庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

政治家の主導でバイオジェット燃料の量産目標を立てよ。

2015-10-16 | バイオ燃料・バイオマス

脱石油燃料の政策は、バイオ燃料を国産資源活用で、実現するのが目標である。

バイオ燃料のなかでも、「バイオジェット燃料」を最優先で開発することが、日本の消費者の利益にかなうのである。

しかし、日本政府はなかなか方針が定まらずに、この10年間くらいは、迷走したままで、成果を生まない【空白の10年間】であった。

経済産業省は、何も方針を決めることも出来ないで、時間を浪費しただけだ。

 

バイオ燃料による石油の代替策としては、10年前には自動車用のガソリンの代替燃料になる【植物由来のエタノール】が注目されていた。

しかし、エタノールは、ガソリンに比べて発熱量が8割くらいに低下する上に、吸湿して水分が悪影響を及ぼす。

その様な欠点があるので、混合するにしても5~10%程度を許容するのが限度である。

エコ燃料とした発売されたが、消費者の支持は得られずに、石油業界も商品の扱いには冷淡であったので、普及はほとんど進まない状態だ。

 

その上に、経済産業省、農水省、環境省が、補助金を出して、国内の植物資源を原料にしたエタノール製造をバラバラに研究開発の支援をしてきた。

しかし、どの研究も「量産コストをガソリン並」にできないで終わっている。

そのために、普及目標量を「ブラジルから輸入するエタノール」で埋め合わせする様な、おかしな政策になってしまった。

石油の輸入に依存しているのを、ブラジルからのエタノール輸入に切り替えているだけで、将来の展望もないままに、漂流してしまった。

 

まず最優先すべきは、「ジェット燃料」の転換である。

欧州諸国への[航空機の乗り入れ]には、2020年には、「ジェット燃料」を、植物由来のバイオジェット燃料」を、混合する燃料の使用が義務化されている。

この燃料を、日本国内で生産できない場合は、海外産の「バイオジェット燃料」を、大量に輸入しなければならなくなる。

しかも、現在の様な取組では、かなり割高の【燃料費用の負担】が必要になり、輸入に依存する羽目に陥り、貿易赤字の増加になってしまう。

航空会社は、燃料を製造する技術も事業も、見通しもつかないまま、石油企業の動きを傍観するだけで、官庁の動きに依存したままである。

政治主導が今こそ必要で、政府が普及目標を立てて先頭に立つべき段階だ。(続)


藻類からバイオ燃料を製造する一連の技術開発を具体化。

2015-10-15 | バイオ燃料・バイオマス

バイオ燃料の製造技術の研究開発では、『従属栄養型藻類』の生成する油脂を原材料にする方法が、研究段階では成功している。

これに着目して、支援する必要がある「技術分野は多岐に渡る」ので、読者の判り易い様に、課題別の研究開発を上げて、おさらいをしておきたい。

まず『従属栄養型藻類』には、現在の第一候補は、「オーランチオキトリウム属」の藻類で、この原種は、日本で発見されている。

この藻類を、さらに品種改良をして、「より効率よく油脂を体内に生成する」品種を創りだす研究が重要になる。

 

次に、油脂を大量に生成する品種が、摂取するエサを、選定する必要があるが、日本の近海で栽培できる「大型コンブ」に含まれる養分が適している。

そこでまずは、この種類の大型コンブを栽培する技術の改善が必要である。

この技術は戦前の日本での研究が積み重ねられて、世界で最も進歩していた。

それが、戦前の満州国時代に中国沿岸での栽培に技術移転したので、今では世界一の生産地帯は、中国になってしまった。

この研究の更なる発展を、日本で再開して重点化すれば、海洋産業の活性化にも貢献するキッカケになるであろう。

 

この大型コンブから、養分を抽出して、『従属栄養型藻類』のエサを製造する技術は、日本の化学工業、食品工業の応用研究で、重点的に実行可能である。

今の段階から研究者を育成し、量産技術の開発を進めれば、多くの発明が生まれて特許化できて、日本の知的財産になる。

ベースとなる技術は世界の一流レベルであるから、研究技術者に明確な目標を提示すれば、短期間でも大きな成果を生みだす可能性は大きい。

大量生産の目標計画を適切に掲げて、設備の開発研究を惜しまずに進めれば、量産コストの低減も実現出来る。

 

そして、藻類に餌を与えて油脂を体内生成する『増殖設備の開発』が、本格的に取り組まれる。

この設備は、太陽光を受光する必要はないので、増殖に最適なシステムに設定すれば良いので、大きな敷地面積を必要としない。

日本の様に土地利用の経費が高くても、量産コストを引き下げる努力が成果を生みだし、石油由来の燃料を凌駕する、量産コストの実現が可能になる。

経済産業省や民間企業の経営者には、この実現可能性が理解できる筈だが。(続)


