庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

健康的で希望の持てる生活への政策力は、新政権に期待できるか。

2010-01-31 | 暮らし・健康問題
この4カ月で日本の将来が描けるようになったであろうか?
2009年の前半はひどい状況に落ち込み、時の政権はなすすべもなく、従来型の無駄な予算の積み上げをして、バラマキによる景気回復のみを目指していた。
国民は行く先を見失ったまま、毎日の暮らしをしのぐことに心を奪われ、どのような将来を目指すのかという、大事なことを置き去りして後回しにしてきた。

とにかく、何かおかしいと感じる国民が大半であり、とにかく政権を交代させて見ようという意思で、総選挙の結果が示された。
民主党のマニフェストは、それなりの意味があったが、案の定、現実には実現できない壁が次々と見えてきて、実行力の不足が目立つようになっている。
そして官僚依存体質から脱するとしているが、具体策となると従来型の官僚的な政策しか出てこない。

鳩山首相の施政方針演説は、「いのちを守る」の言葉で埋め尽くされた。
やさしい言葉を選んで訴えたい気持ちは出ているが、中身は抽象的な願望を述べているにとどまり、そのために果敢に実行すると宣言出来る部分は殆どなく、決断力の程度には疑問を持たざるを得ない。
「働くいのちを守りたい」。そうだが、どうやって雇用機会を増やし収入増加を図るのか?
「人間のための経済・再び」。それは日本型企業モデルを提案していくと言うが、その中身はどうか?
「新しい公共」によって支えられる日本。この動きを支援すると言っても、どうやっていくのか?
「子どものいのち」、「医療と年金」、「雇用を守る」。そう。どれも大事。問題はその費用をどうする。

願望としては誰にも依存がない「将来への目標・展望」であるが、国民が知りたいのは、それをどのような具体的な政策で実現に近づけて行くか?である。
特に「いのちのための成長を担う新産業の創造」を目指して、昨年末の成長戦略の基本方針を提示したと言うが、その中身は殆ど具体性がない。
また、「地域経済を成長の源に」として、「地域主権の確立」を目標とするが、具体策は地方交付税を1.1兆円増額すると言うだけである。
ひも付き補助金を廃止し、出先機関の抜本的な改革をする「地域主権戦略大綱」を策定して進めるとしているが、その中身は一切、説明されていない。

政権交代前の自民党政府は、すべて官僚が作った省益優先の政策ばかりであったから、それから見れば、進んでいるかもしれない。
だが、日本の置かれた現状は願望を上げているだけでは済まないくらいに逼迫している。
グローバル化の潮流の中で、大企業の大きな投資対象は殆ど海外に向かっている。
国内の消費分野は、値下げ競争に明け暮れる状況に追い込まれ、働く人の収入は下がり続ける。
高度成長時代に投資したインフラ関連は、ことごとく老朽化していくのに、その置き換えの費用が出ない状況である。

役人の天下りや無駄使いを根絶するのは当然として、その先の財源と効果的な予算の具体策を提示できなければ、何事も願望だけに終わる。
いのちの短い内閣にならないように・・・しっかりせよ!

新幹線の技術は世界の最先端。だが未完成の段階。

2010-01-30 | 交通問題・自動車
日本の技術で世界に誇れる領域は多くあるが、高速鉄道技術においては東海道新幹線の開業から、営々と築き上げてきた、今では世界中が注目する21世紀の交通インフラとなっている。
アメリカにも輸出するシステムとして、これから世界に向けて大きく飛躍する段階であるが、
残念ながら、万全の中身とはなっていないようだ。

昨日の東海道新幹線の停電による3時間半の停止で、15万人が影響を受けたという。
この15万人は、直接足止めを受けたり、予定を狂わされた人の数であるが、間接的に被害を受けたり損害が起きたり人まで入れると、その10倍程度に及ぶであろう。
鉄道と言う基幹インフラを担う組織は、それだけ大きな役割と責任を負っている。

事故の原因と思われるのは、電力を列車に供給する架線と保持して水平に保つ役割をする補助吊架線が切断したことによる停電である。
この補助吊架線は、10日に一回点検をしているが、10日間のうちに急に切れる状態になったわけではなく、徐々に劣化している箇所が、現在の点検方法では見落とされたと見るべきである。

時速300km/hでの安定した運行を継続できるシステムは、日常の保守、点検が欠かせないが、
ともすると、点検作業の様な裏方の業務は、日が当らない領域で予算も削減されがちで、技術を進化させることが遅れがちになる。
JR東海の組織全体において、保守作業や予防点検にかける責任の大きさを軽視する傾向がなかったか、おおいに見直すべきである。
リニア新幹線に技術の未来をかけることも意義があるが、もっと、足元、いや、頭上の架線に注意を払うようにするのが、本来の鉄道交通事業者の使命であろう。

それと、鉄道事業関係者に一度、聴いてみたいと思っていたことが、今回にも起きている。
東海道新幹線の品川―小田原間が停電してストップした影響が、区間以外のところでも運転が影響を受けてしまい、新大阪までに及ぶという。
これはシステムとしては、大変に脆弱なものとなっている。
運行ダイヤに乱れが出るのはやむを得ないが、少なくとも半分の列車が、速度を落としてでも運行を継続出来る仕組みに出来ないものか?

