庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

自民党政権は選挙公約の中身はすぐに棚上げして逃げる。

2013-01-31 | 経済問題
自民党が衆議院選挙に向けての公約を発表したのは、昨年の11月末であった。
総選挙の結果は、比例区の投票支持率は20%台であったにも拘わらず、野党勢力の選挙協力の失敗もあって、小選挙区では過半数以上の大勢力を占めた。
公明党との連立で、衆議院で2/3以上を獲得した勢いで、次の参議院選での過半数を占めることが、現在の自民党政権の最優先課題となっている。
そのためには、2012年11月の国民に約束した公約は棚上げして、とにかく選挙に有利な政策だけをアピールする作戦となった。

安倍首相の所信表明の内容は、【富を生み出す成長戦略の具体性のなさ】に現れて、民間企業の活力を引き出すには、全く不十分のレベルであった。
選挙公約では、『新しい競争力は、人と地域』だとして、「グリーンエネルギー革命で新産業と雇用を生み出す」としていた。
しかし、所信表明では「エネルギー政策」に重点を置くどころか、一言も触れていないに等しい、逃げ姿勢ばかりである。
また、「農林漁業を6次産業へ転換、15年度までに3兆円産業に育成」と掲げていたが、予算のバラマキだけになる「戦略なき農林水産業」への、選挙対策に留まっている。

エネルギー政策の転換で、最重要な電力制度改革は、『発電・送電の分離制度』のとっかかりで、さっそく既得権電力業界の抵抗にあって、「早くも先送りを表明している」だらしのない経済産業大臣の「公約違反ぶり」である。
また、食料自給率50%を目指すと公約では言いながら、農水大臣を党内事情を優先させた素人政治家を任命した。
専門外の役割を振られた農水大臣の政策への無定見ぶりは、頼りないに尽きる。
仕方がなく、農林漁業への当面の政策は、ほとんど民主党時代のままで、これでは6次産業化も食料自給率50%目標にも、公約実現には程遠い低レベルだ。

民主党への政権交代時には、総選挙で『華々しいマニフェスト』が宣伝されて、圧倒的勝利によってスタートしたが、公約違反が相次いで、マニフェストへの期待は地に落ちてしまった。
それでも、初めの1年~2年間は、未熟ながらも民主党政権は、マニフェストに掲げた公約の実現に、取り組んでいた姿勢は認められる。

しかし、自民党は総選挙公約を、わずか2か月しか経っていない段階で、すでに公約違反を公然と実行し始めている。
選挙民を裏切る傲慢さが問題だ。

自民党は参議院選挙のことしか考えていない政治家集団。

2013-01-30 | 経済問題
安倍政権の2013年度政府予算案が提示された。
総額で92.6兆円に達する、過去最大の予算規模である。
税収は43兆円にとどまり、不足を埋める為の借金(国債発行)は、45.3兆円と最大規模になる。
プライマリ―バランス(基礎的財政収支)は、前年度よりもさらに悪化し、国の借金総額は勢いを増して増加して、2013年度末では750兆円に達する。
放漫財政の最たる予算案を提出する安倍政権は、すでに、アベノミクスの規律を取り決めた「節度ある財政政策」を守らないことが明確になった。

その原因は「国土強靭化」や「防衛力増強」の様な、経済成長には寄与しない、「自民党のこわもて路線」の実現に使われる予算の膨張である。
その一方で、国の根幹の「エネルギー戦略の再生」においては、前年度よりも増額とはいえ、世界の水準からみると、微々たる金額しか配分をしていない。
例えば、再生可能エネルギー関係では【460億円で(風力250億円、太陽光22億円、地熱9億円、海洋25億円)、ささやかな総額】に留まっている。
原発関連では、総額で390億円(廃炉86億円、安全対策129億円、もんじゅ174億円)で、経済再生には全く寄与しない。

第一の矢の【デフレ脱却最優先】の狙いでは、日銀との約束である「物価上昇目標2%の設定」の条件となっている、規律ある財政政策に、政府が努力することは完全に放棄している。
政府が強要して日銀に押し付けた共同声明で、「約束は守らせる」と強弁しても、すでに自分の方は守らないのだから、この【第一の矢はマトハズレ】に終わることが、明白になった。
そして、「富を生み出す成長戦略」の第三の矢の内容は、今回の政府予算案では、全くの張り子のトラ、いや、「ふくらませたフグ」の様な、全く見かけ倒しの具体策に留まっている。

