庵KM

技術屋OBの環境問題独り言

経済問題。交通問題。健康問題。そして、日本の国創り問題。快適社会問題。

脱原発は国有化の路線で計画して原発着工は民間でとは? 

2012-09-30 | 核エネルギー・原子力問題
野田内閣の枝野経済産業大臣が、著書で将来は原発を「国有化」することを提案している。
『脱原発』や『電力会社の発送電分離』を進めるためには、原発を国有化する方向が進め易い、という考え方である。
今までも、脱原発依存社会のスローガンを掲げる政党や有識者は数多くいるが、具体的な方向性と進め方を提案しているのは、一歩も二歩も進んでいる。
実行力には疑問がつくが、聞こえの良いことだけ言っている人よりも、責任感はある様だ。

脱原発の進め方としては、①【安全基準に達していない原発は廃炉】にする。
更に②【安全度ランキングの低い順に計画的に廃炉】の2段階に進める、としている。
一方で、「安全確認できた原発は(原子力規制委員会の判断と地元の同意)再稼働していく。」としているが、これには中央政府は直接は関与しない。
これらの脱原発への転換をすすめるためには、原発を国有化した方が進め易い、という考え方である。
これに対する反論や異論が具体的に提案されることを期待したい。

世の中には、ケチをつけるだけの人も多いが、「自民党以外はすべて脱原発路線を主張」しているのだから、責任感を持って議論を交わすべきであろう。
次期総選挙の争点に出来るくらいに、レベルの高い論戦を期待したい。
民主党に対しては、この枝野提案を「民主党の公約路線」にするのか、ハッキリとさせる必要がある。
それもなくして、「国会解散・総選挙」は、国民の信を問う意味が半減する。
自民党、公明党は一体、どう考えているのか?国民の選択を受けるべきである。

枝野提案に対して、大きな疑問点は、【まだ完成していない原発の工事再開を認めてしまったこと】に対して、どの様に説明するのか。
どの道、40年も経たずに廃炉にする計画の原発を、今から着工して、電力会社の資産にしてしまう。
それを国有化して、2030年代までには廃炉にするのは、20年程度しか使用しない設備を、国民の負担、電力消費者の負担で、電力会社の利益を増やすのか。

「脱原発依存路線」とは、根本的に相反する「原発の新設」を認めておきながら、国有化による脱原発を進める、とは、明らかな矛盾の政策である。

今から原発を稼働させるには原子力ムラの論理を捨てされ。

2012-09-29 | 核エネルギー・原子力問題
野田政権は「原子力規制委員会」が正式に活動を開始したことにより、今後の「原発再稼働」の判断は、「規制委員会」の安全性適合承認と、電力会社の判断に委ねる、との方針を決めた。
電力会社は、地元の同意を得ることが前提であり、地元の範囲は「原子力規制委員会」の検討している、『30km圏内』になる情勢である。

関西電力の大飯原発3・4号機の再稼働は、夏場を控えた関西電力管内の電力供給量の逼迫を優先して、「関係閣僚会議」を臨時的に設けて判断したことは、危機管理対応であり、「正常な状態に戻す」と強調している。

従来の【原子力ムラの論理】で、大事故を引き起こした危機状態を、やっと正常化の方向に転進したと思われる。
ところが一方では、「新規の原子力発電所」の工事再開(着工)は、容認する方針で、大間原発(電源開発)は、工事が4割済んでいる状態で停止していたのを再開するという。
今後の工事を既定方針どうりに進め、もしも政府が途中で原発ゼロを強制したら、その損害額をすべて国に要求する姿勢である。
法律的にはスジを通している、と説明しても、国民が納得するとは思えない。

この様な重要なことを、電力会社(発電会社)と、規制委員会の安全審査だけに押し付けるのは、中央政府の責任感は全くないと言える。
2030年代に原発稼働ゼロとする方針は、原発の稼働開始から40年以内で廃炉にするのを電力会社に課すことである。
それを承知で着工継続するには、電力会社の責任において20年間で設備の償却を完了出来ることを、国民に説明する責任を課すべきである。
2030年に原発の停止を課されても、民間企業としては損失のリスクを全面的に負うことを確約するべきなのだ。

同時に使用済み核燃料の後始末は、100年間程度を原発敷地内に保管場所を設けて、絶対安全に保管する計画を示して、原発立地の地元(周辺30km圏内)の了解をとっておくことが条件である。
原発立地の受け入れのメリットは、地元が承認しても、【廃棄物(放射能汚染された核のゴミ)は、地元自治体では受け入れない】と言うのでは、地元も身勝手というレベルである。