これは、東京の通勤線においても、一部も電車が事故で止まると、その路線の全線が停止してしまうトラブルが頻繁に起きている。
鉄道の特質上、全線がひとつのシステムになっているので、1か所のトラブルは全体のトラブルとなるのは、当たり前と思い込んでいる。
鉄道関係者は、トラブルが起きても、被害はその区間の近辺にとどめ、離れた地域では運行が継続できるように、システム全体を見直すべきである。

航空機や自動車交通システム、船舶システムは、事故やトラブルがあっても、影響は一部にとどまり、被害が広がらない仕組みである。
鉄道ではできないと言うのではなく、必要性があるのだから、技術進化に取り組むべきである。

雇用が一番優先する政策である。米オバマ大統領。 

2010-01-29 | 経済問題
アメリカのオバマ大統領が2年目の施政方針演説で、雇用の改善を一番の政策に挙げた。
グリーンニューディールと呼ばれる、化石燃料からのエネルギー転換政策はもとより、自動車一辺倒の政策からの転換として、全米に高速鉄道を普及させる政策を加速するなど、政府で可能なことは、優先的に実施に移すとしている。

就任の一年目は、アメリカでは遅れている「国民健康保険制度」の実施に向けて、低所得者に恩恵をもたらす、制度を実現しようとして努力を重ねていた。
これは、アメリカにおいての自助努力を基本とする国柄から、なかなか、合意が得られずに苦戦している。
働いていない他人を救うのに、自分の懐からのお金を回したくない、という心理が邪魔をする。
それよりも、まず自分の力で働き、少ないながらも一定の収入を確保することが、先に必要だという感覚である。

この1年以上にわたって、アメリカの失業率は10%付近で高止まりをしている。
積極的な雇用促進政策をとっても、高い失業率は改善の兆しはみられない。
失業率の改善、新規雇用の創出面において改善が見られないので、オバマ政権の支持率も低下の一途である。
雇用環境の改善が最優先という判断は、世界の潮流の中でも必要なものであろう。

一方、日本の新政権においては、その判断と政策はどうか。
無駄な公共事業や、役人の天下り団体の既得権構造に踏み込んだ見直しは、国民の支持を得て、一定の成果も上げつつある。
しかし、これらは雇用の創出や、失業率の改善には寄与しない。
企業活動の活性化による新事業の創出や、国内需要の喚起による消費増加が必要であることは、だれにも解っている。

経済学者は、お金をもっと大量に市場に回せば、需要が増えるし設備投資が増加して、景気は上向きになると、お定まりの通説を言っているだけである。
アメリカの政策は、その点では具体的な投資対象や、政策を次々に打ち出して、企業の研究投資や、新事業の設備投資を誘導する政策をとっている。
アメリカの実用主義(プラグマティズム)の姿勢が根づいている社会だから、具体的な政策になって実行に移される。

日本の中を見回しても、新規の雇用を生み出すような「新産業」の萌芽が、ほとんど見られない。
一部に見えていても、既存の産業の陰に隠れて、研究・開発資金は、一向にそちらには向かない。
向き始めても、それを摘み取る力の方が大きくて、役所は強者の味方をするのが通例である。
今までの10年間は、再生可能エネルギーの代表である「太陽光発電」「風力発電」の新産業の芽を摘むことばかりをしてきた。
このままでは、失業率は6%を超えて、限りなく上昇していくであろう。

鳩山内閣の友愛精神では、新産業を興し雇用の創出を生むことは無理であることは明確だ。

日本の経済成長の芽を摘んできた経団連と経産省。

2010-01-28 | 経済問題
2009年の世界の経済は大幅な落ち込みになり、特に先進国では一般国民の生活を圧迫した。
新興国は旺盛な需要に支えられて、いち早く経済成長路線に転じている。
しかし、先進国では従来型の需要は回復せず、落ち込んだままになって、経済停滞から脱出する模索が続いている。

その様な中で、再生可能エネルギーの主力である「太陽光発電」の設備への投資は活発で、
2009年の世界での設備は2008年に比べて、9.1%の増加になった。
太陽光発電への投資は大きく減少すると予想されていたが、予想外の成長を記録したのは、太陽光発電市場が新たな産業の成長エンジンとしての地位を固めつつあることを意味する。
2010年については、景気回復や電池モジュール価格の下落、ドイ ツ/米国など主要市場の拡大などにより引き続き成長し、設置容量は前年比38%増となる見通しである。

また、気候変動対策に消極的であったアメリカでさえも、太陽光発電設備への投資は活発になっている。
米小売り最大手ウォルマート・ストアーズは、米カリフォルニア州にある物流センターに同社最大の太陽 光発電プロジェクトが完了したと発表した。
物流センターの太陽光発電プロジェクトは、敷地内に5300 枚の太陽光パネルを設置した。
同プロジェクトは、2007年5月にウォルマートが初めて発表した太陽光発電プロジェクトの一環で、カリフォルニア州およびハワイで最大22店舗のウォルマート、物流センターおよび 傘下のサムズ・クラブの電力を太陽光システムで賄うというもの。
ウォルマートは自社店舗で使用するエネルギーを、100%再生可能エネルギーで賄う目標を掲げており、物流センターの太陽光発電プロジェクトの完了は、この目標の達成に向けた重要な一歩だと語っている。

世界の先進国やアメリカが、脱化石燃料社会への目標に向けて走り出しているのに、日本の産業界では、特に経団連を中心とする「旧時代産業」(化石燃料を前提として成長してきた産業)の経営陣が居座っている。

既に知られているように、「太陽光発電」の技術やシステムにおいては、日本は1990年代から2001年まで、世界一の設置量を維持したが、不適切な政策のために、ドイツに抜かれて、累積の設置量でも2005年には、世界一から陥落した。
次世代の成長エンジンとなる産業を、わざわざ成長の芽を摘んでしまった「経済停滞の責任者」は、どこに行ってしまったのか?
このブログには、何度も経緯を書いて説明してきたので、すでに解ってもらえると思います。
エネルギーの主力を化石燃料に依存することにこだわり、原子力発電の優遇をゴリ押ししてきた「経済産業省」と「旧時代産業」を代表する「経団連」特に電力業界の守旧勢力である。

自社で使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーに向けて転換していくと宣言する企業が現れないのであろうか。
政権は変わったが、エネルギー政策の転換は、まだ始まっていない。
掛け声だけは聞こえるが。

次世代に負の遺産を残した20世紀のアメリカ。日本は? 

