庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

民主党の目玉政策「事業仕分け」は入り口、それでどうする。

2010-10-31 | 国創り政治問題
国の予算の大部分を占める特別会計の仕分け作業が、4日間で終了した。
一般会計の中身は、毎年の国会で議論されて、異論のある事業や制度は、その都度、野党の攻撃にさらされるので、省庁も財務省も手を抜けないので、時間をかけて検討している。
しかし、特別会計の中身は、族議員の一部が中身を掴んで、自分の選挙に有利になるかどうかのチェックがかかるだけで、国会での審議は、実質的にはなかった。

これを、わずか4日間でも、とにかく白日の下にさらけだすことは良いことである。
いや、これは民主主義国家としては普通のことであるが、今までの自民党政権下では、官主主義であったから、このわずか4日間の仕事すらしてこなかった。
もちろん、野党の追及も緩かった責任がある。

特別会計の見直しは、予想どうり「埋蔵借金」が、隠されていたことが判明した。
また、廃止できる事業は既に、各省庁で内部の議論によって、廃止やむなしとされてきた事業を、今回の獲物として差し出した形跡が歴然としている。
しかし、大部分は廃止と言っても、単に特別会計から一般会計に移すだけに留まる事業が多く、
財務省の管轄となって、国会審議の場に持ち出される様に代わるだけである。

事業自体の適切性や効率性の議論には、こんな短時間で切りこめるわけがない。
その上、「地域主権」の大改革に取り組むと公言していながら、特会の仕分けの対象事業を、今後はどうしていくのか何も構想がないことが判った。
「社会整備事業特会」の見直しや、「地方交付税及び譲与税配布特会」の抜本的見直しとして仕分けをしたが、予定どうりの見直しが必要との結論を再確認しただけに終わっている。

事業の透明性や予算の適切性を問うのは、一般会計でも特別会計でも、重要さは変わりない。
4日間でなく、国会開会中の時間をフルに使って、今までの様な不透明な事業を見過ごすことのない「本当の民主主義」の国会運営を実施すべきであろう。

その上で、長期的、本格的に取り組む必要のある課題を、政府も与党はもちろん、野党も継続的に政策研究と議論を深めておくべきである。
政策の中身で論争することが、民主主義の基本であるのに、今の野党は、発言の目立つことが価値があるとして、つまらない揚げ足取り的な論争を挑んでいるだけに終わっている。
それを冗長しているのが「マスメディア」の視聴率至上主義で、大事な論点をいつもとうり一遍の情報垂れ流しの様相をマスマス強めている。

菅政権は、TPP「環太平洋パートナーシップ協定」の関税撤廃交渉に前のめりになって参加しようとしているが、消費税騒動の二の舞を演じかねない。
これは、食料自給率の目標課題とは明らかに矛盾するし、各省庁の試算では経済にとってマイナスだとする農水省と、TPPに参加しないとGDPにマイナスだとする経済産業省の対立した見方が噴出している。
長期的な方向性を決めないままの場当たり的な政策論争は、ロクな結果を生まない!

特会の仕分けよりも中央集権の見直し「地域主権」への着手。

2010-10-30 | 国創り政治問題
事業仕分けの議論で地方交付税の「抜本的見直し」を求める意見が続出した。
3日目の「地方交付税及び譲与税配布金特会」の事業仕分けで、借金が33.6兆円に膨らんでいる実情が採りあげられた。
この制度は「全国一定の行政サービスを保てる」ように、国税を自治体に配る特別会計である。
なぜ、そんなに借金が膨張したのか、原因をハッキリさせて対策をするべきだが、特会を管理する総務省には、その姿勢がない。

「地域主権」の制度に関連する重要な課題だが、民主党自体が地方自治体の中身を知らなさすぎる為に、財務省と総務省の官僚同士の権益争いに巻き込まれている。
「自治体側は巨額の借金については、国の責任で自分たちの負担だと思っていない」と仕分け人は指摘している。
それは自治体側では、国で集めた税金だから、自分たちで配分をあれこれ言える立場でなく、とにかく、配分された交付税で国の指定した行政事務をやっているだけ、との感覚である。

この問題に典型的な中央集権制度の弊害が表れている。
総務省は自分たちの権益で、財務省からもっと予算を配分せよと要求するだけで、特別会計として囲った財布の中身の使い方を、本気で見直すことを怠っている。
財務省は、この行政サービスに対して、自治体が本当に必要な経費よりも、年間3兆円も多く総務省が要求しているとして、総務省の責任を追及するだけである。

「地域主権」に移行する大改革は、交付税の特会制度の見直しや仕分けの次元で出来る課題ではない。
行政サービスの全国一定レベルを保つことも必要だが、もっと大事な「地域社会が自立する」意識に転換していくことが根底になければ、いくらお金をつぎ込んでも、自治体側で非効率な使い方をしたり、無駄なところにお金が回ってしまう。

これが、企業のグループの場合であったならば、その企業グループは倒産に向かっていることは明確である。
自治体としてまず自立することを目指して、行政レベルの質とコストを改善してもらうことが先決である。
総務省は、「地域主権」を推進する為に、財源移譲と使い方の効率向上を同時に自治体に提示し、この方向に沿って、お金の流れを地域で活発になる様に図るべきである。

