庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

海洋産業の入り口で進展を阻む電力会社の経営判断を正せ。

2013-09-30 | 海洋産業問題

電力会社は「地域独占」という特権を与えられているのに、体裁は「民間企業」なので、独自の経営権限を持っている。

社会的要請があろうが、国が政策的に優先したい施策があっても、言うことを聞く必要はなく、ただ自社の経営判断を優先する。

風力発電の送電線への接続では、とにかく一定発電量以上は、送電系統に混乱を招く恐れがあるとして、「技術的理由をタテにして接続を拒否」している。

送電線の容量を強化すれば出来る話だが、自社での送電線への投資はできない、として会社の収益ばかりを優先している。

 

陸上設置の風力発電設備でさえ、せっかくの電源を拒否しているのは、原発がいつ再稼働出来るかも判らないままに、「再生可能電力の買取り量」の増加に対する送電線網の強化を、政府が支援をしないからである。

安倍政権は、表向きは、「再生可能電力の普及促進に力を入れる」と政権公約で表明しておきながら、実質は、何も有効な手が打たれていない。

その理由は、ホンネは原発の再稼働をした方が、電力の供給力の安定を図り易いと考えているからである。

 

その様な中途半端な日和見主義的な態度であるから、「洋上風力発電」の研究開発支援も微々たるレベルに留まっている。

海洋産業国家への入り口に当たる『洋上風力発電』は、日本の造船技術と風力発電技術の画期的な飛躍の機会になるのに、及び腰のあり様である。

着床式風力発電設備すら、まだ日本での設置は実験的な段階で、欧州諸国の「洋上ウインドファーム」の目ざましい発展ぶりに比べて、置いていかれている。

日本は遠浅の海が少ないからと言い訳しているが、「浮体式風力発電」ならば、日本の様な入江が多い海岸線に大量の設置が可能だ。

 

この様な風力発電設備の設置ラッシュが起きるまでに、波の穏やかな入り江に「大型海藻の養殖場」を試験的に始める必要がある。

水温と海流の状況によって、どの様な海藻類を植え付けるのが最適かを、各地で試験栽培をして、普及のモデルとするのだ。

海藻類は、収穫後に高価に販売できる『貴重な栄養素』や「サプリメントの素材」が抽出できるので、過疎に悩む漁業地帯に収入と雇用を生み出す。

その後に、含まれている油脂類を絞りだし、「バイオ燃料の原料」を分離する。

残さ物は「家畜類の飼料に混合」し、炭水化物の燃料としてすべて利用出来る。


日本の海洋産業立国への橋渡しは洋上風力発電産業だ。

2013-09-29 | 海洋産業問題

「海洋産業国家」を目指す壮大な挑戦の夢は、次世代への大きな資産を生み出すことで、日本の将来を明るくするだろう。

しかし、困難な技術開発を粘り強く続けなければ、成果を生み出すまでには至らない。

それまで、人材の育成や資金が継続出来なければ、道半ばにして計画は漂流してしまう懸念が大きい。

そこで、陸上からはるかに離れた「メガフロート基地による地下資源の開発」よりも、すぐにでも事業化が可能になる「洋上風力発電産業」を、まず国策として実現すべきある。

 

なぜ『洋上風力発電』を優先すべきかは、このブログで何度も書いてきたが、要点は、「もう手が届く範囲の技術」であるからだ。

風力発電は適地があれば【石油火力発電】よりも、発電コストは安くできる。

洋上に設置した場合でも、送電線の負担さえ「公的な資金で賄える制度」を創れば、設置した事業者は確実に黒字化出来る。

更に、風力発電の欠点である【気象の影響を受けて発電量が変化する】弱みを、陸上に蓄電設備を設置して補えば、安定した電源として利用可能になる。

 

この様に、洋上風力発電を普及させる意思を固めるならば、送電線や蓄電設備の補完さえ、国や自治体が支援できる制度を創れば済むことである。

交通網を充実させる時に、道路の改修、新設や、橋梁、トンネルなど、お金のかかる工事を、インフラ整備として国や自治体が責任を持って進める。

それと同じ様に、送電線、蓄電設備は、「電力網の脱原子力化と安定供給」の為のインフラ投資と考えれば、何の不合理もない。

それを現在の制度では、「地域独占体制の電力会社の経営判断」の任せてしまっているから、風力発電の普及拡大が進まないのだ。

 