2010-01-27 | 核エネルギー・原子力問題
20世紀の科学技術は目覚ましい成果を上げた分野があるが、半面では、21世紀を通じて負担を強いる「負の遺産」も大量に残している。
一番大きい負の遺産は、核兵器による放射能汚染による後遺症と安全な処理策である。
そして、世界はまだ核兵器の増加を食い止めることが出来ないでいる。

アメリカのオバマ政権は、核兵器の廃絶に向けて動き出しているが、その背景を伝えるドキュメンタリーがテレビ放映される予定である。
知人から紹介された内容を下記に引用しておきます。

<シリーズ 就任から1年・オバマのアメリカ>   【NHK BS1放送予定】
核汚染大陸 ~アメリカ 核兵器工場の証言者たち~  10年1月29日 金曜日 午後9:10~10:00

『去年、アメリカ大統領として初めて「核兵器のない世界を目指す」と宣言したオバマ大統領。
その足下で、アメリカは「核の負の遺産」に苦しんでいる。
1945年の原爆実験から65年間に、これまで15を越える州に、300以上の核兵器製造施設が作られ、あたかも「核の巨大工場」となったアメリカ。
核施設で働いてきた人々は、数百万人。
そして15万人に及ぶ脳腫瘍やガンなどの深刻な健康被害者が生まれている。
そうした中で、上は所長クラスから、末端の作業員まで、具体的な「核兵器製造の実態」を語り始めた。
施設のあった場所は、放射能だけでなく、ベリリウムやPCBなど有毒物質で汚染されている。
政府は汚染除去作業に着手したが、推定で一日10億円以上の巨費が今後70年間にわたって必要とされる。 
「全米を核工場にした」65年間。アメリカはどうなったのかー。
番組では、口を開き始めた労働者や研究者を訪ね、その証言と資料を基に、これまで安全保障の名のもと秘匿されてきた核兵器製造の実態に迫る。
核はアメリカをどうしたのか、その呪縛にもがく超大国の現実を描く』

この負の遺産の規模は、驚愕する大きさであるが、次世代にとっては大きな負担であり痛みである。
現世代が間違った選択をし続けて、「愚かな行いをして後始末は次世代に」と言うことが蔓延している。

日本においてはどうなのか。しっかりと見直しをして、賢い選択をしなければならない。
幸いにして、「非核三原則」という確たる姿勢を貫いたおかげで、核兵器汚染は一切ない。
しか平和利用の名のもとに、原子力発電所は50機以上も造ってしまい、その高レベル放射性廃棄物の安全な処理方策は、未だに出来る見通しは立っていない。
それにも拘わらず、原子力発電設備を増設しようという動きをしている「愚かな原子力族」が暗躍する。

政権交代が起きてから、一気に見直しが始まった「コンクリートダム」の功罪はどうであろうか。
行け行けドンドンの「土建国家日本族」は、いまだに健在で理由をひねり出して推し進めようとしている。
しかし、現行のダムでも、次世代に残す負の遺産は膨大なモノになる見込みであるが、これらの維持、保全に必要な金額や自然破壊の規模などは、公表されていない。

造ってしまえば、あとは何とかなるだろう、という姿勢は次世代に対する大罪である。

日本の「技術システム」を世界に売り込む。高速鉄道技術。  

2010-01-26 | 環境問題
新幹線を導入以来、営々と技術の蓄積を重ねてきた「高速鉄道技術」が海外へ普及していく段階にはいった。
中国では各地で導入が始まり、既に最高速度350km/hで営業運転する路線が始まっている。
鉄道の技術的な可能性は、今のところ400km/h程度と言われているが、今後の進化に期待したい。

自動車大国、航空路線が充実しているアメリカでも、主要都市間を結ぶ「高速鉄道技術」が必要とされてきた。
日本のJR東海とJR東日本は、実績を積み上げてきた新幹線の技術をベースに、海外仕様としたシステムを、アメリカで計画中の新路線に採用するよう、売り込みを進めている。
車両だけの輸出ではなく、軌道や信号設備、運行システムまでの一体的な輸出を目指している。

日本はシステム全体をとらえて安全性を高め、サービス価値を創り出してきた。
単品の商品を輸出するだけの時代から、価値の源泉となる全体のシステムを開発するノウハウを、もっと熟成していけば、世界が必要としている「技術システム」を創り出す力が十分にある。
鉄道関係の技術は、その実例の結晶であるから、大事に育てて「技術システム輸出」の成功例にしていけるであろう。

これを日本での分割民営化の仕組みで、JR東海とJR東が技術を競うようにしてきたが、この段階での売り込み競争が始まっている。
この売り込みを、日本の企業が連携する仕組みが遅れている事が懸案である。
早急に、海外に向けての売り込みシステムを調整して、蓄積した技術力が輸出に結び付いて、大きな価値を生んで欲しいものである。