中央の官僚は「地域自治体(の今の能力)では、ロクな行政レベルが保てないから、自分たちで、やり方を指示して(それに従っていれば)交付税としてお金をつける。」との意識である。
これでは地域自治体側に、自立していこうとする意欲を奪い、その機会を出来るだけ与えない様にしているだけである。
前にも書いた様に、まず、自治体で出来ること(やるべき仕事)は、国から権限を原則として移譲しなければならない。
民主党政権の幹部は、どの課題から地域社会に任せるのか、早急に着手すべきである。

治山治水は中央官僚に任せては無駄と非効率ばかり。

2010-10-29 | 国創り政治問題
特別会計の中で一番の注目される課題は、「社会資本整備事業特会」の見直しであった。
赤字だらけの空港を乱立させた「空港整備勘定」は廃止されて、今後はそれぞれの空港を民営化に移行して、国の関与をなくしていく方向である。
また、無駄な道路を造りすぎてしまうとして、道路特会は既に一般財源化されて、国土交通省の采配を減らして権益を制限する方向である。

今回は大きく採りあげられた「スーパー堤防事業」の見直しであった。
正式名は「高規格堤防整備事業」で、200年に一度という豪雨の到来によって、人口が集中している都市の河川の堤防が決壊することを防ぐ事業である。
既に7000億円を投じているが、進行状態は24年かかっても5.8%であるという。
完成までに400年かかり現在の水準での見積もりでは、事業総額は12兆円を必要としている。

ここで思い出すのは、「八ツ場ダム」の事業の顛末と現状である。
自民党政権で、延々と国土交通省の言い分をそのまま受け入れて、地元に土木事業をつぎ込んできたが、完成の目途は何度も延期されてきた。
事業総額は当初の見積もりを3倍以上も上回り、この先の事業費も膨大になる。
国土交通省の200年に一度の豪雨による河川流量も、見積もりの根拠となるデータが、どこに行ってしまったのか、見つからないという。

知れば知るほど「お粗末な根拠による土木事業捻出」の操作が行われたとしか、考えられないが、
これに対する地元自治体、沿岸流域自治体の対応が、またお粗末な状況である。
今までは国が方針を決定して、自治体は事業費の一部を出させられるだけであった。
地元に土木事業のお金が入るので、整備事業の結果いかんに拘わらず、その投資分程度の経済効果があるので、表だって反対はしてこなかった。
だが、この段階で中止となると、今までの事業費を返還せよと、国に要求をし始めている。

社会資本整備は、絶対に必要なインフラである。
治山、治水も不可欠の事業であるが、それを長年の間、中央官庁の国土交通省(治山治水でいえば、旧建設省)の中央官僚に任せてきたことが、間違いのもとであった。
ス―パー堤防事業でいえば、「首都圏」を流れる河川の利根川、江戸川、荒川、多摩川の一部の整備が必要な区間に限定される。

首都圏の住民が、本当に必要な防災インフラと判断するならば、400年かかると言わずに財源の負担をして、繰り上げて事業を実施すれば良いのである。
計画を適切にするならば、膨大な工事費の圧縮も可能であり、事業期間も400年などのおかしな計画ではなく、40年以内に実施できる筈である。
問題は、この首都圏の自治体、住民で事業の内容と優先度を決められない【官主主義】【中央集権体制】が、無駄を生みだす根源であることを、早く浸透させて「治山治水」は【地域主権】に移すべきであろう。
民主党政権では、それが実行に移せるのかは「有言実行内閣」の姿勢しだいである。

特別会計制度は目的と財源が明確で効果がハッキリでる。

2010-10-28 | 国創り政治問題
特別会計制度による政府の事業は、当初の狙いはなんであったのか。
それは、少ない財源の中で、毎年の様に予算の取り合いに活動のエネルギーを浪費しない為に、特別の目的に為の事業を進める財源確保の手段であった。
日本の各地を結ぶ道路特会は、自動車の利用者が使う燃料に課税をして、財源を集めることで、道路の拡張、延伸、舗装の質向上に向けて、毎年の確実に入る財源を基にして、計画的に事業を進めることができた。
貧弱な日本の道路を、曲がりなりにも一流の先進国並みに引き上げる制度として、有効に機能してきたのである。

航空網の整備も、貧弱な空港のレベルを、国際水準に引き上げる事業を計画的に進めることができた。
その財源は、空港利用者と航空会社から一定の費用を上乗せすることで、利用者の便益を挙げる目的に沿っているので、不満を持たずに利用側が負担することが継続できた。

しかし、当初の目的をほぼ達成した段階から、中身がおかしくなってきたことは、今では誰でも知っている。
自動車のほとんど通らない道路を過疎の地域に作ったり、必要性の少ないバイパス道路を計画して、地元に工事費が入ることが目的に入ってしまった。
それにうまく便乗して、周辺事業に隠れ天下り団体を多数作って、官僚のライフスタイルの財源にしてしまう様な、省益の特別会計制度に変身してしまった。

20年前には、その構造が露呈していたのに、政治家は自分の選挙に有利に働く様に、便乗して「特会の制度」を温存することに奔走していたので、日本のお金に使い方が、まったく無駄になっていった。
やっと今頃になって、国民の為にならない「特会」の見直しが始まったが、1年やそこらで問題点が洗い出されるほど、簡単ではない。

道路特会や空港整備特会は解体しても良いが、その先にどうするかは、民主党政権の大きな課題として立ちはだかっている。
一般財源に入れるとしているが、それでは、全国に対する予算配分は適正にできるのであろうか。

ここは、先にも書いた様に、道路、鉄道、航空路、一部は海路も取り込んで、地域における将来の交通網のあり方を描いた上で、毎年の財源が確保できる制度に置き換えていくべきである。
国土交通省の中央官庁で、すべての地域の交通体系を計画して進めるのではなく、地域の自治体の連合体で進める。