さすがに自民党政治家だけあって、インフラの老朽化対策、災害対策の大義名分の下に、土建国家復活の路線、選挙対策の公共事業の大判振る舞いは、目を見張る膨張ぶりである。
また、領土問題、韓国、北朝鮮との緊張増大にかこつけて、防衛産業へのテコ入れも、すかさず増強している。

つまり自民党政治家には、既得権を持った旧産業界への奉仕しか頭にないのだ。

日本の低迷の最大の責任は既得権産業の経営陣にある。

2013-01-29 | 経済問題
日本の長期に渡るデフレ経済が、あらゆる懸案の根本原因になっていることは、誰も異論はない。
しかし、デフレを長引かせている最大の理由は、長期間に渡って【働く人への利益の配分が減り続けている】ことを、指摘する人は少ない。
日本経済の最大の消費を支えるのは、多くの給与所得者の消費であり、それが増えなければデフレ経済は長引くばかりである。
その大元は、日本の大企業経営者が、経営判断だと称して人件費を抑えることばかりを図って来たことが原因である。

先進国の経済循環は、生産力のレベルでGDPの上昇、停滞、下降が決まるわけではない。
一国のGDPの変動は、その国の中で使われる消費力によって決まるのだ。
国民が生活の豊かさを求めて「旺盛な購買意欲を維持して消費にまわす」ならば、経済への循環が起きてGDPの増加、『経済成長』の好循環が生まれる。
しかし、大部分の会社人間の給料が上がらなければ、より豊かな生活を願望しても、消費に回すおカネが減っていく。
その給料を上げる努力を、この20年近くに渡って、大企業は逃げ回っていた。

金融バブルの崩壊以後は、景気低迷時を理由に人件費の削減を最優先してきた。
正社員の仕事を、給料の低い臨時雇用や派遣社員の仕事に置き換えて、経営努力の成果だと、業績にしてきたのである。
アメリカ流の【会社は株主のもの】という考え方も、給料を下げる正当な理由にして、とにかく会社の価値は「株主への配当を増やせるか」が最優先される。
グローバル化の悪影響で、世界の各国で、金融不安からの経済混乱もおきて、先行き不透明を理由にして、人件費の抑制をマスマス経営の根幹においた。
その結果は、日本国内の消費減退、【慢性的需要不足】に落ち込んでしまった。

デフレ経済を長引かせているのは、【政府が悪い、日銀が悪い、外国の政権が悪い】、と他者のせいにして、自分の企業だけは生き残り最優先の考え方である。
しかし、利益を出さない経営者は失格であると同様に、労働分配率を下げ続ける(給料を抑えるのが業績とカン違いしている)経営者も、失格である。

多くの人を雇用して、その労働分配率を高い水準に維持するのが、民間企業の存在価値で、経営者の業績評価は、これに尽きる。
それが出来ていない経営者は、政府や国民にモノを言える資格は全くない。

自民党はやはり先祖がえりの政治家ばかりで先がみえない。

2013-01-28 | 快適エネルギー社会問題
安倍首相の所信表明演説がおこなわれたが、経済再生は空証文のままである。
鳴り物入りの経済再生戦略は、金融緩和、機動的な財政政策、とおカネをフンダンにバラマク、旧来型の政策を強調しているだけである。
特に「円安誘導による株式市場の活況」は、一時的な追い風の様に見えるが、長続きをしないことは明らかで、海外からも非難が巻き起こっている。
「民間投資を喚起する成長戦略」を、3本目の矢と称しているが、再生戦略の要になる「需要不足」対策の中身は、全く見えていない。

3・11の大震災には言葉を多く割いているが、肝心の原子力発電大事故については、一言もふれていない。
日本の経済・産業の最重要なエネルギー政策の大転換については、方向すら打ち出せない様な【所信表明】とは、一体、国民に対して責任ある発信とは言えるのであろうか。
この原因は明らかで、まだ中央官僚の中で議論が錯綜している段階では、お神輿に乗って動く「自民党政治家」には、政策を立案してを決める能力がない。
野党の3年3カ月の間は、ノーテンキに原子力に大きく依存するエネルギー政策に【邁進する民主党】の、お手並み拝見との無責任姿勢に終始していた。

大事故の発生後は、原子力ムラの悪弊を見過ごしてきた「自民党政治家の体質」に批判が向かない様に、原発の重要問題からは逃げ回ってきたのである。
官僚依存の政策立案、選挙に有利になる尺度で、政策の取捨選択をしてきた政治姿勢は、3年3カ月の間で「体質改革」をするには不足であった様だ。
ヨーロッパやアメリカ、新興国における「新産業エネルギー分野」に対して、国の総力を挙げて取り組んでいる現状からは、安倍内閣の認識はお粗末としか言いようがない。