ところで、この高速鉄道として、JR東海が、「実験線の段階のリニア方式」の売り込みも始めると言いだしている。
これは、おおいに疑問があるが、その中身の検討やメリットは公表されているのだろうか?
大きな課題は2つあると思われるが、JR東海からは何も公表されていない。

ひとつは、エネルギー効率であるが、鉄路の上を走る車両の場合は、走行抵抗が少なくて陸上では最もエネルギーの消費量が少ない乗り物である。
自動車の1/10以下のエネルギー消費率で、これから世界中に普及を図っても、エネルギー面での問題が少ないシステムとして歓迎されるであろう。

しかし、「リニア式浮上システム車両」では、鉄路の上ではなく、磁力によって誘導路の中を浮上して走る、空中移動の乗り物である。
空中に浮上させるためのエネルギーが鉄道の10倍以上必要で、ロスが大きい欠点がある。
技術進歩を期待するにしても、鉄道よりは圧倒的に劣るレベルでの海外展開は無理がある。
また、浮上させるための路線側の設備の価格は膨大であり、車両は軽くするために小型にせざるを得ない。

一人当たりの運賃が新幹線方式よりも高くなることは確実で、売込みはまだまだの段階と言える。

空気を読んで、それに逆らえ![KYS]

2010-01-25 | 暮らし・健康問題
日本の経済の停滞が長く続いて、活力がどんどん衰えているのが感じられる。
日本では「空気を読む」ことがとても大事だと言われ、読めない人は軽蔑された。
一時期、[KY]という流行語がはやって、周りに同調する傾向に拍車がかかった。
経済評論家の勝間和代氏のコラム(朝日新聞1月23日b9面)の中身を引用して、少し掘り下げてみる。

日本では論理だけでなく、言葉の行間にある雰囲気を読み取り、隠された相手の気持ちを推し量りながら行動することが求められる。
これをしないと、相手に迷惑がられて嫌われるから、「空気を読めない人」を[KY]と言って、軽蔑してきた。
ところが、この空気を読む風潮が高じると、自分がそうは思っていないことにも同調する癖がついて、周りの意見に引きずられるばかりになる。

表に現れた言葉や現象に対して、空気を読んで相手の考えや周りが期待している事を理解することが重要であるが、そのうえで、どのように行動するかは自分の意思で決めるべきである。
勝間氏は、空気を読みすぎることによる弊害を防ぐために、自分への警句として創ったことばが、
「空気を読んで、それに逆らえ」である。

空気に逆らうには、自分の判断がしっかりとしていなければ、出来ない。
判断のもとになる考え方の軸足も決める必要もあるし、行動するには勇気もいる。
これらは、経験と知識を日々、積み重ねて、深く考えることが出来るようになれば、身に備わってくる。
間違っていると思える空気にも、多数派の意見にも、キチンとした論理で逆らって行動することができる。
今の日本にとって、この[KYS]は大変、大事な行動のベースになっている。

経済の停滞の大きな原因は、国民全員が「空気を読みすぎて」将来に不安を抱くので、蓄えをしっかりとして、当面の無駄と思えるモノは買わないことにしている。
食べるものも、贅沢をしないで栄養価があって、ソコソコおいしいもので安い値段であることを優先的に考えて買う。
企業経営者は、その空気を読んで、より安いモノをとにかく造らなければ、取り残されると感じ取り、価格低下に力を入れる。
それには安い給料で働く人を求め、派遣社員や契約社員を増やし続けて、需要はさらに減る。

デフレスパイラルは、[KY]の風潮が経済全体に蔓延して、袋小路にはまっていく状態である。
だから、これからは[KYS]で行かなければ、デフレ経済からは抜け出られないであろう。
多くの人が、この空気に逆らって、価値の高いモノ、サービスを捜し求め、お金を払うことによって、やっと経済停滞から抜け出る。

まずは実業界が空気を読み、それに逆らって[KM](変えることを目指す)になるべきである。

働く人の差別が企業経営の根幹をむしばんでいる。 

2010-01-24 | 経済問題
都市内での移動には多くの自動車が使われて、エネルギーを多量に消費し、運転者も渋滞に巻き込まれたりして、デメリットの多い乗り物である。
これに対して、道路面を共用して走るバスや路面電車の利用をもっと優遇して、利用者を増やす取組が、先進都市で行われてきた。
中でも近代型の路面電車(次世代トラム)が、大きな可能性を持って、今後の拡張が期待される。
日本では広島市や長崎市、そして、富山市などが、取り組みを強化している。

広島市の広島電鉄(株)では1960年代には、廃止も視野に入れて、運行本数の削減や終電の繰り上げを検討していた。
これに対し、組合側の意見として、乗客へのサービスを優先し、職場においては運行時間を守る努力を重なることで、やがては黒字にすることができた。
働く人、現場の意識が、企業の経営を改善し、利用者へのサービス向上を改善した意義は大きい。

最近において、労働組合側からの提案で、契約社員を正社員に統一した動きが紹介された。
広島電鉄の労働組合委員長の佐古正明さんは、正社員1000人の組合のトップだが、最近の10年間で徐々に増えてきた契約社員(150人)と正社員でも賃金が上がらない「正社員2」(170人)が同じ職場で働いていることに危惧を感じた。
安全とサービスを維持する事業で、現場の人に差別があっては、大事な信頼関係が崩れていく。