研究開発の重点化を図る段階では日本発を重視をすべき。

2015-10-14 | バイオ燃料・バイオマス

日本の将来のエネルギー供給の【自給率向上】には、誰しも異論は出ないが、どの様な技術と事業化で、具体化するかは、全く迷走している。

それは、大手企業や中央官庁は、すぐに欧米の技術動向が気になって、その後追い的な研究開発に、人材と研究資金を回してしまうからである。

前回までに、このブログでは、『従属栄養型藻類』の増殖事業によって、「バイオジェット燃料の事業化」の促進を図るべきだ、と提案した。

しかし、この技術の内容を理解している関係者は、ホンの一部にしかいいない。

 

明治維新以来の悪弊で、何かと言うと【欧米の技術導入をありがたがる習性】が、日本人の身に浸みこんでしまっている。

日本で発案されて、日本のローカルな地域で研究されている技術は、軽視されがちになって、研究支援や人材の投入には、力を注がない傾向が強い。

欧米発の【光合成型藻類の栽培】による「バイオ燃料事業化」には、国や大手企業の支援が厚くなっている。

しかし、『従属栄養型藻類』の増殖事業化には、理解が進まないので、支援は薄いままで、せっかくの熱意とアイデアが生かされていない。

 

欧米技術の崇拝は、もうやめてもらいたいのだが、意識転換には国や有識者の率先垂範が実施されるべきである。

工業製品の分野では、どうしても明治維新以来の欧米に対する後進意識が、習い性になって意識転換を邪魔している。

だが、最近では日本発の文化的な分野や、日本古来の食文化などが、世界から高く評価され始めている。

和食の分野では、地域の知恵と伝統によって、欧米社会では追従できないレベルに達して、今では各国に和食文化が広がり始めている。

 

エネルギー技術の分野でも、太陽光発電の技術開発では、世界の先端を進んでいたのだが、経済産業省の大きな判断ミスで、産業化を失速させてしまった。

バイオ燃料の技術開発では、世界でもまだ未発達の技術段階にある。

日本で発想されて、国内資源を利用できる『従属栄養型藻類』の増殖で、バイオ燃料の産業化を、今こそ最重点において支援すれば、トップに躍り出られる。

欧米技術に対する劣等意識は、日本を活性化するには、ブレーキにしかならないのだ。

中央官庁と国政の責任を負う政治家は、日本発の分野を最重視すべきだ。(続)


日本の長期的なエネルギー自給率向上に貢献する政策を。

2015-10-13 | バイオ燃料・バイオマス

【光合成型藻類の栽培】による「バイオジェット燃料生産」について、どの様に評価するのが良いか、意見が分かれるところである。

筆者は、日本に技術導入をして工場建設して生産を開始しても、同様の技術を日照率の良い外国(オーストラリアなど)での生産には、負けると判断した。

量産コストがどうしても、割高になるのは、目に見えているからである。

例えば、「バイオジェット燃料」のオーストラリアでの量産価格が[80円/L]で実現したと想定してみよう。

その場合に同様の技術を日本に工場設置して量産すると、[80円/L]×1.4≒[112円/L]が、日本での量産価格になる。

 

その時期にジェット燃料価格が、[100円/L]であるとして話を進めると、オーストラリアで航空会社に「バイオジェット燃料」を販売すれば、利益が出る。

しかし、同じ技術で【日本で生産したバイオジェット燃料】は[112円/L]になってしまうので、赤字になってしまう。

太陽光の日照率の差異が1.1倍程度であるならば、[88円/L]程度に収まるので、採算性は成り立つのだが、それは無理な話である。

現実には、オーストラリアと日本の日照率の差異は、1.4倍も違いが自然の気候条件であり、企業努力や技術進歩で縮小することは不可能なのである。

 

日本で生産しても利益が出る量産価格は、[100円/L]以下が必須で、企業努力で引き下げができた場合には、同じ手法と技術で、オーストラリア生産品は、[72円/L]まで、引き下げられる。

同じ努力を投入し、同じ投資をするならば、日本よりも有利な地域に計画するのが、グローバル化した世界の潮流である。

市場競争を前提として「投下資本利益率」を重視する世界では、「バイオジェット燃料の量産」では、【光合成型藻類の栽培】の方法は、日本では成功しない。

 