エネルギー政策の大転換は経済再生の根本を支える急務である。
原発依存から早急に離脱するには、当面の火力発電の刷新と効率の大幅アップが必要で、その為には何をすべきかが、経済再生には最重要課題である。
しかし、中央官僚の動きは緩慢として、【発電・送電の分離制度】の実施は先送りされ、発電事業者の参入促進には何の新規政策も打ち出せない。

再生可能エネルギーの普及促進策にも、一言も触れない様な「所信表明」しか出来ない、自民党世襲型政治家には、無理な要求で、官僚の所信が出来上がるまでは、エネルギー問題からは逃げているのが得策と思っている様だ。

歴代の自民党の体質は既得権産業の擁護で新産業を潰す。

2013-01-27 | 快適エネルギー社会問題
日本の再生可能エネルギーの普及は、電力業界の既得権擁護の活動によって、1990年代から2010年までは、ブレーキをかけ続けられてきた。
日本では、太陽光発電の技術が世界一のレベルで、2000年代初頭までは技術力、普及量、生産量とも世界一であった。
しかし、ヨーロッパ各国では、2000年代に入ってからは、再生可能エネルギーの普及促進制度が一気に進歩して、太陽光発電や風力発電の設置が急加速して進み、日本を完全に抜き去ってしまった。

歴代の自民党内閣では、電力業界の力に押されて、【再生可能エネルギーを余計な電力として冷遇し続けた】ので、せっかくの世界一の太陽光発電産業は、完全に勢いを失ってしまった。
2012年には【シャープの大苦境】【パナソニックの大赤字】の事態となった、経済的な敗北の大きな原因となっている。
世界一の太陽光パネルのメーカーであったシャープは転落し、トップスリーの生産量であった三洋電器は、大赤字でパナソニックに吸収された。
そのパナソニックも、各分野での赤字の累積で、創業以来の危機に立たされている。

自民党政権は、この典型的な事例の様に、既得権益を持った業界の利益を優先して、日本の将来にとって育てるべき「新産業に対して冷遇・無視」をする体質の政党である。
「保守政党」という呼び名は、まさに、変化をさせないことを最優先する政策の基本理念である。
しかし、「現在の成熟した資本主義」、【マスメディアの作る空気に流される民主主義】の社会では、「保守を優先」は、停滞する経済を放置する政治に陥るのだ。

経済の活性化は、既存のシステムを乗り越える技術と事業を、継続的に生み出し続けることが根底の条件である。
その「新技術を邪魔する」既得権産業を守ることを優先して来たのが、自民党政治であった。

野党に転落した3年3カ月の間に、少しは経済の活性化策について研究をしてきたはずである。
アベノミクスの3本の矢の効果を歴然とみせるには、既得権業界の硬直化を破壊して、新産業、新規事業者の参入によって活力を吹き込まなければならない。

安倍首相の口先政治の正体は【電力改革の取組】で判明。

2013-01-26 | 経済問題
日本の将来を暗いイメージで伝えるコトに熱心な「マスメディア」は、貿易赤字が過去最大になったことを、大きく報じていた。
しかし、全体の健全さを現わす「経常収支は黒字」を保っていて、それは、「日本の技術・事業の海外からの所得」が増えているのである。
それでも、貿易収支悪化の最大原因である「化石燃料の輸入増」を、このままにしておいて良いわけではない。
原発の稼働が大幅に減った分の「火力発電の燃料費増加」とされているが、火力発電の効率アップが急務の対策に浮上しているのだ。

電力会社は、「化石燃料費が大幅に増えて赤字になった」として、火力発電の効率アップの対策も明確にしないままに、「電力料金の値上げ」を赤字対策の最優先にしている。
関西、九州は既に値上げの申請をしており、今回は北海道、東北、四国電力が約1割の値上げを申請検討中だ。
まず、電力会社の経費削減を徹底的に実行しなければ、値上げは許されない。
値上げを認めるにしても、原発を持たないで経営が成り立っている『沖縄電力』の電力料金を超えることは、不合理である。

電力会社の経営合理化が遅れているのは、地域独占の殿さま体質にある、とはるか昔から言われてきた。
この地域独占は世界でも稀であり、『発電・送電の分離制度』を導入すれば、発電部門の新規企業の参入が活発化して、『合理的な経営体質に可及的速やかに改革』を進める圧力となる。
しかし、電力企業の後押しで政治活動をしてきた自民党は、「この改革を徹底的に先送り」を実施してきた。
民主党が進めてきた『発電送電の分離制度改革』の委員会の決定を反映した法改正を、あれこれと理由をつけて、まだ遅らそうとしている。