以前に組合が別々にあった時代には、職場でも意思疎通が不自然になって、うまくいかない事態があり、それをやっと統一した時の使命感が、今度は正社員と契約社員の待遇統一に向かわせた。
しかし、会社側としては、全体の人件費を上げる余裕はないので、交渉はうまく進まない。
そこで正社員側のベテラン社員の賃金を10年かけて減らして行く賃下げの提案を作り上げた。
賃下げした分を、「契約社員」や「正社員2」の待遇の統一と賃上げに回すのである。

この交渉には粘り強く取り組んで、2008年10月から始めて2009年の春に合意し、2009年11月から新しい制度で給料が振り込まれた。
それに対して、実際に賃下げが始まるベテランからは苦情はなく、予想外に中堅クラスの賃金が下がらない層から不満が出てきた。
自分たちの様に「何年もかけて達成した給料に近い分を、数年しかたっていない若手がもらうのは・・・」納得がいかない、という。
しかし労組の意見としては、「職場の分裂の怖さを経営者側が気ついてもらわなければいけない。」
「今を乗り切ればよい」と言う感覚で、目先の人件費削減を優先すると、将来は働く人の意識の分裂が企業経営に確実に悪影響をもたらす。

振り返ってみれば、日本の経済界は、この働く人の賃金を抑えることで、今を乗り切ることが重要だとして、正社員を減らし、派遣社員や契約社員を増やしてきた。
それが、あらゆるところで分裂していく社会に向かっている事に気づかなければならない。

経団連の会長がトップを務める企業が、真っ先に派遣社員を解雇した事態は、まさに日本社会の病根を象徴的にあらわした事件である。
経団連は大いに反省すべきである。

賢くない減税の代表になっている「エコカー減税」

2010-01-23 | 交通問題・自動車
昨日のブログには、自動車の暫定税率の廃止に伴う、特別税のツギハギ減税は、「不公平を冗長する制度』と言うことで、欠点をあげた。
この制度は、原油の高騰が起きた時の措置であるから、まだ何も起こらない段階では損失はない。
しかし、現在、広範囲に実施されて、多くの国民の税金を投じている制度で、不公平を助長し、
その上、国民の富を海外にバラマイテいる愚かな制度がある。

「エコカー減税』の制度は、先の政権が世界の大不況をとにかく一時しのぎでも良いから消費を増やそうという狙いで、燃費性能のよい自動車を優遇して、販売の手助けをする制度であった。
これは当面の出血を和らげる意味で、それなりの意味があったが、延長をするならばキチンと見直すべきである。

2009-12-21日のブログにも書いたが、500万円以上もする高級車の減税をして、何の意味があるのだろうか?
そして、アメリカの燃料浪費車である「ジープ・パトリオット」と言う車種が、エコカー減税の対象になるという。
その燃費性能は、型式認定を受けた数値では、10.6km/リットルだと公表されている。
実際の路上走行では、その6割~7割程度の実用燃費であろう。

このレベルの燃費性能で、「エコロジーカー」と言えるのか?
「エコノミーカー」とも言えない。
日本の経済の落ち込みを防ぐための、国内消費奨励策である、「エコノミックカー」なのか?
まともに説明できる人がいたら、ぜひ、教えて欲しい。
これは間違いなく「エゴカー減税」である。

さらに、アメリカ政府は、アメリカ製の販売車両が、「エコカー減税」の対象となっていない現状に対して、日本の型式認定制度にイチャモンを付けている。
アメリカ製の自動車販売会社は、日本の型式認定受けるには費用がかかるから(販売台数の少ない車種は)、認定をとらずに販売している。
だから、燃費の公式数値が届けられないので、「エコカー減税」の対象から外されている。
これは、けしからんから、アメリカで公表している燃費の数値をそのまま、日本でも認めて、
「エコカー減税対象車」として、認めるべきである。
と言う、理不尽な要求である。

本当にエコカーで販売を促進したいならば、認定を受ければよい。
販売台数の予定が少ないので、認定手続きの経費をケチっていながら、優遇せよというのは、いったい、どう言う理屈なのか。
まさか旧自民党政権時代の様に、「アメリカ様」の要求には逆らわずに、理不尽であっても、要求をのんでおいた方が良い。
という「オトナの論理」で、行くのではないでしょうね!

政治家は、国民の信頼を得なければ、政権から追放される。
信頼のもとは、「公平な税制度」と一部の人におもねった無駄な支出をゼロにすることにある。

ガソリンのつぎはぎ減税は悪徳業者の餌食、不公平の助長?  

2010-01-22 | 経済問題
民主党の掲げたマニフェストで、自動車の暫定税率廃止に対して、迷走が続いている。
2010年度の4月からは廃止して、ガソリンなら25円/リットルの減税になる筈であった。
その代わりに、化石燃料削減目標「1990年ベースで2020年には25%のCO2排出削減」を達成する手段として「温暖化対策税」(炭素含有量当たりで課税する)を導入するとしていた。

しかし税制度を新設するには、あまりにも時間がなく、内容の説明も国民には浸透していないので、早々と税制度は2011年の導入に先送りしている。
税収が一気に2.5兆円も減り、石油の消費を増加させる要因になるとして、各方面から批判をあびて、予算案を決める間際まで、揉めた懸案である。
炭素税の導入が実施されるまでのつなぎとして特別税を創設する苦肉の暫定策を提示した。

その内容が報道されたが、民主党のマニフェストの言い分であった「生活コスト」の引き下げを図っている体裁をとるために、ガソリンが高騰した場合には減税をすると言う、条件を付けた特別税となった。
この税率設定では、3カ月連続でガソリン価格が160円/リットルを超えると、特別税の25円分を引き下げる。
そして130円を下回る価格が3カ月続くと、また特別税の25円分が課税される仕組みになる。