いや、それでも日本では、「バイオジェット燃料の国産化」が、長期の国策として必要になっている、との意見が強くなって行くであろう。

その答えは、このブログで説明してきた様に、『従属栄養型藻類の増殖』事業の技術開発で、バイオジェット燃料の量産価格[100円/L]を達成することだ。

これには、海外での開発技術を導入する様な、安直な方法では実現しない。

国内産業として技術育成策を、計画的に実行しなければ実現できないのである。

その政策は、『バイオジェット燃料の固定価格買取り制度』の実現である。(続)


外国産のバイオ燃料に依存する将来展望で良しとするか。

2015-10-12 | バイオ燃料・バイオマス

バイオ燃料の生産の元になる油脂を、「光合成型藻類の栽培」によって大量生産する場合は、太陽光の日照率が大きく影響することは理解されたでしょう。

つまり、日本で生産して市場に供給するよりも、日照率の良好な外国の地域に工場を建設して大量生産する計画が、事業採算面で有利である。

だが読者の中には、それは「太陽光発電も日照率に影響される」と言われるひとがいて、日本でも事業採算が成り立っているではないか、と言うでしょう。

その場合は、「再生可能電力」発電事業と「バイオ燃料」の生産では、明らかに輸送の面で比較ができないことを、着目しなければならない。

 

電力生産の場合には、日本の様な島国では、外国から電力を輸入することはできないので、同じ様な気象条件の日本国内での競争になる。

日照率の良い地域と悪い地域の差異は、せいぜい、1.1倍程度しか違わない。

だから、日本国内での電力市場での競争力は、1割程度の差しか生まれないのだ。

ところが、太陽光発電設備の主要な部品である「太陽光パネル」の生産は、中国の様に電力費用が安く、人件費も土地代の安い国で生産している。

完成品を海上輸送してでも、日本製よりも安い「太陽光パネル」を、日本市場に供給可能なので、そのうち、日本工場での生産品を駆逐してしまうだろう。

 

バイオ燃料の場合には、日照率が有利な地域、例えば、「オーストラリア」の日照率の良い地域に「バイオ燃料工場」を建設すれば、量産コストを低減できる。

完成したバイオ燃料を、「日本に輸送して、日本製よりもは安い価格で供給」することが可能である。

それを承知でも、日本国内工場の建設にまい進した場合には、【外国生産のバイオ燃料】の輸入に関税をかけるしか、守れなくなる。

[TPP交渉]の経緯を見るまでもなく、これから新たな分野の国内産業保護の関税をかけることは期待できないので、自由市場競争になるのは必須だ。

 

最終的には、外国生まれの「光合成型藻類栽培のバイオ燃料生産」は、輸入品が日本市場で勝ち残るのである。

これは、今回の紹介した「イスラエル企業の新開発藻類バイオ燃料」の生産技術だけに限らない。

その様な理由で「光合成型藻類」は、エネルギー自給率の改善には貢献しない。

化石燃料由来(石油)のエネルギー輸入は減るので、[CO2排出]削減には貢献できるので、それで良いとするならば、日本人がお人好しすぎないか。(続)


脱石油のバイオ燃料製造技術は、海外企業の開発では。

2015-10-11 | バイオ燃料・バイオマス

エネルギーの自給率を高めるために、石油の代替にできるバイオ燃料の国内生産を実現する。

その技術は、日本の自前の技術にこだわる必要はないので、海外の企業が開発して方法を技術導入するのは構わない。

そこで、最近の情報で「イスラエルの企業が藻の栽培」の方法で、成功したと公表されている技術を、紹介しておこう。

この技術は特許を出願していて、技術料を支払うことで、導入は可能である。

 

イスラエルの[UniVerve社]は、藻の栽培とその化学物質の濃縮、分離を一貫処理できる技術プロセスを開発した。

この処理の過程で、食糧、資料、バイオ燃料などが製造され、現在の原油と同等の量産コストで可能であるとしている。

コスト予測では、1バレル50ドル以内で生産できるとして、革新的な技術であることをアピールしている。

「藻の栽培でバイオ燃料の原料の生成」に成功するには、栽培面積当たりで「最高の収率、最低のコスト」の実現である、と語っている。

 

現在は、アメリカ、ヨーロッパ、中国の企業と基本合意書を交わして、技術移転の計画を進めている。

確かの「藻の栽培で生成された油脂」を、有価物のバイオ燃料や各種のバイオ物質を精製する技術は、海外からの移転が可能である。

しかし、大元の【光合成による藻の栽培】は、太陽光の日照率に影響されることを忘れてはいけない。

イスラエルは、地中海に面した太陽光の恵まれた地域であり、日本の日照率に対して1.4倍程度の有利さがある。

 

