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【判例】*長男名義で保存登記をした建物を所有する場合と建物保護法1条の対抗力

2018年10月02日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

 

土地賃借人が該土地上に長男名義で保存登記をした建物を所有する場合と建物保護ニ関スル法律1条の対抗力の有無
(最高裁昭和41年4月27日判決 民集20巻4号870頁)


       主   文
 原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。
 被上告人(賃借人)は上告人(賃貸人)に対し、松山市子町丑番地宅地34坪2合3勺(実測111・1404㎡位)を、その地上に存する家屋番号同所第寅番卯、居宅木造セメント瓦葺2階建、下18坪3合1勺、上7坪2合9勺の建物を収去して明け渡せ。
 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。


       理   由
 上告代理人篠原三郎の上告理由について。
 建物保護ニ関スル法律(以下建物保護法と略称する。)1条は、建物の所有を目的とする土地の賃借権により賃借人がその土地の上に登記した建物を所有するときは、土地の賃貸借につき登記がなくとも、これを以って第三者に対抗することができる旨を規定している。このように、賃借人が地上に登記した建物を所有することを以って土地賃借権の登記に代わる対抗事由としている所以のものは、当該土地の取引をなす者は、地上建物の登記名義により、その名義者が地上に建物を所有し得る土地賃借権を有することを推知し得るが故である。

 従って、地上建物を所有する賃借権者は、自己の名義で登記した建物を有することにより、始めて右賃借権を第三者に対抗し得るものと解すべく、地上建物を所有する賃借権者が、自らの意思に基づき、他人名義で建物の保存登記をしたような場合には、当該賃借権者はその賃借権を第三者に対抗することはできないものといわなければならない。何故なら、他人名義の建物の登記によっては、自己の建物の所有権さえ第三者に対抗できないものであり、自己の建物の所有権を対抗し得る登記あることを前提として、これを以って賃借権の登記に代えんとする建物保護法1条の法意に照し、かかる場合は、同法の保護を受けるに値しないからである。

 原判決の確定した事実関係によれば、被上告人(賃借人)は、自らの意思により、長男甲に無断でその名義を以って建物の保存登記をしたものであるというのであって、たとえ右甲が被上告人(賃借人)と氏を同じくする未成年の長男であって、自己と共同で右建物を利用する関係にあり、また、その登記をした動機が原判示の如きものであったとしても、これを以って被上告人(賃借人)名義の保存登記とはいい得ないこと明らかであるから、被上告人(賃借人)が登記ある建物を有するものとして、右建物保護法により土地賃借権を第三者に対抗することは許されない。

 元来登記制度は、物権変動の公示方法であり、またこれにより取引上の第三者の利益を保護せんとするものである。すなわち、取引上の第三者は登記簿の記載によりその権利者を推知するのが原則であるから、本件の如く甲名義の登記簿の記載によっては、到底被上告人(賃借人)が建物所有者であることを推知するに由ないのであって、かかる場合まで、被上告人(賃借人)名義の登記と同視して建物保護法による土地賃借権の対抗力を認めることは、取引上の第三者の利益を害するものとして、是認することはできない。また、登記が対抗力をもっためには、その登記が少くとも現在の実質上の権利状態と符号するものでなければならないのであり、実質上の権利者でない他人名義の登記は、実質上の権利と符合しないものであるから、無効の登記であって対抗力を生じない。そして本件事実関係においては、甲を名義人とする登記と真実の権利者である被上告人(賃借人)の登記とは、同一性を認められないのであるから、更正登記によりその瑕疵を治癒せしめることも許されないのである。叙上の理由によれば、本件において、被上告人(賃借人)は、甲名義の建物の保存登記を以って、建物保護法により自己の賃借権を上告人(賃貸人)に対抗することはできない。

 なお原判決引用の判例(昭和15年7月11日大審院判決)は、相続人が地上建物について相続登記をしなくても、建物保護法1条の立法の精神から対抗力を与えられる旨判示しているのであるが、被相続人名義の登記が初めから無効の登記でなかった事案であり、しかも家督相続人の相続登記未了の場合であって、本件の如き初めから無効な登記の場合と事情を異にし、これを類推適用することは許されない。

 然らば、本件上告は理由があり、原判決には建物保護法1条の解釈を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから、原判決は破棄を、第1審判決は取消しを免れない。

 原判決の確定した事実によれば、本件土地が上告人(賃貸人)の所有であり、被上告人(賃借人)がその地上に本件建物を所有し、本件土地を占有しているのであり、被上告人(賃借人)の主張する本件土地の賃借権は上告人(賃貸人)に対抗することができないことは前説示のとおりであるから、被上告人(賃借人)は上告人(賃貸人)に対し、本件土地を地上の本件建物を収去して明け渡すべき義務ある。

 よって、民訴法408条1号、396条、386条、96条、899条に従い、裁判官横田喜三郎、同入江俊郎、同山田作之助、同長部謹吾、同柏原語六、同田中二郎の反対意見があるほか(略)、裁判官全員一致の意見により、主文のとおり判決する。

    最高裁裁判長裁判官横田喜三郎、裁判官入江俊郎、同奥野健一、同山田作之助、同五鬼上堅磐、同横田正俊、同草鹿浅之介、同長部謹吾、同城戸芳彦、同石田和外、同柏原語六、同田中二郎、同松田二郎、同岩田誠、同下村三郎

 

 

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