中央官僚の能力は、日本全体を把握して計画するには不足だが、例えば、九州地域一帯の交通体系の将来を計画するには、ちょうど適切ではないか。
中央官庁の職務を解いて、九州一帯の計画と推進にあたれば、能力を存分に発揮できる可能性が大きい。
もちろん、計画に対する財源は、地域主権の考え方で九州に移譲する。

政府は無駄使い見直しで、国民がお金を使う気持ちにさせよ。

2010-10-27 | 経済問題
日本の税金の無駄使いを洗い出して、将来の暮らしの為になる方策に重点的にお金を回すことが急務である。
その作業の節目になる「特会事業仕分け」が始まったが、洗い出された無駄とみなされた税金を、新たな分野に回すことで、経済の活性化や、地域社会の再生につながるかがカギである。

今の経済状況をさらに停滞させる要因に、円高の傾向が止まらないことがある。
本日の朝日新聞(朝刊14面)のコラムに、小野義康氏(内閣府経済社会総合研究所所長)が、
「円高を克服する」との表題で、答えは「ため込まなければ道は開く」としている。
コラムの趣旨は、前にも書いているが、日本人の倹約精神が過剰になって、消費をしなくなっていることが大きな原因である。

節約は美徳であり、今の様な不景気の時代には、先行きがどうなるか解らないから、できる限り節約して、不要不急のものは買わない。
出かけることも控えるし、遠出の旅行も回数を減らして、お金は使わないでおく。
これが日本全体では「内需不足」の状態を作り出して、政府がいくら借金をして(国債の増発)需要不足を補う公共事業を連発しても、その時だけの効果に終わってしまう。
残された借金は、いずれ返さなければならない。
それは、将来の増税や次世代への負担に回されることは分っているから、一層の節約が必要だと心の底に刻み込んできた。

この国民心理が、長い間の需要不足の原因であり、この影響は「円高による調整」という為替の変動に現れる。
日本は輸出競争力が不可欠だとして、輸出型企業への手厚い保護政策や、海外への事業展開に対する支援政策が進んで来ている。
国内の消費不足と輸出強化策で、長い期間に渡って経常収支の黒字を続けているから、円高が進んで調整する機能が働くのである。

国際的に活動している金融関係が「この円高傾向が続く」と見ているから、政府がいくら為替変動対策をしても、一時的なモノにおわる。
円高はデフレ経済(輸入品の価格が下がり続ける)に押しやり、国内で活動している企業の経費削減競争に拍車をかけ、さらに、働く人の給料を下げる結果、需要不足は促進される。

この理屈は小野氏が言うだけでなく、もう、ほとんどの経済関係者が解っている段階にきている。
しかし、旧時代の経済学者や旧産業の経営者は、相変わらず国際競争力を最優先にしている為に、国内の需要喚起政策に対して後ろ向きである。

政府と産業界は、どうすれば国民が硬い財布のひもを緩めて、貯め込みすぎを直していくのか、何よりも優先的に実施していかなければならない。

それにつけても、消費税の増税論議などを出して、需要不足をさらに助長する政策などに、着手したいと言うだけでも、デフレ、円高、経済停滞を招くことくらいは、もうわかった筈であるが?

特別会計の無駄使いの原因は選挙民と官僚の雇われ政治家。

2010-10-26 | 暮らし・健康問題
日本は民主主義国家だと学校の教科書では教えられてきた。
しかし、実態は「官主主義国家」であり、優秀な官僚が民意を吸い上げて、各省庁の中で適切な政策を練り上げ、官庁の意向に沿った審議会委員のお墨付きを添えて、政権党の雇われ大臣にハンコをもらう制度であった。
民意を反映すると言いながら、選挙で選ばれた政治家の意向や判断は、ほとんど無視されてきた。

その象徴ともいえる国の特別会計制度に、メスが入ることになった『特会事業仕分け』がいよいよ10月27日から始まる。
報道によれば、この膨大で難問だらけの仕分け作業が、前半でわずか4日間、政治家11人、民間有識者31人で取組むという。
歳出規模の合計で180兆円のムダの見直しが、このくらいの日数と人員で出来るモノとは思えないが、とにかく、取り掛かってもらうしかない。

最大の焦点として、「社会資本整備事業特会」があげられているが、国土交通省の長年の既得権である「道路整備」「治水」「港湾」「空港整備」など、国民生活のインフラと安全を維持する上で、必須の事業を洗いなおして、「官庁の独断に沿った事業・予算配分」の無駄を仕分ける。
前回にも書いた様に、無駄を見つけ出して事業を廃止、縮小にしていくことは必要かも知れないが、どのような将来の姿を目指すのかは、「仕分け業務」には関連していないのは問題である。
民主党政権は、その先をどうしていくかの検討を未だに、真剣に取り組んでいない。

長妻前厚生労働大臣が率いるチームで、わずか「1日の仕分け審議」で、どこまで切り込めるのか、疑問だらけであるが、それでもやってもらうことで少しは進むであろう。
それは、今までの自民党政権の政治家が、いかに官僚任せの、官主主義国家の雇われ政治家であったことを、国民の前に実態をさらすだけでも意味がある。
その政治家を何十年も選び続けてきた選挙民がいることも、忘れずに思いだしてもらいたい。