イスラエルでは本格的な工場を建設中で、藻の栽培とバイオ燃料の量産コストが実証される予定だが、規模拡大の段階でコストが1.2倍程度に上昇する。

その技術を日本に工場建設した場合を想定すると、日照率が7割程度に低下するので、量産コストは1.4倍に上昇するだろう。

両方の要因を勘案すれば、バイオ燃料の量産コストは、1.85倍に上昇するのは確実で、日本での生産は割高になるのは覚悟しなければならない。

それでも、アメリカで始めたから、技術内容は信用できると思いこんで、技術導入に紛争するベンチャー企業が飛び込んで行くのが日本である。(続)


国内での量産が可能なバイオ燃料技術の実現に向けて。

2015-10-10 | 海洋産業問題

「バイオジェット燃料」の量産を実現し、民間企業の参入意欲を最大限に引き出す政策は、「固定価格買取り制度」が、最も適している。

参入する企業がリスクをとって、「技術革新に邁進する環境」を創ることで、トップグループになれば自由競争で利益を得られる可能性を高めているからだ。

ジェット燃料と同等の「バイオジェット燃料」を、最小の量産価格で提供できる企業を育成することが、普及拡大の基本である。

個別の技術開発を官庁が審査して、補助金で育成する方法では、拡大は難しい。

 

これは、理解されたとして、次の疑問点が出てくるでしょう。

「バイオジェット燃料」の量産には、『従属栄養型藻類』の増殖が最適とするが、他にも優れた方法がいくらでも開発できるのではないか、と。

今まで多くの企業が研究してきた「光合成型藻類」の増殖によって、原料となる油脂を大量に生産する方が、工程がすっきりして良いのではないか、と。

「光合成の効率が良い藻類」を、品種改良や遺伝子組み換えで創りだして、油脂の生成を効率よくできる研究開発の方が、良い成果を生むのではないか、と。

 

これらの見解は、未知の領域の技術であるから、実現の可能性を論じても、優劣の評価はできないのが実情である。

個別の技術研究の中身を「審査して補助金を支給」する方法では、成果を生みだす確率は保証できない。

だからこそ、目標の成果物(バイオジェット燃料の量産品)に対して、支援を保証して「インセンティブによる誘導策」とする『固定価格買取り制度』が、公平な研究開発を促すのである。

『従属栄養型藻類』からでもよし、「光合成型藻類」からでも構わないし、「陸上の栽培植物」からのバイオジェット燃料でも、公平に競争するのが良いのだ。

 

ただし、今までの経緯と世界の潮流を配慮すれば、食用の作物から燃料を作るのは、人道的な見地から外されるべきであろう。

また、日本の場合は、「エネルギー自給率改善」が大きな国策であるので、原料となる植物は、国内(領海内)での生産を前提とする必要がある。

生産技術を海外企業から導入することは、一向に構わないが、継続的に生産が維持できる方法であれば、日本の利益にかなうコトになる。

石油の輸入費用が大幅に削減されて、技術ノウハウ料を海外企業に支払うのは、

全く問題にはならない。

少しでも早期に量産化を実現するべきである。(続)


全量をバイオジェット燃料に転換できるのも意思次第。

2015-10-09 | 海洋産業問題

脱石油の開発促進を、「バイオ燃料の固定価格買取り制度」を創設して、民間企業の研究開発意欲を引き出す政策で、加速することは理解されたでしょう。

その成果を生みだす仕組みと技術は、『大型海藻類』を栽培して、「エサとなる成分」を取り出し、『従属栄養型藻類』の増殖で油脂を生成する。

抽出した油脂を、バイオジェット燃料相当のケロシン(灯油)に精製する。

この一連の工程を、生産効率が最良になる様に、各民間企業の創意工夫によって量産製品を供給する、競争環境を創るのである。

 

ジェット燃料を消費する航空企業は、ジェット燃料の従来の市場価格で買い取るだけなので、新たな負担金は一切ない。

ジェット燃料価格が100円/L.とした場合に、「バイオジェット燃料の量産価格」が180円/L.であったとしても、政府が買取る価格は200円/L.の固定価格で買取る制度であり、生産した企業は20円/L.の利益を確保出来る。

この契約期間を、例えば10年間としておくと、生産効率の改善によって、「量産価格の低減」が実現して、10年後には150円/L.まで下げることができた企業は、50円/L.の利益が得られる。

 