もう旧態依然の【原子力ムラの論理】からは、決別しなければならないのだ。

世界中での日本の正当な要求を認めてもらう戦略を立てよ。

2012-09-28 | 国創り政治問題
アメリカの意向に沿ったコトを、素直に実行する路線が「新米派」の基本姿勢であるから、日本側の要求は控えめにしてきた。
アメリカ軍は、極東の支配権を確保するためには、「沖縄に駐留する海兵隊」は必須で、その移動手段は、重要な軍備の更新計画の一環である。
「垂直離着陸機」のオスプレイは、アメリカ軍の世界の軍事基地に配備して、「海兵隊の機動力増強」には、最適の装備で「日本の様な属国」の要求をいちいち聞いている状況にはない、との既定路線である。

アメリカは、沖縄を返還した時に、米軍基地を治外法権の領地として、日本には返還していない。
これを日本の国内と考えるから、基地問題は少しも改善されないのだ。
米軍基地は、戦勝国のアメリカが占領したままの「アメリカの領土である」、とアメリカ軍は考えている。
だから、米軍の都合で兵器を更新するのは、当然の権利であり、日本の自治体住民がいくら拒否と言っても、聞く必要は全くない。

日本の国民を守る責任のある中央政府は、「日米安保条約」があるから、日本の安全は保たれている、としているが、米軍基地が民家の密集地にあることは、住民の安全を犯している事実を誤魔化している。
民主党の鳩山内閣は、このゴマカシを解消しようとして、普天間基地の県外、国外移転をアメリカ側に要求したが、外交経験も戦略もないままに、期限を切って実行を沖縄県民に約束してしまった。
約束違反で退陣の責任を負わされ、その後は誰もが「先送り」のままである。

中国との紛争地、「尖閣諸島」は、「領土問題は存在しない」との、日本側の論理でほおっておいたツケが、今の混沌とした状態に陥った。
韓国との紛争地「竹島」は、日本の領土と明確に規定しているのに、領土問題を日本側が先送りをしてきたツケが、韓国側の実効支配を許してしまった。
太平洋戦争の終結末期に、不可侵条約を破ったソ連に占領されて「北方4島」は、明らかにソ連側(ロシア)に不正義がある。
これは外交交渉によって、占領地の返還を求めるのは国際的にも正当性がある。
そして、沖縄米軍基地の返還交渉は、「領土問題」占領地の返還問題なのだ。

野田政権も自民党の安倍総裁陣営も、これらに戦略的に取り組む責務がある。

親米路線とはアメリカ軍関係者の言いなりになることか。

2012-09-27 | 国創り政治問題
民主党の迷走外交は、今さら批判する必要もないが、今回の「オスプレイ騒動」は、許しがたい「国民に対する欺瞞行為」である。
本来は、無人の地域に造る米軍基地用に開発した「戦争兵器」を、技術的な無理な設計で、どうにか使えるレベルにした段階の「未完成技術」を、安全性を確認したと、言いくるめられた。

このブログの2012年8月18日に書いた様に、オスプレイは垂直離着陸機の試作機であって、完成品ではない。
テレビ朝日の9月27日「モーニングバード・そもそも総研」のコーナーで、玉川氏が解説していた。
安全性は、明らかに従来機よりも劣っている事実を、まず理解しておくべきだ。

オスプレイの欠点は、「オートローテーション機能」が欠落していることだ。
防衛省の資料では、米軍の説明を鵜のみにして、エンジンが停止しても、プロペラが回り続ける「オートローテーションもどきの機能」は、備えている。
ところが、プロペラが小さくて機体重量が重いので、プロペラが回っていても、機体を安定して操縦しながら不時着出来る性能にはできていない。
つまり、エンジンの不調は、すぐに墜落の状態に陥る、と言うのが正しい。
防衛省は、そのようなコトと知りながら、「オートローテーションの装置は備えている」、とウソ同然の説明をしている。

欺瞞的な説明で安全性を確認したとする防衛大臣の責任は、どうするのか。
国会議員でもなく落選する懸念もないので、ウソを言い続けることができる。
野田首相は、新型兵器のことなど理解する能力もないが、この様な「本来は無人の地域の米軍基地」の用途で開発した「安全性割り切り型の戦争用機器」を、人口が密集した「世界一危険な米軍基地」に配備することを認めている。
しかも、操縦が難しいレベルであることは承知の上で、「新米のパイロットの操縦訓練」を人家のある地域で実施することも承認している。