その洗い出したムダと言われる財源をどうするのか。
ここが一番肝心のところであるが、マスメディアの論調には、課題として明確にしていく気配は一切ない。

道路行政は、地域社会と密接に結びついているインフラであるが、国道と高速道路という、大金を投じる必要のある事業を、霞が関という地域からはるかに離れた中央の官庁に、集中統制をさせる必要性が、本当にあるのか。
同じ様に、鉄道網も航空路ネットも、集中管理による弊害で、サービスレベルの質の低下が、需要を抑えてしまっている。

国土交通省の機能の半分以上は、地域自治体の連合体、仮にその連合体を「州政府」と呼ぶ様にして、「特別会計事業」の州への分割と、「民営化」ならぬ「地域自治体経営への移管」を実施するべきであろう。
まずは、北海道と九州、四国からだけでも始めることである。【地域主権の実験】として・・・。

国の無駄使いを洗い出して地域の財源を拡充する公約を実現。

2010-10-25 | 交通問題・自動車
交通インフラの将来像を描いて整備と拡充を計画し、適切に維持管理していくことは、暮らしと生産活動を支える基本的な事業である。
これを国の事業として続けてきた制度が、100年以上も継続しているので、計画や財源は何時も国の管理下に置かれてきた。
道路についても、国道が主流で高速道路網も全国一律の基準で決められて、地域にとっては過大な施設になってしまうことも多くある。

空港の新設、整備についても、国の基準を満たさないと地域での新設が認められないので、過大な設備が当然の様に計画されて、施設の維持に経費がかかりすぎる事態になっている。
道路の計画も空港の整備も、地域社会の要求に適した規模と密度にすることが、適正な経費で利用ができるインフラとなる。

これを地域自治体に任せることが「地域主権」の方向に沿っているが、国土交通省は、自分たちの権限で管理・監督を全国一律にしておかないと、責任が果たせないと思い込んでいる。
それなのに、鉄道や空港の整備、支援については、北海道、四国などは手に負えないとして、責任を全うしていない。
予算は膨大に抱えて権限を行使することには執着するが、地域社会の要求に対応することには、予算枠と人員の不足を理由に、いつも先送りをしている。

このブログでは、2009年8月27日から30日にかけて、「地域主権」にしていくメリットを書いたが、それは、「民主党のマニフェスト」に書いてあることとほとんど一致していた。
しかし政権交代後に、既に1年以上を経過しているのに、民主党の政治家からは「地域主権」の具体的な政策の試案は提案されず、国土交通省からは、もちろんのことだが政策提示はない。
つまり、建前としては、地域主権にして地域の活性化の起爆剤にすると言いながら、実際の政策となると、中央の官僚と政治家で取り仕切ることが前提の考えに凝り固まっている。

それは、地域の自治体に任せたら、どうせロクな計画はできないで、財源を渡したら無駄使いが増えるだろう、と自分本位に考えているからである。
日本の地域自治体を県単位で考えると確かに小さすぎるし、人材も不足するであろう。
しかし、「州政府」レベルの自治体の連合体を想定すると、「EUを構成する諸国」の大部分の国と同じ経済規模がある。

例えば、中国地方をひとつの州政府でまとめると、デンマーク1国のDGPを超えるレベルであり、そのデンマークは、「環境事業ではEU諸国の中での先進国」である。
また教育政策には独自の工夫で取組み、今や先進国の中ではトップレベルの教育水準を達成し、人材育成の面で抜きんでている。

中央官僚と政治家が何時までも、自分たちがやる責任がある、などと、抱え込んで何もしない状況が20年以上も続いているのだから、「地域に権限移譲」は必然の時期になっている。
事業仕分けで無駄の削減をしたならば、その財源は「地域主権」への移行政策に回すべきである。

特会の事業仕分けで生み出した財源は地域に移管して任せる。

2010-10-24 | 国創り政治問題
事業仕分け第3弾で7省が所管する特別会計にいよいよ切りこむことで、10月27日から本格的な改革が始まる。
特別会計の支出総額は176兆円で、一般会計の92兆円の倍近くに達し、財務省のチェックも入らないで進められる各省庁の特権的な権益保持の源泉であった。
これに本格的なメスを入れなければ、日本は硬直した官僚主導による縦割り行政に縛られて、活性化する機会を奪われてきた。

今までの自民党政権は、この問題には立ち向かおうとしても、強固な官僚群とそれにとりつく族議員の抵抗にあって、いずれの改革にも失敗してきた。
民主党はこの問題を全面的に見直し、「必要不可欠なもの以外は廃止する」と公約に謳っている。
しかし、今までの実績を見ると、政権公約に対する取組みは、ほとんどが腰砕けの状態か迷走している段階にある。
頼りない政治家が多いが、ここは頑張って少しでも問題点を明らかにして、国民の前に提示して欲しいモノである。

だが「特会の事業仕分け」を実施しても、無駄な事業が洗い出されるだけで、その課題をどのような方向で将来に向けて再構築していくかは、仕分け作業の中では出てくることは期待できない。
たとえば、空港使用料などで空港整備を行う「社会資本整備事業特会」(空港整備勘定)は、悪名高い地方空港の赤字経営乱立の状態を引き起こしている。
この特別会計を廃止する方向は当然であるが、その後の空港整備をはじめとする「地域社会の交通、航空路の活性化」は、どのようにしていくべきか。
つまり、無駄使いは止めるのは誰でも言えるが、地域社会にとって本当に必要な交通インフラは、どのような制度で、きちんと作りだして維持していくかは、誰も取り組んでいない状態になる。