この様な制度であれば、民間企業の参入意欲を最大に引き出すことができて、さらに操業開始後も、「量産コスト低減の技術改善の意欲」は持続できる。

これで積極的に取り組む企業が日本中に多数生まれれば、日本で消費する『ジェット燃料の全量が国内生産で供給』することが可能になる。

もちろん、初年度として「政府が買取る価格は200円/L.」でも、量産技術の進化に伴って、毎年引き下げることを検討する。

例えば、2年目は195円/L.3年目は190円/L.・・・・、10年目は150円/L.とすれば、最終的には、100円/L.の市場価格に並ぶので、差額の付加金は必要がなくなる。

 

「バイオジェット燃料生産の収益性の魅力」が大きいほど、参入する企業が増えるので、生産量の拡大は目標以上にも実現するであろう。

2030年には、ジェット燃料の全量を「バイオジェット燃料」で国産化100%に近づけるのも、実現可能な目標になってくる。

これを、技術開発の課題毎に補助金申請の審査によって、中央の官僚が選別をして助成する方式では、少しは技術進化をするだろうが、拡大は覚束ない。

成果に対して報酬を約束する制度は、電力の[FIT]で実証済みである。(続)


既に実現性の高い技術で、最小の負担を公平にお願いする。

2015-10-08 | 海洋産業問題

日本の沿岸で大量に栽培可能な「大型海藻類」が、将来の「バイオ燃料の原料」になる可能性に、研究開発を集中すべきである、とこのブログで書いてきた。

それに賛同してもらえることは、歓迎したいことですが、ひとつ、付け加えたおきたい懸念があります。

「大型海藻からバイオ燃料」と言うと、バイオ燃料の原料になる油脂を、海藻の体内に効率よく作りだす「品種の開発」に、進みだす研究を始めてしまう。

この研究課題は、確かに最終的には必要な課題ですが、あまりにも、時間がかかる恐れと、膨大な研究費が必要になる懸念があるテーマです。

 

初めに書いてきた様に、「脱石油燃料」の開発は、早急に実現しなければならなり、「実践的な開発が必要」になっている。

今から、品種改良や新品種の発見を試みる様な、何時になったら実現出来るか不透明の研究に、時間とお金をつぎ込む余裕はない段階である。

その点で、「大型海藻類からエサを抽出」する原理は、既に研究が実現している。

そのエサを『従属栄養型藻類』に与えて、バイオ燃料の原料となる油脂を体内に生成する品種(オーランチオキトリウム属の藻類)が、実在している。

あとは、この一連の工程を組み合わせて、効率的な量産体制を組みたてることにあるので、研究費や時間は、最小で済むことが特徴である。

 

それが理解されれば、後は民間企業が「積極的に取組む意欲」を引き出す様に、政府が「インセンティブを明確にした政策」を打ち出せばよい段階である。

そのインセンティブとなる政策としては、生産された成果物「バイオジェット燃料」を、あらかじめ『設定された価格で買取り保証する制度』である。

これは「再生可能電力の固定価格買取り制度」で、今では常識になった、「成果物に対するインセンティブ政策」として、効果的であることは実証されている。

その買取り保証価格と市場での取引価格の差額分を、公的な資金で賄うには、財源が必要になるが、それには、「ジェット燃料賦課金制度」を活用する。

 

この賦課金制度は、ジェット機利用者に対して、公平に負担をお願いすることで、もっとも負担感の少ない、公平性の高い財源調達方式である。

国民から税収として集めた税金を投入することは、今の様な財政赤字の体質を助長することになるので、やるべきではない。

ジェット機利用者は、日本の中では、比較的に収入にユトリのある層が大半なので、増税感や負担感が少ない層が支える仕組みである。(続)


大型海藻類をバイオ燃料の源泉にするのが日本の選択だ。

2015-10-07 | 海洋産業問題

日本でバイオ燃料を製造する仕組みとして、「大型海藻を原料」とする理由には、豊富な沿岸があることによる。

このブログで説明した様に、「光合成型藻類」を原料にするのは、陸地が限られていて、太陽光の日照率が低い地域では、不利な条件が重なっている。

日本での原料は、海洋で栽培が可能な大型海藻を選択するのが、もっとも賢いやり方である。

まず第一には、大型海藻は、全長が10m以上にも成長するので、太陽光を効率よく利用できる最大の海洋植物である。

 

さらに第二には、植物の栽培には、継続的な養分の補給が必須であるが、日本の近海には、養分を豊富に含んだ海流が巡ってくる。

その上に、日本の陸地で廃棄される「冨栄養の河川水」が継続的に流入して、大型海藻の成長を促進させる。

この環境下で、太陽光の日照率が低い悪条件は、ほとんど問題にはならない。

栽培地の広さは、複雑な沿岸形状によって、栽培に適した海洋面が日本の近海に豊富にあるので、困ることはない。

 