安全性の疑いのある『教習用自動車』で、繁華街の中を【仮免許のドライバー】が、「運転技術向上の路上教習運転」をどうどうと認めている様なものだ。
なんで、こんな暴挙を認めざるを得ないのか。

それは、長年の対米追従一辺倒の慣習で、米軍関係者は日本には何を言っても、受け入れざるを得ない筈だ!という思い込みがある。
迷走続きで、外交分野の自信喪失政権では、米軍の言いなりしか出来ないのだ。

自民党の出直し総裁がエネルギー政策を白紙から出直し。

2012-09-26 | 快適エネルギー社会問題
自民党の新総裁に、安倍晋三氏が返り咲きを果たした。
既得権構造の破壊に執念を燃やした小泉純一郎首相のあとを受けて、官僚依存政治からの離脱を図ったが、知見不足、執念不足、力量不足、そして、体力不足の問題で、挫折した。
健康の方は完全に回復したと言って、総裁選の有力候補に並び、2位から逆転勝利で自民党の再生を担うことになった。

一番に発信することは、原子力の安全神話を【原子力ムラの論理】を鵜呑みにして、安全性の規制政策を完全に誤ったことを、国民に謝罪すべきであろう。

自民党の総裁候補は、すべて原発維持の論戦を展開した。
原発大事故を引き起こした責任はどこかに置き去りにして、【民主党の原発ゼロ政策の曖昧さ】を批判しているだけであった。
だが、自民党のエネルギー政策が、次世代に大きな負の遺産を積み上げてきた事実は、井の中の自民党総裁選の論戦で、薄められるわけではない。
本当に国民の意思を汲みあげるつもりならば、すぐに『脱原発依存戦略』を練り上げて、国民に対するお詫びを徹底した上で、「安心出来るエネルギー戦略と達成目標」を示さなければならない。

安倍総裁は、この国民の要望に応えられるかどうか、すぐにも問われる。
自民党の各候補は、3年間程度は原発の安全性規制の見直しと、技術進歩の状況を見定めてから、その後のエネルギー戦略目標を決める、と日和見している。
その間には、放射性廃棄物の最終処理は、自民党政権時代と同じ、「再処理路線」を堅持し、「始末に困るプルトニウム」を増産し続ける政策を延長する事、を主張して無責任極まりない。
それらの費用は、当然、電力会社の経費となって、最終的には国民の負担が増大し続ける路線である。

安倍晋三総裁の夫人は、(元のファーストレディ「昭恵」さん)「脱原発」に共感して、山口県の中国電力の原発建設予定地を訪れて、建設反対のメンバーと交流している。
夫人の仲介で、「原子力ムラ」批判の発起者である「飯田哲也氏」と面談し、原子力エネルギー政策の欺瞞ぶりについて、十分に説明を受けている。

安倍氏夫妻の間で誠意のある合意が出来て、「出直し総裁」が原発ゼロを国民の理解と支持を取り戻すスタート地点、と決断することが自民党の出直しになる。

大事な戦略を決められないまま当面をしのぐことだけ。

2012-09-25 | 国創り政治問題
民主党の野田首相の再選は、何も決められない体質をそのまま、あと3年間も続けることになりそうである。

原子力エネルギーを2030年代まで保持して、15%程度は維持して行くつもりでいた「エネルギー戦略」は、国民の意思に反するので、意思をひるがえした。
付け焼刃で「1930年代原発ゼロ」を打ち出したが、矛盾だらけの対応で、各方面から批判の嵐となって、早くも泥まみれになっている。
特に【放射性廃棄物の再処理】の方針が、関係方面との調整もなく先送りをして、原発ゼロへの戦略が、アヤフヤな願望レベルに留まっている。

【再処理によるプルトニウム】をどの様にして行くのか、欧米各国からも、日本の戦略に不信感を招いている。
アメリカは、将来の核兵器削減戦略との関連で、日本の原発ゼロ方針に干渉しようとして、野田政権に横やりを入れた。
原発推進に「協力して来た地域の青森県や福井県」からも、地元の経済の停滞と雇用の確保に懸念を持ち、中央政府の一方的な「原発ゼロ」に向けての転換では、責任を負うべきと抵抗する姿勢である。
地元対策は戦略の中心に据えるべき重要な課題であるのに、地元を賛同に向かわせる政策の骨格は、何も出来ていないのだ。

