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地裁判例
更新料支払請求権は客観的に金額を算出できる具体的基準の定めが必要とされた事例
(東京地裁平成23年3月31日判決)
平成22年(ワ)第18362号 更新料請求事件
主 文
1 原告(地主)の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事 実
第1 請 求
被告(借地人)は、原告に対し、393万8170円及びこれに対する平成20年6月13日から支払済みまで年5分の割合(年365日の日割り計算)による金員を支払え
第2 事案の概要
本件は、原告(地主)において、被告(借地人)との間で締結した土地の賃貸借契約を更新するに当たり、約定の更新料及びその遅延損害金の支払いを求めた事案である。
1 前提事実(争いがない事実又は掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易認定することができる事実)
(1)原告(地主)は、昭和31年6月23日、被告の母親であるA(以下「A」という。)との間で、建物所有を目的として、原告(地主)の所有する別紙物件目録記載の土地の一部36.13坪(以下「本件土地」という。)を賃貸する旨の契約(借地契約)を締結した。
(2)原告(地主)とAは、昭和51年6月23日、賃貸期間20年(昭和51(1976)年6月23日~平成8(1996)年6月22日)として、上記(1)の賃貸借契約を更新することに合意した。Aは、この際、更新料として169万円を支払った。
(3)原告(地主)は、昭和63年12月14日、(借地人が建物を建替えるので改めて)被告(借地人)との間で、建物所有を目的として、次の約定により本件土地を賃貸する旨の契約(以下「本件賃貸借契約」という。)を締結した。被告(借地人)は、この際、更新料として350万円を支払った。
ア 賃貸期間 昭和63年12月14日から平成20年12月13日まで
イ 賃料 1か月1万6740円
(4)B(原告訴訟代理人。以下「B弁護士」という。)は、平成21年6月12日ころ、原告(地主)の代理人として、被告(借地人)に対し、書面(甲4)により、本件賃貸借契約の更新料として380万円の支払いを請求した。
2 争 点
被告(借地人)の更新料支払義務の有無
(原告(地主)の主張)
本件賃貸借契約では、契約更新に際し、契約当事者双方が協議の上で、賃貸人に更新料を支払うことが契約の重要な条件とされていた。
(被告(借地人)の主張)
否認ないし争う。本件賃貸借契約のおいて、契約更新に際し更新料を支払う旨の合意が成立したことがない。
第3 当裁判所の判断
1 証拠(甲1~5、8、乙2、原告代表者、被告)及び弁論の全趣旨によれば、
① 本件賃貸借契約締結の際に取り交わされた契約書(甲3)はもとより、前提事実(1)及び(2)の各契約締結の際に取り交わされた契約書(甲1、2)にも、更新料の支払いに関する約定は存在しないこと、
② 前提事実(2)の更新料は、原告(地主)が近隣の不動産業者から更新料の相場につき意見を聴取し、これを参考にして金額を提示し、Aがこれに同意したものであること、
③ 本件賃貸借契約を締結した時点では、前提事実(2)の賃貸契約の賃貸期間が7年以上存在したが、被告(借地人)が本件土地内の建物を建て替えることになったことから、改めて本件賃貸借契約が締結されることになったこと、この際に支払われた更新料も、原告(地主)が近隣の不動産業者からの相場につき意見を聴取し、これを参考にして金額を提示し、被告(借地人)がこれに同意したものであるが、これは本件土地の更地価格の約3パーセントに相当する金額(借地借家人組合註)であったこと、
④ B弁護士は、書面により前提事実(4)の請求をした際、更新料の算出根拠について、本件土地の更地価格(5600万1500円)の7割を借地権価格として算出し、その1割程度を目安にした旨の説明をしていたこと、
⑤ 被告(借地人)は、平成21年6月17日ころ、B弁護士に対し、「借地権価格に1割」の根拠が良く分からないとして、その説明を求め、さらに、被告(借地人)が考えていた金額とはかなりの乖離がある旨記載した書面を送付したこと、
⑥ その後、B弁護士と被告(借地人)は、3回にわたって更新料の額につき交渉し、その中で、被告(借地人)は175万円の支払をする旨の提案をしたこともあったが、結局合意には至らなかったこと、以上の事実が認められる。
以上の認定事実によれば、本件賃貸借契約締結の時点では、被告(借地人)においても、賃貸期間満了時に更新料の支払い及び額について、原告(地主)と協議することを念頭に置いてきたものと認められるものの、これらの事実から、原告(地主)と被告(借地人)との間で、賃貸借契約の更新に当たり、更新料を支払う旨の合意(黙示の合意を含む。)があったとまでは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。
なお、あえて付言するに、仮に、賃貸借契約の当事者間で更新料の支払につき合意がされたとしても、その法的性質についは種々の考え方があり得るところであって、更新料の法的性質からその算出基準ないし算出根拠が一義的に導かれるものではないから(この点で、賃貸借契約における賃料や、請負契約における請負代金等とは異なるといわざるを得ない。)、更新料の支払請求権が具体的権利性を有するためには、少なくとも、更新料支払の合意をする際に、裁判所において客観的更新料の額を算出することができる程度の具体的基準を定めることが必要であって、そのような基準が定められていない合意は、更新料支払請求権の発生原因とはなりえないものと解される。しかるに、原告(地主)と被告(借地人)との間で、更新料の額算出する具体的基準につき合意が成立していたことを窺わせる証拠はないのであるから(むしろ、上記①及び③ないし⑤の事実に照らせば、そのような基準は定められていなかったものと認められる。)、いずれにしても、原告(地主)の請求は理由がないことに帰する。
2 よって、原告(地主)の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第41部
裁判官 堂 薗 幹一郎
(借地借家人組合註)借地借家法17条の増改築許可の代諾許可の非訟手続で裁判所が提示する非堅固建物の建替承諾料は更地価格の2~5%の範囲 で決定される。全体の約85%が前記の範囲で立替承諾料は決定され、建て替えが許可される。
東京・台東借地借家人組合
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