「バイオジェット燃料」の製造には、『従属栄養型藻類』の増殖事業が最適で、現在の実績では、「下水処理時に分離される養分をエサ」にしている。

このエサとなる養分を、食品関連の廃棄物から分離する方法を、実現する必要があるが、この方法では将来の大量生産では、賄いきれない。

そこで、今から着手しておく研究開発は、日本の沿岸で大量栽培が可能になる「大型海藻類」の生産効率を高める研究を進めるのが良い。

戦前は『日本は大型海藻(コンブ)類』の栽培技術では、最先端を進んでいた。

その技術を中国に移植して、今では、中国沿岸部では1000万トン以上の生産規模に成長している。

 

この様に日本の沿岸部での栽培を、各地で効率よくできる様にすれば、『従属栄養型藻類』の増殖用に必要なエサが足りなくなることはない。

現在は、広島大学の秋教授が、コンブから抽出される養分を「エサに加工する研究に成功」している。

原料となる昆布から30%のエサ養分を抽出できることを実証して、他の海藻類からの可能性も研究に着手している状況である。

この先は、本格的に大量生産に結び付く、技術開発に邁進する段階である。(続)


石油依存の不安定状態からバイオ燃料の輸入依存に転換か。

2015-10-06 | バイオ燃料・バイオマス

輸送用燃料の脱石油の動きは、日本政府や石油業界に任せていては、今後の10年、20年経っても、まともな量産品が開発出来ない。

アメリカや欧州諸国の「バイオジェット燃料」、「バイオディーゼル燃料」の開発技術が進んで、量産品を輸入する段階まで、このママで行くつもりの様だ。

その時期になってから、やっと、石油の輸入依存が少しは緩和される様に、アメリカ産「バイオジェット燃料」を輸入するつもりの算段であろう。

「バイオディーゼル燃料」についても、ヨーロッパの技術開発の成果が見えてから、輸入することしか、頭にはない様である。

 

だが石油資源は、政情が不安定な中東地区から大半を輸入しているので、石油や天然ガス輸入が途絶える事態が想定される。

安定した国からの輸入(アメリカ、ヨーロッパ諸国)に切り替える意義はあるが、国内生産の比率を上げる様にしないと、本当の安全保障にならない。

アメリカの石油自給率は、39%でオイルシェールによる開発が進んで、今では50%を超える勢いである。

安全保障の戦略上は、100%超えるまでは、石油代替のバイオ燃料を海外に輸出することはないと想定した方が妥当である。

 

ヨーロッパ諸国の石油自給率は、ドイツが4%、フランスが2%である。

今から50年間は、石油代替のバイオ燃料製造をしても、輸出は絶対にしない。

ということは、安定した国からのバイオ燃料輸入はあり得ない、と見るべきだ。

つまり、バイオ燃料の原料となる作物を大量に栽培できる国に、「バイオ燃料の製造工場」を設置して、そこからの輸入に依存することになる。

この地域がどこになるかは、今のところ定かではないが、安定した地域になるとは限らないで、局地紛争が起きる可能性は十分に想定される。

 

つまり、石油の代替燃料が開発されても、海外に生産工場を設置する構想では、不安定な中東地域から、少しは不安の少ない地域からの輸入依存になる。

長期間をかけて、安心度が少し向上する様な「エネルギー戦略」を立てるのは、賢い戦略とは言えない。

これから本格化する「脱石油燃料戦略」を構想するならば、原料の段階から国内で生産されて、一貫して「国内に製造工場を設置」するのがベストである。

それには、日本の国内で大量に入手できる「原料作物(植物)の栽培計画」が、基盤になるのだ。

日本の近海で栽培できる「大型海藻」は第一候補である。(続)


輸送用エネルギー自給率の改善に最も不熱心な国は日本。

2015-10-05 | バイオ燃料・バイオマス

日本の輸送用機器の燃料は、大半が石油由来で「原油自給率」は0%である。

一部の自動車では、天然ガスを使用しているが、この自給率もわずか4%で、国際紛争でも起きれば、たちまち、乗用車、トラック、船舶も停止してしまう。

ジェット機も国内線は運航停止になり、代替の移動手段(鉄道など)に、依存せざるを得ない。

国際線も、日本に来航する場合は良くても、かえりの燃料が補給出来ないから、日本への航空便も休止になるであろう。

 