安倍首相は産業競争力を向上させ、新規投資を活発にする政策を最優先する、と「口先では」声を大にして発している。
しかし、茂木経産大臣は、発送電分離の盛り込んだ「電気事業法の改正法案」を、次期通常国会への提出を【早々と先送りをして】、見送ることに決めた。

一国のトップが部下の大臣に指示も出来ないのか、それとも、国民をだます【二枚舌の政治家】なのか、通常国会が開かれれば、正体が見えるのだ。(続)

日本の将来を暗澹とさせるマスメディアの弊害を問う。

2013-01-25 | 経済問題
2012年の貿易統計で、「日本は過去最大の貿易赤字となった。」と報じられた。
6兆9000億円の赤字は、2011年の2.5兆円から2.7倍に達し、赤字は【11年3月の東日本大震災後の一過性のものではなく、今後も長く続く可能性がある。】
と朝日新聞(2013年月25日朝刊3面)では、書いている。
この記事を読んで、読者は一様に「日本の将来に暗雲が立ち込めて、これからマスマス経済的には落ち込んで行くだろう。」と、悲観的になる。
この報道による悪影響こそが、日本の病根であることに、「マスメディア関係者」は、気がついていない。

新聞やテレビでは、日本経済の落ち込み、停滞ぶりを、政治家や官僚、民間企業のだらしなさを、書きたてて、自分たちには何の罪もない様な認識でいる。
しかし、経済活動は【社会に流れる気風】に左右されるのが常識である。
景気とは、「消費者、経営者のおカネの使い方の活発度」に大きく影響される。
まさに、気持ちの持ちよう、景色に左右されるのが『景気』の本質である。
マスメディアが「事実のデータを根拠なく取捨選択」しているわけではないが、報道姿勢で【悲観的な状況を伝えようとする姿勢】で、記事を書いたりしたかどうか、で、社会の風潮は大きく左右されるのだ。

2012年の貿易収支が6.9兆円の赤字になったことは事実である。
しかし同時に、経常収支も伝えなければ「正常な判断を誤らせる」のだ。
記事の目立たない部分で『製造業の海外移転を含む海外投資から入る所得収支は伸びており、経常収支は黒字を保っている。』と、説明を付け加えている。
この部分こそ、報道すべき核心の部分であるのに、【貿易赤字の不均衡は長期化の恐れ】を強調して、その要因の説明に大部分を割いている。
そして、「工場の海外移転など、空洞化の恐れ」を、読者に印象づけるのだ。

日本は、製造業による【貿易立国の(過去の)夢】から、卒業しなければならない段階にきている。
日本で培って高めた「技術力と事業システムのノウハウ」を海外に展開して、モノを売って獲得した『知的付加価値の利益』を、相応の対価として受け取る『所得収支の黒字』で、国全体の経常収支の継続的黒字を目指すべきなのだ。

製造業を軽んじることは一切なく、『知的付加価値の高い製造業技術を不断に養い続ける』コトに、国の将来戦略を向けるべきなのである。
その【長期的な展望もしないままのメディア報道】は、害あって益なしである。

口先ばかりに留まる安倍首相の本気度は電力改革で判明。

2013-01-24 | 経済問題
安倍政権の最重要課題は、国内経済の活性化であり、経済成長に効果のある「国内投資を活発にして地域におカネが回る」ための、制度改革が急務である。
どの様な改革が必要かは、今までも議論の俎上に載せられたが、抵抗勢力の力が強くて、その都度、頓挫したり先送りをされてきた。
安倍首相は改革の方針を決めて実行出来ることは、「スピード感を持って実現する。」と、声を大にして号令をかけている。
だが、実態は「スピード感」とは程遠い、相変わらずの悠長な議論展開と先送りの気配が濃厚である。

エネルギー政策の見直しは、3・11の原発大事故以来、国の将来に大きく影響する最重要課題と認識されている。
あの決められない体質の「民主党政権」の時代でさえも、原発依存を将来はゼロにするとして、方針を決定した。

その第一歩とするためには、「電力会社の独占体制」を大改革する必要がある。
具体的課題として、『発電・送電の分離制度』を実施する「基本方針を決定」して、昨年の7月からは【電力システム改革専門委員会】で議論を重ねてきた。
この分離制度が発足すれば、国内の送電線網の拡充・強化の要請に沿って、送電線への新規投資が加速される。