領土問題も「戦略なき、その場しのぎ対応」が、被害を拡大してしまった。
もともとは、長期に続いた【自民党政権】の先送り主義に原因がある。

しかし、政権交代を果たした民主党にも、大きな責任があるのは当然で、東京都知事が「尖閣諸島の購入」を言い出すまでは、何もしようとしなかった。
慌てて「国が購入」の方向に転換して、中国政府や台湾政府への「戦略的な外交」もなしに、ただ、不法上陸を機会に「国有化宣言」を一方的に実施したために、想定した以上の反発と暴動を引き起こしてしまった。
まさに、外交戦略なき、その場しのぎ「領土保持、成り行き外交」である。

『北方領土の返還』「竹島の国際司法委託」「尖閣諸島の実効支配」は、すべて、近隣諸国との長年の重要課題で、その場対応では、無理なことは明らかだ。
だが、歴代政権はコトが起きない限り、現状維持の無策に終始してきた。
領土問題の中でも『重要な北方領土の返還』は、ロシアが前向きになっている時期に「経済協力による共同開発」を実行に移して、日本に返還する戦略を実施するのが適切である。

まず、「日本の戦略を創る」ことが国政の基本なのだ。

工業の本質はトライアンドエラーの積み重ね。原子力でも!

2012-09-24 | 核エネルギー・原子力問題
旧来の原子力政策において、安全性を最優先する『合理性の観点』が、欠けていたことは、今では日本中では知れ渡っている。
原発をまだ保持して、合理的に安全性を優先すれば、事故を起こさずに発電が可能であるから、キチンと対策を講じればよいのだ。と言う。
【原子力安全・保安院】が、推進官庁の経済産業省の傘下にあったことが、安全を軽視する風潮を生んだのは、明確である。
だから、「原子力規制庁」として経産省から独立させて、原子力規制委員会は、「国会の監視をうける独立性」を、合言葉にして作り直した。

福島原発は、津波の想定が甘すぎた。
非常電源がすべて失われる事態は想定していなかった。
最悪事態において、『(圧力を抜く)ベントの作業』を的確に実施できなかった。
政府や自治体の避難計画は、避難する方向を的確にできなかった。
だから、政府の対策は、津波の高さの想定を変更し、非常用電源の事故に対する対策を2重、3重に万全を期す。
最悪時の作業手順を的確に出来る様に、基準を改定して、定期的に訓練をする。
避難計画を策定しておく自治体の範囲を広げる。などなど。

原子力規制委員会は、原発の安全神話の崩壊に対して、やるべきことを実施するとしている。
しかし、福島原発以外で起きている「多くの見えていない事故」に対して、本当に安全性を確保できているか?
規制部門を推進側から独立させても、水面下では繋がっているので、出来る限り、コトは小さく扱い対策を最小限にとどめたい、と本音では思っている。

前任の原子力委員長は、「すべて万全にすることは、膨大な費用に膨らむ」から、割り切ることをしなければ、何もできない、と断言した。
そのとうりであり、すべての工業製品・設備は、割り切って、トラブルが出たら、その箇所の原因を見つけて対策することで、技術進化をして熟成する。
ところが、原子力発電は産まれてから「トライアンドエラー」を繰り返すには、あまりにリスクが大きいのだ。

【浜岡原発5号基の事故】は、トライアンドエラーの典型的な事故である。
まだ他の部分にも、この様なリスクを冒してでも、コストダウンを図っていることは、十分に推測できる。
あなたは、この様なリスクを承認しますか・・!

民間企業は経験の積み重ねで合理化を重ねる。リスクは?

2012-09-23 | 核エネルギー・原子力問題
「浜岡原発5号機」は、中部電力の原発の中ではもっとも新しい設備である。
同じ構造の3号機は25年、4号機は19年経っているが、同様の事故が起きる予兆も報告されていない。
旧型の原発よりも【最新型の原発の方が不安全】で、驚くべき事故でもある。
しかも、その事故の原因が1年5カ月後になっても、キャップが外れた原因は【想定以上の力がかかって脱落した】と説明しているだけである。

この1年半の間に、散々聞かされてきた【想定外の事態】が起きたので、事故は防げなかった。
原発事故の拡散被害を想定すれば、もう「想定外」は絶対にあってはならい。
この事故の原因を早急に究明し、想定をすべて盛り込んで、対策を万全にした原発でなければ、再稼働は許されない、のは明らかだ。
「新原子力規制委員会」の基本姿勢は、「原発の危険性が小さいか、の判断で、稼働が必要かどうかは斟酌しない。需給逼迫にとらわれないところに、安全規制の独立性がある。」とした。

