庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

物の移動の自由化は進歩だが、お金と人の移動の自由化は。

2016-06-30 | 経済問題

イギリスのEU圏からの離脱選択は、欧州の問題として捉えるだけではなく、「先進国家の将来のあり方」と、開国の進め方の適否の難しさをあらわにした。

「物の移動の自由化」は、大昔から勧められてきて。従来技術では輸出入が困難であった物も、技術進化で安価に移動ができるようになった。

関税をかけて、その移動の自由度に制限をつけることは、じっくりと時間をかけて、関税撤廃の方向に進んできた。

これが、人類全体の平和と生活の進歩につながったのは間違いの無いことである。

EU圏の共同市場の理念は、物の移動の自由を阻害する制度を極力なくして、活発な移動と交換ができる社会を目指している。

 

そうはいっても、違法性のある物、危険な製品は、移動の自由から完全に排除されなければならない。

麻薬や銃砲は、制限が厳しく決められ、製造事態が厳重な管理下でしかできない。

ところが、EU圏の諸国での管理体制のレベルに大きな差があり、違法性のある物が製造されて、地下ルートをつうじて流入した後は、国境がないのも同然の「EU

諸国での流通は自由に放任」される。

最近時の自爆テロや、無差別銃砲乱射の殺人など、防ぐためには国境における厳重な検閲が必要になっている。

大昔から進展してきた「物の移動の自由化」でさえ、国境を取り払うのはデメリットの方が大きい現実である。

 

これが、「お金の移動の自由化」を目指している「EU圏の制度」では、「共通通貨の強制」は、さすがに弊害の方が大きくなった。

イギリスは早々にこの弊害から逃れる選択をして、初めから「共通通貨制度」への参加を見送っていた。

一つの経済活動圏内で、弱体の国や地域が生じた場合には、全体的な経済力を活用して、弱体の地域、国を積極的に支援するのが、理念でなければならない。

ところが、[EU圏の実力]では、ギリシャ、ポルトガルなどの弱小国の支援には懐疑的で、緊縮財政を強制して、支援は最小にする方向である。

 

共通通貨を利用する前提には、【弱小地域の自助努力が先】にあり、ドイツのような経済強国の支援は、ドイツ国民の施しの善意を元にしている。

これでは、弱小国の経済強国の国民の間に、「うらみ」「嫌悪感情」「蔑視」などの弊害が蓄積していく。

これが、民族的地域で統一された国の中であれば、弱者を救うのは強者と富裕層の責務として、義務感で統一されている。

しかし、経済的なメリットで共有している「共通通貨制度」は、ドライな論理だけが先行して、各国の国民の善意は後回しの理想論に退けられている。

その上に、「人の移動の自由化」が、この感情を顕著にして弊害が生まれる。(続)

 


EU圏縮小による経済の影響を大騒ぎしすぎのマネーゲーム。

2016-06-29 | 経済問題

イギリスのEU圏からの離脱は、1993年に欧州連合が発足した以前の状態に戻ることになるのだろうか。

その頃はイギリスの経済が今と違って、低レベルの経済状態であったとしても、イギリス人が選択の責任を負うことで、他国がとやかくいうことではない。

1993年以前の経済的な制度に戻りたいのは、イギリス国民の意思次第なのだ。

現在のEUの主要国が、イギリスのGDP分の16%が、1993年の状態になるだけであれば、関税ゼロの市場が16%分だけ縮小したことになるだけである。

イギリスとの貿易が停止するわけでもないし、例え、関税撤廃のメリット分だけは、貿易量が縮小するが、実体経済への影響はわずかなものであろう。

 

1995年にスエーデン、フィンランド、オーストリアが加盟した状態までは、経済的な水準の差異が、ある程度以内に収まっていた。

その後の1999年の「共通通貨ユーロの導入」が、将来の理想の欧州連合に向けての希望のある「大きな進歩」と喝采をあびてスタートした。

ところが、2004年に旧ソ連圏を含む小国の10ヶ国の加盟(チェコ、ポーランド、など)に進展すると、経済的な実力の格差が大き過ぎる国の影響が出てくる。

だが、日の出の勢いに乗るEU圏のリーダー達は、政治的統合が必要だとして「EU新基本条約」の制定に走りだし、2009年には発効した。

バラ色の将来に向かっていると、EU圏の未来を夢見ていた。

 

しかし、その間には【ギリシャのような弱小国の不正】がはびこりだし、中央の権力を行使して「緊縮財政を強制する中央の指令」が、幅を利かすようになった。

【共通通貨の最大の弱点】である、経済格差のある国々と経済が強い国との不公平な状況を、修正する制度もなく、弱小国の国民に緊縮財政を強いるだけだ。

これでは、高い失業率を早期に改革できる方策を禁じられている状態である。

経済支援を要請する代わりに、弱小国の国民主権は狭められる一方で、経済への不満だけでなく、政治的にも抑圧されているとの反発する意識が強まった。

現在の段階では、経済的な弱小国ほどEU圏に属するデメリットを感じて、反発している国民層が多い。

 

一方では、お金と事業を独占的に支配している階層には、巨大な消費市場が拡大し、ユーロ圏の国際的なシェアが大きく、金融市場面での競争が有利になる。

弱小国の底辺労働者の苦境が一部であるにしても、それは、労働力の移動の自由化を進めることで、全体的な労働力供給の拡大が図れると楽観視した。

それは、賃金抑制に効果があることで、経営側の「資本収益率向上」の貢献できる大きなメリットである。

つまり、お金と経営を独占して、資本収益率を高く維持する側では、【人の移動の自由化】を進める「EU圏の拡大」が、マネーゲームに最適な環境を提供する。

イギリスの「EU圏からの離脱」は、資本家側にはアリの一穴になるのだ。(続)