前回に書いた、鉄道整備、清算事業の役割の「鉄建機構」は、借金の補てんを受けた後の、不動産とお金を管理しているだけの様な状態に置かれて、地方の鉄道に対する支援の役割は、まったくと言ってよいほど果たしていない。
空港と航空路も県自治体に任せておくだけで、将来に展望が開ける様になるとは思えない。

そこで、ひとつの方向としては、地域社会における鉄道網と航空路関連の将来構築を、地域の自治体に権限と財源を移して、地域の為になる施策にお金を回す権限を与えて行くことができる。
例えば、北海道においては鉄道網と航空路の将来展望を、道と自治体の連合による組織で交通インフラ政策を一貫して受け持つ様にしていく。
四国においては、4県の合同の組織によって、鉄道と航空路整備の一貫性を持った計画を立てて、実施計画を作り、そこに国の財源を移管して任せることである。

そこで、必ず出てくる反対論は、地域の自治体関係者では、ロクな計画も立てられずに、また無駄使いに回るだけであるから、任せるわけにはいかない、と言う。
だが、この段階を越えなければならないのは、中央の政治家、政権交代でも同じである。
政権交代した政党の政治家は能力を伸ばし、地域自治体にも能力アップを期待することに尽きる。

事業仕分けだけでは改革は疑問。地域の交通政策の将来は。

2010-10-23 | 交通問題・自動車
財政赤字を埋めるために国債を発行して、国民から借金をすることが当たり前の様になることは慎まなければならない。
ということで、この借金を減らす目的で、今までに実施している事業を見直して、不要不急の事業は縮小するか、廃止、または完全に民間事業に移管する。
この作業を大々的に実施する「事業仕分け」が昨年の民主党政権交代後に実施された。

2010年の4月に独立行政法人を対象とした「事業仕分け」において、「鉄道建設・運輸施設整備機構」(略称、鉄建機構)に、利益剰余金が1.5兆円積み立てられていることに対し、「これほどの多額な積立金は不要」として国庫に返納を求めた。
国交省は「鉄道整備支援の為に使うべきだと」、国庫への返納は慎重にとして抵抗している。

この「鉄建機構」は、国鉄を分割民営化した時に、日本鉄道建設公団などを統合して、JR7社に分割された後の国鉄財産の清算事業を受け持っている。
鉄建機構の役員13人のうち5人が国土交通省からの天下りであり、前進の国鉄清算事業団を1998年に解散する時に、国が24兆円の債務(国鉄時代の借金)を引きついで、国民の税金で返している状態である。
国土交通省としては、JR北海道、四国、九州、JR貨物の4社の経営支援に充てる構想もあり、積立金を手放したくない。
国土交通大臣は、財務省側の国庫返納への要求には不快感を示していると伝えられている。

「事業仕分け」の評決の様に、国庫に積立金を返納するのが良いと、一般の人は思うであろう。
しかし、これは一面的、短期的な見方でしかない。
確かに、国土交通省の天下り先の独立行政法人の実態は問題であろうが、お金をとり返せば問題が解決に向かうとは限らない。

本質的な問題は、日本の地方の鉄道網をどのように整備して、地域の活性化を図るかにある。
それを、人口が多い地域のJR東日本、JR東海、JR西日本の3社の様に、民営化して自立できるレベルの鉄道企業に育てる政策は成功したが、JR北海道、四国、九州の3社は、いまだに自立できるめどは立っていない。
さらに、これから本格的に強化をしなければならない『貨物鉄道』のあり方を何も検討しないで、JR貨物の経営努力だけに任せている状況は、放置できない段階にきている。

この様に、日本の地域社会の活性化に不可欠な、鉄道交通を中心とした航空路、道路交通政策の将来展望を何も示さないままになっている。
ただ財源が欲しいということで、「鉄建機構」に余分なお金がたまっている様だから、国の財政に役立つように返納させて、一般会計の中での使い道に回したい。
これが財務省の官僚の感覚であり、日本の交通政策の将来は眼中にない。
こんな官僚の綱引きばかりでは、日本の地域交通の未来は暗雲の中に突入する。

この様な重要な国策レベルの課題こそ政治主導の必要があるが、「事業仕分け」では生まれない。
高速道路無料化の方向と、鉄道事業による地域活性化を両立させるのか、民主党政権では・・??

自分の都合と短期的な対応を繰り返してきた組織の弊害。

2010-10-22 | 国創り政治問題
歴代の政権が世界の潮流を見誤り、課題を先送りばかりしてきたツケが、今の日本の経済停滞を作りだしている。
自民党は1980年代までの成功体験にしがみついて、旧時代産業ばかりを優遇してきた。
この行き詰まりを打開しようとして、規制緩和と自由市場競争主義に突っ走り、規制を緩めることが経済成長につながると軽々しくも過信をして、今の格差社会を招いてしまった。

それを打ち破るべく、期待を担って政権交代をした民主党政権は、すでに1年経っているのに、基本政策において迷走状態を続けている。
判断の過りにより失敗を犯したのは、旧産業界と政治の世界だけではない。
労働界も大きな失敗を重ねてきて、労働者の働く条件を1997年以来、低下させ続けてきた。
その代表である「連合」が、やっとその事実を認めて反省の弁をのべ、来年の春闘からは方向を変えて運動すると発表した。