浜岡5号機が最新型であるのに、なぜ、前例のない事故をひき起こしたのか。
原因の一つに挙げられているのは、「①キャップの厚さが他号機より2~5割は薄い12mm」である。
直径25cmの溶接(品質維持が難しい製造技術)で造られた部品を、16個使用しているので、コストダウン?の為に、従来の設計よりも【合理化】した結果であるとしている。
「②亀裂が生じやすい溶接方法」の部品で、「③水の流れで共振して3倍の力がかかる構造」になっている。
その様な破損の懸念が大きい部分まで、コストダウンを合理化と説明している。

電力会社も原子炉メーカーも、営利企業であるから、「コストダウン」が、日常的に実行されている「企業の当然の行為」と思われている。
しかし限度を超えた場合には、必ず事故発生による使用者にとっての損失があり、試行錯誤の経験の上で限界を決めてきているので、グレーゾーンなのだ。

原子力発電技術は、この様な【試行錯誤】を繰り返しては、事故が多発して被害は甚大になるから、『石橋をたたいて、そろりとして渡る』慎重姿勢が基本だ。
「新原子力規制委員会」の委員は、このことを知らない筈がない!・・・?


想定外の事故がまだまだ起きる危険性のある原発が存在。

2012-09-22 | 核エネルギー・原子力問題
プラントの専門家がみれば、【浜岡原発5号機の事故】は、重大な「世界でも例がない様な大事故」である。
しかし、一般の人、技術面に詳しくないひとたち(政治家、管理系の官僚、経営者など)にとっては、「真水の回路のキャップが外れた」のは、「ビンのキャップが外れて液体がこぼれた」程度の、軽いミスくらいにしか、感覚がない。
だから、事故発生から1年5カ月も中部電力の内部の事故調査にまかせて、ダラダラと成り行きのまま、ほっておいた様な扱いであった。

ところが、この重要部品のキャップ(直径25cm)が「外れた原因は、まだハッキリとしていない」、と公表されている。
中部電力の説明では、「①キャップの厚さが通常より薄い(2~5割)。②亀裂が生じやすい溶接方法。③水の流れで共振して想定の3倍以上の力がかかる構造。」
と原因を推測している段階に留まっている。
同じ構造の原子炉には、この「キャップ構造は16箇所」もあり、それがいつ外れても同様の事故を起こす可能性がおおきい。
中部電力の同じ構造の原発3号機4号機は停止中で、どの様な状態にあるのか、公表されていない。

驚くべき事実は、「浜岡原発5号機」は2005年に運転開始の最新型で、6年しか稼働していない。
政府で議論した【想定している40年稼働の15%の期間】しか稼働していないのに、重大な事故を引き起こす事態だ。
何故この様な短期間で、重要な部品の破損が起きたのか?
定期検査の段階で「真水回路」の損傷の予兆が発見できなかったのか?
冷却用の海水中に流れ込んだ「放射性物質を海中に排出」する前に、検出できなかったのか?
事故の原因とプラントの安全性を徹底的に調査する必要がある。

ところが、旧安全・保安院は、1カ月経っても、なにも動きはしなかった。
廃止が決まっている組織だから、サボっても仕方がない?かもしれないが、当然、この事故調査に関する情報は、「新原子力規制委員会]に引き継がれている筈である。

新任の原子力規制委員会の田中委員長は、「大飯原発3・4号機はすぐには止めない」と述べた。
まだ、【浜岡原発5号機の事故】は聞いていない様だ。(続く)

原子炉の事故を軽い扱いにするために画策する電力会社。

2012-09-21 | 核エネルギー・原子力問題
【浜岡原発5号機の事故】は、菅首相(当時)が停止を要請して、止めたのちに判明した事故であったので、マスメディアでは報道がホンの一部であった。
当時は、福島原発の大事故の収束も見えない緊迫した時期であったので、小さくしか報道しないのは、やむを得ない、とメディアは言い訳するだろう。
しかし、事故内容の調査結果が報告された今年の7月25日時点では、政局がらみの報道に偏りすぎていた。
【浜岡原発の事故】は、もっと大きく扱われるべき重大な問題をはらんでいる。
しかし、ホンの一部の新聞が、片隅で伝えるくらいで、新聞の編集責任者には、「コトの重大さが理解できていない」と言わざるを得ない。

