「グローバリゼ―ションが世界経済の危機を加速する」との警鐘は、最近になって急速に表舞台に登場している。
昨年の著書で、2014年3月に発行された[資本主義の終焉と歴史の危機](集英社新書)では、水野和夫氏の論稿が話題となっている。
アベノミクス路線の【根本的な誤り】を、歴史的な観点から、批判をしている。
この書物は、硬い内容にも拘らず、ベストセラーになって、広く読者を獲得しているが、その内容をマスメディアでは、何も伝えていない。
その一部を紹介して、アベノミクス路線の誤りを、再確認しておこう。
「第一の矢の超金融緩和」は、見当違いであることは、すでに明確である。
その補完として打ち出された【積極財政政策】は、国の借金を増やして次世代にツケを残す弊害があることは明確であるのに、繰り返して実施されてきた。
しかし、社会に負の遺産を抱えたままで、一部の公共事業におカネを注ぎ込んでも、効果はその業界の周辺だけに限定されてしまう。
一部だけ好況になっても、他の業界では、日本経済の成熟した社会での新規需要を引き起こす効果は微々たるものである。
資本主義社会では、新規の需要が次々に引き起こされることが前提で、資本が活発に投下されることで、好況を引き起こす仕組みである。
一次的に潤った業界の利益は、働く人に回ることも限られて、ほとんどは内部留保か、海外への投資に回ってしまうのが、グローバル化した経済である。
1992年の宮沢内閣以後に、[積極財政政策]で200兆円以上を投じて、総需要の下支えをしてきたが、内需中心の成長軌道には乗せられなかった。
日本での資本主義社会は、すでに成熟して飽和点に近いので、総需要の押上はお金を増やすコトでは、効果がないことも明らかなのだ。
かえって、そのお金の返済をするための増税によって、個人消費を完全に冷え込ませて、経済は【マイナス成長に陥る】路線に向かってしまう。
ゼロ成長以下の市場に向けて、「新規投資をする企業」は、稀にしか見られない。
金融緩和や積極財政によって、お金を潤沢にする路線は、【成熟した資本主義社会ではマイナスの効果しか生まない】、ことを理解すべき状況なのである。
お金を回すべき対象は、『将来に価値を生みだす分野』、高付加価値事業と公共政策のレベルアップに集中的に実施するしかない。
新規雇用、新規需要を生まない「積極財政政策」は、カラぶりの矢に終わる。(続)