電力会社にとっても、風力発電の普及が拡大して、「蓄電設備の設置要求」がたかまれば、現在は「遊休設備と化している揚水発電所」の利用が可能になる。

これは、風力発電の余剰電力で、低位置の水を高位置の貯水池に汲み上げておき、電力が不足する時間帯に水力発電して供給する設備である。

一種の畜電力設備で、「原発がすべて停止して行く将来には不要になる設備」だ。

この有効利用にもなる『洋上風力発電』を、国を上げて推進しない理由はない。

それなのに電力会社も、風力発電を厄介者扱いをして、原発再稼働にこだわる。


多くの国民が夢を期待している「海洋産業」への挑戦を。

2013-09-28 | 海洋産業問題

日本の将来に夢を持てる「壮大な開発のテーマ」が、今の国民にとって必要であることは、誰しも異論はない。

それが原子力発電によるエネルギーの自給化ではないことは、明確になった。

安全・安心のエネルギーの将来像は、再生可能エネルギーによるべきであり、総力を挙げて技術革新に取り組む体制をつくる必要がある。

そして、日本は海洋国家であることを認識すれば、「洋上風力発電産業」を起こして、大半の電力を海洋から得ることだ。

 

それだけでは、気候の影響を受けるから「海洋で培養した海藻類からエネルギーを生産する」バイオエネルギー産業の技術開発に取り組まねばならない。

このブログでは、海洋産業の将来性について、2012年2月2日~7日にかけて、夢を描ける課題について、説明をしてきた。

また、海藻類によるバイオ燃料化も2012年8月20日21日に説明を加えた。

9月28日にはNHKスペシャル(PM9:00)では、日本の排他的経済水域とその近辺には、豊富な改訂資源が眠っていて、この開発に成功すれば、『将来世代にとって宝庫となる夢』を報じていた。

 

あまり国民には知られていないが、日本は海底資源の探査では、世界でも優れた実績をもっている。

更に、かっては世界一であった造船業界の雄であった民間企業が、2013年2月に「技術研究組合」を設立し、産業の基礎となる海上施設の技術開発に挑む。

その基幹技術は、「人口浮島(メガフロート)」の開発と事業化である。

すでにブラジルの海底油田の開発の基地とする計画が動き出して、沖合200kmの海上にメガフロート(横315m、縦80m)を構築する。

ここには、高速船や大型ヘリの活用で物資や人が移動して、中心基地となる。

 

この様な海上基地の実用化を日本でも目指して各地に建設すれば、将来世代が活用できる海底資源や海面でのエネルギー生産が、実用化される。

メガフロート基地一箇所で事業規模は数千億円に達っし、日本が輸入に頼っているエネルギーや高価な地下資源が、自給化出来る様になる。

日本の海上の10箇所以上に「メガフロート基地」の建設構想を立てて、関連する技術開発を優先的に取り組めば、必ず世界最先端の「エネルギー・資源供給産業」として、21世紀を支えるであろう。

その必要資金は「リニア新幹線」の投資よりも少なく、成果は圧倒的に大きい。


鉄道交通に期待される進化は超高速化よりも省エネだ。

2013-09-27 | 交通問題・自動車

「鉄道交通」は古い歴史を持っているが、安全性の向上については、多くの痛ましい事故を経験しながら、その都度、真摯に原因を追及して「技術的な改革」を実現しながら進歩を重ねて、今ではもっとも被害者の少ない交通手段となっている。

高速化に挑戦したのは、「日本の鉄道技術者」たちの熱意と努力のたまものであり、それを事業者や国が支援したことで実現した。

更に、事業者・技術者一体の挑戦により、「世界一安全で世界一正確で早い高速交通機関」に賞賛を与えられている。

 

ところが、鉄道にはもう一つの大きな特徴があり、「輸送に必要とするエネルギー消費が最も少ない交通機関」である。

陸上交通では、自転車が最省エネルギー(人力をカロリー換算して)であるが、それは別にして、鉄道と鉄車輪の組合せは、20世紀、21世紀を通じてもっとも省エネルギーの機械設備であり、今後も進化を続ける発展途上にある。

世界最速鉄道の技術を進化させてきた「日本の新幹線技術」は、速度アップだけでなく、電力消費量も「初代の新幹線から半分のエネルギー」に減らした。

 

省エネルギーは、人目を引く派手な分野ではないが、近年は化石燃料の使用量削減が世界的にも最重要である。

日本は化石燃料の輸入代金の高騰で、貿易収支が赤字に転落してしまった。

今後の20年間は、日本にとっては当然、世界でも「省エネルギー」が、もっとも優先的に改善されなければならない。

「リニア新幹線」が、この最重要な技術革新の方向に逆行して行く事は確実だ。

日本のエネルギー自給率が、国民の安心出来るレベルに改善される時期が到来するまでは、【研究段階にとどめて】省エネ努力を最優先すべきだ。

 