当時の日経新聞の7月31日(13面、科学技術)の記事から、事故の要点を整理して、この重大さを理解してもらえる様に、説明を試みてみよう。

原子炉の中枢部の高温の水蒸気を発生する循環回路には、「真水」が充填されて、高温、高圧の水が水蒸気の状態でタービンを回している。
タービンを通過後に、「復水器」の部分で液体の水状態に戻され、再び、原子炉内に送られて核燃料の熱エネルギーを受けて高温、高圧の水蒸気を発生させる。
「復水器」には海水を循環している「冷却水路」があり、真水を冷やしている。
冷却用に使う海水は、新しい海水を海から汲み上げて大量におくっている。
復水器で海水は高温になり、海水路を通過して海の中に排水されている。

事故は、この真水の回路に、冷却用の海水が大量に侵入したことで、判明した。
復水器の内部に海水が400トン漏れ出し、この海水が真水の回路を通過して、原子炉の内部にも5トンの海水が浸入したと推定される。(分解して調査すべき)
この現象で、海水中には放射性物質を含む「タービン駆動用の真水」が、400トン以上も漏れ出して、海中に拡散されてしまった。
停止後の分解による調査では、「蒸気を冷やす復水器の水路の配管の【キャップ】が、外れてしまった。」ことが判明した。
この部分から吹きだした高圧の真水で、海水の配管(直径3cm)が43本も損傷して、この部分から大量の海水が復水器の中に流れ込んだのである。

たった一つの部品【キャップが外れた】ために、原子炉の燃料棒に接している「真水回路」に不純物質が大量にある海水の成分が、侵入してしまったのだ。

まさに、重大事故のレベルであるが、中部電力は、コトを大きく扱わない様に、ひっそりと公表したかった様だ。
安全・保安院はそれをカバッタのである。(続)

原発の安全性に関する議論は国民に透明性を持って実行。

2012-09-20 | 核エネルギー・原子力問題
原子力発電の安全性に対する国民の信頼性は、今や地に落ちたレベルである。
関西電力の大飯原発2基は、安全性の信頼は不十分なままでも、夏場の電力需給がひっ迫する懸念が大きいとして、関西地区連合の自治体の協議で、この夏場に限り限定的に再稼働をやむなく容認した。
この状況を、関西電力は十分に承知していた筈であるが、いったん稼働してしまうと、原発を止めてしまうのは、経済的な損失が大きい。
だから、電力の需要が落ちた9月下旬になっても、稼働停止は全くない。

原発はとにかく動かさないと、膨大な経費ばかりを負担する事になるので、電力会社側からは、何がなんでも稼働する事に必死になる。
その電力会社の都合を一切考慮しないで、原発の安全性が確保されているかどうかで、稼働してよいかを『絶対的な独立性』を貫いて判断する組織が、「新規に発足した原子力規制委員会」の根本である。
現状においてあらゆる面から見た「安全性確保」を実施出来ているかで、電力会社は「原発の稼働が許される」のである。
大飯原発が稼働した後に、【浜岡原発5号機】の事故の内容を公表した中部電力と【旧組織の原子力・安全保安院】は、この責任を忘れ去っている。

「世界にも類がない大量の海水が原子炉本体に入ってしまった」事故を、調査期間を延々とかけて、やっと7月末に発表した状況は、驚くべき内容であった。
原子力発電の専門家や、発電設備のプラント専門家が見れば、欠陥設計とも思われる事故であり、その原因は正確に把握出来ていない。

もし航空機や高速鉄道での事故が起きた場合には、同型の機器の緊急停止を命じて、同様な部分に異常や予兆が見つからないか、詳細な点検を指示する。
だが、今回の浜岡原発での事故部分の点検を他の原発に命じる動きは見えない。

新規の原子力規制委員会は、安全基準の徹底的な見直し作業は当然であり、同時に現在において「発生した事故の本当の原因の究明」を命じる責任がある。
その役割でありながら、「浜岡原発5号機」の事故の状況を知りながら、「大飯原発の稼働」を続けていることが、安全確保の責任を貫いているのか。
1年5カ月も前の事故だから、他の原発は関係がない、と思っている筈がない。
規制委員会は、会議を『すべて原則公開で透明性を確保する』との方針だ。

発足後の【浜岡原発事故に関する透明な議論】が、国民の前に明らかになる?
この責務を確実に実行するかで、「新原子力規制委員会」信頼度が判るのだ。

原発の本当の安全性確保は厳格な原因究明と対策が必須。

2012-09-19 | 核エネルギー・原子力問題
原子力規制委員会が新メンバーによって発足したが、今までの様な推進側に引きずられて、安全性の確保がズサンになることが防げるのか。
野田内閣による人選だから、官僚に任せた人事案だと憶測される。
新任の委員長は、従来の様な推進側に配慮した「安全性基準」は、暫定的なものであり、早急に「厳格な安全基準」を作り直すと述べた。
その見直し基準が出来て、適合が証明出来た原発でなければ、再稼働の許可を出さないと言いきっている。