その中身の一部を引用すると、給与総額が1997年にピークを重ねたあとは、1年毎の物価水準や経済環境の変化を重視して、ベースアップや労働条件の要求を作って交渉を進めた。
そのために、長期的な賃金水準の低下に流されてしまってきた。
2009年の労働者の現金給与総額(賃金指数)は、1997年に対して87.6%の水準に低下している。
また、経営側に有利な非正規社員の増員には、なんらの対策も要求もしないで、正社員のみの労働条件を交渉の対象としてきた。
「非正規労働者が増えれば増えるほど、日本全体の働く者の労働条件がどんどんボトムに向かっていく。」
これは、連合の会長が記者会見で述べたことだが、今頃になってやっと、その認識になったと言うのは、あまりにも先を読むことをしてこなかったと言える。

今回の民主党の政権交代を機会にして、もっと「長期的な働く人の視点に立った政策」を産業界や政界に要求を出して運動をするべきである。
非正規社員の賃金を正社員の賃金に近づけることも要求していく方針とし、正社員化を促すことも要求に入れて運動をする。
しかし傘下の労組では、非組合員である「非正規社員」の方に多くの配分を要求する方針には、反発も予想されると言う。
何よりも、自分のところが優先だ!という考え方では、日本はさらに経済停滞を続ける。

労働界に限らず、官庁も自分のところの都合ばかりを優先する組織である。
ここ数回にわたって採りあげた「法人税の減税」についても、経済産業省の試算では『5%の法人税の減税に必要が財源は約1兆円』と説明をしていた。
マスコミの報道でも、この数値が政府の統一情報の様に流布していたが、ここにきて財務省側からは別の試算結果が公表された。
それによると、『国と地方の税収は、約1.6兆円から2.4兆円の減収』との見通しで、中間予測の2兆円の減収とすれば、経済産業省の試算の2倍にもなる。
これでは官庁も自分のところに有利な試算データばかりを出すので、信用できる組織ではない!

迷走状態では先行投資は慎重に。これが日本経済低迷の原因。

2010-10-21 | 経済問題
民主党内閣は経済成長重視、雇用の確保と創出をうたい文句にして、政策課題に取り組んでいる。
その中身は自民党政権時代に検討課題に上った政策の焼き直し的なモノがほとんどである。
法人税の減税による政策は、自民党政権時代からずっと続いている製造業の海外移転を、食い止める為として、何度も課題に挙がっていた。
しかし、自民党は何だかんだと言って、法人税の引下げを渋って先延ばしをしてきた、先送り主義政権である。
民主党は有言実行を標榜して、この先送りをしないと意気込んでいるが、早くも検討不足の実情を露呈している。
日本企業の国際競争力を高めるには、法人税率の引き下げが必要としている説明は一面的で、実は実効税率の面ではかなり大企業が優遇されている。

自民党政権時代でも、その都度の経済状況に対応する為に、国内での設備投資や研究開発投資などをしたときに、税金が安くなる優遇措置を講じてきた。
それらの優遇措置と、社員の年金や雇用保険の企業負担になる社会保険費用を合わせて、実質的な税負担は、経団連の会長企業の住友化学では27.6%にすぎない。
これをさらに5%下げる必要がどこにあるのだろうか。

日本で最大の利益を上げるトヨタ自動車でも、2009年度の実質的税負担は31.8%にとどまる。
これ以上の税負担の軽減をしても、企業の内部留保(200兆円以上)を増やす効果があるが、国内への投資による経済成長に効果があるとは考えられない。
この様な実情を見れば、「このお金を国内で使ってもらって将来の競争力強化に使って欲しい」と言いたいのは当然であろう。
この言葉は、法人税の減税の検討を指示した菅首相の言葉でもある。

このことは、単純に法人税などを国際水準に引き下げる検討などは、ナンセンスそのモノであると政府首脳も考えていると見れる。
つまり、200兆円モノ国内にある資金を、経済成長に寄与して将来の日本の産業を支える分野に、積極的に投資を誘い出すことが急務なのである。
菅首相は、つい先日の法人税引き下げの財源として、研究開発投資などの優遇措置を縮小していく方向を指示していた。
つまり、研究開発投資優遇は減らして、企業に対する法人税優遇で内部留保資金を豊富にすれば、研究開発投資が増える、と思っていたと言うことである。

それで、この発言の変遷ぶりを見たら、企業経営者はどの様に判断するであろうか。
民主党政権の言っていることは、「行き当たりバッタリの、有言検討内閣で迷走ばかりをしている。もう少し、様子を見た方が良いだろう。」
『そうだ、鳴り物入りで始めた国家戦略室構想も、半年もしないうちに首相の諮問機関に格下げ縮小をした。それが、また今度は新生国家戦略室構想だ!と言いだしている。』
「この様な迷走内閣の言うことを信用したら、それこそ企業経営を危険にさらす。」
「中国リスクも問題だが、日本の迷走内閣リスクに気をつけなければ・・・・」と。嗚呼・・・!