この案は多くの面で、問題をはらんだ税制度である。
ひとつは、昨年の4月から一度、暫定税率が廃止され、また1カ月で元に戻った時の、ドタバタ騒ぎを繰り返そうという、動きが出る懸念である。
安い時に買いだめ、高い時は買い控えをして、在庫切れの懸念を起こすなど、デメリットがおおきい。
税率の変更時よる不当利得は、在庫を調査して調整するというが、経費ばかり増える。
このようなドサクサに紛れて、在庫をゴマカシテ利益をかすめ取る悪質業者の暗躍も出る恐れがある。その被害は、何も知らない消費者に回ってくる。

また、石油の価格高騰時の負担は、自動車使用者だけにかかってくるわけではない。
1昨年(2008年)には漁業関係者が、漁船用の燃料が上がったとして政府にデモをかけた。
それに慌てふためいた旧政権は、すぐに一部の漁業関係者にのみ、補助金の制度の上乗せをして取り繕ったことがある。
圧力をかける団体に弱い旧政権党は、市場の価格の乱高下に対して、一部のつながった利権団体の要求にかぎってお金をバラまく、悪い体質をあからさまに露呈した。

原油価格の高騰時に一部の消費者に限る減税や補助金は、利権政治のもとになるので避けるべき政策である。
炭素税を導入するまでの、つなぎの特別税と言う苦肉の策ならば、簡素な税制度としておき、一刻も早く、化石燃料削減の理念に沿った、[炭素税]を導入することに専念すべきである。

特定の声の大きい団体に有利な減税や補助金を積み重ねたツギハギだらけの税制度にするのは、旧政権の過ちである。
これを繰り返さないことが、【公正な税制度】である。

将来の交通政策ビジョンを持たない資金投入は損害を拡大。   

2010-01-21 | 交通問題・自動車
JALの経営破たんの問題と、ゼネコンがらみの不正献金疑惑の資金問題に翻弄されている。
昨日、JAL関連での国の損失額は440億円と書いたが、どうも、それだけではないので、訂正する必要がある。
政策投資銀行(政府系)が保有していたJALの株券は価値がゼロになり、200億円の損失が出ることが分かった。

マスコミは、このような金額を報道する責務があるが、440+200=640億円という巨額の国民負担が発生していることを、わかりやすく報じていない。
ホンの片隅にしか記事を載せないから、ほとんどの人は見落とすだろう。
反面、4億円の出所の方が重大だとして、憶測にもとずく記事を連日のごとく報道している。

負債総額で2.3兆円と報道されたが、当初は1兆円程度の損害額と予想されていた。
これほどの負債を背負いこみ、毎年赤字を出し続け、経営刷新の努力を殆どしないできた企業を、
大金を投じて生きながらえさせてきた政府関係者は、どこに隠れてしまったのだろう。

このような愚かな政策を必要として税金を投入してきた理由には、日本航空は日本のナショナル・フラッグとして維持が必要だ!という、旧時代の感覚、思いこみが、判断を誤らせた。
日本のマスコミも、その思い込みを助長させた責任がある。
国内線の維持は、地域の経済活動と地域社会にとっての重要なインフラであるから、公的な資金を投じて維持する必要はある。
それにしても、高速道路と航空路の将来像も不明確なままの非効率なお金の使い方は、もっと精査して計画を練り直すべきである。

一方、国際線については世界中で、主要な航空会社が乗客獲得に向けて、民間ベースでの効率化を競っている時代に、親方日の丸根性のナショナル・フラッグ航空会社が太刀打ち出来るわけがない。
ここは、考え方を分けていくべきであろう。
市場取引の原理に任せた方が、効率のよい経営とサービスが出来る航空事業は、国の関与を極力減らして、民間企業としての活力をいかす。
一方、市場原理にゆだねると、社会的に必要なサービスが立ち遅れる分野、例えば、地域社会への航空路線の維持などは、国や自治体が関与して公的な資金を投じても、維持、向上させる。

この考え方の整理が出来ていないために、体面を取り繕うような、ナショナル・フラッグ信奉者の論理で、回収不能な資金を、ただタダつぎ込み続ける羽目になる。
以前の国鉄がその代表であった。
これを一気に分割民営化して、効率的な企業に生まれ変わらせた。
しかし、地域によってはJR四国、JR北海道の様に、経済効率のみでは経営が難しい局面も見えてきている。

新政権の交通政策戦略の構築は、大変な出だしであるが、ここは踏ん張ってもらうしかない。

JALは経費を甘くし破綻。それを助長した政権党の責任。

2010-01-20 | 交通問題・自動車
長年の殿様商売の体質を引きずって、経費の削減に甘い会社体質を続けたJALは遂に、法的整理に移行した。
この影響で政府系銀行が融資した440億円は焦げ付き、国民の税金はどこかに消えてしまった。
企業の破たんが、企業にいる経営者と社員に責任が及ぶのは、資本主義の趣旨からいって、当然の結果である。

また、株主のお金はすべてゼロになり、一般の投資家は大きな被害をこうむった。
歴代のJAL経営陣、役員を株主代表訴訟で賠償を求めることができるが、何も見返りはない。
このような事態に行き着いた責任は、関係した多くの人間にあるが、等しく責任を痛感して、痛みを分かち合って行くべきである。