鉄道技術の改革で省エネルギー化出来る可能性は、多くの分野に残されている。

車両に軽量化はもちろん、効率的な電力利用のシステムや、施設の省エネ(照明のLED化)など、実現できる施策はメジロおしである。

それには、多くの研究開発投資と、設備の入れ替え更新など、多大の資金を必要とするだろう。

急ぐ必要性も低い「リニア新幹線」に先行投資するならば、その資金を「省エネルギー化」の改革に全面的に回すべきだ。

省エネが完了してから、速度向上に挑んで技術革新を着実に進めるべきだろう。


安全ボケの日本のリーダー層は世界からも呆れられる人種。

2013-09-26 | 交通問題・自動車

安倍首相の発言は、安全ボケした日本人の中でも、とびきり「ノーテンキ」のお目出度いお粗末さを、アメリカ人に晒している。

日本の「JR東海」の無謀な構想が発表された「リニア新幹線」を、訪米中にセールスマンを演じて、ご機嫌の有様である。

アメリカの将来計画に、日本の新幹線技術を輸出して各地のエネルギー消費の削減に結びつけようとの構想があり、これに、子供の様におおハシャギして、「リニア新幹線がお勧めだよ!」と、軽率な営業活動の先走りを演じた。

 

日本でも、実験線しか走っていない段階で、これから開業に向けての13年間で、多くの技術的課題を克服しなければならない様な、未完成、未熟の技術を、軽々しく外国に売り込む感覚が、「安全性」に対する無知と無神経の塊だ。

技術的な問題では、電力消費が従来の新幹線の3倍以上にもなることだ。

もともと、アメリカが全土を結ぶ航空網が充実しているのに、さらに高速交通路線を建設して、新幹線技術を導入しようという目的は、航空機に対して大幅な省エネルギーを図れるからである。

しかし、「リニア方式新幹線」は、この狙いとは全く外れて見当違いになる。

 

アメリカは、経済合理性が最も重視される国柄で、「原子力発電所」を100箇所以上も建設したが、【スリーマイル島原発事故】以来、安全性に対する大幅な規制強化によって、発電設備としての経済合理性を失っている。

日本の様に原子力族の利権政治と、電力会社の地域独占体制がない国では、おかしな論理による【原子力発電擁護論】は、当然の様に退けられる。

この様な競争原理と経済性を重視する国で、単なる思い入れで建設する「リニア新幹線」が、如何に不合理のカタマリの産物であるかは、すぐに判明する。

 

アメリカで、重視しなければならない安全性は、「銃社会の国」という現実が今後は大きな問題となってくる。

航空機の場合は、厳重に持ち込み規制ができているが、日本の様な安全な社会で通用する「新幹線交通」が、通用するかは大きな懸念がある。

更に、アメリカは世界最強国である反動で、テロ攻撃の対象になり易い。

航空機のハイジャック対策や、原子力発電所に対するテロ攻撃の防備も、考え得る限りを尽くしている。

その様な国に行って、最高速が[500km/h]も出る新幹線だ!とハシャイデ宣伝している様は、なんとも幼稚でお粗末な感覚を世界に宣伝してしまった。


新技術への挑戦では最悪時の想定を十分に見極めてから。

2013-09-25 | 交通問題・自動車

新しい未知の分野に踏み出す「革新的技術」を採用する場合は、社会的な要求に沿うことが必須である。

その上で、未知の領域への挑戦では、必ず不測の事態や想定外の災難が降りかかることも、覚悟をしておかなければならない。

その最悪の状況に遭遇しても、被害は限定的で終束出来ることが必須である。

原発のメルトダウン事故は、現状では収束できないことが明らかになっている。

この様な技術は人類が採用すること自体が、無謀であると言わざるを得ない。

 

その点では、英仏の「超音速旅客機」の実用化への挑戦は、失敗に終わったが被害が限定されたことで、まだ許容される挑戦であった。

原発の技術開発は、福島の大事故によって、人類が扱える範囲を超えた【無謀な挑戦技術】であることがハッキリした。

それでも、まだ【経済的な損失を抑える為に冒険しようとする暴走族】が、「原発の再稼働」や「高速増殖炉技術開発」を続けて、冒険を止めようとしない。

また、事故が起きた後で、「想定が甘すぎた」と弁解するしか能がないのに!