万が一の事態がおきても、国の社会活動、経済活動の最低限を確保出来ることが、中央政府、自治体の最大の責任である。

石油系燃料の輸入が途絶える事態が発生した場合には、あらゆる努力を払って、対応策を講じなければならない。

現在は、石油ショック時の教訓によって、石油系企業に「90日間以上の備蓄」を義務付けているが、異常事態が90日以内に解決するとは限らない。

それ以上に長引いた場合は、日本社会の混乱は計り知れない状態になる。

 

安倍政権は、中東、イランからの石油輸入が途絶える様な「ホルムズ海峡の機雷封鎖」などの事例を上げて、集団的自衛権行使の安保法案を強行採決した。

それほどに、石油の輸入確保は、日本の死活問題につながるとの危機感を持っているのに、石油燃料の代替技術の開発には、まったく真剣さがない。

異常事態が起きてから、「石油代替燃料の開発」に取組んでも、まったく間に合わないのは明白である。

これが10%程度でも自給率向上の『バイオ燃料』の製造実績があれば、大増産の支援をすることで、備蓄石油の枯渇期限を引き延ばすことが可能である。

 

自衛隊を紛争に巻き込まれる危険性を覚悟する決断をする割には、日本の長期的なエネルギー確保と自給率の大幅改善策を、軽視し過ぎている。

まずは、量産コストが少し高い段階でも良いから、数%程度の「バイオ燃料の義務付け」を実施すべきである。

自動車用としては、「エタノール燃料」の混合ガソリン[E10](10%混合)を、普及させることが実施されている。

航空機燃料では、何も実行していないので、「ジェット燃料賦課金制度」を早急に実現し、その財源を利用して、バイオジェット燃料製造を進めるべきだ。

生産実績をかさね、量産コストの評価しながら、技術革新を進めるのだ。(続)


華やかで表面的な話題ばかりを追いかける日本の実情。

2015-10-04 | バイオ燃料・バイオマス

「光合成型藻類」が生成する油脂を原料として、バイオ燃料を大量生産する場合には、「広い土地面積と有利な日照率」が必須の条件である。

これを軽視して、技術力さえあれば「大量生産は可能」だと信じて、研究開発に大金を投じても、国内生産を継続することは無理になる。

途中の段階で、【有利な地域に生産拠点】を移して、その国の利益になる様な制度も元に生産する運命にある。

日本の公的な資金を使って開発していても、日本の国民の利益につながるとは限らない状況が、起きるリスクは付きまとうのだ。

 

それ故に、国の重点施策としては、国情に適した『従属栄養型藻類』が生成した油脂を原料に、バイオジェット燃料の大量生産の実現を実施すべきだ。

その第一段階に、東北大学、筑波大学、仙台市の共同プロジェクトが、2012年から取り組んだ実験に成果を生んだことは、注目すべきことである。

しかし、マスメディアの扱い方は、『脱石油のバイオジェット燃料』の華やかな話題ばかりに視線が注がれて、それを実現する「地道な研究成果」を扱わない。

メディアは、表目的な目立つ話題ばかりを優先するので、【「下水処理の有益物」を利用したバイオ燃料】には、関心をよせないのだ。

 

また、多くの人が食品廃棄物に関係しているのだが、あと始末には無頓着で、「有益な資源」を再利用しての、「従属栄養型藻類」の研究開発には無関心だ。

これを、補助金で支援して「バイオ燃料製造」の原料に利用する事業化に、開発資金を投じる企業も、見あたらないのが現状である。

20年以上も前から、「廃食油の収集と精製」で、「バイオィディーゼル燃料」に製造する事業が実験的に進められている。

しかし、食品関係の廃棄物を収集するシステムがないので、収集コストの削減ができない状況では、普及拡大がむずかしい。

 

そこで、このブログで紹介してきた「大型海藻類の大量栽培」によって、『従属栄養型藻類』の増殖に必要なエサを供給する仕組みが、期待されるのだ。

家畜類(牛、豚、鶏など)の酪農では、大量にトウモロコシなどの穀物類をエサに与えるのは、常識である。

この方法にならって、『従属栄養型藻類』の増殖事業に、大量に栽培した「大型海藻類」から製造したエサを与えることで、バイオ燃料になる油脂を生産する。

太陽光エネルギーを必要としないので、設備の土地面積は少なくて済む。(続)


財源創出の次は国内でのバイオジェット燃料支援策を。

2015-10-03 | バイオ燃料・バイオマス

ジェット燃料の新技術開発促進には、公的な支援策が必要であり、その政策費用の財源は、「ジェット機利用者」に負担してもらうことは理解されたでしょう。

では、どの様な方法で製造される「バイオジェット燃料技術」を、支援すればよいのか、その説明が必要ではないか、との要求が出てくるでしょう。

それは、「日本でのバイオジェット燃料製造方法」は、『従属栄養型藻類』の大量増殖によって、藻類が体内に生成するオイルを原料にする方法です。

このブログで、繰り返して説明してきましたが、何故、それに重点にするのか、理由がまだ納得がいかない人も多いでしょう。

 

