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最高裁判例
移転料の提供により借家法1条の2の正当の事由の補強条件になるという事例
(最高裁昭和38年3月1日判決 民集17巻2号290頁)
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人(賃借人)の負担とする。
理 由
上告代理人坂上富男の上告理由第1点について。
原審第6回口頭弁論調書によれば、被上告人(賃貸人)は所論訴状訂正の申立書により新たな解約申入をする趣旨であることを明確にしていることが認められ、かつ前解約申入と本解約申入に因る各請求は、その基礎に変更のないこというまでもない。所論は、原判決を正解せずこれに違法がある主張するものであって、採るをえない。
同第2点について。
本件訴訟の経過に照し、期限到来後即時に上告人(賃借人)の履行が期待できないこと明らかであるから、被上告人(賃貸人)は予め請求する必要あるものというべく、この点に関する原判決の判断は正当であって、この判断に到達した具体的理由を判示しなければならないものではない。所論は理由なく、排斥を免れない。
同第3点について。
原判決が、その認定した当時者双方の事情に、被上告人(賃貸人)が上告人(賃借人)に金40万円の移転料を支払うという補強条件を加えることにより、判示解約の申入が正当の事由を具備したと判断したことは相当であって、借家法1条の2の解釈を誤った違法や理由不備の違法は認められない。所論は独自の見解に立脚するものであって、採用しえない。
よって、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁裁判長裁判官池田克、裁判官河村大助、同奥野健一、同山田作之助、同草鹿浅之介
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