 

「リニア方式新幹線」の技術挑戦は、単に最高速度を[500㎞/h]を実現すれば良いと言う課題ではない。

最高速度で走行中に、突然の大地震に遭遇した場合は、どう対応するのか。

「リニア方式だから、脱線の懸念はない」と説明しているが、大地震とともに、電源がすべて停止した場合に、乗客の安全は守れる様になっているのか。

路線の86%が地下を通すことになっているが、火災発生時や浸水による事故など、想定しておくべき非常事態は、まだ未検討の段階に近い。

技術的な課題が予想外に難関である場合には、開発期間が延長されて予定された投資金額9兆円を大幅に上回ることも、考慮しておくべきであろう。

 

更に、経済情勢は世界的に不安定のままに推移し、超金融緩和の影響も予想外の展開が起きることも懸念されている。

日銀総裁も、超金融緩和による日本国債の大量買い入れによって、長期金利を低く維持することは、「政府が財政再建に真剣に取り組んで行く」ことが、前提条件だと宣言している。

ところが、安倍政権は来年春の消費税アップ後の景気対策で、減税と公共事業の大判振る舞いで、財政再建は完全に遠のいている。

長期的な決断するには、この様な経済面の懸念も、十分に検討しておくべきだ。


技術進化は社会的な必要性と経済合理性を背景に進めよ。

2013-09-24 | 交通問題・自動車

将来の日本の国創りに、「超高速鉄道」が必要になる時期は、必ず到来する。

しかし、今の時点で[最高速度500km/h.]の新規格の幹線鉄道を決断して、

32年先の次世代への負担を決めてしまうのは、いかにも拙速であり無責任な態度である。

現段階で中央新幹線を計画して、最難関の南アルプス横断の「25kmのトンネル工事に着工する」決断をするにしても、「リニア方式に決定」する必要はない。

[最高速度400km/h.]にレベルアップした新幹線で、軌道の規格を在来新幹線と合わせておけば、それによって得られる便益は、はるかに大きい。

 

「品川~名古屋間」の286kmを40分で到達しなければならない理由はない。

その時間を60分にして、そのまま「名古屋~新大阪間」に乗り入れて、さらに、九州まで乗り換えなしで行ける方が、はるかに利用者は喜ぶし歓迎するだろう。

どうも「リニア方式新幹線」を採用することにこだわりを持っている様だ。

これは、中国の江沢民が、上海郊外の短距離路線に「リニア方式新幹線」を強引に導入して「世界一番乗り」を果たしたことに、意地を張って対抗していることが、問題の原因になっている。

【JR東海の経営陣のメンツ】にこだわる様な、愚策を強行するべきではない。

 

航空機の超音速化は「コンコルド計画」の様に失敗しても、「開発費と機体製造費」に限定された損失で済んだ様である。

もし、「リニア方式中央新幹線」が、大赤字路線に停滞した場合は、そうは簡単に撤退も転進もできない。

鉄道事業は19世紀末に始まり、100年の期間で大きく進化してきたが、機動幅の規格は、100年後にも影響を与えてしまう。

この様な最重要な鉄道規格を、【一事業者の経営者メンツ】で決めてはいけない。

 

現代の日本は、大地震と津波災害に晒される自然界の災害にたいして、強いインフラを作り、エネルギーを自給できる将来を目指している。

その自前化の電力として、「原子力発電」の方式を採用して、【安全性と軽視したまま】、54基もの原発を造ってしまった。

責任感が欠如したままの経営陣の愚策の為に、今から30年以上掛けて原発をゼロにする廃炉の作業で、国民の費用負担は膨大なモノになりそうである。

1979年と1987年の原発大事故の後も、原発増設を転進をせずに突っ走る路線を選択した人達は、これから30年に渡る負の遺産の責任を償えるのか。

 


将来世代に大きな負の遺産を残す懸念があるママ暴走か。

2013-09-23 | 交通問題・自動車

「JR東海」の構想で走りだす【リニア中央新幹線】は、英仏が計画して実行して大失敗に終わった「利用者軽視の超高速旅客交通」の二の舞になる。

旅客機の超音速化の研究開発費と、実機の製造費はすべてムダになり、「損失を出したあと始末」は、両国の国民の税金であった。

今回の「リニア方式新幹線」は、全線の工事費用と車両など機器類は、すべて「JR東海」の民間企業の責任による投資である。

もめていた中間駅の設置工事費を地元が負担する方針を転換して、すべて「JR東海の費用負担」にしたので、表向きは「失敗のリスクはJR東海」が負う。

 

