記修繕費償還請求権をもってする相殺をなす等の措置をとらなかったことは遺憾であるが、右事情のもとでは法律的知識に乏しい同被上告人(賃借人)が右措置に出なかったことも一応無理からぬところであり、右事実関係に照らせば、同被上告人(賃借人)には未だ本件賃貸借の基調である相互の信頼関係を破壊するに至る程度の不誠意があると断定することはできないとして、上告人(賃貸人)の本件解除権の行使を信義則に反し許されないと判断しているのであって、右判断は正当として是認するに足りる。従って、上告人(賃貸人)の本件契約解除が有効になされたことを前提とするその余の所論もまた理由がない。

 同第3点について
 所論は、被上告人(賃借人)乙及び同丙の本件家屋改造工事は賃借家屋の利用の程度をこえないものであり、保管義務に違反したというに至らないとした原審の判断は違法であって、民法1条2項3項に違反し、ひいては憲法12条29条に違反するという。しかし、原審は、右被上告人(賃借人)らの本件改造工事について、いずれも簡易粗製の仮設的工作物を各賃借家屋の裏側にそれと接して付置したものに止まり、その機械施設等は容易に撤去移動できるものであって、右施設のために賃借家屋の構造が変更せられたとか右家屋自体の構造に変動を生ずるとかこれに損傷を及ぼす結果を来たさずしては施設の撤去が不可能という種類のものではないこと、及び同被上告人(賃借人)らが賃借以来引き続き右家屋を各居住の用に供していることにはなんらの変化もないことを確定したうえ、右改造工事は賃借家屋の利用の限度をこえないものであり、賃借家屋の保管義務に違反したものというに至らず、賃借人が賃借家屋の使用収益に関連して通常有する家屋周辺の空地を使用しうべき従たる権利を濫用して本件家屋賃貸借の継続を期待し得ないまでに貸主たる上告人との間の信頼関係が破壊されたものともみられないから、上告人(賃貸人)の本件契約解除は無効であると判断しているのであって、右判断は首肯でき、その間なんら民法1条2項3項に違反するところはない。また、所論違憲の主張も、その実質は右民違を主張するに帰するから、前記説示に照らしてその理由のないことは明らかである。所論は、すべて採るを得ない。

 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。


    最高裁裁判長裁判官田中二郎、裁判官石坂修一、同横田正俊、同柏原語六

 

 

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