人の移動の自由化は過ちで、為替レート調整は必須の手段。

2016-06-28 | 経済問題

EU圏を構成した諸国の間では、物の移動の自由化が図られて、経済発展に貢献したと言われている。

さらに、人の移動の自由化も経済発展に効果があるとされて、新規の低賃金諸国が加盟して、一部の移民した人たちは恩恵を受けた。

物の移動の自由化はEU圏を構成しなくても、関税ゼロの自由貿易協定を結べば、活発にできるが、移動の管理までもが省略や簡略になると、問題が起きる。

今回のフランスのパリの同時多発テロは、ベルギーからの爆弾移動で実施された。

物の関税の撤廃と、移動の管理撤廃では、安全性の面でも大きな違いがある。

 

EU諸国が「理想とした国の壁を無くしていく」ことは、物の移動のチェックを無くすリスクを、現実の問題として突きつけたのだ。

さらに、低賃金諸国からの低価格品の輸入の自由化は、先進諸国の物価が低下する速度を速め、【働く人の賃金抑制に大きな影響】を及ぼした。

その結果は、ほとんどの先進諸国ではデフレ経済に陥り、需要不足の慢性化によって経済成長は鈍化の一途である。

つまり、物の移動の自由化を進めた上に、人の移動の自由化も加速したことで、軒並みに経済成長率を引き下げるデフレ経済に進んでしまったのだ。

 

それでも、EU圏を構成する諸国のエリートたちは、「未来の理想像を描いて国境を取り払うこと」が、人類の進歩に繋がると信じ込んできた。

遂には、言語も文化も違う異民族の国を新規に加盟させて、大きな市場を構成することが「経済成長戦略」に有利だと信じ込んでいた。

たしかに、低賃金労働者の供給が増えて、市場規模が広がる効果で、先進的な分野での成長が促されて、ドイツの様な地域では経済成長が目覚ましかった。

しかし、イタリア、スペインのような周辺諸国では、成長が鈍化して失業率の増加と賃金抑制の影響をもろに受けて停滞してしまった。

それでも、イギリスの様に「共通通貨の制度」から外れていれば、為替レートの変動という手段によって、失業率の低下をカバーすることも可能だった。

 

しかし、ドイツの好調な経済による[EU圏の全体水準]で、世界との相対的な取引である「ユーロ圏のレート」が、引き下げることはできない。

フランスの経済も、現在の為替レートのユーロ水準が、もっと低下しないと経済的には適正にはならない。

しかし、いまさら「共通通貨の制度」から離れることは、経済的なデメリットも多くなり、実行するには障壁が大き過ぎる。

フランス人の名誉にかけても、ユーロ圏の中心的な国の体裁を維持したいだろう。

慢性的な高い失業率を、どの様にして克服するのか、いまだに対策案はない。

日本は幸いにして、円は国の政策次第で円安に誘導できるのが救いである。

だからと言って、日本円が安定的通貨でもないのに、よそがひどすぎる。(続)


EUの次の難題はユ共通通貨ユーロのデメリットが浮上する。

2016-06-27 | 経済問題

イギリスのEU離脱の影響は、人の移動の自由化が制限されることで、東欧諸国の低賃金労働者の移動が、イギリス以外のEU諸国に向けて流れが変わる。

ドイツの様な経済が好調な国では、人手不足の解消の手段になるので、困ることはないが、フランスの様に【失業率が高止まりをしている国】にとっては問題だ。

通常の国別の通貨を採用している場合には、失業率が下がらない状況では、雇用を増やすためには、政府が需要の創出を図るために財政出動を実行する。

有名なケインズ政策であるが、EU圏のルールでは、各国毎の自由に財政出動をする事が制限されている。

財政赤字の放漫な垂れ流しは、EU圏諸国への経済的な負担になるからである。

 

ギリシャの放漫財政は、データを偽造し隠蔽したことで、お粗末の一語に尽きる。

発覚後は、EU政府が厳しい財政再建計画を義務付ける事で、ギリシャの破綻を支援金でなんとか支える事になった。

一番裕福なドイツの様な経済好調な地域の住民が、お粗末な政治と放漫財政の後始末で、ギリシャの住民を支える。

しかし、緊縮財政と賃金抑制を強要されるギリシャ国民には、EU政府は封建領主の様に思える憎悪の対象になっている。

【お金の支援のもとになる税金を余分に払うドイツの勤労者】にとっては、共通通貨ユーロ圏のギリシャ国民を支援する義務はないと感じている。

 

本来の国別通貨の制度であれば、財政運営や経済政策に失敗した国の再建計画には、通貨市場のルールに沿って、為替レートが切り下げられる。

ギリシャ全体の価値が下がる事で、対外的には輸出に有利になり、ギリシャの様な観光国では、外国人観光客の来訪が増えて、雇用と経済に貢献する。

その代わりに、輸入品の物価は上昇するが、EU政府に強要される結果ではない。

自国政府の失敗は、為替レートの変動によって、時間をかけて再建されるのだ。

ところが、共通通貨を採用していると、為替による調整は不可能で、富裕国の国民の税金で、失敗国の勤労者の支援をする必要が生まれる。

ドイツ国民は、恨まれながら税金を取られて、支援を続ける羽目になるのだ。

 