その工事費は現段階の見積もりでは、「品川~新大阪間」の全線開業までに、9兆円の先行投資になる。

最大の難関工事は、「南アルプスを貫通する25kmのトンネル」である。

この地域の地質は大量出水の事故で、工事の遅延や費用増加が懸念される。

世論の声と国の方針決定によって、今後の日本は、新規に作る電力供給設備には、「再生可能エネルギー発電所」の新設が義務付けされるだろう。

この場合に対応するための電力設備の投資額も増加すると予想される。

 

以上の様に、「リニア方式の新幹線」の建設については、想定が甘すぎる上に、今後の社会変動を加味すると、建設着工の時期は尚早と言えるだろう。

少なくとも10兆円を超える投資の計画を決断して「突き進むだけの十分な検討」を済ませている様には、まったく見えない状況だ。

従来の新幹線の技術改良と路線の適正化で、最高速度400km/h.の営業運転は十分に可能であり、その場合の建設投資による「便益/費用」は、どうなるのか比較検討をして、国民の目に見える様に説明を加えるべきである。

 

「リニア中央新幹線」の全線開通後の利用者が予測を大幅に下回り、「JR東海」が赤字経営に転落する恐れが十分にありうる。

その場合に、東海道新幹線の運賃を値上げして、赤字分を補てんする経営的な裁量は、現在の制度では、「運賃の設定は民間企業の自由な経営判断」とされる。

現在の「JR東海の経営陣の判断の誤り」を、2045年以後に【東海道新幹線を利用する次世代】に、払ってもらうことになりかねない。

これは、1979年のアメリカのスリーマイル島原発事故や、ソ連のチェルノブイリ原発事故のあとも、電力企業が25基も原発を新設してきたツケを、2011年3月11日以降に、ヒトビトが電力料金で支払わされている事態と同じになるのだ。


高速鉄道の進化には安全・快適・経済性・環境適合が必須。

2013-09-22 | 交通問題・自動車

航空機の進化は、将来的には超高速を求められる時代が来るであろう。

その時には、超音速旅客機の研究開発に挑戦されるが、「コンコルドの失敗」の教訓を学んで、「安全性、快適性、経済性」を万全にしなければならない。

それだけではなく、『地球環境への適合性』も万全でなければならない。

使用する燃料は再生可能なエネルギー、つまり『バイオ航空機燃料』が実用化されて、脱石油が必須条件になっているだろう。

 

それに対して、地上を走る新幹線は、「100%再生可能エネルギー電力」で運行できる『究極のエコ車両・エコ保守』の新幹線システムに改革される。

この社会的に要求される「環境適合性」に対して、【JR東海のリニア中央新幹線】は、構想段階というけれど、環境に対する配慮はほとんど欠如している。

沿線の騒音公害にたいしては、86%が地下を走るので配慮されているにしても、使用電力が従来の3倍以上も消費するというのに、全く考慮がない。

全線の運行に要する電力を自社の責任でエコ発電するか、再生可能電力の発電企業と提携するか、方策はいくらでもあるのに、構想すら検討していない。

 

「JR東海の首脳陣」は、国民の意思や社会動向に配慮がない様である。

その割には【東海道新幹線】が巨大地震を大津波で被災した場合に、「リニア中央新幹線」が災害時に健在であると想定して、「災害対策になる」と宣伝する。

少しの大雨や台風到来で、運行停止になるくらい、天候に弱い新幹線が「地下新幹線」ならば、災害に強いと保証できるなら良いが、あやふやである。

それならば、「リニア方式」による余計な路線経費を、災害に強い車両と路線にする、在来型の「安全性向上新幹線」を計画し、今回の路線ルートで採用すべきであろう。

 

従来の鉄道方式、鉄車輪方式の車両でも、400km/h.の巡行速度で安全に走行できる技術は、すでに出来上がっている。

東海道新幹線は、50年前の設計で210km/h.の巡行速度を想定したので、路線のカーブがきついために速度アップは無理である。

しかし、中央新幹線のルートは500km/h.が目標なので、従来型の速度アップで十分に適用が可能なのだ。

この方式ならば、2027年に名古屋までの路線は在来の新幹線ルートに直接乗り入れ可能で、新大阪、福岡、さらに長崎まで、全く乗り換えなしで行ける。

この様な利用者の便益を最大にするならば、「リニア方式」は、断念するべきだ。


より高速で移動を人類の夢としても前提を無視しては不可。

2013-09-21 | 交通問題・自動車

二十世紀を通じて「交通機関の技術進歩」は、より早く到達することに価値を見出して、鉄道、自動車、船舶、航空機の分野の技術革新が数多く実現した。

この中で、航空機の分野で思いだされるのは、英仏二国の技術の威信をかけて開発した「超音速ジェット旅客機」【コンコルド】の運命がある。

ジェット戦闘機の分野では、音速をこえる航空機は既に実現していたが旅客機では、まだ音速の9割程度が限界とされていた。

それを技術力で乗り越えて、音速以上で飛びつつけて、大西洋を最短時間でつなぐ「夢の超音速旅客機」で実現させたのである。

 