企業も家庭も今の時点で投資をして20年以後は丸儲け。

2010-10-20 | 快適エネルギー社会問題
日本の温室効果ガスを削減する具体的な政策を実施する場合に、省エネルギー設備の導入と、再生可能エネルギーへの転換が手段としてあげられている。
これを環境対策の優先課題として進めるには、日本が削減量を国際的な公約として掲げることで、技術革新と普及が進むという想定をしている。

しかし、産業界の一部にはいまだに、削減量の目標を高く設定することは、産業と家庭の両方に負担を強いるから、目標は低く設定して無理のない対策手段に限定していくべきだと信じ込んでいる人たちがいる。
これが、日本の旧産業界の経営者層の大半を占めているから、日本の成長を抑えてしまい、ここ10年くらいの間に技術革新にブレーキが懸ってしまった。

削減目標を25%に想定した対策にはどのくらいに費用がかかるかを検討して結果が、環境省の委員会から発表された。
2020年までに削減に必要な対策に投資をする費用は、年間で約10兆円が必要になる。
この対策内容は、「太陽光発電設備の導入」「燃費の良い自動車(エコカー)の導入」「住宅などの断熱性向上」など、導入において費用が余分にかかるもので、初期には負担が生じる。
しかし、それによって節約できるエネルギー費用で、初期の投資を回収していけば、遅くとも2030年までには全額が回収できる。
太陽光発電や住宅設備は、20年以上は使うので、トータルとしては資金の節約になることが判明した。
つまり、地球環境対策はズバリ、経済成長対策になることはハッキリしている。

民間企業における省エネルギー化設備などには、初期の投資が必要だが5年~10年で回収が可能な対策が、探せばいくらでも見つかる状況である。
ただし、企業にとっては設備を抱えるリスクを避けるために、今までの旧型のエネルギー消費の多い設備を使えるだけ使いたいとの思惑が大半である。
せっかく、省エネルギー設備を導入しても、今の様な経済状態が先行き不安では、仕事がなくなってしまうリスクを覚悟していないと、会社が傾いてしまうからである。

この様な状況であるから、政府や公共事業体が率先して、省エネ設備、再生可能エネルギーを導入し、それをさらに拡大する様に、民間の企業や家庭向けに、初期の投資段階に積極的な導入を補助する制度を創って進める政策が必要になっている。
設備の新規導入や置き換えによって、投資、需要が拡大して雇用が増えることは確実である。
それが、さらに新規の需要を呼び起こす原動力となり、経済成長が加速する。

この導入初期に投資をした設備は10年~20年で資金回収できるので、その後は進化した技術レベルの設備に置き換えることも出来て、将来は需要増も期待ができる。
その時期には本格的な新産業の芽が育っているので、いっそうの飛躍が期待できる筈である。
今、このような展開に対してブレーキをかけ続ける経営者は、退陣してもらわないと、日本の次世代産業の育つ時期を大幅に遅らせてしまう。老害事眠党政権時代の様に・・・・・。

海上利用の風力発電産業を国家戦略室の優先課題にすべき。

2010-10-19 | 海洋産業問題
前回に旧来型の製品製造の海外移転が20年来に渡って進み続け、今後もその潮流は止めることは不可能であろうと想定した。
その代わりに最大限の人材を動員して、国内に蓄積された資金を優先的に投入し、新規の雇用を生み出す産業に力を入れるべきと書いた。
その事例として、洋上風力発電の計画的な研究開発と拡充政策が必要である。

本日の朝日新聞(朝刊21面、科学)に、「風力発電、海上に進出」との表題で、技術的な解説と普及に向けての課題を詳細にを伝えていたので、その中身を抜粋しておきたい。
題して『洋上風力発電、「普及する着床式」、研究進む浮体式』である。
このブログの2010-10-13において『浮体式風力発電、実用化に向けて来年度から。10‐05』の報道の一部を採りあげておいたが、それをさらに拡充する必要性を強調したい。
環境省が来年度から15億円の概算要求をしていく計画に留めておくレベルではダメである。

朝日新聞の記事は、大きなスペースを割いて、現状を詳しく説明している。
「着床式風力発電」とは、普及が進んでいる陸上風力発電に対し、さらに大型の風力発電機を水深が50m以下の浅い海底に基礎工事をして、その上に風力発電機を建設する方式である。
海上においては、陸上よりも平均風速が高い地域が多く、同じ規模の設備でも1.5倍以上の発電能力が期待できる。
さらに、海上を輸送すればよいので、さらに大型の風力発電機を計画することも可能である。

建設工事費は2倍程度に上がるが、トータルでは発電コストを現状以下に収めることも可能であり、ヨーロッパ諸国ではすでに、イギリスやデンマーク、オランダなどで、普及が進んでいる。
日本ではまだ、茨木県、北海道、山形などの沿岸に21基の建設実績であるが、陸上では適地が既に飽和しているので、今後は着床式洋上風力発電が普及拡大していくであろう。
関係省庁の後押しが適切ならば、日本が風力発電の普及大国になることも想定できる。
今後の2020年までに、洋上風力発電の技術進化を国策で進めるべきであろう。

さらに、『浮体式風力発電』の技術開発となると、これはまだ、欧州でもノルーウエイなどの先行例がわずかにあるだけで、未知の技術領域である。
着床式の技術をさらに磨きをかけるとともに、造船技術を駆使した浮体式(水深50mから200mの海域に設置)の風力発電機を世界に先駆けて実用化すれば、この分野でのトップランナーになれる。
発電した電力を送電可能な「沖合30kmまでの海域」に設置をしていけば、総量で5600万キロワット時の発電量が期待できる。

これは、現在までの風力発電設置による総発電量220万キロワット時の25倍に相当する。

国内の設置可能量だけでも、新規の雇用創出効果は大きなレベルになり、さらに世界で最先端の技術を達成して価格競争力を獲得できれば、無限に近い海外への輸出により、造船大国の夢の復活も正夢となるであろう。
この様な課題こそ『国家戦略室』の優先課題にして、各省庁の利害を乗り越えるべきである。