EU圏を構成する諸国は、経済水準的に近い国同士の場合には、この様なアンバランスな発展と経済状態は、生まれる可能性が低かった。

しかし、ギリシャの様に【経済的な弱小国を加盟】させたり、東欧諸国のように【経済的な発展が未開拓】国の参加を増やす段階で、アンバランスが顕著になる。

その段階で「人の移動の自由化を制限する」方策を検討すべきであったのだ。

また、共通通貨の導入時には、財政規律だけの規制をしても、失業率が大きく変動する時代には、リスクと対策を十分に検討すべきであったのだ。

ドイツの様な富裕国が、放漫財政で破綻した国の支援をして、さらに失業対策が十分にできない政府には、財政出動の要請に応じる準備が必須なのである。(続)


EU圏の離脱は軽度の経済的影響だがユーロからの離脱は?

2016-06-26 | 経済問題

イギリスのEU離脱は、直接的な要因としては「移民の移動が自由化」された状況に、なすすべがないのは「国家主権を他国に取られている」との不満である。

ロンドンの様に、低賃金の東欧諸国の移民が押し寄せる懸念のないところでは、

「EU残留」の経済的メリットが多く、国家主権の一部の放棄は問題ではない。

しかし、東欧諸国の移民急増だけでも、地方諸都市の職場が奪われて、その影響で低賃金労働者が増える現状に、中央政府は何も対策が打たれない。

これでは、キャメロン首相の不信任決議ともいえるEU離脱は、当然の行き着く決着点であろう。

つまり、中央政府に近い住民には、地方諸都市の悲鳴は聞こえないのだ。

 

20世紀の後半から、グローバル化が経済成長のメリットがあると、「市場経済自由化論者」たちの主張に引っ張られて、資本の移動自由化、物の移動の自由化、労働力の移動の自由化が、勧められてきた。

EUの拡大は、このグローバル化による自由化は、正しい路線だとの理念先行の愚挙であることが明らかになってきた。

人の移動のチェックや制限ができないデメリットが、先進国の底辺労働者にしわ寄せが及んで、失業率の上昇や低賃金化が加速してしまう。

賃金水準の低い国の新規参加が進めば、その国の労働者がより高い賃金の職場がある国に向かって、集中的に移動するのは、当然の成り行きである。

 

しかしイギリスの保守党政府は、この事態を予測できたのに、地域社会の不満を軽視して、地域経済への支援を怠っていたのである。

低賃金の国の「EUへの新規加盟」が進めば、低賃金労働者の大量移動が起きるくらいの予測は当然の責任であるが、エリートばかりの政府はできなかった。

今後は離脱していない「EU諸国」の中で、低賃金労働者の大量移民が起きる地域では、EUに残留する弊害に対して、政府の経済支援を要求する動きが出る。

イギリスの場合は、「共通通貨のユーロ」を採用していないので、離脱による経済の混乱は、軽度に済むであろう。

しかし、ユーロから離脱する選択の場合は、小国のギリシャの様な場合でも、大きな影響が予測されている。

 

イギリスの経済的なメリットが、共通通貨によるデメリットの方が大きいと判断した政府の英断であり、今回のEU圏の離脱の波紋が広がるのを限定している。

それでも、イギリスのロンドンには、世界で最大の金融センターが集結しているので、金融関係事業への影響はしばらくのあいだは、デメリットになるだろう。

世界的に見れば、ロンドンに金融センターを集中する必要もないので、分散化が進んで、イギリス以外の金融センターが恩恵を受ける。

ロンドンがイギリスから独立してEU圏の中に止まる事が、これから議論される。

そのような課題が生じる事は、イギリス政府なら十分に織り込み済みであろう。


イギリスのEU離脱中のアベノミクスのエンジンはどこに。

2016-06-25 | 経済問題

イギリス人が主権を取り戻すとして、国の決定権を回復して「関税がゼロでなくても経済が順調に回る」との見込みで、[EU政府]の支配から離脱する交渉に入る。

離脱交渉には最短でも2年間を要するので、その交渉期間中は経済的な制度が交渉でどうなるかは不透明である。

この不透明な期間の経済的リスクは、イギリスのポンド安を引き起こし、株価の下落を招いている。

イギリスや[EU諸国]の株価が下落するのは分かるが、日本の株式市場が大きな影響を受けて、11%以上も変動する実態は、どのように理解すれば良いのか。

 

それは、アベノミクスの経済政策が、円のお金を大量に市場に供給することで、円安誘導を図って「仮の輸出競争力」を生み出したことに依存する。

為替レートの急激な変更によって、マネーゲームの対象に円の売買状況を、意図的に売りが増える状態を作り出してきた。

円が過剰であれば円安誘導の流れとなって、1年の間に3割以上も円安になったのだから、一時的な企業収益の改善の見込みが「株価の上昇」をまねいた。

これによって、大手企業と富裕層に予期せぬ資産増加があり、おこぼれとして「国に納める税金」が3年間で13兆円も増えたのである。

 

安倍政権は、この数字上の収入増加を「アベノミクスの果実」と言いふらし、これを財源として「待機児童対策」や、消費増税の延期で実施できなくなったら「福祉関連の手当」をわずかに実行する。