ところが、この超音速旅客機の事業は、完全に失敗に終わったのである。

大きな理由は、経済性の欠如が極短に大きく、狭い客室での旅行では、得られる便益は期待外れ程度しかなかった。

超音速で飛ぶために燃料消費が膨大に増える一方、空気抵抗を減らす為に機体の断面をできるだけ小さくしたので、客室の狭苦しさは快適ではない。

移動時間の短縮の価値に対して、狭苦しい客席で我慢をさせられる旅客が、2倍以上もする旅費を支払うことに納得する筈がない。

更に、空港での離発着では、あたり一帯に大騒音をまき散らしたのである。

 

技術的にも妥協の産物であり、経済性が一部のお金持ち層だけが負担できる「限られた利用者」だけでは、高速交通手段としての合理性はない。

その後の航空機の進化は、より快適にする方向と、省エネルギー化を図る技術革新の競争の時代に入った。

エネルギー利用効率の優れたエンジンの開発と、大幅に軽量化された機体の組合せで、燃料の消費量は目覚ましいほど減少した。

その効果で途中の給油が要らなくなり、長距離便では移動時間が短縮された。

現在も、より快適で省エネルギー化される航空機の次世代技術は進化している。

 

さらには、化石燃料資源の枯渇の懸念に対して、植物からつくられる『バイオジェット燃料』の技術革新が進んでいる。

石油資源を大量に消費する航空機では、出来る限り早期に、「太陽光から作られる植物を原料とした燃料」に移行をすれば、責務を果たすことができる。

現在の技術水準では、「バイオジェット燃料の価格」は航空機燃料価格の倍以上もするが、遠からず、実用で使用できる程度に低下するだろう。

「リニア新幹線」が全通する2045年の時期には、航空機の方が環境適合できる。


将来の高速鉄道の構想を20世紀的な発想で進めてよいのか。

2013-09-20 | 交通問題・自動車

「リニア新幹線の構想」を見ると、20世紀の【エネルギー多消費社会】の延長上の発想しか、盛り込まれていない。

その上に、格差拡大の弊害が20世紀の後半から加速して、日本の停滞の大きな要因になっているのに、一部の富裕層を優遇して、一般庶民を犠牲にする考え方の反省も、全く考慮された形跡がない。

とにかく、より短時間で移動する上位一割の人の「時間短縮という便益」だけの為に、多くの悪影響には目をつむるのが「社会の進化」だと思い込む。

 

地方の経済の活性化に役立つのが「新幹線の様な高速鉄道である」という思い入れは、1980年代までは通用していたが、その後は、高速鉄道の影響で地域の人口が減り続け、地方経済は大都市の従属的な地位に落ち込んだ。

今回の「リニア中央新幹線」の中間駅の構想を見ても、各駅停車の列車本数は1時間に1本という。

神奈川県での中間駅の効果で1時間に上下各5本が停車することで、新大阪に全線開通する時点で経済効果が3200億円出ると試算する。

32年も先の架空の設定で、「経済効果を試算する無意味さ」には呆れかえる。

 

鉄道の駅ができると、その周辺に人が集まる様になって街が形成され、さらに、ターミナル駅として地方鉄道やバス路線が充実して便利になる。

この様な発想は、20世紀を通じて実績があるので、多くの人が期待して膨大な先行投資をする。

しかし、今の時代は自動車交通が発達して、ターミナル駅が発展するのは、限られた機能を持った都会の駅だけである。

リニア中央新幹線の中間駅は、1時間に1本の列車に乗るための人だけが、自動車でパークアンドライドで利用するだけに留まるだろう。

 

そんなことはない筈だ!観光の目玉としての起爆剤になる、と反論が出る。

全線の86%が地下を通過する「地下鉄新線」を想像してみよう。

速度は500km/h.もでるから、一度は乗って見たいと思うだろう。

しかし、観光目的で「地下鉄リニア」には、何度も乗って行きたいとは全員が思わない。

中間駅を降りてから「貸切バスに乗るツアー」にするならば、「初めからバスツアーを選んだ方が楽だ」し、料金も圧倒的にやすい。

回りの景色を楽しまずに「観光地へ1分でも早く着きたい」人がいるのか。


世界一流の技術の新幹線の先に「リニア新幹線」は疑問。

2013-09-19 | 交通問題・自動車

日本のJR東海が、「リニア新幹線」の計画を発表し、着工時期を決定した。

このブログでは、日本の新幹線技術は世界の鉄道産業をリードする、一流の技術の結晶だとして賞賛してきた。

だがその延長上に、「リニア新幹線」の技術が適切とは思われないと、たびたび指摘をしてきた。

その大きな理由は、電力消費量が現在に新幹線の3倍も消費するコトにある。

世界的にエネルギー不足と電力価格の高騰の懸念がある上に、日本の原子力発電の国民の意思は、できるだけ早期にゼロにする方向だ。

 