また、発電部門の分離は、既存電力会社の独占体制を緩めて、新規の発電事業者の参入が活発化される。
老朽化した発電設備ばかりの効率の悪い火力発電所は、新規の発電効率が最高のレベルの設備に置き換わることが、加速されるのだ。

安倍首相の強調する「スピード感を持った活性化」には、適合した課題である。
ところが、この【電力システム改革専門委員会】の開催は、政権交代後の12月以降は開かれていなくて、1月21日になってやっと開催されたのだ。

委員会では、『送電会社を子会社化する法的分離』をする方向で合意した。
しかし、既得権益を守りたい電力会社と、その手先の議員が、何かと反対行動をとって、骨抜きの画策をしている。
その上に、実施する時期を明確にしなければ、送電設備も新規の発電設備の計画も先送りになって、「スピード感」とは程遠い、改革に留まってしまう。

安倍首相の本気度を試される「電力制度改革」の課題は、アベノミクスの核心になる最重要な改革である。

安倍内閣の使命は超金融緩和ではなくて大胆な規制緩和だ。

2013-01-23 | 経済問題
安倍首相は日銀と政府の共同声明を発表したことで、【金融政策の大胆な見直し】において画期的な文書で、政策のレジームチェンジ(体制の転換)が行われていくと語った。
日銀総裁は、【金融緩和の思い切った前進を図った】として、政府との共同方針だと述べているが、同時に『成長力強化や持続可能な財政の確立など、政府の取組にも期待する』と述べて、釘をさすことを明確にしている。
安倍首相は、金融政策をデフレ脱却の目玉としているが、カン違いも甚だしい。

デフレ経済の病根は、消費者が商品やサービスへの需要が大幅に減少し、生産側の供給能力が過剰になって、物価が下がり続ける「縮小経済の循環」である。
本元の対策は、消費者の購買意欲を増加させることであり、より豊かな生活を実現できる「付加価値の高い商品、サービス」を提供し続けることだ。
だが、日本の民間企業は、既得権構造を守る硬直化した官庁の規制に阻まれて、「新規の事業にブレーキ」がかけ続けられてきた。
国内での市場拡大に期待を持てなくなった民間企業は、大部分の再投資を海外市場の開拓に向けてしまったので、国内設備投資の需要も激減してしまった。

「物価上昇目標」を設定すれば消費者も民間事業者も、おカネを早く使おうとする心理になる、という仮説は、もっともらしい説明であるが、その先の豊かな社会への展望もないままでは、おカネを貯蓄増加に向けさせる心理が強い。
日本人の勤勉節約の精神からは、インフレターゲット政策では、需要増加を生まないと見るのが正解だ。

このブログで前にも書いた様に、国民の貯金の目減りの犠牲の上に、「国の借金の減額が自動的に進む効果」が期待できるだけなのだ。
ただし、そうなれば、新たに発行する国債の名目金利は、物価上昇率より高くなければ絶対に売れないので、国債の増発は困難になる。

安倍政権は、財政の均衡を目指すとして、2020年に向けて国債の発行を減らしていく方針としている。
つまり、おカネをフンダンに投入して「経済の活性化」を図る補助金政策は、もはや続けることはできないのだ。
おカネを使わない様にして、成長戦略を立てて実行しなければならない。

規律ある財政政策を守り、富を生む成長戦略を進めるには、「規制緩和」を大胆に実行し、最前線で活動する「新進気鋭の民間」に期待するしかないのだ。(続)

日銀との共同声明は安倍内閣の責任がはるかに重い中身だ。

2013-01-22 | 経済問題
安倍内閣の目玉政策である「超金融緩和によるデフレからの脱却」が、政府と日銀の共同声明の形で発表された。
今までは、「1%を目途に物価上昇を目指して金融緩和を続ける」方針としていたが、【出来るだけ早く2%の物価上昇率を目標にして金融緩和】を実施する。
これを政府と日銀の共有する目標と位置付ける。
同時に財政再建を着実に進め、成長戦略の実行に責任を負うことが明記される。
日銀が物価上昇率を明確に数値目標にするのは、初めてである。

安倍内閣は、この「インフレターゲット政策」を日銀に要求して、文書で約束させたことを成果として強調している様だが、日銀に責任を負わせるのは物価上昇率の数値だけで、達成時期は決められない。
出来るだけ早く上昇率2%に達する様に金融緩和を続けると明記するが、物価上昇の進行には時間がかかるとの表現も同時に盛り込んで、数値目標の達成期限を決めることはできない、と政府側に認識させている。
そして、日銀が責任を負うのは金融緩和政策であって、デフレ脱却に必要な成長戦略の実行と、規律ある財政政策を目指す責任は政府にあると明記した。

