上層部を富ませても、その資金はグローバル化した現代では、運用益が一番有利な国に流れて、底辺層に回ってくることは殆どない。
むしろ、その悪影響のしわ寄せは、もっとも弱い立場の人に負担が回って、格差を拡大する効果が大きい。
アベノミクス第一の矢は、超金融緩和による円安誘導政策であるが、これは大企業、富裕層に恩恵を注ぐが、弱い立場の一般国民と輸入依存関連の中小企業に、損害を回す【格差拡大政策】の典型である。
ところが、アベノミクス第二の矢の【公共事業の大奮発】による税金のバラマキ政策では、各地での「雇用の改善」が進んでいると報じられている。
4月の有効求人倍率は1.08倍とバブル崩壊以後の最高値に並んだ。
大都市圏や都市部では人手不足の状況で、全国に人材の奪い合いが起きている。
愛知県の有効求人倍率が1.56倍と最高で、最下位の沖縄県は0.64倍と、地域格差は依然として大きいが、人手不足の県外からの募集が広がり、「勤務条件を破格の優遇」にして、集中的に人手を集めている。
その結果として、勤務条件のきつい深夜時間帯では、時給1500円を超える企業も現れた。
平均的な接客業の有効求人倍率が2.54倍となって、2年半続けて現在の時給925円まで上昇し、さらに引き上げる動きになっている。
これは、アベノミクスの公共事業バラマキと大震災の復興事業の本格化によって、日本中が人手不足による、賃金上昇の流れになったのであろう。
これは、長年に渡って引き下げられて来た「労働条件のレベル」を、下げ止まりさせて、ヒトを安く、深夜でも働かせる様な「労働条件デフレ」を、改善する成果となって現れる。
アベノミクス経済は、掛け声だけの表向きの「経済回復」のアピールが多い。
だが、この「労働条件デフレ」に歯止めをかけて、下からの給料ベースの増加傾向に転じた功績は、安倍政権の数少ない得点として評価してよいだろう。
しかし、公共事業の予算を、大量の国債発行に依存している様では、減点されるが、今後の行政改革による無駄な税金の使途を削減して、後からでも償う必要がある。
しかし、小泉政権退陣後に下がり続けた「有効求人倍率」を1.08倍に引き上げた潮流を、『日本全体の賃金デフレからの脱却』に向ければ、大きな成果である。