それでも、2014年に着工した場合は、2027年に品川~名古屋間を開通させ、2045年に品川~新大阪間を開業にこぎつける構想である。

30年以上も先のことになるので、それまでの技術進化や経済情勢には、幾多の変化があるだろうから、評価できる構想ではない。

2027年頃には、原発の電力はあてにできないのは確実で、電力価格もどの程度に変化しているか判らない。

だが工事着工後で、「リニア駆動方式から変更する」コトは考えられないので、このママ着工した場合にはどのような問題が起こるか、書いてみよう。

 

最大の問題は、工事費用を回収できる可能性が全くないことである。

2045年の全線開通までは、想定する利用者数は目標としても低くなるのは明らかで、それでも「JR東日本」の全額負担で完成させると言うが、その負担は2014年から2045年まで続ける必要がでてしまう。

発表された「品川~名古屋間」の料金は11500円で、東海道新幹線「のぞみ」より700円高いだけとした。

この料金では「JR東海」としては、不足分を【東海道新幹線の利益】を余分に確保するために、東海道新幹線の利用者の料金を高くしたままにするだろう。

 

またリニア車運行の消費電力は、東海道新幹線の約3倍の電力を消費し、その分の発電設備と使用燃料費の増加で、電力供給力に負担をかけることになる。

日本はこれから徹底した省エネルギー化を進める必要がある期間に、大電力を必要とする膨大な設備を、あえてこの時期に着工する判断は適切ではない。

少なくとも、「リニア新幹線」の消費電力が、現行の新幹線技術との比較で、同等に出来るまで、研究の継続を続けて成果が出るまでは、着工を延ばすべきだ。

民間企業と言っても、鉄道事業者の社会的責任から、再検討をする責務がある。


働く人の8割を犠牲にして2割の大企業従業員に報いる。

2013-09-18 | 経済問題

現代の企業経営者は、従業員をできるだけ低い給料で働かせて、休む暇もない様にマニュアル化された仕事を課すことで、生産性を最大化する。

その成果として生み出された利益は、株主の要求する満足度を最大にする。

配当を増やして今すぐに株主に還元するか、内部留保を増やして借金経営から離脱して、株価を高く維持する。

利益率の低い業務は、下請け企業に回すことで、資本効率を最大にすることも忘れてはいけない。

 

この様に、従業員の幸福などは、どこにも表れてこない。

事業を展開している地域社会への還元なども、形だけの社会貢献にとどめる。

それでも、地域での優遇が少なかったり、法人税が高いからと言って、機会があれば生産工場の移転計画をアドバルーンとしてあげている。

それに脅かされてふりをして、自民党政権は法人税を下げる機会を捉えようとして、あの手この手を考え出す。

自民党を支持してくれる「2割の富裕層に報いるため」に、公平に集めるべき税金を金持ち層だけに還元するのだ。

 

アベノミクスの弊害を和らげるために、従業員の給料アップを大企業に要請したが、ほとんど効果がない。

そこで、今度は一定以上の賃金水準引き上げと実施した企業には、その分に見合う「法人税の減税」を実施するという案である。

儲けの多い大企業が給料をあげた負担分を、減税というう回路によって国民の税金を、大企業の社員だけに還元すると同じことになる。

これは不公平な制度であり、利益を出すのに有利な大企業だけが報われる。

 

それでも、アベノミクスによって「円安誘導」された【輸入品の価格上昇】の不人気を、一部でも良いから【従業員の給料が上がった】という事実を作りだす為には、実行することになる。