ここまで、新任の決意を述べたのだから、厳格にそのとうりに実行をしてもらいたいものだ。
それを実行する姿勢と成果を実際に国民にも示せば、政府や専門家に対する不信感も少しは和らぐ方向に転じて行くだろう。
その試金石になるのが、「浜岡原発5号機の事故」の原因究明と、それに関連する全国の原発管理者に対する確固たる姿勢をとるかによる。
すなわち、「放射能漏れの可能性が大きい重大事故」に対して、電力会社に原因究明の徹底作業を命じることが第一である。

【浜岡原発5号機の事故】は、昨年の5月14日に事故発生がハッキリした。
その事故の実態を報告する様に、当時の原子力安全・保安院が指示を出した。中部電力は、12月まで調査すると応えていたが、実際に調査の報告を受けたのが、年も変わった2012年7月25日になってしまった。
重大事故だと言うのに、なんと悠長な調査期間なのか、不可思議である。
その時は、すでに関西電力の【大飯原発2基】が、暫定安全基準に適合するとして、再稼働をスタートしている。
調査報告が再稼働の前に行われたら、当然の様に、暫定的な安全基準が信頼出来ないとなり、大飯原発の再稼働の障壁となったであろう。

今の段階では、「新任の規制委員会」が、【浜岡原発の事故の実態】を詳細に把握し、事故原因が究明できるまでは、暫定の安全基準を停止するべきであろう。
その上で、大飯原発は速やかに運転を停止させて、浜岡と同様な事故の兆向がないか、再検査を命じる必要がある。

この夏場の電力供給の余力をみれば、関西地区の住民・自治体も「安全性が不確かな原発を無理に稼働する必要性はない」、と合意する筈である。
その様な安全優先の姿勢を示すことが、新委員会メンバーの信頼を高めるのだ。

日本の原発の安全性は組織を改良したのでは確保は無理。

2012-09-18 | 核エネルギー・原子力問題
日本の原子力の安全性確保の役割を担う「内閣府の原子力安全委員会」と「経済産業省原子力安全・保安院」は、9月18日をもって廃止された。
今後の責任は、原子力規制委員会に統合されて、原発推進の役割に経済産業省の影響下から、独立する事になる。
内閣からも独立して国会の監視下に置かれる筈が、原子力規制委員会のメンバーの承認が、国会の機能が失われて議決が出来ないと言う理由で、内閣の指名するメンバーで構成される、チグハグなスタートとなってしまった。

今までの保安院は、国民の安全よりも原発の運転が優先する姿勢で、モノゴトをすべて決めて来た。
専門性の高い分野だから、原発の管理をしている電力会社の言いなりで、それを追認しているだけの役所で、安全性に対する形式ばかりのチェック機能しか出来なかった。
新たに発足した原子力規制委員会のメンバーと組織で、原発の安全性が確保される見込みは、殆ど変わらないとの危惧がある。

今でも、原因不明の原発トラブルが、メディアでは忘れ去られた様である。
昨年の5月に、菅首相が東海大地震の発生確率が高いことを理由に、中部電力に対して「静岡県浜岡原発」の停止を求めた。
中部電力は従って、5月6日に稼働停止に入り原子炉を冷やす作業をしていた。
5月14日になって、冷却用の海水が通る細管(直径3㌢)が43本損傷していて、海水が「タービンを回す高温水蒸気の復水器に400トンも流れ込んだ」ことが分かった。
「この様な大量の海水が原子炉本体に入った事故は、世界でも類がない。」と保安院は指摘して、中部電力は昨年の12月までに影響を調べる。と応えた。

その結果は、今年の7月30日になって、復水器の配管の微小な穴から放射性物質が流れでたことが発覚した。
原子炉を止めてから、1年2か月以上も経ってから、放射能漏れを見つけて、しかも、原因は未だにハッキリとしていない。
停止中の原発だから、これから放射能漏れが拡大することもない、と緊急性は認めていない状態で、国民には何も説明しないつもりの様だ。

しかし、マスメディアも小さく報道し、政府の原子力関係の組織からは、何も対応の説明もない。
その上、福井県の大飯原発の2基は、運転をし続けている。

上っ面だけの政策を打出す民主党体質は不信感を増長。

2012-09-17 | 核エネルギー・原子力問題
原発依存をゼロに向ける政策転換において、今までに国の原子力推進政策に協力をしてきた地元に対して、最大の配慮を払うのは当然である。
野田内閣は一番の影響を受ける青森県に、枝野経済産業相が出向いて、原発ゼロに転換する政府側の説明を実施した。
その際に青森県知事からは、「転換に当たっての道筋が見えない」との大きな苦情が出され、「着工している原発の方針は変えない」と、矛盾する説明をして、その場を繕ってしまったのである。