2年半の増税延期期間ないに、経済成長が動き出せるとして、この3年間の失敗政策を取り繕うことで、政権の延命を図る作戦だ。

問題は、意図的に操作してきた「円安誘導」は【イギリスのEU離脱交渉でブレーキがかかる】状況になった。

イギリスの「ポンド安」、EUの「ユーロ安」が長引いて、そのあおりで円安誘導は効果がなくなり、円高に移行する。

 

安倍政権は、デフレ脱却のためには脱出速度をさらに加速する必要があり、それには「アベノミクスのさらなる加速」を実行する、と豪語して選挙戦に臨んだ。

「エンジンを最大限にふかして、脱出速度を上げていく」との宣言は、一体、どのような具体策なのか、さっぱりわからない状態だ。

果実を産んだと言う政策は、「円安誘導と株価上昇」だから、これをさらに円安に誘導して株価を急上昇させる」という意味なのか。

日銀の政策はすでに効力を失って、超金融緩和をやめて「マイナス金利政策」に転じている。

マイナス金利では、円安誘導にはならず、株価の上昇よりも下落を招く効果だ。

では、アベノミクスの取って置きのエンジンは、一体どこに装備してあるのか。

選挙期間中に提示されることはないだろうが、選挙後のお楽しみなのか。(続)

 


EUの理想像は未熟な思考によるエリート層の幻想に終わる。

2016-06-24 | 国創り政治問題

イギリスは「人の移動の自由化」に歯止めを掛ける選択した。

物の移動の自由化は、今後もさらに進展する世界的な潮流だが、関税の撤廃に絶対的な価値があるとした「EUの目標」に異議を唱える形となった。

関税が復活して、輸入する資材や商品の価格が上がるデメリットを承知の上で、「低賃金国からの労働者の移動を止めるメリット」を優先したのである。

イギリス人が国民投票で判断したのは、「EUの理想像」に疑問がある、との基本的な問題点をあぶり出したのである。

この理想像は、十分に検討されて「現実の問題を解決する方向」が、提示されていないままに、エリート層の幻想に埋没している現実を浮き彫りにさせた。

 

報道によれば、イギリスの各地で「東欧系の移民が急増して、イギリス人が職場を奪われる。」との問題が大きく浮上している。

しかも、[EUへの拠出金]が膨大であるのに、この低賃金労働者の移動に自由化には、[EU政府]はなすすべなく責任を放棄している。

東欧諸国の賃金水獣が低い状態は、そう短期間には解消できないのは明らかで、経済成長が長期にわたって続かない限り、東欧系住民は移民を目指すのだ。

イギリス人の過半数が、この問題に対応できない[EU政府]を信用しないのは、当然の判断である。

しかも、[EU政府]の幹部、リーダーを選挙で選ぶ権利すらない。

 

一国の制度であれば、「人の移動の自由度」に制限を加えるのは、当然の権利となっているのに、[EU政府]の決定に従うしかない制度は、明らかに欠陥がある。

イギリス政府は、この低賃金労働者の移民急増問題を軽視し、地域での職場を奪われている中間層以下の働く人を、切り捨てる政策判断をしたのだ。

[EUへの拠出金]が大金でも、残留による経済的なメリットは、はるかに大きいとの理屈はエリート層の論理で、現実の生活基盤を奪われる[EU]は不要である。

イギリス政府は、「お金の移動の自由には制限を加える」べきと判断して、「共通通貨ユーロ圏」には、一線を画す判断をした。

ポンド貨幣を維持するメリットの方が、「ユーロ採用」よりも大きいと判断した。

 

ところが、「人の移動の自由化」には、無防備に賛同して、【エリート層の夢物語】に乗ってしまったのである。

エリート層が陥りやすい「大きな落とし穴」は、「全体がメリットを受けるのが優れていて、一部に不満が出るのは、我慢してもらうしかない」、と切り捨てる。

高邁な理想論を掲げて、自分たちの理屈に酔いしれている未熟なエリート層には、

社会の片隅に押しやられ、疲弊した地域社会の人の気持ちが理解できない。

イギリス人のエリート意識と、「現実生活から遠くはなれたUE幹部」には、人の移動に自由度を上げることは、良いことだとの幻想にひたっている。

少なくとも、「人の移動には節度を持たせる制限」が必須であると証明できた。(続)

 

 


成長を果たせば配分政策が実行できるとの理屈は正しいのか。

2016-06-23 | 国創り政治問題

安倍首相は盛んに経済政策の成果として、税収が21兆円の増収であったことを強調している。

いや、不本意な税収増の「消費増税の増収分8兆円」を除けば、13兆円が「アベノミクス経済の成果」だと、宣伝する数値の根拠になっている。

さらにアベノミクス政策を加速するエンジンをふかして、税収増加を図れば、配分政策にまわせるお金が、財源として増える「経済政策が必要だ」としている。

今までに「配分政策」を軽視していたわけではないとの言い訳に聞こえるが、

とにかく、国庫への税収増加は、図れているのだ。

それで、格差拡大の流れを転換できるなら、「成長と配分政策」とのうたい文句になる。

 

歴代の自民党政権の考え方は、まず経済界の要求を優先的には採用して、経済活動の自由化を促進すれば、利益を得た企業が従業員の給与アップに回す。

その恩恵が徐々に外注企業に回り、最終的には中小企業や自営業者に浸透していく「トリクルダウン理論」であった。

だから企業が人件費の削減を狙って、解約が柔軟にできる契約社員を増やし、派遣企業からの臨時雇用社員を増やす制度改悪の支援をしてきた。

これが、【デフレ経済の長期化の原因】であることは今や明確である。

自民党政権の言い訳は、デフレ脱却ができない段階では、最下層の働く人たちへの配分政策を実施できないから、やむを得ないので我慢してもらうしかない。

 