「マスメディア」は、安倍政権が日銀を押し切って責任を負わせた様に解説しているが、実は、安倍内閣の方が重い責任を負っている「共同声明」なのだ。
金融緩和のやり方は、すでにアメリカのFRBやEU諸国の中央銀行で、何年間も実行済みの「方策が具体的にある」中央銀行業務を、選択するだけである。
どれだけ選択して実行すれば、物価上昇率2%になるかは、効果を見極めながら手を打っていけば、確実に2%に達する。
要は行きすぎない様に副作用を見る期間が必要なので、慎重に進めることだ。

だが、政府が責任を負う財政政策で、規律を保つのは大変に厳しい。
利害関係者が無数に存在して、必要予算は確実に膨れ上がる傾向になり、新た借金を増やす安易な政策に陥り易い。
安倍内閣は、財政規律を維持すると口約束では言うが、すでに「民主党の放漫財政」の時代よりも、さらに国債発行額は膨れあがるのは確実だ。

そして、もっとも困難な【成長戦略】の政策立案は、自民党の政治家は何も方策を持ち合わせていない。
与党になって、やっと「中央官僚の知恵」を手助けにして、緊急の経済活性化策として補正予算を組んでいるが、内容は昔どうりのおカネのバラマキなのだ。

現状を変えることに抵抗する中央官僚を地方分権で突破。

2013-01-21 | 国創り政治問題
経済成長に必須の新産業を育成する役割は、民間企業の新進気鋭の技術者であり、挑戦意欲の高い起業家である。
ところが、未だに「経済成長を牽引するのは官僚」の役割だと、勘違いしている役人や政治家が多すぎるのが、日本の根強い病根である。

中央政権は、国創りの大きな目標を設定し、国費を投入すべき分野を『戦略的に優先度を決定して順位付け』して、各方面に方針を徹底することにある。
縦割りの既得権を持った【各省庁の権限を超える政治的決定】をするのが、重要な責務である。

小泉内閣時代に、【各省庁の縦割り行政の弊害打破】の方策として、内閣府で『特区制度』をつくり、特定の目的に沿った「地域行政体」の要望により、『特区に指定されると各省庁の権限を超える政治判断』ができる、とした。
中央官庁は、日本全体を見る責任があるために、特定の地域の都合で、制度を柔軟に運用するコトが難しい宿命にある。
そこで、縦割り官庁の責任分野から切り離して、『特区内特有の都合で制度を超える運用ができる』仕組みを導入したのである。
これによって、ガンジガラメの、お役所仕事の能率を上げようとしたのだ。

ところが、官庁の根強い抵抗で、『特区に指定』されても、常にブレーキを架ける官僚の知恵がはびこっている。
先の東日本大震災の被害をみて、将来に起こる可能性が大きい【南海トラフ地震】への対応を急ぐために、静岡県は、「海岸地帯に近い町や工場」の高台への移転計画を急いで策定した。
この方針に沿って工場移転を要望する民間企業が多く現れ、計画が策定された。
「工場移転をモノ作り特区制度の対象」として2011年に指定されて、国も支援をするが農水省の権限で、農地転用の規制緩和が進まないでいる。

民主党政権時代には、役人の抵抗を突破することができないで、1年以上も移転計画は進まないで、タナザラシにされた。

自民党政権は、「国土強靭化」を経済再生戦略の表看板として、勇ましくぶち上げているが、この様な官僚の抵抗を打ち破ることが必須である。
やる気のある自治体、静岡県に『特区推進の権限』を大幅に認めて、農水省が口をはさんでブレーキを架ける事態を根絶しなければならない。

「経済再生」も「国土強靭化」も、『地方分権の本気度』で実行可能になるのだ。

お役所が新事業を起こして富を生み出すことは皆無だ。

2013-01-20 | 経済問題
アベノミクスの第三の矢は【成長戦略】であり、緊急経済対策の補正予算では、「成長による富の創出」との課題に3.1兆円の国費を投入する。
だが、お役人が新規の事業を興し、新技術を開発したことは、全くない。
彼らはうまくいく事が判ってから、後追いで予算を配分して補助金を出して、事業が伸びる助けをしているだけである。
新技術や新事業が生まれる段階での投資や、揺籃期と呼ばれる【産声を上げたばかり】の段階では、様子見をしているだけで、役に立つことはほとんどない。