製造業の雇用減少を覚悟し、それ以上の雇用創出を図る。

2010-10-18 | 国創り政治問題
製造業の海外生産比率が1990年の5%から2009年には25%に上昇したことを前回に書いたが、これが自動車や電機・電子産業などの、日本のお家芸と言われて経済成長をけん引した分野では、さらにこの比率が上がっている。
自動車製造では、2002年に既に比率は41%であったのが2008年には52%に達し、日産自動車に至っては、日本国内向けの小型車マーチをタイの生産に移転してしまった。

また電気・電子製造業では、2002年に36%の比率が41%に上昇している。
製造業に働く就業者数は1990年には1488万人であったが、2008年には1100万人に減り、全体に占める割合は17%にまで減少した。
18年間にわたって388万人の雇用が海外製造に流出したことになる。
毎年22万人分の製造業の雇用が減り続けてきたが、これに歯止めをかけることには、ことごとく失敗してきた。
今後の10年間でさらに220万人分の製造業の雇用が減ることを覚悟しなければならない。

減少傾向の雇用を増やす対策を打ち続け、国内の需要を掘り起こして、日本の価値のある資源と能力を開発しなければ、日本人の大半はマスマス貧乏な暮らしを強いられることになる。
資産を持っている一部の人は、円高によってさらに裕福になると思われるが、その資産を日本の国内産業に投資をしてもらう必要がある。
だが金融の自由化をしている現在では、国内への投資は割損であることは明確で、よほどの有利な条件を提示しなければ、国内への投資はしない。

新規の投資がなければ雇用機会は増える可能性がない。
ではどうするのが良いのか。
前にも書いた様に、第一に再生可能エネルギー設備への投資を促進させる為に、有利な条件になる様に、政策的に誘導することである。
【太陽光発電設備】は、現在では割高で投資の対象にはなりにくいが、これに対する助成制度を拡充すれば、日本での太陽光発電設備業が拡大して、他の産業にも波及効果がでる。
洋上風力発電の計画的な拡充を図り、将来には【浮体式風力発電】の設備を国策として進める。

また、森林資源を活用して林産物の自給率が現状で20%にまで落ち込んでいる状態を、2020年までに50%に向上させる目標を掲げているが、これに力を傾注して、林業と製材業、建設業(木造建築の推奨、優遇策を講じる)を活性化し、さらに、林地における残材などは、ほとんどを燃料化して利用することで、【バイオマスエネルギー産業】を盛んにできる。
技術的な進化を図れば、日本の森林のバイオマスエネルギーの利用可能量は、日本の原油輸入量の10%相当までを代替できる。

さらに、現在では細々としか実施されていない【海藻の人工栽培】を盛んにして、各地の沿岸で海藻類からの有益な産物を抽出し、残渣資源はすべてエネルギー利用に回す。
これらの関連技術は既に実用化の見通しはついているので、国策として促進政策をとれば、海産物産業が一気に活性化する。
この様な政策を実施すれば、国内産業が新規に興り220万人以上の雇用が間違いなく創出される。

輸出型の製造業界を優遇する政策の行き詰まりを露呈した。

2010-10-17 | 国創り政治問題
日本の製造業の海外への生産拠点流出は、今に始まったことではなく、1990年代のバブル崩壊以後に継続的に進展してきた。
国際協力銀行のデータによれば、「加工型製造業の海外生産比率」は1990年には5%であったレベルが、2009年には25%に達している。
この原因は、日本の人件費が相対的に高く、円高ドル安傾向が潮流となった影響が大きい。

商品・部品の物流費のコストダウンも影響が大きい。
以前では、日本での販売商品を海外生産するメリットは、輸送コストが高いので、海外に製造を移す商品は輸出向けがほとんどであった。
しかし、コンテナ輸送の技術・システムが1990年以降も進化をし続けてコストダウンが進み、東南アジアでの生産のメリットが大きくなった。
自動車などのかさばる商品でも、日本国内向けの小型車を海外で生産して、海上をはるばる輸送してきても、国内での生産コストよりも、割安になる時代に突入した。

以前は、自動車などの総合的な商品は、技術レベルの安定した日本国内でないと、品質の維持が難しいと言われてきた。
しかし、タイなどの発展途上国は着々と技術者を育て、裾野の広い自動車部品なども自国内での生産ができるまでに、技術者の層も広がっている。
人件費は日本の5分の1ほどで、設備類の導入を日本から行えば、品質が同程度の自動車が2割程度のコストダウンができる。

日本の中央官僚と政権は、この海外流出の潮流を甘く見ていた。
人件費が高いならば、割安の派遣従業員制度を広げて企業の負担を減らせば、流出の傾向に歯止めをかけることができると、自分に言い聞かせて実施してきた。
今では年収で「200万円以下のワーキングプア層」が、働く人の3分の1にも達してしまった。
これが、国内消費の低迷とデフレ傾向に拍車をかけたことは言うまでもない。

人件費だけでは流出を抑えられないとして、今度は法人税の減税をするべきだと、産業界は声を大にして主張している。
しかし、この税源の約1兆円は、他の政策を削っていかないと生み出せない。
しかも、タイ政府などは、自動車部品工場などの進出を期待して、法人税(30%)を一定期間は免税にする優遇政策をとっている。
日本での法人税35%を30%に引き下げたからといって、何の引き留め効果もないことは明らかである。

法人税減税分の約1兆円の財源を使って、国内への雇用創出に効果の期待できる分野に、政策誘導的に産業を育成することが、もっとも効果的である。
輸出型産業の落ち込みを防ごうとしてきた政策は、結局、日本の貿易収支を黒字のままに維持することで、慢性的な円高傾向を生んできた。
デフレを止めて、円安の方向に転じるには、内需型産業に力を集中するしかない。