それが国民の大多数の不満をかって、人を大事にする「基本理念を掲げた民主党政権」に交代させたのだ。

ところが、実行能力が未熟な民主党の政治家たちは、理屈だけが先行して、絶対多数の議席を持っている国会での、議論の迷走に時間を浪費してしまった。

まず「人への投資を先行して」、経済の活力を引き出す素地を作るのが、大事であるとの理屈だが、【配分政策に不可欠の財源問題】が壁となってトン座した。

「配分と成長」を掲げるが、7年たっても「民進党の政権公約」では、配分政策に必須の財源は不明確のままである。

あらゆる努力を重ねて、それでも足りない分は、赤字国債に頼るとしている。

 

自民党政権は「経済成長が先で果実を生み出してから配分政策」との理屈を言い訳にして、アベノミクスの効果が不十分だから「さらに加速する」と言いだした。

民進党の国民との約束には、財政再建が遅れても「配分政策を先に実現して経済成長の基盤を作ることを優先する」との説明である。

どちらの説明の理屈を信じるかは、国民の選択次第であるが、「経済が成長軌道」に乗る「基本的な国力」には、議論が広がらない。

日本の『将来の国創りのビジョン』がないままに、人つくりやお金を潤沢にするなど、手段の議論ばかりが先行して、「実現させる国」が見えてこない。

 


お金の移動と物の移動が自由化されると働く人の収入は減る。

2016-06-22 | 経済問題

世界中でお金の移動が自由化されてから、経済成長率は大きくなる傾向に変化してきたとの数値が示される。

それは新興国の遅れた地域の未開拓な需要が、先進国の技術を移転することで、ものの生産性の向上が飛躍的に達成されるからである。

その代わりに先進国の経済は、物の生産拠点が新興国に移転するので、サービスの需要増加と質の向上によって、経済成長率が維持される。

しかし、サービスの本質は人手に依存するのが大半であるから、生産性の面では改善する速度は遅くて、経済成長率は低まる。

そして、物の製造を新興国に奪われないためには、【働く人の賃金水準を新興国に近づける力が作用する】ことで、収入は増加しなくなるのが必然である。

 

このようにして成熟した資本主義先進国では、経済成長が低くなると同時に、大多数の働く人たちの給与水準は、新興国の労働人口によって引き下げられる。

さらに直接的には、大量の不法移民や「EU諸国」間の労働人口の移民によって、低賃金層の労働人口供給過剰の影響で職場の奪い合いと低賃金化が加速される。

お金の移動を制限することは、金融自由化の流れを逆戻りできなくなっている。

物の移動は、関税の引き下げや撤廃によって、価格の安い生産国の製品に置き換えられていく。

加工度の高い水準や品質の要求レベルが高い製品だけが、先進国の生産に止まっているが、それも時間の問題で技術移転が進めば、先進国に止まっていない。

 

世界全体で評価するならば、総合的での評価では「世界経済は順調に成長」していることになる。

しかし、先進国の単純作業労働の分野では、仕事を奪われ人たちが増えて、収入の低下を招き「生活面での保護」が必要になる仕組みになっている。

後進国が発展途上国になり、経済成長が軌道に乗って「新興国」に成長してくるのは、「世界全体が豊かになるから、絶定的に良いことだ」との信念があった。

これが、金融自由化、貿易自由化、人の移動の自由化の促進の基本理念である。

21世紀になって本当にそうなっているのか、各地での実情はチェックすると、豊かになっているとしても、その富は限られた富裕層に偏在するだけである。

 

新興国でも、超富裕層と大多数の低賃金で働く最下層の格差は拡大する一方であり、物の移動の自由が「必ずしも新興国の豊かさに貢献する」とは言えない。

先進国の労働条件よりも劣悪な環境に置きながら、利益を資本主義の原理で「資本家の利益」と、「株主利益の最大化」を目論む経営者に搾取されていく。

そこで、【ブラック企業の様相での働かせ方】をする企業からの輸入は、「制限するか、禁止する」動きになっている。

実態の把握はむずかしいが、「労働環境の維持」を輸入の制限にするのは、先進国の働く人を守るためにも必須で、国境における障壁を作ることが重要になる。(続)


世界の激変の中で日本の将来の国つくりを最大の争点にせよ。

2016-06-21 | 国創り政治問題

安倍政権の政策の「3年半の成果と将来の国つくりの目標」を国民に提示しての承認を得るのが、参議院選挙の大きな目的である。

3年半のアベノミクス経済政策は、国民の生活を豊かにすることが出来なかったのは明確で、信任に値しない成果だが、野党各党の経済政策の対立案が、具体性もなくては、国民の支持を得ることは難しい。

貧困な政治家のレベルを嘆く段階では、不毛の選択を強いられる。

それならば、将来の国つくりの基本方針を「野党各党」が提示できるなら、重要な争点として論議を交わすことが出来る。

しかし、安倍政権の「一億総活躍社会」プランに対立できる将来目標を、最大野党の民進党ですら、立案提示が出来ない低次元の参議院選挙になっている。

 