政府の役割は、この様な新技術や新規のベンチャー事業に取り組む人や企業が、活動し易い環境をつくることにある。
それには、時代の進展に応じてジャマになる様な規制を撤廃して、新しい分野での挑戦が、し易い法制度に進化させる仕事をすべきである。
ところが、今の段階で具体的な成長戦略の予算は、研究投資をした企業には減税をする、などの「効果がアテにならない政策」ばかりが羅列される。
1990年代のバブル崩壊以後の中央政府のやってきた【成長戦略】とは、看板ばかりの「知恵のない作文戦略」に終始してきた。

中央政府のできることは、既得権構造を可能な限り壊して、新進気鋭の民間企業が、既存の保守的な大企業と対等の条件で、新規事業に挑める「市場環境をつくり出す」ことである。
お役人が新技術を開発したり、具体化することは、全くない。
お役所が、新事業を起こして収益を生みした事例も、可能性も全くない。
ましてや新産業を興す能力を、官庁に期待するコト自体が、幻想でしかない。
お役所は秩序を保つことと、権限を着実に行使することが使命であって、既存の秩序を壊す様な、新規に革新することを本質的に嫌う組織なのである。

経済学で言う「経済成長を継続する」には、絶えず既存の概念を否定して、新発想による革新を続けることが、必須なのである。
お役所は、この仕事に最も不向きな組織であり、革新が不得意の人たちが組織をつくって、柔軟な発想を押し殺す宿命を負っているのだ。
だから、成長戦略をお役所に作らせるコト自体が、大きな考え違いなのである。

柔軟な発想ができて、革新的な課題に取り組むのは民間であり、その活動がやり易い様に制度を改良して行くのは政治家の役割なのである。
政府の重要な成長戦略は、国の基盤をどこに据えて行くかを決めることだ。(続)

公共事業の発注先優先度を地元の中堅企業の仕事にせよ。

2013-01-19 | 経済問題
アベノミクスの第二の矢は、【公共事業への大判振る舞い】であるが、中央官僚が采配する限りは、大手のゼネコンと既得権にしがみついた土建業者におカネが回るだけ、と多くの国民が思っている。
地域社会に回る分は、ホンの一部であって経済効果は微々たるもので、その負担は確実に一般国民に降りかかってくる。
それに備えて、出来るだけ貯蓄に回そうとして、国民の心理は節約を心がけて、デフレの原因となっている【需要不足】を加速することになる。

インフレ目標を設定して、将来は物価が上がるから「早めにモノは買っておこう」という需要増加の効果は、公共事業の癒着構造により、減殺されてしまう。
政府の期待する第一の矢の【超金融緩和によるデフレ脱却】は、幻想となる。
輸出依存企業は、円安の恩恵で儲けるだろうが、輸入企業は仕入れ経費の大幅増加に苦しみ、そのしわ寄せは、人件費の削減圧力を一層高める。
物価高と収入減のダブルの悪影響を受ける人達が、圧倒的に多くなる。

第二の矢の【公共事業】のおカネの使い方を、半分以上は地方自治体の意向を最優先して、おカネを出しても「中央官庁、政府は口をださない」とすれば、事態は改善される方向になる。
それは、大手ゼネコンや中央官庁に癒着した企業に回るおカネが減る分、地域に根付いた中堅企業に回ることになる。
地元企業にお金が回れば、ほとんどの企業は関連する地元の中小企業に仕事が配分されて、「トリクルダウン効果」が発生して、すくなからず、地域経済への恩恵が現れるだろう。

国土交通省は、公共事業の復活や「国土強靭化」の掛け声にのって、自分たちの裁量権限が及ぶ事業の拡大に大喜びである。
これにより沿って、従来の建設族議員が復権する様では、アベノミクスの失敗は、歴然たるモノになるだろう。
インフラの整備や補修・耐震化などは、直接に富を生み出す投資ではない。
おカネを配分するだけに終わる効果しか期待できない投資を、あえて「当面の景気対策」として実施するなら、国土交通省の官僚の権益が及ばない配分方策を知恵を絞って実行するべきだ。

自民党は「従来から地方経済重視」の路線で、『地方分権』を看板にしてきた。
将来の道州制導入に布石として、公共事業発注の権限を地域に任せるべきだ。

デフレからの脱却は超金融緩和だけでは悪影響ばかり。

2013-01-18 | 経済問題
アベノミクスの第一の矢は、日銀に物価目標をプラス2%に掲げることを約束させて、達成するまでは、無制限にお金の供給を増やすコトである。
しかし、経済学の理論では成り立つというのは、まだ確立してはいない。
むしろ、現在は超金融緩和が行きすぎている状態で、名目物価指数がどうなろうと、インフレ期待は空振りに終わる気配である。
日本人は節約して貯蓄に励むことが、国民性として染みついているからだ。