そこで、今までの石油代替燃料の開発と代表的な方法の経緯を整理して、要点の説明を加えて理解の助けにします。

まず初めに、石油代替燃料の製造が大規模に進められたのは、ブラジルのサトウキビから作る「バイオエタノール」です。

お酒を作る発酵の方法で、砂糖きびの糖分をアルコールにする方法で、今や大量に生産されて、自動車用燃料として、ブラジルでは普及しています。

これにならって、アメリカでは、トウモロコシから作る{コーンエタノール}が、一部で普及が進んでいる。

 

しかし、今以上の増産をすると、食糧の栽培と競合するので、途中から促進を止めて、いまでは、多年生の草類から「セルロース成分を自動車燃料化」する研究開発が支援されている。

この研究は2005年頃からアメリカ政府は力を入れたが、有効な大量生産技術の見通しは、まだついていない状態で、今後も量産コスト低減は難しい。

そこで、アメリカ政府は、「光合成する藻類が体内に生成する油脂」成分を原料にする方法に、方針を転換している。

2009年頃からは、エクソンモービル社などの大手も、研究を継続している。

 

アメリカの様に、太陽光の恩恵を有利に得られる「大陸国家」であれば、この「光合成型藻類」の品種改良で、量産コストの引き下げが可能であろう。

しかし、日本の様に太陽光を受ける土地面積が限られて、【日照率が低い地域】での事業は、量産コスト削減が目標に届かない懸念がおおきい。

日本での「藻類からのバイオ燃料」を研究開発している民間企業も、最終的には日本国内での生産は、諦めざるを得ない状態になるだろう。

海外に生産移転では、エネルギー自給率の改善には貢献出来ないのである。(続)


電力事業の脱石油で成果を生んだ政策をジェット燃料でも。

2015-10-02 | バイオ燃料・バイオマス

日本での「再生可能電力の普及拡大」が急務であったのに、2000年代初頭には「経済産業省の消極的な研究助成金」のバラマキでは、成果が全くなかった。

それが、2012年7月の『再生可能電力固定価格買取り制度』が発足してから、

民間企業の参入意欲が一気に高まって、過熱ぶりの設置計画構想が巻き起こり、経済の活性化にも大きく貢献している。

電力消費者に課した【電力1kWh当たり賦課金】の仕組みで、「公平に財源を生み出す政策」が、如何に効果的な経済への貢献になるかの良い実例であろう。

 

一方の電力利用以外の「脱石油政策」は、従来の枠で「研究助成金」を国庫からの税金を充てる進め方では、全くと言って良いくらいに成果は皆無である。

アベノミクスの第三の矢に相当する様な、「将来の新産業となる分野」であるのに、安倍内閣の無策と経済産業省の怠惰によって、この15年間は眠ったままだ。

与党でも野党でも良いから、日本の将来を担う「脱石油燃料新産業」を育成する目標があるならば、今すぐにでも【ジェット燃料賦課金】の政策を実現すべく、行動を開始するべきである。

この政策は与野党の対立を招く様な要素は全くないから、実現は可能である。

 

この政策を実現しようとすると、経費を負担させられる「ジェット機利用者」が、不平を言い出すであろう。

「なんで、ジェット機利用者だけに負担をさせるのか?」

「一般財源の中から、予算を割り当てれば良い筈だ。財務省が解っていない。}

「国の財政画が慢性的赤字なのは、役所仕事の非効率のせいだ。」

「役人の非効率のしわ寄せを、ジェット機利用者に回すのは納得ができない。」

「そもそも、石油代替の燃料を研究開発するのは、石油系企業の責任ではないのか。」など、など。

 

でも、日本の官庁の改革は100年がかりの大事業で、アノ小泉内閣の強権を持ってしても、ホンのわずかしか、改革は進まないくらいに難しい。

石油系企業は、本来の研究開発に回す費用と人材を、1990年代からの【失われた20年間】で、ほとんど、余力のない状態にまで削減してしまった。

現在の経営陣は、自分の領域の仕事を守ることだけで、次世代の「脱石油燃料」を開発する責任は、トウの昔に放棄してしまった。

やはり【ジェット機を利用し続ける利用者】に理解をもらって、1%程度の負担をお願いするのが、最も実現し易い、財源調達の方策ではないでしょうか。(続)