民進党の掲げる「国民との約束」には、政権公約に値する内容が書かれていない。

参議院選挙だから「政権交代の可能性はゼロ」だからといって、野党第一党の資格すら放棄するような「政党の理念が曖昧」では、次回の衆議院選もない。

特に「前回の政権担当時の公約」で不履行の評価となった「公約の問題点」を、きっちりと反省して、出直し的な真剣な議論もされていない。

例えば、働く人を守る政策では、「同一価値労働同一賃金」を打ち出していたのに。3年半の政権担当時には具体策は全く提案すらしていなかった。

政策不履行の最大原因の財源不足問題には、今回は「大企業と富裕層の応分の税負担を求める」としたが、それで「格差是正の分配政策」が実行できるのか。

 

「地域経済を立て直す」と言うが、前回の政権公約である「時給1000円の最低賃金実現」は、全く手付かず状態であった。

何故、手が付けられなかったのか、財源不足のためなのか、地域主権との関連で中央政府の役割は、など、具体的な課題への検討の熱意不足のままだ。

これからは、地域格差の拡大も懸念され、東京都のような財政豊満な浪費体質をそのままにして、中央集権体制を地域主権に分散する政策はやめたのか。

エネルギー政策では、民主党政権交代時の「原発電力偏重の愚策」の大きな失敗によって、福島原発の大事故を招いた責任は逃れられない。

代替電源の政策も、再生可能電力の買い取り法以後、新政策の提案は皆無だ。

 

自民党政権は、旧来型の産業保護を重点にして、世界の潮流から立ち後れる現状に縛られている状態だ。

政権交代をねらう「野党第一党」としての、日本の将来像を提示できないのでは、単なる抵抗勢力として、「憲法改定の阻止を図る勢力」としての価値しかない。

「民主党政権交代時」のような将来像としての日本を、国民との約束に仕上げる意気込みが全く欠けている。

「コンクリートから人への投資」は、当時から7年経ってやっと国民的合意になっているが、今打ち出すべき理想像は、単なる「分配と成長」ではお粗末だ。(続)

 


東京都知事の魔力は、人格を消耗する。

2016-06-20 | 国創り政治問題

東京都知事の辞職がやっと実現した。

東京オリンピックを招致した知事は、石原都知事の段階から、お金の使い放題で「視察活動」やら、オリンピックの開催地決定の権限のある「投票の買収」など、

お金マミレの不祥事ばかりであった。

東京都が世界で最大の都市であると、なんでもお金の使い方が「大きいことは良い」との、錯覚を引き起こす「麻薬のように人格を蝕む」毒性があるようだ。

石原都知事は、初めの一期目には、「革新的な制度の導入」を図って、世界で知性の発揮を誇れるように進めたが、二期目以降は【殿様気分の贅沢三昧】に埋没した愚かなリーダーの典型に転落した。

 

三期目の立候補は、人格がまともであれば立候補しないのが常識だが、自らの都市の理想像を描く力も熱意も失せていたのに、周りのゴマすりに乗せられた。

やはり【贅沢三昧の知事生活は人間を堕落させるだけ】と悟ったかのように、都政を投げ出す無責任ぶりを発揮して、再選挙費用の無駄使いを残して逃げ出した。

そのまえに、都政とは全く関係のない「尖閣諸島を東京都が買う」と言いだして、怠慢な国政にカツを入れるつもりが、慌てた政権が「中国政府」を刺激して【やぶへびの愚策】を打ち出して【次世代へのおおきな負の遺産】を残してしまった。

石原都知事の実績は一期目のプラスの改革は評価できるとしても、二期目以降は「人格の欠如、知性の劣化」の典型的な老害の知事政治であった。

都市の未来像や、世界でのトップレベルの大都市圏の理想像を見失っているリーダーは、有害無益である。

都知事選挙の費用の無駄使いは、石原氏の個人資産をさしだすべきである。

 

あとを継いだ猪瀬東京都知事は、小泉内閣での道路公団改革など、革新的な活動家であるが、「東京オリンピック」の麻薬的な薬物の被害者となった。

猪瀬氏個人の得意とする分野は、既得権益にアグラをかいた「腐敗した組織の改革」であるが、東京都のような腐敗した部分が見えにくい大組織では、東京オリンピックのようなイベント業務は、場違いの活躍場所であった。

自らの政治資金の判断を誤って、潔癖性の猪瀬氏には、追及の恥辱には耐えられなくなり、自らの【理想像も失って都政への熱意を喪失】して辞任した。

 

その次のどさくさ紛れで、幸運にも「棚ぼた都知事の座」を獲得した舛添氏は、単なる目立ちたがり屋の「ポーズを最重視する政治姿勢」であったと判明した。

東京オリンピックを口実にして、「大名旅行の恥晒し三昧」を魅せつけ、日本の国が財政不安問題の最中に、東京都だけは豊かな税収の恩恵で、無駄使いし放題であった。

日本の地方創生の大きな課題にはソッポを向き、出生率が全国最低の現実には、何の政策措置もとらないで、待機児童問題は無責任そのものであった。

他人のお金だけでなく、地方が育てた「貴重な人材」も浪費のし放題であった。


格差拡大の流れを転換させる財源は消費増税以外の新税だ。

2016-06-19 | 国創り政治問題

安倍政権も野党も、現在では「新自由主義経済」は21世紀の経済政策にはそぐわないと、認識を転換した。

特に消費購買力の減退に対して、政府が需要不足の底上げをしなければ、ますます不景気の風が吹きすさぶ状況に落ち込んでいく。

政府が所得格差の縮小に、最大限の再配分政策を実行しないと、格差拡大の不満が鬱積して、政権は国民の支持を失う。

安倍首相は大手民間企業を儲けさせれば、利益の大半を従業員の給与増加に回して、消費購買力の強化につながると期待したが、2年間の協力ポーズを得ただけで、あとは世界経済のリスクがあるとの言い訳によって逃げられてしまった。