ところが、欧米や新興国の投機家たちは、大量に日本円が供給される様になれば、間違いなく「円安傾向」になると、先読みをしている。
円の適正為替レートが、どこにあるのかは誰も決めることはできないので、為替市場の取引で決まるのが、現在の価格決定の仕組みだ。
だから、莫大な資金を持った投機家たちが、円安傾向は続くと読んで「大量に円を売り、ドルやユーロを買う」ことが大勢になる。
結果として、野田政権当時の円レート[77~80円/ドル]は、今や[90円/ドル]となり、さらに[100円/ドル]に近づいて行く潮流である。

アメリカの経済学者、ポール・クルーグマン氏は、従来から『インフレターゲット論者』で、アベノミクスのインフレ目標2%は、従来の通説を打破した「日本政府のヒットである」と評価している。
これの影響で、「低迷している日本経済を脱する方法を、実績で他の国々に示す。」
ことが可能になり、世界からも評価される、というのである。

それには、アベノミクスの第二、第三の矢が的確に実行されなければならない。
第二の矢は、即効性のある【公共投資一辺倒】の様であるが、この使い先を、従来の中央官庁主導でやっていけば、みじめな失敗に終わるであろう。

自民党の首脳は、「従来のバラマキ路線。コンクリート偏重」の予算ではない、と仕切りに強調するが、見出しを見た範囲では依然とほとんど変わっていない。
それは、一部の土建業者・ゼネコンが仕事にありついて、大儲けをする構図が見え透いていて、莫大な国費が既得権益層に流れ込むだけに見えるからである。
従来の説明ならば、地元の建設業者が潤い、ゼネコンの利益が増えれば、「トリクルダウン効果」(おカネが滴り落ちて、周辺も潤う)で、地域経済は活性化する、と説明して納得されていた。

しかし、現代は、これらのおカネは巧妙に隠匿されて、より運用が有利な海外に流れてしまうことを、多くの人が知ってしまったである。(続く)

やる気のある地域自治体には口を出さずにお金をだす。

2013-01-17 | 経済問題
安倍内閣の緊急経済対策では、13兆円にも及ぶ国費が投入される。
この全部の予算を霞が関の官庁で、使い道の采配をふるうつもりならば、自民党は依然と全然変わっていないことがハッキリする。
自民党は伝統的に、地域社会に根を下ろした政治家が、発言力を持っている。
その特徴を活かすならば、復興予算はもとより、経済活性化策のお金の使い方は、地元の意向が最優先されなければ、生きたお金の使い方にならない。

では、どの様にして地域自治体の意向を汲みあげるのか。
従来のやり方では、地域の組織関係者が、わざわざ東京の霞ヶ関、永田町に出向いてきて、担当官庁の官僚の情報と、族議員の後押しを陳情して動きまわる。
つまり、九州地区の自治体でも、国費の予算をつけてもらうには、1000km以上も離れた「お上に陳情」しなければ、地元の意向は汲みあげてもらえない。
これでは、東京ばかりが経済的なメリットを受けるだけで、非効率の典型を60年以上も繰り返してきたのだ。

九州地区は、県知事の協議組織を持ち、長期的な九州の自立化を検討している。
その中で、インフラ整備や地域活性化の具体策を、九州全体のバランスを見ながら協調して、進める意向が進化している。

これに対して、ブレーキを掛けるのが、霞が関の縦割り行政官僚立ちである。
それぞれの領域に専門家を自称する立場から、何かと「口を出すのが権力誇示」のポイントだと心得て、予算をつける権限を絶対に手放そうとしない。
日本全体のことが判っているのは、自分たちの官庁だから、地方は指示を受けてそれを実行すればよい。との旧時代のピラミッド組織感覚である。

この組織が、非効率で機能しなくなったのは、1990年代には明らかで、民間企業ではとっくの昔に、分権化、権限移譲、責任の分担、を機能的に改革してきたのである。
それに対応出来なかった民間企業は、市場の競争力を失い、経営者交代して、組織改革の断行を行ってきた。
それでも追い付かない民間企業は、脱落か吸収合併されて、淘汰されてきた。
中央官庁という【競争に晒されない独善的組織】だけは、旧態依然のピラミッド型の統治を、もっとも大事な金科玉条にしている。

自立的に活動しようとする自治体を、おカネと権限で邪魔している『統治機構の改革』には、予算の使途判断を、地域自治体に移管するのが先決だ。