青森県側は、「六ケ所村の再処理施設」と、持ち込まれた「再処理待の使用済核燃料」に対し、国が責任を持って欲しいと、厳重に念押しをしたのだ。
それ以上に、原発ゼロに向けて地元の産業が衰退する懸念を、一番に解消して欲しいのだが、その対応は一向に国からは出てこない。
いつ停止してもおかしくない「大間原発の工事再開」などは、ほとんど重要視していないのに、「方針変更はない」と当面の取り繕いだけで、肝心のことを先送りばかりしている。
野田内閣の発足から1年も経っているのに、いまだに何の説明も出来ないのは、【原発維持にしがみつくことで政権延命】ばかりを想定して来たからである。

地元へは【廃炉事業の開始】と『再生可能エネルギー』、『天然ガス火力発電所の建設』を、具体化する事を約束すれば、青森県側の懸念は大幅になくなる。
並行して、「再処理施設の転用計画」に取り掛かるコトを約束するのだ。
それには、【持ち込まれた使用済み核燃料】は、元の電力会社に返還する方針を決定し、返還作業工程の調整に取り掛かることである。
この処置によって、『原発ゼロを1930年代までに実施』するとの、国民との約束は実行可能な「民主党の方針」と認められる。

これらの覚悟もなく、ただ「総裁選での再選」を果たす為に、駆け込みで「原発ゼロ」を掲げるから、【矛盾だらけの転換方針声明】となってしまう。
野田内閣が延命したとしても、これでは民主党政権に対する信頼は一層、地に落ちるだけであろう。

自民・公明党以外の野党は、先の国会期末(9月7日)に『脱原発基本方案』を提出し、次期臨時国会での継続審議とした。
民主・自民の代表・総裁選の行方よりも、『脱原発』への基本姿勢が問われることで、政界再編の動きが、さらに活発になり、国民は注視している。

自分さえ生き残れば国民の負担がどうなろうと平然な野田。

2012-09-16 | 核エネルギー・原子力問題
野田内閣は国民を愚弄する様な政策を、平然とした顔で説明する特殊能力を持っている様だ。
2030年代には原発ゼロを目標とする、と宣言しておきながら、現時点で「すでに設置・工事許可を与えた原発は工事継続を認める」と言う説明をしている。
これは「経済産業省」の原子力ムラの官僚が、大臣を言いくるめて言わせているのかと思ったら、野田首相自身もしゃあしゃあと原発建設の続行を認めた。
つまり、今から建設して2015年頃に稼働を始める原発は、2055年まで運転を継続する、ことを認めているも同然である。

それなのに2030年代には「原発の運転?をゼロ」にする、など、国民の耳に聞こえが良い言葉を選んで、体裁を取り繕っている。
将来世代が2030年に原発ゼロを実行して、2015年に稼働開始した原発は、15年の運転期間で、廃炉にすることになる。
原発の建設償却期間を40年で設定して着工するから、25年分の設備償却費は、残ったままでの廃炉の運命にある。
原発建設費を4000億円としても、2500億円は「負の遺産に変化」して、2030年以降の人達に、ツケを回すことになるノダ。

この負の遺産の2500億円は、誰が負担することになるのか。
電力会社の負債にして、国民への負担はない、と説明するつもりだろうが、電気料金に跳ね返って結局は電力消費者・国民の負担になる。
それでは「建設費の償却年数」を15年に短縮させて、特殊ケースとして認可したら、将来世代に対する負債は残らなくなる。
その場合は、今から2030年までの世代の、電気料金の負担が増える
つまり、40年償却でも原発発電コストは、火力発電よりも割高であるのに、15年償却では、トンでもない高コスト発電になるのは必定である。

将来はゼロにすると決めたのに、建設続行を強行するのは、誰が得をするのか。
それは、原発の建設業者と設備機器納入業者である。
4000億円も使って収入としながらも、建設が終われば、あとはいつ廃炉にしても、懐は痛まない企業の得になる。
それを経済産業省の原子力ムラの官僚が画策しての、建設続行の宣言である。

その癒着構図を知っておきながら、新規原発への建設停止を決断しないのは、国民に対する裏切りであり、倫理感が全く乏しい政治家とシカ言い様がない。