その中で、負債遺産路線を強要して経営を圧迫し、国民の税金を振り込め詐欺同然に、JALに振り込ませた、政権党であった政治家には、責任がないのであろうか?
当然、多くの責任があるのに、知らん顔を決め込んでいる厚顔無恥な古老議員が大勢いる。
誰と特定できない状況なので、この損害補償金を政党本部に請求書を回すべきである。
440億円の全部とは言わないが、半分くらいは国に返してもらいたい。

私企業では、経営状態が赤字に傾いた段階で、あらゆる方策で経費の削減を徹底する必要がある。
しかし、JALは乗務員、パイロットの空港と宿舎(ホテル)の移動にはタクシーを使う慣行を
最近まで止めなかった。
それも競争相手のANAは、経費節約のために、空港の近くのホテルを使うのに、JALはわざわざ離れた都市の中心部のホテルを利用させていた。
ホンのひとつの事例であるが、すべての面において、JALは殿様商売、親方日の丸体質である。
倒産する恐れのある会社が、そうでない会社よりも、経費削減が甘く、社員を甘やかし状態にしたままで、最後にそのツケを国民に回したのである。

一番の被害者は後に残された現役社員、現場の従業員であり、これから厳しい勤務になる。
旧経営陣からは、損害額の一部でも良いから、償いの賠償金を自発的に出す意思があるのか。
また、政権党の責任担当役所の大臣を歴任した、旧政治家からの謝罪の言葉もない。
政権をとって航空行政の権限を握っていたならば、いくらでも破綻を防ぐ方策を打てたと思われるが、反省のキザシもない。

政治家は政権を奪われた段階で、もう責任を追及されなくなるのだろうか?
いや、4億円のお金の出所で大騒ぎするのだから、440億円をドブに捨てた(いや、タクシー代に消えたのかも)のがハッキリしている事件の、責任者のリストくらいは公表して欲しい。
歴代の国土交通大臣、および、運輸族議員、そして、不採算路線の誘致の口利きをした議員など、
マスコミの紙面とテレビで報道して欲しいものである。

それとも、マスコミでは、過去のことはすぐミズに流す体質なのか。

マスコミに登場する経済専門家は時代遅れ。なぜか?  

2010-01-19 | 経済問題
日本の経済停滞を始めとして、先進国では軒並み経済活動は不振続きである。
これは、前回に書いた様に資本主義制度と自由貿易の市場原理に沿って、グローバル化を進めれば、行きついて出てくる当然の結果である。
先進国の経済は停滞していても、グローバル化した大企業は新興国に打って出れば、利益の確保と成長が達成できるので、経営陣は安泰で株主は高配当を受けて満足する。

世界中が移動自由の資本と商品に満たされれば、投資効率の良い地域にお金が移動し、労賃の安い地域で生産される。
当たり前のことが起きて、新興国の住民の生活水準は上がり、先進国の賃金の高い地域の住民は、生活水準を下げていかないと、暮らしていけなくなる。
経済学の知識がなくても、十分に納得できると思うが、経済学者はよくわかっていない。

マスコミに登場している、名だたる経済専門家の弁を聞いていると、その辺のところが解っていない様に思える。
構造改革路線を進めたK大のT教授は、規制を極力撤廃して企業の活動を縛ることを減らせば、競争的市場が確保されるので、活力のある企業が勝ち残り、生産力、企業競争力が上がる。
それが、働く人に還元されて生活は良くなると、いまだに説明している。
企業が儲かっても、お金は国内の働く人には回らずに、海外の投資と現地の従業員の給料に回るのが先になることは、一切、口にはしない。

また、構造改革は必要だが、働く人への還元を重視すべきと言う現政権のブレーンである、W大のS教授は、自由化は格差を生む傾向になるが、それを政府の介入で、働く人への還元制度を創って福祉を重視して進めれば、働く人の安心感が増えて、経済は好転すると説明する。
しかし現世代での負担増加については説明できず、将来の経済成長力を向上させる政策は、何も用意できていない。

経済停滞や縮小を放置しながらの格差是正、福祉向上は、借金による次世代へのツケを回して現世代が豊かに暮らしているようなもので、親方日の丸の「JAL」の体質そのものである。
今は何とかなっても、10年、20年後に負債の積み重ねでサラ金地獄と同じ状況に陥り、最後は債務超過で倒産する羽目になる。
利益を生み出さないで、赤字の原因となる「ジャンボ機」に相当する旧時代の産業は縮小し、効率のよい新型機、「新産業」を積極的に取り込まなければ、破綻の道を進んでいくばかりである。

なぜ、名だたる経済学者はそのことを説明できないのであろうか?
どうも、経済の専門家という人種は、「新産業を興す」ことは、一切の経験も知識もないために、
新技術や新事業を優遇していく価値もわかっていない様に思える。
それも、もっともである。
一人は大学での研究実績、それもアメリカ流の輸入学問、マクロの経済学であり、もう一人は、大蔵官僚出身で、お金の管理のことしか知識はない。

経済活性化の政策を聞く相手は、新産業を興した実績のある実業界の識者を選ぶべきである。

新技術、新事業の先端を進む苦労と価値が解っている人でなければ、育成のスベが解らない!

先進国の大企業病を直すことを優先する時なのに・・・!