 

仕方がなく、財政再建の約束を反故にして、消費増税の2年半の延期を公約違反承知の上で決断した。

それを自分のせいではないとして、先の「伊勢志摩サミット」では、世界経済の破綻のリスクを減らすためにも、日本は消費増税の先延ばしをすると言い訳した。

他国の首脳陣にとっては、日本の財政再建の問題や、安倍政権の公約違反などはあずかり知らぬことで、大きな経費をかけて遥々日本まで来ての、泣き言のおつきあいをさせられて、さぞかし、迷惑なことであったろう。

そうはいっても、欧州ではイギリスのEU離脱問題が大きくなって、日本の株価が急落するなど、しっぺ返しを受けているのでお互い様だろう。

 

安倍政権が、【円安誘導政策でのデフレ脱却に失敗】しているのは、日本でも深刻になっている【格差拡大による社会不安の増大】を軽視したからである。

日本の財政不安問題による「長期的な日本の将来像の不透明」も大きな原因だが、もっと中短期的には、働く人の格差拡大が消費購買力を低下させ続けている。

実際に困窮状態にはなっていなくても、身辺の貧困世帯の窮状を聞いたり、メディアの報道によって、【将来の貧困への転落のリスク】を感じ取ってしまう。

だから、少しくらいの収入増加は消費購買力には回らずに、リスクへの備えに回すのが日本人の国民性である。

 

金融政策の効果も、貧困層への配慮不足から消費増大へのつながりは、大幅に減じてしまった。

さらに、タイミングの悪い時期の「消費増税の負担が重なり」実質所得の減少に追い打ちをかけてしまった。

消費増税以外の方策で、財政再建への道筋を付ける「知恵を総動員すべき時期」に、前政権の経済不活性化政策に便乗したのが、アベノミクスをストップした。

デフレ脱却に最大の重点を置くならば、増税する分野は「新規投資を呼び起こす誘導的な新税」であるべきだろう。

最も適切なのは、「地球温暖化対策税」の、化石燃料にかける[CO2輩出]分野には課税強化をすれば、省エネ投資や再生可能電力への投資が活性化する筈だ。(続)

 


参議院選挙の争点は政策ではなく、実行能力の評価が基準。

2016-06-18 | 国創り政治問題

安倍政権の信任度を、今度の参議院選挙で評価する機会になるだろう。

「アベノミクスの経済効果」は、現在では空鉄砲のように、マトハズレの様相が強くなっている。

しかし、自民党の公約ではもっと加速すれば効果があるはずであり、「所得格差是正の政策」を追加の目標にして進めれば、デフレ脱却できるという。

追加した政策では、「同一労働同一賃金」の実現であり、「非正規雇用社員の待遇改善と正社員登用制度」を加速する。

安倍政権の初期の3年間は、新自由主義の後遺症である、「株価の上昇が経済好調な証」の【株主価値の最大化】を目論んでいた。

 

しかし、株価の上昇は大企業の利益を増やし、富裕層の資産の増加をもたらすだけで、大多数の国民の収入増加にはつながらない。

結局のところ、新自由主義経済からは決別して、所得格差の拡大放置する自由放任主義は、豊かな社会から遠ざかるだけと、3年間たってやっと学んだのだ。

今度の参議院選挙では、社会的な政策を政府が最重点の役割とする「富の再分配を図る政策」が最前面になっている。

しかし、この「所得格差是正の再分配」は、民主党政権が最初の政権公約で主張していた方針で、自民党は所得の再分配には消極的な姿勢のままであった。

 

7年間もかけて「所得の再分配」の役割は政府の最重要の役割だと、全政党の主張が一致したことになる。

日本の政治家のレベルが低いことの証であるが、民主党政権では実行能力が全くお粗末で、政権担当の3年半では、落第点しか採れない実績に終わっている。

7年間も【所得格差是正を軽視した政党】と、3年半も【実行能力不足で実績に不満足の政党】の、どちらを選ぶかの「参議院選挙での争点」である。

その本質的なところは、「所得格差是正の財源を生み出す政策」が、実行可能な具体的政策として提示されているかにある。

今のところ、野党は消費増税の延期の2年間は、赤字国際の増発で【将来世代からの借金】でしか、繋ぐことがでない低レベルである。

 

安倍政権は、名目上の国税収入の増加分を2年半の財源の充てる目論見である。

2年半後には、消費雨増税を実施できるかどうかアヤシイ状況だが、新たない財源を生み出す必要性を認めないで、「再分配政策」ができるとした。

野党も与党もだらしない「財源捻出能力」を露呈している状況では、今後の「所得格差是正」の進展の期待が持てる状況にはない。

それでも、どちらかを選択しなければならない「国政選挙」では、「富の再配分の政策実行能力」を、国民の目で判断するしかない。

「格差是正の方向に進める新税の導入」に、実行力を持つのはどちらか。

成長戦略に期待して、その果実を財源にするのは、10年先の願望にすぎない。(続)