そして、その実績は「マスメディア」は、景気回復の兆候が現れたと、大企業の貢献をほめたたえる。

現実には、法人税を納めている企業は、従業員数の割合では3割程度に留まる。

そのうちの半数以上が給料アップになっても、多くの8割の働く人たちは、物価上昇の被害しか受けない。

それでも、マスメディアは2割の富裕層が優遇されることを誉め讃えるのだ。


国民の幸福を最優先しない経営者を称讃するマスメディア。

2013-09-17 | 経済問題

企業の経営者が社会にとって有益な仕事をしてきたのは、経済がグローバル化されて「会社の価値が株主利益」に大きく左右される時代以前の話である。

今や、経営者と言えば「国際化された株主の利益」を代弁する「利益最大化の組織」の管理者にすぎない。

企業利益の為に行う事業では、従業員の幸せに報いるでもなく、時には消費者や地域社会の人たちの為にもならない、企業側の利益から決められる。

そのような企業が国民から支持され続けるわけがないのは自明であろう。

 

ところが、株主利益の最大化が「グローバル経済化の下での企業」の目的になってしまったからには、いくらタテマエを言っても本質は変わらない。

株価が高くて売上高や利益が高水準でも、従業員の平均給与が低いママの経営者は、社会から称賛される理由はないのである。

それなのに、「マスメディア」の大半は、売上高、利益率、株価総額などの順位で大企業ばかりを採りあげている。

しかも、従業員のリストラを徹底したり、海外への生産を積極的に実施する経営者を、経営手腕が優れているかの様に誉めちぎっている。

 

確かに、企業を赤字に転落させたり、従業員を解雇して縮小ばかりをする企業経営者は失格であるが、黒字化をさせるのは当然の責務である。

だからと言って、従業員への配分を減らしてでも、利益の拡大を重視する様では、経営者の職責を果たしていないのだ。

企業が社会的に認められる基本は、高い給与水準を保ち、地元社会に貢献してこそ、事業を経営できると認識すべきだ。

経営の効率化と称して、臨時雇用的な非正社員ばかりを増やして、経費削減を重視する経営者は、レベルの低い経営実績として批判される存在である。

 

日本の経済全体が低迷した原因には、この様なレベルの低い経営者を、あたかも経営手腕が優れていると【間違った評価を与えて誉めたたえる】社会風潮を作りだした、マスメディアの責任者たちにある。

第四の権力と言われるメディアの低レベルの認識が、現代の先進国の低迷原因になっていることを、指摘するのが改革の始まりであろう。

経営者層でも、優れた社会的責任感を持っている人材は数多くいる筈である。

儲け主義の成績を追求する様な、経営陣を褒める様な愚を止めることだ。

 

先進国の停滞の原因は、マスメディアのレベルが低いことに起因している。


経営者に求められる役割が先進国では完全に的外れに。

2013-09-16 | 経済問題

以前の日本の経営者の理想像は、優れた技術を「多くの国民が欲する商品」に結び付けて、大量に普及させることで会社を大きくした。

多くの従業員が会社の為に、骨身を惜しまずに働き、経営者は可能な限り従業員の給料を引き上げて、その苦労と献身に報いてきた。

名経営者と言われる偉人が、日本中の各地に生産工場を拡大して、地域社会の活性化にも貢献してきた。

しかし今の経営者の求められるのは、4半期ごとの経営実績であり、株価を高く維持して「会社の価値を高める」コトが、至上の目的になってしまった。

 

「会社の価値とは何か」がグローバル化した一時期に盛んに議論されたが、その時期には、「会社の株主利益を最大化」することが、価値が高いとされた。

その方針に沿えば、会社の業績を拡大し、毎年の利益を確実に増加させるのが企業経営者の手腕であるとされた。

その手段としては、「生産はもっとも安価に製造できる拠点」を選択して、より大規模のメリットを追求して生産効率を上げる。

そして、従業員の給料は可能な限り、低く抑えることになってしまうのである。

 

この様な確たる方針の下で、果敢に実行した経営者が優れていることになり、業績がソコソコであり、従業員の給料や福利厚生に手厚くする経営者は、株主総会で退陣を迫られるのだ。

一国の首相が、経営者の団体に向かって、従業員の給料をあげる様に要請するなどは、【マトハズレの泣き言】程度にしか、受け取られない。

グローバル化した資本主義経済で、資金の移動が全く自由になって世界では、生産効率の最大化を求めて、企業は世界中の一番有利な地域に投資を集めて、効率的なリターン(規模の拡大と利益増大)を追うことしか、眼中にない。

 

日本の様に生活水準が一定以上に向上して、豊かで安定した生活を求める指向が高まった先進国では、企業活動に求められる役割も変化している。

国内利益を重視し、地域社会の経済へ貢献する役割が求められている。

その第一の経営者の役割は、企業規模を拡大することよりも、従業員への利益配分を最大化することにある。

そして、生産活動に必要な資材やエネルギー源は、可能な限り地元の産出物を活用することを優先することだ。

日本の経済界が、この様に『量から質への転換』が迫られている。(続)