2010-01-18 | 経済問題
世界は一昨年(2008年)の金融業界の大暴走族の事故の影響を受けて、いまだに経済が不安定の状況にある。
元気のある新興国は、国内の旺盛な需要の増加で、徐々に経済は活性化して成長路線に転じているが、先進各国は国民の失望感と先行きの不安によって、企業がいくら需要を盛り上げようとしても、財布のひもを締めるばかりである。

1990年頃には大企業病と言う現象が取りざたされた。
これは成功体験に守られた大企業社員が、その体験だけに浸りきって、新しい課題には消極的になり、失敗のリスクのある新技術分野や新事業には取組まなくなる現象である。
現代はその大企業病に輪をかけて、金融界の不祥事のあおりを受けての失敗体験で、さらに新しいことにはチャレンジしなくなってしまう「大企業衰退病」にかかっていると言える。

この大企業病から抜けだそうとして、頑張っている経営者もいるが、それでも新規の事業や投資の対象は、新興国における事業拡大が主となる。
これは以前に成功した事業の拡大のやり方を、新興国の市場で展開する事業なので、成功体験に沿って進めれば、失敗のリスクは少ない事業である。
経営者としては適切な判断ではあるが、日本国内の経済活性化には殆ど役に立たない。

国の経済活性化には、国内での新規需要を広げる新事業、新産業にこそ投資を増やしていくことが必須であるのに、新興国などの外国の投資への投資を優先しているのでは進まない。
先の自民党政権では、金融界の失敗の後始末にてこずり、不良債権を始末して規制を緩和すれば、新規の投資が国内に回る筈と思いこんでいた。
まさに、1980年代の成功体験に縛られたままの、大企業病的なボケ政策に終始してきた。

1990年代の新産業とみられたIT産業も、アメリカのITバブルがはじけて影響を受けた失敗体験が、先行きの不安をあおり、新規の投資を躊躇している間に、世界から脱落をしてしまった。
いうなれば、1990年からの20年間は、企業も政権党も大企業病にかかったままで、慢性的な失敗恐怖症にかかり、リスクの少ないことばかりを追う体質の結果である。

政権党も企業経営者も結果責任を取るべきだから、今回の政権交代は病気を治す良い機会である。
一方、大企業病の治療が不完全にしかできない企業経営者が生き残り、リスクの少ない海外投資ばかりを優先する体質が残ったままである。
こちらの治療は少しも進まないのは、結果責任を負っていないことになる。
しかし、企業経営者は株主によって任免されるので、企業を黒字にする責任を課されて、投資効率が良くてリスクの少ない海外展開を優先する判断をする。

現代の資本主義制度の先進国は、この仕組みによって慢性的な経済停滞の原因となっている。
株主に対する責任を負っている大企業には、国内経済の活性化をしなければならない責務はない。

だからこそ、この分野は政府の責任で国内への新規投資を誘導して、リスクを政府が軽減する政策で「新産業」を優遇すべきなのである。
その政策なくして、大企業病は治せない。

船の省エネ化は日本がトップランナーで進む。支援政策は? 

2010-01-17 | 交通問題・自動車
日本経済の再建は新産業の育成にあると書いてきた。
その中でも、省エネルギー技術は既存の産業を「新産業として再生」できるポイントである。
前にも船の省エネ技術の例を紹介したが、造船実績で世界一であった日本の造船業を、一気に革新して、世界最先端の船を造れる環境技術立国の要にもできる。

大型船では風の力をハイテク装備で利用する技術が研究開発中であるが、中型船や小型船に使える技術として、電動モーター船や、プラグインハイブリッド船の研究が始まっている。
自動車の技術革新の船舶版と言うところであるが、日本の進んでいる2次電池(充電式電池)の技術を応用して、一気に省エネルギー化を進めることが可能である。

本日の朝日新聞(1月17日朝刊5面)の記事を引用すると、全長30メートル、旅客800人乗りで、リチウムイオン電池を積んでモーターで進む電動船を開発中である。
電気自動車用の電池の量産が進んで価格が安くなる時期の、2015年頃には実用化が出来る。
自動車に比べて船は容積が大きいので、電池を積むスペースが十分にあり、いくらでも積むことができるメリットがある。
瀬戸内海の近距離フェリーで、連続走行は1~2時間、70㌔㍍程度なら、実用化は全く問題ない。

それ以上の運航距離を目標とするならば、プラグインハイブリッド船の技術が有力である。
エンジンでの航行ができる時にも発電機を回して充電しながら航行できるし、波が高い場合にはエンジンとモーターの併用で走る。
内海などの速度を落として進む場合はモーターのみでの航行もできる。
燃費効率のよい航行が選択できるので、現行の同クラスの船に比べて50%の燃料で済む。

電気自動車の普及策で乗り越えなければならない充電スタンドの設置は、停泊する港は限られているので、スタンドの設置費用の負担は少なくて済む。
船の価格次第であるが、エネルギー費用節約で10年以内での償却ができるレベルを期待したい。
電気自動車の普及よりも、船の電動化の方が早く進む可能性が高い。

これに挑戦している三井造船やIHIの関連会社が、もっと人員と研究開発費を投入して、開発のスピードを上げることを、国として支援しなければならない。
同時に、実用化出来た段階では、船の発注主が既存の船を下取りに出して新型船を購入することを優遇する制度を創っておくべきである。
原油の価格の高騰が普及の追い風になるであろうが、それを待っているだけでは政策責任者としては怠慢と言える。

航空機の省エネ化は、ボーイング社の新型機の開発待ちであるが、すでに500機以上のオーダーが入っている。
船の省エネ型の新造船も、予約制度を創って購入待ちの状態になるくらいに、優遇・促進策を約束して企業努力を支援し、購入予定者の負担を軽減するべきである。

これこそ、経済成長戦略の一環であり、造船業界は一気に活性化することは確かであろう。