大企業の利益追求優遇は愚策で、働く人の賃金上昇が目的に。

2016-06-15 | 国創り政治問題

安倍政権がデフレ経済からの脱却に、「アベノミクスのエンジンを更にふかす」ことで、働く人への給与増加の実現に結びつける、言い張っている。

そのような強がりに応じて、「給料増額を実行する」企業がどれだけいるか、大方の察しがつくはずである。

企業は働く人の給料を上げる判断をするには、利益が大幅に改善するか、人手不足の懸念で現在の従業員を引き止めたい場合に、限られる。

政府が掛け声をかけたからと言って、協力する姿勢を示すような、甘い判断をするはずは無い。

経団連のお友達経営者たちの一部は、2から3年は信義を重んじて「官製春闘」の相場形成に応じたが、それきりで継続性はない。

 

政治力の影響下にある、「保育士の給与増額」やら、「介護士の賃金」には、財源の捻出によって人件費の支援が可能である。

しかし、一般の民間企業の従業員への給与増加策は、20世紀的な発想に止まっていれば、【政府は介入すべきではない】、とされている。

それでは「アベノミクスの無残な失敗」の反省が、全くされないことになる。

20世紀的な認識では、労働者の給与水準は、労働力の需給関係に影響されて、取引による当事者同士の関係だけで決める。

政府が介入すると、次々に手当が必要になり、社会主義政権に近づくから、市場経済の自由な取引に悪影響を及ぼす。

 

「労働力の商品化」の考え方が、「資本社会のルールである」との前提は、成熟した先進国の経済は、軒並みの「デフレ経済」に停滞する運命になる。

21世紀的な考え方では、「労働力の商品化」の考え方から脱皮する。

資本主義経済の21世紀的バージョンは、政府の役割は、労働力の価値を最大化することであり、最大化に協力するような企業活動を奨励するべきである。

20世紀の末期に、「株主価値の最大化」が資本主義経済の成長の原動力であると、もてはやされた時代があった。

しかし、この目標とルールは、20世紀の最悪の目標であることが、短期間の実施で判明したのだ。

 

アメリカのゼネラルモータースは、「GMにとって良いことはアメリカにとって良い事だ」、と豪語して一世を風靡していた。

しかし、「株主価値の最大化」の最先端と突っ走り、投資を削減して、余剰利益による自社株買いを実行して株価を高水準に押し上げていた。

短期の利益追求を優先する経営戦略により、長期的な技術開発を怠ってきた。

その経営戦略が企業体質を弱め続けて、リーマンショック時の経済危機には経営破綻して、連邦政府の救済が必要になって多額の税金が投入された。

経営破綻する直前に経営陣は、短期の利益を業績にして、膨大な報酬を持ち逃げして責任は一切責わないで済んでいる。(続)


批判と願望だけを並べる政治家は無用の存在で選択に値しない。

2016-06-14 | 国創り政治問題

今度の参議院選挙に置ける国民の選択は、何を最重要な争点とすべきだろうか。

野党は盛んに「アベノミクスの失敗」を取り上げて、実質賃金が低下した経済政策の失敗を責め立てている。

その事実は確かだが、アベノミクスは名目上ではあるが、国の税収増加を果たしたのも事実である。

しかし、富裕層と大企業の収入を増やして、その分だけの国税の増収が図れたとしても、大多数の低所得者層の実質賃金が低下して、消費額が減り続ける。

これでは、経済政策が成功しているとは、逆立ちしても言えない状況だ。

 

では、安倍政権の失敗政策の責任を取らせて、参議院選挙で過半数割れを選挙の結果によって、政権への国民の審判とするのが、日本のためになるだろうか。

野党は未だに【選挙公約を正式に決めていない】が、この低次元レベルだけでも、野党の政策実行能力は、疑問符がついてしまう。

対抗する経済政策の提案が、今になっても実効性のある具体策が、選挙民に提示することが出来ないのが、野党の実力なのだろうか。

最大の攻め所とした「待機児童ゼロ」の対抗策では、保育士の給与を月額で5万円の増額を政府援助で賄うとしている。

ただし、その財源は消費増税が実施されるまでの2年半は、赤字国債の発行でまかなう暫定的な財源でしかない。

 

安倍政権があてにする財源は、アベノミクスの税収増加分だが、これは本来は、国の借金の返済分に充てるべき税収増である。

それを実行しないで放棄し、給与アップに充てるのは、将来世代からの借金で子育て支援を実行する【情けない収税能力の政府】であると、懺悔をするべきだ。

自民党政権もだらしなく、野党も政権交代するには能力不足を露呈している。

安倍政権は2014年12月の総選挙で、子育て支援の実行を公約し、非正規社員の正社員化も支援する。

しかし2年半経過しても実績はわずかしかなく、「財源となる消費増税」も先送りして、ますます実現は遠のいている。

 

今度の参議院選挙で、この【公約違反すれすれの状況】を、選挙民にどのように説明して、投票を依頼するのか。

2年半たって、やっと【アベノミクスの欠陥は人への投資不足】でした、と気がついた事を、率直に認めるならば、まだ救いがある。

素人集団のようであった民主党政治家よりも、実行力のある政治家が多いと認める人が、自民党を選択する。

だが、後の1年半後の「衆議院選挙では言い訳は無用」であり、政権公約の実現を確実にしなければならない。

それは、消費増税以外に、納得性のある財源を確保するのがポイントだ。(続)